Yearly Archives: 2015

基本図書を読む10『ホビットの冒険』J・R・R・トールキン
2015年(その3) うれしい春の日(幼児~小学生)
2015年(その2) 友だちと春(幼児~小学生)
2015年(その1) ちょうちょ ちょうちょ(小さい子)
3月のおはなし会✩おすすめ本リスト
今年もどうぞよろしくお願いいたします♪

基本図書を読む10『ホビットの冒険』J・R・R・トールキン


「基本図書を読む」第10回は、J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』です。
ホビットの冒険
J.R.R.トールキン
岩波書店
1983-09-30
 

「地面の穴のなかに、ひとりのホビットが住んでいました。穴といっても、ミミズや地虫などがたくさんいる、どぶくさい、じめじめした、きたない穴ではありません。といって味もそっけもない砂の穴でもなく、すわりこんでもよし、ごはんも食べられるところです。なにしろ、ホビットの穴なのです。ということは気持のいい穴にきまっているのです。」 (一章 「思いがけないお客たち」p9)

 
この本の、初っ端の数行を読んだだけで、ホビットって一体どんな人たちなんだろう?と、このお話に引き込まれた思い出のある人は多いでしょう。耳慣れない「ホビット」という言葉にわくわくしながら、いつしか自分も主人公のホビット、ビルボ・バギンズとともに冒険へと足を踏み出していくのです。
 
物語は、このホビットの家に偉大な力を持つ魔法使いのガンダルフが訪ねてくるところから始まります。そしてガンダルフはビルボを冒険に連れ出すと言うのです。冒険なんぞに出かけたくないビルボは、「お茶にでもきてください-おすきな時に。あしたにでもいかがです?」と言って、ドアを閉めてガンダルフを追い返してしまいます。翌日、お茶の時間に次々にやってきたのは、13人のドワーフ小人たちでした。そして最後にガンダルフが登場、ドワーフたちが父祖の宝を取り戻しに竜と対決する冒険の旅の一員として、ビルボが選ばれたことを告げるのです。
 
さて、ここで小人について整理しておきましょう。『ホビットの冒険』の冒頭部分で、トールキンはこのように書いています。
「ホビットは小人です(小人でした、といいましょう。いまは見られませんから)。ドワーフ小人より小さくて(ドワーフ小人は、白雪姫に出てくる七人の小人たちの仲間です。ドワーフにはひげがはえていますが、ホビットにはありません)、リリパット小人よりは大きいのです(リリパット小人は、ガリバーの話に出てくる小人国の小人です)。ホビット小人には魔法の力はありません。」(岩波書店ハードカバー版 p10~11)
 
このように古くから伝承されてきた小人たちに加えて、トールキンの創造したホビットが生き生きと活躍する物語は、作者のJ・R・R・トールキンが4人の子どもたちに毎晩語り継いでいったお話でした。いったい次はどんなことが起こるんだろう、とわくわくしながら父親の周りで一心に聞いていた子どもたちの目の輝きが目に浮かぶようです。
 
物語の展開のうまさを瀬田貞二はこのように表現しています。
「その構成の緩急あるリズム、伏線と山場、丘から谷へ、山から地底へ、林から空へ、さまざまな舞台の転換、また章中に挿まれる歌の、ロマンスの息吹をこめ、情景の気分を盛りあげて節奏(リズム)を高める間投」(『瀬田貞二子どもの本評論集 児童文学論(上)』福音館書店p262)
まさに緩急のある物語の展開に、本を読みながら、手に汗握ってハラハラしたり、ホッと息を継いだり、ぐいぐいと引き込まれていくのです。
 
特に、読者を惹きつける箇所は、5の「くらやみでなぞなぞ問答」ではないでしょうか。残忍な小人種族のゴブリンとの戦いから逃げて地下へ逃げ込んだビルボは、暗闇の中で指輪を拾います。(この指輪は、『ホビットの冒険』に続く壮大な『指輪物語』の重要な鍵になっていきます。)この指輪をポケットに隠したまま、地底に住むゴクリという孤独な小人と、ビルボは出口を求めて、ゴクリはビルボの命を狙って「なぞなぞ問答」をするのです。そして、いよいよもうダメかというところで、拾った指輪の力(指輪をはめると姿を消すことが出来る)を知って窮地を抜け出すのです。その機知に富んだなぞなぞ問答のやりとりもとても面白く、大人になっても心に残っているほどです。
 
子どもたちの身近な場所で不思議な出来事が起こるというファンタジーではなく、「中つ国」というトールキンが創造した「もう一つの世界、第二の世界」を構築し、そこを舞台に壮大な冒険が繰り広げられる『指輪物語』はハイ・ファンタジーと呼ばれ、児童文学の歴史の中でも確固たる地位を築きました。
 
『ホビットの冒険』と、それに続く『指輪物語』は、その後のファンタジー作品、本に限らずアニメやゲームにも大きな影響を与えてきました。今の子どもたちにとっては古典と言える作品ですが、「ロード・オブ・ザ・リング 指輪物語」に続いて「ホビットの冒険」も映画化されて話題になっていますので、この機会に原作に出会ってほしいと思っています。
 
岩波書店からは、ハードカバーとは別に岩波少年文庫(上・下)、オリジナル版が出ています。ハードカバーと岩波少年文庫の挿絵が寺島竜一なのに対して、オリジナル版は、横書きの文章でトールキン自身が書いた表紙と挿絵になっています。

 

 

 

 

 

 

ホビットの冒険 オリジナル版
J. R. R. トールキン
岩波書店
2002-12-07
 
 
 
 
また、『ホビットの冒険』については、上記に引用した『瀬田貞二 子どもの本の評論集 児童文学論(上)』で評論されていますし、JULA出版局の「作品を読んで考えるイギリス児童文学講座4」の『花ひらくファンタジー』にも、詳しい解説がありますので、併せて読んでみるとよいでしょう。
児童文学論―瀬田貞二子どもの本評論集 (上・下巻)
瀬田 貞二
福音館書店
2009-05-25
 
 
 
 
特に『花ひらくファンタジー』には、トールキンの生い立ちや、オックスフォードでのC・S・ルイスとの交流や、言語学者としての研究について、またトールキンの作品世界について、わかりやすく丁寧に記されていて、物語の背景について知ることが出来ます。
 
このブログ記事を書くために、久しぶりに読み返しましたが、子ども時代に表紙裏に描かれた「荒地のくに」の地図を見ながら、自分もビルボとドキドキしながら一緒に冒険の旅をし、読み終えた時に感じた昂揚した気分を再び味わうことができました。(K・J)

2015年(その3) うれしい春の日(幼児~小学生)


あたたかくなり、草花が芽吹いてくると、気持ちもはずみますね。
そんなちょっとした春の日の嬉しい!を感じるプログラムを組み立ててみました。
 
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【うれしい春の日】 幼児~小学生
  
導入 絵本『春の日や庭に雀の砂あひて―キーツの俳句絵本』 リチャード・ルイス編 エズラ・ジャック・キーツ絵 いぬい ゆみこ訳 1999
 
春の日や庭に雀の砂あひて―キーツの俳句絵本
偕成社
1999-06
 
アメリカの絵本作家エズラ・ジャック・キーツが、英訳された小林一茶、与謝蕪村、正岡子規などの、日本でも広く知られている俳句をもとに、コラージュの絵本を作りました。一枚一枚の絵は、和を感じさせながらも、ユーモアがある生き生きとしたものになっています。文語体で難しい俳句もありますが、英訳を現代語にしたものを読むと、意味もわかるようになっています。俳句を読んだあと、現代語を読み、もう一度俳句を読むと、十七音の響きも味わえてよいと思います。初めて俳句に出会う子もいますので、絵本を読み始める前に、俳句は、五・七・五の十七音からなる、日本の代表的な詩だいう説明を、さらりとするとよいでしょう。
 
 
絵本『なのはな みつけた』 ごんもりなつこ 福音館 2009 5分
 
なのはなみつけた (かがくのとも傑作集)
ごんもり なつこ
福音館書店
2009-01-31
 
春になると、いろんなところで、咲いている菜の花。1本の茎に小さな花がたくさん集まっていること、野菜から咲くこと、種をつぶして絞ると油がとれることなど、菜の花の生態と不思議がやさしく書かれています。絵は日本各地を取材して、描かれたそうです。読み終わったあと、菜の花を見に行きたくなる1冊です。
 
 
絵本『草花とともだち』 松岡達英構成 下田智美絵/文 偕成社 2004 
 
 
春の野山でみられる、さまざまな花が紹介されています。花は、色別(黄、白、青、桃色、赤、紫花)にのっているので、探しやすいです。また、草花についてのなぞなぞや、草花あそび、食べられる草を使った料理など、さまざまな角度から草花に親しむことができます。読み聞かせというよりは、本の楽しみ方を紹介して、後から手に取ってもらうとよいでしょう。
 
絵本『ルピナスさん』 バーバラ・クーニーさく かけがわ やすこやく ほるぷ出版 1987 10分
 
ルピナスさん―小さなおばあさんのお話
バーバラ クーニー
ほるぷ出版
1987-10-15
 
ルピナスさんは、アリスと呼ばれていた小さいころ、おじいさんと3つの約束をします。それは、「大きくなったら、遠くへ行くこと。おばあさんになったら、海のそばの町に住むこと。そして、世の中を美しくするために 何かすること。」 そして、ルピナスさんは、本当に世界中を旅して、海を見下ろす丘にある小さな家に住み、素敵な思いつきをして、一番難しい3つめの約束を果たすのです。 一人の女性の人生をさわやかに描いています。豊かな色彩のあたたかな絵で、時代によって色調が変化しており、画面から人生の1つ1つの場面の空気が伝わってきます。
 
(T.S)

2015年(その2) 友だちと春(幼児~小学生)


3月から4月にかけて、「三寒四温」とは良く言ったもので、春らしい暖かい日があるかと思えば、寒の戻りがあって、季節が行きつ戻りつします。

 
それでも陽射しは明るく、希望を感じる光であるのは間違いない、そんな気持ちに寄り添うおはなしプログラムにしてみました。既出の絵本もありますが、組み合わせを変えると、別の味わいがあるのではないかと思います。
 
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【友だちと春】幼児~小学生向け
 
導入 詩「友だちと春」 『ともだちシンフォニー』佐藤義美 JULA出版局 1分
 「きみがたっている靴の下に
  草のめがでてくるよ。
  いま きみは なにを かんがえてるの?
  ぼくは きみのことを かんがえている。
  ねむっていた草木や動物が 目をさます春
  かたまっていた氷が とける春
  きみにきた春が ぼくにもきた。 」(一部抜粋)
 
「いぬのおまわりさん」や「アイスクリームのうた」など、子どもの頃に親しんだ童謡詩人、佐藤義美童謡集「ともだちシンフォニー」から、「友だちと春」を紹介しました。春の訪れは、誰かに告げたい、誰かと共有したい、そんなふうに胸おどることなのだなと、この詩を読んで改めて思いました。子ども達と一緒に声に出して味わってほしい詩です。
 
絵本 『いいことってどんなこと』神沢利子/片山健 福音館書店 4分
いいことってどんなこと (こどものとも傑作集)
神沢 利子
福音館書店
2001-01-25
 
雪解けの水の音、小鳥のさえずり、せせらぎの音、頬をなでてゆく風のなかにも、「春が来たよ!」というメッセージはたくさんあります。この女の子にはそれが「いいことがあるんだよ いいことがあるんだよ」と聞こえます。「いいことってどんなことだろう」と探してあるく女の子。雪の下にみつけたのは、黄色い福寿草の花。そう、この絵本はマーク・シーモンとの『はなをくんくん』にも似ています。神沢利子さんのリズムカルでやさしいことばと、片山健さんの描く素朴な絵とがマッチして、春がきたという喜びが、じんわりと伝わってくる絵本です。初版は月刊誌「こどものとも」1993年3月号として出されました。春を待つ3月の初めに読んであげたい1冊です。
 
語り 「はるがきた」 2分半 
  『ふたりはともだち』アーノルド・ローベル/三木卓訳 文化出版局より
ふたりはともだち (ミセスこどもの本)
アーノルド・ローベル
文化出版局
1972-11-10
 
絵本として読み聞かせてあげても、朗読してあげてもよいおはなしですが、もし覚えられるなら素話として語ってあげるのもよいと思います。耳から聞くことで、がまくんの寝ぼけぶりや、かえるくんが一生懸命がまくんに春が来たことを伝えて、一緒に喜びを分かち合いたいという気持ちが、想像できて楽しいのではないかと思います。
短いお話なので、素話初心者にも覚えやすいと思います。
 
絵本 『さくら』長谷川摂子/矢間芳子 福音館書店 6分
さくら (かがくのとも絵本)
長谷川 摂子
福音館書店
2010-02-10
 
かがくとも絵本です。4月のプログラムに組み込んだこともある1冊です。さくらが咲いて散り、ふたたび春が巡ってくるまでの一年を、写実的な絵で描いた絵本です。春先にしか目を向けないさくらですが、一年をかけて美しい花をつけるのですね。丁寧に読んであげたい1冊です。
(K・J)

 

2015年(その1) ちょうちょ ちょうちょ(小さい子)


月のおはなし会✩おすすめプラン(その1)は、小さい子どものためのプログラムです。

 
わらべうた「ずっくぼんじょ」のところでは、「つくし」のことであることを説明し、写真絵本やつくしの模型などで、春になると地面から顔を出してくるんだよと教えてあげてください。昔ほど、子どもたちにとって身近な存在でなくなった「つくし」ですが、東京都内でも皇居のお濠端や、多摩川、荒川などの河川敷、自然公園どでつくしが見つかるようです。
 
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【ちょうちょ ちょうちょ】 小さい子向け
 
導入 わらべうた 「ずっくぼんじょ」
 ずっくぼんじょ ずくぼんじょ
 ずっきんかぶって ででこらさい
『にほんのわらべうた①うめとさくら』福音館書店より
にほんのわらべうた〈1〉うめとさくら
近藤 信子
福音館書店
2001-04-10


 

絵本 『ちょうちょ はやくこないかな』 甲斐信枝 福音館書店 2分
ちょうちょ はやく こないかな (幼児絵本シリーズ)
甲斐 信枝
福音館書店
1997-01-20
 
小さなおおいぬふぐりの花が、蝶を待っています。その気持ちに子どもたちも同化していき、やっと止まってくれた時には、表情もホッとなごみます。

 
絵本 『二ひきのこぐま』 イーラ 松岡享子/訳 こぐま社 7分
二ひきのこぐま
イーラ
こぐま社
1990-11
 
 
冬眠から目覚めたこぐまが好奇心にかられて遊びに出かけ、迷子になってしまいます。モノクロの写真絵本ですが、愛らしいこぐまの姿に目が離せなくなります。まるで人間の子どもたちを見ているかのようです。
 
唱歌 「ちょうちょ」ドイツ民謡 野村秋足/詩
 ちょうちょ ちょうちょ なのはにとまれ
 なのはにあいたら さくらにとまれ
 さくらのはなの はなからはなへ
 とまれや あそべや とまれや あそべ
 
絵本 『ちょうちょうひらひら』 まどみちお/西巻茅子 こぐま社 1分
ちょうちょうひらひら
まど みちお
こぐま社
2008-02
 
毎年、この絵本をセレクトしていますが、やはり小さい子どもたちに春の訪れの喜びを伝えるのにはぴったりの1冊です。まどみちおさんの子どもたちへの温かい眼差しを感じます。(K・J)
 
 
*ヴィアックス社員向けeラーニングサイトでわらべうたの実演を見ることができます* 

 

3月のおはなし会✩おすすめ本リスト


3月のおはなし会で使えるおすすめ本のリストを更新しました。

毎年、年明けに水温む早春の光を想像しながら3月の本の選定をしていると、厳しい寒さも乗り越えられるという決意にも似た気持ちになります。

 
実際の厳しい寒さはこれからが本番ですが、この寒さが春の美しい花の色や鮮やかな緑を準備しているんだと思って、私たちも元気に乗り越えて行きましょう。
 
 
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