4月、5月の新刊から(2冊追加あり)


2018年4月、5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月、3月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

もりのこえほんシリーズ
『あそぼう!はなのこたち』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

あそぼう! はなのこたち (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

春先から初夏にかけて咲く花たちが主人公の絵本です。こまあそびにたけうま、わまわしにめかくしおにといろいろな遊びをしている様子がとても可愛らしい手のひらサイズの絵本です。

 

『ひなげしのおうじ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

ひなげしのおうじ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

ひなげしのおうじが麦の穂で出来た馬に乗って出かけます。途中で馬とはぐれてしまいますが、ひばりやマルハナバチたちに助けられます。素朴な味わいの絵本です。

 

『もりのたんじょうびパーティ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

もりのたんじょうびパーティ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

 もりのおうさま、きのこだいおうの誕生日のお祝いに、きのこたちはもちろん、森の小動物や昆虫たちが集まってきました。次々と繰り出される出し物も楽しませてくれます。

 

『サーカスくまさん』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

サーカスくまさん (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

サーカスのくまさんは、家に帰るとこぐまたちのおとうさんです。こぐまたちは、じぶんたちもやってみたくて、おおさわぎです。

もりのこえほん4冊は、1944年にベルギーのブリュッセルで出版されました。シリーズ名は「サン・スーシ(Sans Souci)」、フランス語で「心配なく、お気楽に」という意味だそうです。当時は第二次世界大戦中で物資が不足し、壁紙の試し刷り用紙を使って小さなサイズで出版したそうです。岩波書店から出た日本版も判型が小さく素朴な味わいです。作者はフランス、ベルギーの子どもの本の分野で活躍した旧ロシア帝国出身のエリザベス・イワノフスキー(1910~2006)で、グワッシュを使って花や動物たちを生き生きと描き出しています。

 『やまのかいしゃ』スズキコージ/作 かたやまけん/絵 福音館書店 2018/5/5

やまのかいしゃ (日本傑作絵本シリーズ)
スズキ コージ
福音館書店
2018-05-08

1991年に架空社から出版されていた『やまのかいしゃ』が、5月に福音館書店から復刊しました。もとは福音館書店月刊誌「母の友」1986年9月号に読みきりの童話として掲載されたものだと、架空社版の奥付にも記されていました。福音館書店のPR紙「あのね」2018年5月号は、この絵本について作者スズキコージさんのインタビュー記事が掲載されています。なぜ絵本にするときに福音館書店ではなく架空社だったのかということも書かれています。ぜひそちらもチェックしてみてください。朝、起きるのが苦手なほげたさんは今日も昼近くになってやっと駅へ。遅刻しているにも関わらず街へ向かう方向とは反対の電車に乗ってしまいます。山の奥の駅についたほげたさん、そのまま「きょうはやまのかいしゃへいこう」と山を登り始めます。山の上から「遅刻した~」と駆け下りていくほいくさんも誘って山の頂上へ。あまりの気持ちのよさに、街の会社からみんなを呼び寄せことを思いつきます。働き方改革が声高に言われている昨今、この絵本はいろいろな味わい方があるかなと思います。でも子どもたちはそんなことは関係なく、ほげたさんの突き抜けたとぼけ具合に魅了されることでしょう。

 

 『ようかいしりとり』おくはらゆめ/作 こぐま社 2018/5/10 

ようかいしりとり
おくはら ゆめ
こぐま社
2018-05-01

 NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で子どもたちに人気の歌「ようかいしりとり」が絵本になりました。妖怪といっても、おくはらさんの描くのは、ちょっととぼけていて、可愛らしくて、ちっとも怖くありません。夏の「こわいおはなし会」の導入に使えますね。その時は歌もチェックしておいて、子どもたちと一緒に歌えるといいですね。

 

 『はるなつあきふゆの詩(うた)』ジュリー・フォリアーノ/詩 ジュリー・モースタッド/絵 石津ちひろ/訳 偕成社 2018/6
はるなつあきふゆの詩
ジュリー・フォリアーノ
偕成社
2018-05-23
 
 四季折々の自然の変化を、日記のようにして詩に読んだ絵本です。春の詩だけでも13編あるので、図書館などの集団でのおはなし会では、1冊を通して読み聞かせをするには向かないのですが、ご家庭で親子で読んでほしいなと思います。また絵がとても美しく、パラパラとめくって、「ああ、こんな気持ち、わかるな~」と、のんびりと季節の変化に想いを馳せるのに相応しく、勉強に疲れたり、人間関係に悩むYA世代(10代の子たち)に手渡してもいいのではと思います。
 

 

【児童書】
絵本から児童書に移行する子どもたち向けの幼年童話を2冊紹介します。

 『ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ』マージョリー・ワインマン・シャーマット/文 バーバラ・クーニー/絵 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2018/5/25
ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ (海外秀作絵本)
マージョリー・ワインマン・シャーマット
ほるぷ出版
2018-05-17
 
オポッサムのホイホイとフムフムが繰り広げるほのぼのとしたおはなしです。オポッサムはネズミにしていますが、カンガルーのような有袋類でアメリカ大陸に棲息している動物です。ホイホイはいつも家の中ばかりにいて、散歩に出かけたことのないフムフムをやっとのことで誘い出しますが、遠くまで歩いていくと、今度はホイホイが動けなくなってしまいます。ふたりのやりとりは、どこかとぼけていてアーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』を彷彿とさせます。

 『ふたごのカウボーイ』フローレンス・スロボドキン/文 ルイス・スロボドキン/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2018/6/1

ふたごのカウボーイ
フローレンス・スロボドキン
瑞雲舎
2018-06-01
 
 絵本『てぶくろがいっぱい』に出てくるふたごの兄弟、ネッドとドニーの楽しいおはなしです。ふたりはカウボーイになって遊ぶときは「オクラホマから来たスティーブとジム」になり切ります。町で出会う人に「おや、ネッドとドニーだね」と聞かれると、「ぼくたちはオクラホマから来たスティーブとジム」だと答えます。ふたりは町へ冒険に出かけますが、迷子になってしまいます。雨宿りしていたお宅からお母さんのところへ「もしかしてお宅のお子さん?」と尋ねられても、名前が違います。さてふたりはちゃんと家に戻れるかしら。幼児期に何か他の者になり切って遊ぶことはとても楽しいですよね。そんな時期の子どもたちもきっと共感しながら読めると思います。
 
 『アンデルセンのおはなし』ハンス・クリスチャン・アンデルセン/原作 スティーブン・コリン/英語訳 エドワード・アーディゾーニ/選・絵 江國香織/訳 のら書店 2018/5/25
アンデルセンのおはなし
ハンス・クリスチャン アンデルセン
のら書店
2018-05-18
 
 『チムとゆうかんなせんちょうさん』『時計つくりのジョニー』などでおなじみのイギリスの絵本作家エドワード・アーディゾーニがアンデルセン物語から14編選んで絵を描いた作品です。江國香織さんがあとがきに、「物語というものをほんとうに深く理解していた人で、物語によりそうのではなく、物語の一部になる挿絵をたくさん描きました。」と書いているのですが、画家であるアーディゾーニが描きたいと思ったおはなしを選んだのだと思います。「しっかりしたスズの兵隊」、「皇帝の新しい服」、「小さな人魚」などおはなしのタイトルもちょっとだけ違っています。読み比べてみてくださいね。
 
 
【研究書】
『絵を読み解く 絵本入門』藤本朝巳・生田美秋/編著 ミネルヴァ書房 2018/5/15
絵を読み解く 絵本入門
ミネルヴァ書房
2018-05-15
 
絵本学会に所属する研究者や、保育者、図書館員など子どもたちに本を手渡している人、また編集者や絵本作家、翻訳家たちが、絵本の「絵を読み解く」という共通のテーマで論じた研究書です。「絵本は、ことばと絵からなり、その相互の関係によって成立し、ページをめくることによって物語が展開していく視覚表現メディアであり、コミュニケーションアートである。そのため、絵本を読み解き、説明するためには、ことばについての理解、絵とことばの相互関係についての理解、絵本と子ども読者の関係についての理解が必要になる。」(あとがき)という視点から、第1部では物語絵本、昔話絵本、ファンタジー絵本、ポストモダン絵本、赤ちゃん絵本について絵の観点から論じ、第2部では古典作品(海外11、日本10)、現代作品(海外8、日本10)の39冊について1冊1冊分析しています。網羅的にわかりやすい解説書となっているので、絵本の選書をする人などは目を通しておくとよいでしょう。
 
『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』ダナ・サスキンド/著 掛札逸美/訳 高山静子/解説 明石書店 2018/5/15 
 
この本の著者はシカゴ大学以下大学院小児外科教授で小児人工内耳移植プログラムのディレクターです。彼女は、小児人工内耳手術の事例から、子どもたちが言語能力の発達にはたんに耳が聞こえるだけではなく、どんな言語環境の中で幼少期を過ごすかがいかに重要かに気がつきます。「人工内耳で聞く力を得たにしても、保護者の言葉の力に変わりはありません。豊かな言語環境がなければ、音が聞こえても何の意味もありませんし、子どもは本来の力を発揮できないでしょう。」と第1章でこの研究へ向かった意図を説いています。この本は親と保育者向けに書かれたものですが、「耳から聴く読書」が子どものことばと心をいかに育てていくかという観点でも読めるので、大変参考になりました。図書館児童サービスとは直接関係ないように思うでしょうが、アウトリーチサービスを考える際にもヒントを与えてくれそうです。
 

【その他】
 『小学生のうちに読みたい物語~学校司書が選んだブックガイド~』対馬初音/編著 少年写真新聞社 2018/5/29
小学生のうちに読みたい物語  ~学校司書が選んだブックガイド~
対馬 初音
少年写真新聞社
2018-05-26
 
杉並区の小中学校で学校司書をしている方々が、子どもたちに本を手渡す中で選んだ物語のブックガイドです。「絵本からの移行期に」、「少し読み物に慣れてきたら」、「主人公にそって物語を楽しみましょう」、「読書の達成感を経験しましょう」、「読書の広がりや深まりを楽しみましょう」、「より深い内容を味わいましょう」、「昔話に楽しみましょう」という7つの単元で、子どもたちの読書力の発達に応じた本を選んでいます。夏休みの読書案内の参考にもなることと思います。ノンフィクションと伝記は含まれておらず、物語(フィクション)だけですが、日々学校で子どもたちと接している司書の方々ならではのコラム記事も充実しています。
 
『遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考』かこさとし/絵・文 復刊ドットコム 2018/2/26

遊びの四季
かこさとし
復刊ドットコム
2018-02-24

 今年5月2日に亡くなられたかこさとしさんが1975年に出版された本を、92歳の誕生を祝って復刊された本です。ご本人が2018年2月の日付で復刊によせて「あとがき」も書いていらっしゃいます。
かこさとしさんが子ども時代に遊んだ遊びを、丁寧に思い出して生き生きと描き出したエッセイです。春夏秋冬、子どもたちが自然の中で自分たちで遊びを生み出していたんだなあと、読み物としてもとても面白かったです。

(作成K・J)