2015年11月、12月の新刊から


 先月の新刊紹介で11月に出た本もいくつか紹介しましたが、見落としていた作品もありました。11月に出版された本も追加して新刊を紹介します。選書などの参考にしていただけるとありがたいです。 

絵本

『クリスマスイヴの木』デリア・ハディノ/文 エミリー・サットン/絵 三原泉/訳 BL出版 2015/11/1

デリア ハディ
BL出版
2015-11

 しっかりと植えられなかったために、曲がって大きくなれなかったモミの木は、クリスマスイブの夜になっても売れ残ったままでした。そのモミの木をもらった男の子は橋の下のねぐらへと持ち帰ります。その夜、ホームレス仲間のおじいさんがツリーのそばでバンドネオンを弾き鳴らし、そのまわりにクリスマスキャロルを歌う人の輪が出来上がります。きらびやかな家がなくても、豪華なご馳走がなくても、ささやかな喜びを分かち合う姿に心が温かくなります。その後、このモミの木は掃除のおじさんの機転で公園に植えられ大きく育っていくのですが、この男の子はその後どうなったかは描かれていません。男の子が幸せに育っていてほしいと願いつつこの絵本を閉じました。

 

『おもち!』石津ちひろ/作 村上康成/絵  小峰書店 2015/11/12

おもち! (にじいろえほん)
石津 ちひろ
小峰書店
2015-11-12

 ことば遊びの達人、石津ちひろさんのリズミカルで元気な言葉がお餅つきの情景を描き出します。村上康成さんのユーモラスな絵も、搗きたてで、よ~くのびるお餅にぴったり。昔はお正月を迎える準備にどこの家でも年末には臼と杵を出してきて餅つきをしたものですが、今では臼と杵で搗く餅つきは子どもたちには珍しいかもしれませんね。

 

『いちばんのなかよしさん』エリック・カール/作 アーサー・ビナード/訳 偕成社 2015/11

いちばんのなかよしさん
エリック・カール
偕成社
2015-11-18

 いつも何をするにも一緒だったお友達が、ある日突然いなくなってしまいます。やっぱり一緒がいい!と男の子は探しに出かけます。この絵本の裏見返しにエリック・カールの3歳の時の写真が載っています。当時仲良しだった女の子と、この絵本の表紙のようにぎゅ~っと抱きしめあっている写真です。エリックが幼少期を過ごしたニューヨークのお隣の女の子でした。でもエリックの家族はドイツへ引越し、長い年月が経つうちに相手の名前もわからなくなったままだったそうです。ところが、この絵本が出版されたことで写真に写っていた女の子のお嬢さんが気がつき、80年ぶりにお互いの存在がわかったそうです。素敵なおまけですね。

『かようびのドレス』ボニ・アッシュバーン/作 ジュリア・デーノス/絵 小川糸/訳 ほるぷ出版 2015/11/20

かようびのドレス (海外秀作絵本)
ボニ・アッシュバーン
ほるぷ出版
2015-11-20

先月、紹介した『おじいちゃんのコート』と同じように、大好きだった服がいつのまにか着古して小さくなるたびに、ほかのものに変身していくというおはなしの女の子版です。お気に入りのたくさんフリルのついたドレスが小さくなってしまった時、ママが「ぎゃくてんのはっそうがだいじ」といいながら、違うものに仕立て直してくれます。柔らかなパステルカラーで描かれた絵は、おしゃれが大好きな女の子の夢が詰まっているようにも見えます。

 

ユーゴ修道士と本をあいしすぎたクマ』ケイティ・ビービ/文 S.D.シンドラー/絵 千葉茂樹/訳 光村教育図書 2015/12/20

ケイティ ビービ
光村教育図書
2015-12-20
修道院の図書館から大事な経典を借りたまま返せなかったユーゴ修道士。それはクマに襲われた時にとっさに本を投げつけたからでしたが、クマはその味をしめてしまいます。ユーゴ修道士は別の修道院から経典を借り、仲間たちに助けてもらって写本を完成させます。そして経典を返しに行くのですが・・・本の味に目覚めたクマに出会わなきゃいいですね。この絵本を読んでいると中世の書物の作られる過程や、扱いについても興味を持つのではないでしょうか。中世フランスでほんとうにあったお話をベースに作られた絵本だそうです。

 

児童書

『どうぶつたちがはしっていく』長新太/作 子どもの未来社 2015/11/26

どうぶつたちがはしっていく 1 (長新太のおはなし絵本)
長 新太
子どもの未来社
2015-11-26

 「長新太のおはなし絵本」として『キャベツくんのおしゃべり』と2冊が同時に出版されました。絵本となっていますが、絵本から読み物へ移る幼稚園の年長さんくらいから小学校低学年の子どもたちにちょうどよい幼年童話です。「どうぶつたちがはしっていく」「ゾウのオネエサン」の2話が収録されています。とにかくおもしろい長新太ワールドが広がります。 

『キャベツくんのおしゃべり』長新太/作 子どもの未来社 2015/11/26

 こちらには「キャベツくんのおしゃべり」のほか、「ゾウのオジイサン」「こうえんのすなば」の3話が収録されています。長新太さんならではの、おかしくも、ちょっぴりシュールな世界が繰り広げられています。読んであげてもいいし、自分でも読める、そんな短いお話です。

『さかさ町』F・エマーソン・アンドリュース/作 ルイス・スロボドキン/絵 こみやゆう/訳 岩波書店 2015/12/17

さかさ町
F.エマーソン・アンドリュース
岩波書店
2015-12-18
 
リッキーとアンの兄妹は自分たちだけでランカスターに住むおじいちゃんを訪ねていくために汽車に乗っていました。ところが途中で橋が壊れて前に進めなくなり、「さかさ町」という見知らぬ町で一日待たされることになりました。この町はその名のとおり、なにもかもが逆さま。なんだかへんてこりんな町です。でも、読めばこんな町があればいいのになぁ~ときっと思うことでしょう。こちらも幼稚園年長さんくらいから小学生低学年向けの幼年童話です。
 
『ゆうかんな猫ミランダ』エレナー・エスティス/作 エドワード・アーディゾーニ/絵 津森優子/訳 岩波書店 2015/12/15
ゆうかんな猫ミランダ
エレナー・エスティス
岩波書店
2015-12-16
 
読み終わって感じたのは、どんな困難な時にも生命を生み育てる母性の強さでした。物語はうんと昔のローマの街。まだコロッセオでライオンのショーが行われていたような昔です。人間の家族に飼われていた母猫のミランダは、ある時蛮族が街を襲い火をつけたことから人間の家族と離れてしまい、迫り来る火と煙の中を子猫たちを連れて逃げていきます。途中で親猫からはぐれた子猫も一緒に・・・街外れのコロッセオに着いた頃には子猫の数は34匹。おまけに自分にも赤ちゃんが4匹生まれます。さあ、ミランダはどうやってたくさんの子猫たちを育て守っていくのでしょう。この物語の作者は『百まいのドレス』のエレナー・エスティス、そして繊細な絵はエドワード・アーディゾーニです。
 
『少年キム』ラドヤード・キプリング/作 三辺律子/訳  岩波少年文庫 岩波書店 2015/11/17
少年キム(上) (岩波少年文庫)
ラドヤード・キプリング
岩波書店
2015-11-18

少年キム(下) (岩波少年文庫)
ラドヤード・キプリング
岩波書店
2015-11-18
 
英国初史上最年少ノーベル文学賞受賞作家で『ジャングル・ブック』でも有名なラドヤード・キプリングの作品です。日本では『少年キムの冒険』(亀山竜樹/訳 世界名作全集 講談社 1960)、『少年キム』(斎藤兆史/訳 晶文社 1997)など既にほかの訳者によって発表されてきた作品ですが、この度若手翻訳家の三辺さんにより岩波少年文庫として出版されました。大英帝国が植民地としていた19世紀のインドを舞台に、13歳の孤児キムがチベットのラマ(高僧)と出会い、伝説の聖なる河を探す旅に出ます。当時ロシアもインドの覇権を狙っており、キムは英国側のスパイとしての活動もすることになります。利発なキムはスパイとして「大いなるゲーム」に加わりながらも、ラマの弟子としてその教えも彼の中に深く影響を与えていきます。多感な時期を懸命に生きるキムの姿から目が離せなくなります。三辺さんは今年5月には『ジャングル・ブック』を岩波少年文庫として訳していらっしゃいます。合わせて読んでほしいと思います。
 
 『お静かに、父が昼寝しております ユダヤの民話』母袋夏生/編訳 岩波少年文庫 岩波書店 2015/12/17
お静かに、父が昼寝しております――ユダヤの民話 (岩波少年文庫)
岩波書店
2015-12-17
 
紀元70年にローマ帝国がイスラエル王国を滅ぼして以来、世界中に散らばって生活を続けているユダヤ民族に伝わる昔話を集めて母袋さんが翻訳されました。世界各地に伝わる昔話が32編、旧約聖書の創世記の中から6編の合わせて38編が紹介されています。「あとがき」を読むと、これらの昔話は口承で伝えられ、記録されるようになったのは19世紀末になってからとのこと。20世紀以降中東問題の火種となり続けているイスラエル建国のことも含めて、ユダヤ民族が2000年もの間バラバラになりながらも伝えてきた文化、考え方に触れることができるのも、そのために多くの研究者の労があってのことと感じ入ります。どのお話も既知に富んだものばかりです。
 
その他
『10代のためのYAブックガイド150』金原瑞人、ひこ田中/監修 ポプラ社 2015/11/10
今すぐ読みたい! 10代のための YAブックガイド150!
ポプラ社
2015-11-11
 
金原瑞人さんとひこ田中さんが選んだYA世代向けのブックガイドです。この本の出版記念の金原さんのトークショーに行った際に、“ティーンエイジャーって、先生や親に隠れて本を読みたいわけで・・・ここに挙げているのはそんな本。決して良い本というわけではない。その世代って性のこととか、暴力とか、とにかく近づいちゃダメというものに近づきたい時代。そんな多感な時期に読んでほしい本を選んである”とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。自分も親や先生に反抗してた時期がありました。その時の気持ちを思い出して、YA世代に本を手渡せるといいなと思います。
 
 
『司書が先生とつくる学校図書館』福岡淳子/作 玉川大学出版部 2015/11
司書と先生がつくる学校図書館
福岡 淳子
玉川大学出版部
2015-11-28
 
中野区で長く図書館指導員として学校図書館の仕事をしてこられた筆者が、学校教育の中でどのように司書教諭をはじめとして先生方と協働して、図書館を利用する教育を展開していったのか、学校司書としてそれにどのように関わってこられたのかを克明に書き綴った実践記録です。読書の支援だけではなく、どのように蔵書構成を作るのか、また学年別にどのように働きかけをすればよいのか、ということが具体的に書かれており、学校図書館現場で働く人の力強い味方になってくれる1冊です。
 
『石井桃子談話集 子どもに歯ごたえのある本を』石井桃子/著 河出書房新社 2015/12/9
子どもに歯ごたえのある本を
石井 桃子
河出書房新社
2015-12-09

 1965年から2007年までの雑誌や出版社から出される小冊子に残された石井桃子さんへのインタビュー記事、あるいは対談をまとめて「石井桃子談話集」としている本です。内容は今までの石井桃子さんのエッセイで読んだことのあるものなのですが、インタビュアーによって様々な聞き方、つっこみ方をしていて、石井桃子さんの素の姿が立ち現れてくるかのようです。たとえば詩人の吉原幸子さんは、そのものズバリ「ご家族はお持ちにならなかった。」「ずっとお一人でいらっしゃいます?」「たとえば、『ノンちゃん』に出てくる少年が戦争から帰ってこなかったように、密かに待ってた方が、帰っていらっしゃらなかったとか。」などと質問し、それに対して石井桃子さんが「「そりゃね、結婚しようかと思った人はありましたけどもね、とてもその頃はね。」などと答えていらっしゃり、人間味溢れる人物像が浮き上がります。タイトルになっている「子どもに歯ごたえのある本を」は、1996年8月の『文藝春秋』掲載の短いインタビュー記事です。他にも何編か、「子どもの本」について論じているものもありますが、それ以上に約40年強の時間の中から拾い上げられてまとめられた談話集であるにもかかわらず一貫して語られる子どもへの、創作への変わらぬ姿勢というものに敬服いたしました。

 (作成K・J)