Yearly Archives: 2017

今年のリンドグレーン児童文学賞が決まりました!
おはなし会のいろは(その1)絵本の持ち方、めくり方
6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2017)
小学校での読み聞かせ おすすめの本の紹介 4月
訃報 大岡信さん
おすすめ幼年童話1『おはようスーちゃん』ジョーン・G・ロビンソン 
基本図書を読む36『ムギと王さま』『天国を出ていく』エリナー・ファージョン
2017年度 学校図書館実践講座のご案内
2017年2月、3月の新刊から
2017年5月(その2)いってきます!(幼児~小学生向け)
「第6回児童部会(2017.3.17)」
2017年5月(その1)だっこして(小さい子)
5月のおはなし会☆おすすめ本リスト
『きゅうきゅうばこ』の新版が出ました。
基本図書を読む35『西遊記』呉承恩

今年のリンドグレーン児童文学賞が決まりました!


4月3日から6日までイタリア・ボローニャで開催されていたボローニャブックフェアにおいて、今年のリンドグレーン児童文学賞に『うんちしたのはだれよ!』の画家、ヴォルフ・エールブルッフ氏が選ばれたという知らせが入ってきました。

ヴォルフ・エールブルッフ氏は、それまでの功績が評価され2006年には国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。

リンドグレーン児童文学賞のページ→こちら(英文)

ロイター通信のサイト→こちら

『うんちしたのはだれよ!』ヴェルナー・ホルツヴァルト/文 ヴォルフ・エールブルッフ/絵 関口裕昭/訳 偕成社 1993

うんち したのは だれよ!
ヴェルナー ホルツヴァルト
偕成社
1993-11

 

 

ある日、もぐらの頭に空からだれかのうんちが落ちてきます。いったいだれの仕業かと、もぐらの犯人探しが始まります。はたして犯人はみるかるのか、なんとも、ユーモラスな絵本です。(偕成社の紹介サイト→こちら

ヴォルフ・エールブルックの邦訳されている作品は、このほかに『レオナルド』(うえのようこ/訳 BL出版 1996)や、『マイヤ―夫人のしんぱいのたねは?』(うえのようこ/訳 BL出版 1998)、『死神とアヒルさん』(三浦美紀子/訳 草土文化 2008)などをはじめとして、全部で9作あります。(絵本ナビサイト→著者詳細
 

『レオナルド』ヴォルフ・エールブルッフ/作 うえのようこ/訳 BL出版 1996

レオナルド
ヴォルフ・エァルブルッフ
ブックローン出版
1996-02

 

『マイヤ―夫人のしんぱいのたねは?』ヴォルフ・エールブルッフ/作 うえのようこ/訳 BL出版 1998

マイヤー夫人のしんぱいのたねは?
ヴォルフ エァルブルッフ
BL出版
1998-10
 
 
 
『死神さんとアヒルさん』ヴォルフ・エールブルッフ/作 三浦美紀子/訳 草土文化 2008
 
死神さんとアヒルさん
ヴォルフ エァルブルッフ
草土文化
2008-02
 
 
 
 
これを機会に、面出ししてはいかがでしょうか?
 
(作成K・J)

 

おはなし会のいろは(その1)絵本の持ち方、めくり方


新年度、異動などで児童サービス担当になった方もいると思います。昨年、児童サービス初心者向けにおはなし会開催についてのノウハウをお知らせするために連載した「おはなし会のいろは」を、再掲載いたします。

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「本のこまど」では、図書館の児童サービス担当のみなさんが図書館で「おはなし会」を実施するにあたって、これまでプログラムのおすすめプランや、おすすめの絵本リストなどの情報を中心にお届けしてきました。

そこで今回は「おはなし会」の実施方法(開催するための実際の下準備や声の出し方なども含む)について連載することにしました。6回にわけて掲載していきます。どうぞお楽しみに!

(その1) 絵本の持ち方、めくり方
(その2) 絵本の読み方 声の出し方
(その3) おはなし会の会場設営 雰囲気作り
(その4) プログラムの作り方
(その5) おはなし会でのこんなハプニング、あなたならどうする?
(その6) おはなし会終了後も大事です (フォローと記録)

 また今年度中に社員向けeラーニングに動画も配信していく予定です。

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1回目は、初めての人が意外と知らない絵本の持ち方、めくり方についてです。ただし、これは図書館などでの集団への読み聞かせの場合です。ご家庭での読み聞かせについて、利用者から質問があった場合は、お子さんをお膝にのせるか、隣に座って同じ視線で読んであげるとよいとお伝えください。

では、福音館書店の『おおきなかぶ』を用いて、説明をしていきましょう。(画像使用については出版社の許諾を得ています。)
『おおきなかぶ』A・トルストイ/再話 内田莉莎子/訳 佐藤忠良/画 福音館書店

絵本の準備

開きグセをつける

①絵本の準備

まず絵本が開きやすいかどうかを確認します。とくに新しい絵本は、開きにくくなっています。真ん中あたりのページを開き、両手で綴じの部分を軽く押さえます。ページ数の多い絵本や、硬い紙質の絵本の場合は、いくつかのページで同じように綴じの部分を押さえておきます。こうすることで開きグセをつけることができ、読んでいる最中にページが浮いたり、戻ってしまうことを防ぐことができます。

 

 

 

②絵本の持ち方

絵本の持ち方

脇をしっかりと締めて持つ

絵本の持ち方3

親指と手のひらがしっかりと絵本を支える

文字が横書きで右開き(左綴じ)の絵本は、身体の右側で絵本を持つとめくりやすくなります。(縦書き、左開き(右綴じ)の絵本の場合は、逆に身体の左側で左手で絵本を持ちます。)

右手で絵本の「のど」(綴じの部分)をしっかりと持ちます。
手のひらと親指で後方から絵本を支え、手前に4本の指を揃えて添えます。これで絵本が安定して、グラグラと動くことがありません。
脇はしっかりと締めておくと、さらに安定します。

左は後方から絵本を持っているところを撮った写真です。
親指と手のひらがしっかりと絵本を支えていることがわかるでしょうか。

 

 

③ページのめくり方

絵本の持ち方2

『おおきなかぶ』A・トルストイ/再話 内田莉莎子/訳 佐藤忠良/画 福音館書店

絵本を読み始める時は、表紙の絵をしっかりと見せてからタイトル名を読み、見返しのページもタイトルのページも一枚ずつゆっくりとめくっていきます。見返しに何も書いてないからと、一度にタイトルのページまでめくるのではなく、劇場で緞帳が徐々に開いていくように見返しのページもゆっくりめくっていくことが大切です。読んでもらう子どもたちは、どんな物語に出会えるかワクワクしながら待つことが出来ます。タイトルページでは、もう一度タイトルを読みましょう。なお、作者名、画家名などについては乳幼児の場合は読まなくても構いませんが、小学生には読んであげると、絵本を作ってくれた人への意識や、教科書で紹介されている作家と同じだという発見が出来て、次の読書へ繋げることが出来ます。

ページをめくる時は、左手で手前を少し浮かせてから、自然に向こう側へ送るようにします。この時、のどを持っている4本の指も使って、ページの中央でページを受け取って送って行きます。この方法で絵本を持つと、ページをめくる時に描かれている絵を腕で邪魔することがありません。(ただし、もっと横長で大型の絵本の場合は、左手で向こう側へ送っていく必要が出てきます。)

 なお、縦書き、左開きの絵本の場合は、逆に身体の左側で左手で絵本を持ち、右手でページを浮かせて送るとよいでしょう。

 これらの持ち方は、絵本の字面を読む時の人の視線の動きにも合致しています。視点は手前から遠方に動かすよりも、遠方から手前に動かす方がピントが合いやすく、読み間違いをしにくいという利点もあります。

また文章を読み終わってすぐにページをめくるのではなく、ひと呼吸分、両端の子どもたちに絵を見せるつもりでほんの少し腰を左右に動かしてからめくります。(なお、作品によっては次のページにさっと移ったほうがお話の流れとして良い場合もあります。)

 はじめて児童サービス担当になって、図書館で「おはなし会」をすることになった場合、多くの方が家で声を出して一生懸命練習することでしょう。しかし大勢の人の前で読むというのは、広がって座っているどの子どもたちにも絵本の絵がよく見えるように絵本を持つことや、絵に見入っている子どもたちの邪魔にならないめくり方など、ほんの少しのコツが必要です。

 不特定多数の人の前で絵本を読むということは、慣れないと緊張するものです。練習をするときは、同僚や家族に聞いてもらいながら、実際にこれらの持ち方、めくり方で練習をしてみてください。

次回は、絵本を読むときの声の出し方についてです。お楽しみに! 
(作成K・J)

6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2017)


6月のおはなし会や、展示で使える本のリストを更新しました。今年出版された本も追加しています。業務の準備のためにご活用ください。

4月に6月のリストを出すのは、おはなし会や展示の準備は2か月前くらいから選書を始めるなど、2か月前倒しで準備すると余裕をもって業務を遂行できるからです。年間計画に沿って、早め早めに準備するようにしましょう。

6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2017)

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(作成K・J)

小学校での読み聞かせ おすすめの本の紹介 4月


 *小中学校の入学式も終わり、いよいよ新しい学年度の始まりですね。小学校での読み聞かせでおすすめの本の紹介は、昨年度連載したものです。この時期に合わせて再度、掲載いたします。*

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公共図書館では、団体貸出などによる資料の提供、レファレンス、図書館見学や職場体験の受入れなどの学校支援サービスを行っています。公共図書館から学校図書館の担当者として職員を派遣している地域もあり、そういった学校図書館担当職員が学校での読み聞かせや本の紹介をする機会も多くなってきました。

 学校での読み聞かせは、学校の教育課程の一貫として行われていることや、朝の10分間に教室で行ったり、授業時間に図書室で行ったりと、時間や場所が様々であることなど、公共図書館のお話会とは異なる点もあります。

 そこで、学校での読み聞かせや本の紹介の本選びに活用してもらえるよう、毎月「小学校での読み聞かせ おすすめの本の紹介」を掲載していきます。

 急に読み聞かせをしてくださいとお願いされることもありますので、普段からいくつか候補になる本を用意しておくと安心です。ぜひ参考にしてみてください。

4月は、新年度のオリエンテーションのときに読み聞かせできる絵本という視点で選びました。

<低学年向け>

『おかえし』 村山桂子さく 織茂恭子え 福音館書店 1985 7分

おかえし (こどものとも傑作集)
村山 桂子
福音館書店
1989-09-25

たぬきの家の隣に引越してきたきつねは、挨拶にいちごを持って行きます。するとたぬきはお返しにたけのこくれたので、さらにそのお返しを持って行くことにするのですが・・・きつねとたぬきのお返し合戦が愉快な物語です。最後は贈るものがなくなって、自分までお返しの贈り物にしてしまいます。「これは、ほんの つまらないものですが、おかえしの おかえしの おかえしの おかえしの おかえしの・・・」という言葉の繰り返しも楽しく、子どもたちは一緒に声を出してくれます。初めての読み聞かせで、読み手も聞き手も緊張しているときに読むと、お互いの距離が近くなるような気がするおすすめの絵本です。

<中学年向け>

『としょかんライオン』 ミシェル・ヌードセンさく ケビン・ホークスえ 福本友美子やく 岩崎書店 14分

としょかんライオン (海外秀作絵本 17)
ミシェル ヌードセン
岩崎書店
2007-04-20

ある日、図書館にライオンがやってきました。ライオンは図書館のきまりをきちんと守って、お手伝いもしたので、みんなの人気者になります。ところがあるとき、図書館長のメリウェザーさんがけがをしたことを知らせるために、大きな声でほえてしまいます。きまりを守れなかったライオンは、姿を見せなくなってしまうのですが・・・。

オリエンテーションのときに、図書館のきまりを確認する学校も多いと思いますが、きまりが大切なことも、ちゃんとした理由があるときは守れないときがあることも、自然に伝わる楽しい物語です。

<高学年向け>

『図書館に児童室ができた日 アン・キャロル・ムーアのものがたり』 ジャン・ピンボロー文 デビー・アトウェル絵 張替惠子訳 徳間書店 2013 10分

図書館の児童サービスの先駆者の一人、アン・キャロル・ムーアの伝記絵本です。1870年にアメリカの小さな町で生まれ育った女の子は、大人になるとニューヨークに出て、図書館学を学び、子どものための児童室を作る仕事につきます。子どもは本を大切にできないから触らせてはいけないと考える人がいる時代に、「としょかんのやくそく」をしてもらって借りられるようにしたり、子どもたちに合う小さなイスやテーブルを作ってもらったり、わくわくするコンサートやお話会を開いたりと、様々な工夫をして子どもたちが楽しく過ごせる児童室を作っていくのです。アンのつくった児童室は世界中で参考にされ、現在の日本でもアンの仕事は生かされています。

図書館のことを知ることができると同時に、生涯を通して自分の仕事してきた、アンの生き方も興味深い本です。中学年でも一人の女性の物語として楽しめると思いますが、視野が広がり、将来を考え出す高学年にもおすすめしたい1冊です。

 <季節の本>

『たんぽぽ』 平山和子ぶん・え 北村四郎監修 福音館書店 1976 5分

身近にあるタンポポについて、科学的にわかりやすく紹介されています。語りかけるようなやさしい文なので、読み聞かせに向いています。絵は写実的で、葉や根、花は240もの小さな花が丁寧に描かれています。根は見開き2ページにわたって描かれているので、2冊用意して、子どもや先生に手伝ってもらって、つなげてみても楽しいでしょう。

 

 <気軽に楽しめる本>

  『それ ほんとう?』 松岡享子著 福音館書店 2010

「あるひあめりかうまれの ありのありすさんが あるあめのひに・・・」といったように、五十音それぞれに「あ」なら、「あ」で始まる言葉だけで、「い」なら「い」のつく言葉だけで、思わず「それ ほんとう?」といいたくなる、奇想天外な詩が作られています。自己紹介ついでに自分の頭文字の詩や、担任の先生の名前の詩を読んであげたりすると、楽しめると思います。

(作成 T.S)

訃報 大岡信さん


詩人の大岡信さんが、本日4月5日に亡くなられたというニュースが入ってきました。86歳でした。(ニュース記事は→こちら

1979年1月25日から2007年3月31日まで朝日新聞紙上に掲載された、大岡信さんによる古今東西の詩歌の紹介は通算6762回に及びました。昨年は童話屋より、春夏秋冬に合わせた『折々のうた 春夏秋冬』が相次いで出版されました。詩を学ぶ子どもたちに相応しい装丁で、ブックトークなどにも使える作品となっていました。(私は教文館ナルニア国でサイン入り本を入手。今となっては貴重な宝物です。)

『折々のうた 春夏秋冬』大岡信/著 童話屋 2016

折々のうた 春夏秋冬・春
大岡信
童話屋
2016-06-23
 
 
 
 
折々のうた 春夏秋冬・夏
大岡信
童話屋
2016-06-23
 
 
 

折々のうた 春夏秋冬・秋
大岡信
童話屋
2016-09-30
 
 
 

折々のうた 春夏秋冬・冬
大岡信
童話屋
2016-09-30

 

 

また、大岡信さんは何冊かの海外の絵本の翻訳もされています。詩人らしく、とても素敵な訳文になっています。ぜひこちらの作品もこれを機会に手にしてみてください。

『みつけたぞ ぼくのにじ』ドン・フリーマン/作 大岡信/訳 岩波書店 1977

みつけたぞぼくのにじ (岩波の子どもの本)
ドン・フリーマン
岩波書店
1977-06-24
 
 
 
 

 

『まっくろけのまよなかネコよおはいり』J・ワーグナー/作 R・ブルッグス/絵 大岡信/訳 岩波書店 1978

 

 

 

『おふろばをそらいろにぬりたいな』ルース・クラウス/作 モーリス・センダック/絵 大岡信/訳 岩波書店 1979

 

 

 

『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』大岡信/編著 岩波少年文庫 岩波書店 2005


 

心より哀悼の誠を捧げます。

(作成K・J)

おすすめ幼年童話1『おはようスーちゃん』ジョーン・G・ロビンソン 


 

ヴィアックスには児童部会という部会活動があります。(詳しくはこちらを見てください。→児童部会のページほんのふくろう-9

児童部会では27年度、28年度の2年間「基本図書から学ぶ」をメインのテーマにして活動をしてきました。それは、毎年2000点を超える児童向け出版物の中から、子どもたちに自信をもって手渡していく本を選ぶ力を身につけていくための実践的な学びでした。

1年目の27年度は絵本の読み比べを通して、長く読み継がれてきた作品がどのように子どもたちに受け入れられてきたのか、文章と絵、またそれらが補完し合うことで生まれる相乗効果などについて学び、作品を評価する視点を養ってきました。28年度は絵本から読み物へ移行する時期の幼年期に出会ってほしい本とはどのようなものであるかについて、基本図書を読み込むことを通して学びました。加えて本の特徴や 本質を捉えてレビュースリップを作成し、それをもとに紹介文を書くことも課題として取り組みました。

そして1年間の学びのまとめとして、2002年以降に出版された幼年児童文学のうち、東京子ども図書館の「こどもとしょかん」で選定されている166作品の中から、絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに相応しく、これからも長く読み継がれていくであろう作品を部員たちが1冊ずつ選びました。

今年度は、部員たちが交代でおすすめの幼年童話を紹介していきます。どうぞお楽しみに!
(第1回目は、このサイトの管理人K・Jですが、第2回から交代での執筆になります。)

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連載の第1回目を飾るのは、『おはようスーちゃん』(ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 中川李枝子/訳 アリス館 2007)です。

おはようスーちゃん
ジョーン・G. ロビンソン
アリス館
2007-09

 

 

 スーちゃんはとても好奇心旺盛な小さな女の子です。ちいさなおうちにパパとママと一緒に住んでいます。

 ある時、ままごとでお人形のセモリナのお誕生日パーティーをしようと、スーちゃんは庭の植木鉢を逆さまにしてケーキにし、その上ママが大切にしている食器や銀のナイフを勝手に使ってママを驚かせます。スーちゃんに悪気がないことを理解したパパとママは、頭ごなしに叱ったりはせずにスーちゃんのために砂場を作り、ままごとの食器を用意してあげました。(「1スーちゃんの砂場」)

 パパやママだけでなく、スーちゃんを取り巻くほかの大人たちも、子どもらしい発想で行動をするスーちゃんを、優しい眼差しで温かく見守っています。そんな中でのびのびと生活をするスーちゃんの姿に、読み手の子どもたちにも安堵感を与えることでしょう。

 この本には、無邪気で可愛らしいスーちゃんの日常を描いたお話が9つ入っています。

 ジョーン・G・ロビンソンはイギリス児童文学作家で、『テディ・ロビンソン』シリーズ(福音館書店)や『思い出のマーニー』(岩波書店)などの作品があり、子どもたちに長く親しまれています。翻訳は『ぐりとぐら』の中川李枝子さんです。

 この本はイギリスで1953年に出版されました。60年以上前の作品です。けれども、3、4歳頃の子どもの特性は昔と今とでも、さほど変わっていないことがわかります。今、読んでも「あるある、こういうこと」と思える子どもの姿です。ただ、今は情報が多すぎて子育て中の親はスーちゃんのパパやママのようにおおらかに見守ることが難しくなっているかもしれません。だからこそ、スーちゃんと同年代の子にはぜひ読んであげてほしいと思います。一人で読める子どもたちには、温かなユーモアを感じながら、幼いスーちゃんの様子を楽しんで読むことができると思います。 

(作成K・J)

基本図書を読む36『ムギと王さま』『天国を出ていく』エリナー・ファージョン


 36回目の「基本図書を読む」は、エドワード朝のイギリスで活躍した女性作家エリナ―・ファージョンの『ムギと王さま 本の小べや1』、『天国を出ていく 本の小べや2』(共に石井桃子/訳 岩波書店 岩波少年文庫)です。これらは、ファージョンが77歳の時(1955年)に、それまで書いた作品の中から27編の短編を自ら選んで一冊の本、『THE LITTLE BOOKROOM』(邦題 『本の小部屋』)として出版したものです。

『ムギと王さま 本の小べや1』エリナー・ファージョン/作 石井桃子/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2001

ムギと王さま―本の小べや〈1〉 (岩波少年文庫)
エリナー ファージョン
岩波書店
2001-05-18
 
 
 
 
『天国を出ていく 本の小べや2』エリナー・ファージョン/作 石井桃子/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2001
 

 

ファージョン作品集3『ムギと王さま』(石井桃子/訳 岩波書店 1971)では、原作と同じ27編が収められていますが、岩波少年文庫として出版される時に、14編と13編に分けられました。

 『ムギと王さま ファージョン作品集3』エリナ―・ファージョン/作 石井桃子/訳 岩波書店 1971

ムギと王さま (ファージョン作品集 3)
エリナー・ファージョン
岩波書店
1971-09-08

 

本の表紙画は、『チムとゆうかんなせんちょうさん』(瀬田貞二/訳 福音館書店)、『時計つくりのジョニー』(あべきみこ/訳 こぐま社)などでおなじみのエドワード・アーディゾーニで、たくさんの本に囲まれて、読書に没頭する子どもの姿が描かれています。

「作者まえがき」には、“わたくしが子どものころに住んでいた家には、わたくしたちが「本の小部屋」とよんでいた部屋がありました。なるほど、その家の部屋は、どの部屋も、本の部屋といえたかもしれません。”(『ムギと王さま』p3)と、子ども部屋も、父の書斎も、食堂も居間も、寝室も本であふれていたことが書かれています。

 そして「本の小部屋」について、次のように語っています。“わたくしに魔法のまどをあけてみせてくれたのは、この部屋です。そこのまどから、わたくしは、じぶんの生きる世界や時代とはちがった、またべつの世界や時代をのぞきました。詩や散文、事実や夢に満ちている世界でした。その部屋には、古い劇や歴史や、古いロマンスがありました。迷信や、伝説や、またわたくしたちが「文学のこっとう品」とよぶものがありました。”(『ムギと王さま』p4~5)

そうしたものに夢中になった子ども時代があったからこそ、ファージョンは詩や、子どものための創作物語を書くようになっていくのです。そして、77歳で出版した『THE LITTLE BOOKROOM』で、1956年にイギリスで出版された最もすぐれた子どもの本に贈られるカーネギー賞と、初の国際アンデルセン賞を受賞しました。

イギリス児童文学研究者の中野節子らは、『作品を読んで考えるイギリス児童文学講座4 花ひらくファンタジー』(中野節子・水井雅子・吉井紀子/著 JULA出版局 2012)の中で、“「イギリスのアンデルセン」といわれたエリナ―の特徴をよく伝える創作妖精物語の傑作が収められている。”と、この作品について評しています。

花ひらくファンタジー (作品を読んで考えるイギリス児童文学講座)
中野 節子
JULA出版局
2012-05

 

 

表題作の「ムギと王さま」は、お人よしの少年ウィリーがエジプトのラー王との不思議な問答を語ってくれるというお話です。エジプト王の持つ財宝よりも自分の父親が丹精込めて作ったムギのほうが金色だと信じるウィリーの純粋な気持ちと、空想の中で語られる問答に思わず引き込まれます。

「貧しい島の奇跡」では、貧しい島を訪問してくれる女王のために大切なバラの花を犠牲にして水たまりを埋めたロイスの心に報いるように、女王亡き後に起こる奇跡を描いています。純真な子どものひたむきさと、それが身分の高い人の気持ちを動かすという物語は、静かな感動がすっと心にしみわたりました。

ひいおばあちゃんのそのまたひいおばあちゃんの時代から代々受け継がれてきた子守歌を、百十歳のひいおばあちゃんのために歌ってあげる十歳のひ孫グリゼルダを描く「《ねんねはおどる》」は、健気な少女の姿に心を打たれます。

「サン・フェアリー・アン」というお話もまた印象的です。第二次世界大戦でリトル・エグハム村に疎開してきたキャシーはずっと心を閉ざしていました。それは大事にしていた人形のサン・フェアリー・アンを、いたずらっ子によって池の中に投げ込まれてしまったからでした。この人形は、第一次世界大戦前にフランスで作られ代々女の子に受け継がれていたもので、終戦後、フランスに従軍していたキャシーの父親が廃墟の中から拾って娘に渡したものだったのです。心を閉ざしているキャシーを気にしていたレイン先生の奥さんは、ある時干上がった池が不衛生なのを見て、池の掃除をします。最後に出てきたのがサン・フェアリー・アンでした。レイン先生の奥さんはその人形を見て驚きます。それこそ、自分がフランスにいた時、母から譲られ大切にしていた人形だったからです。幾世代も女の子たちの手を経て大切にされてきた人形が、キャシーのその後の人生を変えていくこのお話も、心を動かします。 

 27の短い物語は、どれも不思議で面白く、それぞれに歌うようなことばで、ファージョンが作り上げた想像の世界に私たちを誘ってくれます。この歌うようなことば、詩のようなことばこそファージョンの魅力なのでしょう。

『ファージョン自伝 わたしの子供時代』(エリナ―・ファージョン/著 中野節子/監訳 広岡弓子・原山美樹子/訳 西村書店 2000)によると、ファージョンの子ども時代、さまざまな生活の場面に歌があったと書かれています。ゲームの時に子どもたちがポーズを決めるときも、「はい、ポーズ」というメロディを母親がピアノで弾いていたというのです。(第5章 1890年代の子供部屋 p259)

この自伝にはあちこちに、遊びの中で歌われていたメロディが採譜されて掲載されています。

ファージョン自伝―わたしの子供時代
エリナー ファージョン
西村書店
2000-02
 
 
 

 エリナ―・ファージョンは1881年、ロンドンに生まれます。父親は貧しい生まれのユダヤ系イギリス人でしたが、ニュージーランドで新聞を発行する仕事につき、その後ベストセラー作家となってイギリスに戻ってきます。母親は、その作品愛読していたというアメリカの俳優ジョーゼフ・ジェファソンの娘マーガレットです。ふたりの間には、兄ハリー、そしてエリナ―、弟ジョーゼフ、ハーバート(ほかに夭折したエリナ―の兄チャールズもいた)の子どもたちがいましたが、兄弟は学校には通うことなく育ちました。ファージョンが物語のまえがきに書いた「本の小部屋」で、古今東西のさまざまな本に出会うことによって、さまざまな知識を得、想像の世界を広げていったのです。

この自伝は1935年にイギリスで出版されました。克明に自分たちの両親のこと、そして子ども時代のことが記されており、その中にはエリナ―・ファージョンの作品の魅力を理解するためのヒントがたくさん散りばめられています。

 ファージョンの作品は、一部では古臭いと評する人もいるようですが、想像の翼を広げて物語の世界に深く入り込んでいくことを好む子どもたちには、今でも手渡すことの出来る作品です。また、歌うようなことばで綴られた物語は、耳から聴いて心地よく語りのテキストとしておすすめです。

 

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2014年4月より毎月1回長く読み継がれてきた児童文学を紹介してきた「基本図書を読む」の連載は、36回をもって最終回とします。

第1回目の冒頭には、もう一人の執筆者T・S(のちにT・I)が
“「何か楽しい本ない?」と聞かれたとき、ブックトークを作成するとき、新刊図書の購入を検討するときなど、業務を行ううえで、本を選ぶ場面はたくさんあります。資料を選択するためには、その資料を評価しなければならず、資料を選ぶ判断基準が必要になってきます。判断基準をつくるには、とにかくたくさん本を読むことですが、とりわけ基本図書とよばれている本を読むことは、大きな力となってくれます。

基本図書とは、長い間子どもに愛され、読み継がれてきた本を言います。時の試練を経ても色あせることがない、読書の喜びを与えてくれる本で、図書館の蔵書の核となっています。基本図書を読むことで、子どもたちが本質的にどんなものを求めているのか、質の高い作品とはどのようなものなのか、図書館員としてどのようなものを手渡していくべきかが、自ずとみえてきます。

H26年度「本のこまど」では、「基本図書を読む」というテーマで、毎月1冊の本を紹介する予定です。大人になっても楽しめる作品ばかりですが、子どもたちはどんなふうに読んでいるのだろうという視点も持って、味わってみてください。12冊の中から、みなさまにとっても、心に残る大切な1冊が見つかり、仕事をしていくうえで力になってくれればと思っています。”

と記しました。

当初、1年だけで終わる予定だった連載を3年続けて来られたのは、私たちが子ども時代に読んだ本が、「子どもに本を手渡す」という今の仕事を支えてくれているという思いがあったからです。3年間で36冊を紹介できたことは、私たちにとっても喜びです。

この度、共に記事を書いてきた室員が産休に入ったこともあり、連載を終わることにしました。長い間、読んでくださりありがとうございました。

過去の記事はこちらから遡って読むことが出来ます。→「基本図書を読む

(作成K・J)

2017年度 学校図書館実践講座のご案内


学校図書館や子どもの読書にかかわる人が必要な知識や実技を身につけるための講座として、全国学校図書館協議会による学校図書館実践講座が実施されます。

現在は4~5月の参加者を受付中ですが、1年を通して学校図書館ですぐに活用できるテーマの講座が行われる予定です。

<主 催> 公益社団法人全国学校図書館協議会

<会場> 学校図書館センター4F会議室
     〒112-0003 東京都文京区春日2-2-7 

<参加者> 学校図書館の活動に興味関心のある方(大学生、大学院生も可)

<内容>


4/22【午前】「学校図書館基本のキ!」
  【午後】「選書で変える学校図書館」(中・高)
 
4/29【午前】「選書を見直そう」(小)
  【午後】「図書館だよりを作ろう!」

 

詳細や申込みに関しては、学校図書館協議会のホームページ→こちらをご覧ください。

なお、自己研鑽のための外部研修(費用等、自己負担)としてご案内しています。

 

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(作成K・J)

 

2017年2月、3月の新刊から


 

2017年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部2017年1月下旬発行のものあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『あめ』イブ・スパング・オルセン/作 ひだにれいこ/訳 亜紀書房 2017/2/13

あめ
イブ・スパング・オルセン
亜紀書房
2017-01-26
 
 
 シャルロッテという少女、雨音で窓を開けてみると、雨つぶの精バラバラとボトボトと出会います。バラバラから聞いたぼうけん話は、そのまま水の循環や、天気のことについて理解を促します。自分で読むなら小学生以上ですが、読んであげるなら幼児でも興味をもつでしょう。『つきのぼうや』(やまのうちきよこ/訳 福音館書店 1975)などで有名な国際アンデルセン賞作家オルセンの1963年の作品です。昨年11月に同じく亜紀書房から『かぜ』が出版されています。

 

『よるのこどものあかるいゆめ』谷川俊太郎/詩 むらいさち/写真 マイクロマガジン社 2017/2/15

よるのこどものあかるいゆめ
谷川 俊太郎
マイクロマガジン社
2017-02-03
 
 子どもを寝かしつけるための催眠療法をそのまま絵本にして爆発的に売れた絵本が昨年ありました。あれは催眠術の手法なので眠くなるのは当たり前なのですが、絵本としてどうかなと考えさせられました。世の中、子どもも寝かしつける親もストレスフルなのでしょうか。「ねるまえに読む本」というコンセプトで出版が相次いでいます。こちらはそんな流行に乗っているようでもありますが、谷川俊太郎さんの詩が、凝り固まった心を解きほぐしてくれて、読んでいくうちに安らかな気持ちになっていきます。海の中を撮影した写真も水にたゆとうように気持ちよくなっていく、そんな絵本です。
 
 
『ぼくの草のなまえ』長尾玲子/作 福音館書店 2017/2/10
 
ぼくの草のなまえ (福音館の科学シリーズ)
長尾 玲子
福音館書店
2017-02-08
 
 太郎くんが丹精込めて育てたチューリップのプランターの中に、小さな白い花をつけた雑草をみつけます。雑草だからと抜いたりせずに「かわいい花だな」と思った太郎くんは、植物に詳しいおじいちゃんに電話をして聞きます。花の色だけでなく、茎の様子、葉の形や手ざわり、つき方を順番に聞いていくおじいちゃん。その雑草がハコベであることがわかりました。名前がわかれば、抜かれる運命の雑草としてではなく、固有の植物として愛着もわきますね。デンマークで刺繡を学んできた作者の、緻密で丁寧な刺繡による絵が、植物の特徴をよく捉えていて素敵です。同じ作者の『ざっそうの名前』(福音館書店 2013)もおすすめです。
 

 『みどりの町をつくろう 災害をのりこえて未来をめざす』アラン・ドラモンド/作 まつむらゆりこ/訳 福音館書店 2017/2/10

みどりの町をつくろう 災害をのりこえて未来をめざす (福音館の科学シリーズ)
アラン・ドラモンド
福音館書店
2017-02-08
 
2007年5月にアメリカはカンザス州グリーンズバーグを巨大な竜巻が襲いました。日本国内でもニュースに取り上げられましたから記憶にある方もいらっしゃるでしょう。人口1400人の集落の9割の建物が全壊し、死者も11名でた大きな災害でした。この絵本は何もかも失ったグリーンズバーグの人たちが失意の中から立ち上がり、自然環境に優しい緑の町づくりに取り組む過程を子どもたちにもわかりやすい絵と文章でつづった絵本です。アラン・ドラモンドはイギリス在住の絵本作家ですが、『風の島へようこそ―くりかえしつかえるエネルギー』(まつむらゆりこ/訳 福音館書店 2012)で、グリーンアース文学賞を得ています。夏休みの自由研究のきっかけにもなる作品です。
 
 
『ぼくのあかいボール』イブ・スパング・オルセン/作 ひしきあきらこ/訳 BL出版 2017/2/20 
ぼくのあかいボール
イブ・スパング・オルセン
ビーエル出版
2017-02-20

こちらも、デンマークの絵本作家オルセンの1983年の作品です。いつも遊んでいるお気に入りのぼくのあかいボールが、ある時ころころころがって、バスの中へ。運転手におこられたボールは、どんどんどんどん逃げていき公園の中へ。さて、ボールはもどってくるのでしょうか。今年は日本とデンマークの国交樹立から150周年の年、練馬区下石神井にあるちひろ美術館・東京では3月1日からデンマークの心 イブ・スパング・オルセンの絵本」を開催中です。(5月14日まで)そちらで、この絵本の原画を見ることもできます。機会があれば原画にも触れてみてください。
 

 
『くまさん』まど・みちお/詩 ましませつこ/絵 こぐま社 2017/2/25
 
くまさん
まど みちお
こぐま社
2017-02-17
 
「はるがきて めがさめて くまさん ぼんやり かんがえた」で始まるまど・みちおさんの詩が絵本になりました。寝ぼけたくまさん、水に映った自分の顔をみて、自分がくまだったことを思い出します。小学2年生の国語の教科書 (三省堂)にも掲載されており、音読の宿題で声に出して読んでいたのを思い出します。ましませつこさんの優しいタッチの絵が、長い冬眠から覚めて春の訪れを喜んでいるくまの気持ちを上手に表現しています。耳に心地よいリズムの詩です。小さな子どもたちにも読んであげるとよいでしょう。

 

『どのはな いちばん すきな はな?』(0.1.2えほん)いしげまりこ/文 わきさかかつじ/絵 福音館書店 2017/3/5

どのはな いちばん すきな はな? (0.1.2.えほん)
いしげ まりこ
福音館書店
2017-03-01
 
 福音館書店の月刊誌「こどものとも0.1.2」から2冊、ハードカバーになりました。1冊めは2012年3月号の『どのはな いちばん すきな はな?』です。見開き画面にぱあっと広がる原色の美しい花。春らしい明るい気持ちになります。デフォルメされた絵ですが、なんの花かわかります。小さな子どもたちに、美しい花に目を向けてもらうきっかけになる1冊です。
 
 

『ひよこさん』(0.1.2えほん)征矢清./作 林明子/絵 福音館書店 2017/3/5

ひよこさん (0.1.2.えほん)
征矢 清
福音館書店
2017-03-01
 
2冊目は 2013年3月号の征矢清・林明子夫妻による『ひよこさん』です。ひとりでおでかけひよこさん、暗くなって動けなくなりました。でも大丈夫。目を覚ますとおかあさんがそばにいてくれました。小さな子どもたちに安心感を与えてくれるお話です。 
 
 

 『生きる』谷川俊太郎/詩 岡本よしろう/絵 2017/3/5

生きる (日本傑作絵本シリーズ)
谷川 俊太郎
福音館書店
2017-03-01
 
 月刊たくさんのふしぎ2013年9月号として出版された谷川俊太郎の詩「生きる」の絵本が、この度ハードカバーになりました。月刊誌の別刷付録「ふしぎ新聞」に、谷川俊太郎が「〈いま〉は物理的に一瞬でありながら、心理的には一瞬にとどまらないひろがりをもっています。(中略)〈いま〉を止めることは誰にも出来ませんが、〈いま〉を意識することが、逆に流れ止まない時間を意識することにつながることがある。」と、この詩の背景にある思いをつづっています。イラストレーターの岡本よしろうが描く何気ない家族の夏の一日が、そうした日常にこそ「生きる」実感があることを伝えてくれています。手渡すなら小学生中学年くらいから。
 

 『いのちのひろがり』中村桂子/文 松岡達英/絵 福音館書店 2017/3/5

いのちのひろがり (たくさんのふしぎ傑作集)
中村 桂子
福音館書店
2017-03-01

 こちらも月刊たくさんのふしぎ2015年4月号がハードカバーになりました。JT生命誌研究館館長、中村桂子氏が生命誌の考え方から地球上に生命が発生してからの38億年の歴史を、子どもたちにもわかりやすく説明してくれています。庭にいるアリも、魚も、草も木も人間も、地球上にいるすべての生命は38億年前に発生したひとつの細胞から始まっているという発見は、驚きとともに子どもたちに生命あることの感動を伝えることができると思います。自然科学絵本を得意とする松岡達英の絵も、子どもたちには親しみやすいでしょう。

 

 『だいち』谷川俊太郎/詩 山口マオ/絵 岩崎書店 2017/3/20

詩の絵本 教科書にでてくる詩人たち (5) だいち (詩の絵本―教科書にでてくる詩人たち)
谷川 俊太郎
岩崎書店
2017-03-08
 
 今回紹介する新刊本の中で3冊目の谷川俊太郎作品です。教科書に出てくる詩人たちの作品を絵本として出版しているシリーズの5作目です。この詩の初出は、詩集『いち』(佐野洋子/絵 国土社 1989)でした。「だいちのうえに くさがはえ/ だいちのうえに
 はながさき / だいちのうえに きはしげり / だいちのうえに あめはふる(後略)」と、大地の上で営まれる人々の暮らしを描く詩を、山口マオの力強い版画が際立たせます。読んであげることで、幼稚園の子どもたちにもこの詩の世界が理解できることでしょう。
 

 
『ドームがたり』アーサー・ビナード/作 スズキコージ/画 玉川大学出版部  2017/3/20

ドームがたり (未来への記憶)
アーサー・ビナード
玉川大学出版部
2017-03-11
 
 原爆ドームが主人公のこの絵本は、読む者にさまざまな思いを引き出してくれます。まずはまっさらな気持ちでこの絵本に向き合ってみるとよいでしょう。アメリカで生まれ育ったアーサー・ビナードは、来日するまで「原爆は必要だった」という歴史教科書の記述を疑いもしなかったそうです。しかし、29歳で初めて広島の原爆ドームの前に立った時、ほんとうにそうなのだろうかを疑問を持ちます。その思いを胸に書かれた作品です。スズキコージの絵もまた私たちに何かを訴えかけてくれます。先日、皇太子ご息女愛子さまが中学を卒業するのを機に公表された作文も原爆ドームを訪れた時の強烈な印象が素直に書かれていました。その作文を思い出しながら、ぜひこの絵本も読んでほしいと思います。
 

 【児童書】

サンタクロースのはるやすみ』ロジャー・デュボアザン/文・絵 小宮由/訳 大日本図書  2017/2/20

ロジャー デュボアザン
大日本図書
2017-02-22

 クリスマスにしか町へいかないサンタクロースは、春の訪れに誘われて町へ出かけていきます。変装して出かけたのに、立派なひげと赤い鼻をみて、サンタクロースからそれらを盗んだと疑われてしまいます。本物のサンタクロースだと、町の人たちにわかってもらうためにどうしたと思います?サンタクロースがイースターの町にいるなんて、素敵ですね。原題は「EASTER TREAT」です。『しろいゆきあかるいゆき』でコルでコット賞を受賞したロジャー・デュボアザンの作品で、翻訳は小宮由です。

 

『水の森の秘密』(こそあどの森の物語)岡田淳/作 理論社 2017/2 
 

1994年に『ふしぎな木の実の料理法』で始まった「の森でもなければ、の森でもない の森でもなけれな、の森でもない」「こそあどの森」で繰り広げられるスキッパーやポットさん、トマトさん、トワイエさんをはじめとする森の住人たちの物語が、12冊目のこの作品で完結となります。ある時、こそあどの森のあちこちに水がわき出し、湖のようになってしまいます。その原因をさぐるためスキッパーたちは、調査をはじめます。その意外な原因は!初期の「こそあどの森の物語」シリーズを読んできた世代ももう30代になろうとしています。12巻目が出たことで、最初のころの本も読み返そうとする子どもたちもいることでしょう。親子二代で読む子もいるのではないでしょうか。ぜひ、既出のシリーズと一緒に手渡してほしいと思います。 

 

『小さな赤いめんどり』アリソン・アトリ―/作 神宮輝夫/訳 小池アミイゴ/絵 こぐま社 2017/3/10
小さな赤いめんどり (こぐまのどんどんぶんこ)
アリソン アトリー
こぐま社
2017-02-27
 
 1969年に大日本図書から油野誠一の絵で出版されていたこの作品が、『とうだい』(斉藤倫/作 福音館書店 2016)を描いた小池アミイゴさんの絵でこぐま社の「こぐまのどんどんぶんこ」としてよみがえりました。油野誠一の絵で親しんでいた人には、イメージが違って見えることでしょう。ひとりで暮らすおばあさんのところにある夜、訪ねてきた小さな赤いめんどりは、実はふしぎな力を持っているのでした。絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに手渡したい作品です。
 

『たんけん倶楽部 シークレット・スリー』ミルドレッド・マイリック/文 アーノルド・ローベル/絵 小宮由/訳 大日本図書 2017/3/15

たんけんクラブ シークレット・スリー (こころのほんばこ)
ミルドレッド マイリック
大日本図書
2017-03-17

 今回、紹介した『サンタクロースのはるやすみ』と同じ大日本図書の「こころのほんばこ」シリーズの1冊です。小宮由が絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに手渡す本として厳選して翻訳しているラインナップです。海辺に住むビリーは友だちのマークと一緒に手紙の入っているビンを拾いました。その手紙には「たんけんクラブをつくろう」と書いてありました。それは沖にあるちいさな島の灯台にすむトムという男の子からのものでした。3人はビンに手紙を入れて海を隔ててやり取りをします。同年代の男の子がワクワクするお話です。

 


『メリーメリー おとまりにでかける』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/3/17
メリーメリー おとまりにでかける
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-03-18

『テディ・ロビンソン』や『思い出のマーニー』などの作品があるロビンソンの新しく翻訳された幼年童話です。1957年に書かれたものですが、今の子どもたちが読んでも楽しいお話です。5人兄弟の末っ子のメリーメリーは、いつもおにいちゃんやおねえちゃんにじゃまもの扱いされています。そんなことにめげないメリーメリーのゆかいなお話が5話入っています。自分で読むなら小学校低学年から。小さなお子さんには読んであげてほしい作品です。こちらも小宮由の翻訳です。

 

【その他】

乳幼児おはなし会とわらべうた』落合美知子/作 児童図書館研究会 2017/2/25

長年、図書館司書として、あるいは文庫活動を通して、「親子でたのしむ絵本とわらべうた」の活動を続けてこられた落合美知子さんの活動をまとめたものです。小さな子どもになぜわらべうたなのか、理論的なところもわかりやすくまとめてあります。わらべうたの実践事例や、資料なども豊富です。図書館などで乳幼児おはなし会、わらべうたの会を実施しようとしている図書館司書にとって、貴重なテキストといえるでしょう。ぜひ業務の際に手元に置いて参考にしてほしいと思います。詳しくは児童図書館研究会のサイト(→こちら)をご覧ください。

 (作成K・J)

2017年5月(その2)いってきます!(幼児~小学生向け)


 5月のおはなし会プランのメインは、素話を勉強する人が取り組みやすい「エパミナンダス」というおはなしです。無邪気なエパミナンダスの行動を、聞き手と一緒にいっしょに楽しめるといいですね。

「のはらうた」の中から詩を一編、それに日本昔話から『ももたろう』、そして写真絵本を1冊組み合わせてみました。約25分のプログラムです。

どれも、主人公が元気よく出かけていくで、テーマは「いってきます!」としました。

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【いってきます!】

導入 詩「さんぽのおと」こやぎようたろう 『のはらうた2』(くどうなおこ/作 童話屋 1985) より 3分

のはらうた 2
工藤 直子
童話屋
1985-05

 くどうなおこさんが、春を迎えて心弾むこやぎの気持ちを詩に表現しました。

 

「さんぽの おとは なんのおと?
 おや あしおとだ
 とんとんとん
 さっさっさ
   すたぱた すたぱた ととらたと
 こつこつ からころ ぱったんこ
 ここらで ちょっと ひとやすみ」(一部抜粋)

「さんぽの おとは なんのおと?」の後に、「おや いしころだ」、「おや みずたまり」、「おや かぜがふく」、「おや はながさく」、「おや ちょうがとぶ」、「おや おひさまだ」と、詩は繰り返し続きます。それぞれの音を表現するオノマトペ(擬音語)が耳に心地よい詩です。リズムよく読んであげましょう。

 

素話「エパミナンダス」  『愛蔵版 おはなしのろうそく1』(東京子ども図書館/編・刊)より 7分

エパミナンダス 1
東京子ども図書館
1997-12

 エパミナンダスはおかあさんに頼まれておばさんのところにおつかいに出かけます。そのたびにおばさんは「おかあさんにおみやげですよ」と、なにかを託してくれるのですが・・・無邪気なエパミナンダスの失敗に子どもたちもハラハラドキドキしながら聞いてくれることでしょう。 

 

 

絵本『ももたろう』まついただし/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 1965 7分

ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)
まつい ただし
福音館書店
1965-02-20
 
 携帯電話のCMで日本昔話の主人公たちが大活躍し、人気を博しています。これをチャンスとして、子どもたちに昔話を読んであげましょう。「ももたろう」も多くの再話あり、絵もさまざまな画家が描いていますが、福音館書店版の『ももたろう』は、赤羽末吉の描くももたろうの表情が、まっすぐと子どもに届き、心を動かすことでしょう。 

 

絵本『どこにいるの?シャクトリムシ』新開孝/写真・文 ポプラ社 2007 5分

 最後の1冊は、写真絵本です。シャクトリムシの動きや、擬態を、子どもたちが興味を持つように切り取って見せてくれています。身近な自然に目をむけてみるきっかけになることでしょう。

 

しめくくりのわらべうた さよならあんころもち 

 

(作成K・J) 

「第6回児童部会(2017.3.17)」


今年度最後となる第6回児童部会を3月17日(金)に開催しました。

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各自が2002年以降に出版され、東京子ども図書館の「こどもとしょかん」に選定された幼年童話の中から1冊選んで紹介文を作成し、発表をしました。

前半は、今年度続けてきた「基本図書から学ぶ」の集大成として、各部員がおすすめの幼年児童文学を選んで紹介文を作成し、その作品のブックトークをしました。

昨年度の「基本図書から学ぶ」は、絵本を読み比べることを通して、作品を評価する基準について学びました。今年度は、絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに手渡したい本を選び、作品の特徴や本質を捉え、対象者に向けて相応しい紹介文を書くことを目標に、レビュースリップの書き方、書評や紹介文の書き方について学んできました。

第6回は、この一年の学びのまとめとして2002年以降に出版された幼年向けの児童文学のうち、東京子ども図書館の「こどもとしょかん」に選定されている作品の中から、各自が1作品を選び、紹介文を作成しました。

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当日は部員と事務局合わせて17冊の本の紹介がありました。これまで読む機会がなかった作品について、みなさんが「ぜひ読みたい」と感じることができ、こうした紹介を図書館でしていくことの重要性にも気がつきました。

当日の発表を受けて、「作品のよいところを捉えて紹介してもらうと、まだ読んだことのない作品も読みたくなる」、「図書館に新刊を購入して配架するだけではなく、その作品を届けたい子どもたちに向けて紹介していくことが大切だと思う」、「紹介文を作成する際、紹介する人によって着眼点が違っていることが面白いと感じる。どんな切り口で紹介すれば、子どもに届くのか、考えるきっかけになった」などの感想が寄せられました。

 

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情報共有と懇談の時間

年間、2000点以上の児童書が出版されますが、児童サービス担当者が、すべてを手に取って選書するには時間が限られており、今回のように部員同士でおすすめの本を紹介していく機会は、とても貴重であるという声も多く聞かれました。第6回で発表した作品の紹介文については、手直しをしたうえで、4月より「本のこまど」上で公開していく予定です。

 

後半は、懇談の時を持ちました。それぞれが、別々の図書館で児童サービスを担う中で、2か月に1回集まって、アイディアを共有したり、共通の課題に一緒に取り組むという児童部会の活動が、それぞれの図書館でのサービスに活かされていることも大変うれしく思いました。

(作成K・J)

2017年5月(その1)だっこして(小さい子)


小さな子どもたちは、親の保護があってこそ安心して育つことができます。

2歳半ごろまでは「母子未分化」といって自己と他の関係が未分化で、親への依存度が高い時期です。成長とともに、自分ひとりで出来ることが増えると、自立の第一歩。親と子が別の存在だと自覚し、自分でなんでもやりたがる時期です。それでも、なにかあったら「だっこして」と駆け寄ってきます。しっかり抱きしめてもらうことで、安心してまた一歩踏み出すことができます。

「だっこして」を受け止めてもらえることが、信頼関係を築く第一歩。小さい子向けのおはなし会のテーマも「だっこして」にしました。

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【だっこして】

導入 わらべうた このこどこのこ 

このこどこのこ

 お子さんをお膝にのせて、大人が左右にゆっくりと揺れます。 激しく動き過ぎないように注意しましょう。最後のところは、各自が自分のお子さんの名前を呼びます。そして、お膝のお子さんをぎゅーっと抱きしめます。 

 

 

絵本『だっこして』にしまきかやこ/作 こぐま社 1995

だっこして (にしまきかやこ あかちゃんの本)
西巻 茅子
こぐま社
 
 「だっこして」とあかちゃんがいうと、「はい だっこ よしよし」と言ってだっこしてくれるおかあさん。「だっこして」と、わが子たちがいつまで言っていたかしらと思うと、せいぜい小学校に入る前くらいまで。長い子どもの人生の中で最初のほんの数年のことなんですね。しっかりぎゅ~っと抱きしめてあげてほしいと思います。「だっこして」といって、すぐに応えてもらった経験が、親子の信頼関係に繋がります。そんな思いをこめて読んであげましょう。
 
 
 
わらべうた とうきょうとにほんばし

とうきょうとにほんばし

 
 「とうきょうと」で一本指で手のひらをなぞり、「日本橋」で二本指でなぞります。「がりがりやまの」で手のひらをがりがりと引っかき、「パン屋さんと」で手のひらを軽くたたきます。「つねこさんと」で手のひらを軽くつねり、「階段のぼって」で二本指で腕を辿るように上って行って、「こちょこちょ」で首元をくすぐります。
  
 
わらべうた とっちんかっちん

とっちんかっちん

  
お子さんをお膝にのせて遊びます。「とっちんかっちんかじやのこ あわててとびだす」までは、膝の上にのせて膝を上下に動かします。「いしやのこ ドッシーン」と言いながら、おとなが膝を開いて間にすとんと落とします。 2番は「とっちんかっちんかじやのこ はだかでとびだす ふろやのこ ザッバーン」と歌って、最後は上に持ち上げて「たかいたかい」をします。
  
 
絵本『おかあさんといっしょ』薮内正幸/作 福音館書店 1985
おかあさんといっしょ (福音館の幼児絵本)
薮内 正幸
福音館書店
1985-03-30
 
 こちらも動物の母と子を描いた絵本です。先ほどの絵本と違って、こちらは薮内正幸さんの写実的な絵で、おかあさんといっしょに遊ぶ動物たちの表情が大変豊かで、小さな子どもたちにも安心感を与えます。 
 
 
わらべうた  ここはとうちゃんにんどころ 

ここはとうちゃん

 
「にんどころ」とは似ているところという意味です。「とうちゃんにんどころ」で右の頬、「かあちゃんにんどころ」で左の頬、「じいちゃんにんどころ」で額、「ばあちゃんにんどころ」で顎、「ねんちゃんにんどころ」で鼻をさわり、「だいどーだいどー」で顔全体をぐるっとさわって、最後はこちょこちょをします。
 
 
絵本『いちご』平山和子/作 福音館書店 1989
いちご (幼児絵本シリーズ)
平山 和子
福音館書店
1989-04-15
 
今はハウス栽培で、一年中食べることのできるいちごですが、 露地で栽培するいちごの旬は5月です。寒い冬を通り越して4月に花を咲かせ、5月には真っ赤で甘い実になります。読んでもらう子どもたちも笑顔になります。 
 
(作成K・J)

5月のおはなし会☆おすすめ本リスト


陽ざしが日に日に伸びて、春らしい光が降り注ぐようになりました。朝夕は、まだ冬の寒さですが、着実に春を迎えつつあるのを実感します。

さて、5月のおはなし会や館内展示で使えるブックリストを更新しました。業務の参考にしていただければと思います。

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5月のおはなし会☆おすすめ本リスト2017
(3月15日更新)

 

『きゅうきゅうばこ』の新版が出ました。


福音館書店のかがくのとも傑作集として1989年に出版された『かがくのとも版 きゅうきゅうばこ』(山田真/文 柳生弦一郎/絵)が、当時とけがの処置法が大きく変わってきたことを受けて、書き直され『かがくのともの きゅきゅうばこ 新版』としてリニューアルされました。

1989年出版の『かがくのとも版 きゅうきゅうばこ』

かがくのとも版 きゅうきゅうばこ (かがくのとも絵本)
山田 真
福音館書店
1989-03-25
 
 
 
 
この度、出版された新版『かがくのともの きゅうきゅうばこ』
きゅうきゅうばこ 新版 かがくのともの (かがくのとも絵本)
やまだ まこと
福音館書店
2017-02-01

 

 

2冊を並べて読み比べてみると、やけどの処置では、旧版は「みずぶくれは だんだん ちいさくなって なおることもあるし、やぶれることもある。やぶれたら うむといけないので、びょういんへいこう。」というところが、新版では「みずぶくれになっていたら、やぶって ひふくざいを はっておく。」に書き換えられています。

すりきずの処置では、旧版は「すいどうで よく あらいながしておこう。そのあと しょうどくして きれいな ガーゼをあてておけばいい。」、「すりきずは、たいしたことがないように みえても、けっこう なおりにくい。じくじく うんできたら、びょういんへ いこう。こうせいぶっしつの ついた ガーゼみたいなもので てあてしてもらえるでしょう。」というところが、新版では「すいどうで よく あらいながしておこう。そのあと ひふくざいか ラップを きずぐちに はっておけばいい。」、「すりきずは、たいしたことがないように みえても、けっこう なおりにくい。なんにちかして いたくなったら、うんだのかもしれないから びょういんへ いこう。」となっています。

それ以外にも巻末の「いえにおきたいきゅうきゅうセット」の内容が、旧版では「布ばんそうこう サージカルテープ 帯状ばんそうこう 殺菌消毒剤つきガーゼ 滅菌ガーゼ 殺菌消毒剤 粘着ほうたい 伸縮ほうたい 抗ヒスタミン剤 外傷殺菌消毒剤 副腎皮質ホルモン剤」となっていることろが、新版では「帯状ばんそうこう サージカルテープ 粘着ほうたい 伸縮ほうたい ハイドロコロイド被覆副腎皮質ホルモン剤 抗ヒスタミン剤 ペーパータオル 食品包装用ラップ タオル ハサミ 体温計 ペットボトルの水(傷口の汚れを流す)」となっており、この28年の間にずいぶん家庭での応急処置方法が変化してきたことがわかります。

後ろ見開きページに、この絵本の文章を書いた小児科医の山田真さんが、傷口を消毒しないで乾かさない治療法「うるおい療法」について、丁寧に説明をしてくださっています。

時代の変化に合わせて、絵も新たに描きなおされています。

知識の本は、新しい知見が出てきたときには、それに基づいた改訂が必要になります。2015年には『せいめいのれきし』(バージニア・リー・バートン/作 石井桃子/訳 岩波書店)が、科学者の監修のもと、改訂されています。(本のこまどでの紹介記事→こちら

長く都立多摩図書館などで児童図書館員として勤められた杉山きく子さんは、著書『がんばれ!児童図書館員』(本作り空Sola 2014、この著作は2016年東京子ども図書館から再刊されています)の中で、「ノンフィクションは、書かれた時点でもっとも新しい事実や知見をとりあげているのは当然だが、たいせつなのは対象に対する著者の姿勢や情熱である。最先端の知識を羅列しただけの新しい本よりも、内容は最先端でなくても、テーマに対する著者の愛情や情熱を感じられる本こそが、子どもにはふさわしい。また、学問は常に新しい研究によって進歩発展していることを示唆する姿勢も必要である。」(第2章 子どもの本をしるために 「ノンフィクション 知識の本」の項目より p65)と、述べられています。
 

がんばれ!児童図書館員
杉山 きく子
東京子ども図書館
2016-05-30
 
 
 

 

今回のこの改訂には、作者である山田真さんと柳生弦一郎さんの新しい知見を子どもたちへ伝えたいという思いを感じることができます。子どもたちに人気の著作だからこその、新版の意味を受け止めながら、図書館でも差し替えてあげてください。なお、旧版も廃棄せずに、子どもたちが比較して読めるようにしておくのもよいでしょう。

(作成K・J)

基本図書を読む35『西遊記』呉承恩


今月の基本図書は、呉承恩作『西遊記』です。岩波少年文庫(伊藤貴麿/訳 1955)と、読み比べた上で、君島久子が翻訳した福音館書店の本で紹介します。(今回は福音館文庫で読みました)

『西遊記(上)』呉承恩/作 君島久子/訳 瀬川康男/画 福音館書店 1975

西遊記(上) (福音館古典童話シリーズ (15))
呉 承恩
福音館書店
1975-07-15
 
 
 

『西遊記(下)』呉承恩/作 君島久子/訳 瀬川康男/画 福音館書店 1976

 

 

花果山の頂きにあった仙石から孵った石猿は、知恵も力も優れていたので、猿の群れの王座につき美猴王と名乗るようになります。そうやって五百年が経ったころ、仙人になろうとして斉天大聖となり、孫悟空という名前をいただきます。しかし仙力が強いことをよいことにやりたい放題。天宮を大いに騒がせ、お釈迦様に五行山の下に閉じ込められます。そのまた五百年後に縁があって三蔵法師に出会い、取経の旅に猪八戒、沙悟浄とともに同行することになります。物語は、西天目指して幾山河越えていく4人に、次々と困難が襲ってくる様が描かれています。これでもか、これでもかと次々襲いかかる妖怪変化の群れを、悟空たちが知恵と力を使って倒し、八十一の災厄艱難を切り抜け、ついには目的地にたどり着き、無事に経典をいただくまでが、百回の物語にまとめられています。

如意金箍棒を片手に觔斗雲に乗って、ひとっ飛びで十万八千里を越えることの出来る孫悟空の姿は、本だけではなく、映画やアニメーション、ゲームにもなっていて、知らない人はいないでしょう。妖術あり、心躍る冒険あり、唐の皇帝太宗や仏典を求めてインドへ旅をした玄奘など歴史上の人物も登場する壮大なファンタジー物語は、読む人の心を惹きつける魅力があります。乱暴者の孫悟空が健気にも三蔵を必死で守る姿や、食い意地がはって欲得に溺れて道を踏み外すけれども愛嬌のある猪八戒、一途に三蔵に仕える沙悟浄と、三蔵法師を守る三人の個性豊かなお供にも親しみがわきます。

今年1月に出版された『子どもの本のよあけー瀬田貞二伝』(荒木田隆子/著 福音館書店)には、瀬田貞二さんがインタビューに答えて「ぼくは『西遊記』って小学校三年のとき読んで、それでそれ以来なんべん読んだかわからないです。大好きなもののひとつですね」と答えている箇所があります。(『子どもの本のよあけー瀬田貞二伝』p323)

子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝 (福音館の単行本)
荒木田 隆子
福音館書店
2017-01-11
 
 
 
 

『王さまと九人のきょうだい』(君島久子/訳 赤羽末吉/画 岩波書店 1969)という中国昔話絵本の翻訳でも知られる君島久子さんによる福音館書店版『西遊記』は、声に出して読むとますます滑らかに物語が進み、その面白さを倍増させます。

 

たとえば、「なんじは妖怪か魔物か。我をたぶらかしにやって来たのか。我は公明正大の僧、大唐の勅命を奉じて、西天へ経を求めに行く者。三人の弟子があり、いずれも降竜伏虎の豪傑、妖魔を除く壮士。かれらに見つかれば、その身はみじんに砕かれるであろうぞ。」(第三十七回)、「なんだと。知らざあ言ってきかせよう。我々は、東土大唐より勅命にて、西天へ取経に行く聖僧の弟子だ。(中略)耳をそろえてそっくり返せば、命だけはかんべんしてやる」(第四十七回)という言葉は、目で追って読むよりも、実際に声に出して読んでみると、味わい深いものがあります。

西遊記〈上〉 (福音館文庫 古典童話)
呉 承恩
福音館書店
2004-01-20
 
 

 

西遊記〈中〉 (福音館文庫 古典童話)
呉 承恩
福音館書店
2004-01-20

 

 

西遊記〈下〉 (福音館文庫 古典童話)
呉 承恩
福音館書店
2004-01-20


 

福音館書店版は、「現存する「西遊記」のテキストとして最も古いものの一つ、明代(14~17世紀)に刊行された金陵世徳堂本を底本として、清代(17世紀~20世紀)に出された六種の刻本により校訂を行ない、北京人民文学出版社より刊行した「西遊記」に拠って訳したもの」(「はじめに」より)をもとにして訳出されています。

あとがきには、「作者は呉承恩(1500年~1583年)といっても、明代や清代の古い「西遊記」には作者の署名がなく、呉承恩が書いたという確かな証拠があるわけではありません。あるいは、この物語をまとめ、すぐれた文学作品に仕上げたのが呉承恩であったのかも知れません。」(「訳者あとがき」より)として、南宋時代に著された「大唐三蔵取経詩話」以降、多くの民衆に語り継がれ、「西遊記」という壮大なファンタジーになっていったのではと記されています。

また、福音館書店版は瀬川康男さんの挿し絵がとても目を引きます。この作品に取り掛かっている時、瀬田貞二さんと一緒に宋や明の時代の絵入り古版本を見ており、そうした絵の伝統も受け継いだ作品として仕上がっていると、先の『子どもの本のよあけ』にも記されています。(『子どもの本のよあけ』p324)

「王さまと九人の兄弟」の世界
君島 久子
岩波書店
2009-07-03
 
 
 

君島久子さんは、エッセイ『「王さまと九人の兄弟」の世界』(岩波書店 2009)の中で、孫悟空が刀や斧で切りつけられても死なず、八卦炉の中で錬成されても無事でるのは『王さまと九人のきょうだい』に出てくる「きってくれ」「ぶってくれ」などとの相似しており、天上の話から地獄の音まで聞き分ける聴力はリー族に伝わる「五人兄弟」に出てくる「千里耳」と相似しているなど、中国のさまざまな民族に伝わる多兄弟の昔話との関連を、「このように『西遊記』では、孫悟空が一人で、「九人兄弟」や「十人兄弟」のあらゆる超能力をそなえており、三面六臂の活躍を演じています。どんなに恐ろしく強大な相手にも負けないスーパーヒーロー孫悟空と、「九人兄弟」や「十人兄弟」には、どちらにも、大きな権力に屈しまいとする民衆の願いがこめられているように思われてなりません。」(p105「『西遊記』孫悟空の超能力」)と述べています。

三蔵法師のモデルとなった玄奘(602年~664年)は、隋王朝から唐王朝に代わった629年、太宗の時代に、仏教の研究のために原典を求めようと、西域を抜け、西トルキスタン、サマルカンドを通って、インドのガンダーラに到着、ナーランダ学院で仏典の研究を行い、645年に長安に戻ってきます。その後、「大唐西域記」を著しますが、彼の壮挙はその後広く語り伝えられるようになります。宋代(10世紀~13世紀)にすでに語り物として流行し、「大唐三蔵取経詩話」が書かれていたと、『西遊記』の「はじめに」にも記されています。元の時代には、「西遊記」として芝居として演じられるようになり、物語が次第に膨らんでいったようです。君島久子さんが書いているように、王朝が次々に変わっていく中国の歴史に翻弄される民衆が、語り伝えながら逞しい想像力で練り上げていった物語であり、だからこそ読む者を惹きつけるのだと思います。

今の子どもたちは自分で読むのは難しいかもしれませんが、ひとつひとつの回は短いので、ご家庭でぜひ読み聞かせをしてほしいと思います。「さて、次はどのようになるのでしょうか。次回をお楽しみに。」という言葉に促されて、きっと楽しみに聞くことでしょう。

(作成K・J) 

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