基本図書を読む1 『エーミールと探偵たち』 エーリヒ・ケストナー(再掲)


26年度~27年度と24カ月に渡って連載していた「基本図書を読む」は、連載当時たくさんの反響をいただきました。サイトで「本に関する情報」→「基本図書を読む」と辿っていただければ過去記事を読んでいただくことは出来ますが、もう一度多くの方に読んでいただくべく、今月より毎月連載をいたします。基本的に26年度~27年度の記事をそのまま公開日時を変更して再掲しますが、加筆修正する場合もあります。

「基本図書」を読んでいくことは、新しい本の評価の基準を持つことに繋がっていきます。児童サービス担当の方々には忙しい業務の時間を縫ってでも「基本図書」は読んでおくことをお勧めします。(2018/4/19記す)

 

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(以下、2014年4月18日公開記事)

「何か楽しい本ない?」と聞かれたとき、ブックトークを作成するとき、新刊図書の購入を検討するときなど、業務を行ううえで、本を選ぶ場面はたくさんあります。資料を選択するためには、その資料を評価しなければならず、資料を選ぶ判断基準が必要になってきます。判断基準をつくるには、とにかくたくさん本を読むことですが、とりわけ基本図書とよばれている本を読むことは、大きな力となってくれます。

基本図書とは、長い間子どもに愛され、読み継がれてきた本を言います。時の試練を経ても色あせることがない、読書の喜びを与えてくれる本で、図書館の蔵書の核となっています。基本図書を読むことで、子どもたちが本質的にどんなものを求めているのか、質の高い作品とはどのようなものなのか、図書館員としてどのようなものを手渡していくべきかが、自ずとみえてきます。

26年度「本のこまど」では、「基本図書を読む」というテーマで、毎月1冊の本を紹介する予定です。大人になっても楽しめる作品ばかりですが、子どもたちはどんなふうに読んでいるのだろうという視点も持って、味わってみてください。12冊の中から、みなさまにとっても、心に残る大切な1冊が見つかり、仕事をしていくうえで力になってくれればと思っています。

 

『エーミールと探偵たち』

4月は、ドイツの作家エーリヒ―・ケストナーの『エーミールと探偵たち』を紹介します。

エーミールと探偵たち (ケストナー少年文学全集 1)

エーリヒ・ケストナー著 高橋健二訳
岩波書店
1962-07-18

                                   

 

 

 エーミール少年は、母さんと二人で暮らしています。おばあさんの家まで一人旅をすることになりますが、列車の中で居眠りをし、母さんが懸命にためたお金を盗まれてしまいます。エーミールは、同じボックス席に座っていた怪しい男を追って、途中の駅でおり、知らない大きな町で、たった一人で尾行することにします。そこに、グスタフという少年があらわれ、協力してくれる町の仲間を呼び集めてくれるのです。少年たちは、資金を集め、状況がわかるように電話センターをつくるなど、綿密な計画をたて、行動を開始します。タクシーでの尾行、スパイとしてホテルに侵入、最後は新聞社が取材にくるような大騒動となりますが、少年たちは、盗んでいないと主張する犯人を追いつめ、見事につかまえるのです。

 真面目で母親思いのエーミール、行動的でガキ大将のようなグスタフ、賢い”教授くん”など親しみを感じる子どもたちが登場し、生き生きと活躍する様子は、読んでいて楽しく爽やかな気持ちになれます。

者は、ドイツの児童文学作家で、詩人、小説家、脚本家、評論家としても活躍し、1960年には国際アンデルセン賞を受賞しています。ナチスの時代には、執筆を禁止されながらも、作家として時代の目撃者であろうと、亡命せずにドイツに留まりました。本書のほか、『二人のロッテ』や『飛ぶ教室』などの代表作があり、いずれも筋立ては面白く、子どもの感じていることを大切にえがいています。子どもたちに敬意をもち、人生の明るい面も暗い面も描き出し、そしてユーモアを忘れないケストナーの作品は、本当の勇気をもらえます。

 

 

ケストナー―ナチスに抵抗し続けた作家
クラウス コードン
偕成社
1999-12

 

 

 

 

ケストナーの伝記に、クラウス・コードン著『ケストナー ナチスに抵抗し続けた作家』があります。欠点も含め、作家として一時代を生きたケストナーの姿が描かれている伝記です。写真も豊富で、小学校高学年くらいから読むことができますので、ケストナーの作品に親しんだ子どもに手渡すと、自分が愛読した作家の人となりを知ることができます。

(作成T.S
)  

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