新刊本・話題の本

2018年5月、6月の新刊から
『うみべのまちで』がケイト・グリナウェイ賞を受賞しました!
4月、5月の新刊から(2冊追加あり)
3月、4月の新刊から
2018年2月、3月の新刊から
2017年12月、2018年1月の新刊から
2017年11月、12月の新刊から(追加あり)
2017年10月、11月の新刊から(追加あり)
2017年9月、10月の新刊から
2017年8月、9月の新刊から
2017年6月、7月の新刊より
『物語の森へ 児童図書館基本蔵書目録2』への想いを聞いてきました!
2017年5月、6月の新刊より(その2)
2017年5月、6月の新刊より(その1)*追加資料あり
子どもに本を手渡す人にぜひ読んでほしい2冊

2018年5月、6月の新刊から


2018年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書売り場など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『ちょうちょのためにドアをあけよう』ルース・クラウス/文 モーリス・センダック/絵 木坂涼/訳 岩波書店 2018/5/17

ちょうちょのために ドアをあけよう
ルース・クラウス
岩波書店
2018-05-18

子どもたちにとって日々の生活は、いろんなわくわくすることに満ち溢れている、そんな日々の気づきが可愛らしいつぶやきになっていて、またセンダックが描く子どもたちの表情がとても愛くるしい小さな本です。おとなはそんな子どもの表情に癒されるでしょうが、子どもは自分と同じ目線、同じ考えをもっているということに「そうそう!」と頷くのではないでしょうか。集団での読み聞かせには向かないかもしれませんが、子どもを隣に座らせて読んであげたいなと思いました。この本を介しておとなと子どもの会話が弾みそうです。私は「おかあさんと おとうさんを つくるのは あかちゃん もし あかちゃんが うまれなければ ふたりは どっちも ただの ひと」この一文が一番気に入りました。


『どしゃぶり』おーなり由子/文 はたこうしろう/絵 講談社 2018/6/12

どしゃぶり (講談社の創作絵本)
おーなり 由子
講談社
2018-06-14
 
暑い夏の午後、空にもくもくと育っていく入道雲。黒い雲のかたまりがこっちに来ると思うと、「ぼつっ!ぼつっ!ぼつっ!あめだだ!」と、雨が降り始めます。雨が広げた傘にぶつかると「ばらっ ばらっ ばらっ ばらばらっ」「とん ととん ぼつんっ ばら ばら ばらっ かさの たいこだあ!」、ますます雨脚は強くなり「ずだだだだだだだ ぼぼぼぼぼぼぼ…」「ずざあ ずざあ ずざあ ずざあああ」。空から地面からものすごい音が溢れてきます。そうなると傘なんて無用の長物。傘を投げ捨て雨の中で飛び跳ねる男の子の躍動感は、生命の輝きに満ちています。先日、5月に亡くなったかこさとしさんの亡くなる約1か月くらい前の様子を撮影したNHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で、かこさんが絵本作家の鈴木まもるさんと雨粒の形について話すシーンがありました。雨粒は実は雫の形ではなく丸い形で空から降ってくるのだとかこさんが指摘するのですが、はたこうしろうさんは降ってくる雨粒すべて丸く、さすがだなと思いました。雨は、傘の先から垂れる時は雫の形に見えますが、空から降ってくるときは、少し押しつぶされたような丸い粒なのです。(参考までに→中日新聞プラス達人に訊け


『ぼくのなまえはへいたろう』灰島かり/文 殿内真帆/絵 福音館書店 2018/6/15

ぼくのなまえはへいたろう (ランドセルブックス)
灰島 かり
福音館書店
2018-06-13

2016年に亡くなられた子どもの本の研究者で翻訳者の灰島かりさんの作品です。(追悼記事→こちら)主人公の男の名前は「平太郎」。友達から「むかしのひとみたい」「うまれるとき、おならしたんだよ」とからかわれるので、自分の名前を変えたいと思います。市役所勤めの友達のおじさんに名前を変える手続きについて尋ねてみると簡単には変えられそうにない。そこで父親に直談判しにいくと、自分の名前に込められた思いを教えられます。それでも納得のいかない平太郎くん。でも少しずつ自分の名前を前向きに捉えていくおはなしです。福音館書店のランドセルブックシリーズは、絵本の形をしていますがひとりで読書を始める子どもたち向けの幼年童話として書かれています。


『旅の絵本Ⅸ』安野光雅/作 福音館書店 2018/6/15

旅の絵本Ⅸ (安野光雅の絵本)
安野 光雅
福音館書店
2018-06-13
 
安野光雅さんは、かこさとしさんと同い年の92歳。その安野さんの新作が6月に2冊出版されました。その1冊が長年旅先の風景を描き続けて来られた「旅の絵本」シリーズの9冊目『旅の絵本Ⅸ』、スイス編です。イタリア・ミラノから車でアルプス越えをしてスイスに入って行ったと解説編に書いてありますが、工事で一方通行になっていた急峻な崖路を命がけで越えた先で見たグラン・サン・ベルナール峠が、冒頭のページに描かれています。安野さんが実際に歩いてスケッチしたスイス各地の風景が、そこに暮らす人々の様子とともに描かれています。文字のない絵本ですが、旅人となって絵の中に入りこんでいくと思わぬ発見を、たくさんすることができます。
 
 
『Whale’s Way ザトウクジラ』ヨハンナ・ジョンストン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2018/6/16

ザトウクジラ
ヨハンナ・ジョンストン
好学社
2018-06-19
 
昨年12月に出版された『コウテイペンギン』(こちら→紹介記事)に続くヨハンナ・ジョンストンとレナード・ワイスガードによる動物の生態を丁寧に描いた絵本です。人間と同じ哺乳類でありながら、普段知ることのできないザトウクジラの生態、とくに子育ての様子を黒と深緑色2色で美しく描き出すワイスガードの画力に圧倒されます。ジョンストンのクジラへの愛情に満ちた言葉を、こみやゆうさんがわかりやすい日本語に翻訳しています。厳しい自然の中で生きるザトウクジラの生き方から、子どもたちもきっと何かを学ぶのではないかと思いました。
 
 
『シルクロードのあかい空』イザベル・シムレール/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店 2018/6/27

シルクロードのあかい空
イザベル・シムレール
岩波書店
2018-06-28
 
あおのじかん(こちら→紹介記事)やはくぶつかんのよる(こちら→紹介記事)に続くイザベル・シムレールの作品。こちらは「朝日にあかくそまる東の空に背をむけて、夕日がしずむ西をめざして」進むシルクロードを赤と白の対比をうまく使って描いています。蝶を専門とする若き昆虫学者が、西安を発って新疆ウイグル自治区の西の果て、カシュガルへと珍しい蝶を求めて旅をしていきます。壮大なシルクロードの風景と、その土地土地の風物や生物を克明に描くページとが交互に出てきます。風物や生物を描くページでは、まるで博物館の展示ケースを覗いているようです。手書き文字は岩波書店の担当編集者が書かれたそうです。
 
 
【詩】
 
『こどもあそびうた』谷川俊太郎/詩 山田馨/編 童話屋 2018/6/3

こどもあそびうた
谷川俊太郎
童話屋
2018-06-28
 
谷川俊太郎さんのこれまでの詩の中から、子どもたちが声に出して読める楽しいものばかりを、谷川さんの大親友で岩波書店で児童書の編集者だった山田馨さんが選んだ詩集が、童話屋から出ました。のはらうたと同じ文庫本サイズで、巻頭におかれた詩「かっぱ」にちなんで表紙デザインはつぶらな瞳の緑の河童です。お二人の友人だったはせみつこさん(詩やことば遊びをステージ構成したパフォーマー、『しゃべる詩あそぶ詩きこえる詩』などの詩集を編んでいる)へのオマージュとして本の帯には「子どもたちに贈る谷川俊太郎のあそぶ詩おどる詩そらでうたう詩」と書かれていました。巻末の詩「えかきうた」の「ひった へに びっくり」のページに描かれている「ひ」「へ」「び」を組み合わせた絵は谷川さんの自作とのこと。6月30日に行われた銀座教文館ナルニア国『こどもあそびうた』刊行記念トークで、童話屋の田中和雄さんと谷川さん、山田さんの楽しいおしゃべりの中で伺いました。声に出して楽しい詩は、おはなし会の導入に使えそうです。


【児童書】

『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』こまつあやこ/作 講談社 2018/6/5

昨年9月に第58回講談社児童文学新人賞(公式サイト→こちら)を受賞した作品が刊行されました。作者は現役の図書館司書さんです。題名には耳慣れない言葉が並びます。まるで魔法の呪文のようですが、これはマレーシア語でリマは5、トゥジュは7、つまり「五七五七七」という短歌の韻律をマレーシア語で表したものです。中学2年生の沙弥はマレーシアからの帰国子女、2学期から日本の中学に編入し毎日クラスの中で浮かないか、どきどきしていました。そんな時にみんなから「督促女王」と呼ばれている3年の佐藤先輩に図書室に呼び出されます。借りた本の返却だけかと思いきや、いきなり「今からギンコウに出かけるよ。ついてきてよ」と言われてしまいます。戸惑う沙弥でしたが…中学生の揺れる心を瑞々しい感性で描き、読後感はとても爽やか。ぜひこの夏、10代の利用者に薦めてほしい1冊です。
 

『ふくろ小路一番地』イーヴ・ガーネット/作 石井桃子/訳 岩波少年文庫159  岩波書店 2018/6/15新版第3刷

ふくろ小路一番地 (岩波少年文庫)
イーヴ・ガーネット
岩波書店
2009-05-15

イギリスの小さな町の袋小路に住んでいる子だくさんのラッグルス一家の、家族が織りなすドタバタの日々を描いた作品です。この本はイギリスで1937年に出版され、イギリス図書館協会からその年に出版された最優秀児童文学に贈られるカーネギー賞を受賞しています。ラッグルスのお父さんはゴミ収集を仕事とし、お母さんは洗濯屋さんで、その上子だくさんとくれば、TV番組などで取り上げられる貧乏子だくさん家族を思い浮かべてしまいます。この当時、イギリス児童文学が描いていたのは子守りのいる上流階級の家庭が多かったため、この作品は貧しい労働者階級を描いて話題を呼んだのです。7人の個性豊かな子どもたちが巻き起こすどんな失敗をも、おおらかに受け止める家族の物語は、とても愉快です。ガーネットは若い頃にロンドンの子どもを描くために貧民街を何度も訪ねたということです。そこで見た貧しいけれど生き生きと暮らす子どもたちの姿が作品の中で描かれているのでしょう。石井桃子さんはあとがきに「ガーネット女史の文体は、俗語もまじえた口語で、べらべらしゃべるような調子で書かれてありますので、訳すのに、たいへん苦労しました。」と書いています。その翻訳も大変魅力的です。新版が2009年に出た後、しばらく品切れになっていましたが、この度第3刷として出版されました。すでに蔵書している館も、旧版しかない場合は、この機会に買い替えてもよいと思います。



『源氏物語 つる花の結び 上・下』荻原規子/訳 理論社 2018/6


源氏物語 つる花の結び(下)
理論社
2018-06-12
 
 
『紫の結び』三巻から始まり、『宇治の結び』上下巻(宇治十帖)に続き、この度出版された『つる花の結び』上下巻で荻原源氏物語が完成しました。源氏物語五十四帖を、光源氏と藤壺の宮、紫の上の一生を描く『紫の結び』、中流階級の女人たちとの逢瀬から始まり玉鬘十帖へ続く『つる花の結び』、そして源氏の孫たちが主人公となる『宇治の結び』と大胆に3つの系統にわけて、全7冊に再構築したものです。千年の時を経た古典を読みやすい現代語訳にし、多くの若い読者に読んでほしいという作者の願い通りに、『つる花の結び』は、光源氏の色男っぷりを伝えていて、現代の若い世代も楽しんで読める作品になっています。
 
 
【その他】

 『かんがえる子ども』安野光雅/作 福音館書店

かんがえる子ども (福音館の単行本)
安野 光雅
福音館書店
2018-06-13

安野光雅さんの新刊のもう1冊は子どもの学びと生活について語るエッセイです。「おとなの目が行きとどいていることは必要ですが、行きとどきすぎると、子どもの自由がなくなります。」、「実際に触れて知る、というのは、映像などで見て知っている、というのとは違うと思います。(中略)実際に自然の中を歩いて、花が咲いているのを見、鳥が謳っているのを聞き、雨が地面にしみこんでいく様子を見たり、森の中のにおいをかいだり、というような、直接自分の体で触れて知るような体験とでは、感じかたが大きく違ってくると思います。」と述べ、子どもが体験し、そこから「どうなっているんだろう」と考える、そして自分で答えを見つけていくことの大切さを、実例をあげながら書いておられます。『ふしぎなえ』や、『はじめてであうすうがくの絵本』、『旅の絵本』は、それを実行された結果の作品だったのだと、改めて国際アンデルセン賞作家である安野さんのこれまでの仕事も理解できる1冊でした。

(作成K・J)

『うみべのまちで』がケイト・グリナウェイ賞を受賞しました!


2018年のケイト・グリナウェイ賞(*)に輝いたのは、カナダの絵本『うみべのまちで』(原題「TOWN IS BY THE SEA」、ジョアン・シュウォーツ/文 シドニー・スミス/絵 いわじょうよしひと/訳 BL出版 2017/7/15)です。

*ケイト・グリナウェイ賞*
イギリスの絵本作家ケイト・グリナウェイにちなんで1955年に英国図書館協会によって設立された賞。1年間にイギリスで発行された絵本のうちで特に優れたものの画家に対して贈られる。

 

受賞を知らせるサイト→The Canadian Children’s Book Centre 「TOWN IS BY THE SEA wins Kate Greenaway Medl

 

この作品は、昨年産経児童文化出版賞翻訳賞も受賞しています。

昨年、この本が出版された時に教文館ナルニア国で読んで、紹介文を書いているのに、なぜか昨年の新刊情報から抜け落ちていました。(ノートから書き起こす時に、ページを飛ばしてしまった模様)

改めてこの機会に紹介します。

うみべのまちで
ジョアン・シュウォーツ
ビーエル出版
2017-07-11
 
 
“舞台は、カナダ、ノヴァ・スコシア州、ケープ・プレトン島。1950年頃の炭鉱のある町の様子を、炭鉱夫の息子の視点から描きます。うちの窓から、あるいは町のあちこちから見渡せる穏やかな海。その海の下に坑道があり、そこで父さんたちが働いている。美しい島の景色と対照的にところどころで挟み込まれる地下の坑道の様子。黒い地面が重苦しくそこで働く人々の上にのしかかるように描かれ、町の繁栄が暗い坑道で働く人々によってもたらされていることを語りかけている。
文章として書かれてはいないけれど、「そのころ、とうさんは、うみのした。くらいトンネルで せきたんを ほっている。」という繰り返される地下坑道の場面3,4枚目では落盤事故の様子が描かれる。地上ではやはり炭鉱夫だったおじいちゃんのお墓に行って花を捧げる少年。次のシーンでは父さんが疲れて帰ってくるとシャワーを浴びて、家族で食事をし、ベランダで家族4人並んで海をみつめるシーンへと続く。「いつかぼくも そこではたらく。」最後は暗い海辺の町を海上から引いてみるアングルから描き「ぼくは、たんこうではたらく とうさんのむすこ。」「ぼくのまちでは、みんな そうやっていきてきた。」というセリフで終わる。”
 
カナダ人のイラストレーター、シドニー・スミスはノヴァ・スコシア州出身の38歳で、ノヴァ・スコシア美術デザイン学校の出身です。彼は、光の表現が非常に上手く、美しいのです。その抑えた光のきらめきが、人々が親から子へと連綿と受け継いできた生活を静かに指し示してくれます。またまばゆいような少年の一日と、暗い坑道の様子と対比、少年の住む家の中の様子を描くかと思うと、次のページでは俯瞰して広い大海原を見せるという視点の移動など、絵を通して私たちに豊かに語りかけてきます。
 
シドニー・スミスの手がけた絵本で、ほかに日本で出版されているものに、文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社 2016)があります。

おはなをあげる (ポプラせかいの絵本)
ジョナルノ ローソン
ポプラ社
2016-04-04
 
この作品ではカナダ総督文学賞(児童書部門)。ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞なども受賞しています。
 
 
ぜひこの機会に手に取って読んでほしいと思います。
 
(作成K・J)

4月、5月の新刊から(2冊追加あり)


2018年4月、5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月、3月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

もりのこえほんシリーズ
『あそぼう!はなのこたち』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

あそぼう! はなのこたち (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

春先から初夏にかけて咲く花たちが主人公の絵本です。こまあそびにたけうま、わまわしにめかくしおにといろいろな遊びをしている様子がとても可愛らしい手のひらサイズの絵本です。

 

『ひなげしのおうじ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

ひなげしのおうじ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

ひなげしのおうじが麦の穂で出来た馬に乗って出かけます。途中で馬とはぐれてしまいますが、ひばりやマルハナバチたちに助けられます。素朴な味わいの絵本です。

 

『もりのたんじょうびパーティ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

もりのたんじょうびパーティ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

 もりのおうさま、きのこだいおうの誕生日のお祝いに、きのこたちはもちろん、森の小動物や昆虫たちが集まってきました。次々と繰り出される出し物も楽しませてくれます。

 

『サーカスくまさん』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

サーカスくまさん (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

サーカスのくまさんは、家に帰るとこぐまたちのおとうさんです。こぐまたちは、じぶんたちもやってみたくて、おおさわぎです。

もりのこえほん4冊は、1944年にベルギーのブリュッセルで出版されました。シリーズ名は「サン・スーシ(Sans Souci)」、フランス語で「心配なく、お気楽に」という意味だそうです。当時は第二次世界大戦中で物資が不足し、壁紙の試し刷り用紙を使って小さなサイズで出版したそうです。岩波書店から出た日本版も判型が小さく素朴な味わいです。作者はフランス、ベルギーの子どもの本の分野で活躍した旧ロシア帝国出身のエリザベス・イワノフスキー(1910~2006)で、グワッシュを使って花や動物たちを生き生きと描き出しています。

 『やまのかいしゃ』スズキコージ/作 かたやまけん/絵 福音館書店 2018/5/5

やまのかいしゃ (日本傑作絵本シリーズ)
スズキ コージ
福音館書店
2018-05-08

1991年に架空社から出版されていた『やまのかいしゃ』が、5月に福音館書店から復刊しました。もとは福音館書店月刊誌「母の友」1986年9月号に読みきりの童話として掲載されたものだと、架空社版の奥付にも記されていました。福音館書店のPR紙「あのね」2018年5月号は、この絵本について作者スズキコージさんのインタビュー記事が掲載されています。なぜ絵本にするときに福音館書店ではなく架空社だったのかということも書かれています。ぜひそちらもチェックしてみてください。朝、起きるのが苦手なほげたさんは今日も昼近くになってやっと駅へ。遅刻しているにも関わらず街へ向かう方向とは反対の電車に乗ってしまいます。山の奥の駅についたほげたさん、そのまま「きょうはやまのかいしゃへいこう」と山を登り始めます。山の上から「遅刻した~」と駆け下りていくほいくさんも誘って山の頂上へ。あまりの気持ちのよさに、街の会社からみんなを呼び寄せことを思いつきます。働き方改革が声高に言われている昨今、この絵本はいろいろな味わい方があるかなと思います。でも子どもたちはそんなことは関係なく、ほげたさんの突き抜けたとぼけ具合に魅了されることでしょう。

 

 『ようかいしりとり』おくはらゆめ/作 こぐま社 2018/5/10 

ようかいしりとり
おくはら ゆめ
こぐま社
2018-05-01

 NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で子どもたちに人気の歌「ようかいしりとり」が絵本になりました。妖怪といっても、おくはらさんの描くのは、ちょっととぼけていて、可愛らしくて、ちっとも怖くありません。夏の「こわいおはなし会」の導入に使えますね。その時は歌もチェックしておいて、子どもたちと一緒に歌えるといいですね。

 

 『はるなつあきふゆの詩(うた)』ジュリー・フォリアーノ/詩 ジュリー・モースタッド/絵 石津ちひろ/訳 偕成社 2018/6
はるなつあきふゆの詩
ジュリー・フォリアーノ
偕成社
2018-05-23
 
 四季折々の自然の変化を、日記のようにして詩に読んだ絵本です。春の詩だけでも13編あるので、図書館などの集団でのおはなし会では、1冊を通して読み聞かせをするには向かないのですが、ご家庭で親子で読んでほしいなと思います。また絵がとても美しく、パラパラとめくって、「ああ、こんな気持ち、わかるな~」と、のんびりと季節の変化に想いを馳せるのに相応しく、勉強に疲れたり、人間関係に悩むYA世代(10代の子たち)に手渡してもいいのではと思います。
 

 

【児童書】
絵本から児童書に移行する子どもたち向けの幼年童話を2冊紹介します。

 『ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ』マージョリー・ワインマン・シャーマット/文 バーバラ・クーニー/絵 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2018/5/25
ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ (海外秀作絵本)
マージョリー・ワインマン・シャーマット
ほるぷ出版
2018-05-17
 
オポッサムのホイホイとフムフムが繰り広げるほのぼのとしたおはなしです。オポッサムはネズミにしていますが、カンガルーのような有袋類でアメリカ大陸に棲息している動物です。ホイホイはいつも家の中ばかりにいて、散歩に出かけたことのないフムフムをやっとのことで誘い出しますが、遠くまで歩いていくと、今度はホイホイが動けなくなってしまいます。ふたりのやりとりは、どこかとぼけていてアーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』を彷彿とさせます。

 『ふたごのカウボーイ』フローレンス・スロボドキン/文 ルイス・スロボドキン/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2018/6/1

ふたごのカウボーイ
フローレンス・スロボドキン
瑞雲舎
2018-06-01
 
 絵本『てぶくろがいっぱい』に出てくるふたごの兄弟、ネッドとドニーの楽しいおはなしです。ふたりはカウボーイになって遊ぶときは「オクラホマから来たスティーブとジム」になり切ります。町で出会う人に「おや、ネッドとドニーだね」と聞かれると、「ぼくたちはオクラホマから来たスティーブとジム」だと答えます。ふたりは町へ冒険に出かけますが、迷子になってしまいます。雨宿りしていたお宅からお母さんのところへ「もしかしてお宅のお子さん?」と尋ねられても、名前が違います。さてふたりはちゃんと家に戻れるかしら。幼児期に何か他の者になり切って遊ぶことはとても楽しいですよね。そんな時期の子どもたちもきっと共感しながら読めると思います。
 
 『アンデルセンのおはなし』ハンス・クリスチャン・アンデルセン/原作 スティーブン・コリン/英語訳 エドワード・アーディゾーニ/選・絵 江國香織/訳 のら書店 2018/5/25
アンデルセンのおはなし
ハンス・クリスチャン アンデルセン
のら書店
2018-05-18
 
 『チムとゆうかんなせんちょうさん』『時計つくりのジョニー』などでおなじみのイギリスの絵本作家エドワード・アーディゾーニがアンデルセン物語から14編選んで絵を描いた作品です。江國香織さんがあとがきに、「物語というものをほんとうに深く理解していた人で、物語によりそうのではなく、物語の一部になる挿絵をたくさん描きました。」と書いているのですが、画家であるアーディゾーニが描きたいと思ったおはなしを選んだのだと思います。「しっかりしたスズの兵隊」、「皇帝の新しい服」、「小さな人魚」などおはなしのタイトルもちょっとだけ違っています。読み比べてみてくださいね。
 
 
【研究書】
『絵を読み解く 絵本入門』藤本朝巳・生田美秋/編著 ミネルヴァ書房 2018/5/15
絵を読み解く 絵本入門
ミネルヴァ書房
2018-05-15
 
絵本学会に所属する研究者や、保育者、図書館員など子どもたちに本を手渡している人、また編集者や絵本作家、翻訳家たちが、絵本の「絵を読み解く」という共通のテーマで論じた研究書です。「絵本は、ことばと絵からなり、その相互の関係によって成立し、ページをめくることによって物語が展開していく視覚表現メディアであり、コミュニケーションアートである。そのため、絵本を読み解き、説明するためには、ことばについての理解、絵とことばの相互関係についての理解、絵本と子ども読者の関係についての理解が必要になる。」(あとがき)という視点から、第1部では物語絵本、昔話絵本、ファンタジー絵本、ポストモダン絵本、赤ちゃん絵本について絵の観点から論じ、第2部では古典作品(海外11、日本10)、現代作品(海外8、日本10)の39冊について1冊1冊分析しています。網羅的にわかりやすい解説書となっているので、絵本の選書をする人などは目を通しておくとよいでしょう。
 
『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』ダナ・サスキンド/著 掛札逸美/訳 高山静子/解説 明石書店 2018/5/15 
 
この本の著者はシカゴ大学以下大学院小児外科教授で小児人工内耳移植プログラムのディレクターです。彼女は、小児人工内耳手術の事例から、子どもたちが言語能力の発達にはたんに耳が聞こえるだけではなく、どんな言語環境の中で幼少期を過ごすかがいかに重要かに気がつきます。「人工内耳で聞く力を得たにしても、保護者の言葉の力に変わりはありません。豊かな言語環境がなければ、音が聞こえても何の意味もありませんし、子どもは本来の力を発揮できないでしょう。」と第1章でこの研究へ向かった意図を説いています。この本は親と保育者向けに書かれたものですが、「耳から聴く読書」が子どものことばと心をいかに育てていくかという観点でも読めるので、大変参考になりました。図書館児童サービスとは直接関係ないように思うでしょうが、アウトリーチサービスを考える際にもヒントを与えてくれそうです。
 

【その他】
 『小学生のうちに読みたい物語~学校司書が選んだブックガイド~』対馬初音/編著 少年写真新聞社 2018/5/29
小学生のうちに読みたい物語  ~学校司書が選んだブックガイド~
対馬 初音
少年写真新聞社
2018-05-26
 
杉並区の小中学校で学校司書をしている方々が、子どもたちに本を手渡す中で選んだ物語のブックガイドです。「絵本からの移行期に」、「少し読み物に慣れてきたら」、「主人公にそって物語を楽しみましょう」、「読書の達成感を経験しましょう」、「読書の広がりや深まりを楽しみましょう」、「より深い内容を味わいましょう」、「昔話に楽しみましょう」という7つの単元で、子どもたちの読書力の発達に応じた本を選んでいます。夏休みの読書案内の参考にもなることと思います。ノンフィクションと伝記は含まれておらず、物語(フィクション)だけですが、日々学校で子どもたちと接している司書の方々ならではのコラム記事も充実しています。
 
『遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考』かこさとし/絵・文 復刊ドットコム 2018/2/26

遊びの四季
かこさとし
復刊ドットコム
2018-02-24

 今年5月2日に亡くなられたかこさとしさんが1975年に出版された本を、92歳の誕生を祝って復刊された本です。ご本人が2018年2月の日付で復刊によせて「あとがき」も書いていらっしゃいます。
かこさとしさんが子ども時代に遊んだ遊びを、丁寧に思い出して生き生きと描き出したエッセイです。春夏秋冬、子どもたちが自然の中で自分たちで遊びを生み出していたんだなあと、読み物としてもとても面白かったです。

(作成K・J)

3月、4月の新刊から


 2018年3月、4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナー、茗荷谷てんしん書房など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

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【絵本】 

『ほうまん池のカッパ』椋鳩十/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2018/2/1

ほうまん池のカッパ
椋 鳩十
ビーエル出版
2018-01-26
 
種子島に伝わる昔話です。島一番の力持ちで、釣も腕も島一番といつも自慢するとらまつですが、ある日地面の下から伸びてきた手につかまり獲った魚を奪われてしまいます。カッパの仕業で、ほうまん池には十匹ものカッパが棲んでいるのでした。とらまつはカッパを捕まえようと待ち受けますが、カッパのほうがどうやら一枚上手のようです。さてさてこの勝負、いったいどうなることでしょう。再話は椋鳩十、絵は赤羽末吉で、1975年に銀河社から出版されて長く絶版になっていたものが、BL出版から復刊されました。

 

『大根はエライ』久住昌之/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2018/2/25

大根はエライ (たくさんのふしぎ傑作集)
久住 昌之
福音館書店
2018-01-10

月刊「たくさんのふしぎ」2003年9月号が、今年ハードカバーになりました。『孤独のグルメ』などの作品がある漫画家久住昌之氏の初の絵本作品です。大根おろしや刺身のつまとして他の食品の味を引き立てたり、おでんや煮物で一緒に煮るものによって美味しさがかわったりと、脇役でいながら無くてはならない存在の大根を、それこそ味わい尽くす1冊です。ユーモアたっぷりでいながら大根に関する知識が増す、まさに大根のような味わい深い1冊です。(銀座・教文館ナルニア国でバージニア・リー・バートン展に合せた久住氏のトークイベントに参加してきました。『せいめいのれきし』に大きな影響を受けてきたとのことでした。)

 

『おひさまでたよ』北村人/作 絵本館 2018/3

おひさまでたよ
北村 人
絵本館
2018-03-15

暖かい色のクレヨンの線で描いた小さい子向けの可愛らしい判型の絵本。「ぽかぽか ぽかぽか いいきもち」、「ぽかっぽかっ ふあーあ いいきもち」、ページをめくると動物たちがおひさまの温かい陽射しの中でのーんびりしています。のーんびりすること、これが出来そうでいて、なかなか出来ないからこそ、そんな時間を大事にしたいなと思います。

 

『黄金りゅうと天女』代田昇/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2018/3/20

黄金りゅうと天女
代田 昇
ビーエル出版
2018-03-15

沖縄慶良間諸島に伝わる昔話です。1974年に銀河社から出版されていましたが、この度BL出版から復刊されました。昔、沖縄の武士と百姓の娘が身分違いの恋に落ち、天女のお告げの通りに慶留間島に渡ります。そこで生まれた可愛(かな)という娘は、賢く育ちます。しかし七才になった朝、可愛は「天にいかねばならない」と言ってオタキ山へ登っていき、阿嘉島オタフキ山にいた黄金の竜の背に乗って天に昇って行ってしまったのです。人々が可愛のことを話題にしなくなった頃、島へ大和民族の海賊が襲ってきました。村々は略奪されますが、そこに黄金の竜が現れるのです。沖縄の昔話も大切に語り継いでいきたいですね。

 

『さとやまさん』工藤直子/文 今森光彦/写真 アリス館 2018/4/5

さとやまさん
工藤 直子
アリス館
2018-03-23

写真家今森光彦さんは滋賀県大津市の里山で暮し、四季折々の自然の変化を観察し、そこに集う蝶を始めとする虫たちとの生活を大切にしてこられました。そうした里山の動植物や生活はこれまでも写真絵本やNHKの番組「オーレリアンの庭-今森光彦 四季を楽しむ里山暮らし」で紹介されてきました。この度は里山で撮影された夥しい数の写真の中から、厳選された春夏秋冬の表情が切り取られ、それに工藤直子さんが詩をつけました。またその詩に新沢としひこさんが曲をつけて、出版記念トークイベントで披露されました。人々の暮らしを豊かに彩る里山が、過疎化によって各地で放置されているというニュースも聞きます。里山の存在価値が見直されてほしいと願います。

 

『ぐるぐるちゃん かくれんぼ』長江青/文・絵 菊地敦己/ブックデザイン 福音館書店 2018/4/5

ぐるぐるちゃん かくれんぼ (福音館あかちゃんの絵本)
長江 青
福音館書店
2018-04-04
 
福音館書店のあかちゃんの絵本で、こりすのぐるぐるちゃんが活躍する『ぐるぐるちゃん』、『ぐるぐるちゃんとふわふわちゃん』に続く3冊目です。ぐるぐるちゃんはある日おとうさんといっしょにさんぽに出かけ、かくれんぼをします。ぐるぐるちゃんがあまりに上手にかくれたので、おとうさんはみつけられません。さてさて、どうなるかしら。小さな子どもの心に寄り添う可愛らしい絵本です。
 
 
『パンダのあかちゃん おっとっと』まつもとさとみ/作 うしろよしあき/文 わたなべさとこ/絵 KADOKAWA 2018/4/26
 
パンダのあかちゃん おっとっと
まつもと さとみ
KADOKAWA
2018-04-26
 
あかちゃんと絵本について研究をされたいる後路好章さんが文章を書き、2015年にボローニャ国際絵本原画展で入選した渡邊智子さんが絵を描いたパンダのあかちゃんが愛らしい絵本です。パンダの絵本は、シャンシャン効果もあって、たくさん出ていますが、小さな子どもたちが喜ぶ耳心地のよさがあり、この作品を手に取ってみました。
 
 

『村じゅうみんなで』ヒラリー・ロダム・クリントン/文 マーラ・フレイジー/絵 落合恵子/訳 徳間書店 2018/4/30 

村じゅう みんなで (児童書)
ヒラリー・ロダム・クリントン
徳間書店
2018-04-25
 
3年前のアメリカ大統領選でトランプ大統領と競ったヒラリーさんが文章を書いた絵本です。「子どもを育てるには村中みんなの力が必要だ」というアフリカのことわざを、ヒラリーさんは信念としてきました。この絵本では、子どもが望む「こんな公園があったらいいな」を、おとなもこどもも、自分の出来ることを分担し合って、一緒に作り上げていきます。おとなは子どもの持っている良さを信じ、また家族という狭い枠だけでなく社会とのかかわりの中で育てていくことの大切さを、ヒラリーさん自身が子育ての中で、また政治活動の中で感じてきたといいます。マーラ・フレイジーの描く絵も、あちこちから子どもやおとなたちの声が聞こえそうなほど生き生きとしています。

 

『花ばあば』クォン・ユンドク/絵・文 桑畑優香/訳 ころから 2018/4/29

花ばぁば
クォン・ユンドク
ころから株式会社
2018-05-02
 
当初、童心社から10冊出ている日中韓平和絵本として出版される予定だった絵本です。日中韓平和絵本は戦争を体験した絵本作家浜田桂子さん、和歌山静子さん、田島征三さんたちが韓国、中国の絵本作家との交流を通して、次の世代へ平和な時代を手渡したいと、歴史と向き合い、日中韓双方の国で出版することを前提に、参加した絵本作家が作成しました。ところがクォン・ユンドクさんの描く日本軍慰安婦をテーマにした絵本だけは、このシリーズから出すことが出来ませんでした。韓国では出版されて版を重ねているこの美しい絵本を、なんとかして日本でも出版したいと、田島征三さんがクラウドファンディングで呼びかけ、多くの人の支援を受けて、この度新興の小さな出版社から出版されました。
 昨年は#MeToo運動が世界的に広がりをみせ、また世界各地でイスラム過激派による女子学生襲撃事件も繰り返されており、若い女性には関心のあるテーマです。日本人としてデリケートな問題を含んでいますが、この問題を正面から直視することは大切です。近年、ナチスドイツによるホロコーストをテーマに扱った児童書がたくさん出ています。それはドイツが第二次世界大戦後に自分たちの犯した過ちをきちんと受け止め総括しているからともいえます。一方で日本ではこの問題を無かったかのように扱う勢力があって、過去の清算が中途半端に終わっています。ユンドクさんの来日に合わせた講演会に参加してきました。日本を責めるものではなく客観的な事実に基づいて文章が練られ、戦争というものの愚かさを伝えています。絵は柔らかくとても美しい絵本です。YA世代にぜひ手渡していきたい1冊と考えています。
 
 
 
【児童書】

『石井桃子 子どもたちに本を読む喜びを(伝記を読もう)』竹内美紀/文 立花まこと/絵 あかね書房 2018/4/5
石井桃子: 子どもたちに本を読む喜びを (伝記を読もう)
竹内 美紀
あかね書房
2018-04-25
 
子どもの本の翻訳家として、作家として、戦後日本の児童書黄金時代を支えてこられた石井桃子さんについて描かれた伝記が出ました。作者は博士論文を『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか:「声を訳す」文体の秘密』(ミネルヴァ書房 2014)としてまとめ出版された竹内美紀さんです。前作は研究者の立場から書いた専門書ですが、この作品は子どもにわかりやすく石井桃子さんの生い立ちや遺した功績を伝えてくれています。あかね書房の「伝記を読もう」のシリーズは第1期で10冊第2期はこの本を含めて5冊出ています。

 
『四人のヤッコ』西内ミナミ/作 はたこうしろう/絵 すずき出版 2018/4/20

四人のヤッコ (おはなしのくに)
西内 ミナミ
鈴木出版
2018-04-16
 
 ヤッコは一人っ子です。ピアノの練習や学校の宿題で忙しい日々に、自分にそっくりな子がいればいいのになあと思います。ところがその願いがある日叶ってしまいます。ピアノを上手に弾くヤッコ、勉強をどんどん進めてくれるヤッコ、友達と楽しく遊ぶヤッコとほんとうのヤッコの四人になってしまったのです。最初は喜んだのもつかの間、ヤッコはなんだか浮かない顔です。『ぐるんぱのようちえん』などの作品がある西内ミナミさんは1979年に『四人のヤッコと半分のアッコ』(絵童話 山口みねやす/絵)を日本教文社から出しています。この度、はたこうしろうさんの絵でまったく新しい版として出ました。子どもたちにとっても身近なテーマで、楽しんで読めることでしょう。
 
 
 
【その他】
 
『子どもの人権をまもるために』木村草太/編 晶文社 2018/2/10
子どもの人権をまもるために (犀の教室)
木村草太
晶文社
2018-02-08
 
私たちが本を手渡そうとしている子どもたちの権利はどのように扱われているのか、第1部家庭、第2部学校、第3部法律・制度とわけて、今子どもたちが置かれている状況を伝えてくれている1冊ですこの本を読むと、現代の子どもたちを取り巻く状況は虐待や貧困、保育の不足など、報道等で知る以上に厳しい現実があることも見えてくる。こうした事実に目を向けることは、図書館の児童サービスをどのように地域の子どもたちに届けられるかを検討する上でも大切だと思います。ぜひ通読しておくことをお薦めします。

 
『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』金原瑞人、ひこ・田中/監修 西村書店 2018/4/18

13歳からの絵本ガイド YAのための100冊
金原 瑞人
西村書店
2018-04-18
 
絵本は文章と絵が互いに引き立て合って、独自の世界を表現したものです。芸術性の高い作品や、人生の深い機微に鋭く切り込んだ優れた作品も多く出ています。ところが絵本は幼い子どものためのものという先入観が強いせいか、小学生高学年や中高生にこそ読んでほしいという作品がなかなかその世代に手に取られてないということがありました。この絵本ガイドは、十代の子どもたちに手にしてほしい絵本の情報をぎゅっとひとまとめにしています。ここにある絵本は、YAコーナーで展示してみるとよいと思います。
 
(作成K・J)

2018年2月、3月の新刊から


2018年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『はるは』ジャニーナ・ドマンスカ/作 谷川俊太郎/訳 童話館出版 2018/2/20

はるは
ジャニーナ ドマンスカ
童話館出版
2018-03-01

「はるは はるさめ  はるは はなざかり はるは うたう」と、春の情景から始まり、夏、秋、冬とめぐって「ふゆは はるをまつ」で締めくくられる詩の絵本です。美しい線描の絵に登場するのは茶色のダックスフント。季節ごとにかたつむりやクジラ、虫たち、鳥たち、うさぎと一緒に躍動する姿は、いろいろなことを想像させて楽しくなります。裏表の見返しには一面のクローバーが描かれています。2枚ほど四つ葉のクローバーがあります。子どもと一緒に探してみてください。

 

『とらのことらこ』きくちちき/作 小学館 2018/2/26 

とらのこ とらこ
きくち ちき
小学館
2018-02-26

 2013年に『しろねこくろねこ』(学研)でブラティスラヴァ国際絵本原画展金のりんご賞を取ったきくちちきさんの新作です。ご自身のお子さんの成長に合わせて絵本もどんどん進化しています。今度の絵本もお子さんとの関係の中から生まれた絵本とのこと。とらの子ども、とらこは母さんとらの真似をして一生懸命獲物を追いますが失敗ばかり。そんなとらこの姿を愛情いっぱいに母さんとらは温かく見守ってくれます。「とらこのことらこ つかまえて  母さんのしっぽにつかまった」と繰り返しのことばも心地よくストーリーが進みます。先日原画展に行ってきました。温かい色合いの原画の色を生かすため印刷では苦労をされたとのこと。表紙の黄色も、とらこの鼻の色も、装丁家と印刷技術者の丁寧な仕事のおかげです。(原画展は2018年4月1日まで。高円寺書肆サイコロにて→こちら) 

 

『さよならともだち』内田麟太郎/作 降矢なな/絵 偕成社 2018/2

さよなら ともだち (「おれたち、ともだち! 」絵本)
内田 麟太郎
偕成社
2018-02-28
 
 『ともだちや』(1998年刊)から始まった「おれたち、ともだち!」シリーズの13冊目の最新刊です。タイトルからキツネとオオカミの別れがテーマかと想像しましたが、キツネが「ともだちや」を始める前のお話でした。1館目の『ともだちや』をもう一度引っ張り出して読みたくなるような懐かしい場面もたくさんありました。「さよなら」は、次の新しい出会いへの一歩です。新しい年度が始まる時に、おすすめできる1冊です。
 
 
『かぶきやパン』かねまつすみれ/文 長野ヒデ子/絵 童心社 2018/2/20
 
かぶきやパン (絵本・こどものひろば)
かねまつ すみれ
童心社
2018-02-20
 
2月20日の「歌舞伎の日」に出版されたこの絵本は、2014年に童心社が実施した第7回絵本テキスト大賞を受賞した『まちのパンや「かぶきや」さん』という作品が元になっています。作者のかねまつさんはパン作りと芝居見物が大好きで、自然のこのお話が生まれたのだそうです。そのテキストをもとに長野ヒデ子さんがユーモアたっぷりの絵をつけられました。実際にお二人で歌舞伎の演目とパンの特徴を照らし合わせてストーリーを練り、市川海老蔵さん他、歌舞伎役者の皆さんにもこの絵本を見ていただいたとのこと。2月24日に都立多摩図書館で行われた童心社創業60周年記念講演会の中で長野ヒデ子さんは、歌舞伎の口上は言葉の響きもとても豊かで、歌舞伎を見たことのない子どもたちにも、絵本を通して日本の伝統文化「歌舞伎」の魅力を伝えたいとおっしゃっていました。声に出して子どもたちに読んであげたい絵本です。(童心社・長野ヒデ子さん×かねまつすみれさんスペシャルインタビューの記事→こちら

 

 『もしぼくが本だったら』ジョゼ・ジョルジェ・レトリア/文 アンドレ・レトリア/絵 宇野和美/訳 アノニマ・スタジオ 2018/3/2 

もしぼくが本だったら
ジョゼ・ジョルジェ・レトリア
アノニマ・スタジオ
2018-03-01

表紙にはベンチに残された本が1冊。「もしぼくが本だったら つれて帰ってくれるよう 出会った人にたのむだろう。」というように「もしぼくが本だったら」に続いてさまざまな本にまつわる文章が続いていきます。。最後のページは「もしぼくが本だったら 「この本がわたしの人生を変えた」とだれかが言うのをきいてみたい。」と、本が持っている力、可能性を示してくれます。作者はポルトガル語の詩人で、その文章に息子さんが絵をつけた親子作品です。デザイン的にも美しく、これまでに数々のデザイン賞を受賞し、13か国語に翻訳されています。日本語にはスペイン語圏の絵本や児童書の翻訳者・宇野和美さんが訳されました。YA世代や大人たちに手に取ってほしい1冊です。

 

『だんごむしのおうち』澤口たまみ/文 たしろちさと/絵 福音館書店 2018/3/10

だんごむしの おうち (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)
澤口 たまみ
福音館書店
2018-03-07
 
春の庭で小さな子どもが掌にだんごむしをのせて「ねえねえ、みてみて!」と見せてくれます。触ると丸くなるだんごむしは小さな子どもにとっては楽しい存在です。この絵本を読んで、もう25年以上前のこと、「お母さん、お土産!」といって筆箱にいっぱいのだんごむしを入れて持って帰ってきた我が子の得意気な顔を思い出しました。庭先で出会う小さなだんごむしは、子どもが身近な自然に興味を持つ入り口になります。よく似た虫で丸まらないわらじむしの説明も出てきます。小さな生命にも目をむける子どもたちの素直さを大切にしたいと思います。「ちいさなかがくのとも」2012年4月号のハードカバーです。3歳くらいから手渡せます。
 
 
 
『王さまになった羊飼い』チベットの昔話 松瀬七織/再話 イ・ヨンギョン/絵 福音館書店 2018/3/15
 
 貧しい羊飼いの男の子が働いて得るものは、毎日たった一握りのツァンパ(ハダカムギを粉にしたもの)でした。ある時、草原でお腹を空かせたうさぎに出会います。男の子はうさぎにツァンパを分けてやるようになります。そうして100日経った時、うさぎは老人に姿を変えました。なんとうさぎは天の神だったのです。老人はお礼を授けようと申し出ますが、男の子は「動物のことばがわかる力がほしい」と願います。男の子はその力で通りかかった王さまの家来の馬を助け、それが縁で王さまの元へ参内し、誰も治療できなかった王子の耳を治します。そして王さまから王国の半分を譲られたのです。小さな生命に注ぐ愛情と誠実さが、貧しい男の子を王へと導いたというチベットの昔話です。 
 
 
 
【児童書】
『おひとよしのりゅう』ケネス₌グレーアム/作 石井桃子/訳 学研プラス 2018/1/15
 『たのしい川べ』(本のこまどの記事は→こちら「基本図書を読む2『たのしい川べ』)を書いたケネス₌グレーアムの幻の名作と言われた『おひとよしのりゅう』(1966年に『新しい世界の童話シリーズ8 おひとよしのりゅう』として学研より出版 その後絶版)が、限定復刻されました。羊飼いの息子と争いごとが嫌いな優しい竜、そして竜退治の騎士セント・ジョージが織りなすなんともユーモラスなお話です。今回の復刻版は東京子ども図書館と教文館ナルニア国だけの限定発売です。のんびりとした話の進み具合は、今の子どもたちに、というよりこのお話にわくわくした昔の子どもだった人たちに喜ばれるのかもしれません。戦隊ものなどで怪獣は退治するものと思っている子どもたちに、戦うことがすべてではないというメッセージを届けられると思います。(教文館ナルニア国の紹介ページ→こちら
 
 
 『青い月の石』トンケ・ドラフト/作 岩波書店 2018/2/16
青い月の石 (岩波少年文庫)
トンケ・ドラフト
岩波書店
2018-02-17
 
作者のトンケ・ドラフトさんは2004年に、1962年に発表した『王への手紙』(岩波少年文庫 2005年)で過去50年にオランダで出版された子どもの本の中から第一位の賞「石筆賞の中の石筆賞」を受賞されました。当時すでに74歳でした。『王への手紙』、そして続編の『白い盾の少年騎士』(岩波少年文庫 2006年)は、困難な状況の中で任務を果たそうとする少年騎士のひたむきな思いと、彼を支える友情を描いて非常に読み応えのある作品でした。大きな賞を受賞した翌2005年に新たに発表した作品が『青い月の石』です。「どこから来たの?マホッフ、マホッフ、マホッヘルチェ」「地面の下からやってきた、マホッヘルチェ!」というオランダに伝わる日本の「はないちもんめ」に似た遊びをモチーフに、地上の世界と地下世界、そして主人公ヨーストのいる世界と中世を思わせる長ひげ王の国が交錯して展開する不思議な物語です。地下の国に君臨するマホッヘルチェを追って、いじめられっ子ヨーストが、いじめっ子ヤンと一緒に冒険に出ていき、同じようにマホッヘルチェを追う長ひげ王の息子イアン王子は地下世界のヒヤシンタ姫に恋をします。編んだセーターが魔力を持つヨーストのおばあちゃん、地下世界に通じる池の近くに住む魔法使いのオルムなどの魅力溢れる登場人物に導かれ一気に読めてしまうファンタジーです。 

 
『イースターのたまごの木』キャサリン・ミルハウス/作・絵 福本友美子/訳 徳間書店 2018/2/28

イースターのたまごの木 (児童書)
キャサリン ミルハウス
徳間書店
2018-02-20
 
1951年にアメリカで出版され、その年の最も優れた絵本に贈られるコールデコット賞を受賞した作品が、翻訳されました。「イースター(復活祭)」は、イエス・キリストが十字架刑を受けた3日後に蘇ったとする聖書にしたがい、キリスト教社会ではクリスマスと並ぶ大切なお祭りです。卵の殻を割って出てくる鳥は、墓から出てきたキリストの象徴とされ、イースターには卵を美しく彩色して飾ったり、庭に隠した卵を子どもたちが探すエッグハントをイースターの朝に行う習慣があります。このお話でも、イースターの朝に兄弟やいとこたちと庭でエッグハントするのを楽しみしている女の子ケイティが主人公です。ケイティがおばあちゃんが子ども時代に隠したイースターエッグを屋根裏で見つけたことから、そのイースターエッグを木に飾るようになり、多くの人に喜ばれるようになります。ここ数年の間に日本でもイースターエッグのお菓子が売られるようになり、ショーウィンドウにもイースターの装飾が施されるようになりました。興味をもった子どもたちに手渡してあげたい1冊です。自分で読むなら低学年から、読んであげるなら幼児でも大丈夫でしょう。なお、イースターは春分の日のすぐ後の満月から一番近い日曜日とされ、毎年変わります。今年のイースターは4月1日の日曜日です。
 
 
『パイパーさんのバス』エリナ―・クライマー/作 クルト・ヴィ―ゼ/絵 小宮由/訳 徳間書店 2018/2/28
パイパーさんのバス (児童書)
エリナー クライマー
徳間書店
2018-02-20
 
 パイパーさんは町でバスの運転手をしています。しかし、家族はなく独りぼっち。ある時、その寂しさにはたと気がついて塞ぎこみます。そんなパイパーさんを頼ってきてくれたのが迷子の犬バスターに、ねこのおくさん。その上バスの中で迷子になったチャボも飼うことになります。しかし町のアパートでは動物の飼育は許されていません。パイパーさんは仕事を休んで、古いバスを買ってバスターたちを乗せ、彼らを引き取ってくれる人を探しに田舎へ出かけていきます。でも動物たちはパイパーさんと別れたくありません。途方に暮れて山道を走っている時に雷雨に合って、山の上の空き家へ逃げ込みます。幸運なことが重なってパイパーさんはこの家を借りて動物たちと一緒に暮らせるようになるのですが・・・その幸運なことっていったいなんでしょう?読んでいると心がほっこりと温かくなる素敵なお話です。文字も大きく挿絵もたくさんついています。小学校低学年の子どもにおすすめできる1冊です。
 
 
 
『波うちぎわのシアン』斉藤倫/作 まめふく/画 偕成社 2018/3
波うちぎわのシアン
斉藤 倫
偕成社
2018-03-14
 
『どろぼうのどろぼん』(福音館書店 2014)や『せなか町から、ずっと』(福音館書店 2016)を書いた 詩人の斉藤倫さんの新作です。この物語の語り手はねこのカモメ。赤ん坊の時に鷗に命を救われたのでこの名前がついています。カモメはラーラという小さな島にある診療所のフジ先生のところで飼われています。カモメはある雨の夜、沖から激しい炎に包まれて港へ流れつく船を発見し、フジ先生に急を知らせます。そしてフジ先生は、焼け落ちる船の中から生まれたばかりの男の赤ん坊を助け出します。この赤ん坊の左の握り拳は固く閉じられ開くことができません。握り拳がシアンという青い巻貝にそっくりなことから、この赤ん坊はやがてシアンと呼ばれるようになります。フジ先生がシアンをはじめ島々の孤児を引き取るために作った孤児院「ちいさなやね」の中で物語が動いていきます。4歳になったシアンには不思議な力がありました。誰かが、シアンの閉じられたままの左手を耳に当てると、潮騒の音が聞こえてきます。それはおかあさんのお腹の中で聞いていた音で、聞いているうちに自分の生まれる前のおかあさんや周りの人の声まで聞こえてくるのでした。ある日シアンは海を隔てた「壁の国」からやってきた旅の一座に誘拐されてしまいます。フジ先生と「ちいさなやね」でおかあさん役のリネンさんが、ねこのカモメを連れてシアンを救出しに「壁の国」に向かうところから物語は急転します。シアンの左手には出生にまつわる重大な事件の秘密が握られていたのでした。ねこの視点から描かれているので、最初は少し読みにくいのですが、旅の一座が現れてくるあたりからぐいぐい惹き込まれていきます。本の好きな子なら、小学校の高学年から手渡せる作品です。
 
 
 
『4ミリ同盟』高楼方子/作 大野八生/絵 福音館書店 2018/3/10
4ミリ同盟 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2018-03-07
 
 この物語の世界では、人々は子どものうちは困らないのに、おとなになると〈フラココノ実〉を食べないと、どうにもこうにもやっていかれないとい体質をしているというのです。この〈フラココノ実〉は、大きな湖の中に浮かぶ〈フラココノ島〉に渡らないと手に入らないので、あちこちの港からその島へ行くルートはいくつもあるというのに、主人公のポイット氏は、いまだにその実を食べる機会が巡ってきません。切望しているにも関わらずです。そんなある日エビータという女性に声をかけられます。彼女もまだ〈フラココノ実〉を食べられていません。なんと〈フラココノ実〉を食べていない人は知らず知らずのうちに地上4ミリほど体が浮いていることを発見し、それでポイット氏が仲間だとわかったのです。同じように体が4ミリ浮いている他の2人とも知り合い、「4ミリ同盟」を作って4人一緒に〈フラココノ実〉を食べるための島にわたるのですが・・・「地に足がついてない」4人はいったいどうなったのでしょう。髙楼方子さんのなんとも不思議で味わい深いお話です。
 
 
 
【その他】
『『ちいさいおうち』『せいめいのれきし』の作者 ヴィ―ジニア・リー・バートンの世界』ギャラリーエークワッド/編 小学館 2018/3/19

昨年(2017年)6月1日から8月9日にかけてギャラリーエークワッドで行われた「ヴァージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」―時代を越えて生き続けるメッセージー」展のリーフレットを底本にして編集された図録で、2018年3月17日から5月7日まで銀座・教文館ウェンライトホールで開催中の「「ちいさいおうち」のばーじにあ・りー・ばーとん」展に併せて、発売されました。ヴァージニア・リー・バートンが遺した作品やさまざまな手仕事について、たくさんのカラー図表とともに展望できる貴重な1冊となっています。また、昨年夏にエークワッドで行われた恐竜学者真鍋真さんと生物学者福岡伸一さんの対談の模様も収録されています。(教文館で開催中の「ばーじにあ・りー・ばーとん」展の案内は→こちら 5/7まで)

 

『過去六年間を顧みて かこさとし小学校卒業のときの絵日記』かこさとし/著 偕成社 2018/3

過去六年間を顧みて かこさとし 小学校卒業のときの絵日記
かこ さとし
偕成社
2018-03-14

91歳のかこさとしさんが、小学卒業時に小学1年生からの6年間を思い出して綴った文集が1冊の本になりました。1926年(大正15年)生まれのかこさんですから、この文集が書かれたのは1938年(昭和13年)です。奇跡的にその当時書いていたものが戦災を免れて残っていたというのは驚きです。また当時の様子が文章と絵で克明に描かれていることに、かこさとしさんの後年の功績を彷彿とさせるものがあります。当時は日中戦争が始まり、戦時体制が強化された時代です。「二・二六事件」や「志那事変」のことが子どもの視点で書かれているのも興味深いです。6年生の時のクラスメートの名前とあだ名、そして相撲人気だったという時代を反映して全員に四股名がついているところなども、とても面白く、時代の記録として大変貴重な資料となるでしょう。かこさとしさんの作品の原点をここに見る思いです。(かこさとし公式webサイト→こちら

(作成K・J)

2017年12月、2018年1月の新刊から


2017年12月、2018年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

YA本の紹介まで、なかなか手が回らず心苦しいところですが、これはという本は、時間が少し経ってからでも紹介したいと思っています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

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 【絵本】

『コウテイペンギン』ヨハンナ・ジョンストン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2017/12/18 

コウテイペンギン
ヨハンナ ジョンストン
好学社
2017-12-19

 コウテイペンギンの生態を描いた科学絵本です。この本は2015年にアメリカで出版されました。この本への感想を書いたサイトには「a nature documentary」という表現がありましたが(Books In My House→こちら)、まさに長編ドキュメンタリー映画を見たような充実感を読後に感じました。水族館では人気者のペンギンですが、実際にはこれほど過酷な自然の中で生きていること、ペンギンの両親が命がけで次の世代を育む様子が、レナード・ワイスガードの美しい絵(アートワークと表現されていますが、ステンシル技法でしょうか)で描かれています。科学絵本でありながら、芸術性も高い1冊です。こみやゆうさんの翻訳も、子どもたちに語りかけてくるようです。自分で読むには小学校低学年以上ですが、動物が好きな子に読んであげるのであれば、長いおはなしですが幼児でも十分に聞くことが出来るでしょう。

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』福井さとこ/作 JULA出版局 2017/12/25

おるすばんのぼうけん―スロバキアのともだち・はなとゆろ
福井 さとこ
JULA出版局
2017-12-25

 

プラチスラヴァ芸術大学版画学科大学院で、スロバキアの版画家で絵本作家ドゥシャン・カーライの下で版画と絵本製作について学んだ福井さんの卒業制作が、JULA出版局から出版されました。福井さんがスロバキアでベビーシッターをした時の子どもたちの様子を絵本にしたものだそうです。お留守番をすることになった幼い兄妹が空想の世界に遊びに出かけます。子どもらしい想像の広がる世界に読んでもらう子どもたちにもすっと入っていけることでしょう。折込にはスロバキアのわらべうたも楽譜入りで掲載されています。海の向こうの子どもたちの遊びに想いを馳せるのも素敵な経験になると思います。 

 

『巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし』菱木晃子/文 平澤朋子/絵 BL出版 2018/1/1 

スカンジナビア半島の北部ラップランドに住んでいる先住民族サーメの人たちに伝わる昔話が、美しい絵本になりました。あとがきに菱木さんが「サーメのむかしばなしにたびたびでてくる巨人は、ときに容赦なく人々の命やくらしをおびやかす存在という意味で、自然の脅威の象徴ととらえることができます。」と記しています。厳しい自然の中で暮らしてきた人々の想いが伝わってくるようです。画家の平澤さんは厳冬のラップランドを訪れて描かれた絵も臨場感に溢れて素晴らしいです。とくに北の大地に春が訪れるシーンはそのままタブロー画として飾っておきたいほどです。

 

『だるまちゃんとかまどんちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 だるまちゃんシリーズに新年3冊が仲間入りしました。91歳の加古里子さんがこれらの作品にこめた想いを受け取りたいと思います。子どもたちには、そんなことはあまり関係ないでしょう。新しい仲間をどう受け取るかは子どもたち次第。心優しいかまどんちゃんに懐かしい想いを抱くのは親世代、あるいは祖父母世代かもしれません。子どもたちにも、温かい想いは伝わることでしょう。

『だるまちゃんとはやたちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 豊かな自然と共に生きてきた東北の人々の生活に想いを寄せる作品です。おばけ大会に集まるたくさんのおばけたちは、どこかかわいらしくてユーモラス。子どもたちは、そんなたくさんのおばけをみて、面白がることでしょう。


『だるまちゃんとキジムナちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 沖縄の子どもが登場する絵本です。加古里子さんは琉球の伝統への敬意と、戦中戦後の沖縄の人々の苦労を偲んでこの作品を描いたということです。大きなハブにつかまってしまっただるまどんを、キジムナちゃんの機転で助けます。子どもたちもドキドキしながら作品を楽しんでくれるといいなと思います。

かこさとし公式webサイトからは、この作品にかける加古里子さんの想いや、NHKワールドニュースでこの3作が取り上げられた動画を見ることができます。→かこさとし公式webサイト

 

『スプーンちゃん』小西英子/作 0.1.2えほん 福音館書店 2018/1/15

スプーンちゃん (0.1.2.えほん)
小西 英子
福音館書店
2018-01-10

「こどものとも0.1.2」の2012年6月号がハードカバーになりました。小さな子どもたちにとって、美味しい食べ物を口に運んでくれるスプーンって、とても身近な存在。そんなスプーンがプリンにメロン、いろんな美味しいものを次々にすくっていきます。自分で食べる練習を始めた小さなお友達に喜ばれそうな1冊です。


『にゃんにゃん』せなけいこ/作 福音館書店 2018/1/15 

にゃん にゃん (幼児絵本シリーズ)
せな けいこ
福音館書店
2018-01-11
 
 「こどものとも年少版」1977年11月号がハードカバーになりました。せなけいこさんの貼り絵によるねこたちの表情が、なんとも愛らしいです。最後の見開きページで母さんねこにおっぱいをもらって満足するこねこたちの表情は、そのまま読んでもらった子どもたちの笑顔につながる、そんな1冊です。

 

 【児童書】

『ハックルベリー・フィンの冒険』上・下 マーク・トウェイン/作 千葉茂樹/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2018/1/25

 

ハックルベリー・フィンの冒険(下) (岩波少年文庫)
マーク・トウェイン
岩波書店
2018-01-26
 
岩波少年文庫にこれまで『ハックルベリー・フィンの冒険』が入ってなかった?と思わず思ってしまいました。創元社の世界少年少女文学全集(吉田甲子太郎/訳)をはじめとして、岩波文庫(西田実/訳)、福音館書店の古典童話シリーズ(大塚勇三/訳)など多くの訳本が出ており、この作品のファンも多いと思います。同じくマーク・トウェインの代表作『トム・ソーヤ―の冒険』の続編ともいうべき、この作品では金に目のくらんだ実の父親が登場したり、南北戦争時代の前という時代背景からワトソン家の黒人使用人ジムとの逃走が描かれ、より社会的な問題を提起する作品になっています。ハックが、その時代的な善悪の判断ではなく、自分自身を深くみつめ葛藤し、良心による判断をしていくという彼の精神的な成長の過程が、読む者の心をつかみます。今回、翻訳を担当した千葉さんは、方言の表現にこだわらずに訳した事、「nigger」という差別用語の扱いについて他の訳者が注釈を入れて「くろんぼ」等としたところは、そのようには訳さなかったということです。この冒険の物語をわくわくしながら読む子どもたちにそうした差別用語を覚えてほしくないという訳者のたっての願いだったそうです。安心して子どもたちに手渡せますね。
 
 
 
『バレエ・シューズ』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2018/1/31
 
バレエ・シューズ
中村妙子
教文館
2018-01-01

 ノエル・ストレトフィールドが1936年に書いた『バレエ・シューズ』は、これまでも村岡花子の訳(講談社マスコット文庫 1967)で出版されたり、中村妙子の訳では1979年にすぐ書房から出版されています。中村さんご自身がお連れ合いの海外赴任でアメリカに住んでいた時に図書館で出合ったのがイギリスの作家ストレトフィールドの「劇場シリーズ」の作品だっだそうです。「劇場シリーズ」の新訳が教文館から2014年に『ふたりのエアリエル』が、昨年秋に『ふたりのスケーター』が出版され、この作品は3作目になります。赤ちゃんの時にそれぞれの事情で両親と死に別れた3人の女の子が、ひとつの家で姉妹のように育てられるおはなしです。考古学者のマシュー大おじさんは出かける先々で孤児を託されて自宅に連れて帰りますが、自分はまた研究の旅へ。世話をするのは姪のシルヴィアと留守を守る家政婦たちでした。3人の女の子たちはシルヴィアたちが自分たちを育てるのに苦労をしているのを知って、自分たちの才能でなんとか収入を得ようとします。健気な少女たちの成長の姿は、自立へと向かう思春期の子どもたちに勇気を与えてくれるはずです。

 

 『熊とにんげん』ライナー・チムニク/作・絵 上田真而子/訳 徳間書店 2018/1/31

熊とにんげん (児童書)
ライナー チムニク
徳間書店
2018-01-20
 
昨年12月に亡くなられたドイツ文学者で翻訳家の上田真而子さんが、ご自身で翻訳した作品の中で一番のお気に入りだったという『熊とにんげん』がこのほど復刊されました。おどる熊を連れて町から町へとあるく旅芸人のおじさんは、熊のことばがわかりました。おじさんと熊は、お互いに信頼し、訪れる町で人々を喜ばせていました。この作品はポーランド領生れのチムニクが24歳の時のデビュー作です。上田さんは訳者あとがきに「寓意をこめた後の作品とはちがって、ここにはやはり、ナイーヴな、純な、ういういしさがあると思います。それでいて、世の中を、人生を鋭く見透している眼があり、それはある意味で宮沢賢治の世界に重なるのではないかとも思いました。」と書いています。信仰深く誠実な生き方をした熊おじさんと、熊の、長い年月を辿る友情は、心の中に温かな風を送ってくれます。
 

 【研究書・エッセイ】

『チェコの十二カ月―おとぎの国に暮らす―』出久根育/文・絵 理論社 2017/12/1

 チェコの首都プラハに住む画家で絵本画家でもある出久根育さんの初めてのエッセイ集です。チェコの四季折々の風物や、自然の営みを、またチェコで出会った素朴でいて心優しい人々の暮らしを、静謐な筆致で丁寧に描き出しています。またところどころに散りばめられた出久根さんの描くチェコの街角や自然の風景は、そのまま新しい物語が始まりそうな予感に満ちています。

 

『大草原のローラ物語 パイオニアガール』ローラ・インガルス・ワイルダー/著 パメラ・スミス・ヒル/解説・注釈 谷口由美子/訳 大修館書店 2018/1/10

大草原のローラ物語―パイオニア・ガール[解説・注釈つき]
ローラ・インガルス・ワイルダー
大修館書店
2017-12-16

アメリカ開拓時代の少女ローラと家族の物語は、福音館書店から恩地三保子の訳でシリーズが出版され、またテレビドラマなどにもなって多くの人たちに親しまれています。また岩波少年文庫からは谷口由美子の訳で『長い冬』、『大草原の小さな町』などが出版されています。今回の作品は、ローラが作品を書く前に書き留めていた注釈付きの自伝『パイオニア・ガール』を谷口さんが訳したものです。単なる物語というのではなく、ローラが執筆した時代について、実に細かい注釈と資料、当時の様子を伝える貴重な写真などがついており、ローラ・インガルス・ワイルダーという作家について、あるいは作品についての研究書という趣になっています。昨年2017年はローラ生誕150周年でした。時代は違いますが、どんな逆境にも常に勇気と愛と希望をもって前向きに乗り越えようとしていた家族の姿から、読む者もまた勇気や愛を取り戻せるような気がします。(出版関連のイベント情報→こちら)現在、銀座教文館ナルニア国のナルニアホールにて『大草原のローラ物語パイオニア・ガール』刊行記念展実施中です。3月18日(日)まで。(ナルニア国イベントページ→こちら

(作成K・J)

2017年11月、12月の新刊から(追加あり)


2017年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、9月、10月に見逃していた本もあり)

今年一年も、この新刊紹介コーナーを愛読していただきありがとうございました。ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

本来ならばYA向けの読物もたくさん紹介したいと思いながらも、ひとりで1か月で読める本が限られてしまい、購入しても積読になって、紹介が遅れることもありました。それでもこれからも少しずつ新刊の紹介を続けていきたいと思います。

いつも新しい本の情報を提供し、アドバイスしてくださる上記の書店の新刊担当の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。


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【絵本】

『ハッピー・ハンター』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/9/29 

ハッピーハンター
ロジャー デュボアザン
ロクリン社
2017-09-29

 

1961年に出版されたロジャー・デュボアザンの初邦訳です。ハンターの格好にあこがれたポピンさん。でも、ハンターの格好はしても、心優しいポピンさんは動物たちを打ち殺すなんて出来ません。そんなポピンさんと森の動物たちとの心温まるお話です。

 

『ふるいせんろのかたすみで』チャールズ・キーピング/作 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2017/10/31

ふるいせんろのかたすみで
チャールズ・キーピング
ロクリン社
2017-10-31

 

1983年にらくだ出版から出ていた『たそがれえきのひとびと』の新装新訳版です。古い線路沿いに長屋が六軒、軒を連ねて建っていました。そこに住むのは貧しいお年寄りたち。彼らは毎週10ペンスずつ出し合ってサッカーくじを買っていました。ある日、そのくじが大当たり。突然舞い降りた幸運、その賞金でみんなが何をするのでしょうか。最後まで読んで、ああこんなふうにお金って使いたいなと思いました。

 

『ひょうたんめん』神沢利子/文 赤羽末吉/画 復刊ドットコム 2017/11/25

ひょうたんめん
神沢 利子
復刊ドットコム
2017-11-25

 

鹿児島県種子島に伝わる妖怪「ひょうたんめん」を神沢利子が再話し、赤羽末吉が絵を描いた昔話絵本です。1984年に偕成社から出版されていましたが、長く絶版が続いていましたが、この度復刊ドットコムから新装復刊されました。ひょうたんめんは、塩も馬も食ってしまうという恐ろしい妖怪で、村人を困らせていました。ある日、馬をひいて塩を買いに行った「おとじろうまごじろう」は帰りが遅くなり、びくびくしながら山道に差し掛かります。するとやっぱり後ろからひょうたんめんの呼び止める声が!ひょうたんめんと、おとじろうまごじろうの攻防やいかに。赤羽末吉の描くひょうたんめんの飄々とした風貌にも注目です。

 

 

『へそとりごろべえ』赤羽末吉/詩・画 童心社 2017/12/7

へそとり ごろべえ
赤羽 末吉
童心社
2017-12-07

 

かみなりのごろべえは、おへそが大好物。たぬきにねずみ、ライオン、そして鬼や大仏のおへそまで「くりんくりんの シューすっぽん」と取ってまわります。しまいには自分のへそも気になって・・・抱腹絶倒の結末におとなも子どもも一緒に楽しめると思います。この度1976年に出版されていた童心社が創業60周年を記念して「ことばと詩のえほん」シリーズの3冊がこの度改訂新版として復刊しました。どれも40年経っていますが、今の子どもたちにとっても新鮮な面白さとして伝わると思います。

 

『あいうえどうぶつえん』小林純一/詩 和田誠/画 童心社 2017/12/7

あいうえどうぶつえん
小林 純一
童心社
2017-12-07

 

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの1冊です。見開き2ページの右側が詩(ことば)、左側が動物の絵になっています。詩は「ひるのあかちゃん けまでいって、 わぎをぬぐら ぷろんとって、 よぎのけいこで あいうえお」と、各行のはじまりがあ行~わ行で始まっていて、リズミカルで楽しい絵本です。

 

 

『かぜにもらったゆめ』佐藤さとる/詩 村上勉/画 童心社 2017/12/7

かぜにもらったゆめ
佐藤 さとる
童心社
2017-12-07

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの3作目は、今年2月に亡くなった佐藤さとるの作品です。眠りにつこうとして、布団の中で、春の夜に吹く風の音に、いたちが来たのか?ロケットが墜落したのか?雷様が落ちたのかも?と、どんどん妄想を膨らませていく男の子。「トントン」「トントントトン」「トトントントン」。短い詩の後に続く擬音が、その空想の世界をさらに広げていくようです。春先にぜひ読んであげたい1冊です。

 

【児童書】

『図書館につづく道』草谷桂子/作 いしいつとむ/挿絵 子どもの未来社 2017/12/18

図書館につづく道
草谷佳子/著
子どもの未来社
2017-12-22

 

山あいの図書館に集まってくる子どもから大人までの10人の、図書館に行き着くまでの物語が、やがてひとつの物語へと編まれていきます。作者の草谷さんは、ご自身でも家庭文庫を主宰し、静岡図書館友の会で活躍されている方だそうです。図書館の思わぬ魅力や、地域での役割が見えてくる、まさに図書館で働く人におすすめしたい1冊です。

 

【研究書】

『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子/著 文春文庫 文藝春秋 2017/10/10

 

1987年に日本エディタースクールから刊行されていた松岡享子さんの『えほんのせかい こどものせかい』が、文春文庫になりました。内容は、単行本のそのままですが、巻頭に東京子ども図書館での松岡さんの語りの様子や、館内の様子などを映し出した美しいカラー写真のページが加わりました。121pからの「グループの子どもたちに 絵本を読み聞かせるために」(~144p)は、図書館や学校の朝読の時間など、集団に向けて絵本を読んであげる場合の選書や準備について、初心者向けにわかりやすく書かれています。文庫版になった上に、フォントは単行本の時よりも大きくて読みやすいので、おはなし会に関わる人々の座右の書になると思います。

 

『紙芝居百科』紙芝居文化の会/企画・制作 童心社 2017/11/20

紙芝居百科 (単行本図書)
童心社
2017-11-20
 
日本独自の文化である「紙芝居」の魅力をもっと多くの人に伝えたい、海外の人へも伝えたいと研究と活動を続けてきた「紙芝居文化の会」が紙芝居に関する情報をまとめました。紙芝居の魅力や演じ方や、絵本との違いについてわかりやすくまとめられています。「紙芝居の選び方」として、おすすめの紙芝居が分野別に分類されてリストになっていますので、おはなし会で紙芝居を演じてみようとする時の助けになります。
 
 
『保育に活かす おはなしテクニック~3分で語れるオリジナル35話つき~』こがようこ/著 小学館 2017/12/20
保育に活かす おはなしテクニック: ~3分で語れるオリジナル35話つき~ (教育単行本)
こが ようこ
小学館
2017-12-15
 
今年度、児童部会では「お話(素話)を覚えて語ることを目標にして、「おはなし」とは何なのか、「おはなし」を聞く子どもたちの反応はどうなのか、について研究してきました。この本は保育の現場で長い間、子どもたちにおはなしを届けて来た作者が、幼い子どもたちにおはなしを語る意味をわかりやすく伝えてくれます。またオリジナルの短いおはなしは、今の子どもたちにとってもわかりやすく楽しい展開になっています。幼い子どもたちへの語りについて試行錯誤している方は、ぜひこちらも参考にしてみるとよいでしょう。
 

 

(作成K・J)

2017年10月、11月の新刊から(追加あり)


2017年10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店児童書部門、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


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【絵本】

『やもじろうとはりきち』降矢なな/作 佼成出版社 2017/10/10

やもじろうとはりきち
降矢 なな
佼成出版社
2017-10-06

ヤモリのやもじろうとハリネズミのはりきちは、あかちゃんのころからの仲良しです。なんにでも積極的なやもじろうと、おとなしくて慎重な性格のはりきちは、成長するにつれて少しずつ離れていくのですが・・・降矢ななさんが作・絵を手掛けるオリジナル絵本です。

 

『ようこそロイドホテルへ』野坂悦子/作 牡丹靖佳/画 玉川大学出版部 2017/10/20 

ようこそロイドホテルへ (未来への記憶)
野坂 悦子
玉川大学出版部
2017-10-24

 

オランダ語翻訳者の野坂悦子の創作絵本です。野坂さんには毎年オランダへ行くたびに惹かれる建物があって、それがこの絵本のテーマになっているロイドホテルなのだそうです。1921年にまずは南米移民のための宿泊施設としてスタートしたこのホテルは、その後難民滞在施設、刑務所、少年院、芸術家のアトリエと時代と共に役割を変えてきました。歴史の変遷の中に人間の生の縮図を見たという野坂さんが、ロイドホテルを通して伝えたいことが絵本に結実しています。 

 

『今、世界はあぶないのか? 争いと戦争』ルイーズ・スピルズベリー/文 ハナネ・カイ/絵 大山泉/訳 佐藤学/解説 評論社 2017/10/20

争いと戦争 (児童図書館・絵本の部屋)
ルイーズ スピルズベリー
評論社
2017-10-10

 

冒頭は世界人権宣言の第一条で始まっています。「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」しかし現実の世界からは争いは消えず、今、また世界が一触即発の危機に面しています。なぜ争いが消えないのか、そのためにどうすればよいのか、子どもたちに問いかけて一緒に考えてみることができる1冊です。争いは、相手への無理解からもたらされる意見の対立から引き起こされるのです。さまざまな考え方の人がいるということを前提に、親子で、クラスでおとなと子どもが一緒に読んで、話し合うきっかけにできるといいですね。小学校中学年から。「今、世界はあぶないのか?」のシリーズには他に『難民と移民』、『貧困と飢餓』、『差別と偏見』の3冊があります。

 

『とてもとてもサーカスなフロラ』ジャック・センダック/文 モーリス・センダック/絵 江國香織/訳 集英社 2017/10/31

とてもとてもサーカスなフロラ
ジャック・センダック
集英社
2017-10-26
 
 モーリス・センダックが『かいじゅうたちのいるところ』でコールデコット賞を取るよりも7年も前に、実兄のジャックと作った絵本がこの度邦訳されました。訳者は江國香織さんです。サーカス団の中で生まれ育ったフロラは、毎晩サーカスを見に来てくれる観客たちが普段はどんな生活をしているのか知りません。スポットライトの向こうに座っている観客はステージから見るとどの人もみんな同じ顔をしているようで、悪夢まで見るようになってしまいます。自分の不安を取り除くためにフロラは初めてひとりで村まで出かけていきます。フロラの不安な気持ちは、人々が自分と同じだとわかったとき、解けていきました。他人を理解するということがどういうことか、そっと伝えてくれる作品です。文字が小さくて文字数も多めです。小学校中学年から。 
 
 
『貨物船のはなし』柳原良平/作 福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集 2017/11/5
貨物船のはなし (たくさんのふしぎ傑作集)
柳原 良平
福音館書店
2017-11-01
 
世界を物が行き来するために欠かせないのが貨物船です。帆船の頃からの貨物船の歴史や、たくさんの荷物を積んでもなぜ沈まないのか構造的な説明もとてもわかりやすいです。また、かつては海外に行くのに使われていた旅客船が飛行機の普及で亡くなった代わりに、滞在型のクルーズ客船ができたことなど、この1冊を読むと船に関するさまざまな知識を得ることができます。調べ学習の導入にも使える1冊です。なお、作者の柳原良平さんは2015年8月に亡くなられています。(→「本のこまど」記事) この絵本は亡くなられる前年に月刊誌「たくさんのふしぎ」4月号として出版されたものを単行本にしたものです。
 
 
『テオのふしぎなクリスマス』キャサリン・ランデル/文 エミリー・サットン/絵 越智典子/訳 ゴブリン書房 2017/11

テオのふしぎなクリスマス
キャサリン ランデル
ゴブリン書房
2017-10-01

 1987年英国生れのキャサリン・ランデルと、2008年にエジンバラ芸術大学を卒業したエミリー・サットンの若い作家コンビの絵本です。絵本の形態をしていますが、しっかりと読みでのある物語になっており絵本から読み物へと橋渡しとして、あるいは親が読んであげるお話としておすすめの1冊です。両親が忙しく、ベビーシッターも居眠りをしてしまっているクリスマスイブ。テオはクリスマスツリーの飾りつけをしながら「だれか、いっしょにいてください。ひとりぼっちじゃなく、いられますように」と祈ります。するとクリスマス飾りの天使や木馬、こまどりに太鼓をたたいているブリキの兵隊たちが、テオに声をかけてきたのです。クリスマスイブに起こる不思議な冒険が、サットンの色鮮やかで繊細な絵で表現されていきます。サットンのちいさなちいさなめにみえないびせいぶつのせかい(二コラ・デイビス/文 越智典子/訳 ゴブリン書房 2015)、いろいろいっぱい ちきゅうのさまざまないきもの(二コラ・デイビス/文 越智典子/訳 ゴブリン書房 2017)も好評でした。

 

 『ジングルベル』キャサリン・N・デイリー/作 J・P・ミラー/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2017/11/1

ジングルベル (おひざにおいで)
キャサリン・N・デイリー
PHP研究所
2017-10-19
 
クリスマスシーズンになると、あちこちで聞こえてくる「ジングルベル」の歌。耳になじみ過ぎて誰もが口ずさむことができるクリスマスキャロルの定番になっています。1964年にその歌詞をベースに作られたこの絵本は、クリスマスの楽しい雰囲気が暖かい色調で表現されています。PHP研究所の「おひざにおいで」シリーズの1冊です。おひざに子どもをのせて、一緒に歌いながら絵本を楽しめるといいですね。

 

『IMAGINE イマジン〈想像〉』ジョン・レノン/詩 ジャン・ジュリアン/絵 ヨーコ・オノ・レノン/序文 岩崎夏海/訳 岩崎書店 2017/11/30

IMAGINE イマジン 〈想像〉
ジョン・レノン
岩崎書店
2017-11-09

ジョン・レノンが世界の平和を願って歌った「イマジン」が絵本になりました。鳥の目から見たらどこにも国境の線はひかれておらず、人々は国を超え、人種を超えて平和に生きることができると、オリーブの枝をくわえた一羽のハトが象徴的に使われています。他人の立場にたって想像してみること、想像力をつかって他人を理解しようとするその行為こそが、平和を創り出すんだという「イマジン」の精神を子どもたちにも伝えていきたいですね。

 

 『ろうそくぱっ』みなみじゅんこ アリス館 2017/11/30

ろうそく ぱっ
みなみ じゅんこ
アリス館
2017-11-22


おはなし会の始まりと終わりに歌う手遊び「ろうそくぱっ」が絵本になりました。作者は『どんぐりころちゃん』のみなみじゅんこさんです。ろうそくをつけていくと、クリスマスツリーに灯がともります。またツリーのろうそくを消すと「よぞらにキラキラおほしさま」が輝きます。この絵本を読むタイミングは、クリスマスの時期だけという行事絵本です。クリスマスシーズンのおはなし会にぜひ取り入れてみてください。私も早速あるおはなし会でやってみました。普段通りに手遊びをする大人がいて、その隣で絵本をめくります。子どもたちは、自分の指の灯りが、クリスマスの飾りになっていると感じたようで、とても喜んでいました。

 

【児童書】

『グリムのむかしばなし Ⅱ』ワンダ・ガアグ/編・絵 松岡享子/訳 のら書店 2017/11/10

『100まんびきのねこ』などの作品があるワンダ・ガアグはミネソタ州ニューアルム生まれですが、ガアグの父はボヘミア(チェコ)出身 で、ニューアルムの町にはドイツ、オーストリア出身者が多く集まっていました。子ども時代に、父や周囲の大人からグリムの昔話をドイツ語で聞いて育ちます。子ども時代にたっぷり聞いたグリムの昔話を、生き生きとした言葉で再話しました。7月に出版された第1巻につづく第2巻です。こちらには「ブレーメンの音楽隊」、「ラプンツェル」、「三人兄弟」、「雪白とバラ紅」など9つのおはなしが入っています。よき語り手だったガアグの再話を、よき語り手である松岡享子さんが翻訳されました。他の再話と比較してみてください。そしてぜひガアグのグリムを子どもたちに読んで聞かせてほしいと思います。

 

『ふたりのスケーター』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2017/11/20

ふたりのスケーター
ノエル ストレトフィールド
教文館
2017-11-15

 舞台は第2次世界大戦前のイギリスです。ジョンソン一家の4人兄弟のたったひとりの女の子、ハリエットは10才です。しばらく体調を崩していましたが、お医者さんに体力をつけるためにスケートを勧められます。初めて行ったスケートリンクで、有名なスケート選手の忘れ形見で将来を有望視されているララと、運命的な出会いをします。ララは一人っ子で、しかも英才教育を受けるために学校には通っていなかったのです。ララにとっては初めて出来た同年代の友達ハリエットの存在は、互いに切磋琢磨していくかけがえのない存在へとなっていきます。その過程では嫉妬をしたり、誤解を解こうとして苦悩したり。10代の女の子の心の機微が丁寧に描かれていて、現代の子どもたちにも十分に通じることでしょう。小学校高学年から。

 

【研究書】

『絵本を深く読む』灰島かり/著 玉川大学出版部 2017/11/15

絵本を深く読む
灰島 かり
玉川大学出版部
2017-11-14

昨年6月に66歳の若さで亡くなった翻訳者で子どもの本の研究者の灰島かりさんの『日本児童文学』等の雑誌に連載した評論を、本人が亡くなる前に加筆、修正したいたものが、このほど出版されました。「絵本を深く読む」というタイトルの通り、作品を読み比べ、語句と絵を丁寧に読んで分析しています。現在、大人向け絵本の出版がとても盛んでし、子ども向けの絵本もさまざまなタイプのものが増えてきています。そのような中で、「絵本とは何か」というまっすぐな問いを、読み手に投げかけてくる、そんな1冊です。

 

【その他】

『ネコの時間』日髙敏隆/著 平凡社 2017/10/11

カエルの目玉(大野八生/絵 福音館書店 2011)という子ども向きの作品もある動物行動学の第一人者、日髙敏隆さんのエッセーです。タイトルになった「ネコの時間」以外にも「チョウという昆虫」、「ホタルの光」、「ドジョウは何を食べている?」、「水面を走るアメンボ忍者」など人間の周りにいる動物や昆虫の不思議な生態について綴られたエッセーが30ほど収められています。ちょっとした空き時間に、ひとつひとつを読むのが、ちょっとした楽しみになる1冊です。

(作成K・J)

2017年9月、10月の新刊から


2017年9月、10月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見逃していた6月、8月に出版された本もあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店児童書部門、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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絵本】

 『はくぶつかんのよる』イザベル・シムレール/文 石津ちひろ/訳 岩波書店 2017/6/27

はくぶつかんのよる
イザベル・シムレール
岩波書店
2017-06-28

 昨年出版されその美しさで話題を呼んだあおのじかんのイザベル・シムレールの描く夜の博物館です。何も動かずひっそりとした展示室の一角、蝶の標本箱から黄色い一匹の蝶が優雅に飛び立ちます。その翅のはばたきに誘われるかのように博物館の中がにわかに賑やかになるのです。どんな賑わいだったのかは、ぜひ本を手にしてお楽しみください。幻想的で美しい世界が広がっています。

 

『エンリケタ、えほんをつくる』リニエルス/作 宇野和美/訳 ほるぷ出版 2017/8/25

エンリケタ、えほんをつくる
リカルド・シリ=リニエルス
ほるぷ出版
2017-08-25

ママに色鉛筆をプレゼントしてもらったエンリケタ。それで絵本を創ろうと、描き始めます。題して「3つあたまと2つのぼうしのモンスター」。夜になるとクローゼットの中から変な物音がしてくるという設定です。さて、どんなお話をエンリケタは描くのでしょう。アルゼンチンで国民的人気を誇る漫画家リニエルスの作品を、宇野和美さんが翻訳されました。これが日本での初翻訳本だそうです。表紙見返しの部分でエンリケタが、飼い猫に「ほんはもちはこべるうちゅうだね」と語っている部分もとても気に入りました。

『カランポーのオオカミ王』ウィリアム・グリル/作 千葉茂樹/訳 岩波書店 2017/9/7

カランポーのオオカミ王
ウィリアム・グリル
岩波書店
2017-10-19

昨年秋に南極探検に出かけたエンデュアランス号の漂流を題材してシャクルトンの大漂流がデビュー作だったウィリアム・グリル。そのデビュー作でケイト・グリーナウェイ賞を最年少で受賞しました。そのグリルの2作目は「シートン動物記」の中でも、多くの子どもたちの心をつかむ「オオカミ王ロボ」を絵本にした『カランポーのオオカミ王』です。この作品ではボローニャ・ラガッツィ賞(ノンフィクション部門)の最優秀賞を受賞しています。こちらでも色鉛筆で描く細かい描写がとても美しく、西部開拓時代のシートンとロボとの駆け引き、そしてロボと出会ったことでシートンが動物保護へと考え方を変えていく様が丁寧に描かれています。

『さるとかに』神沢利子/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2017/10/1

さるとかに
神沢利子
ビーエル出版
2017-10-01

1974年に銀河社から出版されていた神沢利子と赤羽末吉による『さるとかに』がこのほどBL出版より復刊されました。この昔話を絵本にしたものでは、岩波書店から出版されて読み継がれているかにむかし(木下順二/文 清水崑/絵 岩波書店 1976)が有名ですが、こちらの絵本もまた味わい深いです。赤羽末吉のダイナミックな筆致で描かれた木の上から青柿を投げるさるや、火の玉のように熱くなった栗が顔に当たってびっくりするさるの表情が素晴らしいです。

 

『インドの昔話 あおいジャッカル』マーシャ・ブラウン/作 こみやゆう/訳 瑞雲舎 2017/10/1

あおいジャッカル
マーシャ・ブラウン
瑞雲舎
2017-10-01

 1979年に瀬田貞二の訳で佑学社から出版されていたあおいやまいぬ(のちに1995年に瑞雲舎より復刊)を、こみやゆうさんが新たに翻訳しなおし、再度瑞雲舎から出版されました。タイトルも原題の「The Blue Jackal」に合わせて『あおいジャッカル』となりました。紙の色が白から薄いベージュ色になり、マーシャ・ブラウンの版画絵が色合いも鮮やかに蘇っています。より原書の初版の色に近づいたということです。また、瀬田貞二版では「ですます調」だった訳が「である調」になっており、一層力強い印象があります。もとのお話は、世界最古の寓話集と言われるインドの「パンチャタントラ」で、その中の一話をマーシャ・ブラウンが再話して絵本にしたのです。こみやゆうさんはマーシャ・ブラウンをアメリカ、ロサンゼルス郊外へ訪ねており、その際に「やまいぬ」を「ジャッカル」と改めることを約束されていたそうです。また、瀬田版では、最後のページもお話の続きとして翻訳されていましたが、これは本文とは別の「パンチャタントラ」の各話についている格言ということで、フォントを変えて格言とわかるような表現になっています。図書館で『あおいやまいぬ』と並べて展示をしてみても面白いですね。

 

『わたしたちのたねまきーたねをめぐる いのちたちのおはなしー』キャスリン・O・ガルブレイス/作 ウェンディ・アンダスン・ハルパリン/絵 梨木香歩/訳 のら書店 2017/10/10

わたしたちのたねまき: たねをめぐるいのちたちのおはなし
キャスリン・O. ガルブレイス
のら書店
2017-10-05

庭に母子が野菜の種を蒔いているシーンから絵本は始まります。しかし、太古の昔から植物は人の手を借りなくても、命をつないでいたのです。風や鳥、太陽の光によって自ら弾けることによって、あるいは雨に流されたり、動物の身体にくっついて遠くへ運ばれたりしながら、次の世代へと命を引き継いできたことが、柔らかいタッチの絵でわかりやすく描かれています。親子で読みながら、命のつながりを一緒に考えられたら素敵ですね。


『ざしき童子のはなし』宮沢賢治/作 岡田千晶/絵 三起商行 2017/10/17

ミキハウスから出版されている宮沢賢治の絵本シリーズの29冊目です。今回絵を描いたのは『ぬいぐるみおとまりかい』(風木一人/作 岩崎書店 2014)や『あかり』(林木林/作 光村教育図書 2014)などを描いている岡田千晶さんです。柔らかいタッチの色鉛筆画で、賢治が語るざしき童子の不思議な雰囲気を余すことなく表現しています。絵本の中から子どもたちのさんざめく声が聞こえてきそうです。

 

『りんごとけんだま』鈴木康広/作 ブロンズ新社 2017/10/25

りんごとけんだま
鈴木康広
ブロンズ新社
2017-10-19

アーティストとして先端技術と融合させたさせた作品などのある鈴木康広さんの2作目の絵本。普段何気なく見ているものが視点を変えることで、別の意味をもったものに見えてくるという鈴木さんのお話はとても面白いので、ぜひ名前をクリックして公式サイトに行ってみてください。鈴木さんは14歳の時にけん玉の「灯台」という技をクラスで一番に完成させて以来、けん玉はもはや自分の分身なんだそうです。りんごのけん玉(玉の部分がりんご型)を24歳の時に制作し、地球の引力と自分をつなぐ道具としてのけん玉を通してニュートンに想いを馳せたそうです。それが今回絵本という形となりました。代官山蔦屋書店児童書部門では11月4日に鈴木康広さんと東京大学先端科学技術研究センター中邑賢龍教授とのトークショーも行われます。(→こちら

『ル・コルビュジエ 建築家の仕事』フランシーヌ・ブッシェ、ミッシェル・コーアン/作 ミッシェル・ラビ/絵 小野塚昭三郎/訳 現代企画室 2017/10/31

ル・コルビュジエ: 建築家の仕事 (末盛千枝子ブックス)
フランシーヌ ブッシェ
現代企画室
2017-10-16

1987年にスイスで出版された「CORBU COMME LE CORBUSIER」が、1999年にすえもりブックスから翻訳されて出版されましたが、しばらく絶版となっていました。2017年に原書の出版30周年を記念してスイスで新装版が出版されたのを機に、日本語版も復刊されました。本の装丁もとても斬新で美しいものとなっています。「あとがき」に建築家の原広司さんが書かれたル・コルビュジエが考えた家や都市への考え方の解説を読むと、彼の遺したものがいかに大きなものであったかがよくわかります。この絵本に出会った子どもたちの中から、都市をデザインできる第2のル・コルビュジエが誕生するといいなと思います。

【児童書】

『クリスマスがちかづくと』斉藤倫/作 くりはらたかし/絵 福音館書店 2017/10/5

『どろぼうのどろぼん』(福音館書店 2014)で児童書デビューした斉藤倫さんの最新作です。セロは10歳の男の子。クリスマスが近づくと街は賑やかになるのに、セロは気持ちが晴れません。それは両親がともにその時期は忙しく、かまってくれないからです。「クリスマスなんてだいきらい」とセロは思っていました。ところが、実はおとうさんがサンタクロースなので、クリスマスはとても忙しいということを知ります。半信半疑のセロですが、ある真夜中、サンタクロースとして準備をしているおとうさんをみつけます。セロは自分がクリスマスにどれだけ寂しい想いをしていたかを訴えます。それを聞いたおとうさんの答えは意外なものでした。小さな子どもの思いに寄り添う、とても素敵なお話です。小学校中学年くらいからおすすめです。

 

『命の水 チェコの民話集』カレル・ヤロミール・エルベン/編 出久根育/絵 阿部賢一/訳 西村書店 2017/10/5

「チェコのグリム」と呼ばれたカレル・ヤロミール・エルベン(1811~1870)の生誕200周年を記念して刊行されたアンソロジーを全訳した民話集です。グリム兄弟より約四半世紀後に生まれたエルベンですが、グリム兄弟がドイツでしたのと同じように、19世紀のボヘミア地方(現在のチェコ共和国)に伝わるチェコ語の民話や民謡を収集し、まとめました。20ほどの民話や詩、童謡などが収められています。この民話集の絵はチェコの首都プラハ在住の出久根育さんが手がけられました。テンペラ画の技法で描かれた絵はどれも美しく、物語の世界へ誘ってくれます。グリム童話とよく似たお話もいくつかあります。ヨーロッパ大陸の中で民族が移動しながら、庶民が口伝えで語り継いできたのだなと改めて思いました。

 

『ごはんはおいしい』ぱく きょんみ/文 鈴木理策/写真 福音館書店 2017/10/15

ごはんは おいしい (日本傑作絵本シリーズ)
ぱく きょんみ
福音館書店
2017-10-11

「ごはんは おいしい ごはんは あったかい」で始まる、写真絵本です。78ページあるので、児童書として紹介します。詩人のぱくさんが、おばあちゃんが孫によびかけるような優しいことばで、ごはんの一粒は、稲の実一粒。それを春にたんぼに植えて、稲穂が実り、刈入れをし、お米を炊いてほかほかのごはんになるまでを語りかけます。鈴木さんの写真のアングルも、科学絵本とは違って、とても美しく、こうした水田のある日本に生まれて良かったなと感じます。読むと4分半。収穫感謝のおはなし会などで読んであげると良いでしょう。

 

【その他】

『子どもはハテナでぐんぐん育つ―図書館で調べ学習をやってみよう!―指導法と実践例』調べ学習研究会「調之森」/編著 しまだいさお/イラスト 岩崎書店 2017/10/31

 小学生(低学年~高学年)から中学生、高校生、そして生涯学習としての大人の調べ学習まで、発達に応じて年齢別に、理系分野から社会科分野、国語分野まで、幅広い実践例を通して、調べ学習の進め方、指導法をわかりやすく伝えてくれる1冊です。編著者は、1999年に発足した研究会「調之森」です。メンバーは小・中・高の教師、学校図書館司書、公共図書館司書、ボランティア、地域の教育機関の主事、公益財団法人図書館振興財団調べる学習コンクール関係者、大学の非常勤講師などで構成されています。調べ学習を牽引してこられた蔵元和子さんや片岡則夫さんの名前もありました。巻末付録として、コピーして使える「ドーナツチャート」と「記録カード」が付いているのが嬉しいです。

(作成k・J)

 

2017年8月、9月の新刊から


2017年8月、9月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部7月出版の本もあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


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【絵本】

『うたのえほん 1ぽんでもにんじん』長野ヒデ子/構成・絵 のら書店 2017/7

前田利博/作詞、佐瀬寿一/作曲の童謡「いっぽんでもニンジン」が、長野ヒデ子さんの楽しい絵で絵本になりました。絵本を読みながら歌いたくなります。歌詞カードが付録で付いています。図書館で装備する時に、後ろ見返しに紛失しないように固定できるといいでしょう。

 

『マスターさんとどうぶつえん』アーノルド・ローベル/作 こみやゆう/訳 好学社 2017/8/26

マスターさんとどうぶつえん
アーノルド ローベル
好学社
2017-09-11

 岩波子どもの本どうぶつえんのピクニック(舟崎克彦/訳 岩波書店 1978)の前に描かれた絵本がこちらです。どうしてマスターさんがどうぶつえんの飼育係になったのか、『マスターさんとどうぶつえん』を読むとわかります。こんなにどうぶつたちに愛されるマスターさんは、子どもたちにも受け入れられることでしょう。2冊いっしょに展示してあげるといいですね。


『なきたろう』松野正子/作・絵 赤羽末吉/絵 復刊ドットコム 2017/8/24

なきたろう
松野 正子
復刊ドットコム
2017-08-30

 1974年に文研出版から出ていた絵本が復刊されました。松野正子さんの民話風の創作に赤羽末吉さんが絵をつけたものです。泣いて泣いて泣いて、なきたろうのその泣き声は村中に迷惑をかけてしまいます。そこで山へ修行に出かけることになるのです。なきたろうは、ある時ぐっと泣くのを我慢する出来事に出会います。それを乗り越えようと成長していく姿がとても頼もしいです。

 

『きみはライオン たのしいヨガのポーズ』ユ・テウン/作・絵 竹下文子/訳 偕成社 2017/9

きみは ライオン!
ユ・テウン
偕成社
2017-08-24

韓国出身でアメリカでイラストレーターとして活躍するユ・テウンさんの新作です。子どもたちが金色の朝陽を浴びながら、庭に集まってきました。朝のヨガの時間です。「きちんとすわって りょうてをひざに おおきくくちをあけ したをだす!」、するとそれはライオンのポーズ。ほかにもちょうちょや、いぬ、へび、かえるなど様々な動物に変身です。「みんなおはよう きょうもいいひになりますように」朝の時間に読んであげたい1冊です。

『いっぽんのせんとマヌエル』マリア・ホセ・フェラーダ/作 パトリシオ・メナ/絵 星野由美/訳 偕成社 2017/9

いっぽんのせんとマヌエル
マリア・ホセ・フェラーダ
偕成社
2017-08-29

著者のマリアさんが、線の好きな自閉症の男の子と出会ったことで生まれた絵本です。自閉症の子どもたちは、世の中のことを認識するのに、それぞれの子どもたち特有のやり方があります。マヌエルくんは線が好きで、目に見えるものから線を探して、それで身の回りのことを認識しているのです。また、この絵本にはピクトグラム(絵文字)も付いています。障害のある子どもたちに読んであげるときに、子どもたちがおはなしを理解する助けになることでしょう。9月上旬には作者が来日し、トークショーも行われました。


『こどもってね・・・・・』ベアトリーチェ・アレマーニャ/作 みやがわえりこ/訳 きじとら出版 2017/9/25

こどもってね……
ベアトリーチェ・アレマーニャ
きじとら出版
2017-09-05

いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉受賞作品です。アレマーニャはイタリア・アンデルセン賞最優秀画家賞などを受賞しており、この作品は10か国以上で翻訳されています。この絵本に登場するひとりひとりの子どもたちの表情も豊かで素敵です。子ども時代は、おとなに見守られて子どもらしく生活できる保障がどの子にも平等に与えられるようにと願います。どんな国に生まれようとも、どんな家庭に生まれようとも、その子が成長する可能性は同じように大切です。子ども時代って、いつか終わってしまうけれど、子ども時代の輝きが未来への希望へとつながるからです。そんなことを想いながら読みました。

 

【児童書】

『メリーメリーへんしんする』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/9/14

メリーメリー へんしんする
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-09-15
 
メリーメリーおとまりにでかける(2017/3刊)、メリーメリーのびっくりプレゼント(2017/6刊)に続く「メリーメリーシリーズ」全3冊が、これですべて揃いました。メリーメリーは5人兄姉の末っ子です。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちはメリーメリーのことをまだ何もできない半人前だと思っていて、時には邪魔もの扱いをします。でもメリーメリーはそんなことにはめげません。そして周りがアッというようなことをやって、逆にお兄ちゃん、お姉ちゃんたちの鼻を明かすこともたびたびなのです。そんな楽しいエピソードのつまったお話が5つ、入っています。自分で読むなら小学校中学年くらい向けですが、これは小さな子どもたちに読んであげてほしいなと思います。
 

 『アイスクリームが溶けてしまう前に 家族のハロウィーンのための連作)』 小澤健二と日米恐怖学会 福音館書店 2017/0/10

 日本でもここ10年くらいの間に若い人たちの間で浸透してきたハロウィーンですが、アメリカでは家族ぐるみで楽しむもの。10月に入ると町のあちこちにジャック・オー・ランタンのためのおおきなカボチャの市がたったり、家をおどろおどろしく飾り立てたりします。この本の作者は昔話研究者の小澤俊夫さんの息子さんで、アメリカ在住のミュージシャンオザケンです。もともとはケルト民族のお祭りが、アメリカで今のような形になっていた理由や、アメリカにいる家族がどんな風に楽しんでいるか、子どもたちにわかりやすく、面白く伝えてくれています。なぜハロウィーンなのに題名が『アイスクリームが溶けてしまう前に』となっているのも気になりますね。その意味がわかると、余計に親子で楽しむハロウィーンが魅力的にみえてきます。ぜひ多くの人に読んでほしい1冊です。こちらのサイトもぜひどうぞ→福音館書店「アイスクリームが溶けてしまう前に」特設サイト

 

 
【詩歌】

 『ポケットのはらうた』工藤直子/詩 保手浜孝/画 2017/5/5

ポケットのはらうた
くどうなおこ
童話屋
2017-05-26

 今年5月に出版されていたのに見落としていました。現在教文館ナルニア国ナルニアホールにて”のはらうた”完結記念 わーいはなまるにじゅうまる「ポケットのはらうた原画展が開催されています。(2017/9/1~10/17)『のはらうた1』が出版されて今年で33年。多くの人が子ども時代に親しんだ詩がたくさんあるでしょう。「のはらうた」シリーズの最終巻になる『ポケットのはらうた』は、これまでの作品の350篇の中から選りすぐりの26篇を保手浜さんの版画/画と共にまとめたものです。永久保存版として手元に置いておきたい1冊です。

 【研究書】 

 『ヨーロッパの昔話ーその形と本質』マックス・リュティ/著 小澤俊夫/訳 岩波文庫 岩波書店 2017/8/18

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫)
マックス・リュティ
岩波書店
2017-08-19

昔話を学術的に研究し、学問体系にしたマックス・リュティの『ヨーロッパの昔話』が岩波文庫として再版されました。これまで昔話について学ぼうとすると図書館の閉架書庫から1969年に岩崎美術社から出版された『ヨーロッパの昔話ーその形式と本質』(小澤訳)を借りて紐解くしかありませんでした。この度文庫化するにあたり翻訳者の小澤俊夫さんが、読みやすさに考慮して改行を加えたりと手を入れています。昔話について学ぶ人は、一度は読んでおくとよい本です。小澤さんはドイツ語を学ぶ中でグリム童話に魅せられメルヒェン(昔話)の研究を始められます。その研究の中で出会ったのが昔話の口承文芸論をまとめたリュティでした。出会った当時、リュティは高校の国語教師だったそうですが、その研究の功績が認められて、その後チューリヒ大学の民俗学の教授になったということも小澤さんが語っています。(→こちら 小澤俊夫昔話へのご招待ポッドキャスト=提供絵本の店あっぷっぷ)小澤さんの「昔ばなし大学」のサイトは→こちら
 

【その他】

『森のノート』酒井駒子/作 筑摩書房 2017/9/10

森のノート (単行本)
酒井 駒子
筑摩書房
2017-09-04
 
 東京と森の中にある家を行ったり来たりしているという絵本作家、酒井駒子さんの画文集です。森の中で過ごす日々で見つけた小さな発見を、それはたとえば高原に立ち込める霧だったり、森に響くキツツキの木をつつく音だったりするのですが、見開きページに400字弱の短い文章で綴り、その小文にひとつづつ子どもや小動物の絵が並べられています。その静かな、それでいて確かな森の息遣いを感じる文章と、静謐でいて温かさを感じる絵は、忙しく時間に追われている日々に差し出されるご褒美のように受け取りました。(担当編集者のことば→こちら「ほんのひきだし
 

『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』佐々木正美 福音館書店  2017/9/10

はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
2017-09-06
 
 雑誌「暮しの手帖」2010年2・3月号から2015年6・7月号に連載された児童精神科医佐々木正美さんの「母子の手帖」の原稿をあらたに編集しなおして1冊にまとめたものです。今年の6月に亡くなられた佐々木正美さんの遺作となりました。「あとがき」には「世の中のすべての子どもたちが、お母さん、お父さん、そして周囲の人々から愛され、人間関係に恵まれた人生を送れるよう、願ってやみません。」と記されています。(2017年4月吉日と日付があります)子どもたちが健全に育っていくために必要なこと、それは愛されているという実感なのだと、佐々木さんは一貫しておっしゃってきました。その一方で子育てにあたる親たちは、たくさんの情報があふれる中でさまざまなプレッシャーを感じていて、単純に我が子をそのまま受け入れて愛するということが難しくなっている現実があります。この本では、そんな親たちにも「大丈夫だよ」と救いの手を差しのべてくださっているように感じます。これから子育てをする若い人にも、子育てで苦労したと思う人にも、寄り添ってくれる1冊です。
 
(作成K・J)
 

2017年6月、7月の新刊より


 

2017年6月、7月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 【絵本】

『夏がきた』羽尻利門/作 あすなろ書房 2017/6/30

夏がきた
羽尻 利門
あすなろ書房
2017-06-26

金子みすゞの生涯と詩を描いたアメリカの絵本ARE YOU AN ECHO?The Lost Poetry of Misuzu Kaneko ―( Chin Music 2016/9)で絵を描いて評価の高かった羽尻利門が初めて文章と絵の両方を手掛けた作品です。真っ青な空と元気に走る男の子の姿は、はたこうしろう作なつのいちにち(偕成社 2004)を思い出します。それもそのはず、羽尻さんは、絵本作家になる前からはたこうしろう絵本の大ファンだということで、意識してこの絵本を作られたということです。昭和の時代にタイムスリップしたような海辺の小さな町で迎える夏休み。何気ない夏の一日を切り取っていますが、子どもたちの躍動感あふれる姿、細部まで丁寧に描かれた風景は、とても懐かしいにおいがします。今でも都会を少し離れると、こんな夏の風景が広がっているのでしょうか。


『ゆめみるじかんよ こどもたち』ティモシー・ナップマン/文 ヘレン・オクセンバリ―/絵 石井睦美/訳 BL出版 2017/7/10

ゆめみるじかんよ こどもたち
ティモシー・ナップマン
ビーエル出版
2017-06-27

アリスとジャックの姉弟が庭で遊んでいると、森の中から聞こえてくるへんな声。「たしかめにいかなくちゃ」とアリス。森のの奥までその声を求めて足を踏み入れた二人が見たものはいったいなんだったのでしょう。声を出している正体がわかるまで、不安そうだった二人の表情が、わかったとたんに一気にゆるむところが素敵です。
 

『きみもこねこなの?』エズラ・ジャック・キーツ/作・絵 当麻ゆか/訳 徳間書店 2017/7/30

きみも こねこなの? (児童書)
エズラ・ジャック キーツ
徳間書店
2017-07-12

こねこが4匹仲良く遊んでいると、こいぬが一匹飛びこんできます。「きみもこねこなの?」と聞くと「えっと・・・そう」というこいぬ。5匹は仲良く、たくさん遊びます。でもね、おかあさんいぬが「もうかえるじかんですよ」とお迎えに来てしまいます。その時、こいぬが言った言葉がなんともかわいいのですよ。1963年にコールデコット賞を受賞した『ゆきのひ』(木島始/訳 偕成社 1969)や『ピーターのてがみ』(木島始/訳 偕成社 1974)、『ぼくのいぬがまいごです』(さくまゆみこ/訳 徳間書店 2000)などの作品があるキーツの1974年の作品です。



『ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし』ジョン・キラカ/作 さくまゆみこ/訳 西村書店 2017/8/3

アフリカ、タンザニアのストーリーテラー、ジョン・キラカさんによるタンザニア南西部フィバという民族に伝わる昔話です。キラカさんは、文明が浸透するにつれて失われていくアフリカの語りの文化を保護し、後世に伝えるために、さまざまな民族の昔話を再話する活動をしています。この作品は2011年国際児童図書評議会スウェーデン支部が選ぶピーターパン・シルバー賞を受賞しました。2017年7月末から8月上旬にかけて来日し、講演やワークショップなどを精力的にしたキラカさん。生の語りは力強くリズミカルで大地の生命力を感じました。カラフルな絵(ティンガティンガアート)と、なんともとぼけた味わいのある動物たちの姿に魅力を感じる絵本です。


【児童書】


『ガラスの封筒と海と』アレックス・シアラー/作 金原瑞人・西本かおる/訳 求龍堂 2017/6/30

ガラスの封筒と海と
アレックス・シアラー
求龍堂
2017-06-23

トムは小さな海辺の町に住む少年です。今、トムが夢中になっているのは瓶の中に手紙を詰めて海に流すこと。海流に乗ってどこか遠くの島にでも辿り着き、誰かがそれを読んでくれるのを楽しみにしています。実は、大型貨物船の乗組員だったトムの父親は一年前の嵐の中で、船もろとも転覆して行方不明です。周囲の人はもう絶望的だと考えていました。トムは父親を奪った海に向かって、ガラスの封筒に入れて手紙を流すのです。ところがある日、海の底のデイヴィ・ジョーンズ監獄にいるというテッド・ボーンズから返事が来るのです。ちょっとミステリアスな展開に、惹きつけられていきます。読後は爽やか。夏にふさわしい1冊といえるでしょう。小学校高学年から中学生向けです。

『グリムのむかしばなし1』ワンダ・ガアグ/編・絵 松岡享子/訳 のら書店 2017/7/5

100まんびきのねこ』(石井桃子/訳 福音館書店 1961)などの絵本があるワンダ・ガアグは、幼少期におとなが昔話を語ってくれるのが大好きだったそうです。ある時「ヘンデルとグレーテル」に挿絵を描いていて、子ども時代に昔話に夢中になっていたことを思い出し、ドイツ語でグリムの昔話を読み込み、また昔話の精神について深く掘り下げます。そうした昔話の研究をベースに、ガアグは子どもたちにその魅力を存分に味わえるようにと英訳します。そのテキストを、このたび松岡享子さんが翻訳しました。訳者あとがきに「今回、翻訳を引き受けることになって(中略)実に幸運でした。改めて、ガアグのグリムのおもしろさ、たのしさに魅了される貴重な体験になったからです。文章は軽やかで勢いがあり、頭韻を多用した音の響きは、ほんとうに耳に快く、声に出して読んでいると、ひとりでにリズムと抑揚がついてきます。」(p174)と記しています。さまざまな訳で触れているグリムの昔話ですが、ガアグの訳、そしてそれを活かした松岡享子さんの訳で、改めて味わってみてほしいと思います。きっと、訳者あとがきに記された意味がすとんと理解できることでしょう。


『もうひとつのワンダー』R・J・パラシオ/作 中井はるの/訳 ほるぷ出版 2017/7/20

もうひとつのワンダー
R・J・パラシオ
ほるぷ出版
2017-07-20

2年前の夏に出版された話題作ワンダーの続編です。(2015年に出版された時は、「本のこまど」で紹介しそびれていました。)しかし、世界中の人に感動を与えたオギ-のその後を描いているのではありません。前作では詳しくは描かれなかったいじめっ子ジュリアン、幼なじみのクリストファー、そして最初に校長先生にオギ-の案内役のひとりとして選ばれたシャーロットの3つの物語が描かれています。オギ-と出会い、彼らはどのように感じ、どう成長していったか知ることで、『ワンダー』に託されたメッセージをよりしっかりと受け取ることができるのではと思います。



『知らないと恥をかく世界の大問題8 自国ファーストの行き着く先』池上彰/著 角川新書 角川書店 2017/7/20

知らないと恥をかく世界の大問題8 自国ファーストの行き着く先 (角川新書)
池上 彰
KADOKAWA / 角川書店
2017-07-20
 
 2009年から出版されている池上彰の人気のシリーズ『知らないと恥をかく世界の大問題』の8巻目。世界情勢を知るための最新情報を豊富な図表を用いて解説しています。一般向けの書籍ですが、わかりやすい言葉を用いて、複雑な世界情勢を紐解いています。18歳で選挙権を持つことになったYA世代に、自国の利益だけではなくグローバルな視点をもって政治を考えるヒントを与えてくれるでしょう。特に昨年話題になったイギリスのEU離脱やトランプ政権の誕生に、どのような背景があるのかを高校生にも理解しやすく解説しています。偏らず、ぶれず、自分で考えることを促す池上さんの姿勢は評価できます。「私たち、日本人にできることは何か。ますは“知ること”です。」(p245)若い世代が“知ること”ができる書籍を手に取りやすい場所に準備してあげたいですね。 
 
(作成k・J)

『物語の森へ 児童図書館基本蔵書目録2』への想いを聞いてきました!


5月下旬に東京子ども図書館から児童図書館基本蔵書目録2『物語の森へ』が出版されました。予約で申し込みをしていたので、届くのがとても楽しみでした。(手違いで届いたのは6月下旬でした) 

 

 

 

2012年3月の児童図書館基本目録1『絵本の庭へ』の出版から約5年、多くの児童サービス関係者が待ちに待った出版でした。

 

 

7月7日に銀座・教文館ナルニア国で開催された「『物語の森へ』刊行記念トーク」に参加し、この目録作成に取り組まれた東京子ども図書館理事長の張替惠子さん、担当者の護得久えみ子さんのお話を伺ってきました。

この目録には戦後出版された内外の児童文学(創作物語・昔話・伝説・神話・古典文学・詩集)の中から、次世代の子どもたちに手渡したい本が1600点が収められています。

トークでは、最初になぜ東京子ども図書館(TCL)が子どもの本のリストを作って来たのかその理由と経緯が、TCLの歴史を紐解きながら語られました。

1974年にTCLが設立される以前に、初代理事長であった石井桃子さんが瀬田貞二さんたちと始められた「子どもの本研究会」から、『私たちの選んだ子どもの本』が1966年に出版されています。石井桃子さんのかつら文庫や、瀬田貞二さんの瀬田文庫に通ってくる親たちからの「うちの子にどんな本を選んだらよいか」という質問に答えられる本のリストとして誕生しました。

このリストに挙げられたものは、文庫にくる子どもたちの反応がもとになっていました。その後、リスト作成はTCLに引継がれ、改訂が行われてきました。しかし、品切れや絶版になったり、新訳や改訂版が出たり、復刊されたりという子どもの本の出版状況の中で、収録された作品の出版情報を最新のものに保ちながらリストの改訂を行うことが困難になったといいます。

そこでTCLでは『私たちの選んだ子どもの本』とは別に、1990年以降に出版された子どもの本の中から選んだ『子どもの本のリスト「こどもとしょかん」新刊案内 1990~2001セレクション』を出版しました。こちらには絵本、昔話、物語に限らず、伝記や知識の本なども収録され、詳細な索引(書名、人名、件名)が付きました。

 


 

 そのような流れの中で、なぜ再びTCLが児童図書館基本目録に着手したのか、その理由はこれまで子どもたちが読み継がれてきた、子どもたちが心躍らせてきた作品が、本の出版流通の中で手に入らなくなっただけではなく、公共図書館でも廃棄され入手困難になっているという現実にあるということでした。

『物語の森へ』の「はじめに」のページ(p6~7)にはこのように書かれています。(太字引用文)

“『絵本の庭へ』や『物語の森へ』がこれまでのブックリストと大きく異なる点は、入手が可能かどうかという出版状況の枠を取り払い、すぐれた作品を将来に向けて伝承すべき文化遺産として記録にとどめようとしたところです。1950年から60年代、戦後の再興に取り組んだ児童書のつくり手たちは、子どもたちに希望を託し、作家、画家、編集者がひとつの思いで、質の高い作品づくりに取り組みました。高度経済成長の恩恵もあり、子どもたちの本棚はかつてないほど彩り豊かになりました。70年、80年代には、その果実を行きわたらせるための公共図書館システムも整ってきました。しかし、その後の電子メディアの普及や受験競争の過熱により、子どもたちがゆったりと本に向きあう時間はどんどん限られるようになりました。少子化による購買層の減少も影響し、出版社は過去に生み出した読みごたえのある傑作を品切れ・絶版にせざるを得ないケースが増えています。たとえ書店で手に入らなくなっても、質の高い作品を蓄積して提供することが使命であるはずの図書館も、施設面や資料提供の利便性という点では飛躍的に進歩したものの、子どものためのサービスを担う専門職員の雇用環境が不安定で、その役割を十分に果たしているとはいえません。
 このような状況の中で、わたしたちができることはなにかと考えたとき、どうしてもやり遂げたいと思ったのが「基本蔵書目録」の刊行でした。「基本蔵書目録」とは、図書館で蔵書の核として常に揃えておくべきだという評価を得た本のリストです。もし、その本が紛失したり破損したときには、買い換えなければなりませんし、絶版で入手できなくなった場合には、傷んでも廃棄せず、修理して保存を心がけなければならない作品であることを示し、蔵書構築の指針としたものです。”

以上のような思いで作られたこの「児童図書館基本目録」は、私たちが常に児童室の蔵書に気を配り、棚を作っていく際に、さらに研修でよく質問を受ける「児童書の廃棄基準」について明確な指針を示してくれるものだと思います。

今回、選定にかけられた本は約5000冊。15年にわたる選定作業に関わった人は延べ320人だったとのこと。その膨大な作業を想い、ほんとうに頭が下がります。

『絵本の庭へ』に続いて、『物語の森へ』の索引の充実度は、子どもの本についてのレファレンスでも大変心強い味方です。特に件名の小項目は1129にもなっています。(『絵本の庭へ』では1095項目)また登場人物索引は909件(『絵本の庭へ』では557件)となっており、本を探すときの手がかりとなります。トークの際に、件名の種類も『絵本の庭へ』と『物語の森へ』では大きく変化したことが示されました。たとえば「気持ち・こころ」をあらわす件名は『絵本の庭へ』(a)では27項目80冊、『物語の森へ』(b)では33項目275冊となり、物語ではより複雑なこころの動きを表現した作品が多いということがわかります。もっと単純な比較では、「のりもの」の件名のうち、「電車」は(a)では36冊なのが(b)では10冊に、「車」は(a)23冊、(b)12冊と減っている中、「船」は(a)32冊、(b)36冊とさほど変化がないことなど、件名を見ていくだけでも、絵本と物語の違いもみえて面白いことがわかりました。

それに加えて、『物語の森へ』では作品の出版履歴が提示されています。最初に出版した出版社から復刊した出版社、あるいは翻訳者の変更、題名の変更なども併せて辿ることが可能になっています。

トークの終盤で「図書館員はこれに収録している本は捨てるな。これらの本がなければ図書館員稼業は出来ないと、思ってほしい」との言葉を聞いて、襟を正す思いになりました。本来は、子どもの本の選書眼は長く児童サービスに携わる中で、子どもたちの反応を見ながら身についていくもの。それがなかなか厳しい中で、どのように児童サービスに関わるスタッフの研修でそれを伝えていくか、苦心をしていたところだったからです。

「本のこまど」でも、「基本図書を読む」の連載をしたり、児童部会の活動報告の中で「基本図書から学ぶ」についてお伝えしてきました。しかし、今回TCLの「児童図書館基本目録」に対する覚悟と篤い想いを聞いて、これらについて児童サービスに関わるスタッフにもっと丁寧に伝えていくことの重要性を感じています。

まずは『絵本の庭へ』に続いて、『物語の森へ』を児童サービス業務の座右の銘として常にそばに置いてほしいと願います。

(作成K・J)

2017年5月、6月の新刊より(その2)


 

 2017年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(2017年4月発行の書籍も含まれています)

(その2)では児童書、YA向けの書籍を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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 【児童書】

『キキとジジ 魔女の宅急便特別篇その2』角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館書店 2017/5/25


多くの子どもたちに夢を与えてくれる「魔女の宅急便」のシリーズは、第1巻が出てから32年になります。そのシリーズ最新作が5月に出ました。キキがオキノさん、コキリさん夫婦のもとに誕生した日から始まる物語です。つまり14歳になったキキが二人のもとを旅立つ日から始まった「魔女の宅急便」のお話が、その一番の始まりのキキの誕生に巻き戻されたといってもよいでしょう。そして赤ちゃんのキキのもとに、赤ちゃんネコのジジがやってきます。キキとジジ、二人(ひとりと一匹)の成長物語ですが、ところどころにジジの本音の気持ちが書かれていて、それがまたくすりと笑いを誘います。本編でのキキとジジの関係はこのように育まれてきたのだなと、読んでいてうれしくなりました。

 
 
『マウスさん一家とライオン』ジェームズ・ドーハティ/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/5/26

マウスさん一家とライオン
ジェームズ ドーハティ
ロクリン社
2017-05-30
 
この絵本は『アンディとらいおん』(村岡花子/訳 福音館書店 1661)でコルデコット賞を受賞したジェームズ・ドーハティの作です。ドーハティは『アンディとらいおん』で絵本作家としての地位を確立したのだそうですが、他の作家が作った文章に絵をつけることが多く、文章、絵ともに自作の作品は『アンディとらいおん』に次いでこちらの2冊だけなのだそうです。イソップ物語の「ねずみとライオン」をもとに作られたお話です。陽気なねずみのマウスさん一家がピクニックに出かけた時に、一家の末息子チェダーがぐっすり眠っていたライオンに悪戯をしてしまいます。怒ってチェダーを捕まえたライオンに許しを請う家族たち。ライオンはその愛情深く心優しい一家の姿に胸を打たれて逃してやります。チェダーが「あなたのピンチには助けるよ」と真顔で言うのを笑い転げるライオンでしたが、ある日人間のしかけた罠にかかてしまいます。チェダーたちは約束通りに駆け付けました。抑えた色味でセンスの良い絵が、このお話の面白さをさらに引き立てています。絵本に分類するか悩みましたが、低学年の子どもたちが自分で読むのにちょうどよいと考えて、児童書として紹介します。


『メリーメリーのびっくりプレゼント』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/6/15 
 
メリーメリーのびっくりプレゼント
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-06-16

3月に出版された『メリーメリーおとまりにでかける』に続く「メリーメリー」シリーズの2作目です。(『メリーメリーおとまりにでかける』の紹介文は→こちら)5人兄姉の末っ子メリーメリーは、とにかくお茶目で、みんなを驚かせます。子どもたちだけで留守番をしていたある退屈な土曜日なんて、家の前に消防自動車を呼んでしまいます。(通報したのは上の子たちですが)でも、メリーメリーはお騒がせなだけではありません。二人の姉ミリアムとメグよりも上手に赤ちゃんのお世話もしましたし、ご近所に住むサマーズさんの結婚式には立派に付き添いを務めました。このシリーズを読めば、きっとみんなメリーメリーが大好きになるはずです。

 

 
【ノンフィクション】

 『ほんはまっています のぞんでいます』かこさとし/作・絵 復刊ドットコム 2017/5/25

ほんはまっています のぞんでいます (かこさとし◆しゃかいの本)
かこ さとし
復刊ドットコム
2017-05-25

昨年夏の『こどものとうひょう おとなのせんきょ』に続いて、「かこさとし◆しゃかいの本」の2冊目が復刊されました。1985年に童心社から出ていた同名の本を底本として、よみがえりました。この本では子どもたちに本に出会うための公共図書館の機能をわかりやすく伝えています。また「あとがき」では、「親は大人は、子どもにだけ本を読めというだけで、良書の普及や図書館の状況が文明国の中でとても恥ずかしい状態なのを改める努力が少ないように思います。」と、子どもたちの読書離れについて大人に向けて苦言を呈しています。32年前にすでにそういう危惧があったこと、そして今それらが改善されているかということを振り返ってみて、図書館に関わるものとして胸を張って「その心配は杞憂に終わりました」と言えないことに忸怩たる思いがします。それでも今、新しい図書館が次々とオープンし、真剣に市民の側から図書館サービスを考えようとする機運が高まっていることも事実です。子どもたちにとって、子ども時代に本に出会うことの大切さは今も昔も変わっていません。この本は、子どもたちはもちろん子どもと本に関わる大人たちに読んでほしいと思います。(『こどものとうひょう おとなのせんきょ』についての紹介記事は→こちら

 

【YA向け】
 
『太陽と月の大地』コンチャ・ロペス=ナルバエス/作 宇野和美/訳 松本里美/画 福音館書店 2017/4/15
太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)
コンチャ・ロペス=ナルバエス
福音館書店
2017-04-15

世界史を学習した人は、記憶のどこかに「レコンキスタ」(国土回復運動)や「グラナダの陥落」という言葉が残っているのではないでしょうか。611年に興ったイスラム国家ウマイヤ朝は、710年にジブラルタル海峡を越えてイベリア半島に進出しました。それから1492年のグラナダ陥落までイスラム勢力(ナスル朝)による支配が現在のスペイン南部で続くことになります。この物語はグラナダ陥落後のグラナダを舞台にして、16世紀のキリスト教徒とイスラム教徒との確執のはざまで育まれた友情と引き裂かれていく運命について描いています。当時、イスラム教徒は強制的にキリスト教に改宗させられ「モスリコ」と呼ばれていました。その後アラビア語の使用や生活様式の禁止令も出て、徹底的な同化政策が行われていたようです。この物語の中心人物はモスリコの老人ディアス。彼らの家族はアルベーニャ伯爵家に仕えていました。ディアスと、前当主ドン・ゴンサロは、主と使用人という関係というよりは、少年時代から一緒に過ごしてきた親友のような存在でした。この関係は息子の代になっても続くと思っていたのですが、アラビア語禁止令が出たことによって変化していきます。ディアゴの孫のミゲルは山賊となってイスラム教徒の反乱に参加していくのです。物語は、民族、宗教に引き裂かれる人々の、しかし同じ人間同士として理解することもできるんだというメッセージをも含んでいます。キリスト教徒とイスラム教徒の軋轢の歴史は、今も続いています。テロとその影響で難民になって他国へと逃れていく姿は、16世紀の物語としてではなく、今まさに中東とEU諸国で起きていることと重なります。この本は1984年にスペインで出版されIBBY(国際児童図書評議会)のオナーリスト、そしてヘルマン・サンチェス・ルイペレス財団(*)による「20世紀のスペインの100冊」にも選ばれて、長く読み継がれているということです。スペイン留学中にこの本に出会ったという宇野和美さんによる翻訳は、とても読みやすく、言葉が心に沁みわたってきます。世界史を学ぶYA世代に、ぜひ手渡したい1冊です。
*この財団についての説明は、宇野和美さんのブログ「訳者の言いわけ」に詳細に書かれています。→こちら

 

『スレ―テッド』1,2,3 テリ・テリー/著 竹内美紀/訳 祥伝社文庫 祥伝社 2017

スレーテッド 消された記憶 (祥伝社文庫)
テリ ・ テリー
祥伝社
2017-04-12


スレーテッド3 砕かれた塔 (祥伝社文庫)
テリ・テリー
祥伝社
2017-06-21

題名になっている「スレーテッド」とは、解説によれば「「石板」を意味するslate(スレート葺きの屋根に使われてるあのスレートです)をもとにした造語。英語で”clean slate”と言えば、「白紙」のことだし、”wipe the slate clean”と言えば、「過去を清算する」とか「新たに出直す」という意味」で、この物語は2054年、EU離脱後のイギリスで、中央連合政府によって強制的にスレ―テッドつまり記憶を消去された少女カイラが、自分の過去に気づき、国家全体を揺るがす陰謀へと巻き込まれていく様を描くサスペンスです。カイラは16歳。当時、イギリスはEU離脱後の欧州経済危機に端を発する大混乱と国境封鎖を経て、超管理社会へと変化していました。犯罪行為など反社会的なことを行った16歳以下の子どもは矯正と再犯防止のために、強制的に脳手術を施され、記憶が消されてしまいます。その上、腕にはブレスレットのようなレポと呼ばれる監視装置を取り付けられています。レポは、脳内に埋めこまれているチップが測定する脳内物質の変化を数値化して表示します。強い不安や怒りを感じると、レポが脳内に埋め込まれたチップに電気ショックを与えて強制的にブラックアウトし、酷い場合には死に至るように設定されているのです。スレ―テッドされた少年少女は徹底的に管理化に置かれているのですが、カイラはある時、自分の過去の記憶が完全に消えていないことに気がつきます。そしてスレ―テッドの少年ベンと真相を探ろうとして、反政府組織と接触するようになってきます。4月から6月にかけて毎月1冊ずつ出版されましたが、読み始めると早く次が読みたくて出版が待ちきれなくなった作品です。この作品の翻訳は、『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか―「声を訳す」文体の秘密』(ミネルヴァ書房 2014)を書いた東洋大学准教授の竹内美紀さんです。YA世代が惹きつけられるような言葉を意識して翻訳したのだとか。近未来のディストピアは現実となるのでしょうか。このような未来を子どもに手渡してはいけないと思いつつ、多くの人に読んでほしいと思いました。
 
 
『高校図書館デイズ 生徒と司書の本をめぐる語らい』成田康子/著 ちくまプリマ―新書 筑摩書房 2017/6/10
高校図書館デイズ: 生徒と司書の本をめぐる語らい (ちくまプリマー新書)
成田 康子
筑摩書房
2017-06-05
 
北海道札幌南高校で学校司書をつとめる成田康子さんが、学校図書館を利用する13人の生徒たちの読書と日々の生活のことなどを綴ったノンフィクションです。今を生き高校生たちが、どんな本に出会っているのか、また読書を通してどんなことを感じているのかが、生き生きと描かれていて、その生徒の顔が見えてくるように思いました。ひとりの生徒が成田さんが司書として詰めている図書館を「ここって、仕事帰りにふらっと寄っていきたくなるような居酒屋」のようだと、「はじめに」の冒頭に書かれていますが、忙しい高校生活の中で、時間をみつけてちょっとだけ顔を出してみよう、司書の成田さんとひと言、ふた言話してみよう、そうすることでまた自分のすべきことへ向かうことができる、そんな関係性を作ったのはひとえに成田さんの学校司書としての働きにあることは明白です。自分も高校時代にこんな素敵な司書さんに学校図書館の中で出会いたかったなと思いました。(当時の学校図書館は、開かずの間でしたから)巻末にある13人の高校生が取り上げた本のリストも、図書館でのYAサービスの参考になるでしょう。高校生の不読率が5割を超えた(高校生の読書習慣に関する調査結果→こちら) という調査結果が一昨年出ましたが、だからこそまたこの本は多くの同世代の子どもたちにも読んでほしいと思います。
 
 
 【その他】
『おはなし会がはじまるよー特別支援学校(肢体不自由校)でび図書館活動―』おはなしの会うさぎ/編集・発行 2017/4/30
東京都立墨東特別支援学校での学校図書館の様子や、障害を持つ子どもへのおはなし会の実践についてまとめた小冊子です。現在、教文館ナルニア国においてのみ販売しています。値段は500円です。(教文館ナルニア国の紹介文→こちら
 
【おまけ】
『やさしいことばで日本国憲法―新訳条文+英文憲法+憲法前文』池田香代子/訳 C・ダグラス・ラミス/監修・解説 マガジンハウス 2002/12/10
やさしいことばで日本国憲法―新訳条文+英文憲法+憲法全文
C.Douglas Lummis
マガジンハウス
2002-12

 私たちの日本国憲法が実は双子だったってご存知でしたか?GHQのスタッフによって英語でも書かれていたのです。ただし日本語の憲法を英訳したものでもなく、また英語の憲法を和訳したのが現行の日本国憲法になったわけでもなく、同時に作られていたというのです。2002年に出版されていたこの本が、今年の春に増刷されました。『世界がもし100人の村だったら』を翻訳した池田香代子さんの訳です。日本語と英語の憲法を対にして読むことによって、この憲法に書かれていることが、世界の平和への希望だとわかります。基本的人権、そして誰もが恐怖や貧しさから免れて平和に生きる権利を有していることを、改めて考えたいと思いました。

(作成K・J)

2017年5月、6月の新刊より(その1)*追加資料あり


 2017年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。なお、6/28に2冊追加しました。(2017年4月発行の書籍も含まれています)

(その1)では絵本を、(その2)で児童書、YA向けの書籍を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

 『えじえじえじじえ』佐藤可士和/絵 谷川俊太郎/字 クレヨンハウス 2017/4/10

 谷川俊太郎さんが多彩な画家やアーティストとコラボして作る「あかちゃんから絵本」シリーズの13作品目です。佐藤可士和さんは谷川さんからこのシリーズの依頼があって約2年半、どのような表現にしようかと初めての絵本への取組に答えが出せなかったそうです。ところが有田焼が創業400年を迎える2016年に向けて「ARITA 400project」に関わったことで、触発され自由に色をかけて表現したのが今回の絵になっています。その絵をみながら、今度は谷川さんが「字」をつけていきます。絵も字もあかちゃんにとっては、ひとつの表現であるということで、並んでいる文字に意味はなく、谷川さんが絵からイメージした「字」が並んでいるのです。ところが、実際に保育園で読み聞かせをしてみると、この不思議な絵本に小さな子どもたちが惹きつけられていく、そんな映像もおふたりのトークイベントで見せていただきました。小さな子どもの感性を揺すぶる絵本と言えるのかもしれませんね。

 

『なにもかも おちてくる』ジーン・ジオン/文 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 まさきるりこ/訳 瑞雲舎 2017/4/15

ほら なにもかも おちてくる
ジーン ジオン
瑞雲舎
2017-04-15

 この絵本の原書『All Falling Down』(1951)は、1952年のコールデコット・オナー賞受賞作品で、2005年にあすなろ書房から同じ訳者によって『あっ、おちてくる ふってくる』というタイトルで出版されていました。ジーン・ジオンとマーガレット・ブロイ・グレアムのコンビによる絵本としては『どろんこハリー』(わたなべしげお/訳 福音館書店 1964)が良く知られていますが、実はこちらがデビュー作です。今回、別の出版社から出すにあたり、タイトルだけではなく、内容もいくつか翻訳が変更されています。たとえばあすなろ書房版で「ひとびとは、いそいでいえじにつきます」→瑞雲舎版「ひとびとは、いえにむかっていそぎます」、あ「おばあさんのけいとのたまが おちてころがります。ころころ ころころ・・・」→瑞「おばあさんのけいとのたまがころがります。まるいためが、ころころ ころころ」、あ「おとうさんがジミーをしっかりうけとめます」→瑞「おとうさんが、ジミーをしっかりうけとめました」というように変更されています。2冊を読み比べてみると、たしかに声に出して読んだ時に、耳心地よく読みやすい訳になっているなと感じました。自然の営みの中で、落ちるもの、落ちてくるものとして花びらに、噴水の水、りんごに落ち葉など身の回りのものに目を向けさせる絵本です。と、同時に英語ではすべて「Falling Down」という表現ですむものが、日本語では「おちる」「おりる」「ふる」と違うことばで表現されていることも面白いなと思いました。

 

『アームストロング 宙飛ぶネズミの大冒険』トーベン・クールマン/作 金原瑞人/訳 2017/4/15 

アームストロング: 宙飛ぶネズミの大冒険
トーベン クールマン
ブロンズ新社
2017-04-15

2015年に出版された『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』(本のこまど紹介記事は→こちら)の第2弾です。今度は、仲間のネズミたちが「月は大きなチーズだ」と思い込んでいる中、天体望遠鏡で月を観測していて地球の衛星だと気がつくネズミが主人公です。仲間に理解してもらえないでいるネズミのもとにスミソニアン博物館の老ネズミから手紙が届き会いに行きます。この老ネズミは前作のネズミだと思われます。そして月へ行くことを決意したネズミは、大学の授業を聴講して(無断で)設計図を作成し、着々と準備を進めます。ところが大きな事故を起こし、人間に追われる身に・・・そんな中、無事に月へ着陸し、また地球へ帰還します。壮大な物語は、困難な状況を克服しながら月面着陸をはじめとして宇宙開発をすすめてきた人類の歩みを彷彿とさせます。前作と合わせて読んでみると、面白さも倍増しそうです。
 

 

『だれのこどももころさせない』西郷南海子・浜田桂子/作 浜田桂子/絵 安保関連法に反対するママの会/協力 かもがわ出版 2017/4/30

だれのこどももころさせない
西郷 南海子
かもがわ出版
2017-04-25

 「子育てまっ最中のママたちが、安保関連法案反対の声をあげたと知ったとき、わたしは胸打たれるものがありました。命を生み命を日々育んでい人たちの感性が、この法案を受け入れるはすがない。赤ちゃんや幼い子たちが、ママに大きな勇気を与え背中を押してくれたのだと。」と、この絵本の画家浜田桂子さんはあとがきに記しています。この絵本が出来たきっかけは、教育学を学ぶひとりのママが、わが子のこんな言葉を聞いたことだったそうです。新聞の安保関連法案審議を伝える記事を見て、「きょうのよる、せんそうにならない?」と不安げに聞く小さな声を。日本で今実際に寝ている家の上に爆弾が落ちてくることはないにしても、その問いかけは「いつのまにか、地球の向こうの子どもたちからのSOSに聞こえて」きたというのです。この法律制定の前に実は防衛装備移転三原則が閣議決定されており、いつのまにか武器輸出が可能になっています。国内で戦争は起きなくても、日本から輸出する武器が紛争地の子どもたちの上で使われるかもしれない。そうしたことに目を向け、命は補充可能な部品ではないことを、伝えていく決意を感じる絵本です。しかしその強い決意とは裏腹に絵は柔らかい色彩で優しく包み込むように「だれのこどももころさせない」と高らかに宣言しています。

 

『きゃべつばたけのぴょこり』甲斐信枝/作 ふしぎなたねシリーズ 福音館書店 2017/5/20

 きゃべつの上で育つもんしろ蝶のさなぎが主人公になっている小さな子どものための科学絵本です。植物の絵を描くのが大好きな甲斐信枝さんの、小さな生き物への愛情を感じる絵本です。蝶のさなぎだけではなく、きゃべつ畑にいる様々な昆虫など(たとえばてんとう虫の幼虫や成虫、カメムシなども)が丁寧に描かれています。

 

 『ちいさなかえるくん』甲斐信枝/作 ふしぎなたねシリーズ 福音館書店 2017/5/20

 こちらも甲斐信枝さんが描く小さな子どものための科学絵本です。『きゃべつばたけのぴょこり』に続くお話です。さなぎから孵ったばかりのもんしろ蝶を追いかけて逃げられてしまった蛙が主人公です。蝶が飛んでいくほうへ、どんどん追いかけていきます。おおいぬのふぐりにシロツメクサ、タンポポにナズナ、れんげに母子草、ハルジオンといろいろな春の雑草の中を飛んでいくもんしろ蝶。それを追いかける蛙、最後はまたきゃべつ畑に戻ってきます。蛙の姿を追いかけながら、春の野の花を親子で思い出せるといいなと思います。

 

 『よるのおと』たむらしげる/作 偕成社 2017/6 

よるのおと
たむら しげる
偕成社
2017-06-13

 たむらしげるさんは9歳の時、国語の授業かなにかで「古池や 蛙飛びこむ 水の音」という芭蕉の俳句を初めて耳にし、同時にその池の状況が音と共に鮮明に見えたというのです。あとがきでそのことを、「鳥肌が立つようなこの不思議な感覚をどう表現すればよいのだろう?(中略)ぼくは自分がこのすばらしい宇宙に存在する不思議に気づいた。」と書いています。60年を経て、その俳句を情景化したのがこの絵本なのです。絵本で表現されている時間は、おじいちゃんを訪ねてきた男の子が家の前の池にさしかかって玄関に到達するまでのほんの1,2分です。その間の、夜の池で繰り広げられる生き物たちの営みを「音」で表現しているのです。背景に星空が広がり、蛙が飛び込んだあとの波紋が太陽系のように見えるなどは、自分が「宇宙に存在する」と感じたかつてのたむら少年の心象風景を描き出しているのかもしれません。

 

『金剛山のトラ―韓国の昔話―』クォン・ジョンセン/再話 チェン・スンガク/絵 かみやにじ/訳 福音館書店 2017/6/10

金剛山のトラ 韓国の昔話 (世界傑作絵本シリーズ)
福音館書店
2017-06-07
 
 韓国の金剛山(クムガンサン)は歌にも歌われる代表的な山で、切り立った岩の峰々が連なる険しい山と深い渓谷とが織りなす景勝地とのこと。そこに伝わる昔話です。父親を人喰いトラに殺されたと聞いた少年ユボギが、母親と一緒に厳しい修行を積みます。その修業は母親が頭の上に載せた水瓶を矢で射った後に、泥団子を矢じりにつけて放ち、先ほどの穴をふさぐということであったり、鋭い竹の切り株の上を転がってみたり、自分の体の何倍もある大岩を持ち上げたりすることでした。そしていよいよトラ退治の旅に出かけていきます。旅の途中で出会った老婆の忠告を聞いてさまざまな試練を乗り越えるのですが、とうとう自分も人喰いトラに飲み込まれてしまいます。しかしユボギはトラのお腹の中で出会った娘と共に、必死で脱出する方法を探ります。とても迫力のある絵本ですが、最後は心温まる結論に、物語に引き込まれた子どもたちもホッとすることでしょう。 

 

 『ねむれないおうさま』ベンジャミン・エルキン/原作 ザ・キャビンカンパニー/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2017/6/15

ねむれない おうさま
ベンジャミン・エルキン
瑞雲舎
2017-06-30

 ある国の王さまは、なかなか寝付けません。家来たちは王さまに聞こえる限りの音を消し去ろうとします。飛行機や汽車を止めるだけでなく、子どもたちから積み木やくちゃくちゃかむ音がするチョコバーまで取り上げ、川のせせらぎや鳥の鳴き声まで聞こえないようにしました。それでも眠らない王さま。もう打つ手はないと思ったところへ、歌声が聞こえてきます。すわ大変!と家来たちが駆け付けると、新しく来た乳母が優しい声で子守歌を歌っていたのでした。そして赤ちゃんの王さまは安心して眠りにつくのです。途中までなんてわがままな王さまなんだろう?と思いながら読んでいると、最後に現れる可愛らしい赤ちゃんの寝顔に思わずこちらも頬が緩みます。 

 

 『スリランカの昔話 ふしぎな銀の木』シビル・ウェッタシンハ/再話・絵 松岡享子、市川雅子/訳 福音館書店 2017/6/15 

スリランカの昔話です。あるとき、王さまが不思議な夢を見ます。地面がぱっくりと割れて美しい銀色の木が生え、銀の花が咲き、銀の実がなり、銀の雄鶏がその上にたって時を告げたというのです。その木をほんとうに見たいと願い、三人の王子を探しにやります。三人の王子はそれぞれの道を探しに出かけますが、上の二人の王子はすぐに何かの魔力で姿を変えられてしまいます。末の王子は賢者の助言をもらって大蛇を倒し、不思議な洞窟の中で王さまが見たという夢の木を探し当てます。 大蛇の三人の美しい娘を連れて王さまの元へ戻ってくるのですが・・・正直な末の王子の優しさにホッとします。『きつねのホイティ』(松岡享子/訳 福音館書店 1994)や、『かさどろぼう』(いのくまようこ/訳 徳間書店 2007)で人気のスリランカの絵本作家シビル・ウェッタシンハさんの新しい絵本です。

 

『ホウホウフクロウ』井上洋介/作 福音館書店 2017/6/15

ホウホウフクロウ (日本傑作絵本シリーズ)
井上 洋介
福音館書店
2017-06-14
 
昨年2月に亡くなられた井上洋介さんの最後の絵本です。(訃報のお知らせは→こちら)シュールでいて温かみのある絵が魅力の井上作品ですが、最後のこの作品は水墨画です。淡々とした文章と、深い夜の闇の中を飛び回るフクロウやミミズクの圧倒的な存在感は、読む者を不思議な別世界に連れていきます。井上洋介さんのこれまでの仕事とはひと味違う作品をぜひ味わってほしいと思います。
 

 

 『どうぶつたちがねむるとき』イジー・ドヴォジャーク/作 マリエ・シュトゥンプフォヴァ―/絵 木村有子/訳 偕成社 2017/6

どうぶつたちがねむるとき
イジー・ドヴォジャーク
偕成社
2017-06-13

 「チェコの最も美しい本2014年」の児童書部門で3位を受賞した絵本です。抑えた色彩と、フロッタージュという技法で表現した動物たちの眠る様子は、ため息が出るほど美しく、それでいて科学的な視点をもった説明文がつけられています。ひとつひとつ読んであげているうちに、子どもも眠りに誘われていくことでしょう。

 

『手おけのふくろう』ひらののぶあき/文 あべ弘士/絵 福音館書店 2017/6/25

手おけのふくろう (日本傑作絵本シリーズ)
ひらの のぶあき
福音館書店
2017-06-21
 
 北国のある里山のお話です。古い桜の木のうろで子育てをしていたふくろうの夫婦がいました。ところがある大雪の日に雪の重さに桜の木が倒れてしまうのです。そこでふくろうたちは、民家の軒先につるされた手おけを代わりの巣にするのですが、雪やみぞれがおけの中には吹き込み、また天敵のハクビシンに狙われたりします。そんな危機を乗り越え、ふくろうの夫婦は三羽のひなを育てるのです。このお話は、実際にあった話がもとになっているそうです。野鳥を撮り続けているカメラマンの平野伸明さんが 文章を書き、旭山動物園の飼育員だったあべ弘士さんが現地を取材しながら絵を描いています。
 
 
『エルマーとブルーベリーパイ』ジェーン・セアー/作 シーモア・フレイシュマン/絵 おびかゆうこ/訳 ほるぷ出版 2017/6/24 
 
エルマーとブルーベリーパイ (海外秀作絵本)
ジェーン・セア
ほるぷ出版
2017-06-20

 1961年にアメリカで出版された絵本が、初邦訳されました。ある家にエルマーという妖精が住んでいます。ある日、おうちの人が焼いたブルーベリーパイをエルマーは食べてみました。あまりに美味しくて夢にまで見るほど。翌日もまたブルーベリーパイを食べられるかと思ったら、家の人が全部食べてしまっていました。もう一度食べたいと思ったエルマーはどうしたと思いますか?家の人たちが気がつかないうちに家じゅうの洗い物をし、掃除をし、ベッドメイキングまでしました。でも妖精は人間には見えないのです。どうやって「もう一度ブルーベリーパイ作ってほしい」とお願いするのでしょう?読んでみてくださいね。こんな妖精ならうちにもいて欲しいなと思いました。

 

『まるぽちゃ おまわりさん』マーガレット・ワイズ・ブラウン、イーディス・サッチャー・ハード/作 アリス&マーティン・プロベンセン/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2017/6/26

まるぽちゃ おまわりさん (おひざにおいで)
イーディス・サッチャー・ハード マーガレット・ワイズ・ブラウン
PHP研究所
2017-06-13
 
 翻訳者として次々に楽しい子どもの本を紹介してくださるこみやゆうさんは、お子さんをお膝の上にのせて絵本を読んであげる至福の時間をこのように表現しています。「絵本を子どもと楽しむということは、その子の心に「よろこびの種」を蒔くということです。種は、いずれ木となり、実をむすびます。その子が大きくなった時、心にたくさんの実があれば、時に他人にわけ与え、時に自らを励ますことができるでしょう。」と。そんな親子の時間のためにと、こみやゆうさんが選ぶ「おひざにおいで」シリーズの第1作目がこの絵本です。ちいさくて太ったまるぽちゃおまわりさんが交通整理に、泥棒退治に、溺れた人の救助に大活躍するお話が3つ入っています。ポップで親しみやすい絵を描いたのは『たまごってふしぎ』(こみやゆう/訳 講談社 2012)の絵本があるプロベンセン夫妻です。 

 

『あめのひ』サム・アッシャー/作・絵 吉上恭太/訳 徳間書店 2017/6/30

あめのひ (児童書)
サム アッシャー
徳間書店
2017-06-13

 朝、目が覚めると外は雨、ぼくは外で遊びたいなと思います。おじいちゃんに「雨を口で受け止めたい」「水たまりにパシャーンと飛びこんだりしたい」「ふねにのってあそびたい」と次々ねだりますが、おじいちゃんは雨が止むまで待つようにと言うのです。さて、雨が止んで玄関のドアを開けると・・・一面の海のようになっているのです。そこで舟に乗って出かけるおじいちゃんとぼく。やりたかったことを全部やって、ぼくも大満足です。こん風に過ごせたら雨の日も楽しいだろうなと思わせてくれます。

 (作成K・J)

 

子どもに本を手渡す人にぜひ読んでほしい2冊


今年1月に出版されていながら、手に取るのが遅くなって紹介しそびれていた本が2冊あります。

1冊は子どもの本を専門にする出版社、福音館書店を作り上げてこられた松居直氏の絵本づくりへの篤い思いを膨大なインタビューの中からまとめあげた藤本朝巳著『松居直と絵本づくり』で、もう1冊は長く家庭文庫活動をされた後、54歳の時(1994年)にイギリスに留学し、6年間ヴィクトリア時代の絵本研究をされた当時の様々な記録をまとめた正置友子著『イギリス絵本留学滞在記ー現代絵本の源流ウォルター・クレインに魅せられてー』です。

 

『松居直と絵本づくり』藤本朝巳/著 教文館 2017/1/30

松居直と絵本づくり
藤本 朝巳
教文館
2017-01-25

白百合女子大学大学院に児童文学を学ぶ博士課程が開設された時、男性でありながら院生として迎えられた著者が、講師と院生として出会った福音館書店編集者の松居直氏に絵本や絵本の編集について多くのことを聞き取り記録されたことを1冊にまとめられました。膨大なインタビューの内容は、実は2012年から2014年にかけて、ミネルヴァ書房からシリーズ・松居直の世界として3冊出版されたいます。(『松居直・自伝ー軍国少年から児童文学の世界へ』2012/1/20刊、『松居直と「こどものとも」』2013/7/20刊、『翻訳絵本と海外児童文学との出会い』2017/7/15刊)
そのシリーズとは別の形で、しかも大変読みやすいコンパクトな形で、手に出来ることは、私たち、子どもたちに本を手渡すものにとってはありがたいことです。
戦後日本の絵本を語る時に、松居直氏と福音館書店の月刊「こどものとも」を避けて語ることはできません。この本を読むことによって、長く読み継がれている絵本が、編集者のどのような篤い思いから作られて来たのか、その一端を知ることができるでしょう。

第1部「こどものとも」の編集と松居直
第2部 松居直と名作絵本作り
第3部 松居直とともに絵本を作った人々
第4部 ロングセラーと新しい絵本

以上の4部構成となっており、私たちがよく知っている作品や作者についてわかりやすく解説されているので、親しみをもって読むことができます。
創刊当時から子どもに手渡す本であるからこそ、芸術性の高い絵本づくりを目指した「こどものとも」と松居直氏の姿勢は、デジタル時代を迎えた現代の子どもたちにどのような絵本を手渡していくのか、残していくのかを考えるのにも多くのヒントを与えてくれます。


『イギリス絵本留学滞在記ー現代絵本の源流ウォルター・クレインに魅せられてー』正置友子/著 風間書房 2017/1/31

イギリス絵本留学滞在記
正置 友子
風間書房
2017-02-13
 
著者の正置友子氏は、大学卒業後結婚され、子育ての傍ら、大阪千里ニュータウンで家庭文庫(青山台文庫)活動をずっと続けてこられています。子どもたちに直接本を手渡す活動をする中で、絵本についてもっと学びたい、絵本の歴史について深く研究したいと考え、古今の絵本の蔵書があり、絵本という芸術について造詣の深い研究者のいるところとしてイギリスへ留学します。その時点で、著者は54歳になっており。自分のお子さん達は成人していました。
イギリスでは、ウォルター・クレイン(1845~1915)の絵本に出会い、その運命的な出会いからヴィクトリア時代(1837~1901)の絵本の歴史を研究し、6年後に1千ページに及ぶ英文と900枚の図版入りの博士論文にまとめられました。それが、ヴィクトリア時代の絵本研究として世界で初めての本格的な研究であり、子どもの本の優れた歴史研究であると認められイギリスの子どもの本歴史協会から2008年に「ハーベイ・ダートン賞」を授与されました。
イギリスでの生活のこと、出会った人々のことなど、留学中のさまざまなエピソードが盛りだくさんで読み物として面白く、一気に読んでしまいました。
その中で、一番心に残ったのは、ロンドンの新聞図書館で著者が見つけた新聞記事でした。今から150年前の1865年12月12日づけの出版業界新聞『ブックセラー』の中に記されている言葉です。

「本を制作するとき、子どもの本を作製するときほど、いっそうの熟練の技と、良いセンスに培われた細やかな配慮とが必要とされる分野はないであろう。にもかかわらず、このことは概してなおざりにされてきた。子どもたちにはまるでガラクタモノで充分だというふうに考えられている。なんというひどい間違いだ!もし可能であるならば、本当に美しいもの、純粋なもの、良いものだけが、子ども時代の感じやすい目と耳に提供されるべきである。」(「第4部 ヴィクトリア時代の絵本に魅せられて 第6章 児童文学史上重要な一八六五年 第1節 子どもたちには最高の絵本を手渡すべきであるー一八六五年十二月」p202)
 
 松居直氏が、「こどものとも」で目指した絵本づくりの目標が、すでに150年前のイギリスで掲げられていたこと、そしてヴィクトリア時代の絵本にはウォルター・クレインをはじめとして、そのような作品が生み出されていたことを、この本を通して再確認できました。
 
 この本の「おわりに」で、著者はイギリス留学中に、自分の母と父を相次いで天国へ見送ったことが記されていました。ロンドンとご実家のある名古屋を何度も行き来されたこと、父危篤の知らせを受けた時に英国航空がしてくれた粋な計らいを読んだ時には思わず涙がこぼれました。
 この本を手にすることによって、絵本の研究を志す若い世代が現れることを期待するとも記されています。絵本の研究分野には、文学にも芸術にもデザインにも保育学にも押し込めることのできない広さと奥行を内包しているとして、絵本学の構築を目指して、今また大阪大学の大学院で学んでいるという正置氏。女性の生き方、学び続けることの価値についても教えてくださっていると感じました。
 
この2冊の本は、子どもたちに本を手渡す活動をされている方々にはぜひ読んでほしいと思います。

(作成K・J)

 

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