2016年12月、2017年1月の新刊本から


 

2016年12月、2017年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部2016年11月下旬発行のものあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

【絵本】
 
 『まんまん ぱっ』長野麻子/作 長野ヒデ子/絵 童心社 2016/11/20
まんまん ぱっ! (とことこえほん)
長野 麻子
童心社
2016-11-20
 
 長野麻子さん、長野ヒデ子さん母娘による二作目の絵本です。「まんまん ぱっ」「ぱいぱいぱい」「ぐるぐるぐる~ん」など赤ちゃんが喜ぶオノマトペ(擬音語、擬態語)と、パステルの柔らかい線画が楽しい1冊です。耳から聞こえるリズミカルな音にちいさな赤ちゃんも喜ぶことと思います。

 
『フローレンス・ナイチンゲール』デミ/作 さくまゆみこ/訳 光村教育図書 2016/12/20 
デミ
光村教育図書
2016-12

 「近代看護教育の母」と呼ばれるナイチンゲールの伝記絵本です。1820年生まれのフローレンスは、大変裕福な家庭で育ったにも関わらず、貧しい人のために尽くしたいという篤い信仰心をもって、看護婦になる決意をします。実際に看護婦になると患者たちが置かれている劣悪な環境を改善すべきだと提案し、その改革を実践します。従軍看護婦としてクリミア(今のトルコ)戦争の陸軍病院でも働き、ここでも改善するための報告書を作成し、女王にも訴えかけます。先を見通す力、実行に移す力を持っていたフローレンスの働きは、多くの人々に影響を与えます。のちに国際赤十字を設立したアンリ・デュナンもその一人でした。女性としての細やかな配慮をしつつ、大事なことは譲らず実行した姿は、この絵本に出会う子どもたちにも勇気を与えてくれることでしょう。本の表紙画像は出版社のサイトへ→こちら

『だるまちゃんしんぶん』加古里子/作 福音館書店 2016/12/25

 「だるまちゃんしんぶん」は、子どものための新聞。「はるのごう」「なつのごう」「あきのごう」「ふゆのごう」の4枚がポケットに入っています。連載されているのは「せかいびっくりニュース」や「にっぽんきせつニュース」「まちやむらあちこちニュース」などです。やまんば山でのお花見や、沖縄のキジムナちゃんやカッパちゃんに出会った話など創作話の一方で、夏の星座や冬の天気など科学的な記事もあって加古ワールド満載です。新聞の下のほうに季節の植物や生き物が帯状に描かれていたり、季節の遊びが掲載されていたり、読んでいて楽しくなるばかりです。


『ちっちゃなえほん ちっちゃなちっちゃなものがたり―ジェイコブズのイギリス昔話集より―』瀬田貞二/訳 瀬川康男/絵 福音館書店 2017/1/15 

2016年は瀬田貞二生誕100年の年でした。それを記念して出版されたさまざまな作品のうちの1冊です。「ちいさなちいさなおばあさん」などとしてイギリスの昔話で有名なお話を、瀬田貞二さんの訳に瀬川康男さんの意匠による絵で魅せてくれる文字通り小さな(12.8cm×10.6cm)の絵本です。この絵本は1995年にピンク色の横長の絵本(21.2cm×15.2cm)として出版されていましたが、今回は「母の友」1972年4月号掲載の豆本をもとに一回り以上小さくなって、まったく別の絵本として出版されました。素話で語られることの多い昔話ですが、愛蔵版として手元にあると嬉しい1冊です。
 

『おなかのかわ』瀬田貞二/再話 村山知義/絵 福音館書店 1977/4/1第1刷 2017/1/15第16刷(瀬田貞二生誕100年記念出版)

おなかのかわ (こどものとも絵本)
瀬田 貞二
福音館書店
1977-04-10

 ねことおうむが互いに食事に招待し合います。ところが、けちで食いしん坊のねこは、おうむの出してくれたごちそうを平らげてもまだ満足できず、おうむを飲み込み、次々出会ったものを飲み込んでいきます。デンマークの民話「ふとっちょねこ」「ついでにペロリ」にとても似たお話です。しばらく品切れになって手に入らない絵本でしたが、この度瀬田貞二誕生100年記念として限定復刊されています。図書館の蔵書が古くなって買い替える必要がある場合は、この機会にぜひ購入しましょう。

 
『いたずらおばけ』イギリス民話 瀬田貞二/再話 和田義三/画 福音館書店 2017/1/15(瀬田貞二生誕100年記念出版) 

 月刊絵本「こどものとも」1978年2月号として出版されたものを、瀬田貞二生誕100年記念出版としてハードカバー化した絵本です。貧しいけれど陽気な一人暮らしのおばあさん。ある日道端に金貨がたくさん詰まった壺をみつけます。「これがあれば女王さまみたいに働かずに贅沢ができるわ」とショールでしばって引きずって帰る途中、立ち止まると銀に変化してしまいます。「ああ、夢見てたのね。銀でよかったわ」とまた引っ張っていくと、ただの鉄の塊になり、ただの大きな石になっていきます。おばあさんは、「ああ、夢見てたのね。これで十分」と思うのです。いよいよ大きな石を木戸の留め石にしようとすると、それはいたずらが好きなおばけだったのです。おばあさんはおばけに怒ることもなく「いたずらおばけが見られたなんて、なんて運がいいんだろう」と喜んでやすらかに休むというお話です。何事も前向きにとらえるおばあさんに読んでもらうほうも、楽しくなってくる、そんな絵本です。

 

 『なにたべているのかな?(はなしかけえほん)』とよたかずひこ/作 アリス館 2017/1/25

なにたべているのかな? (はなしかけえほん)
とよた かずひこ
アリス館
2017-01-25

 「ももんちゃん」シリーズなど、小さな子どもたちが大好きなたくさんの絵本を作っているとよたかずひこさん。子どもとやりとりをしながら楽しめる絵本を作りたいと「はなしかけえほん」のシリーズを刊行されることになりました。その1冊目が『なにをたべているのかな?』です。先日、クレヨンハウス「子どもの本の学校」でとよたかずひこさんの講演を聞きました。テキストに捉われることなく、子どもたちの反応を見ながらいっぱい話しかけてほしいということでした。3月に『だれかな?だれかな?』、7月に『ゆびさしなあに?』が、このシリーズで出る予定です。初めての子育てでどんな風に子どもに話しかけたらいいのか緊張するという若い親たちにも、ぜひおすすめしたいですね。

 

【研究書】

 『ぼくの絵本美術館 新装版』堀内誠一/著 マガジンハウス 2016/12/14

ぼくの絵本美術館 新装版
堀内 誠一
マガジンハウス
2016-12-14

 1998年に出版された本の新装版です。堀内誠一が生前福音館書店の月刊誌「こどものとも」「母の友」「かがくのとも」や盛光社の「月刊 絵本」や「別冊太陽」などに掲載されていた絵本に関するエッセイをまとめたものです。ラスコーの壁画から始まり、ブーテ・ド・モンヴェルなど19世紀の絵本、コールデコットの絵本などについて語る文章は、美術への深い造詣とともに「子どもに」という視点が明確にあって、読み応えがあります。堀内誠一の絵本への理解も深まることでしょう。 

 

 『子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝』荒木田隆子/著 福音館書店 2017/1/15

子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝 (福音館の単行本)
荒木田 隆子
福音館書店
2017-01-11

 瀬田貞二担当の福音館書店の編集者として、その晩年の仕事『落穂ひろい―日本の子どもの文化をめぐる人びと』に向かう姿を身近に見てきた荒木田隆子さんによる瀬田貞二伝です。荒木田さんは、瀬田貞二亡き後、その足跡を辿りながら『絵本論―瀬田貞二子どもの本評論集』、『児童文学論―瀬田貞二子どもの本評論集』をまとめあげられました。この本は2013年5月~2014年1月までの5回にわたり東京子ども図書館主催の講座「瀬田貞二氏の仕事」での講演録をもとにしたものです。分厚い著作ですが、講演の際の語り口調そのままになっているので、とても読みやすく、一気に読めてしまいます。この1冊を通して日本の子どもの本の歴史を知ることができ、自分が子ども時代に親しんだ本が生まれてきた背景も知ることができます。前述の3冊の瀬田貞二の評論集とともに、子どもの本について学ぶ人には必読の1冊です。

 

【その他】

『だるまちゃんと楽しむ 日本の子どものあそび読本』加古里子/著 福音館書店 2016/12/25

 まえがきに加古里子さんご自身が「昭和42年(1967年)に出した『日本伝承のあそび読本」を新しくしたものです。(中略)しかし、50年もたっている現在、子どもたちの成長と未来にふさわしい内容、題材、記述になるよう選びなおし、書き改めました。」と記しているように、日本の伝統的なさまざまな遊びが全部で7項目109種類掲載されています。絵も新しく描きなおされ全ページカラーのイラストが、遊び方を丁寧に伝えてくれています。ここに紹介されている草花を使った遊びや、折り紙、あやとりや外遊びなど、子どもたちの創造性を引き出す数々の遊びを、積極的に伝えていきたいと思います。

 

 『少年少女のための文学全集があったころ』松村由利子/著 人文書院 2016/7/10初版第1刷 2017/1/10初版第2刷

少年少女のための文学全集があったころ
松村 由利子
人文書院
2016-07-26
 
昨年夏に出版された時には見落としていた1冊です。1月に増刷されました。この本の著者は子ども時代にたくさんの子どもの本に出会ってきた元新聞記者です。著者紹介を見ると私と同年代。私も子ども時代にほんとうにたくさんの子どもの本に出会ってきました。その中には岩波少年文庫もあれば「少年少女文学全集」の中の本もありました。このエッセイを読んでいて、本に出会うことによって心豊かな子ども時代を過ごせたのだと、瀬田貞二さん、石井桃子さんなど当時子どもの本のために尽力された方々に改めて感謝したくなりました。
 
 

 『さてさて、きょうのおはなしは・・・・・・日本と世界のむかしばなし』瀬田貞二/再話・訳 野見山響子/画 福音館書店  2017/1/15

さてさて、きょうのおはなしは・・・・・・ 日本と世界のむかしばなし (福音館の単行本)
瀬田 貞二
福音館書店
2017-01-11

 瀬田貞二生誕100年記念の一環として出版された「おはなし集」です。「かさじぞう」「ねずみじょうど」や「三びきのやぎのがらがらどん」「三びきのこぶた」など、絵本として出版されているものを含めて、日本の昔話18編、世界の昔話はイギリス7編、ノルウェー1編、ロシア2編の合計28のおはなしが収録されています。ご家庭ではお子さんに読んであげるおはなしとして、図書館員には語りのテキストとして最適です。

(作成K・J)