2017年8月、9月の新刊から


2017年8月、9月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部7月出版の本もあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『うたのえほん 1ぽんでもにんじん』長野ヒデ子/構成・絵 のら書店 2017/7

前田利博/作詞、佐瀬寿一/作曲の童謡「いっぽんでもニンジン」が、長野ヒデ子さんの楽しい絵で絵本になりました。絵本を読みながら歌いたくなります。歌詞カードが付録で付いています。図書館で装備する時に、後ろ見返しに紛失しないように固定できるといいでしょう。

 

『マスターさんとどうぶつえん』アーノルド・ローベル/作 こみやゆう/訳 好学社 2017/8/26

マスターさんとどうぶつえん
アーノルド ローベル
好学社
2017-09-11

 岩波子どもの本どうぶつえんのピクニック(舟崎克彦/訳 岩波書店 1978)の前に描かれた絵本がこちらです。どうしてマスターさんがどうぶつえんの飼育係になったのか、『マスターさんとどうぶつえん』を読むとわかります。こんなにどうぶつたちに愛されるマスターさんは、子どもたちにも受け入れられることでしょう。2冊いっしょに展示してあげるといいですね。


『なきたろう』松野正子/作・絵 赤羽末吉/絵 復刊ドットコム 2017/8/24

なきたろう
松野 正子
復刊ドットコム
2017-08-30

 1974年に文研出版から出ていた絵本が復刊されました。松野正子さんの民話風の創作に赤羽末吉さんが絵をつけたものです。泣いて泣いて泣いて、なきたろうのその泣き声は村中に迷惑をかけてしまいます。そこで山へ修行に出かけることになるのです。なきたろうは、ある時ぐっと泣くのを我慢する出来事に出会います。それを乗り越えようと成長していく姿がとても頼もしいです。

 

『きみはライオン たのしいヨガのポーズ』ユ・テウン/作・絵 竹下文子/訳 偕成社 2017/9

きみは ライオン!
ユ・テウン
偕成社
2017-08-24

韓国出身でアメリカでイラストレーターとして確約するユ・テウンさんの新作です。子どもたちが金色の朝陽を浴びながら、庭に集まってきました。朝のヨガの時間です。「きちんとすわって りょうてをひざに おおきくくちをあけ したをだす!」、するとそれはライオンのポーズ。ほかにもちょうちょや、いぬ、へび、かえるなど様々な動物に変身です。「みんなおはよう きょうもいいひになりますように」朝の時間に読んであげたい1冊です。

『いっぽんのせんとマヌエル』マリア・ホセ・フェラーダ/作 パトリシオ・メナ/絵 星野由美/訳 偕成社 2017/9

いっぽんのせんとマヌエル
マリア・ホセ・フェラーダ
偕成社
2017-08-29

著者のマリアさんが、線の好きな自閉症の男の子と出会ったことで生まれた絵本です。自閉症の子どもたちは、世の中のことを認識するのに、それぞれの子どもたち特有のやり方があります。マヌエルくんは線が好きで、目に見えるものから線を探して、それで身の回りのことを認識しているのです。また、この絵本にはピクトグラム(絵文字)も付いています。障害のある子どもたちに読んであげるときに、子どもたちがおはなしを理解する助けになることでしょう。9月上旬には作者が来日し、トークショーも行われました。


『こどもってね・・・・・』ベアトリーチェ・アレマーニャ/作 みやがわえりこ/訳 きじとら出版 2017/9/25

こどもってね……
ベアトリーチェ・アレマーニャ
きじとら出版
2017-09-05

いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉受賞作品です。アレマーニャはイタリア・アンデルセン賞最優秀画家賞などを受賞しており、この作品は10か国以上で翻訳されています。この絵本に登場するひとりひとりの子どもたちの表情も豊かで素敵です。子ども時代は、おとなに見守られて子どもらしく生活できる保障がどの子にも平等に与えられるようにと願います。どんな国に生まれようとも、どんな家庭に生まれようとも、その子が成長する可能性は同じように大切です。子ども時代って、いつか終わってしまうけれど、子ども時代の輝きが未来への希望へとつながるからです。そんなことを想いながら読みました。

 

【児童書】

『メリーメリーへんしんする』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/9/14

メリーメリー へんしんする
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-09-15
 
メリーメリーおとまりにでかける(2017/3刊)、メリーメリーのびっくりプレゼント(2017/6刊)に続く「メリーメリーシリーズ」全3冊が、これですべて揃いました。メリーメリーは5人兄姉の末っ子です。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちはメリーメリーのことをまだ何もできない半人前だと思っていて、時には邪魔もの扱いをします。でもメリーメリーはそんなことにはめげません。そして周りがアッというようなことをやって、逆にお兄ちゃん、お姉ちゃんたちの鼻を明かすこともたびたびなのです。そんな楽しいエピソードのつまったお話が5つ、入っています。自分で読むなら小学校中学年くらい向けですが、これは小さな子どもたちに読んであげてほしいなと思います。
 

 『アイスクリームが溶けてしまう前に 家族のハロウィーンのための連作)』 小澤健二と日米恐怖学会 福音館書店 2017/0/10

 日本でもここ10年くらいの間に若い人たちの間で浸透してきたハロウィーンですが、アメリカでは家族ぐるみで楽しむもの。10月に入ると町のあちこちにジャック・オー・ランタンのためのおおきなカボチャの市がたったり、家をおどろおどろしく飾り立てたりします。この本の作者は昔話研究者の小澤俊夫さんの息子さんで、アメリカ在住のミュージシャンオザケンです。もともとはケルト民族のお祭りが、アメリカで今のような形になっていた理由や、アメリカにいる家族がどんな風に楽しんでいるか、子どもたちにわかりやすく、面白く伝えてくれています。なぜハロウィーンなのに題名が『アイスクリームが溶けてしまう前に』となっているのも気になりますね。その意味がわかると、余計に親子で楽しむハロウィーンが魅力的にみえてきます。ぜひ多くの人に読んでほしい1冊です。こちらのサイトもぜひどうぞ→福音館書店「アイスクリームが溶けてしまう前に」特設サイト

 

 
【詩歌】

 『ポケットのはらうた』工藤直子/詩 保手浜孝/画 2017/5/5

ポケットのはらうた
くどうなおこ
童話屋
2017-05-26

 今年5月に出版されていたのに見落としていました。現在教文館ナルニア国ナルニアホールにて”のはらうた”完結記念 わーいはなまるにじゅうまる「ポケットのはらうた原画展が開催されています。(2017/9/1~10/17)『のはらうた1』が出版されて今年で33年。多くの人が子ども時代に親しんだ詩がたくさんあるでしょう。「のはらうた」シリーズの最終巻になる『ポケットのはらうた』は、これまでの作品の350篇の中から選りすぐりの26篇を保手浜さんの版画/画と共にまとめたものです。永久保存版として手元に置いておきたい1冊です。

 【研究書】 

 『ヨーロッパの昔話ーその形と本質』マックス・リュティ/著 小澤俊夫/訳 岩波文庫 岩波書店 2017/8/18

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫)
マックス・リュティ
岩波書店
2017-08-19

昔話を学術的に研究し、学問体系にしたマックス・リュティの『ヨーロッパの昔話』が岩波文庫として再版されました。これまで昔話について学ぼうとすると図書館の閉架書庫から1969年に岩崎美術社から出版された『ヨーロッパの昔話ーその形式と本質』(小澤訳)を借りて紐解くしかありませんでした。この度文庫化するにあたり翻訳者の小澤俊夫さんが、読みやすさに考慮して改行を加えたりと手を入れています。昔話について学ぶ人は、一度は読んでおくとよい本です。小澤さんはドイツ語を学ぶ中でグリム童話に魅せられメルヒェン(昔話)の研究を始められます。その研究の中で出会ったのが昔話の口承文芸論をまとめたリュティでした。出会った当時、リュティは高校の国語教師だったそうですが、その研究の功績が認められて、その後チューリヒ大学の民俗学の教授になったということも小澤さんが語っています。(→こちら 小澤俊夫昔話へのご招待ポッドキャスト=提供絵本の店あっぷっぷ)小澤さんの「昔ばなし大学」のサイトは→こちら
 

【その他】

『森のノート』酒井駒子/作 筑摩書房 2017/9/10

森のノート (単行本)
酒井 駒子
筑摩書房
2017-09-04
 
 東京と森の中にある家を行ったり来たりしているという絵本作家、酒井駒子さんの画文集です。森の中で過ごす日々で見つけた小さな発見を、それはたとえば高原に立ち込める霧だったり、森に響くキツツキの木をつつく音だったりするのですが、見開きページに400字弱の短い文章で綴り、その小文にひとつづつ子どもや小動物の絵が並べられています。その静かな、それでいて確かな森の息遣いを感じる文章と、静謐でいて温かさを感じる絵は、忙しく時間に追われている日々に差し出されるご褒美のように受け取りました。(担当編集者のことば→こちら「ほんのひきだし
 

『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』佐々木正美 福音館書店  2017/9/10

はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
2017-09-06
 
 雑誌「暮しの手帖」2010年2・3月号から2015年6・7月号に連載された児童精神科医佐々木正美さんの「母子の手帖」の原稿をあらたに編集しなおして1冊にまとめたものです。今年の6月に亡くなられた佐々木正美さんの遺作となりました。「あとがき」には「世の中のすべての子どもたちが、お母さん、お父さん、そして周囲の人々から愛され、人間関係に恵まれた人生を送れるよう、願ってやみません。」と記されています。(2017年4月吉日と日付があります)子どもたちが健全に育っていくために必要なこと、それは愛されているという実感なのだと、佐々木さんは一貫しておっしゃってきました。その一方で子育てにあたる親たちは、たくさんの情報があふれる中でさまざまなプレッシャーを感じていて、単純に我が子をそのまま受け入れて愛するということが難しくなっている現実があります。この本では、そんな親たちにも「大丈夫だよ」と救いの手を差しのべてくださっているように感じます。これから子育てをする若い人にも、子育てで苦労したと思う人にも、寄り添ってくれる1冊です。
 
(作成K・J)