基本図書を読む20『がんばれヘンリーくん』ベバリイ・クリアリー


 
 「ゆかいなヘンリーくん」シリーズは、1950年に第1作『がんばれヘンリーくん』が出版されて以来、60年以上子どもたちが親しんでいる全14巻のシリーズです。作者ベバリイ・クリアリーは、アメリカのオレゴン州で生まれ、大学で図書館学を勉強したあと、児童図書館員として働きました。そして長年子どもたちに本を手渡すなかで、ふつうの子どもたちの生活をえがいたゆかいな物語が少ないと感じていたクリアリーは、普段子どもたちに接してきた豊富な経験を生かして、『がんばれヘンリーくん』を書きあげます。この作品はたちまち子どもたちの人気を集め、主人公はヘンリーくんの友達ビーザスの妹ラモーナへとバトンタッチしていきますが、約半世紀にわたってこの一連のシリーズは書き続けられることになります。
 
 第1作目『がんばれヘンリーくん』は、オレゴン州クリッキタット通りに住む小学校3年生のヘンリー・ハギンズの毎日が書かれています。街角でやせこけた犬を見つけたので、バスに乗せて家まで連れて帰ろうとしたら大騒ぎになったこと、ペットショップでグッピーをひとつがい買ったら、何百匹にも増えてしまい世話が大変になったこと、友達の大切なボールを失くしてしまい弁償するために、釣りの餌に使うミミズを1319匹つかまえたことなど、ヘンリーくんの周りでおこるちょっとした事件をユーモラスに描いています。この本を手にとる子どもたちも、自分と同じ年ごろのヘンリーくんのゆかいな事件を読んでいくうちに、クリキタット通りで起こることが身近に感じるようで、笑いながら読んでいました。
 
がんばれヘンリーくん (ゆかいなヘンリーくん 1)
ベバリイ クリアリー
学習研究社
2007-06-15

 

 

 シリーズ後半の主人公ラモーナは、初登場は3歳くらいで、好奇心いっぱいのやんちゃな女の子でしたが、最後の巻では親友に出会ったり気になる男の子ができたりと、思春期の入り口にさしかかります。何をするかわからないラモーナが起こす事件もおもしろく愉快ですが、シリーズを通して成長していく様子がみられるのも魅力的です。10歳の誕生日を迎えたラモーナは、こう叫びます。

「あたし、おとなになる可能性をもってるんだからねーっ!」 (『ラモーナ、明日へ』P284)

 泣いたり笑ったり、存分に子ども時代を生きて、明日へ向かっていく姿は力強く、読んでいるこちらも励まされます。

ラモーナ、明日へ
ベバリイ クリアリー
学習研究社
2006-01

 

 

 訳者である松岡享子氏は、アメリカで児童図書館員として働きはじめたときにヘンリーくんに出会ったそうですが、『がんばれヘンリーくん』のあとがきで次のように書いています。

「図書館では、よく読まれる本は、複本といって、同じ本を何冊もそろえるのですが、ヘンリーくんのシリーズの本は、複本がたくさん用意されていました。のちにわたしが配属された小さな街中の分館にも、ヘンリーくんの本は複本でそろえてありました。そして、それらの本は、棚の上でゆっくり休んでいる暇はありませんでした。つぎからつぎへと借り出されていったからです。子どもたちに負けずに、私もつぎつぎにこのシリーズを読みました。夜、アパートの古い安楽いすにからだを沈めてページをくりながら、何度声をたてて笑ったことでしょう!  図書館へやってくる子どもたちと少しも違わない、元気で、くったくのない子どもたちが、本のなかからもわたしに話かけ、わたしをクリッキタット通りの住民にしてくれました。」(『がんばれヘンリーくん』 P226 )

 劇で変な役をしたくなかったり、お姉さんと比べられて嫌だったり、誕生日が楽しみだったり、ごく当たり前の生活の中で、ヘンリーくん、ビーザス、ラモーナがしていることは、今の子どもたちも同じように嬉しかったり悩んだりしていることでしょう。そんな自分と同じような気持ちになる物語を読んで大笑いすることは、スカッとしますし元気になれると思います。読んで愉快、親しみがわいてあたたかい、めいっぱい味わってほしいシリーズです。改訂新版は、版型は小さくなっていますが活字は大きく読みやすくなっています。ぜひ、シリーズの中に出てくるおもしろい事件を紹介して、ヘンリーくんたちに出会うきっかけを作ってあげてください。

≪ゆかいなヘンリーくんシリーズ≫ ベバリィー・クリアリー作 松岡享子訳

第1巻『がんばれヘンリーくん』 改訂新版 2007, 第2巻『ヘンリーくんとアバラー』 改訂新版 2007, 第3巻『ヘンリーくんとビーザス』 改訂新版 2009, 第4巻『ビーザスといたずらラモーナ』 改訂新版 2009, 第5巻『ヘンリーくんと新聞配達』 改訂新版 2013, 第6巻『ヘンリーくんと秘密クラブ』 改訂新版 2013, 第7巻『アバラーのぼうけん』 改訂新版 改訂新版 2008, 第8巻『ラモーナは豆台風』 改訂新版 2012, 第9巻『ゆうかんな女の子ラモーナ』 改訂新版 2013, 第10巻『ラモーナとおとうさん』 改訂新版 2001, 第11巻『ラモーナとおかあさん』 改訂新版 2001, 第12巻『ラモーナ、八歳になる』 2001, 第13巻『ラモーナとあたらしい家族』 2002, 第14巻『ラモーナ、明日へ』 2006

(作成 T.S)