子どもと本を繋ぐための本


この夏、子どもと本を繋ぐための本が、2冊出版されました。

まず最初に紹介したいのが、脇明子さんの『読む力が未来をひらく ― 小学生への読書支援』(岩波書店、2014年7月30日)です。
読む力が未来をひらく――小学生への読書支援
脇 明子
岩波書店
2014-07-31


2005年に出版された『読む力は生きる力』、2008年に出版された『物語が生きる力を育てる』に続くシリーズの完結編です。

子どもたちを巡る新しいメディアの変化や、子ども自身が「読書」というものに敷居の高さを感じ、「読書離れ」が顕著になっていく中で、脇明子さんや、脇さんの教え子たちの現場実践で得た確かな手応えと、しっかりとした理論に基づき、「小学生への読書支援」をどのように捉えていくのかが、わかりやすく書かれています。

この本は、シリーズの前作2点と、脇明子さんや教え子の教育実践をまとめた『子どもの育ちを支える絵本』(岩波書店、2011年5月25日)、『自分を育てる読書のために』(小幡章子/共著、岩波書店、2011年6月29日)と合わせて読むことをおすすめします。

「物語」を読むことが、子どもの成長に、とりわけ想像力や心の成長にどのように関わっていくのかが、理解できることと思います。


もう一冊が、赤木かん子さんの『子どもを本嫌いにしない本』(大修館書店、2014年6月20日)です。
子どもを本嫌いにしない本
赤木かん子
大修館書店
2014-06-14

赤木かん子さんは、かねてより「本は913に限らない。どうして大人は子どもに本を読めという時に、913、つまり物語ばかりを勧めたがるのか」と発言され、文学以外の本の魅力を紹介する活動を続けてこられています。

私自身が赤木かん子さんの講座を最初に聞いたのは、今を遡ること17年ほど前。『絵本・子どもの本総解説』の第三版が出版された頃のことでした。東京子ども図書館のリストに基本図書として掲載されている本は、もう今の子どもたちには古すぎる、古典でしかないこと、いつまでの「良書」にこだわっていては子どもたちの本離れはどんどん進んで行くことを力説されていました。

次にお話を伺ったのが、2006年。『調べ学習の基礎の基礎』(ポプラ社、2006年3月)を出版された時でした。もともと「物語」が好きで、「本の探偵」として活躍されていた赤木さんですが、このあたりから学校図書館に深く関わるようになっておられて、子どもの本について「ファンタジー系」と「リアル系」にわけて言及されるようになっていました。

2008年に出版された『子どもに本を買ってあげる前に読む本 ― 現代子どもの本事情』(2008年12月)では、そのあたりのことが明快に語られています。

脇明子さんの著書と読み比べると、相容れない部分があり、正反対の立場ではないかと当時は思っていました。


今回、もう一度赤木かん子さんの話を伺う機会があり、注意深く聞いていくと、「子どもたちにとって出会わせたい本は913の本に限らない」というスタンスでした。本好きな子は、放っておいても本を読む、ライトノベルから始まっても、必ず骨太の基本図書と呼ばれる本を手にする。そういう本でなければ、満足できないからだが、本を読もうとしない子をなんとか「本って面白い」と気づかせてあげたいとおっしゃる。そして、それらの本(913以外の本)に出会わせてあげると、それまで「物語」に見向きもしなかった子どもたちが本の魅力に気がつくのだというのです。そういう視点で、赤木かん子さんの話を聞くと、なるほどと思うことがたくさんありました。

特に、図書館児童室のノンフィクション・知識の書架を見ていくと、出版年が古く、新しい学説が一般化されているのにもかかわらずその本がそのまま置いてある、平成の大合併があったにもかかわらず、古い地名のままの本が調べ学習の棚に残されている、スペースシャトルはとっくに引退しているのに、それが最新技術であるかのように書いてある1990年代の本がある、など、913の書架以外にも目配りをしていかないと、本当の意味での子どもたちが知識に出会う場にならないという危機感も感じています。

そのような視点で、『子どもを本嫌いにしない本』を読んでいくと、赤ちゃんから高校生までの発達段階に応じた本との繋ぎ方や、どのような書架、蔵書構築をしていけばよいかという指針を与えてくれることでしょう。なお、自然科学系の子どもの本のリストとしては『自然とかがくの絵本 総解説』(自由國民社、2008年1月20日)が、とてもわかりやすく使いやすいです。

この2冊は真逆な雰囲気を持っていますが、図書館の児童担当として、そのどちらにも精通し、バランスを取っていくことが、子どもたちにとって魅力のある図書館を作っていくことになると思います。

ぜひ、この夏、この2冊を手にとって読んでみて欲しいと思います。(K・J)
読む力は生きる力物語が生きる力を育てる子どもの育ちを支える絵本自分を育てる読書のために

絵本・子どもの本総解説―読んでほしい読んであげたいいっしょに読みたい子どもの本調べ学習の基礎の基礎―だれでもできる赤木かん子の魔法の図書館学 子どもに本を買ってあげる前に読む本―現代子どもの本事情 自然とかがくの絵本 総解説

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