Yearly Archives: 2018

9月のおはなし会☆おすすめ本リスト2018
2018年5月、6月の新刊から
おすすめの幼年童話⑯『小さいおばけ』オトフリート・プロイスラー
『うみべのまちで』がケイト・グリナウェイ賞を受賞しました!
2018年(その2)そこにいるのは…(幼児~小学生)
基本図書を読む3『秘密の花園』 F・H・バーネット(再掲)
2018年8月(その1)おひさまさんさん(小さい子)
8月のおすすめ本☆リスト2018(更新あり)
30年度第1回児童部会の報告
基本図書を読む2『たのしい川べ』ケネス・グレーアム(再掲)
おすすめ幼年童話15『ナスレディンのはなし』トルコの昔話
4月、5月の新刊から(2冊追加あり)
2018年7月(その2)海の中では(幼児~小学生)
『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』BIBIANAから賞を贈られました!
2018年7月(その1)夏も元気だよ!(小さい子向け)

2018年5月、6月の新刊から


2018年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書売り場など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『ちょうちょのためにドアをあけよう』ルース・クラウス/文 モーリス・センダック/絵 木坂涼/訳 岩波書店 2018/5/17

ちょうちょのために ドアをあけよう
ルース・クラウス
岩波書店
2018-05-18

子どもたちにとって日々の生活は、いろんなわくわくすることに満ち溢れている、そんな日々の気づきが可愛らしいつぶやきになっていて、またセンダックが描く子どもたちの表情がとても愛くるしい小さな本です。おとなはそんな子どもの表情に癒されるでしょうが、子どもは自分と同じ目線、同じ考えをもっているということに「そうそう!」と頷くのではないでしょうか。集団での読み聞かせには向かないかもしれませんが、子どもを隣に座らせて読んであげたいなと思いました。この本を介しておとなと子どもの会話が弾みそうです。私は「おかあさんと おとうさんを つくるのは あかちゃん もし あかちゃんが うまれなければ ふたりは どっちも ただの ひと」この一文が一番気に入りました。


『どしゃぶり』おーなり由子/文 はたこうしろう/絵 講談社 2018/6/12

どしゃぶり (講談社の創作絵本)
おーなり 由子
講談社
2018-06-14
 
暑い夏の午後、空にもくもくと育っていく入道雲。黒い雲のかたまりがこっちに来ると思うと、「ぼつっ!ぼつっ!ぼつっ!あめだだ!」と、雨が降り始めます。雨が広げた傘にぶつかると「ばらっ ばらっ ばらっ ばらばらっ」「とん ととん ぼつんっ ばら ばら ばらっ かさの たいこだあ!」、ますます雨脚は強くなり「ずだだだだだだだ ぼぼぼぼぼぼぼ…」「ずざあ ずざあ ずざあ ずざあああ」。空から地面からものすごい音が溢れてきます。そうなると傘なんて無用の長物。傘を投げ捨て雨の中で飛び跳ねる男の子の躍動感は、生命の輝きに満ちています。先日、5月に亡くなったかこさとしさんの亡くなる約1か月くらい前の様子を撮影したNHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で、かこさんが絵本作家の鈴木まもるさんと雨粒の形について話すシーンがありました。雨粒は実は雫の形ではなく丸い形で空から降ってくるのだとかこさんが指摘するのですが、はたこうしろうさんは降ってくる雨粒すべて丸く、さすがだなと思いました。雨は、傘の先から垂れる時は雫の形に見えますが、空から降ってくるときは、少し押しつぶされたような丸い粒なのです。(参考までに→中日新聞プラス達人に訊け


『ぼくのなまえはへいたろう』灰島かり/文 殿内真帆/絵 福音館書店 2018/6/15

ぼくのなまえはへいたろう (ランドセルブックス)
灰島 かり
福音館書店
2018-06-13

2016年に亡くなられた子どもの本の研究者で翻訳者の灰島かりさんの作品です。(追悼記事→こちら)主人公の男の名前は「平太郎」。友達から「むかしのひとみたい」「うまれるとき、おならしたんだよ」とからかわれるので、自分の名前を変えたいと思います。市役所勤めの友達のおじさんに名前を変える手続きについて尋ねてみると簡単には変えられそうにない。そこで父親に直談判しにいくと、自分の名前に込められた思いを教えられます。それでも納得のいかない平太郎くん。でも少しずつ自分の名前を前向きに捉えていくおはなしです。福音館書店のランドセルブックシリーズは、絵本の形をしていますがひとりで読書を始める子どもたち向けの幼年童話として書かれています。


『旅の絵本Ⅸ』安野光雅/作 福音館書店 2018/6/15

旅の絵本Ⅸ (安野光雅の絵本)
安野 光雅
福音館書店
2018-06-13
 
安野光雅さんは、かこさとしさんと同い年の92歳。その安野さんの新作が6月に2冊出版されました。その1冊が長年旅先の風景を描き続けて来られた「旅の絵本」シリーズの9冊目『旅の絵本Ⅸ』、スイス編です。イタリア・ミラノから車でアルプス越えをしてスイスに入って行ったと解説編に書いてありますが、工事で一方通行になっていた急峻な崖路を命がけで越えた先で見たグラン・サン・ベルナール峠が、冒頭のページに描かれています。安野さんが実際に歩いてスケッチしたスイス各地の風景が、そこに暮らす人々の様子とともに描かれています。文字のない絵本ですが、旅人となって絵の中に入りこんでいくと思わぬ発見を、たくさんすることができます。
 
 
『Whale’s Way ザトウクジラ』ヨハンナ・ジョンストン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2018/6/16

ザトウクジラ
ヨハンナ・ジョンストン
好学社
2018-06-19
 
昨年12月に出版された『コウテイペンギン』(こちら→紹介記事)に続くヨハンナ・ジョンストンとレナード・ワイスガードによる動物の生態を丁寧に描いた絵本です。人間と同じ哺乳類でありながら、普段知ることのできないザトウクジラの生態、とくに子育ての様子を黒と深緑色2色で美しく描き出すワイスガードの画力に圧倒されます。ジョンストンのクジラへの愛情に満ちた言葉を、こみやゆうさんがわかりやすい日本語に翻訳しています。厳しい自然の中で生きるザトウクジラの生き方から、子どもたちもきっと何かを学ぶのではないかと思いました。
 
 
『シルクロードのあかい空』イザベル・シムレール/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店 2018/6/27

シルクロードのあかい空
イザベル・シムレール
岩波書店
2018-06-28
 
あおのじかん(こちら→紹介記事)やはくぶつかんのよる(こちら→紹介記事)に続くイザベル・シムレールの作品。こちらは「朝日にあかくそまる東の空に背をむけて、夕日がしずむ西をめざして」進むシルクロードを赤と白の対比をうまく使って描いています。蝶を専門とする若き昆虫学者が、西安を発って新疆ウイグル自治区の西の果て、カシュガルへと珍しい蝶を求めて旅をしていきます。壮大なシルクロードの風景と、その土地土地の風物や生物を克明に描くページとが交互に出てきます。風物や生物を描くページでは、まるで博物館の展示ケースを覗いているようです。手書き文字は岩波書店の担当編集者が書かれたそうです。
 
 
【詩】
 
『こどもあそびうた』谷川俊太郎/詩 山田馨/編 童話屋 2018/6/3

こどもあそびうた
谷川俊太郎
童話屋
2018-06-28
 
谷川俊太郎さんのこれまでの詩の中から、子どもたちが声に出して読める楽しいものばかりを、谷川さんの大親友で岩波書店で児童書の編集者だった山田馨さんが選んだ詩集が、童話屋から出ました。のはらうたと同じ文庫本サイズで、巻頭におかれた詩「かっぱ」にちなんで表紙デザインはつぶらな瞳の緑の河童です。お二人の友人だったはせみつこさん(詩やことば遊びをステージ構成したパフォーマー、『しゃべる詩あそぶ詩きこえる詩』などの詩集を編んでいる)へのオマージュとして本の帯には「子どもたちに贈る谷川俊太郎のあそぶ詩おどる詩そらでうたう詩」と書かれていました。巻末の詩「えかきうた」の「ひった へに びっくり」のページに描かれている「ひ」「へ」「び」を組み合わせた絵は谷川さんの自作とのこと。6月30日に行われた銀座教文館ナルニア国『こどもあそびうた』刊行記念トークで、童話屋の田中和雄さんと谷川さん、山田さんの楽しいおしゃべりの中で伺いました。声に出して楽しい詩は、おはなし会の導入に使えそうです。


【児童書】

『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』こまつあやこ/作 講談社 2018/6/5

昨年9月に第58回講談社児童文学新人賞(公式サイト→こちら)を受賞した作品が刊行されました。作者は現役の図書館司書さんです。題名には耳慣れない言葉が並びます。まるで魔法の呪文のようですが、これはマレーシア語でリマは5、トゥジュは7、つまり「五七五七七」という短歌の韻律をマレーシア語で表したものです。中学2年生の沙弥はマレーシアからの帰国子女、2学期から日本の中学に編入し毎日クラスの中で浮かないか、どきどきしていました。そんな時にみんなから「督促女王」と呼ばれている3年の佐藤先輩に図書室に呼び出されます。借りた本の返却だけかと思いきや、いきなり「今からギンコウに出かけるよ。ついてきてよ」と言われてしまいます。戸惑う沙弥でしたが…中学生の揺れる心を瑞々しい感性で描き、読後感はとても爽やか。ぜひこの夏、10代の利用者に薦めてほしい1冊です。
 

『ふくろ小路一番地』イーヴ・ガーネット/作 石井桃子/訳 岩波少年文庫159  岩波書店 2018/6/15新版第3刷

ふくろ小路一番地 (岩波少年文庫)
イーヴ・ガーネット
岩波書店
2009-05-15

イギリスの小さな町の袋小路に住んでいる子だくさんのラッグルス一家の、家族が織りなすドタバタの日々を描いた作品です。この本はイギリスで1937年に出版され、イギリス図書館協会からその年に出版された最優秀児童文学に贈られるカーネギー賞を受賞しています。ラッグルスのお父さんはゴミ収集を仕事とし、お母さんは洗濯屋さんで、その上子だくさんとくれば、TV番組などで取り上げられる貧乏子だくさん家族を思い浮かべてしまいます。この当時、イギリス児童文学が描いていたのは子守りのいる上流階級の家庭が多かったため、この作品は貧しい労働者階級を描いて話題を呼んだのです。7人の個性豊かな子どもたちが巻き起こすどんな失敗をも、おおらかに受け止める家族の物語は、とても愉快です。ガーネットは若い頃にロンドンの子どもを描くために貧民街を何度も訪ねたということです。そこで見た貧しいけれど生き生きと暮らす子どもたちの姿が作品の中で描かれているのでしょう。石井桃子さんはあとがきに「ガーネット女史の文体は、俗語もまじえた口語で、べらべらしゃべるような調子で書かれてありますので、訳すのに、たいへん苦労しました。」と書いています。その翻訳も大変魅力的です。新版が2009年に出た後、しばらく品切れになっていましたが、この度第3刷として出版されました。すでに蔵書している館も、旧版しかない場合は、この機会に買い替えてもよいと思います。



『源氏物語 つる花の結び 上・下』荻原規子/訳 理論社 2018/6


源氏物語 つる花の結び(下)
理論社
2018-06-12
 
 
『紫の結び』三巻から始まり、『宇治の結び』上下巻(宇治十帖)に続き、この度出版された『つる花の結び』上下巻で荻原源氏物語が完成しました。源氏物語五十四帖を、光源氏と藤壺の宮、紫の上の一生を描く『紫の結び』、中流階級の女人たちとの逢瀬から始まり玉鬘十帖へ続く『つる花の結び』、そして源氏の孫たちが主人公となる『宇治の結び』と大胆に3つの系統にわけて、全7冊に再構築したものです。千年の時を経た古典を読みやすい現代語訳にし、多くの若い読者に読んでほしいという作者の願い通りに、『つる花の結び』は、光源氏の色男っぷりを伝えていて、現代の若い世代も楽しんで読める作品になっています。
 
 
【その他】

 『かんがえる子ども』安野光雅/作 福音館書店

かんがえる子ども (福音館の単行本)
安野 光雅
福音館書店
2018-06-13

安野光雅さんの新刊のもう1冊は子どもの学びと生活について語るエッセイです。「おとなの目が行きとどいていることは必要ですが、行きとどきすぎると、子どもの自由がなくなります。」、「実際に触れて知る、というのは、映像などで見て知っている、というのとは違うと思います。(中略)実際に自然の中を歩いて、花が咲いているのを見、鳥が謳っているのを聞き、雨が地面にしみこんでいく様子を見たり、森の中のにおいをかいだり、というような、直接自分の体で触れて知るような体験とでは、感じかたが大きく違ってくると思います。」と述べ、子どもが体験し、そこから「どうなっているんだろう」と考える、そして自分で答えを見つけていくことの大切さを、実例をあげながら書いておられます。『ふしぎなえ』や、『はじめてであうすうがくの絵本』、『旅の絵本』は、それを実行された結果の作品だったのだと、改めて国際アンデルセン賞作家である安野さんのこれまでの仕事も理解できる1冊でした。

(作成K・J)

おすすめの幼年童話⑯『小さいおばけ』オトフリート・プロイスラー


小さいおばけ
オトフリート・プロイスラー
徳間書店
2003-07-16
 
 
 
   
 ずっと昔から、ドイツのフクロウ城というお城に、ひとりの小さい夜おばけが住んでいました。目を覚ますのは、夜12時からの1時間だけ。手には、ひとふりすると扉や門がぱっと開き、さっとふればたちまち閉まる13個の鍵がついた鍵束をいつも持っています。小さいおばけは、月の光を浴びたり、仲良しのミミズク・シューフーとおしゃべりしたりと楽しく暮らしていましたが、ふと、昼の世界を見てみたいと思うようになります。
 
 そしてある時、突然昼間に目が覚めるのです。小さいおばけは大喜びで、早速昼の世界を見てまわります。ところが、日の光を浴びて白い体が黒くなってしまい、町の人を驚かせて大騒ぎになってしまいます。夜おばけにに戻りたくても、方法が分かりません。そこで小さいおばけは、三人の子どもたちに助けを求めるのですが・・・。

 気が良くて、いたずら好きな小さいおばけが愛らしく、親しみが持てます。怒ると人間が恐れるほどの怖さを発揮するおばけらしさも魅力的です。小さいおばけが起こす騒動や昼間に目覚めてしまった謎が、どんどん読者を話に引き込みます。情景が細かく描かれた挿絵が豊富にあり、物語の雰囲気がたっぷり伝わってきます。

 作者のオトフリート・プロイスラーは、ドイツを代表する児童文学作家です。『小さい水の精』(畑沢裕子訳 徳間書店 2003)でドイツ児童図書賞特別賞を受賞しています。他にも、『小さい魔女』(大塚勇三訳 学研プラス 1965)や「大どろぼうホッツェンプロッツ」(中村浩三訳 偕成社 1966)シリーズがあります。小学校高学年からは、ドイツの一地方の伝説がもとになっている『クラバート』(大塚勇三訳 偕成社 1980)がおすすめで、壮大な世界に浸れます。様々な年齢で楽しめるプロイスラーの作品を、ぜひ手に取ってみてください。

*『クラバート』は、本のこまど「基本図書を読む㉛『クラバート』プロイスラー」→こちらで紹介しています。

(作成A・U)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら
第13回『こぶたのピクルス』→こちら 
第14回『オンネリとアンネリ』→こちら
第15回『ナスレディンのはなし』→こちら

『うみべのまちで』がケイト・グリナウェイ賞を受賞しました!


2018年のケイト・グリナウェイ賞(*)に輝いたのは、カナダの絵本『うみべのまちで』(原題「TOWN IS BY THE SEA」、ジョアン・シュウォーツ/文 シドニー・スミス/絵 いわじょうよしひと/訳 BL出版 2017/7/15)です。

*ケイト・グリナウェイ賞*
イギリスの絵本作家ケイト・グリナウェイにちなんで1955年に英国図書館協会によって設立された賞。1年間にイギリスで発行された絵本のうちで特に優れたものの画家に対して贈られる。

 

受賞を知らせるサイト→The Canadian Children’s Book Centre 「TOWN IS BY THE SEA wins Kate Greenaway Medl

 

この作品は、昨年産経児童文化出版賞翻訳賞も受賞しています。

昨年、この本が出版された時に教文館ナルニア国で読んで、紹介文を書いているのに、なぜか昨年の新刊情報から抜け落ちていました。(ノートから書き起こす時に、ページを飛ばしてしまった模様)

改めてこの機会に紹介します。

うみべのまちで
ジョアン・シュウォーツ
ビーエル出版
2017-07-11
 
 
“舞台は、カナダ、ノヴァ・スコシア州、ケープ・プレトン島。1950年頃の炭鉱のある町の様子を、炭鉱夫の息子の視点から描きます。うちの窓から、あるいは町のあちこちから見渡せる穏やかな海。その海の下に坑道があり、そこで父さんたちが働いている。美しい島の景色と対照的にところどころで挟み込まれる地下の坑道の様子。黒い地面が重苦しくそこで働く人々の上にのしかかるように描かれ、町の繁栄が暗い坑道で働く人々によってもたらされていることを語りかけている。
文章として書かれてはいないけれど、「そのころ、とうさんは、うみのした。くらいトンネルで せきたんを ほっている。」という繰り返される地下坑道の場面3,4枚目では落盤事故の様子が描かれる。地上ではやはり炭鉱夫だったおじいちゃんのお墓に行って花を捧げる少年。次のシーンでは父さんが疲れて帰ってくるとシャワーを浴びて、家族で食事をし、ベランダで家族4人並んで海をみつめるシーンへと続く。「いつかぼくも そこではたらく。」最後は暗い海辺の町を海上から引いてみるアングルから描き「ぼくは、たんこうではたらく とうさんのむすこ。」「ぼくのまちでは、みんな そうやっていきてきた。」というセリフで終わる。”
 
カナダ人のイラストレーター、シドニー・スミスはノヴァ・スコシア州出身の38歳で、ノヴァ・スコシア美術デザイン学校の出身です。彼は、光の表現が非常に上手く、美しいのです。その抑えた光のきらめきが、人々が親から子へと連綿と受け継いできた生活を静かに指し示してくれます。またまばゆいような少年の一日と、暗い坑道の様子と対比、少年の住む家の中の様子を描くかと思うと、次のページでは俯瞰して広い大海原を見せるという視点の移動など、絵を通して私たちに豊かに語りかけてきます。
 
シドニー・スミスの手がけた絵本で、ほかに日本で出版されているものに、文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社 2016)があります。

おはなをあげる (ポプラせかいの絵本)
ジョナルノ ローソン
ポプラ社
2016-04-04
 
この作品ではカナダ総督文学賞(児童書部門)。ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞なども受賞しています。
 
 
ぜひこの機会に手に取って読んでほしいと思います。
 
(作成K・J)

2018年(その2)そこにいるのは…(幼児~小学生)


誰も家にいない夜に、2階からドアの閉まる音がして、飛び上がってしまいました。そお~っと確かめに行くと、空気を入れ替えるために窓を開けていた部屋のドアが、風でぱたんと閉まったのでした。

人が何かの気配を感じとるのは、微弱な電気を発しているからなのだそうです。人間の筋肉が動いたり、脳が体に指令を出したり、心臓などの臓器が動くのもそうした電気信号によるもので、東京大学生産技術研究所の研究で人間の体を覆っている凖静電界が、気配の正体ではないかとのこと。内耳にある微細毛や、体毛などがセンサーになっているらしいのです。夏は薄着になるから余計に気配を感じるのでしょうか。考え始めたら眠れなくなりそうです。

という前置きはさておいて、8月のおはなし会プランは、そんな気配を感じるようなおはなしを選んでみました。

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【そこにいるのは…】

導入 詩 「おばけちゃん」永窪綾子 『ぼうしをかぶろう〔夏の詩〕』(こわせ・たまみ/編 高畠純/絵 あすなろ書房  2001)より 1分

ぼうしをかぶろう―夏の詩 (季節の詩の絵本)
あすなろ書房
2001-04
 
「おにいちゃんにもらった むぎわらぼうし ちょっとおおきいけど すっぽりかぶる」
「おねえちゃんにもらった ワンピース ちょっとおおきいけど すっぽりきちゃう」
子どもたちの身近にありそうなことから、「あれっ!」と気づかせる楽しい詩です。
「おばけのどろんのおでましだ」の繰り返しも楽しい詩を、子どもたちと一緒に声に出して読んでみましょう。
 
 
 
絵本『おばけなんてないさ』せなけいこ/絵 槙みのり/作詞 ポプラ社 2009 2分半
おばけなんてないさ (せなけいこのえ・ほ・ん)
槇 みのり
ポプラ社
2009-07-01
 
誰もが知っている童謡「おばけなんてないさ」が絵本になっています。後ろに楽譜もついているので、一緒に歌いながらページをめくっていくとよいでしょう。全部で5番まであります。
 
 
素話「ちいちゃい、ちいちゃい」『イギリスとアイルランドの昔話』(石井桃子/編・訳 J・D・バトン画 福音館書店  1991)より 3分半

イギリスとアイルランドの昔話 (世界傑作童話シリーズ)
福音館書店
1981-11-25
 
イギリスの昔話として有名な「The Teeny-Tiny Woman(ちっちゃい、ちっちゃいおばあさん)」です。短いおはなしですが、「ちっちゃいちっちゃい」の繰り返しに舌を噛まないように、緩急をつけながら丁寧に語りましょう。何かが「おれのほねを、かえしてくれ!」という声がだんだんに大きくなるところは、はっきりとその差がわかるように声の大きさに留意しましょう。
絵本版には『ちいさいちいさいおばあさん』(イギリスの昔話 ポール・ガルトン/絵 はるみこうへい/訳 童話館出版  2001)や、『ティーニイタイニイちいちゃいおばちゃんーイギリスのこわ~い昔話』(ジル・ベネット/作 トミー・デ・パオラ/絵 ゆあさふみえ/訳 偕成社 1988)があります。 図書館にあれば、合わせて紹介してあげましょう。
 
ちいさいちいさいおばあさん
ポール ガルドン
童話館出版
2001-04-01
 
 
 
絵本『ゆめみるじかんよ こどもたち』ティモシー・ナップマン/文 ヘレン・オクセンバリ―/絵 石井睦美/訳 BL出版 2017 5分

ゆめみるじかんよ こどもたち
ティモシー・ナップマン
ビーエル出版
2017-06-27
 
庭でアリスとジャックがボール遊びをしていると森のほうから聞こえてくる不気味な声。一体なんの声なんだろう?と姉弟は森の中を踏み分けて行きます。だんだん近づく不気味な声。怖いオオカミかもしれないと思ったその時、二人が目にしたのは我が子に子守歌を歌うかあさんオオカミの姿でした。オオカミの不気味な声の部分は読みにくいかもしれませんが、声を低くしてゆっくりと読むとよいでしょう。

(作成K・J)
 

基本図書を読む3『秘密の花園』 F・H・バーネット(再掲)


 2014年6月23日に公開した「基本図書を読む3『ヒミツの花園』」を再掲載します。この作品は、5月に少年写真新聞社から発行された『小学生のうちに読みたい物語~学校司書が選んだブックガイド~』にも掲載されています。

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 著者F・H・バーネット(1849-1924)は、イギリス生まれの作家で、早くに父を亡くして経済的に苦労し、16歳でアメリカに移住します。幼いころから文章を書くことが好きだったことから作家となって生計を立て、『小公子』『小公女』で大成功をおさめます。『秘密の花園』は、1911年の出版当時はあまり話題にならなかったそうですが、現在では児童文学の傑作に値すると評されています。

 メリーは、インドで召使いに甘やかされて育った大変わがままな女の子です。コレラで両親が亡くなったので、イギリスのおじさんの家に引き取られます。ムーア(荒野)に囲まれた大きなお屋敷には、遊び相手もおらず、仕方なく外に出たメリーは、10年間誰も入ったことがない秘密の庭を見つけ、自分の手で荒れた庭を生き返らせることに決めます。また、自分は死ぬんだと思い込んで隠れるように暮らしていた従兄のコリンも見つけ、2人はぶつかり合いながらも仲良くなります。田舎の少年ディッコンの力も借りながら、庭仕事に励み、時がとまっていた庭が息を吹き返したとき、お屋敷に嬉しい奇跡が起こるのです。

閉ざされていたメリーとコリンの心が、自然の力や、周りの人の助けをかりて、生き生きと生命力を取り戻していく様子が無理なく感動的に描かれている作品です。風がふきぬける暗い海のようなムーア(荒野)、冬枯れの茶色で覆われた静かな庭、そして、その庭が春を迎え鮮やかに彩られていく様子など、細やかで美しい自然描写は、そこにいる人の心も映し出しているようで、心に残ります。また、笛を吹くと動物たちが集まってくるディッコンや、10人の子どもをたくましく育てているおかみさん、表面では無愛想だけれど心優しい庭師のベンなど、イギリスの田舎ヨークシャで暮らす素朴であたたかい人たちも魅力的です。

小学校高学年を中心に、「秘密」という言葉にひかれた子や、花や動物が好きな子などが手に取り、時間をかけて読む姿を何度か見られました。また、大人の方にすすめても、喜んでもらえることが多かった作品です。

『秘密の花園』は、古典作品ということで、名作全集などでダイジェスト版も多数出版されています。2点ほど読んでみましたが、自然のもつ力、複雑な感情の動き、子どもたちが成長していく様子は、ダイジェスト版では感じることができませんでした。この作品は、全訳で丁寧に読んでこそ、その魅力を味わうことができると思います。

現在手にとりやすい完訳本として、下記の3点をおすすめします。

秘密の花園』 FH・バーネット作 猪熊葉子訳 堀内誠一画 福音館古典童話シリーズ または 福音館文庫 

 

秘密の花園 (福音館古典童話シリーズ (24))秘密の花園 (福音館文庫 古典童話)
フランシス・ホジソン・バーネット
福音館書店 1979-10-31
フランシス・ホジソン バーネット
福音館書店 2003-06-20
 

 

 

『秘密の花園 上・下』 バーネット作 山内玲子訳 シャーリー・ヒューズ画 岩波少年文庫

 

秘密の花園〈上〉 (岩波少年文庫)秘密の花園〈下〉 (岩波少年文庫)
フランシ・ホジソン バーネット
岩波書店 2005-03-16
フランシス・ホジソン・バーネット
岩波書店 2005-03-16

 

 

 

いずれも、完訳ですが、方言の訳し方が違ったり、挿絵が違ったりして、印象が異なりますので、読み比べてみると楽しいです。子どもにすすめるときには、3点を見せて、好きなものを選んでもらうのもよいかと思います。

ダイジェストの問題については、『読む力は生きる力」』(脇明子著 岩波書店 2005でも取り上げられています。

 

読む力は生きる力
脇 明子
岩波書店
2005-01-18

 

 

 

著者は、ダイジェストにすることが、絶対に悪いのではないが、「ただし、ダイジェストとして許せるのは、あくまでも原作を尊重し、そのよさを損なわないように注意しながら刈り込んだもので、しかも、あとがきなどに、それが原作どおりでないこと、どんな方針でどれくらい縮めたものであるかということを明記してあるものだけです。」と述べています。わかりやすく簡単なものをよかれと思ってすすめることが、その子の作品との本質的な出会いを奪ってしまうこともあることを心にとめて、本を選び、手渡していく必要があるでしょう。

『読む力は生きる力』は、大学教授で、「岡山子どもの本の会」代表の著者が、どうして子どもたちにとって「本を読むこと」が大切なのか、学生や子どもと本に関わっている仲間とやりとりするなかで、深めていった考えが書かれています。現在の日本の子どもの現状に即して、読書の本質を考えることができますので、一読をおすすめいたします。

(作成T.I)

2018年8月(その1)おひさまさんさん(小さい子)


夏の陽射しをあびて、すくすく育つ植物のように、子どもたちも外で遊ぶのは大好きです。そんな元気な子どもたちを思い浮かべながら、8月のおはなし会プラン(小さい子)を作りました。

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【おひさまさんさん】

導入 わらべうた ととけっこう

ととけっこう

 

 

 

 起こし遊びです。おはなし会にミトンくまさんを使っている場合は、この歌でくまさんを起こします。何度か繰り返し歌います。くまさんが起きてきたら「おひさまが、起きてくるのを待ってたよ」と言いながら、絵本に繋げます。ミトンくまさんで「くまさんのおでかけ」をやってから、絵本を読んでもよいでしょう。

 

絵本『おひさまさんさん おはようさん』なかじまかおり/作 岩崎書店 2012 1分

「おひさまさんさん おはようさん」「もくもくくもさん やってきて」と、とてもリズミカルなことばで天気のうつりかわりを表現しているあかちゃん絵本です。雲が出てきて、ざっと雨が降り、雲を風が飛ばして、虹が出て、また太陽の光がさんさんと降り注ぎます。絵もはっきりしていて小さな子どもたちにもぴったりの絵本です。
 

わらべうた うえからしたから

うえからしたから

 

 

 

 

雨雲を吹き飛ばしてくれる風、暑い季節に吹き渡る風は気持ちがいいですね。このわらべうたを歌う時は、ハンカチなどを使って布を上下に振って遊びます。また大きな風呂敷やスパークハーフ(布)を用意できる場合は、両端を大人が持って上下に揺らしで、子どもたちに風を送って遊びます。

 

 

絵本『かぜびゅんびゅん』新井洋行/作 童心社 2012  1分

 


「かぜ ふわわー」「ぱたぱたぱた」「げんきに びゅるるーん」と、風の様子をオノマトペで表現した楽しい絵本です。最後のページは青い海原を「どこまでも どこまでも びゅんびゅん」。風になって飛んでいきたくなるほど爽快な風の絵本です。絵本を読んでから、もう一度わらべうたで「うえからしたから」で遊んでみても良いでしょう。

 

わらべうた おふねがぎっちらこ

 

おふねがぎっちらこ

 

 

 

 

大海原を風が渡っていったので、みんなも舟に乗って海に漕ぎ出しましょう。お母さんやお父さんのお膝の上に向かい合わせに座って、前後に体を引っ張り合います。小さな赤ちゃんの場合は、お母さん(お父さん)の胸に抱っこしたまま、お母さん(お父さん)が揺れます。

 

わらべうた こまんかこまんか

こまんかこまんか

 

 

 

 

「小さな舟に横波が押し寄せてきたよ~舟から落っこちないでね~」と声をかけながら、舟になっているお母さん、お父さんが左右に体を大きく揺らします。もしスペースが広くとれる場合は、なんどか歌った後に、大きく揺れて親子でごろんと横に倒れ込んで遊んでもよいでしょう。

 

 

絵本『うみ ざざざ』ひがしなおこ/作 きうちたつろう/絵 くもん出版 2012 1分半

うみざざざ (はじめてであうえほんシリーズ)
ひがし なおこ
くもん出版
2012-07-01

これまでも何度かおはなし会プランに取り上げた海の絵本です。「ざざーん ざざざざざ ざっぱーん」「なみにゆられて ゆーらりこ」詩人のひがしさんが海を表現する言葉も、小さな子どもにとって耳心地のよいものです。

 

わらべうた こーりゃどーこの

こーりゃどーこの

 

 

 

 

 

 

 

このわらべうたは、立って遊びます。赤ちゃんを抱っこして、少し大きい子は大人が両脇をしっかりと支えて、歌に合わせて左右に揺すります。最後の「ドボーン」で子どもを少し高く掲げてから、下へ降ろします。立って遊ぶスペースがない図書館では、お母さん(お父さん)が座ったまま、左右に揺れ、「ドボーン」で子どもを高く持ち上げて、膝を間に落とします。

 

わらべうた さよならあんころもち

 

(作成K・J)

8月のおすすめ本☆リスト2018(更新あり)


8月のおはなし会やブックトーク、特集展示などで使える本のリストを更新しました。2017年、2018年に出版された本も追加しました。

プリントアウトしてファイリングしたり、利用者からの問い合わせにもご活用ください。summer_i174s

8月のおはなし会おすすめ本リスト2018

(6月19日に数冊追加して更新しました)

30年度第1回児童部会の報告


5月18日(金)14:00~17:00

今年度第1回目の児童部会が開催されました。

今年の活動目標は以下の3点です。IMGP6077
(1)児童サービスの現状と課題を分析し、地域の読書支援拠点としてのアウトリーチサービスについて考え、それを実践し、検証する
(2)(1)の学びを通して、リーダーとしての資質を醸成する
(3)児童サービス業務について情報を共有し、各図書館のサービスに生かす

これまでの児童サービスは図書館に来る子どもたちを主に対象として考えていました。しかし図書館に来る子どもたちは、保護者も図書館を活用することの良さを知っていて、読書にも熱心な家庭の子どもたちです。
IMGP6082
でも、家庭で本を読んでもらったことのない子どもたちがいる事実に行き当たり、地域の読書活動の推進拠点となるためには、図書館に来ない子どもたちにどうサービスを届けるのか司書として真剣に考えていかなければならないと、今年度のテーマとしました。

このテーマについて2年間かけて、実態を把握し、どのようにアプローチをするか考え、それを実施し、検証することを目指しています。

2年継続参加できることを参加要件にしたので、部員は減りましたが、その分、議論は活発に出来るようになっていると思います。IMG_1311

1回目の活動は、4月に公表された「第4次子供の読書活動に関する基本的な計画」をグループごとに読込み、図書館が地域においてどのような役割を期待されているのか、意見を交わしました。

次回の開催に向け、部員たちは図書館の利用状況など様々なデータを調べてくることになっています。

これからの取り組みも「本のこまど」でシェアしていきます。

(作成K・J)

基本図書を読む2『たのしい川べ』ケネス・グレーアム(再掲)


2014年に配信した記事を、再度掲載します。記事の後半で紹介した『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか』の作者竹内美紀氏が、子ども向けの伝記『石井桃子 子どもたちに本を読む喜びを(伝記を読もう)』(竹内美紀/文 立花まこと/絵 あかね書房 2018/4/5)を出版されています。

こちらもぜひ読んでみてください。

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「基本図書を読む」の2回目は、ケネス・グレーアムの『たのしい川べ』です。

たのしい川べ―ヒキガエルの冒険
ケネス・グレーアム
岩波書店
1963-11-29
 
 
カナダおよびアメリカの児童文学に大きな影響を与えたのリリアン・H・スミスが、『児童文学論』(岩波書店、1964)の中で、「『たのしい川べ』は、ゆたかな心の生んだ、ゆたかな本である。そして、非常な明確さとつややかさをもって書かれ、使われていることばは、韻文のもつ呪力にみちている。文にはリズムがあり、また、アーノルド・ベネットのことばを借りれば、「そこには、森と水辺のうた」が見いだされるので、声をだして読むのに楽しい」(p297)と、書き記しているように、大変美しい文章の本で、欧米の子どもたちが必ず一度は声に出して読んだ経験のある作品です。
児童文学論
リリアン H.スミス
岩波書店
1964-04-20
 
待ちに待った春の気配に、家の中の掃除をほっぽり出して、外へ出ていったモグラを待ち構えていたのは、優しい春の陽ざしと、草原をわたる暖かな風でした。春に誘われて歩き回るうちに、モグラは生まれて初めて川に出会います。その川の流れの表現が、ほんとうに美しく、リズミカルで、声に出して読みたくなるのです。

「川はおいかけたり、くすくす笑ったり、ゴブリ、音をたてて、なにかをつかむかとおもえば、声高く笑ってそれを手ばなし、またすぐほかのあそび相手にとびかかっていったりしました。すると、相手のほうでも、川の手をすりぬけてにげだしておきながら、またまたつかまったりするのです。川全体が、動いて、ふるえて―きらめき、光り、かがやき、ざわめき、うずまき、ささやき、あわだっていました。」(『たのしい川べ』p11)
 
春に誘われて出かけたモグラがやがて川ネズミと出会い、一緒に過ごすうちに、ヒキガエルやアナグマなど個性豊かな仲間たちと出会っていきます。その仲間たちとの友情あふれる日々を、豊かな自然の描写とともに描いています。とりわけ、見栄っ張りで向う見ずなヒキガエルが引き起こす事件は、翻訳者の石井桃子が最初に『ヒキガエルの冒険』(英宝社 1950)として出版したように、物語の中心になっています。

それでも、主人公はあくまでモグラとネズミ。そしてなにより豊かな四季折々の川辺の自然です。
 
児童文学研究者であり、児童文学作家・翻訳家でもあった瀬田貞二も、『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論(上)』(福音館書店 2009)の中で、「まことにファンタジーの傑作で」(p160)と評しています。躍動感あふれる文章と、小動物たちが繰り広げる物語の中に、人生の悲喜交々が重層的に織りなされ、おとなにも子どもにも愛される作品になっているとまとめています。

ケネス・グレーアムは、スコットランド生まれのイギリスの児童文学者です。5歳で母親を亡くし、母方の祖母に引き取られて数年を過ごした田舎の自然体験がこの本のベースとなっています。不遇の時代を乗り越えて、家族を持った時に幼い自分の息子に語った話が1冊の本になりました。息子に語る話の中に自分の幼少期に体験した豊かな川の流れと、自然、小さな動物たちが盛り込まれ、やがて『The Wind in the Willows』(『たのしい川べ』の原題)にまとめられたのです。
生き生きと描かれる小動物たちの物語を通して、自然の豊かさ、そこで懸命に生きることの素晴らしさ、友情の尊さを伝えてくれます。なにより、「声に出して」読む、その楽しさを味わえる1冊です。

この度、出版された『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか―「声を訳す」文体の秘密』(竹内美紀 ミネルヴァ書房 2014)では、石井桃子が戦後直ぐに『ヒキガエルの冒険』(英宝社 1950)として翻訳し出版した文章と、1963年に『たのしい川べ』と題して翻訳し直した文章が比較されています。この13年の間に、石井桃子は、岩波書店の編集部で「岩波少年文庫」、「岩波子どもの本」シリーズを創刊し、またアメリカやカナダの図書館を訪問し、帰国後に自宅で「かつら文庫」を開設しています。著者の竹内美紀は、「さまざまな側面から現実の子どもに接し、子どもの読みを考える機会に恵まれた13年間であったといえよう。」(p160)と、書いています。この間に、アメリカでリリアン・H・スミス本人に出会い、『児童文学論』を手渡されて、そちらの翻訳にも携わりました。リリアン・H・スミスとの出会いや、実際に子どもたちに本を手渡す中で、子どもたちに届く翻訳を考え手直ししたことは、とても興味深く思います。

「子どもの本の翻訳」という視点で、児童文学を考えてみるのも面白く、こちらの本もぜひ一読されることをおすすめします。

(作成K・J)

おすすめ幼年童話15『ナスレディンのはなし』トルコの昔話


連載15回めは、『トルコの昔話 ナスレディンのはなし』(八百坂洋子/再話 佐々木マキ/絵 福音館書店 2012)です。

ナスレディンのはなし (ランドセルブックス)
福音館書店
2012-03-20

 

 

 

 

「ナスレディン」はおよそ800年前にトルコに生まれ、裁判官補佐や神学校の教師をした人の名前です。人を笑わせることが好きなナスレディンの話は、トルコや周辺の国々で長く語り継がれてきました。この本にはナスレディンのユーモアあふれる話が4つ収められています。

道で酔いつぶれた裁判官の上着をありがたくいただいて(というか持ち去って)着てしまうナスレディン。怒った裁判官の前でナスレディンが言ったこととは?(「ナスレディンと裁判官」)

威張った人をとんちで懲らしめつつ、ちゃっかり自分も得をしてしまう、一休さんなどの日本のとんち話とは一味違った面白さを味わえます。佐々木マキのユーモラスな絵も雰囲気にぴたりと合っています。

イスラム教の考え方、日本人との違いも味わえ、異文化理解の楽しさを味わってもらう入門編としてもおすすめです。

(作成:28年度児童部会部員M・H)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら
第13回『こぶたのピクルス』→こちら 
第14回『オンネリとアンネリ』→こちら

 

4月、5月の新刊から(2冊追加あり)


2018年4月、5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月、3月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

もりのこえほんシリーズ
『あそぼう!はなのこたち』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

あそぼう! はなのこたち (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

春先から初夏にかけて咲く花たちが主人公の絵本です。こまあそびにたけうま、わまわしにめかくしおにといろいろな遊びをしている様子がとても可愛らしい手のひらサイズの絵本です。

 

『ひなげしのおうじ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

ひなげしのおうじ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

ひなげしのおうじが麦の穂で出来た馬に乗って出かけます。途中で馬とはぐれてしまいますが、ひばりやマルハナバチたちに助けられます。素朴な味わいの絵本です。

 

『もりのたんじょうびパーティ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

もりのたんじょうびパーティ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

 もりのおうさま、きのこだいおうの誕生日のお祝いに、きのこたちはもちろん、森の小動物や昆虫たちが集まってきました。次々と繰り出される出し物も楽しませてくれます。

 

『サーカスくまさん』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

サーカスくまさん (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

サーカスのくまさんは、家に帰るとこぐまたちのおとうさんです。こぐまたちは、じぶんたちもやってみたくて、おおさわぎです。

もりのこえほん4冊は、1944年にベルギーのブリュッセルで出版されました。シリーズ名は「サン・スーシ(Sans Souci)」、フランス語で「心配なく、お気楽に」という意味だそうです。当時は第二次世界大戦中で物資が不足し、壁紙の試し刷り用紙を使って小さなサイズで出版したそうです。岩波書店から出た日本版も判型が小さく素朴な味わいです。作者はフランス、ベルギーの子どもの本の分野で活躍した旧ロシア帝国出身のエリザベス・イワノフスキー(1910~2006)で、グワッシュを使って花や動物たちを生き生きと描き出しています。

 『やまのかいしゃ』スズキコージ/作 かたやまけん/絵 福音館書店 2018/5/5

やまのかいしゃ (日本傑作絵本シリーズ)
スズキ コージ
福音館書店
2018-05-08

1991年に架空社から出版されていた『やまのかいしゃ』が、5月に福音館書店から復刊しました。もとは福音館書店月刊誌「母の友」1986年9月号に読みきりの童話として掲載されたものだと、架空社版の奥付にも記されていました。福音館書店のPR紙「あのね」2018年5月号は、この絵本について作者スズキコージさんのインタビュー記事が掲載されています。なぜ絵本にするときに福音館書店ではなく架空社だったのかということも書かれています。ぜひそちらもチェックしてみてください。朝、起きるのが苦手なほげたさんは今日も昼近くになってやっと駅へ。遅刻しているにも関わらず街へ向かう方向とは反対の電車に乗ってしまいます。山の奥の駅についたほげたさん、そのまま「きょうはやまのかいしゃへいこう」と山を登り始めます。山の上から「遅刻した~」と駆け下りていくほいくさんも誘って山の頂上へ。あまりの気持ちのよさに、街の会社からみんなを呼び寄せことを思いつきます。働き方改革が声高に言われている昨今、この絵本はいろいろな味わい方があるかなと思います。でも子どもたちはそんなことは関係なく、ほげたさんの突き抜けたとぼけ具合に魅了されることでしょう。

 

 『ようかいしりとり』おくはらゆめ/作 こぐま社 2018/5/10 

ようかいしりとり
おくはら ゆめ
こぐま社
2018-05-01

 NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で子どもたちに人気の歌「ようかいしりとり」が絵本になりました。妖怪といっても、おくはらさんの描くのは、ちょっととぼけていて、可愛らしくて、ちっとも怖くありません。夏の「こわいおはなし会」の導入に使えますね。その時は歌もチェックしておいて、子どもたちと一緒に歌えるといいですね。

 

 『はるなつあきふゆの詩(うた)』ジュリー・フォリアーノ/詩 ジュリー・モースタッド/絵 石津ちひろ/訳 偕成社 2018/6
はるなつあきふゆの詩
ジュリー・フォリアーノ
偕成社
2018-05-23
 
 四季折々の自然の変化を、日記のようにして詩に読んだ絵本です。春の詩だけでも13編あるので、図書館などの集団でのおはなし会では、1冊を通して読み聞かせをするには向かないのですが、ご家庭で親子で読んでほしいなと思います。また絵がとても美しく、パラパラとめくって、「ああ、こんな気持ち、わかるな~」と、のんびりと季節の変化に想いを馳せるのに相応しく、勉強に疲れたり、人間関係に悩むYA世代(10代の子たち)に手渡してもいいのではと思います。
 

 

【児童書】
絵本から児童書に移行する子どもたち向けの幼年童話を2冊紹介します。

 『ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ』マージョリー・ワインマン・シャーマット/文 バーバラ・クーニー/絵 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2018/5/25
ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ (海外秀作絵本)
マージョリー・ワインマン・シャーマット
ほるぷ出版
2018-05-17
 
オポッサムのホイホイとフムフムが繰り広げるほのぼのとしたおはなしです。オポッサムはネズミにしていますが、カンガルーのような有袋類でアメリカ大陸に棲息している動物です。ホイホイはいつも家の中ばかりにいて、散歩に出かけたことのないフムフムをやっとのことで誘い出しますが、遠くまで歩いていくと、今度はホイホイが動けなくなってしまいます。ふたりのやりとりは、どこかとぼけていてアーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』を彷彿とさせます。

 『ふたごのカウボーイ』フローレンス・スロボドキン/文 ルイス・スロボドキン/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2018/6/1

ふたごのカウボーイ
フローレンス・スロボドキン
瑞雲舎
2018-06-01
 
 絵本『てぶくろがいっぱい』に出てくるふたごの兄弟、ネッドとドニーの楽しいおはなしです。ふたりはカウボーイになって遊ぶときは「オクラホマから来たスティーブとジム」になり切ります。町で出会う人に「おや、ネッドとドニーだね」と聞かれると、「ぼくたちはオクラホマから来たスティーブとジム」だと答えます。ふたりは町へ冒険に出かけますが、迷子になってしまいます。雨宿りしていたお宅からお母さんのところへ「もしかしてお宅のお子さん?」と尋ねられても、名前が違います。さてふたりはちゃんと家に戻れるかしら。幼児期に何か他の者になり切って遊ぶことはとても楽しいですよね。そんな時期の子どもたちもきっと共感しながら読めると思います。
 
 『アンデルセンのおはなし』ハンス・クリスチャン・アンデルセン/原作 スティーブン・コリン/英語訳 エドワード・アーディゾーニ/選・絵 江國香織/訳 のら書店 2018/5/25
アンデルセンのおはなし
ハンス・クリスチャン アンデルセン
のら書店
2018-05-18
 
 『チムとゆうかんなせんちょうさん』『時計つくりのジョニー』などでおなじみのイギリスの絵本作家エドワード・アーディゾーニがアンデルセン物語から14編選んで絵を描いた作品です。江國香織さんがあとがきに、「物語というものをほんとうに深く理解していた人で、物語によりそうのではなく、物語の一部になる挿絵をたくさん描きました。」と書いているのですが、画家であるアーディゾーニが描きたいと思ったおはなしを選んだのだと思います。「しっかりしたスズの兵隊」、「皇帝の新しい服」、「小さな人魚」などおはなしのタイトルもちょっとだけ違っています。読み比べてみてくださいね。
 
 
【研究書】
『絵を読み解く 絵本入門』藤本朝巳・生田美秋/編著 ミネルヴァ書房 2018/5/15
絵を読み解く 絵本入門
ミネルヴァ書房
2018-05-15
 
絵本学会に所属する研究者や、保育者、図書館員など子どもたちに本を手渡している人、また編集者や絵本作家、翻訳家たちが、絵本の「絵を読み解く」という共通のテーマで論じた研究書です。「絵本は、ことばと絵からなり、その相互の関係によって成立し、ページをめくることによって物語が展開していく視覚表現メディアであり、コミュニケーションアートである。そのため、絵本を読み解き、説明するためには、ことばについての理解、絵とことばの相互関係についての理解、絵本と子ども読者の関係についての理解が必要になる。」(あとがき)という視点から、第1部では物語絵本、昔話絵本、ファンタジー絵本、ポストモダン絵本、赤ちゃん絵本について絵の観点から論じ、第2部では古典作品(海外11、日本10)、現代作品(海外8、日本10)の39冊について1冊1冊分析しています。網羅的にわかりやすい解説書となっているので、絵本の選書をする人などは目を通しておくとよいでしょう。
 
『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』ダナ・サスキンド/著 掛札逸美/訳 高山静子/解説 明石書店 2018/5/15 
 
この本の著者はシカゴ大学以下大学院小児外科教授で小児人工内耳移植プログラムのディレクターです。彼女は、小児人工内耳手術の事例から、子どもたちが言語能力の発達にはたんに耳が聞こえるだけではなく、どんな言語環境の中で幼少期を過ごすかがいかに重要かに気がつきます。「人工内耳で聞く力を得たにしても、保護者の言葉の力に変わりはありません。豊かな言語環境がなければ、音が聞こえても何の意味もありませんし、子どもは本来の力を発揮できないでしょう。」と第1章でこの研究へ向かった意図を説いています。この本は親と保育者向けに書かれたものですが、「耳から聴く読書」が子どものことばと心をいかに育てていくかという観点でも読めるので、大変参考になりました。図書館児童サービスとは直接関係ないように思うでしょうが、アウトリーチサービスを考える際にもヒントを与えてくれそうです。
 

【その他】
 『小学生のうちに読みたい物語~学校司書が選んだブックガイド~』対馬初音/編著 少年写真新聞社 2018/5/29
小学生のうちに読みたい物語  ~学校司書が選んだブックガイド~
対馬 初音
少年写真新聞社
2018-05-26
 
杉並区の小中学校で学校司書をしている方々が、子どもたちに本を手渡す中で選んだ物語のブックガイドです。「絵本からの移行期に」、「少し読み物に慣れてきたら」、「主人公にそって物語を楽しみましょう」、「読書の達成感を経験しましょう」、「読書の広がりや深まりを楽しみましょう」、「より深い内容を味わいましょう」、「昔話に楽しみましょう」という7つの単元で、子どもたちの読書力の発達に応じた本を選んでいます。夏休みの読書案内の参考にもなることと思います。ノンフィクションと伝記は含まれておらず、物語(フィクション)だけですが、日々学校で子どもたちと接している司書の方々ならではのコラム記事も充実しています。
 
『遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考』かこさとし/絵・文 復刊ドットコム 2018/2/26

遊びの四季
かこさとし
復刊ドットコム
2018-02-24

 今年5月2日に亡くなられたかこさとしさんが1975年に出版された本を、92歳の誕生を祝って復刊された本です。ご本人が2018年2月の日付で復刊によせて「あとがき」も書いていらっしゃいます。
かこさとしさんが子ども時代に遊んだ遊びを、丁寧に思い出して生き生きと描き出したエッセイです。春夏秋冬、子どもたちが自然の中で自分たちで遊びを生み出していたんだなあと、読み物としてもとても面白かったです。

(作成K・J)

2018年7月(その2)海の中では(幼児~小学生)


今年の7月16日(月)は海の日です。広く青い海、打ち寄せる波の音は人の心を励ましてくれる力を持っているように思います。また、海から獲れる魚や海藻は私たちの体を養い、その他にもたくさんの資源をもたらしてくれるのも海。

そんな海ですが、海の中に視点を移してみると、違う世界が見えてくるのかもしれません。そんな思いで、幼児~小学生向けのおはなし会プランを作成しました。

 

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【海の中では】

導入 詩「大漁」「お魚」金子みすゞ 『金子みすゞ童謡集 わたしと小鳥とすずと』(JULA出版局 1984)より 1分

わたしと小鳥とすずと―金子みすゞ童謡集
金子 みすゞ
JULA出版局
1984-08-30

「大漁」では、鰯の大漁に喜ぶ浜の様子から一転、海の中では何万もの弔いが行われるだろうという、斬新な視点から、私たちが海の命をいただいていることのありがたさに気づかせてくれる、みすゞらしい詩です。
「お魚」では、「お米は人につくられる、牛はまき場でかわれてる。こいも池でふをもらう。」のに対して、海の魚は人間によってなにも世話をされていないのに、こうして食べられてしまうという、魚の立場から見た思いを詩にしています。

どちらも繰り返し読んで、味わってほしい詩です。4,5歳になればこの詩の世界は想像出来るのではと思います。

 

絵本『うみやまがっせん』上沢謙二/原案 長谷川摂子/.文 大島英太郎/絵 福音館書店 2014 5分

うみやまがっせん (こどものともコレクション2009)
長谷川 摂子
福音館書店
2009-02-25
 
おさるがやまから降りてきて「さあ、うみのさかなをつるぞ」を釣竿を海に投げ入れると、おおきなたこが「おまえなんかにつられてたまるか」と釣り糸をひっぱります。おさるが「おーい、だれかきてくれ」というとうさぎが加勢します。海のほうでも「おーい、だれかきてくれ」というと鯛が加勢します。そうして次々に陸と山で引っ張り合い。しまいには陸ではさる、うさぎ、たぬき、くま、とらがひっぱって、海側ではたこ、鯛、鮃、鮪、鮫とひっぱりあっても勝負はつきません。そこにひょっこり現れた1ぴきのかに。さてさてこのお話の結末は?繰り返しのある愉快なお話です。
 
素話「くらげ骨なし」『新訂・子どもに聞かせる日本の民話」(大川悦生/著 実業之日本社 1998)より 9分

子どもに聞かせる日本の民話
大川 悦生
実業之日本社
1998-03-01
 
海の底の竜宮では乙姫が大病にかかり、おおぜいの医者がよばれて様々な薬を処方しても治りません。占い師に聞くと、それには「さるの生き胆が効く」といいます。普段からさると親しくしていたかめがさるを竜宮に案内する役に抜擢されます。そんなこととは知らずに竜宮を訪れたさるは、くらげがいすず(イシモチ)とひそひそ話をしているのを聞くのです。「だいじな生き胆、砂山の上に干してきた」というので、かめは再びさるを連れて陸へ。そこでかめはさるに騙されたと知ります。そしてくらげはさるに秘密を漏らしたとして罰として骨抜きにされたのでした。このお話は、九州奄美の昔話を再話したものだそうです。インドの昔話の「さるの生きぎも」とそっくりのおはなしです。
 
わらべうた うみだよ かわだよ(小さい子向けのおはなし会プランと同じ)
うみだよかわだよ

 

 

 

 

 

 

絵本『あのほしなんのほし』みきつきみ/文 柳原良平/絵 こぐま社 2014 2分

あのほしなんのほし
みき つきみ
こぐま社
2014-05-01

最後の1冊は海を離れて、星の絵本です。子どもたちでも簡単に見つけることのできる星座を、わかりやすくリズミカルなことばと、はっきりと描かれた絵で伝えてくれる入門的な絵本です。この本を読んだあとに、写真絵本など星や天体観測に関するその他の資料を紹介してあげるとよいでしょう。一昨年出版された夜空をみあげよう(松村由利子/作 ジョン・シェリー/絵 渡部潤一/監修 福音館書店 2016)などもおすすめです。 

夜空をみあげよう (福音館の科学シリーズ)
松村 由利子
福音館書店
2016-05-15


 

わらべうた さよならあんころもち

(作成K・J)

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』BIBIANAから賞を贈られました!


「2017年12月、2018年1月の新刊から」の記事(→こちら)で紹介した福井さと子さんの絵本『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』が、スロバキア国内で「スロバキアの最も美しい絵本賞」の学生部門賞を受賞したというニュースが入ってきました。

これらの賞を主催しているのは、BIBIANAというブラティスラヴァ世界絵本原画展のためにつくられた文化機関で、日本におけるJBBY(日本国際児童図書評議会)と同じような役割を果たしているとのことです。(受賞を伝えるBIBIANAのサイト(スロバキア語→こちら

 

 

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』福井さとこ/作 JULA出版局 2017/12/25

おるすばんのぼうけん―スロバキアのともだち・はなとゆろ
福井 さとこ
JULA出版局
2017-12-25

 

プラチスラヴァ芸術大学版画学科大学院で、スロバキアの版画家で絵本作家ドゥシャン・カーライの下で版画と絵本製作について学んだ福井さんの卒業制作が、JULA出版局から出版されました。

3色刷りの版画で描かれているのは、福井さんがスロバキアでベビーシッターをしていた子ども達のの姿です。

お留守番をすることになったはなとゆろの兄妹。妹が寂しそうにしているので、お兄ちゃんのゆろは椅子に布をかけて「チャーリー マーリー フック!」と呪文を唱えると、椅子は馬になり、積木は村に、ソファは山に、観葉植物のベンジャミンとポトスは森に、そしてなんとハサミは空飛ぶ鳥になるのです。ふたりはからすが探すテントウムシを探す冒険へ出かけます。洗濯物たちはみんな動物になってふたりの冒険を助けてくれます。本はふくろうになります。

「チャーリー マーリー フック!」はスロバキアの子ども達が遊びの中で使う呪文の言葉。日本で言えば「ちちんぷい」みたいな感じでしょうか。折込にはスロバキアのわらべうたも楽譜入りで掲載されています。海の向こうの子どもたちの遊びに想いを馳せるのも素敵な経験になると思います。 

版画で描かれる子どもたちの空想の世界は、どの国の子どもたちも同じなんだなと感じます。

 

この機会に、まだ手にしていない方は読んでみてください。

注文などはJULA出版局まで(→こちら

(作成K・J)

2018年7月(その1)夏も元気だよ!(小さい子向け)


今年は春先から気温の高い日が多く(逆に気温が下がる時もあって変化が激しいですね)、今年の夏はいったいどうなるのかな、と今から心配です。それでも、子どもたちにとって夏は薄着になって、気持ちも開放的になる季節。

太陽の光を浴びて夏でも元気に過ごしてほしいなと思います。そんな思いをこめて、小さい子向けのおはなし会プランを作成しました。

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【夏も元気だよ!】

導入 わらべうた ととけっこう
ととけっこう

 

 

 

絵本『ちびすけどっこい』こばやしえみこ/案 ましませつこ/絵 こぐま社 2012 1分半

「ちびすけどっこい はだかでこい ふんどすかついで はだかでこい」7月は名古屋で大相撲七月場所も開催される季節。小さい子どもにとっては、薄着になって身軽に身体を動かせる季節です。わらべうたを歌いながら、お相撲遊びをしてみるのもいいですね。

 

わらべうた ちびすけどっこい

ちびすけどっこい 

 

 

 

おかあさんのおひざの上に向かい合って座り、リズムに合せておかあさんと両手のひらを合わせて押し合います。

 

絵本『ごぶごぶごぼごぼ』駒形克己/作 1999 1分

ごぶごぶ ごぼごぼ (0.1.2.えほん)
駒形 克己
福音館書店
1999-04-15

 3度ほど、駒形克己さんのお話を伺ったことがあります。この絵本はあかちゃんがお腹の中で聞いていた音を表現しているということでした。(娘さんが胎内記憶も持っていた2歳のお誕生日のころに「ママのお腹の中はこうだった」というおしゃべりを絵本で表現したとのこと)お誕生前のあかちゃんに読み聞かせると注視したり、泣き止んだり、笑顔になったりする絵本です。ごぶごぶごぼごぼはおかあさんのお腹の中で腸が動く音かしら。水が流れていく音にも似ていますね。

 

わらべうた うみだよかわだよ

うみだよかわだよ

 

 

 

 

 

ここ3年続けて7月のおはなし会プランで紹介しているわらべうたです。夏にこそ、歌ってあげたいわらべうたです。遊び方はYouTubeなどにあがっています。スパークハーフという断ち切りで端糸の出ない布などで遊ぶと楽しいでしょう。(遊び方動画→こちら

 

わらべうた おふねがぎっちらこ

おふねがぎっちらこ

 

 

 

おかあさんのおひざの上で向かい合わせに座り、両手をつないで前後に揺れながら舟を漕ぎます。

 

絵本『かわいいあひるのあかちゃん』 モニカ・ウェリントン/作 たがきょうこ/訳 徳間書店 1994 2分

かわいいあひるのあかちゃん
モニカ ウェリントン
徳間書店
1994-07-01

かわいいあひるのあかちゃんの一日を描いた絵本です。好奇心いっぱいのあかちゃんは、見るもの、すべてが気になります。でもそうやってひとつひとつのことを覚えていくのですね。そうして最後はおかあさんの羽の下にみんな集まって安心して休みます。ちゃんと見守ってくれる存在があるからこそ、小さな子どもはいろんなことに触れて成長していけるのですね。水の色が涼しげで、楽しい絵本です。 

 

 絵本『ひまわり』和歌山静子/作 福音館書店 2005 1分

ひまわり (幼児絵本シリーズ)
和歌山 静子
福音館書店
2006-06-15
 
最後の1冊は元気よく芽を出し、伸びていくひまわりの絵本です。「どんどこ どんどこ」の繰り返しが単調にならないよう、読み方に工夫しましょう。読み終わったら子どもたちも一緒にひまわりになって、最初は小さくかがみ、少しずつ手と体をだんだん上に伸ばしていって、最後は頭上で手を広げてひまわりのように開く動作をやってみてもよいでしょう。
 
わらべうた さよならあんころもち
 
(作成K・J)
 

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