なぜわらべうたを図書館のおはなし会で取り入れるのか(再掲)


2010年7月13日にUPした「わらべうた(小さなこどものためのおはなし会で)」の記事を、ちょうど6年目の今日、少し手直しをしてUPします。

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私自身は、プライベートな文庫活動で27年近く「わらべうた」をおはなし会に取り入れてきましたし、年間数回、あちこちで「わらべうた講座」の講師をしています。

また多くの図書館で「わらべうた」の時間をを乳幼児サービスとして提供しています。なぜ、小さな子どもたちに「わらべうた」なのか、サービスをする人たちの中にも「赤ちゃんが喜ぶから」「今までずっとやってきたから」というだけで、立ち止まって考える機会がないままの方もいるかもしれません。

今回は、なぜ、「わらべうた」なのか考えてみましょう。

まずは「わらべうた」とは、何かということですが、古くから民衆の生活に結びついて歌われてきた、子ども達の遊び歌、 あやし歌、数え歌などです。 口承で伝わってきたものなので、地方によっても少しずつ音程や 歌詞が違っています。 音階構造は長唄や雅楽など日本の民族音楽に共通する五音階です。 なお「本のこまど」で掲載している「わらべうた」の楽譜は、私が覚えて歌っているものを採譜したものなので、みなさんの普段歌っている「わらべうた」とは音程や、拍の長さが違っているかもしれません。そのように、地域の中で親から子へと、年長者から子どもたちへと伝わってきたのが「わらべうた」なのです。

さて、赤ちゃんの五感のうち、どこが一番早く発達するかご存知ですか?子育てを経験された方ならきっとご存知だと思うのですが、先天的な異常がない場合、それは聴覚です。胎児の時にすでに聴覚は完成しています。だいたい妊娠7ヶ月の頃には出来上がっていて、お母さんのお腹の中でお母さんの心音や、お腹のぐるぐるいう音を聴いているのです。

その証拠に『ごぶごぶ ごぼごぼ』という絵本を生後3ヶ月ぐらいのの赤ちゃんに読んであげると、不思議なことに赤ちゃんがじっと聞き入るのです。
ごぶごぶ ごぼごぼ (0.1.2.えほん)ごぶごぶ ごぼごぼ (0.1.2.えほん)
著者:駒形 克己
販売元:福音館書店
発売日:1999-04-15


(この絵本について、駒形克己さんの講演会でお話を伺ったことがあります。お嬢さんの胎内体験に基づいて作ったということでした。)


お母さんがゆったりしている時の心音は、胎児にとって心地よい音として生物的な感覚で覚えています。
それは胎盤からの血流が滞ることがなく、赤ちゃんにとっても心地よいからです。そして出産後まもなく新生児はお母さんの生の声、肉声に反応していることがわかっています。詳しい研究については『赤ちゃん 成長の不思議な道のり』を参考にしてください。
NHKスペシャル 赤ちゃん―成長の不思議な道のりNHKスペシャル 赤ちゃん―成長の不思議な道のり
著者:安川 美杉
販売元:日本放送出版協会
発売日:2007-02


では何故「わらべうた」なのでしょうか?それは「わらべうた」の持つ特性にあります。「わらべうた」の持っている言語リズム素、言語旋律素というものが、母語である日本語のリズム、高低と合致しているのです。またお母さんのお腹の中で聴いていた心音のリズムとも合致しているのです。だから小さな赤ちゃんはわらべうたのリズムで落ち着いて眠っていくのです。

また「わらべうた」を歌ってもらう経験は、お母さんのおひざの上で心地よい体験として、子どもたちは受け止めます。またお母さんにとってもその時間は赤ちゃんにまっすぐ向き合える貴重な時間。そうした経験が、そばに居てくれるお母さんへの信頼感を育て、やがて落ち着いて絵本の読み聞かせを受け入れていく素地になります。(もちろんお母さんだけでなく、お父さんや、祖父母など、自分の世話をしてくれる人たちもここに含まれます。)

また耳から聞く言葉というのは、子どもの脳の発達を促し、認知能力を伸ばし、そして想像力を育ててくれます。耳に心地よい「わらべうた」を聴いて育った子は、おはなしのことばにも集中することができるようになるのです。

東京子ども図書館でも、おはなし会に参加できるのは自分の意思でおはなしを聴ける3歳から。それまではその素地となるわらべうたにたっぷり親しんでくださいと、小さい子のためには「わらべうたの会」をしています。

「わらべうた」は、おはなしを聴く素地を作る、それはいずれ自分で本を読むことにつながる「はじめの一歩」としてとても大切なのです。

このように大切だと位置づける「わらべうた」ですが、今は子育ての中で自然に伝承されているとは言い難いのが現実です。あるいは若い親世代が、自分の親に歌ってもらっていたとしても、ごくごく幼少期だからか「歌ってもらっていたか、覚えがない」というのが大半です。戦前のような大家族の中で祖父母が孫に歌って聞かせる、あるいは弟妹に親が歌っているのを聞くという機会も、核家族化の中で無くなっているといっても過言ではないでしょう。

そういう意味からも、図書館の乳幼児サービスの中で「わらべうた」を伝えていく意義は大きいのではと考えています。

(作成K・J)