2017年10月、11月の新刊から(追加あり)


2017年10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店児童書部門、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『やもじろうとはりきち』降矢なな/作 佼成出版社 2017/10/10

やもじろうとはりきち
降矢 なな
佼成出版社
2017-10-06

ヤモリのやもじろうとハリネズミのはりきちは、あかちゃんのころからの仲良しです。なんにでも積極的なやもじろうと、おとなしくて慎重な性格のはりきちは、成長するにつれて少しずつ離れていくのですが・・・降矢ななさんが作・絵を手掛けるオリジナル絵本です。

 

『ようこそロイドホテルへ』野坂悦子/作 牡丹靖佳/画 玉川大学出版部 2017/10/20 

ようこそロイドホテルへ (未来への記憶)
野坂 悦子
玉川大学出版部
2017-10-24

 

オランダ語翻訳者の野坂悦子の創作絵本です。野坂さんには毎年オランダへ行くたびに惹かれる建物があって、それがこの絵本のテーマになっているロイドホテルなのだそうです。1921年にまずは南米移民のための宿泊施設としてスタートしたこのホテルは、その後難民滞在施設、刑務所、少年院、芸術家のアトリエと時代と共に役割を変えてきました。歴史の変遷の中に人間の生の縮図を見たという野坂さんが、ロイドホテルを通して伝えたいことが絵本に結実しています。 

 

『今、世界はあぶないのか? 争いと戦争』ルイーズ・スピルズベリー/文 ハナネ・カイ/絵 大山泉/訳 佐藤学/解説 評論社 2017/10/20

争いと戦争 (児童図書館・絵本の部屋)
ルイーズ スピルズベリー
評論社
2017-10-10

 

冒頭は世界人権宣言の第一条で始まっています。「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」しかし現実の世界からは争いは消えず、今、また世界が一触即発の危機に面しています。なぜ争いが消えないのか、そのためにどうすればよいのか、子どもたちに問いかけて一緒に考えてみることができる1冊です。争いは、相手への無理解からもたらされる意見の対立から引き起こされるのです。さまざまな考え方の人がいるということを前提に、親子で、クラスでおとなと子どもが一緒に読んで、話し合うきっかけにできるといいですね。小学校中学年から。「今、世界はあぶないのか?」のシリーズには他に『難民と移民』、『貧困と飢餓』、『差別と偏見』の3冊があります。

 

『とてもとてもサーカスなフロラ』ジャック・センダック/文 モーリス・センダック/絵 江國香織/訳 集英社 2017/10/31

とてもとてもサーカスなフロラ
ジャック・センダック
集英社
2017-10-26
 
 モーリス・センダックが『かいじゅうたちのいるところ』でコールデコット賞を取るよりも7年も前に、実兄のジャックと作った絵本がこの度邦訳されました。訳者は江國香織さんです。サーカス団の中で生まれ育ったフロラは、毎晩サーカスを見に来てくれる観客たちが普段はどんな生活をしているのか知りません。スポットライトの向こうに座っている観客はステージから見るとどの人もみんな同じ顔をしているようで、悪夢まで見るようになってしまいます。自分の不安を取り除くためにフロラは初めてひとりで村まで出かけていきます。フロラの不安な気持ちは、人々が自分と同じだとわかったとき、解けていきました。他人を理解するということがどういうことか、そっと伝えてくれる作品です。文字が小さくて文字数も多めです。小学校中学年から。 
 
 
『貨物船のはなし』柳原良平/作 福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集 2017/11/5
貨物船のはなし (たくさんのふしぎ傑作集)
柳原 良平
福音館書店
2017-11-01
 
世界を物が行き来するために欠かせないのが貨物船です。帆船の頃からの貨物船の歴史や、たくさんの荷物を積んでもなぜ沈まないのか構造的な説明もとてもわかりやすいです。また、かつては海外に行くのに使われていた旅客船が飛行機の普及で亡くなった代わりに、滞在型のクルーズ客船ができたことなど、この1冊を読むと船に関するさまざまな知識を得ることができます。調べ学習の導入にも使える1冊です。なお、作者の柳原良平さんは2015年8月に亡くなられています。(→「本のこまど」記事) この絵本は亡くなられる前年に月刊誌「たくさんのふしぎ」4月号として出版されたものを単行本にしたものです。
 
 
『テオのふしぎなクリスマス』キャサリン・ランデル/文 エミリー・サットン/絵 越智典子/訳 ゴブリン書房 2017/11

テオのふしぎなクリスマス
キャサリン ランデル
ゴブリン書房
2017-10-01

 1987年英国生れのキャサリン・ランデルと、2008年にエジンバラ芸術大学を卒業したエミリー・サットンの若い作家コンビの絵本です。絵本の形態をしていますが、しっかりと読みでのある物語になっており絵本から読み物へと橋渡しとして、あるいは親が読んであげるお話としておすすめの1冊です。両親が忙しく、ベビーシッターも居眠りをしてしまっているクリスマスイブ。テオはクリスマスツリーの飾りつけをしながら「だれか、いっしょにいてください。ひとりぼっちじゃなく、いられますように」と祈ります。するとクリスマス飾りの天使や木馬、こまどりに太鼓をたたいているブリキの兵隊たちが、テオに声をかけてきたのです。クリスマスイブに起こる不思議な冒険が、サットンの色鮮やかで繊細な絵で表現されていきます。サットンのちいさなちいさなめにみえないびせいぶつのせかい(二コラ・デイビス/文 越智典子/訳 ゴブリン書房 2015)、いろいろいっぱい ちきゅうのさまざまないきもの(二コラ・デイビス/文 越智典子/訳 ゴブリン書房 2017)も好評でした。

 

 『ジングルベル』キャサリン・N・デイリー/作 J・P・ミラー/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2017/11/1

ジングルベル (おひざにおいで)
キャサリン・N・デイリー
PHP研究所
2017-10-19
 
クリスマスシーズンになると、あちこちで聞こえてくる「ジングルベル」の歌。耳になじみ過ぎて誰もが口ずさむことができるクリスマスキャロルの定番になっています。1964年にその歌詞をベースに作られたこの絵本は、クリスマスの楽しい雰囲気が暖かい色調で表現されています。PHP研究所の「おひざにおいで」シリーズの1冊です。おひざに子どもをのせて、一緒に歌いながら絵本を楽しめるといいですね。

 

『IMAGINE イマジン〈想像〉』ジョン・レノン/詩 ジャン・ジュリアン/絵 ヨーコ・オノ・レノン/序文 岩崎夏海/訳 岩崎書店 2017/11/30

IMAGINE イマジン 〈想像〉
ジョン・レノン
岩崎書店
2017-11-09

ジョン・レノンが世界の平和を願って歌った「イマジン」が絵本になりました。鳥の目から見たらどこにも国境の線はひかれておらず、人々は国を超え、人種を超えて平和に生きることができると、オリーブの枝をくわえた一羽のハトが象徴的に使われています。他人の立場にたって想像してみること、想像力をつかって他人を理解しようとするその行為こそが、平和を創り出すんだという「イマジン」の精神を子どもたちにも伝えていきたいですね。

 

 『ろうそくぱっ』みなみじゅんこ アリス館 2017/11/30

ろうそく ぱっ
みなみ じゅんこ
アリス館
2017-11-22


おはなし会の始まりと終わりに歌う手遊び「ろうそくぱっ」が絵本になりました。作者は『どんぐりころちゃん』のみなみじゅんこさんです。ろうそくをつけていくと、クリスマスツリーに灯がともります。またツリーのろうそくを消すと「よぞらにキラキラおほしさま」が輝きます。この絵本を読むタイミングは、クリスマスの時期だけという行事絵本です。クリスマスシーズンのおはなし会にぜひ取り入れてみてください。私も早速あるおはなし会でやってみました。普段通りに手遊びをする大人がいて、その隣で絵本をめくります。子どもたちは、自分の指の灯りが、クリスマスの飾りになっていると感じたようで、とても喜んでいました。

 

【児童書】

『グリムのむかしばなし Ⅱ』ワンダ・ガアグ/編・絵 松岡享子/訳 のら書店 2017/11/10

『100まんびきのねこ』などの作品があるワンダ・ガアグはミネソタ州ニューアルム生まれですが、ガアグの父はボヘミア(チェコ)出身 で、ニューアルムの町にはドイツ、オーストリア出身者が多く集まっていました。子ども時代に、父や周囲の大人からグリムの昔話をドイツ語で聞いて育ちます。子ども時代にたっぷり聞いたグリムの昔話を、生き生きとした言葉で再話しました。7月に出版された第1巻につづく第2巻です。こちらには「ブレーメンの音楽隊」、「ラプンツェル」、「三人兄弟」、「雪白とバラ紅」など9つのおはなしが入っています。よき語り手だったガアグの再話を、よき語り手である松岡享子さんが翻訳されました。他の再話と比較してみてください。そしてぜひガアグのグリムを子どもたちに読んで聞かせてほしいと思います。

 

『ふたりのスケーター』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2017/11/20

ふたりのスケーター
ノエル ストレトフィールド
教文館
2017-11-15

 舞台は第2次世界大戦前のイギリスです。ジョンソン一家の4人兄弟のたったひとりの女の子、ハリエットは10才です。しばらく体調を崩していましたが、お医者さんに体力をつけるためにスケートを勧められます。初めて行ったスケートリンクで、有名なスケート選手の忘れ形見で将来を有望視されているララと、運命的な出会いをします。ララは一人っ子で、しかも英才教育を受けるために学校には通っていなかったのです。ララにとっては初めて出来た同年代の友達ハリエットの存在は、互いに切磋琢磨していくかけがえのない存在へとなっていきます。その過程では嫉妬をしたり、誤解を解こうとして苦悩したり。10代の女の子の心の機微が丁寧に描かれていて、現代の子どもたちにも十分に通じることでしょう。小学校高学年から。

 

【研究書】

『絵本を深く読む』灰島かり/著 玉川大学出版部 2017/11/15

絵本を深く読む
灰島 かり
玉川大学出版部
2017-11-14

昨年6月に66歳の若さで亡くなった翻訳者で子どもの本の研究者の灰島かりさんの『日本児童文学』等の雑誌に連載した評論を、本人が亡くなる前に加筆、修正したいたものが、このほど出版されました。「絵本を深く読む」というタイトルの通り、作品を読み比べ、語句と絵を丁寧に読んで分析しています。現在、大人向け絵本の出版がとても盛んでし、子ども向けの絵本もさまざまなタイプのものが増えてきています。そのような中で、「絵本とは何か」というまっすぐな問いを、読み手に投げかけてくる、そんな1冊です。

 

【その他】

『ネコの時間』日髙敏隆/著 平凡社 2017/10/11

カエルの目玉(大野八生/絵 福音館書店 2011)という子ども向きの作品もある動物行動学の第一人者、日髙敏隆さんのエッセーです。タイトルになった「ネコの時間」以外にも「チョウという昆虫」、「ホタルの光」、「ドジョウは何を食べている?」、「水面を走るアメンボ忍者」など人間の周りにいる動物や昆虫の不思議な生態について綴られたエッセーが30ほど収められています。ちょっとした空き時間に、ひとつひとつを読むのが、ちょっとした楽しみになる1冊です。

(作成K・J)