本に関する情報

訃報 森山京さん
おすすめ幼年童話10『ジェニーとキャットクラブ』エスター・アベリル
2017年11月、12月の新刊から(追加あり)
訃報 児童文学翻訳家 上田真而子さん
おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター
2017年10月、11月の新刊から(追加あり)
訃報 島多代さん
訃報 パット・ハッチンス
おすすめ幼年童話8『宇宙からきたかんづめ』佐藤さとる
2017年9月、10月の新刊から
訃報 毛利子来さん
おすすめ幼年童話7『ちびねこグルのぼうけん』アン・ピートリ
2017年8月、9月の新刊から
おすすめ幼年童話6『プレゼントはお・ば・け』西内ミナミ
訃報 わかやまけんさん

訃報 森山京さん


「きつねの子」シリーズなど、幼年童話の世界で活躍してこられた児童文学作家 森山京(もりやまみやこ)さんが1月7日にお亡くなりになりました。88歳でした。(ニュース記事→こちら

1989年に「きつねの子」(土田義晴/絵 あかね書房)シリーズで路傍の石幼少年文学賞を、1996年には『まねやのオイラ 旅ねこ道中』(小田桐昭/絵 講談社 1996)で野間児童文芸賞を受賞しています。(NDLオンライン→森山京

『きいろいばけつ きつねの子シリーズ1』(森山京/文 土田義晴/絵 あかね書房 1985)

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きいろいばけつ (あかね幼年どうわ (33))
もりやま みやこ
あかね書房
1985-04-25

 

 


『まねやのオイラ旅ねこ道中』(森山京/文 小田桐昭/絵 講談社 1996)


 

私が森山京さんの作品で印象に残っているのは、絵本では『ねこのしゃしんかん』(林静一/絵 講談社 1983)、『虫めづる姫ぎみ』(村上豊/絵 ポプラ社 2003)、『おべんともって』(片山健/絵 偕成社 2004)、『みずたまり』(松成真理子/絵 偕成社 2011)、幼年童話では『森のゆうびんや』(井上洋介/絵 フレーベル館 1976)、2015年の読書感想文課題図書にもなった『あしたあさってしあさって』(はたこうしろう/絵 小峰書店 2014)などです。森山さんの作品は、挿絵画家で印象が変わりますが、読むと「ああ、森山さんの文体だ」と感じました。

心より哀悼の意を捧げます。

『ねこのしゃしんかん』(森山京/文 林静一/絵 講談社 1983)

ねこのしゃしんかん
森山 京
講談社
1983-12



『虫めづる姫ぎみ』(森山京/文 村上豊/絵 ポプラ社 2003)


 

『おべんともって』(森山京/文 片山健/絵 偕成社 2004)

おべんともって
森山 京
偕成社
2004-09-01

 

 

『みずたまり』(森山京/文 松成真理子/絵 偕成社 2011)

みずたまり
森山 京
偕成社
2011-05-11
 
 
 
 
『森のゆうびんや』(森山京/文 井上洋介/絵 フレーベル館 1976)

森のゆうびんや (おはなしひろば)
森山 京
フレーベル館
2002-09-01
 
 
 
 
『あした あさって しあさって』(森山京/文 はたこうしろう/絵 小峰書店 2014)
 
あした あさって しあさって (おはなしだいすき)
もりやま みやこ
小峰書店
2014-10-24
 
 
 
 
(作成K・J)

おすすめ幼年童話10『ジェニーとキャットクラブ』エスター・アベリル


 連載第10回は、『ジェニーとキャットクラブ 黒ネコジェニーのおはなし1』(エスター・アベリル/作・絵 松岡享子、張替惠子/共訳 福音館書店 2011)です。


 

黒ネコのジェニーは、はにかみやで引っ込み思案の女の子。飼い主のキャプテン・ティンカーさんと一緒に暮らしています。

ティンカーさんの家の庭には、近所のネコたちが集まる「キャットクラブ」という集まりがありました。ジェニーも「キャットクラブ」に入りたいと思いますが、特技のない自分に自信が持てず、一歩踏み出す勇気が持せん。初めは落ち込むジェニーでしたが、ティンカーさんに後押しされ、自分なりの方法で殻を打ち破ります。(「ジェニーがキャットクラブにはいるはなし」」

この本には全部で3つのお話が入っています。「ジェニーがネコの学校にいくはなし」では、小さいジェニーを車で追いかけまわすしょうぼうねこのピックルズが登場したり、「ジェニーがはじめてネコのパーティーにいくはなし」では、ジェニーを赤ちゃん扱いするネコが現れたりと、それぞれの話の中で、ジェニーの前には様々な困難が立ちはだかります。初めは弱気になるジェニーですが、勇気を奮い起こし前進していく彼女の姿に読み手の子どもたちは共感したり、元気をもらったりしながら読み進めることができるでしょう。

 

黄色い装丁が目を惹くおしゃれな挿絵は作者エスターアベリル自らが描いたもの。ユーモラスで可愛らしく、個性的なキャットクラブの面々が生き生きと描かれています。 

続編の『ジェニーのぼうけん』『ジェニーときょうだい』では、キャットクラブの仲間や兄弟のために奔走する、より成長したジェニーの姿を見ることができます。

また、本作より前に出版された同作者の『しょうぼうねこ』も併せて読んでみると、新たな発見があるかもしれませんよ。

 

(作成:28年度児童部会部員M.N) 

2017年11月、12月の新刊から(追加あり)


2017年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、9月、10月に見逃していた本もあり)

今年一年も、この新刊紹介コーナーを愛読していただきありがとうございました。ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

本来ならばYA向けの読物もたくさん紹介したいと思いながらも、ひとりで1か月で読める本が限られてしまい、購入しても積読になって、紹介が遅れることもありました。それでもこれからも少しずつ新刊の紹介を続けていきたいと思います。

いつも新しい本の情報を提供し、アドバイスしてくださる上記の書店の新刊担当の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『ハッピー・ハンター』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/9/29 

ハッピーハンター
ロジャー デュボアザン
ロクリン社
2017-09-29

 

1961年に出版されたロジャー・デュボアザンの初邦訳です。ハンターの格好にあこがれたポピンさん。でも、ハンターの格好はしても、心優しいポピンさんは動物たちを打ち殺すなんて出来ません。そんなポピンさんと森の動物たちとの心温まるお話です。

 

『ふるいせんろのかたすみで』チャールズ・キーピング/作 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2017/10/31

ふるいせんろのかたすみで
チャールズ・キーピング
ロクリン社
2017-10-31

 

1983年にらくだ出版から出ていた『たそがれえきのひとびと』の新装新訳版です。古い線路沿いに長屋が六軒、軒を連ねて建っていました。そこに住むのは貧しいお年寄りたち。彼らは毎週10ペンスずつ出し合ってサッカーくじを買っていました。ある日、そのくじが大当たり。突然舞い降りた幸運、その賞金でみんなが何をするのでしょうか。最後まで読んで、ああこんなふうにお金って使いたいなと思いました。

 

『ひょうたんめん』神沢利子/文 赤羽末吉/画 復刊ドットコム 2017/11/25

ひょうたんめん
神沢 利子
復刊ドットコム
2017-11-25

 

鹿児島県種子島に伝わる妖怪「ひょうたんめん」を神沢利子が再話し、赤羽末吉が絵を描いた昔話絵本です。1984年に偕成社から出版されていましたが、長く絶版が続いていましたが、この度復刊ドットコムから新装復刊されました。ひょうたんめんは、塩も馬も食ってしまうという恐ろしい妖怪で、村人を困らせていました。ある日、馬をひいて塩を買いに行った「おとじろうまごじろう」は帰りが遅くなり、びくびくしながら山道に差し掛かります。するとやっぱり後ろからひょうたんめんの呼び止める声が!ひょうたんめんと、おとじろうまごじろうの攻防やいかに。赤羽末吉の描くひょうたんめんの飄々とした風貌にも注目です。

 

 

『へそとりごろべえ』赤羽末吉/詩・画 童心社 2017/12/7

へそとり ごろべえ
赤羽 末吉
童心社
2017-12-07

 

かみなりのごろべえは、おへそが大好物。たぬきにねずみ、ライオン、そして鬼や大仏のおへそまで「くりんくりんの シューすっぽん」と取ってまわります。しまいには自分のへそも気になって・・・抱腹絶倒の結末におとなも子どもも一緒に楽しめると思います。この度1976年に出版されていた童心社が創業60周年を記念して「ことばと詩のえほん」シリーズの3冊がこの度改訂新版として復刊しました。どれも40年経っていますが、今の子どもたちにとっても新鮮な面白さとして伝わると思います。

 

『あいうえどうぶつえん』小林純一/詩 和田誠/画 童心社 2017/12/7

あいうえどうぶつえん
小林 純一
童心社
2017-12-07

 

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの1冊です。見開き2ページの右側が詩(ことば)、左側が動物の絵になっています。詩は「ひるのあかちゃん けまでいって、 わぎをぬぐら ぷろんとって、 よぎのけいこで あいうえお」と、各行のはじまりがあ行~わ行で始まっていて、リズミカルで楽しい絵本です。

 

 

『かぜにもらったゆめ』佐藤さとる/詩 村上勉/画 童心社 2017/12/7

かぜにもらったゆめ
佐藤 さとる
童心社
2017-12-07

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの3作目は、今年2月に亡くなった佐藤さとるの作品です。眠りにつこうとして、布団の中で、春の夜に吹く風の音に、いたちが来たのか?ロケットが墜落したのか?雷様が落ちたのかも?と、どんどん妄想を膨らませていく男の子。「トントン」「トントントトン」「トトントントン」。短い詩の後に続く擬音が、その空想の世界をさらに広げていくようです。春先にぜひ読んであげたい1冊です。

 

【児童書】

『図書館につづく道』草谷桂子/作 いしいつとむ/挿絵 子どもの未来社 2017/12/18

図書館につづく道
草谷佳子/著
子どもの未来社
2017-12-22

 

山あいの図書館に集まってくる子どもから大人までの10人の、図書館に行き着くまでの物語が、やがてひとつの物語へと編まれていきます。作者の草谷さんは、ご自身でも家庭文庫を主宰し、静岡図書館友の会で活躍されている方だそうです。図書館の思わぬ魅力や、地域での役割が見えてくる、まさに図書館で働く人におすすめしたい1冊です。

 

【研究書】

『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子/著 文春文庫 文藝春秋 2017/10/10

 

1987年に日本エディタースクールから刊行されていた松岡享子さんの『えほんのせかい こどものせかい』が、文春文庫になりました。内容は、単行本のそのままですが、巻頭に東京子ども図書館での松岡さんの語りの様子や、館内の様子などを映し出した美しいカラー写真のページが加わりました。121pからの「グループの子どもたちに 絵本を読み聞かせるために」(~144p)は、図書館や学校の朝読の時間など、集団に向けて絵本を読んであげる場合の選書や準備について、初心者向けにわかりやすく書かれています。文庫版になった上に、フォントは単行本の時よりも大きくて読みやすいので、おはなし会に関わる人々の座右の書になると思います。

 

『紙芝居百科』紙芝居文化の会/企画・制作 童心社 2017/11/20

紙芝居百科 (単行本図書)
童心社
2017-11-20
 
日本独自の文化である「紙芝居」の魅力をもっと多くの人に伝えたい、海外の人へも伝えたいと研究と活動を続けてきた「紙芝居文化の会」が紙芝居に関する情報をまとめました。紙芝居の魅力や演じ方や、絵本との違いについてわかりやすくまとめられています。「紙芝居の選び方」として、おすすめの紙芝居が分野別に分類されてリストになっていますので、おはなし会で紙芝居を演じてみようとする時の助けになります。
 
 
『保育に活かす おはなしテクニック~3分で語れるオリジナル35話つき~』こがようこ/著 小学館 2017/12/20
保育に活かす おはなしテクニック: ~3分で語れるオリジナル35話つき~ (教育単行本)
こが ようこ
小学館
2017-12-15
 
今年度、児童部会では「お話(素話)を覚えて語ることを目標にして、「おはなし」とは何なのか、「おはなし」を聞く子どもたちの反応はどうなのか、について研究してきました。この本は保育の現場で長い間、子どもたちにおはなしを届けて来た作者が、幼い子どもたちにおはなしを語る意味をわかりやすく伝えてくれます。またオリジナルの短いおはなしは、今の子どもたちにとってもわかりやすく楽しい展開になっています。幼い子どもたちへの語りについて試行錯誤している方は、ぜひこちらも参考にしてみるとよいでしょう。
 

 

(作成K・J)

訃報 児童文学翻訳家 上田真而子さん


ドイツ文学者で児童文学作品の翻訳を多数手がけられた翻訳家の上田真而子さんが、12月17日午後、京都バプテスト病院のホスピスでお亡くなりになりました。1930年生れの87歳でした。

1982年にはミヒャエル・エンデの『はてしない物語』(佐藤真理子/共訳 岩波書店 1982)で日本翻訳文化賞を、1988年には『あの年の春は早くきた』(クリスティーネ・ネストリンガー/著 岩波書店 1984)で国際アンデルセン賞国内賞を受賞されています。

ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』佐藤真理子/共訳 岩波書店 1982

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
ミヒャエル・エンデ
岩波書店
1982-06-07
 
 
 
 
クリスティーネ・ネストリンガー『あの年の春は早くきた』岩波書店 1984
 
あの年の春は早くきた (1984年)
クリスティーネ ネストリンガー
岩波書店
1984-05-14
 
 
 

 

その他にもたくさんのドイツ語圏の絵本や児童文学を翻訳し、日本の子どもたちに紹介してくださいました。(NDLサーチ→上田真而子

以下は主な作品。

ハンス・ペーター・リヒター『あのころはフリードリヒがいた』岩波少年文庫 1977

あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 3100)
ハンス・ペーター・リヒター
岩波書店
 
 
 
 
 
 
ペーター=ヘルトリング『ヨーンじいちゃん』偕成社 1985
 
ヨーンじいちゃん (現代の翻訳文学(28))
ペーター=ヘルトリング
偕成社
 
 
 
 
 
 
ヴィルヘルム・ブッシュ『黒いお姫さま ドイツの昔話』福音館書店 1991
 
黒いお姫さま (福音館文庫 昔話)
ヴィルヘルム・ブッシュ
福音館書店
2015-01-10
 
 
 
 
 
『まほうつかいのでし ゲーテのバラードによる』福音館書店 1995
 
まほうつかいのでし―ゲーテのバラードによる (日本傑作絵本シリーズ)
上田 真而子
福音館書店
1995-08-20
 
 
 
 
ホフマン『クルミわりとネズミの王さま』岩波少年文庫 2000
  
クルミわりとネズミの王さま (岩波少年文庫)
E.T.A. ホフマン
岩波書店
2000-11-17
 
 
 
 
 
ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』岩波少年文庫  2003
 
ハイジ 上 (岩波少年文庫)
ヨハンナ・シュピリ
岩波書店
2017-04-20

ハイジ (下) (岩波少年文庫 (107))
ヨハンナ・シュピリ
岩波書店
2003-04-18
 
 
 
 
 
フェーリクス・ザルテン『バンビ 森の、ある一生の物語』岩波少年文庫  2010
 
 
 

 

 (作成K・J)

おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター


連載第9回は、『ごきげんいかが がちょうおくさん』(ミリアム・クラーク・ポター/作 松岡享子/訳 こうもとさちこ/絵 福音館書店 2004)です。


ごきげんいかが がちょうおくさん (世界傑作童話シリーズ)

ミリアム・クラーク ポター
福音館書店
2004-06-30

どうぶつ村に住むがちょうおくさんは、とてもそそっかしく失敗ばかりしています。

どんな失敗かというと、たとえば自転車旅行の計画をたてた時も、はいていくスラックスばかり心配して、肝心の自転車の手配を忘れたのを出発の瞬間に気づいてしまうとか、朝に玉ねぎの種をまいたら、昼には芽が出ないと騒いで、種の目を覚まさせようと畑に向かって鐘を鳴らして大騒ぎをしてしまったり。そんなドタバタやっているがちょうおくさんと、あきれながらも仲良く付き合っているぶたさん、りすおくさんなどとのやり取りが、ユーモラスです。どうぶつ村の住人はだれもが個性的で、とても人間臭いのです。

たとえば、ふくろうの老婦人は賢いけれど少し遊び心が足りません。屋根の上で食事をしているがちょうおくさんから一緒に食べようと誘われる場面があります。彼女は屋根の上でものを食べる必要があるのかと問いただし、十分な理由がないなら登らないと言います。

利発なりすおくさんも、がちょうおくさんの思いつきを聞かされたときなどは、内心では何か失敗するはずと思います。それでも口には出しません。そしてがちょうおくさんの行動に冷静なツッコミをしたりします。こんなやりとりは私たちの普段の人間関係を思い起こしてニヤリとしてしまいます。おとなが読んでも、とても面白い作品です。

短い6つの物語で構成されていて小学校の低学年から読むことができます。こうもとさちこさんの描く挿絵もやわらかく朗らかで、ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。

6つめの物語「クリスマスまであけないで」は、がちょうおくさんが村のみんなのためにクリスマスを用意するお話です。ここでもがちょうおくさんはやらかしてくれますよ。そんながちょうおくさんを囲んで村中のみんなが楽しそうにクリスマスをお祝いしているシーンが、最後の見開きページに描かれています。冬休みの読書におすすめしてもいいですね。

続編に『おっとあぶない がちょうおくさん』(2004)があります。

(作成 29年度児童部会部員M・Y)

2017年10月、11月の新刊から(追加あり)


2017年10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店児童書部門、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『やもじろうとはりきち』降矢なな/作 佼成出版社 2017/10/10

やもじろうとはりきち
降矢 なな
佼成出版社
2017-10-06

ヤモリのやもじろうとハリネズミのはりきちは、あかちゃんのころからの仲良しです。なんにでも積極的なやもじろうと、おとなしくて慎重な性格のはりきちは、成長するにつれて少しずつ離れていくのですが・・・降矢ななさんが作・絵を手掛けるオリジナル絵本です。

 

『ようこそロイドホテルへ』野坂悦子/作 牡丹靖佳/画 玉川大学出版部 2017/10/20 

ようこそロイドホテルへ (未来への記憶)
野坂 悦子
玉川大学出版部
2017-10-24

 

オランダ語翻訳者の野坂悦子の創作絵本です。野坂さんには毎年オランダへ行くたびに惹かれる建物があって、それがこの絵本のテーマになっているロイドホテルなのだそうです。1921年にまずは南米移民のための宿泊施設としてスタートしたこのホテルは、その後難民滞在施設、刑務所、少年院、芸術家のアトリエと時代と共に役割を変えてきました。歴史の変遷の中に人間の生の縮図を見たという野坂さんが、ロイドホテルを通して伝えたいことが絵本に結実しています。 

 

『今、世界はあぶないのか? 争いと戦争』ルイーズ・スピルズベリー/文 ハナネ・カイ/絵 大山泉/訳 佐藤学/解説 評論社 2017/10/20

争いと戦争 (児童図書館・絵本の部屋)
ルイーズ スピルズベリー
評論社
2017-10-10

 

冒頭は世界人権宣言の第一条で始まっています。「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」しかし現実の世界からは争いは消えず、今、また世界が一触即発の危機に面しています。なぜ争いが消えないのか、そのためにどうすればよいのか、子どもたちに問いかけて一緒に考えてみることができる1冊です。争いは、相手への無理解からもたらされる意見の対立から引き起こされるのです。さまざまな考え方の人がいるということを前提に、親子で、クラスでおとなと子どもが一緒に読んで、話し合うきっかけにできるといいですね。小学校中学年から。「今、世界はあぶないのか?」のシリーズには他に『難民と移民』、『貧困と飢餓』、『差別と偏見』の3冊があります。

 

『とてもとてもサーカスなフロラ』ジャック・センダック/文 モーリス・センダック/絵 江國香織/訳 集英社 2017/10/31

とてもとてもサーカスなフロラ
ジャック・センダック
集英社
2017-10-26
 
 モーリス・センダックが『かいじゅうたちのいるところ』でコールデコット賞を取るよりも7年も前に、実兄のジャックと作った絵本がこの度邦訳されました。訳者は江國香織さんです。サーカス団の中で生まれ育ったフロラは、毎晩サーカスを見に来てくれる観客たちが普段はどんな生活をしているのか知りません。スポットライトの向こうに座っている観客はステージから見るとどの人もみんな同じ顔をしているようで、悪夢まで見るようになってしまいます。自分の不安を取り除くためにフロラは初めてひとりで村まで出かけていきます。フロラの不安な気持ちは、人々が自分と同じだとわかったとき、解けていきました。他人を理解するということがどういうことか、そっと伝えてくれる作品です。文字が小さくて文字数も多めです。小学校中学年から。 
 
 
『貨物船のはなし』柳原良平/作 福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集 2017/11/5
貨物船のはなし (たくさんのふしぎ傑作集)
柳原 良平
福音館書店
2017-11-01
 
世界を物が行き来するために欠かせないのが貨物船です。帆船の頃からの貨物船の歴史や、たくさんの荷物を積んでもなぜ沈まないのか構造的な説明もとてもわかりやすいです。また、かつては海外に行くのに使われていた旅客船が飛行機の普及で亡くなった代わりに、滞在型のクルーズ客船ができたことなど、この1冊を読むと船に関するさまざまな知識を得ることができます。調べ学習の導入にも使える1冊です。なお、作者の柳原良平さんは2015年8月に亡くなられています。(→「本のこまど」記事) この絵本は亡くなられる前年に月刊誌「たくさんのふしぎ」4月号として出版されたものを単行本にしたものです。
 
 
『テオのふしぎなクリスマス』キャサリン・ランデル/文 エミリー・サットン/絵 越智典子/訳 ゴブリン書房 2017/11

テオのふしぎなクリスマス
キャサリン ランデル
ゴブリン書房
2017-10-01

 1987年英国生れのキャサリン・ランデルと、2008年にエジンバラ芸術大学を卒業したエミリー・サットンの若い作家コンビの絵本です。絵本の形態をしていますが、しっかりと読みでのある物語になっており絵本から読み物へと橋渡しとして、あるいは親が読んであげるお話としておすすめの1冊です。両親が忙しく、ベビーシッターも居眠りをしてしまっているクリスマスイブ。テオはクリスマスツリーの飾りつけをしながら「だれか、いっしょにいてください。ひとりぼっちじゃなく、いられますように」と祈ります。するとクリスマス飾りの天使や木馬、こまどりに太鼓をたたいているブリキの兵隊たちが、テオに声をかけてきたのです。クリスマスイブに起こる不思議な冒険が、サットンの色鮮やかで繊細な絵で表現されていきます。サットンのちいさなちいさなめにみえないびせいぶつのせかい(二コラ・デイビス/文 越智典子/訳 ゴブリン書房 2015)、いろいろいっぱい ちきゅうのさまざまないきもの(二コラ・デイビス/文 越智典子/訳 ゴブリン書房 2017)も好評でした。

 

 『ジングルベル』キャサリン・N・デイリー/作 J・P・ミラー/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2017/11/1

ジングルベル (おひざにおいで)
キャサリン・N・デイリー
PHP研究所
2017-10-19
 
クリスマスシーズンになると、あちこちで聞こえてくる「ジングルベル」の歌。耳になじみ過ぎて誰もが口ずさむことができるクリスマスキャロルの定番になっています。1964年にその歌詞をベースに作られたこの絵本は、クリスマスの楽しい雰囲気が暖かい色調で表現されています。PHP研究所の「おひざにおいで」シリーズの1冊です。おひざに子どもをのせて、一緒に歌いながら絵本を楽しめるといいですね。

 

『IMAGINE イマジン〈想像〉』ジョン・レノン/詩 ジャン・ジュリアン/絵 ヨーコ・オノ・レノン/序文 岩崎夏海/訳 岩崎書店 2017/11/30

IMAGINE イマジン 〈想像〉
ジョン・レノン
岩崎書店
2017-11-09

ジョン・レノンが世界の平和を願って歌った「イマジン」が絵本になりました。鳥の目から見たらどこにも国境の線はひかれておらず、人々は国を超え、人種を超えて平和に生きることができると、オリーブの枝をくわえた一羽のハトが象徴的に使われています。他人の立場にたって想像してみること、想像力をつかって他人を理解しようとするその行為こそが、平和を創り出すんだという「イマジン」の精神を子どもたちにも伝えていきたいですね。

 

 『ろうそくぱっ』みなみじゅんこ アリス館 2017/11/30

ろうそく ぱっ
みなみ じゅんこ
アリス館
2017-11-22


おはなし会の始まりと終わりに歌う手遊び「ろうそくぱっ」が絵本になりました。作者は『どんぐりころちゃん』のみなみじゅんこさんです。ろうそくをつけていくと、クリスマスツリーに灯がともります。またツリーのろうそくを消すと「よぞらにキラキラおほしさま」が輝きます。この絵本を読むタイミングは、クリスマスの時期だけという行事絵本です。クリスマスシーズンのおはなし会にぜひ取り入れてみてください。私も早速あるおはなし会でやってみました。普段通りに手遊びをする大人がいて、その隣で絵本をめくります。子どもたちは、自分の指の灯りが、クリスマスの飾りになっていると感じたようで、とても喜んでいました。

 

【児童書】

『グリムのむかしばなし Ⅱ』ワンダ・ガアグ/編・絵 松岡享子/訳 のら書店 2017/11/10

『100まんびきのねこ』などの作品があるワンダ・ガアグはミネソタ州ニューアルム生まれですが、ガアグの父はボヘミア(チェコ)出身 で、ニューアルムの町にはドイツ、オーストリア出身者が多く集まっていました。子ども時代に、父や周囲の大人からグリムの昔話をドイツ語で聞いて育ちます。子ども時代にたっぷり聞いたグリムの昔話を、生き生きとした言葉で再話しました。7月に出版された第1巻につづく第2巻です。こちらには「ブレーメンの音楽隊」、「ラプンツェル」、「三人兄弟」、「雪白とバラ紅」など9つのおはなしが入っています。よき語り手だったガアグの再話を、よき語り手である松岡享子さんが翻訳されました。他の再話と比較してみてください。そしてぜひガアグのグリムを子どもたちに読んで聞かせてほしいと思います。

 

『ふたりのスケーター』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2017/11/20

ふたりのスケーター
ノエル ストレトフィールド
教文館
2017-11-15

 舞台は第2次世界大戦前のイギリスです。ジョンソン一家の4人兄弟のたったひとりの女の子、ハリエットは10才です。しばらく体調を崩していましたが、お医者さんに体力をつけるためにスケートを勧められます。初めて行ったスケートリンクで、有名なスケート選手の忘れ形見で将来を有望視されているララと、運命的な出会いをします。ララは一人っ子で、しかも英才教育を受けるために学校には通っていなかったのです。ララにとっては初めて出来た同年代の友達ハリエットの存在は、互いに切磋琢磨していくかけがえのない存在へとなっていきます。その過程では嫉妬をしたり、誤解を解こうとして苦悩したり。10代の女の子の心の機微が丁寧に描かれていて、現代の子どもたちにも十分に通じることでしょう。小学校高学年から。

 

【研究書】

『絵本を深く読む』灰島かり/著 玉川大学出版部 2017/11/15

絵本を深く読む
灰島 かり
玉川大学出版部
2017-11-14

昨年6月に66歳の若さで亡くなった翻訳者で子どもの本の研究者の灰島かりさんの『日本児童文学』等の雑誌に連載した評論を、本人が亡くなる前に加筆、修正したいたものが、このほど出版されました。「絵本を深く読む」というタイトルの通り、作品を読み比べ、語句と絵を丁寧に読んで分析しています。現在、大人向け絵本の出版がとても盛んでし、子ども向けの絵本もさまざまなタイプのものが増えてきています。そのような中で、「絵本とは何か」というまっすぐな問いを、読み手に投げかけてくる、そんな1冊です。

 

【その他】

『ネコの時間』日髙敏隆/著 平凡社 2017/10/11

カエルの目玉(大野八生/絵 福音館書店 2011)という子ども向きの作品もある動物行動学の第一人者、日髙敏隆さんのエッセーです。タイトルになった「ネコの時間」以外にも「チョウという昆虫」、「ホタルの光」、「ドジョウは何を食べている?」、「水面を走るアメンボ忍者」など人間の周りにいる動物や昆虫の不思議な生態について綴られたエッセーが30ほど収められています。ちょっとした空き時間に、ひとつひとつを読むのが、ちょっとした楽しみになる1冊です。

(作成K・J)

訃報 島多代さん


1998年から2002年まで国際児童図書評議会(IBBY)の会長を務められた絵本研究家の島多代さんが11月27日に80歳で亡くなられました。(ニュース記事

以下、日本国際児童図書評議会(JBBY)のFacebookページからの引用です。(******で囲った範囲)

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謹んでお知らせ致します。
IBBY会長、JBBY会長を務められた、JBBYの名誉会員・島多代さんが11月27日に帰天されました。享年80歳でした。
島さんは、長い間JBBYだけでなく、IBBYの国際理事、会長としてもご尽力くださり、世界の子どもたちと子どもの本に関わる人たちのために働いてこられました。
感謝と共に、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
☆島さんとJBBY・IBBY☆
1986年 東京で開催したIBBY世界大会に参加
1987年~2002年 JBBY理事
1990年~1992年 IBBY理事
1992年~1994年 IBBY副会長
1998年~2002年 IBBY会長(アジアから初めての選出)
2002年 スイス・バーゼルにて、IBBY創立50周年記念大会をIBBY会長として開催
2009年~2011年 JBBY会長(ご病気のため退任)
2011年~2013年 JBBY理事
在任中は皆様から多大なご協力、ご厚情を賜りました。
ありがとうございました。
    一般社団法人 日本国際児童図書評議会

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島さんは、IBBY、JBBYの仕事をされながら、子どもの本についての著作もいくつか出されました。(→島多代さん著作 NDLサーチ)
また、ご自宅では私設図書館ミュゼ・イマジネールの活動も続けていらっしゃいました。

2014年4月23日~5月27日の間、銀座・教文館ウェンライトホールにて、「ミュゼ・イマジネール」の本などを展示する島多代の本棚から 絵本は子どもたちへの伝言特別展も開催されました。その際には、島多代さんの聖心女子大学の先輩にあたる美知子皇后さまもお出かけになりました。
私も会期中に3回、特別展に足を運びましたが、島さんが集められた世界中の貴重な絵本が並べられており、特に第二次世界大戦前の貴重なロシアの絵本などは、見るものを圧倒するものがありました。

2004年(平成16年)には社会貢献支援財団から功労賞を授与されています。

心より哀悼の意を表します。

 
『センダックの絵本論』モーリス・センダック著 脇明子、島多代/訳 岩波書店 1990
センダックの絵本論
モーリス センダック
岩波書店
1990-05-25

 

 

 

『ソビエトの絵本 1920‐1930』ジェームズ・フレーザー、島多代/共編 リブロポート 1991

 

 

『ちいさなもののいのり』エリナー・ファージョン/文 エリザベス・オートンジョーンズ/絵 島多代/訳 新教出版社 2010

ちいさなもののいのり
エリナー ファージョン
新教出版社
2010-10


 

(作成K・J)

訃報 パット・ハッチンス


『ロージーのおさんぽ』(わたなべしげお/訳 偕成社 1975)、『おやすみみみずく』(わたなべしげお/訳 偕成社 1977)、『ぶかぶかティッチ』(いしいももこ/訳 福音館書店 1984)や『おまたせクッキー』(乾侑美子/訳 偕成社 1987)など、子どもたちが大好きな作品があるイギリスの絵本作家パット・ハッチンス女史が11月7日にロンドンのご自宅で亡くなったというニュースが入ってきました。(→Publishers Weekly)85歳でした。

1942年生まれのパットは、イギリスはヨークシャーに生まれました。1968年に『ロージーのおさんぽ』でデビュー、1974年には『風がふいたら』(田村隆一/訳 評論社 1981 *現在絶版*)でケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。

パット・ハッチンスの作る絵本は、様式化された明るい色彩の絵、繰り返しのあるリズミカルな文章で、子どもたちが日常の暮らしの中で出合うユーモラスな展開が特徴的です。それは時代の変化に流されない普遍的なユーモアで、今の子どもたちでも十分に楽しむことができます。ぜひ紹介してあげましょう。

『ロージーのお散歩』パット・ハッチンス/作 わたなべしげお/訳 偕成社 1975

ロージーのおさんぽ (ハッチンスの絵本)
パット=ハッチンス
偕成社
1975-08-01

 

『おやすみみみずく』パット・ハッチンス/作 わたなべしげお/訳 偕成社 1977

おやすみ みみずく (ハッチンスの絵本)
パット=ハッチンス
偕成社
1977-07-01
 
 
 
 
『ぶかぶかティッチ』パット・ハッチンス/作 いしいももこ/訳 福音館書店 1984) 

 

 

 

『おまたせクッキー』パット・ハッチンス/作 乾侑美子/訳 偕成社 1987

おまたせクッキー
パット ハッチンス
偕成社
1987-09-01
 
 

『ピクニックにいこう!』パット・ハッチンス/作 たなかあきこ/訳 徳間書店 2003
ピクニックにいこう!
パット ハッチンス
徳間書店
2003-04


(作成K・J)

おすすめ幼年童話8『宇宙からきたかんづめ』佐藤さとる


連載第8回は『宇宙からきたかんづめ』(佐藤さとる/作 岡本順/絵 ゴブリン書房 2011)です。

宇宙からきたかんづめ
佐藤 さとる
ゴブリン書房
2011-11

 

 

 

物語は、ぼくがスーパーマーケットで不思議なかんづめと出会うシーンからはじまります。いちごのジャムを買ってくるようにとたのまれて行ったのに、ぼくが手にしたのは、なんと、おしゃべりをする宇宙から来たかんづめだったのです!

 お金を払って、不思議なかんづめを家に持ち帰り、缶切りのついたナイフで空けてみようとしたそのとき、「やめろ!」頭の中に声が響きました。「いったいだれなんだ」と問うと、かんづめはしばらくだまっていましたが、「宇宙のはてからきたんだ。地球がどういう星か、調べているだけだ」と答えてくれました。

そこから、遠い宇宙からきた不思議なかんづめとぼくとの生活がはじまります。

 ぼくは、「タイムマシンは、本当にできるものですか?」「宇宙のはしへいったら、どうなりますか?」など、不思議に思ったことをかんづめに聞くと、そのたびに面白い話を聞かせてくれるのです。そんなかんづめが語る話が5話、収録されています。(①タイムマシンは川に落ちた、②タツオの戸だな、③いなくなったどろぼう、④おしゃべりなカビ、⑤とんがりぼうしの高い塔)

 かんづめに聞いた話③「いなくなったどろぼう」の中に、光を当てると物が小さくなる懐中電灯が登場します。あれ?どこかで見たことがあると思ったら、ドラえもんに出てくるスモールライトそっくりです。実はこの作品が最初に出版されたのは1967年で、「ドラえもん」が小学館の学習雑誌に連載されるようになったのは1969年なので、ドラえもんより先なのです。出版されてから半世紀、おもしろいお話は、何年たっても色褪せることはありませんね。ファンタジー文学の第一人者「コロボックルシリーズ」の佐藤さとるが描く少し不思議なSFストーリーです。漢字にはふりがなもふってあり、お話の展開にスピード感があるので、小学校低学年の子どもたちから読むことができるでしょう。

 (作成29年度児童部会部員 M・N)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 

2017年9月、10月の新刊から


2017年9月、10月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見逃していた6月、8月に出版された本もあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店児童書部門、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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絵本】

 『はくぶつかんのよる』イザベル・シムレール/文 石津ちひろ/訳 岩波書店 2017/6/27

はくぶつかんのよる
イザベル・シムレール
岩波書店
2017-06-28

 昨年出版されその美しさで話題を呼んだあおのじかんのイザベル・シムレールの描く夜の博物館です。何も動かずひっそりとした展示室の一角、蝶の標本箱から黄色い一匹の蝶が優雅に飛び立ちます。その翅のはばたきに誘われるかのように博物館の中がにわかに賑やかになるのです。どんな賑わいだったのかは、ぜひ本を手にしてお楽しみください。幻想的で美しい世界が広がっています。

 

『エンリケタ、えほんをつくる』リニエルス/作 宇野和美/訳 ほるぷ出版 2017/8/25

エンリケタ、えほんをつくる
リカルド・シリ=リニエルス
ほるぷ出版
2017-08-25

ママに色鉛筆をプレゼントしてもらったエンリケタ。それで絵本を創ろうと、描き始めます。題して「3つあたまと2つのぼうしのモンスター」。夜になるとクローゼットの中から変な物音がしてくるという設定です。さて、どんなお話をエンリケタは描くのでしょう。アルゼンチンで国民的人気を誇る漫画家リニエルスの作品を、宇野和美さんが翻訳されました。これが日本での初翻訳本だそうです。表紙見返しの部分でエンリケタが、飼い猫に「ほんはもちはこべるうちゅうだね」と語っている部分もとても気に入りました。

『カランポーのオオカミ王』ウィリアム・グリル/作 千葉茂樹/訳 岩波書店 2017/9/7

カランポーのオオカミ王
ウィリアム・グリル
岩波書店
2017-10-19

昨年秋に南極探検に出かけたエンデュアランス号の漂流を題材してシャクルトンの大漂流がデビュー作だったウィリアム・グリル。そのデビュー作でケイト・グリーナウェイ賞を最年少で受賞しました。そのグリルの2作目は「シートン動物記」の中でも、多くの子どもたちの心をつかむ「オオカミ王ロボ」を絵本にした『カランポーのオオカミ王』です。この作品ではボローニャ・ラガッツィ賞(ノンフィクション部門)の最優秀賞を受賞しています。こちらでも色鉛筆で描く細かい描写がとても美しく、西部開拓時代のシートンとロボとの駆け引き、そしてロボと出会ったことでシートンが動物保護へと考え方を変えていく様が丁寧に描かれています。

『さるとかに』神沢利子/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2017/10/1

さるとかに
神沢利子
ビーエル出版
2017-10-01

1974年に銀河社から出版されていた神沢利子と赤羽末吉による『さるとかに』がこのほどBL出版より復刊されました。この昔話を絵本にしたものでは、岩波書店から出版されて読み継がれているかにむかし(木下順二/文 清水崑/絵 岩波書店 1976)が有名ですが、こちらの絵本もまた味わい深いです。赤羽末吉のダイナミックな筆致で描かれた木の上から青柿を投げるさるや、火の玉のように熱くなった栗が顔に当たってびっくりするさるの表情が素晴らしいです。

 

『インドの昔話 あおいジャッカル』マーシャ・ブラウン/作 こみやゆう/訳 瑞雲舎 2017/10/1

あおいジャッカル
マーシャ・ブラウン
瑞雲舎
2017-10-01

 1979年に瀬田貞二の訳で佑学社から出版されていたあおいやまいぬ(のちに1995年に瑞雲舎より復刊)を、こみやゆうさんが新たに翻訳しなおし、再度瑞雲舎から出版されました。タイトルも原題の「The Blue Jackal」に合わせて『あおいジャッカル』となりました。紙の色が白から薄いベージュ色になり、マーシャ・ブラウンの版画絵が色合いも鮮やかに蘇っています。より原書の初版の色に近づいたということです。また、瀬田貞二版では「ですます調」だった訳が「である調」になっており、一層力強い印象があります。もとのお話は、世界最古の寓話集と言われるインドの「パンチャタントラ」で、その中の一話をマーシャ・ブラウンが再話して絵本にしたのです。こみやゆうさんはマーシャ・ブラウンをアメリカ、ロサンゼルス郊外へ訪ねており、その際に「やまいぬ」を「ジャッカル」と改めることを約束されていたそうです。また、瀬田版では、最後のページもお話の続きとして翻訳されていましたが、これは本文とは別の「パンチャタントラ」の各話についている格言ということで、フォントを変えて格言とわかるような表現になっています。図書館で『あおいやまいぬ』と並べて展示をしてみても面白いですね。

 

『わたしたちのたねまきーたねをめぐる いのちたちのおはなしー』キャスリン・O・ガルブレイス/作 ウェンディ・アンダスン・ハルパリン/絵 梨木香歩/訳 のら書店 2017/10/10

わたしたちのたねまき: たねをめぐるいのちたちのおはなし
キャスリン・O. ガルブレイス
のら書店
2017-10-05

庭に母子が野菜の種を蒔いているシーンから絵本は始まります。しかし、太古の昔から植物は人の手を借りなくても、命をつないでいたのです。風や鳥、太陽の光によって自ら弾けることによって、あるいは雨に流されたり、動物の身体にくっついて遠くへ運ばれたりしながら、次の世代へと命を引き継いできたことが、柔らかいタッチの絵でわかりやすく描かれています。親子で読みながら、命のつながりを一緒に考えられたら素敵ですね。


『ざしき童子のはなし』宮沢賢治/作 岡田千晶/絵 三起商行 2017/10/17

ミキハウスから出版されている宮沢賢治の絵本シリーズの29冊目です。今回絵を描いたのは『ぬいぐるみおとまりかい』(風木一人/作 岩崎書店 2014)や『あかり』(林木林/作 光村教育図書 2014)などを描いている岡田千晶さんです。柔らかいタッチの色鉛筆画で、賢治が語るざしき童子の不思議な雰囲気を余すことなく表現しています。絵本の中から子どもたちのさんざめく声が聞こえてきそうです。

 

『りんごとけんだま』鈴木康広/作 ブロンズ新社 2017/10/25

りんごとけんだま
鈴木康広
ブロンズ新社
2017-10-19

アーティストとして先端技術と融合させたさせた作品などのある鈴木康広さんの2作目の絵本。普段何気なく見ているものが視点を変えることで、別の意味をもったものに見えてくるという鈴木さんのお話はとても面白いので、ぜひ名前をクリックして公式サイトに行ってみてください。鈴木さんは14歳の時にけん玉の「灯台」という技をクラスで一番に完成させて以来、けん玉はもはや自分の分身なんだそうです。りんごのけん玉(玉の部分がりんご型)を24歳の時に制作し、地球の引力と自分をつなぐ道具としてのけん玉を通してニュートンに想いを馳せたそうです。それが今回絵本という形となりました。代官山蔦屋書店児童書部門では11月4日に鈴木康広さんと東京大学先端科学技術研究センター中邑賢龍教授とのトークショーも行われます。(→こちら

『ル・コルビュジエ 建築家の仕事』フランシーヌ・ブッシェ、ミッシェル・コーアン/作 ミッシェル・ラビ/絵 小野塚昭三郎/訳 現代企画室 2017/10/31

ル・コルビュジエ: 建築家の仕事 (末盛千枝子ブックス)
フランシーヌ ブッシェ
現代企画室
2017-10-16

1987年にスイスで出版された「CORBU COMME LE CORBUSIER」が、1999年にすえもりブックスから翻訳されて出版されましたが、しばらく絶版となっていました。2017年に原書の出版30周年を記念してスイスで新装版が出版されたのを機に、日本語版も復刊されました。本の装丁もとても斬新で美しいものとなっています。「あとがき」に建築家の原広司さんが書かれたル・コルビュジエが考えた家や都市への考え方の解説を読むと、彼の遺したものがいかに大きなものであったかがよくわかります。この絵本に出会った子どもたちの中から、都市をデザインできる第2のル・コルビュジエが誕生するといいなと思います。

【児童書】

『クリスマスがちかづくと』斉藤倫/作 くりはらたかし/絵 福音館書店 2017/10/5

『どろぼうのどろぼん』(福音館書店 2014)で児童書デビューした斉藤倫さんの最新作です。セロは10歳の男の子。クリスマスが近づくと街は賑やかになるのに、セロは気持ちが晴れません。それは両親がともにその時期は忙しく、かまってくれないからです。「クリスマスなんてだいきらい」とセロは思っていました。ところが、実はおとうさんがサンタクロースなので、クリスマスはとても忙しいということを知ります。半信半疑のセロですが、ある真夜中、サンタクロースとして準備をしているおとうさんをみつけます。セロは自分がクリスマスにどれだけ寂しい想いをしていたかを訴えます。それを聞いたおとうさんの答えは意外なものでした。小さな子どもの思いに寄り添う、とても素敵なお話です。小学校中学年くらいからおすすめです。

 

『命の水 チェコの民話集』カレル・ヤロミール・エルベン/編 出久根育/絵 阿部賢一/訳 西村書店 2017/10/5

「チェコのグリム」と呼ばれたカレル・ヤロミール・エルベン(1811~1870)の生誕200周年を記念して刊行されたアンソロジーを全訳した民話集です。グリム兄弟より約四半世紀後に生まれたエルベンですが、グリム兄弟がドイツでしたのと同じように、19世紀のボヘミア地方(現在のチェコ共和国)に伝わるチェコ語の民話や民謡を収集し、まとめました。20ほどの民話や詩、童謡などが収められています。この民話集の絵はチェコの首都プラハ在住の出久根育さんが手がけられました。テンペラ画の技法で描かれた絵はどれも美しく、物語の世界へ誘ってくれます。グリム童話とよく似たお話もいくつかあります。ヨーロッパ大陸の中で民族が移動しながら、庶民が口伝えで語り継いできたのだなと改めて思いました。

 

『ごはんはおいしい』ぱく きょんみ/文 鈴木理策/写真 福音館書店 2017/10/15

ごはんは おいしい (日本傑作絵本シリーズ)
ぱく きょんみ
福音館書店
2017-10-11

「ごはんは おいしい ごはんは あったかい」で始まる、写真絵本です。78ページあるので、児童書として紹介します。詩人のぱくさんが、おばあちゃんが孫によびかけるような優しいことばで、ごはんの一粒は、稲の実一粒。それを春にたんぼに植えて、稲穂が実り、刈入れをし、お米を炊いてほかほかのごはんになるまでを語りかけます。鈴木さんの写真のアングルも、科学絵本とは違って、とても美しく、こうした水田のある日本に生まれて良かったなと感じます。読むと4分半。収穫感謝のおはなし会などで読んであげると良いでしょう。

 

【その他】

『子どもはハテナでぐんぐん育つ―図書館で調べ学習をやってみよう!―指導法と実践例』調べ学習研究会「調之森」/編著 しまだいさお/イラスト 岩崎書店 2017/10/31

 小学生(低学年~高学年)から中学生、高校生、そして生涯学習としての大人の調べ学習まで、発達に応じて年齢別に、理系分野から社会科分野、国語分野まで、幅広い実践例を通して、調べ学習の進め方、指導法をわかりやすく伝えてくれる1冊です。編著者は、1999年に発足した研究会「調之森」です。メンバーは小・中・高の教師、学校図書館司書、公共図書館司書、ボランティア、地域の教育機関の主事、公益財団法人図書館振興財団調べる学習コンクール関係者、大学の非常勤講師などで構成されています。調べ学習を牽引してこられた蔵元和子さんや片岡則夫さんの名前もありました。巻末付録として、コピーして使える「ドーナツチャート」と「記録カード」が付いているのが嬉しいです。

(作成k・J)

 

訃報 毛利子来さん


たぬき先生で親しまれた小児科医の毛利子来さんが10月26日に亡くなられました。87歳でした。(ヤフーニュース記事→こちら

私が子育てをしている頃(30年近く前ですが)、『赤ちゃんのいる暮し』(筑摩書房 1983)、『幼い子のいる暮し』(筑摩書房 1984)の2冊には大変お世話になりました。30年以上経ち、子育ての常識も今は変化していると思いますが、子どもの側に立った目線で子育てを考えることが出来た本でした。

また、2度ほど講演会でお話を伺いました。「育児の考え方は時代により、また親たちが育った環境でも、それぞれに違いがある。子どももそれぞれ違った個性を持っている。それぞれの個性に合わせて試行錯誤しながらやっていくのがいい。正解はないので、マニュアルに捉われないことが大事」、「孤独な子育てで追い込まれていく母親を地域でサポートすることの大切さ」、「身体が発する自然な反応をよくみて病気に対応することの大切さ」などを、実例とともに楽しくお話してくださいました。

毛利先生は、小児科医という立場から病気に関する科学絵本も執筆されています。どれも、子ども自身が自分の身体に起こる変化(病気)がなぜなのかを理解して、それを予防するにはどうしたらよいか、わかりやすく伝えてくれています。

『ねびえ』毛利子来/作 堀内誠一/絵 かがくのとも 福音館書店 1982
現在こちらは絶版になっています。図書館では所蔵している館も多いと思います。(→国立国会図書館サーチ こちら


『ゲーとピー たぬきせんせいのびょうきのほん』毛利子来/作 なかのひろたか/絵 福音館書店 1998

ゲーとピー (かがくのとも絵本)
毛利 子来
福音館書店
1998-11-10

 

 

『カユイ カユイ たぬきせんせいのびょうきのほん』毛利子来/作  なかのひろたか/絵 福音館書店 1998

カユイ カユイ (かがくのとも絵本)
毛利 子来
福音館書店
1998-11-20

 

 

また、雑誌ちいさい おおきい よわい つよい(ジャパンマシニスト社 1993年創刊)の編集者としても、長く活躍されました。大きいこと、強いことが良いとされる中で、小さくても、弱くても自分らしく生きていくことの大切さをこの雑誌では伝えてくださいました。

心より哀悼の意をお捧げします。

(作成K・J)

 

おすすめ幼年童話7『ちびねこグルのぼうけん』アン・ピートリ


連載第7回は『ちびねこグルのぼうけん』(アン・ピートリ/作 古川博已・黒沢優子/訳 大社玲子/絵 福音館書店 2003)です。

 

 

 

主人公は、灰色の毛並みで、グルルル、グルルルとのどを鳴らすことから、グルと呼ばれるようになった子ねこです。しっぽが短くて、そして気までも短い主人公のグルは、お母さんや兄弟といっしょに納屋に住んでいましたが、ある日家族のもとから離れて、ドラッグストアを経営する人間のおじさんの家にもらわれて行きます。

最初は、話し相手も遊ぶ相手もいないグルでしたが、隣の家に住む男の子ピーターや、金色のステッキをもって毎朝散歩するおじいさんのスミスさんなどネコのことばがわかる人たちと友達になり、世界が広がり始めます。

グルにとっては、毎日の出来事が冒険そのもの。短気で怒りっぽいグルが起こす事件に、子どもたちは驚いたり、または応援したりしながら、お話の中にいつしか引き込まれていることでしょう。もといた納屋に連れ戻されちゃう? やんちゃなグルが巻き起こす冒険の展開に、ハラハラドキドキしながらも読み終わった後には、幸せな安心感で胸が満たされます。

作者のアン・ピートリは、アメリカの黒人作家です。1946年に黒人母子家庭の悲劇を描いた『街路』で、ホートン・ミフリン文学賞(*)を受けました。1949年に出版されたこの作品は、子ども向けに初めて書いたお話です。物語が何より好きな姪に読んでもらいたいと書いたそうです。

絵は『おはなしのろうそく』などの挿し絵で有名な大社玲子さん。優しいタッチの挿し絵が、幼い読み手の想像力をより豊かなものにしてくれます。やさしく、読みやすい文章なので、小学校低学年の子どもたちが楽しんで読める一冊です。

学校図書館で、表紙を見せてディスプレイしていたら、小学2年生の女の子が手に取ってくれて、すぐに借りていってくれました。表紙の絵の持つ魅力の大きさを感じた瞬間でもありました。愛らしいグルと一緒に、冒険の世界を楽しんでほしいと思います。

 (* アメリカの出版社が主催する文学賞)

(作成29年度児童部会部員H・Y)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら

 

2017年8月、9月の新刊から


2017年8月、9月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部7月出版の本もあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『うたのえほん 1ぽんでもにんじん』長野ヒデ子/構成・絵 のら書店 2017/7

前田利博/作詞、佐瀬寿一/作曲の童謡「いっぽんでもニンジン」が、長野ヒデ子さんの楽しい絵で絵本になりました。絵本を読みながら歌いたくなります。歌詞カードが付録で付いています。図書館で装備する時に、後ろ見返しに紛失しないように固定できるといいでしょう。

 

『マスターさんとどうぶつえん』アーノルド・ローベル/作 こみやゆう/訳 好学社 2017/8/26

マスターさんとどうぶつえん
アーノルド ローベル
好学社
2017-09-11

 岩波子どもの本どうぶつえんのピクニック(舟崎克彦/訳 岩波書店 1978)の前に描かれた絵本がこちらです。どうしてマスターさんがどうぶつえんの飼育係になったのか、『マスターさんとどうぶつえん』を読むとわかります。こんなにどうぶつたちに愛されるマスターさんは、子どもたちにも受け入れられることでしょう。2冊いっしょに展示してあげるといいですね。


『なきたろう』松野正子/作・絵 赤羽末吉/絵 復刊ドットコム 2017/8/24

なきたろう
松野 正子
復刊ドットコム
2017-08-30

 1974年に文研出版から出ていた絵本が復刊されました。松野正子さんの民話風の創作に赤羽末吉さんが絵をつけたものです。泣いて泣いて泣いて、なきたろうのその泣き声は村中に迷惑をかけてしまいます。そこで山へ修行に出かけることになるのです。なきたろうは、ある時ぐっと泣くのを我慢する出来事に出会います。それを乗り越えようと成長していく姿がとても頼もしいです。

 

『きみはライオン たのしいヨガのポーズ』ユ・テウン/作・絵 竹下文子/訳 偕成社 2017/9

きみは ライオン!
ユ・テウン
偕成社
2017-08-24

韓国出身でアメリカでイラストレーターとして確約するユ・テウンさんの新作です。子どもたちが金色の朝陽を浴びながら、庭に集まってきました。朝のヨガの時間です。「きちんとすわって りょうてをひざに おおきくくちをあけ したをだす!」、するとそれはライオンのポーズ。ほかにもちょうちょや、いぬ、へび、かえるなど様々な動物に変身です。「みんなおはよう きょうもいいひになりますように」朝の時間に読んであげたい1冊です。

『いっぽんのせんとマヌエル』マリア・ホセ・フェラーダ/作 パトリシオ・メナ/絵 星野由美/訳 偕成社 2017/9

いっぽんのせんとマヌエル
マリア・ホセ・フェラーダ
偕成社
2017-08-29

著者のマリアさんが、線の好きな自閉症の男の子と出会ったことで生まれた絵本です。自閉症の子どもたちは、世の中のことを認識するのに、それぞれの子どもたち特有のやり方があります。マヌエルくんは線が好きで、目に見えるものから線を探して、それで身の回りのことを認識しているのです。また、この絵本にはピクトグラム(絵文字)も付いています。障害のある子どもたちに読んであげるときに、子どもたちがおはなしを理解する助けになることでしょう。9月上旬には作者が来日し、トークショーも行われました。


『こどもってね・・・・・』ベアトリーチェ・アレマーニャ/作 みやがわえりこ/訳 きじとら出版 2017/9/25

こどもってね……
ベアトリーチェ・アレマーニャ
きじとら出版
2017-09-05

いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉受賞作品です。アレマーニャはイタリア・アンデルセン賞最優秀画家賞などを受賞しており、この作品は10か国以上で翻訳されています。この絵本に登場するひとりひとりの子どもたちの表情も豊かで素敵です。子ども時代は、おとなに見守られて子どもらしく生活できる保障がどの子にも平等に与えられるようにと願います。どんな国に生まれようとも、どんな家庭に生まれようとも、その子が成長する可能性は同じように大切です。子ども時代って、いつか終わってしまうけれど、子ども時代の輝きが未来への希望へとつながるからです。そんなことを想いながら読みました。

 

【児童書】

『メリーメリーへんしんする』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/9/14

メリーメリー へんしんする
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-09-15
 
メリーメリーおとまりにでかける(2017/3刊)、メリーメリーのびっくりプレゼント(2017/6刊)に続く「メリーメリーシリーズ」全3冊が、これですべて揃いました。メリーメリーは5人兄姉の末っ子です。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちはメリーメリーのことをまだ何もできない半人前だと思っていて、時には邪魔もの扱いをします。でもメリーメリーはそんなことにはめげません。そして周りがアッというようなことをやって、逆にお兄ちゃん、お姉ちゃんたちの鼻を明かすこともたびたびなのです。そんな楽しいエピソードのつまったお話が5つ、入っています。自分で読むなら小学校中学年くらい向けですが、これは小さな子どもたちに読んであげてほしいなと思います。
 

 『アイスクリームが溶けてしまう前に 家族のハロウィーンのための連作)』 小澤健二と日米恐怖学会 福音館書店 2017/0/10

 日本でもここ10年くらいの間に若い人たちの間で浸透してきたハロウィーンですが、アメリカでは家族ぐるみで楽しむもの。10月に入ると町のあちこちにジャック・オー・ランタンのためのおおきなカボチャの市がたったり、家をおどろおどろしく飾り立てたりします。この本の作者は昔話研究者の小澤俊夫さんの息子さんで、アメリカ在住のミュージシャンオザケンです。もともとはケルト民族のお祭りが、アメリカで今のような形になっていた理由や、アメリカにいる家族がどんな風に楽しんでいるか、子どもたちにわかりやすく、面白く伝えてくれています。なぜハロウィーンなのに題名が『アイスクリームが溶けてしまう前に』となっているのも気になりますね。その意味がわかると、余計に親子で楽しむハロウィーンが魅力的にみえてきます。ぜひ多くの人に読んでほしい1冊です。こちらのサイトもぜひどうぞ→福音館書店「アイスクリームが溶けてしまう前に」特設サイト

 

 
【詩歌】

 『ポケットのはらうた』工藤直子/詩 保手浜孝/画 2017/5/5

ポケットのはらうた
くどうなおこ
童話屋
2017-05-26

 今年5月に出版されていたのに見落としていました。現在教文館ナルニア国ナルニアホールにて”のはらうた”完結記念 わーいはなまるにじゅうまる「ポケットのはらうた原画展が開催されています。(2017/9/1~10/17)『のはらうた1』が出版されて今年で33年。多くの人が子ども時代に親しんだ詩がたくさんあるでしょう。「のはらうた」シリーズの最終巻になる『ポケットのはらうた』は、これまでの作品の350篇の中から選りすぐりの26篇を保手浜さんの版画/画と共にまとめたものです。永久保存版として手元に置いておきたい1冊です。

 【研究書】 

 『ヨーロッパの昔話ーその形と本質』マックス・リュティ/著 小澤俊夫/訳 岩波文庫 岩波書店 2017/8/18

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫)
マックス・リュティ
岩波書店
2017-08-19

昔話を学術的に研究し、学問体系にしたマックス・リュティの『ヨーロッパの昔話』が岩波文庫として再版されました。これまで昔話について学ぼうとすると図書館の閉架書庫から1969年に岩崎美術社から出版された『ヨーロッパの昔話ーその形式と本質』(小澤訳)を借りて紐解くしかありませんでした。この度文庫化するにあたり翻訳者の小澤俊夫さんが、読みやすさに考慮して改行を加えたりと手を入れています。昔話について学ぶ人は、一度は読んでおくとよい本です。小澤さんはドイツ語を学ぶ中でグリム童話に魅せられメルヒェン(昔話)の研究を始められます。その研究の中で出会ったのが昔話の口承文芸論をまとめたリュティでした。出会った当時、リュティは高校の国語教師だったそうですが、その研究の功績が認められて、その後チューリヒ大学の民俗学の教授になったということも小澤さんが語っています。(→こちら 小澤俊夫昔話へのご招待ポッドキャスト=提供絵本の店あっぷっぷ)小澤さんの「昔ばなし大学」のサイトは→こちら
 

【その他】

『森のノート』酒井駒子/作 筑摩書房 2017/9/10

森のノート (単行本)
酒井 駒子
筑摩書房
2017-09-04
 
 東京と森の中にある家を行ったり来たりしているという絵本作家、酒井駒子さんの画文集です。森の中で過ごす日々で見つけた小さな発見を、それはたとえば高原に立ち込める霧だったり、森に響くキツツキの木をつつく音だったりするのですが、見開きページに400字弱の短い文章で綴り、その小文にひとつづつ子どもや小動物の絵が並べられています。その静かな、それでいて確かな森の息遣いを感じる文章と、静謐でいて温かさを感じる絵は、忙しく時間に追われている日々に差し出されるご褒美のように受け取りました。(担当編集者のことば→こちら「ほんのひきだし
 

『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』佐々木正美 福音館書店  2017/9/10

はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
2017-09-06
 
 雑誌「暮しの手帖」2010年2・3月号から2015年6・7月号に連載された児童精神科医佐々木正美さんの「母子の手帖」の原稿をあらたに編集しなおして1冊にまとめたものです。今年の6月に亡くなられた佐々木正美さんの遺作となりました。「あとがき」には「世の中のすべての子どもたちが、お母さん、お父さん、そして周囲の人々から愛され、人間関係に恵まれた人生を送れるよう、願ってやみません。」と記されています。(2017年4月吉日と日付があります)子どもたちが健全に育っていくために必要なこと、それは愛されているという実感なのだと、佐々木さんは一貫しておっしゃってきました。その一方で子育てにあたる親たちは、たくさんの情報があふれる中でさまざまなプレッシャーを感じていて、単純に我が子をそのまま受け入れて愛するということが難しくなっている現実があります。この本では、そんな親たちにも「大丈夫だよ」と救いの手を差しのべてくださっているように感じます。これから子育てをする若い人にも、子育てで苦労したと思う人にも、寄り添ってくれる1冊です。
 
(作成K・J)
 

おすすめ幼年童話6『プレゼントはお・ば・け』西内ミナミ


連載第6回は『プレゼントはお・ば・け』(西内ミナミ/作 西川おさむ/絵 フレーベル館 2010 新装版)です。

プレゼントはお・ば・け
西内 ミナミ
フレーベル館
2010-08-01

 

 

タイトルを見ると「えっ。なんだ?」と気になってしまうこの本。好奇心旺盛な子は、「おばけがプレゼントなんてほんと? 見てみたい!」、怖がりな子は、「こわいよ!そんなプレゼント欲しくない。」と思うかもしれません。どちらにせよ、思わず手に取って読みたくなってしまいます。

リュウはもうすぐ7歳。ひとりっ子の弱虫な男の子です。口では、すごく勇ましいことを言いますが、サッカーのボールが飛んでくると、思わず目をつぶってしまうし、夜に1人でトイレに行くこともできません。でも、「おばけだってこわくないもん。」と強がりばかり言っています。しまいには「ぼくはへいきだよ。ねえ、おかあさん、ためしにおばけをうちにつれてきてごらん。」と言い放つのです。おかあさんはにやっと笑って、リュウの誕生日に、おばけをプレゼントに連れてくると言いました。本当は、おばけがこわくてしかたないリュウは、気が気ではありません。

誕生日当日、お母さんはリュウがこわくないと言ったオバケたちを、工夫をこらして用意しました。ひとつ目こぞうのおばけは、ぬい針といったぐあいです。お父さんも最後にとっておきのおばけをつれてきてくれますが、こちらもユーモアたっぷりです。

強がりを言ってしまう息子を、楽しく愛情豊かに優しく見守る両親の姿は読んでいて安心します。怖いものにドキドキしながらも向き合おうとするリュウに幼い読者たちは、自分を重ね一体感を感じるでしょう。大人も、読むと思わずにっこりしてしまいます。「うちの子は弱虫で心配だ」なんていうお父さんとお母さんも、このお話を読むと、こんな返し方もあったのね!と楽しくなります。

親子で一緒に読んでほしい作品ですが、文章はやさしく、文字も大きく、ページ毎に挿絵があるので1人で本を読み始めた子どもにも、ぴったりの物語です。 

作者の西内ミナミさんは、広告会社にコピーライターとして勤務後、児童文学の創作に専念され地域で子どもの読書推進運動にも関わっていらっしゃいます。絵本『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)など多くの作品が子どもたちに親しまれています。 

(作成29年度児童部会部員M・G)

訃報 わかやまけんさん


こぐま社の「こぐまちゃん」シリーズが子どもたちに人気の絵本作家、わかやまけんさんが2年前に85歳で亡くなられていたことが、今日付で発表されました。(→毎日新聞記事はこちら

『しろくまちゃんのホットケーキ』出版40周年記念の際に、こぐま社の佐藤英和さんが「こぐまちゃん」シリーズについて絵本ナビのインタビューに答えていらっしゃいます。(絵本ナビの記事→こちら

しろくまちゃんのほっとけーき (こぐまちゃんえほん)
わかやま けん
こぐま社
1972-10-15
 
 
 
こぐま社を創立した佐藤さんが、子どもたちが初めて出会うにふさわしい絵本をと、画家のわかやまけんさん、歌人で小学校の先生だった森比左志さん、児童演劇作家の和田義臣さんの4人で、「こぐまちゃん」シリーズを生み出したのだそうです。子どもたちの日常生活からひろったテーマの絵本は、長く読み継がれています。
 
わかやまけんさんは、このシリーズ以外にも絵本を描かれました。また高田馬場にある児童教育専門学校にあった絵本作家や児童文学作家を養成する児童文化専門課程で教鞭も取られていました。(現在、この課程はなくなっています)
『絵本の見かた・創りかた』若山憲 すばる書房盛光社 1975
 
絵本の見かた・創りかた (1975年) (おしゃべり絵本講座)
若山 憲
すばる書房盛光社
1975
 
絵本作家を目指す人に向けて書かれた本です。
 
 
『きつねやまのよめいり』では、第16回サンケイ児童文化出版賞を受賞しています。
きつねやまのよめいり
わかやま けん
こぐま社
1978-10-01
 
 
『こぐまちゃんとどうぶつえん』
 
 
 
 
『たんじょうびおめでとう』わかやまけん/絵 こぐま社 1977
 
 
 
 
『あかべこのおはなし』わだよしおみ/作 わかやまけん/絵 こぐま社 1980
あかべこのおはなし
和田 義臣
こぐま社
1980-10-01
 
会津磐梯山を懐かしく思うあかべこのおはなしです。「あかべこ」は会津の郷土玩具です。
 
『にわか雨はざんざんぶり』わかやまけん こぐま社 1985
にわか雨はざんざんぶり
わかやま けん
こぐま社
1985-07
 
雨が降って大喜びで公園で遊ぶ兄弟の、楽しそうな姿が描かれています。子どもって、こんな風に遊ぶこと、大好きなんですよね。
 
心から、哀悼の誠を捧げます。
 
(作成K・J)

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