『物語の森へ 児童図書館基本蔵書目録2』への想いを聞いてきました!


5月下旬に東京子ども図書館から児童図書館基本蔵書目録2『物語の森へ』が出版されました。予約で申し込みをしていたので、届くのがとても楽しみでした。(手違いで届いたのは6月下旬でした) 

 

 

 

2012年3月の児童図書館基本目録1『絵本の庭へ』の出版から約5年、多くの児童サービス関係者が待ちに待った出版でした。

 

 

7月7日に銀座・教文館ナルニア国で開催された「『物語の森へ』刊行記念トーク」に参加し、この目録作成に取り組まれた東京子ども図書館理事長の張替惠子さん、担当者の護得久えみ子さんのお話を伺ってきました。

この目録には戦後出版された内外の児童文学(創作物語・昔話・伝説・神話・古典文学・詩集)の中から、次世代の子どもたちに手渡したい本が1600点が収められています。

トークでは、最初になぜ東京子ども図書館(TCL)が子どもの本のリストを作って来たのかその理由と経緯が、TCLの歴史を紐解きながら語られました。

1974年にTCLが設立される以前に、初代理事長であった石井桃子さんが瀬田貞二さんたちと始められた「子どもの本研究会」から、『私たちの選んだ子どもの本』が1966年に出版されています。石井桃子さんのかつら文庫や、瀬田貞二さんの瀬田文庫に通ってくる親たちからの「うちの子にどんな本を選んだらよいか」という質問に答えられる本のリストとして誕生しました。

このリストに挙げられたものは、文庫にくる子どもたちの反応がもとになっていました。その後、リスト作成はTCLに引継がれ、改訂が行われてきました。しかし、品切れや絶版になったり、新訳や改訂版が出たり、復刊されたりという子どもの本の出版状況の中で、収録された作品の出版情報を最新のものに保ちながらリストの改訂を行うことが困難になったといいます。

そこでTCLでは『私たちの選んだ子どもの本』とは別に、1990年以降に出版された子どもの本の中から選んだ『子どもの本のリスト「こどもとしょかん」新刊案内 1990~2001セレクション』を出版しました。こちらには絵本、昔話、物語に限らず、伝記や知識の本なども収録され、詳細な索引(書名、人名、件名)が付きました。

 


 

 そのような流れの中で、なぜ再びTCLが児童図書館基本目録に着手したのか、その理由はこれまで子どもたちが読み継がれてきた、子どもたちが心躍らせてきた作品が、本の出版流通の中で手に入らなくなっただけではなく、公共図書館でも廃棄され入手困難になっているという現実にあるということでした。

『物語の森へ』の「はじめに」のページ(p6~7)にはこのように書かれています。(太字引用文)

“『絵本の庭へ』や『物語の森へ』がこれまでのブックリストと大きく異なる点は、入手が可能かどうかという出版状況の枠を取り払い、すぐれた作品を将来に向けて伝承すべき文化遺産として記録にとどめようとしたところです。1950年から60年代、戦後の再興に取り組んだ児童書のつくり手たちは、子どもたちに希望を託し、作家、画家、編集者がひとつの思いで、質の高い作品づくりに取り組みました。高度経済成長の恩恵もあり、子どもたちの本棚はかつてないほど彩り豊かになりました。70年、80年代には、その果実を行きわたらせるための公共図書館システムも整ってきました。しかし、その後の電子メディアの普及や受験競争の過熱により、子どもたちがゆったりと本に向きあう時間はどんどん限られるようになりました。少子化による購買層の減少も影響し、出版社は過去に生み出した読みごたえのある傑作を品切れ・絶版にせざるを得ないケースが増えています。たとえ書店で手に入らなくなっても、質の高い作品を蓄積して提供することが使命であるはずの図書館も、施設面や資料提供の利便性という点では飛躍的に進歩したものの、子どものためのサービスを担う専門職員の雇用環境が不安定で、その役割を十分に果たしているとはいえません。
 このような状況の中で、わたしたちができることはなにかと考えたとき、どうしてもやり遂げたいと思ったのが「基本蔵書目録」の刊行でした。「基本蔵書目録」とは、図書館で蔵書の核として常に揃えておくべきだという評価を得た本のリストです。もし、その本が紛失したり破損したときには、買い換えなければなりませんし、絶版で入手できなくなった場合には、傷んでも廃棄せず、修理して保存を心がけなければならない作品であることを示し、蔵書構築の指針としたものです。”

以上のような思いで作られたこの「児童図書館基本目録」は、私たちが常に児童室の蔵書に気を配り、棚を作っていく際に、さらに研修でよく質問を受ける「児童書の廃棄基準」について明確な指針を示してくれるものだと思います。

今回、選定にかけられた本は約5000冊。15年にわたる選定作業に関わった人は延べ320人だったとのこと。その膨大な作業を想い、ほんとうに頭が下がります。

『絵本の庭へ』に続いて、『物語の森へ』の索引の充実度は、子どもの本についてのレファレンスでも大変心強い味方です。特に件名の小項目は1129にもなっています。(『絵本の庭へ』では1095項目)また登場人物索引は909件(『絵本の庭へ』では557件)となっており、本を探すときの手がかりとなります。トークの際に、件名の種類も『絵本の庭へ』と『物語の森へ』では大きく変化したことが示されました。たとえば「気持ち・こころ」をあらわす件名は『絵本の庭へ』(a)では27項目80冊、『物語の森へ』(b)では33項目275冊となり、物語ではより複雑なこころの動きを表現した作品が多いということがわかります。もっと単純な比較では、「のりもの」の件名のうち、「電車」は(a)では36冊なのが(b)では10冊に、「車」は(a)23冊、(b)12冊と減っている中、「船」は(a)32冊、(b)36冊とさほど変化がないことなど、件名を見ていくだけでも、絵本と物語の違いもみえて面白いことがわかりました。

それに加えて、『物語の森へ』では作品の出版履歴が提示されています。最初に出版した出版社から復刊した出版社、あるいは翻訳者の変更、題名の変更なども併せて辿ることが可能になっています。

トークの終盤で「図書館員はこれに収録している本は捨てるな。これらの本がなければ図書館員稼業は出来ないと、思ってほしい」との言葉を聞いて、襟を正す思いになりました。本来は、子どもの本の選書眼は長く児童サービスに携わる中で、子どもたちの反応を見ながら身についていくもの。それがなかなか厳しい中で、どのように児童サービスに関わるスタッフの研修でそれを伝えていくか、苦心をしていたところだったからです。

「本のこまど」でも、「基本図書を読む」の連載をしたり、児童部会の活動報告の中で「基本図書から学ぶ」についてお伝えしてきました。しかし、今回TCLの「児童図書館基本目録」に対する覚悟と篤い想いを聞いて、これらについて児童サービスに関わるスタッフにもっと丁寧に伝えていくことの重要性を感じています。

まずは『絵本の庭へ』に続いて、『物語の森へ』を児童サービス業務の座右の銘として常にそばに置いてほしいと願います。

(作成K・J)