Yearly Archives: 2016

どうぞよいお年をお迎えください
基本図書を読む33『シートン動物記3 カランポーのオオカミ王 ロボ』 アーネスト・T・シートン
2016年(その2)冬の一日
2017年2月(その1)くっついて、くっついて
「基本図書から学ぶ第4回」報告
2016年10月、11月の新刊から(その2)
日本図書館協会『選定図書総目録』について
限定増刷! 赤羽末吉の絵本2冊
2月のおはなし会✩おすすめ本リスト(2/8更新)
「第4回児童部会(2016.11.18)」
全国学校図書館協議会 『学校図書館』『学校図書館速報版』について
2016年10月、11月の新刊から(その1)
『明日の平和をさがす本300』ブックガイドをぜひ座右に
基本図書を読む32『ニルスのふしぎな旅』セルマ・ラーゲルレーヴ
2017年1月(その2)雪のふる日に(幼児~小学生)

どうぞよいお年をお迎えください


2016年もあと残すところ4日になりました。

ヴィアックスの受託する図書館では、今日で仕事納めの館もあれば、31日まで開館している図書館もあります。年末ぎりぎりまでお仕事をしてくださっている館のスタッフの皆さま、ありがとうございます。

この一年も国の内外でさまざまなことがありました。世界にはシリアをはじめとして多くの国や地域が戦火の中にあります。また各地でテロ事件もたくさん起きました。国内では、クリスマスを前に新潟県糸魚川市で起きた火災には心を痛めました。

そんな社会の状況の中、日本時間12月28日朝に行われた真珠湾慰霊訪問での安倍首脳の所感表明は、エイブラハム・リンカーンの「誰に対しても、悪意を抱かず、慈悲の心で向き合う」、「永続する平和を、われわれすべてのあいだに打ち立て、大切に守る任務を、やりとげる」という言葉を引用していて、ハッとさせられました。今、この言葉は誰もが噛みしめるべきだと感じます。不安が満ちる時代だからこそ、悪意を抱かず、平和を求める姿勢は、とても大切だと思います。(今年9月の「基本図書を読む㉚は、リンカーンの伝記について扱いました。担当T・I→こちら

 
そのためには、子どもたちに読書の楽しみを伝えていくことが重要になります。「本を読むこと」を通して、子どもたちは自分が思考の中心にいる自己中心性から、他者の存在に気付き、他の人の立場や考えをまるで自分が感じるかのごとく「想像」する力を養っていきます。「読書」を通して、社会性が育ち、成長していくのです。
 
私たちが図書館の児童サービスに関わる意味も、またここにあります。「本を手渡す」ことを通して、私たちの未来である子どもたちを育てているのだと・・・だからこそ、私たちも襟を正して、これからも真剣に「本を手渡すこと」を考えていきたいと思っています。

研修で、児童部会で、そして「本のこまど」を通して、みなさまと学びあえたこの一年を感謝しつつ、今年最後の更新を終えたいと思います。

みなさま、この一年も大変お世話になりありがとうございました。
来る年が、みなさまにとって素晴しい年となりますように、お祈りしています。
 
2016年12月28日  ヴィアックス 図書館事業本部 運営支援部 テクニカルサポート室 
児童担当 K・J  T・ITU700898pm00

 

基本図書を読む33『シートン動物記3 カランポーのオオカミ王 ロボ』 アーネスト・T・シートン


 今月の基本図書として取り上げるのは、『シートン動物記3 カランポーのオオカミ王 ロボ』(アーネスト・T・シートン作・絵 今泉吉晴訳 福音館書店 2003)です。作家、画家でもあり、環境に関する運動にも取り組んだナチュラリスト(自然が好きで、自然とともに生き、たえず自然に目をむけて、自然について深い学識をもつ人)だったシートンが描いた動物物語の中でも有名な作品です。

ロボ―カランポーのオオカミ王 (シートン動物記 3)
アーネスト・T.シートン
福音館書店
2003-06-20

 

 

 著者のシートンは、イギリス生まれですが、5歳のとき家族と一緒にカナダの開拓農場に移住し、大自然とそこに生きる野生動物たちに親しみました。その後、画家になるためにロンドンで絵の勉強をしますが、野生動物と共に生きながら研究したいという気持ちが大きくなり、トロントに戻り、ナチュラリストとして生きる道を探り始めます。そんなシートンが「ナチュラリスト、作家、そして画家としての仕事をひとつにひっくるめた自立した人生」を確固たるものとした作品がオオカミ王ロボの物語です。この作品は、シートンが経験した事実をもとに描かれています。

 今から120年程前、アメリカのニューメキシコ、カランポーという砂漠のような高原地帯が広がっている土地に、「オオカミ王」と呼ばれたロボというオオカミがいました。普通のオオカミよりも圧倒的に体が大きく、優れた知性をもったロボは、4頭のオオカミを引き連れ、カランポーの牧場のウシに大きな被害をもたらしていました。ついにはロボの首には、当時豪邸が買えるくらいの大金1000ドルという懸賞金がかけられますが、挑戦者はことごとく打ち負かされ、依然ロボの群れは自由なふるまいを続けていました。そこで動物の生態に詳しいシートンに声がかかるのです。シートンは、どんな動物でも生きていく権利があると考えるナチュラリストでしたので、この仕事を引き受けることに迷いはありましたが、その迷いを抱えながらも、ロボの存在にひかれ、真剣に勝負を挑みます。

 シートンは、人間の匂いがつかないように、ウシの血にひたした手袋をはめ、骨でつくったナイフを使って巧妙に罠をしかけたり、H型の罠を作ったりなど、あらゆる知恵を絞ってつかまえようとしますが、ロボは見事に見破ります。そんなロボをシートンは観察し続け、やがて一頭、ロボの前を走ったりして群れをみだすものがいることに気がつきます。ロボの連れ合いと言われていた白く美しいオオカミ、ブランカでした。シートンはまずこのブランカを捕まえることに成功し、動揺して適切な判断ができなくなったロボを捕えるのです。

 動物を愛しながらしとめる立場となったシートンですが、ロボと真剣に向き合う姿勢から、シートンがいかにロボに敬意を抱き、共感していたのか伝わってきます。人間は動物を圧倒する力を持っているように見えるけれども、人間と動物は同じ生きものとして共に生きていく権利を持っているのだというシートンの姿勢は貫かれています。訳者あとがきには、「シートンがいなければ、このように野生動物にやさしくなれる自分に、気づくことはなかった。作者(シートン)が動物たちのくらしを、わたしたちが深く考えられるように、描きだしてくれたことに感謝したい。」(P89)という読者の感想が紹介されています。動物への深い理解と愛を持ったシートンが描いた物語は、動物もくらしを持ち、感情を持ち、その生をまっとうしようとしているのだということを、私たちに伝えてくれます。

 この本にはシートン自身が描いた絵やカットが豊富におさめられています。画家をめざし、どうすれば野生動物の美しさを描くことができるのか考えていたシートンの描いたロボは、荒々しく躍動感があります。以前絵のワークショップで、シートンの絵を一生懸命に写している男の子がいました。緻密に愛情を持って書かれた絵は、思わず描いてみたくなるほど力があるのだと改めて思いました。

 訳者の今泉吉晴氏も動物学者で、シートンに深く共感し、自然の中で動物を観察してきたナチュラリストです。動物への理解とシートンへの共感をもって、美しい文章で訳しています。今回は福音館書店で出版されたものを紹介しましたが、同じ訳者で、童心社からも出版されています。

オオカミ王ロボ (シートン動物記)
Ernest Thompson Seton
童心社
2010-02-01

 

 

 こちらの訳は福音館書店版よりも簡潔な文章になっています。また巻末に「Q&A」があり、シートンについてや当時の社会状況、動物の習性などがわかりやすく解説されています。文学的なものが好きな子には福音館書店版を、動物に興味がある子には童心社版をといった具合に、子どもによっておすすめする本を変えてもよいかと思います。シートンの作品は、物語のあらすじを中心に書いた抄訳版も多数出版されていますが、シートンの動物に対する真摯な姿勢を知るには完訳版がよいでしょう。

  またシートンの伝記として、今泉氏が執筆した『子どもに愛されたナチュラリスト シートン』(今泉吉晴著 福音館書店 2002)があります。

シートン―子どもに愛されたナチュラリスト (福音館の単行本)
今泉 吉晴
福音館書店
2002-07-20

 

 

  この伝記は、今泉氏がシートンのすばらしさを伝えたいという思いから、シートンの生涯をシートンの作品や豊富な資料をもとに丁寧に描き出しています。ナチュラリストとして生きていく道を確立するまでに苦労があったこと、またアメリカの先住民の考え方・生き方に共感していたこと、ウッドクラフト運動など社会運動にも積極的だったことなど、シートンの人生を知ることができると同時に、どのような出会いをもってシートンの思想が作り上げられていったのかを知ることができます。この本の中で、今泉氏はシートンの動物物語について次のように書いています。

「シートンの動物物語は、動物の世界のほんらいの楽しさと、人間に圧迫される、きびしく、悲惨なくらしの現実をつつみかくさず伝えていました。しかも、そのきびしい現実のなかに、人間らしい新しい意味を見いだし、未来に夢をもとうというメッセージがこめられていました。自然をふみにじり対立するのではなく、自然と親しみ、先住民の知恵と文から学び、自分たちのくらしを簡素に豊かにしようと、うったえる作品でした。」(P229) 

 シートンの伝えてくれたメッセージは、21世紀を生きる私たちにも響きます。ぜひ次の世代にも継いでいきたい作品です。

 (作成 T.I)

2016年(その2)冬の一日


2月は寒さが一番厳しい時期ではありますが、春に向けて日照時間も日ごとに長くなり、冬に向かう時期とはまた違う印象があります。そんな寒い冬の日を楽しむ視点も子どもたちとの生活には必要ですね。そんな気持ちでプランを立ててみました。

******************

【冬の一日】

導入 詩「あるきなさいよ 雪だるま」佐藤義美 『ともだちシンフォニー―佐藤義美童謡集』(JULA出版局 1990)より 2分
あるきなさいよ 雪だるま、
ここは もうすぐ 雪がやむ
お日さんがてる キラキラキラ
くずれて とけて ながれるよ。

あるきなさいよ 雪だるま、
山は いつでも 雪がふる
むらさきの雪 コンコンコン
とけずに たって いられるよ。
  (中略)
あるきなさいよ 雪だるま、
ここは もうすぐ 雪がやむ 
手と足だして テクテクテク
あるいていけば いいのにね。

雪だるまを作っても、陽射しがあると溶けていく・・・それが悲しくて「日陰に歩いていけばいいのにな」「山の中から溶けないよ」と思うのは、空想の世界に身を置くちいさな子どもたちにとっては自然なこと。そんな思いがこの詩には溢れています。

 

絵本『だるまちゃんとうさぎちゃん』かこさとし/作 福音館書店 1977 6分半

雪の中、雪だるまを作ってあそぶだるまちゃん。雪だるまの目をりんごで作ろうとしたのに、りんごはころころ転がり落ちていきました。それを拾ってくれたうさぎちゃんと一緒に遊びます。「たんげさぜん」や「ざとういち」という今の子どもたちには耳慣れない言葉も出ますが、きちんと中で説明されていて安心です。てぶくろ人形や新聞紙で折るうさぎの帽子など、本文中で出てくるものは、予め作っておいて読みながら見せてあげるとよいでしょう。

 

素話「だめといわれてひっこむな」(アルフ・プロイセン/作 瀬田貞二/訳)『だめといわれてひっこむな』(東京子ども図書館/編 東京子ども図書館 2001) 6分

 

おばあさんが暖炉の前で毛糸を紡いでいると子ネズミが顔をだして「なにをつくるの」の聞いてきます。おばあさんがそれに答えると、一旦はひっこむのですが、次々に質問が・・・繰り返しのやりとりがとても面白いおはなしです。かわいい子ネズミの懸命さが伝わるように語ってあげましょう。

 

絵本『しもばしら』野坂勇作/作 福音館書店 2004 5分

霜柱がどのようにして出来るのか、孫とおばあちゃんとのやり取りを通して教えてくれる科学絵本です。読み物としても面白いです。後半に霜柱を作る実験が載っています。冷凍庫が必要なので、図書館で実際に作ってみるのは難しいかもしれませんが、自宅でやってみたいと思うお子さんのために、複本があれば用意しておきましょう。

(作成K・J)
 

2017年2月(その1)くっついて、くっついて


子どもたちが幼かった頃、冬はおんぶをして出かけると、背負われている子はもちろんですが、親の私の方も背中がぬくぬくと温かかった思い出があります。寒い冬、親と子でからだとからだを寄せて、乗り越えたいですね。2月の小さい子向けおはなし会のテーマは【くっついて、くっついて】です。

 

*****************

導入  わらべうたメドレー(おおさむこさむ → おしくらまんじゅう → こどもかぜのこ) 

 最初に、わらべうたメドレーで体をほぐしていきましょう。12月の小さい子向けプランと同じわらべうたです。
何度も何度も歌うことでわらべうたを覚えていくので、くりかえしやってみましょう。
 (遊び方は、社員の方はeラーニングサイトで見ることができます)
おおさむこさむ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おしくらまんじゅう
 
 
 
 
 
 
 
 
こどもかぜのこ
 
 
 
 
 
  
 
 絵本『おおさむこさむ』松谷みよ子/文 遠藤てるよ/絵 偕成社 1979  2分
 

節をつけて読んであげましょう。ゆっくりとした節回しで読んでちょうど2分です。 

 

 

『おーくんおんぶ』片山健/作 福音館書店 2007 1分

おーくん おんぶ (0.1.2えほん)
片山 健
福音館書店
2007-03-15

 「おーくん、おんぶ」とお母さんがおんぶしようとすると、そうではないというぐずるおーくん。おーくんは自分でぬいぐるみたちをおんぶしたいのでした。1歳の後半から2歳頃の自我が芽生えてくる頃の子どもの姿をうまくとらえている絵本です。でも、そんな講釈はおいておいて、楽しみましょう。おんぶしてもらうって、安心なんですよね。 

 

わらべうた このこどこのこ

このこどこのこ

おひざにのせて、大人の方が左右にからだを軽く揺らしながら歌います。

 

 

 

 

 

ぼうずぼうず

ぼうずぼうず

最後の「ペション!」までは、ゆっくりと頭をなでなでします。「ペション!」で頭を叩く真似。本当には叩かないでくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

うまはとしとし

うまはとしとし

弱起で始まる歌い出しです。こどもを膝の上にのせて、上下に動かしながら歌います。「ぱっかぱっか」のところで大きく上下させましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おとなのおひざに乗って遊ぶ遊びを3つ、続けてやってみます。
ひとつひとつのあそびを2,3度繰り返してやりましょう。

 

絵本『くっついた』三浦太郎/作 こぐま社 2005 1分

くっついた
三浦 太郎
こぐま社
2005-08

 これまでも小さい子向けおはなし会プランに何度も登場した絵本です。絵本の裏見返しに作者の三浦さんが「“くっついた”は幸せのはじまり」と記しています。親と子が、「くっついた」といって頬を寄せ合う。そんな幸せな時間が一番温かいですね。

 

絵本『おやすみくまさん』平山英三/作 福音館書店 1分半

ひらやま えいぞう
福音館書店
1985-03

いまごろ山奥でくまさんは冬眠しているころ・・・こんなふうにかあさんくまが、こどものくまをしっかり抱いて、くっついて、きっとこぐまはあったかいだろうなぁ・・・という気持ちをこめて、読んであげましょう。ただし、この絵本は絶版になっており、所蔵している図書館も少なくなっています。所蔵している館は大切に保存しておいて欲しいなと思います。所蔵してない場合は、4冊目はなくてもよいでしょう。
 

(作成K・J)

「基本図書から学ぶ第4回」報告


平成28年11月18日に開催された児童部会で、「第4回 基本図書から学ぶ」を行いました。 

今年度は、①基本図書についての知識を深め本を評価する基準をもつ、②本の特徴や特質をとらえ紹介文を書く、という2つの目標を掲げて取り組んでいます。IMGP5754

 今回は、昔話をテーマに、『イギリスとアイルランドの昔話』(J・D・バトン絵 石井桃子編集・翻訳 福音館書店 1981)、『白いりゅうと黒いりゅう-中国のたのしいお話』(賈芝、孫剣冰編 君島久子訳 赤羽末吉さし絵 岩波書店 1964)、『子どもに語る日本の昔話①』(稲田和子再話 筒井悦子再話 こぐま社 1995)の3冊を検討しました。

 詳細は、以下の報告書をご覧ください。

第4回「基本図書から学ぶ」報告書

 

  (作成 I.T)

 

2016年10月、11月の新刊から(その2)


 

10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、クリスマスの本と、その他の本をいくつかを紹介します。(9月に出版された本も含む)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

クリスマスの新刊絵本

『きょうはクリスマス』小西英子/絵と文 至光社 2016/10

 クリスマスといえば「サンタクロース」が来る日というのが、宗教色のない行事としてのクリスマスのイメージでしょうか。イエス・キリストの降誕祭であるという意識は、多くの人にないのかもしれません。この絵本は、サンタクロースを追いかけて出かけた男の子は、それがお菓子屋さんの売り子だと知り、お手伝いをします。それから、教会の降誕劇に加わってクリスマスの意味を知ります。この降誕劇は、キリストの誕生のいきさつを劇にしたものです。教会学校やキリスト教の幼稚園などでクリスマスの時期に行われています。クリスマスは「イエス・キリストの誕生を祝う日」だと、知るきっかけになるといいですね。 


『そらとぶそりとねこのタビー』C・ロジャー・メイダー/作・絵 齋藤絵里子/訳 徳間書店 2016/10/13 

そらとぶ そりと ねこのタビー (児童書)
C.ロジャー メイダー
徳間書店
2016-10-13

ねこって袋や箱があると本能的に潜り込むもの。ねこのタビーはクリスマスイブにやってきたサンタのおじいさんのふわふわの靴下に惹かれて近づき、贈り物の入っていた袋の中に潜り込んでしまいます。おじいさんは気がつかないまま戻っていってしまいます。そんなわけでもう一度サンタのおじいさんが訪れることになるのです。絵本作家としては3冊目になるこの作品は、『まいごになったねこのタビー』の姉妹編。その他に灰島かりさん翻訳の『てっぺんねこ』(ほるぷ出版 2015)があります。 

 

『もみの木のねがい』エステル・ブライヤー/ジャニィ・ニコル/再話 おびかゆうこ/訳 こみねゆら/絵 福音館書店 2016/10/15

 南アフリカでシュタイナー教育に携わってきた母娘が、操り人形劇の脚本から絵本のために再話したおはなしです。もみの木は、自分のチクチクした葉が気に入らず、妖精に頼んでやわらかい葉に変えてもらいます。ところがヤギに食べられて裸木になってしまいます。その次に銀の葉、金の葉に変えてもらうのですが、やはり葉はすべてなくなってしまいます。元の葉っぱに戻ったとき、子どもたちが喜ぶクリスマスツリーになり、もみの木自身も幸せを感じるのでした。こみねゆらさんの絵が、優しく物語を語ります。

 

 『どうぶつたちのクリスマスツリー』ジャン・ウォール/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2016/10/27

どうぶつたちのクリスマスツリー
ジャン ウォール
好学社
2016-10-18

森の中で動物たちがもみの木にクリスマスの飾りをつけています。猛獣も小さな動物もいっしょに手伝います。クリスマスの本当の意味は、イエス・キリストが人々の和解のためにこの世に現れたというところにあります。普段、敵対する者同士も、神の前に同じ創造されたものとして平等であり、互いに尊重しあうことが大切だ、というのがクリスマスにこめられたメッセージです。この絵本は、それを美しく具現化しているのだと感じました。ワイスガードの繊細で色彩豊かな絵にも注目です。

 

絵本

『カイとカイサのぼうけん』エルサ・ベスコフ/作・絵 まつむらゆうこ/訳 福音館書店 2016/11/10

カイとカイサのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ)
エルサ・ベスコフ
福音館書店
2016-11-09
 
 エルサ・ベスコフ(1874~1953)はスウェーデンを代表する絵本作家です。『ペレのあたらしいふく』(小野寺百合子/訳 福音館書店 1976)や、『ちいさなちいさなおばあちゃん』(石井登志子/訳 偕成社 2001)などの代表作があります。この絵本は1923年に出版されましたが、これまで日本に紹介されていなかった作品です。森の中にカイとカイサという二人の兄妹が住んでいました。ふたりは家のそばに倒れている枯れ木でいつも遊んでいました。ある日、トムテの魔法で枯れ木がドラゴンになってしまいます。そこからふたりの冒険が始まります。ほかにもトロルの王さまが出てきたりと北欧の正統派ファンタジーになっています。
 
 
児童書

 

『ニット帽の天使―プロイスラーのクリスマス物語』オトフリート・プロイスラー/作 ヘルベルト・ホルツィング/絵 吉田孝夫/訳 さ・え・ら書房 2016/9

ニット帽の天使―プロイスラーのクリスマス物語
オトフリート プロイスラー
さえら書房
2016-09
 
大どろぼうホッツェンプロッツ』(中村浩三/訳 偕成社 1966)や『クラバート』 (中村浩三/訳  偕成社 1980)などの代表作があるプロイスラーのクリスマスの聖家族(幼子イエスとその両親)にまつわる7つの物語が入っている短編集です。舞台はキリスト教、なかでもカトリックの伝統宗教の根付くボヘミアです。ちょっとふしぎな7つの物語を通して、キリスト教の大切な行事であるクリスマスの意味を改めて知る機会にもなることでしょう。小学校3,4年生くらいからがおすすめ。
 
 

『ミスターオレンジ』トゥルース・マティ/作 野坂悦子/訳 平澤朋子/絵 朔北社 2016/9/30 

ミスターオレンジ
トゥルース マティ
朔北社
2016-10
 
舞台は第二次大戦中のニューヨーク。ライナス少年は6人兄弟の3番目。長兄のアプケが志願兵として出征することを誇りに思いますが、母親はそれを喜ぶことができません。ライナスは家業の八百屋を手伝う中で、画家であるミスターオレンジに出会い、想像力の大切さと、戦争の現実に気がついていきます。多感な少年の成長を描いた作品として評価され、2014年に全米図書館協会のバチェルダー賞を授賞しました。ミスターオレンジは、オランダ生まれの画家ピエト・モンドリアン(1872~1944)というオランダを代表する抽象画家で、第二次大戦中、ヨーロッパを離れてニューヨークで晩年を過ごします。この作品は2011年にオランダ・ハーグ市立美術館で開催されるモンドリアン展に合わせて執筆依頼されたとのこと。表紙絵にはモンドリアンの遺作となった「ヴィクトリー・ブギウギ」がデザインがされています。

 

『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子/作 新潮社 2016/9/20

明るい夜に出かけて
佐藤 多佳子
新潮社
2016-09-21
 
 大学を1年休学し、両親と住む家を出て、コンビニでバイトする男子大学生の俺こと、富山。実は彼は「ジャンピング・ビーン」と「トーキング・マン」という名前(ラジオネーム)も持っているのです。そしてtwitter、ニコ生、ツイキャス、アメーバピグという現代のコミュニケーションツールや、そして実在する深夜放送「オールナイトニッポン」が登場します。そうしたSNSや深夜放送への投稿を通して緩やかにつながっていく人間模様を軽やかに描いたYA向けの作品。この作品について作者の佐藤多佳子さんご自身のブログ記事も興味深いです。→こちらこちら
 
 
 
『 ココの詩』高楼方子/作 千葉史子/絵 福音館書店 2016/10/10 

ココの詩 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2016-10-05
 
1987年にリブリオ出版から出ていた 高楼方子さんのデビュー作『ココの詩』と、同じくリブリオ出版から出ていた児童文学作品『時計坂の家』、『十一月の扉』がこの10月に福音館書店に版権を移して出版されました。『ココの詩』は、高楼さんがフィレンツェに1年4ヶ月滞在していた時に、まるで物語が降ってくるように紡いだという作品です。金色の鍵を拾い上げたことで、小さな女の子になって自由に動くことができるようになった人形のココの、ふしぎな物語です。挿絵は高楼方子の実妹の千葉史子です。
 
 
 『時計坂の家』高楼方子/作 千葉史子/絵 福音館書店 2016/10/10

時計坂の家 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2016-10-05
 
1992年にリブリオ出版から出版された作品です。夏休みにいとこのマリカに誘われて、汀舘にある祖父の家に行くことになった小6のフー子。時計塔のある坂道の途中にある古い屋敷には、不思議が満ちています。踊り場にある窓は別の世界につながっていて・・・行方不明になったという祖母の秘密に迫っていくフー子たち。少しミステリアスで幻想的な長編ファンタジーです。 こちらの作品の挿絵も千葉史子です。
 
 
『十一月の扉』高楼方子/作 福音館書店 2016/10/10

十一月の扉 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2016-10-05
 
 中学二年生の秋に父親の転勤が決まった爽子。二学期の終わりまでは転校したくないと、偶然みつけた「十一月荘」に下宿させてほしいと申し出ます。ここは今で言うシェアハウスのようなところで大家の閑さん、小学生のるみちゃんと馥子さん母娘、建築家の苑子さんとの生活が始まります。その生活の中で爽子は「ドードー森の物語」を紡ぎ始めます。登場人物と物語の世界がオーバーラップしていく構成は、ぐいぐいと引き込んでいきます。こちらは表紙絵は千葉史子ですが、中の挿絵は高楼方子ご自身のものです。
 
 
 『クマのプー 世界一のクマのお話』A.A.ミルン原案 森絵都/訳 KADOKAWA 2016/10/31

クマのプー 世界一のクマのお話
ポール・ブライト
KADOKAWA
2016-11-02
 
A・A・ミルンの 『クマのプーさん』(石井桃子/訳 岩波少年文庫)が生まれて90年を記念して、その公式続編を4人の児童文学者が書き下ろした作品です。それぞれの作家が子ども時代に愛読し、あるいは研究をしてきました。そうして生まれた秋、冬、春、夏の4つの物語。どれもミルンが乗り移って書かせたような、懐かしい『クマのプーさん』の世界が広がっています。翻訳はやはりプーさんを愛してきた森絵都さんです。
 
 
 
研究書 
 
『児童文学論』リリアン・スミス/作 石井桃子、瀬田貞二、渡辺茂男/訳 岩波現代文庫 岩波書店
 
児童文学論 (岩波現代文庫)
リリアン・H.スミス
岩波書店
2016-10-19
 
 子どもの本に関わるすべての人にとってバイブルであり続けるリリアン・スミスの『児童文学論』(1964年)が文庫版になりました。箱入りの重々しい装丁から手軽に読める形にかわって、より多くの人の手に渡ることを嬉しく思います。石井桃子、瀬田貞二、渡辺茂男という戦後の子どもの本の歴史を創って来た方々に大きな影響を与え、そうやって作られた優れた子どもの本に私たちは育てられてきました。リリアン・スミスがこの本を著したのは1953年のこと。もう古びているように言う人もいますが、この60年の間に環境は大きく変化したものの子どもの成長の姿は時代が変化しても普遍的であり、子どもと本の基本的な関係は変わらないのです。今、読み返しても新たな発見があります。もちろん、私たちは時代の変化に合わせた子どもへのサービスを考えていかなければいけませんが、なにか迷った時に立ち返る拠り所として、この本を座右の書としてほしいと思います。
 
 
『アメリカの絵本―黄金期を築いた作家たち』(連続講座〈絵本の愉しみ〉1 吉田新一/著 朝倉書店 2016/11/25
 
アメリカの絵本 ―黄金期を築いた作家たち― (連続講座〈絵本の愉しみ〉 1)
吉田 新一
朝倉書店
2016-11-25
 
 立教大学、日本女子大学でイギリス児童文学について教えてこられた吉田新一先生がまとめられた連続講座〈絵本の愉しみ〉の第一巻です。19世紀末から始まり、1930年代~50年代にかけての開花期、50年代以降の黄金期にわけて、アメリカの絵本の歴史をひも解くテキストです。特に黄金期以降のマリー・ホール・エッツ、マーガレット・ワイズブラウン、エズラ・ジャック・キーツ、バーバラ・クーニー、マーシャ・ブラウン、そしてモーリス・センダックについて詳細に解説しながら、それらの作家の作品の魅力に肉迫するあたり、とても読み応えがあります。子どもの本の黎明期にいかに図書館の児童サービスが大きな役割を果たしたかについての記述も、私たちにとっては励みになるものでした。 
 
 
その他
 
『おいで子どもたち―初めて陪餐する子どもたちへ』斎藤惇夫/文 田中雅之/写真 日本聖公会 2016/10/31
斎藤 惇夫
日本聖公会
2016-10-31
『ガンバの冒険』などの著作がある斎藤惇夫さんが、キリスト教の洗礼を受けた子どもたちに向けた詩を書かれたものが1冊の本になりました。書影は→こちら。陪餐とはキリストの最後の晩餐に倣って、パンとぶどう酒を礼拝の中でいただく儀式です。キリスト教徒(クリスチャン)は日本の人口の1%と少数派ですが、その子どもたちだけのものにしておくにはもったいないので、ここで紹介させていただきます。クリスマスは、イエス・キリストの誕生を祝う日。キリスト教が子どもを大切にすることの意味がすっと理解できることと思います。
 
 
『未来のだるまちゃんへ』かこさとし/作 文春文庫 文藝春秋 2016/12

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)
かこ さとし
文藝春秋
2016-12-01

2014年に文藝春秋からハードカバーで出版された絵本作家かこさとしさんの自伝が、文庫版になりました。表紙の絵もハードカバーの緑色の背景に大勢の絵本の登場人物に囲まれているかこさんの絵から、白地にだるまちゃんがすくっと立っているものに変わりました。また、文庫版のあとがきと、中川李枝子さんによる解説が付け加えられています。昭和20年(1945年)の敗戦が、かこさんの生き方を変え、子どもたちと寄り添う絵本作家としての歩みのスタートになったこと、戦後のセツルメント活動(詳しくは→こちら)で出会った子どもたちとの日々、絵本の創作についてなど絵本作家かこさとしの魅力が余すことなく記された1冊です。ロングセラー絵本『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店 1967)は来年出版50周年。なぜ、かこさんの絵本が子どもたちの心を捉えるか納得です。

 (作成K・J) 

日本図書館協会『選定図書総目録』について


日本図書館協会発行の『選定図書目録2016年版』(CD-ROM)を図書館事業本部で購入しました。

日本図書館協会では、1949年から2015年度(2016年3月)まで、公共図書館・学校図書館・公民館図書室などの読書施設に図書情報を提供することを目的として、図書選定事業を実施していました。

日本図書館協会「図書の選定事業について」〈http://www.jla.or.jp/activities/sentei/tabid/207/Default.aspx

 

『選定図書目録 2016年版』には、2011年から2016年3月までの5年3か月分の選定図書47,459点(うち2015~2016年分は12,521点)と1996年から2010年の15年間に選定した児童図書12,298点、合わせて59,757点が収録されています。書名、著者名、出版社、件名、ISBN、NDC新訂8版・9版、読者対象で検索可能で、簡単な内容の解説もついています。蔵書の見直しの際に補強したい分野の図書を検索するときなど、様々な場面で活用することができます。ご覧になりたい方は、テクニカルサポート室までご相談ください。

illust3345_thumb

(作成 T.I)

限定増刷! 赤羽末吉の絵本2冊


ちひろ美術館・東京で2016年11月9日(水)から2017年1月15日(日)まで開催中の赤羽末吉・中国とモンゴルの大地」展に合わせて、長く品切れになっていた絵本2冊がこの度限定増刷されました。

君島久子さんが中国の少数部族に伝わる昔話を再話して翻訳し、それに赤羽末吉が中国国内を取材して絵を描いた美しい絵本です。この時期にしか手に入らない絵本です。所蔵していない図書館では、購入のチャンスです。また所蔵していても、出版から月日がたち、経年劣化しているのであれば、この機会に買い換えて、また子どもたちに手渡してあげて欲しいと思います。

 

『チワンのにしき―中国民話』(おはなし創作絵本21)君島久子/文 赤羽末吉/絵 ポプラ社 1977年7月第1刷 2016年11月第13刷

理想郷を錦に織り込んだおばばでしたが、織り上がったと同時に風に飛ばされて仙女のもとへ。錦を取り戻しに2人の息子たちが出かけて行きますが、それぞれ諦めてしまいます。末の息子はさまざまな困難を乗り越えて、錦を取り戻すと・・・中国の南方、ベトナムの国境付近に住むチワン族に伝わる昔話です。流れるような大胆かつ繊細な赤羽さんの絵がとても美しい1冊です。

 

『あかりの花―中国苗族民話』肖甘牛/採話 君島久子/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 1985年1月30日発行 2016年12月1日第9刷

段々畑で懸命に働くトーリンはある日ユリの花をみつけ楽しみに出かけていくようになりました。ある日、ユリの花が倒されているのを見て持ち帰り、石うすに上で育てます。十五夜の晩、トーリンのもとに美しい娘が現れます。娘と一緒に暮らし始めたトーリンは、暮らし向きが良くなると怠けるようになってしまいます。すると満月の夜金鶏鳥が現れ、娘をさらってしまうのです。このお話は、再び勤勉に仕事をするようになったトーリンのもとに娘が戻ってきるハッピーエンドです。赤羽さんは、「石うす」というものが実際にはどういうものなのか、物々交換をする市場がどのようなものだったのか、苗族の集落を訪れて取材を重ね、この絵を描いたとのことです。絵本の見返しから美しく趣向をこらしたこの作品をこれからの子どもたちにも手渡し続けて欲しいと思います。
 

(作成K・J)

2月のおはなし会✩おすすめ本リスト(2/8更新)


2月のおはなし会で使える本のリストを更新しました。PDFで作成していますので、そのままプリントアウトできます。

おはなし会だけでなく、特集展示や児童室だより、ブックトークなどの選書にもお役立てください。

2月のおはなし会✩おすすめ本リスト2016(2/8更新)

書誌事項に一部誤りがありましたので、訂正して2月8日にUPしなおしました。

col75

「第4回児童部会(2016.11.18)」


第4回児童部会も、「基本図書から学ぶ」と「情報共有の時間」の2部構成で行いました。

  「基本図書から学ぶ」の課題図書は、『イギリスとアイルランドの昔話』(石井桃子編・訳 ジョン・D・バトン画 福音館書店 1981)、『白いりゅう 黒いりゅう』(賈芝 著 孫剣冰編 君島久子訳 赤羽末吉絵 岩波書店 1964)、『子どもに語る 日本の昔話①』(稲田和子 筒井悦子著 こぐま社 1995)の3冊で、昔話を扱いました。詳細は、後日報告書を掲載いたしますのでご覧ください。

 「情報共有の時間」では、各図書館の取り組みの発表とお話会に関する情報を共有をしました。

お話会については、はじまりのうたやおわりのうた、評判のよかったわらべうたの紹介があり、皆で声を合わせて歌いました。IMGP5761

以下、発表された取組みです。(図書館名は取組みを実施した図書館です。)

・ 「あかちゃんおはなし会」(板橋区立蓮根図書館)

・ 「図書館員がお勧めする夏休みに読みたい本 2016年版」(北区立神谷図書館)

・ 「サンタをさがせ」(北区立神谷図書館)

・ 「おはなし会/親子おはなし会)」(所沢市立所沢図書館吾妻分館)

・「POP(紹介文)について」(入間市立図書館藤沢分館)

・「ヤギさんおはなしかい」(仙台市若林図書館)

(作成 T.I)

全国学校図書館協議会 『学校図書館』『学校図書館速報版』について


2016年11月より、全国学校図書館協議会発行の『学校図書館』と『学校図書館速報版』を図書館事業本部で購入しています。

ヴィアックス社員は、研修センターで見ることもできますし、貸出もいたしますので、ご覧になりたい方はテクニカルサポート室までご連絡ください。

公益学校図書館協議会(SLA)は、1950年に設立された団体で、各都道府県の学校図書館研究団体(各県SLA)と協力して、学校図書館の充実発展と青少年読書の振興を図るために様々な活動を行っています。その活動の一つとして、機関誌『学校図書館』、『学校図書館速報版』を刊行しています。

学校図書館 2016年 11月号 [雑誌]
全国学校図書館協議会
2016-11-05

 

 

 

『学校図書館』は、月1回の発行で、学校図書館の今日的な課題を特集形式で掲載しています。

2016年は「アクティブ・ラーニングと学校図書館」、「災害への対応と学校図書館」、「学校司書の配置と養成の現状」などの特集が組まれています。

(バックナンバーの情報はこちらをご覧ください→全国学校図書館協議会「機関誌バックナンバー」http://www.j-sla.or.jp/kikanshi/

特集の他にも、研究大会の報告、図書館の活用術や研究実践、学校図書館の紹介などがあります。

 

『学校図書館速報版』は、機関誌『学校図書館』の姉妹誌として、月2回発行されている速報版です。

SLAが毎月選定している学校図書館向き図書のリスト「全国SLA選定図書リスト」の掲載および選定図書の紹介、各種研修会の情報が取り上げています。

選定図書リストでは、書名・著者名・出版者名・出版年・ページ数・大きさ・ISBN・本体価格のほか、全国SLAで独自に付与した学校向け分類記号・件名・対象学年の程度を記載しています。、新規に購入する本を検討する際に参考にできます。

(選定図書リストの詳細こちらをご覧ください→全国学校図書館協議会「選定図書リストをご活用ください」http://www.j-sla.or.jp/kikanshi/sokuho/sentei-list.html

どちらも、学校図書館関係者としておさえておくべき情報や実務に活かすことができる情報が満載です。ぜひご活用ください!

(作成 I.T)

2016年10月、11月の新刊から(その1)


10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの絵本いくつかを紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。クリスマスの絵本と、YA向けの本は、(その2)で紹介します。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

絵本

『おばあちゃんとバスにのって』マット・ラ・ペーニャ/作 クリスチャン・ロビンソン/絵 石津ちひろ/訳 すずき出版 2016/9/27 
おばあちゃんと バスにのって
マット デ・ラ・ペーニャ
鈴木出版
2016-10-01
 
ジェイは毎週日曜日、教会で礼拝をすませた後に、おばあちゃんと出かけるところがあります。それはスープ・キッチンと呼ばれるボランティア食堂です。このおばあちゃん、どんなことに対しても「良いところ」をさがす名人のようです。雨降りも植物には必要、スラム街でも美しいものは見つけられる、どんな人にも素晴らしいところがあると、折々に伝えてくれるのです。ボランティア活動も援助するというのではなく、そこにいる人々と時間と場所を共有するためで、とても自然体です。この絵本は2016年度のニューベリー賞(*)、そしてコールデコット賞(*)オナー賞のダブル受賞作です。
(*)ニューベリー賞:1922年よりアメリカ児童図書館協会が授与する、アメリカ合衆国における最も優れた児童文学の著者に与えられる賞
(*)コールデコット賞:1938年より同じく児童図書館協会が授与する、アメリカ合衆国におえる最も優れた絵本に与えられる賞。オナー賞はその次点作品に与えられる 
 
『シャクルトンの大漂流』ウィリアム・グリル/作 千葉茂樹/訳 岩波書店 2016/10/14 
シャクルトンの大漂流
ウィリアム・グリル
岩波書店
2016-10-15
 
1914年にイギリス帝国南極横断探検隊の隊長アーネスト・シャクルトンは、南極大陸を横断しようと隊員26名とともにエンデュアランス号に乗って出航します。しかし、南極大陸の手前で船ごと流氷の中に閉じ込められ、その後船が難破する不運に見舞われます。厳しい自然の中で、隊員たちが協力しながら苦難を乗り越え1917年に帰還するまでの大冒険を描いた作品です。色鉛筆で描いた絵は、とても繊細でありながらダイナミックで素晴らしく、2015年度のケイト・グリーナウェイ賞(*)を受賞しています。しかも作者はこの作品がデビュー作という25歳の青年です。同じ題材を扱った読物には千葉茂樹訳の『エンデュアランス号大漂流』(エリザベス・コーディー キメル/作 あすなろ書房 2000)もあります。
(*)ケイト・グリーナウェイ賞:1956年に英国図書館協会によって設立されたイギリスの絵本作家ケイト・グリーナウェイ(1846~1901)の名を冠した賞で、その年イギリスで出版された絵本のうち、最も優れた作品の画家に贈られる賞
 
 
 『わたしのそばできいていて』リサ・パップ/作 菊田まりこ/訳 WAVE出版 2016/10/20
わたしのそばできいていて
リサ・パップ
WAVE出版
2016-09-27
 
 アメリカにはライブラリー・ドッグがいる図書館があるのをご存知でしたか?字を読むのに困難を抱える子どもたちを、ライブラリー・ドッグがサポートします。この絵本の主人公、マディは字を読むのが苦手です。特に学校でクラスのみんなの前で音読をすると、クラスメートに笑われるので余計に緊張してしまうのです。そんなマディがライブラリー・ドックのボニーに出会い、ボニー相手に本を読むうちに、少しずつ自信をもって読めるようになっていきます。苦手なことを克服するために、静かに見守ってくれるボニーのような存在はとても大切なんだと感じます。
 
 
『ふたりはバレリーナ』バーバラ・マクリントック/作 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2016/10/20 
ふたりはバレリーナ
バーバラ・マクリントック
ほるぷ出版
2016-10-25
 
ないしょのともだち』(ビバリー・ドノフリオ/文 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2010)などの作品があるバーバラ・マクリントックの最新作です。2016年10月6日~11月27日まで銀座・教文館ナルニア国で原画展が行われていました。最終日にマクリントックさんのトークショーも聞いてきました。バレエを習い始めた女の子エマと、プリマバレリーナのジュリアのある一日が並行して描かれています。エマがその日、大きな劇場で見たバレエ公演のプリマがジュリアなのです。公演後、二人が出会うシーンが印象的です。バレエを習っている子どもたちにぜひ手渡してあげたい素敵な絵本です。 
 
 
『はじめてのオーケストラ』佐渡裕/原作 はたこうしろう/絵 小学館 2016/11/1 
はじめてのオーケストラ
佐渡 裕
小学館
2016-10-27
 
 こちらの絵本は世界的な指揮者・佐渡裕氏が、小学生になって初めてコンサートに行き感動を味わった我が子の体験をもとに、多くの小学生にもコンサートに足を運んでほしいと願い、書いた作品です。さまざまな楽器が響き合い、美しいハーモーニーになる様子を、はたこうしろうさんの絵が余すことなく表現しています。主人公のみーちゃんが初めてコンサートホールに行ったのはクリスマスシーズンで、演目はベートーベンの交響曲第九です。ちょうどこれからの季節におすすめできますね。佐渡裕氏の公式サイトからは、小学館の特集ページにリンクされており、インタビュー動画も見ることができます。こちら→佐渡裕オフィシャルファンサイト→「はじめてのオーケストラ
 
 
『パンタロンとケーキやさん』キャサリン・ジャクソン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2016/11/1
パンタロンとケーキやさん
キャサリン ジャクソン
好学社
2016-11-02

 1949年にイギリスで出版されたA Little Golden Bookシリーズの中の1冊として出版され、その後1951年にアメリカでも出版された絵本が日本で初めて紹介されました。翻訳はこみやゆうさん。ケーキが大好きなプードルのパンタロンが主人公。ケーキ屋さんのお手伝いがしたいのですが、ケーキ屋のベーカーさんに断られてしまいます。そんなパンタロンはベーカーさんが怪我でお休みの間、大活躍します。『あめがふるとき ちょうちょうはどこへ』(メイ・ゲアリック/文 岡部うた子/訳 1974 金の星社)や、『ちいさな島』(ゴールデン・マクドナルド/文 谷川俊太郎/訳 童話館出版 1996)の絵を描いたレナード・ワイスガードのふんわりとした素朴な絵が楽しい1冊です。 

 

『しろくまのそだてかた』うつみのりこ/作 飛鳥新社 2016/11/7

しろくまのそだてかた
うつみのりこ
飛鳥新社
2016-11-03
 
この絵本は、「子育ては大変だけど、お母さんになったときの喜びを思い出してと、ママ、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんなど、子育てに関わるすべてのみなさんに読んで欲しいと願って、2005年に神戸でミニ絵本として誕生」したとのこと。私は10cm×14.5cmのミニ絵本をまず紹介してもらっていました。それが口コミで多くの読者に広がり、10年以上の月日を経て、この度書籍化されました。この絵本は、子どものためのというよりは、お母さんに向けてのメッセージ絵本です。子育てに疲れたママたちが、ホッとできる場所を図書館でも提供できるといいですね。 

 

『かぜ』イブ・スパング・オルセン/作 ひだにれいこ/訳 亜紀書房 2016/11/7 
かぜ
イブ・スパング・オルセン
亜紀書房
2016-10-25
 
 『つきのぼうや』(やまのうちきよこ/訳 福音館書店 1975)というデンマークのロングセラー絵本の作者、イブ・スパング・オルセンが、「風」について丁寧に描いた絵本です。絵本の形をとっていますが、文字が小さく字数が多いので、ちいさなお子さんはご家庭で読んでもらったり、小学低学年のお子さんは自分で読むのにちょうどよいでしょう。「風」といっても、そよ風もあれば、温かい南風もあり、暴風もある、そんな身近な風について姉と弟が会話しながら展開していく絵本です。
 

 (作成K・J) 

『明日の平和をさがす本300』ブックガイドをぜひ座右に


幼児から多感なYA世代を対象に、手渡したい「戦争と平和」について考えるための本のガイドとして、『明日の平和をさがす本300―戦争と平和を考える 絵本からYAまで』(宇野和美/さくまゆみこ/土居安子/西山利佳/野上暁/編著 岩崎書店 2016/11/30)が、出版されました。

本の帯に「公共図書館・学校図書館・図書ボランティア必携!」という文字が踊りますが、内容を見るとそれが大げさな表現でないことがよくわかります。編集委員の5人は、子どもの本の翻訳や編集に携わったり、児童文学を研究し子どもの本の評論をされている、信頼できるプロです。それに加えて、図書館や学校図書館の司書として、書店員として子どもたちに本を手渡す仕事をしている方々、SEALD’s選書「“今”を生き抜くための102冊」選書に携わった方、安保法案に反対するママの会事務局の方など、多彩な21名が執筆者として名前を連ね、今、子どもたちに何をどのように伝えるべきかを真摯に考察し、選書していったことがわかります。

明日の平和をさがす本 戦争と平和を考える絵本からYAまで300
宇野 和美
岩崎書店
2016-11-18
 
 (アマゾンでの配本は2016年11月18日になっていますが、本の奥付の出版年は2016年11月30日です)
 
このブックガイドの特筆すべき点は、掲載されている本が2000年~2016年9月までに出版されたものであること、幼児からYA世代まで年齢に応じて手渡せる本が網羅されていること、絵本、創作文学、そしてノンフィクション、マンガとジャンルも様々であること、巻末に本の舞台となった地域の地図(世界と日本)、時代年表などの資料も充実していることです。
また、各紹介文は1冊に1ページで、読者対象年齢、時代背景、キーワードなどがひと目でわかる表示になっており、使いやすい作りになっています。
 
もうひとつの特徴は、章ごとのコラム記事です。ここでは過去に出版された戦争と平和をテーマにした本の評論や、2000年以前に出版された本で、これからもずっと手渡し続けていきたい作品の紹介などが書かれています。
 
「はじめに」で、野上暁氏が
“日本は、1945年8月15日に、アメリカやイギリスなどの連合国を敵に回した戦争に負けて以来、一度も戦争をしていません。310万人ともいわれる、尊い犠牲者を出した反省から、憲法で戦争をしないと決めたからです。その後、世界の国々と友好関係を築き、平和が続いてきたことで経済も発展し、戦争の荒廃から立ち直し豊かな暮らしを実現できました。
 ところが、それから70年以上もたつと、戦争の悲惨な記憶がうすれ、近隣の国々を侵略したことへの反省もなく、憲法の精神をないがしろにして、戦争ができる国に変えようとする力が強まってきています。世界の各地で、いまも戦争や紛争が起こっていますから、いつまた日本がそれに関わらないとも限りません。
 子どもの本に関わる私たちは、将来にわたって戦争の悲劇を子どもたちに味わわせることを断じて避けたいと願います。”(p3)
と、記しておられます。
 
 私たちの平和な暮らしは当たり前のものではなく、先の戦争をこえて獲得したものであることを痛感します。そして私たちは、子どもたちに平和な世の中をも未来永劫手渡していくんだという決意をもって、彼らが本を通して自分たちとは違う文化があることを理解し、また人と人が信頼をし合うことの大切さを学び、さらに、現在、困難な状況にある人々へ共感の気持ちを抱けるよう事実も知らせていけるよう、本を選書し、手渡していく必要があります。このブックガイドは、その際の道しるべになると思います。

第1章 戦争ってなんだろう?
第2章 生きるための冒険
第3章 声なきものたちの戦争
第4章 子どもたちの体験
第5章 絵のちから 音楽のきぼう
第6章 伝える人 語りつぐ意志
第7章 勇気ある決断 未来への思い
第8章 平和をつくるために
(作成K・J) 

基本図書を読む32『ニルスのふしぎな旅』セルマ・ラーゲルレーヴ


今月の基本図書として取り上げるのは、スウェーデンの女性作家で、1909年にノーベル文学賞も受賞しているセルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940)の書いた『ニルスのふしぎな旅』(上・下巻 菱木晃子/訳 ベッティール・リーベック/画 福音館書店 2007)(原題『ニルス・ホルゲルソンのふしぎなスェーデン旅行』)です。この作品は、スウェーデンで上巻が1906年、下巻が1907年に出版されました。

父親の影響でスウェーデンの文化に親しみを持ち、スウェーデン語の翻訳家になった菱木晃子は、この作品に携わるために、8年をかけてスウェーデンの地理や歴史を学び直したということです。(下巻「訳者あとがき」より)

ニルスのふしぎな旅〈上〉 (福音館古典童話シリーズ 39)
セルマ ラーゲルレーヴ
福音館書店
2007-06-20

 

 

ニルスのふしぎな旅〈下〉 (福音館古典童話シリーズ 40)
セルマ ラーゲルレーヴ
福音館書店
2007-06-20

スウェーデン南部の村に住むニルスという14歳の少年は、怠惰な上に乱暴者で、学校でも家でも問題児でした。ある春の日、ニルスは両親が教会に出かけている間に、家の中でトムテ(小人の妖精)を虫とり網で捕まえ、からかったため、トムテの怒りをかい、小人の姿に変えられてしまいます。

小人になったニルスは、家で飼っているガチョウのモルテンが、ガンの群れと一緒に北へ飛んでいこうするのを止めようとして飛びつき、そのままモルテンと共にガンの群れに加わって飛び立ちます。その後、群れを率いるアッカに認められ、ラップランドへ向かう旅について行くことになりました。

この冒険の旅は、3月20日に始まり、11月9日に終わる55章の物語として描かれています。小人になった途端に動物たちと会話ができるようになったニルスは、旅の中で出会うさまざまな出来事を通して、互いに尊重し合い、助け合うことの大切さを学んでいきます。家畜にさえ悪戯をしていたニルスですが、知恵をはたらかせてリスの親子を助けたり、キツネからガンの群れを守ったりするなど、しだいに動物たちからの信頼を得ていきます。途中、ガンの群れからはぐれますが、動物園に捕らえられていたワシのゴルゴ(ゴルゴは幼鳥の時に親を亡くしアッカに育てられています)を救い出し、最北の地ラップランドにいたアッカたちに再会します。

夏の間、ラップランドで過ごしたニルスとガンの群れは秋の訪れとともに、故郷の村へと戻ってきます。小人になってしまった今は両親の前に姿を見せられないと、再びガンと共に旅を続けたいというニルスでしたが、両親に捕まえられ祭りの供え物にされそうになったモルテンを救い出そうとして、妖精の魔法がとけ、元の少年の姿に戻るのでした。

この作品は、「子どもたちに自分の国の歴史や地理について楽しみながら学んでほしい」という狙いで、副教材としてラーゲルレーヴに執筆の依頼があり、書かれたものです。私はそのことを、出版を記念した訳者菱木晃子の講演会で伺いました。

そのあたりについて下巻の「訳者あとがき」にも詳しく記されています。

“「スウェーデンの地理にふれながらも、物語として子どもたちが楽しめる本にしたい」という意気ごみのもと、ラーゲルレーヴはこの仕事をひきうけました。そして周到な準備をはじめました。地理、歴史、動植物に関する文献を読み、各方面からの提案や意見に耳をかたむけ、自らの足でスウェーデン各地を取材してまわったのです。”『ニルスのふしぎな旅 下』(福音館書店) p526~527

そうした材料がそろう中、どのような作品にするかを思い悩んだ末、イギリスのキップリング(『ジャングル・ブック』の作品などがある)の作品にヒントを得て、動物たちを擬人化すること、トムテ(小人の妖精)の言い伝えを踏まえて、『ニルスのふしぎな旅』が紡ぎ出されていったのです。

”ここにようやく、ラーゲルレーヴは主人公の男の子をトムテの姿に変えて、ガチョウの背中にのせ、スウェーデンじゅうを旅させることを思いついたのでした。これは、ほんとうにすばらしい思いつきでした。空から地面をながめること、つまり国土を鳥瞰図としてとらえることは、地理の教科書にはもってこいの手法だったからです。もちろん、この設定は物語の導入としても、子どもたちの興味をひくのに十分なものでした。”

 この作品は、副教材としてだけでなく、物語としての面白さが評判となり、大人たちにも読まれるようになり、海外へも広まっていきます。

 
日本では大正半ばの1918年に、原作の一部が香川鉄蔵により翻訳され『飛行一寸法師』と題して大日本図書から出版されています。その後も多くの出版社からこの作品は出版されますが、とても分量が多いためいずれも抄訳に留まっていました。1958年に、香川鉄蔵はラーゲルレーヴ生誕100周年祝賀行事にスウェーデンに招待されたのを機に、完訳することを目指します。しかし完成をみるものの、病に倒れてしまいます。その志を継いだのが息子の香川節で、父の訳出したものを現代風に改めるなどして完成させ、1982年に偕成社から全訳版として出版されました。
 偕成社から出版された全訳版は4巻に分かれています。挿絵は、原作と同じリューベックのものが使われています。そのあたりの経緯については、村山朝子の著書『『ニルス』に学ぶ地理教育―環境社会スウェーデンの原点』(叢書 地球発見3 ナカニシヤ出版 2005)に詳しく記されています。(第1章2「完訳までの長い道のり」p19~31)
『ニルス』に学ぶ地理教育―環境社会スウェーデンの原点 (叢書・地球発見)
村山 朝子
ナカニシヤ出版
2005-12


 
 
その後、この作品がたいへん優れているにも関わらず分厚い2冊組で本に親しんでいる子でないと手に取らないこと、内容的には小学校中学年くらいの子どもたちに読んでほしいということから、福音館書店から2012年から2013年にかけて絵物語「ニルスが出会った物語」シリーズが出版されました。
長い物語のうち、独立して読んでも楽しめる6つのエピソードにしぼり、児童書の挿絵などで子どもたちから人気のある平澤朋子が絵をつけており、とても親しみやすいものになっています。このシリーズを出版するために、菱木と平澤はスウェーデン旅行をし、実際に物語の舞台を歩いたとのことです。
どの物語も美しい絵がふんだんに使われており、長編に挑戦する前の小学校中学年の子どもたちに最適のシリーズです。


 なお、菱木晃子の公式サイトには「『ニルスのふしぎな旅』を訳して―翻訳こぼれ話」の特集ページがあり、実際に物語に出てくるスウェーデンの町や村、建造物の写真もたくさん紹介されています。(菱木晃子公式ホームページ→こちら 「『ニルスのふしぎな旅』を訳して」のページ→こちら

『ニルスのふしぎな旅』は、今から110年ほど前に書かれた物語であるにも関わらず、前出の村山朝子『『ニルス』に学ぶ地理教育―環境社会スウェーデンの原点』でも指摘されているのですが、早くから環境保全に対する考え方がきちんと記されているのです。

たとえば製鉄所が出来たばかりに棲家を追われるクマについて書かれている28章「製鉄所」では開発か自然保護かということを考えさせられます。また、山火事で木が焼けてしまったところへ植樹する子どもたちを描いている39章「イェストリークランド地方をこえて」では、“木が育ち、森ができれば、このあれはてていた山に、虫が飛びまわり、オオヨシキリの歌声が響きわたり、ライチョウがおどり、すべての命あるものがよみがえります。そうです。これは、つぎの世代のための記念碑のような仕事です。なにもしなければ、裸の山しか残せなかったでしょうに、この仕事のおかげで子孫にりっぱな森をゆずりわたせるのです。”(下巻 p233~234)と、環境を保全することの大切さをさらりと記しています。

またニルスが人間に戻る前に最後にガンのアッカとことばを交わすところでは、アッカに”「いいかね。おまえがわたしたちといっしょにして学んだことがあるとすれば、人間はこの世に人間だけで暮らしているのではないということだろう。人間は広い土地を持っているのだから、自然の岩礁、浅瀬の湖、沼、湿地、未開の山、人里離れた森を、わたしたちのような貧しい生き物が安心して暮らせるように、少しくらい残してくれてもよいと思うのだ。若いころから、わたしは追われてばかりだった。わたしのような者にも安心してすごせる場所が必要だということを、知っていてほしいのだよ」”(下巻53章「ヴェンメイヘーイ丘への旅」 p503)と、言わせています。

作者のラーゲルレーヴは、1858年にスウェーデン中南部ヴェルムランド地方のモールバッカの旧家富農の娘として生まれました。女子高等師範学校を卒業し教師をしながら、小説を書き続けていました。1890年に『イェスタ・ベルリング物語』を書いてコンクールで1等になったことから、作家活動に専念し、1909年にスウェーデン人として、女性として初のノーベル文学賞を受賞しています。

この作品を書いた頃は、イギリスに始まった産業革命の影響で工業が盛んになっていた時代です。急な発展の陰で、自然が破壊されていくのを見ていたのでしょう。子ども向けの作品のなかに、こうした鋭い視点を盛り込みつつ、ニルスが冒険を通して人間的に成長していく様子を、子どもたちの心に沁み渡るように描いており、大変読み応えのある作品です。偕成社の全訳版と合わせて、子どもたちに読んでもらいたいと思います。

(作成K・J)

2017年1月(その2)雪のふる日に(幼児~小学生)


2016年~2017年の冬は、ラニーニャ現象の影響で雪が多いのではという予報もある一方で、必ずしもそうなるとは限らないという意見もあるようで、どうなるか気になりますね。スキーなどのウィンタースポーツが好きな人にとっては雪は大歓迎。一方で普段の生活に障害があるほどの大雪は困りますね。
個人的には雪が降る日は、すべての音が吸収され、静寂な世界になるところが好きです。さて、今シーズンはどうなることでしょう。そんなことを思い巡らせながらおはなし会プランを作成しました。

******************

【雪のふる日に】

導入 詩 「つもった雪」 金子みすゞ 『おどる詩あそぶ詩きこえる詩』はせみつこ/編 飯野和好/絵 冨山房インターナショナル 2015より 2分

上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
(中略)
中の雪
さみしかろな。
空も地面もみえないで。

おどる詩 あそぶ詩 きこえる詩
冨山房インターナショナル
2015-04-19

 

 

 

わらべうた うえみればむしこ

うえみればむしこ

雪深い山形に伝わるわらべうたです。見上げれば降ってくる雪が虫のようにも見え、屋根や木の枝に積もった雪は真綿のように見え、地面をみれば白く冷たい雪だなという意味です。

 

 

 

 

 

 

 

 

小さい子向けのおはなし会プランでも紹介したわらべうたです。
どんどん降ってくる雪が、見る視点を変えると違って見えることを歌った歌です。
とても短くて簡単なので、いっしょに歌ってみましょう。

 

絵本『つるにょうぼう』矢川澄子/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 1979 9分

鶴の恩返し伝説には、この再話のように助けた鶴が美しい娘になって若者のもとに現れるものと、老夫婦のところへ若い娘として現れるものとがあります。地域によってさまざまな伝承のある昔話ですが、ここでは赤羽末吉の絵がたいへん叙情的で美しいこちらの作品を紹介します。娘が初めて若者を訪ねて行く場面など、雪深い地であることがわかります。少し長いおはなしですが、丁寧に読んであげましょう。

 

絵本『あんな雪こんな氷』高橋喜平/文・写真 講談社 1994 9分

雪がどのように積もるのか、風の吹き方ひとつで表情を変える雪や氷の様子を美しい写真とともに紹介しています。すべてを読むと9分くらいかかりますが、子どもたちの様子を見て、どこまで説明を読むかを決めてもよいでしょう。おもしろい形の冠雪などに子どもたちはきっと喜ぶことでしょう。

 

絵本『みずたまちゃん』林木林/作 あきくさあい/絵 すずき出版 2010 3分

みずたま模様が大好きなみずたまちゃん、寒がりの友達に出会うたび、次々に着ているものを貸してあげます。みずたまちゃん自身は大丈夫かなと心配していると・・・メインで読んだ『つるにょうぼう』が重厚な昔話なので、最後は少し温かみがあって楽しい絵本を1冊選びました。
 

(作成K・J)

トップページに戻る