新刊本・話題の本

2016年10月、11月の新刊から(その2)
限定増刷! 赤羽末吉の絵本2冊
2016年10月、11月の新刊から(その1)
『明日の平和をさがす本300』ブックガイドをぜひ座右に
2016年9月、10月の新刊から(11/2追記あり)
2016年8月、9月の新刊から
東京子ども図書館から『ブックトークのきほん―21の事例つき』が出版されました
オバマ大統領のスピーチが本になりました
2016年6月、7月の新刊から
2016年5月、6月の新刊から(その2)(1冊追加あり)
2016年5月、6月の新刊から(その1)
2016年4月、5月の新刊から
2016年3月、4月の新刊から
2016年2月、3月の新刊から
2016年1月の新刊から

2016年10月、11月の新刊から(その2)


 

10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、クリスマスの本と、その他の本をいくつかを紹介します。(9月に出版された本も含む)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

クリスマスの新刊絵本

『きょうはクリスマス』小西英子/絵と文 至光社 2016/10

 クリスマスといえば「サンタクロース」が来る日というのが、宗教色のない行事としてのクリスマスのイメージでしょうか。イエス・キリストの降誕祭であるという意識は、多くの人にないのかもしれません。この絵本は、サンタクロースを追いかけて出かけた男の子は、それがお菓子屋さんの売り子だと知り、お手伝いをします。それから、教会の降誕劇に加わってクリスマスの意味を知ります。この降誕劇は、キリストの誕生のいきさつを劇にしたものです。教会学校やキリスト教の幼稚園などでクリスマスの時期に行われています。クリスマスは「イエス・キリストの誕生を祝う日」だと、知るきっかけになるといいですね。 


『そらとぶそりとねこのタビー』C・ロジャー・メイダー/作・絵 齋藤絵里子/訳 徳間書店 2016/10/13 

そらとぶ そりと ねこのタビー (児童書)
C.ロジャー メイダー
徳間書店
2016-10-13

ねこって袋や箱があると本能的に潜り込むもの。ねこのタビーはクリスマスイブにやってきたサンタのおじいさんのふわふわの靴下に惹かれて近づき、贈り物の入っていた袋の中に潜り込んでしまいます。おじいさんは気がつかないまま戻っていってしまいます。そんなわけでもう一度サンタのおじいさんが訪れることになるのです。絵本作家としては3冊目になるこの作品は、『まいごになったねこのタビー』の姉妹編。その他に灰島かりさん翻訳の『てっぺんねこ』(ほるぷ出版 2015)があります。 

 

『もみの木のねがい』エステル・ブライヤー/ジャニィ・ニコル/再話 おびかゆうこ/訳 こみねゆら/絵 福音館書店 2016/10/15

 南アフリカでシュタイナー教育に携わってきた母娘が、操り人形劇の脚本から絵本のために再話したおはなしです。もみの木は、自分のチクチクした葉が気に入らず、妖精に頼んでやわらかい葉に変えてもらいます。ところがヤギに食べられて裸木になってしまいます。その次に銀の葉、金の葉に変えてもらうのですが、やはり葉はすべてなくなってしまいます。元の葉っぱに戻ったとき、子どもたちが喜ぶクリスマスツリーになり、もみの木自身も幸せを感じるのでした。こみねゆらさんの絵が、優しく物語を語ります。

 

 『どうぶつたちのクリスマスツリー』ジャン・ウォール/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2016/10/27

どうぶつたちのクリスマスツリー
ジャン ウォール
好学社
2016-10-18

森の中で動物たちがもみの木にクリスマスの飾りをつけています。猛獣も小さな動物もいっしょに手伝います。クリスマスの本当の意味は、イエス・キリストが人々の和解のためにこの世に現れたというところにあります。普段、敵対する者同士も、神の前に同じ創造されたものとして平等であり、互いに尊重しあうことが大切だ、というのがクリスマスにこめられたメッセージです。この絵本は、それを美しく具現化しているのだと感じました。ワイスガードの繊細で色彩豊かな絵にも注目です。

 

絵本

『カイとカイサのぼうけん』エルサ・ベスコフ/作・絵 まつむらゆうこ/訳 福音館書店 2016/11/10

カイとカイサのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ)
エルサ・ベスコフ
福音館書店
2016-11-09
 
 エルサ・ベスコフ(1874~1953)はスウェーデンを代表する絵本作家です。『ペレのあたらしいふく』(小野寺百合子/訳 福音館書店 1976)や、『ちいさなちいさなおばあちゃん』(石井登志子/訳 偕成社 2001)などの代表作があります。この絵本は1923年に出版されましたが、これまで日本に紹介されていなかった作品です。森の中にカイとカイサという二人の兄妹が住んでいました。ふたりは家のそばに倒れている枯れ木でいつも遊んでいました。ある日、トムテの魔法で枯れ木がドラゴンになってしまいます。そこからふたりの冒険が始まります。ほかにもトロルの王さまが出てきたりと北欧の正統派ファンタジーになっています。
 
 
児童書

 

『ニット帽の天使―プロイスラーのクリスマス物語』オトフリート・プロイスラー/作 ヘルベルト・ホルツィング/絵 吉田孝夫/訳 さ・え・ら書房 2016/9

ニット帽の天使―プロイスラーのクリスマス物語
オトフリート プロイスラー
さえら書房
2016-09
 
大どろぼうホッツェンプロッツ』(中村浩三/訳 偕成社 1966)や『クラバート』 (中村浩三/訳  偕成社 1980)などの代表作があるプロイスラーのクリスマスの聖家族(幼子イエスとその両親)にまつわる7つの物語が入っている短編集です。舞台はキリスト教、なかでもカトリックの伝統宗教の根付くボヘミアです。ちょっとふしぎな7つの物語を通して、キリスト教の大切な行事であるクリスマスの意味を改めて知る機会にもなることでしょう。小学校3,4年生くらいからがおすすめ。
 
 

『ミスターオレンジ』トゥルース・マティ/作 野坂悦子/訳 平澤朋子/絵 朔北社 2016/9/30 

ミスターオレンジ
トゥルース マティ
朔北社
2016-10
 
舞台は第二次大戦中のニューヨーク。ライナス少年は6人兄弟の3番目。長兄のアプケが志願兵として出征することを誇りに思いますが、母親はそれを喜ぶことができません。ライナスは家業の八百屋を手伝う中で、画家であるミスターオレンジに出会い、想像力の大切さと、戦争の現実に気がついていきます。多感な少年の成長を描いた作品として評価され、2014年に全米図書館協会のバチェルダー賞を授賞しました。ミスターオレンジは、オランダ生まれの画家ピエト・モンドリアン(1872~1944)というオランダを代表する抽象画家で、第二次大戦中、ヨーロッパを離れてニューヨークで晩年を過ごします。この作品は2011年にオランダ・ハーグ市立美術館で開催されるモンドリアン展に合わせて執筆依頼されたとのこと。表紙絵にはモンドリアンの遺作となった「ヴィクトリー・ブギウギ」がデザインがされています。

 

『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子/作 新潮社 2016/9/20

明るい夜に出かけて
佐藤 多佳子
新潮社
2016-09-21
 
 大学を1年休学し、両親と住む家を出て、コンビニでバイトする男子大学生の俺こと、富山。実は彼は「ジャンピング・ビーン」と「トーキング・マン」という名前(ラジオネーム)も持っているのです。そしてtwitter、ニコ生、ツイキャス、アメーバピグという現代のコミュニケーションツールや、そして実在する深夜放送「オールナイトニッポン」が登場します。そうしたSNSや深夜放送への投稿を通して緩やかにつながっていく人間模様を軽やかに描いたYA向けの作品。この作品について作者の佐藤多佳子さんご自身のブログ記事も興味深いです。→こちらこちら
 
 
 
『 ココの詩』高楼方子/作 千葉史子/絵 福音館書店 2016/10/10 

ココの詩 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2016-10-05
 
1987年にリブリオ出版から出ていた 高楼方子さんのデビュー作『ココの詩』と、同じくリブリオ出版から出ていた児童文学作品『時計坂の家』、『十一月の扉』がこの10月に福音館書店に版権を移して出版されました。『ココの詩』は、高楼さんがフィレンツェに1年4ヶ月滞在していた時に、まるで物語が降ってくるように紡いだという作品です。金色の鍵を拾い上げたことで、小さな女の子になって自由に動くことができるようになった人形のココの、ふしぎな物語です。挿絵は高楼方子の実妹の千葉史子です。
 
 
 『時計坂の家』高楼方子/作 千葉史子/絵 福音館書店 2016/10/10

時計坂の家 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2016-10-05
 
1992年にリブリオ出版から出版された作品です。夏休みにいとこのマリカに誘われて、汀舘にある祖父の家に行くことになった小6のフー子。時計塔のある坂道の途中にある古い屋敷には、不思議が満ちています。踊り場にある窓は別の世界につながっていて・・・行方不明になったという祖母の秘密に迫っていくフー子たち。少しミステリアスで幻想的な長編ファンタジーです。 こちらの作品の挿絵も千葉史子です。
 
 
『十一月の扉』高楼方子/作 福音館書店 2016/10/10

十一月の扉 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2016-10-05
 
 中学二年生の秋に父親の転勤が決まった爽子。二学期の終わりまでは転校したくないと、偶然みつけた「十一月荘」に下宿させてほしいと申し出ます。ここは今で言うシェアハウスのようなところで大家の閑さん、小学生のるみちゃんと馥子さん母娘、建築家の苑子さんとの生活が始まります。その生活の中で爽子は「ドードー森の物語」を紡ぎ始めます。登場人物と物語の世界がオーバーラップしていく構成は、ぐいぐいと引き込んでいきます。こちらは表紙絵は千葉史子ですが、中の挿絵は高楼方子ご自身のものです。
 
 
 『クマのプー 世界一のクマのお話』A.A.ミルン原案 森絵都/訳 KADOKAWA 2016/10/31

クマのプー 世界一のクマのお話
ポール・ブライト
KADOKAWA
2016-11-02
 
A・A・ミルンの 『クマのプーさん』(石井桃子/訳 岩波少年文庫)が生まれて90年を記念して、その公式続編を4人の児童文学者が書き下ろした作品です。それぞれの作家が子ども時代に愛読し、あるいは研究をしてきました。そうして生まれた秋、冬、春、夏の4つの物語。どれもミルンが乗り移って書かせたような、懐かしい『クマのプーさん』の世界が広がっています。翻訳はやはりプーさんを愛してきた森絵都さんです。
 
 
 
研究書 
 
『児童文学論』リリアン・スミス/作 石井桃子、瀬田貞二、渡辺茂男/訳 岩波現代文庫 岩波書店
 
児童文学論 (岩波現代文庫)
リリアン・H.スミス
岩波書店
2016-10-19
 
 子どもの本に関わるすべての人にとってバイブルであり続けるリリアン・スミスの『児童文学論』(1964年)が文庫版になりました。箱入りの重々しい装丁から手軽に読める形にかわって、より多くの人の手に渡ることを嬉しく思います。石井桃子、瀬田貞二、渡辺茂男という戦後の子どもの本の歴史を創って来た方々に大きな影響を与え、そうやって作られた優れた子どもの本に私たちは育てられてきました。リリアン・スミスがこの本を著したのは1953年のこと。もう古びているように言う人もいますが、この60年の間に環境は大きく変化したものの子どもの成長の姿は時代が変化しても普遍的であり、子どもと本の基本的な関係は変わらないのです。今、読み返しても新たな発見があります。もちろん、私たちは時代の変化に合わせた子どもへのサービスを考えていかなければいけませんが、なにか迷った時に立ち返る拠り所として、この本を座右の書としてほしいと思います。
 
 
『アメリカの絵本―黄金期を築いた作家たち』(連続講座〈絵本の愉しみ〉1 吉田新一/著 朝倉書店 2016/11/25
 
アメリカの絵本 ―黄金期を築いた作家たち― (連続講座〈絵本の愉しみ〉 1)
吉田 新一
朝倉書店
2016-11-25
 
 立教大学、日本女子大学でイギリス児童文学について教えてこられた吉田新一先生がまとめられた連続講座〈絵本の愉しみ〉の第一巻です。19世紀末から始まり、1930年代~50年代にかけての開花期、50年代以降の黄金期にわけて、アメリカの絵本の歴史をひも解くテキストです。特に黄金期以降のマリー・ホール・エッツ、マーガレット・ワイズブラウン、エズラ・ジャック・キーツ、バーバラ・クーニー、マーシャ・ブラウン、そしてモーリス・センダックについて詳細に解説しながら、それらの作家の作品の魅力に肉迫するあたり、とても読み応えがあります。子どもの本の黎明期にいかに図書館の児童サービスが大きな役割を果たしたかについての記述も、私たちにとっては励みになるものでした。 
 
 
その他
 
『おいで子どもたち―初めて陪餐する子どもたちへ』斎藤惇夫/文 田中雅之/写真 日本聖公会 2016/10/31
斎藤 惇夫
日本聖公会
2016-10-31
『ガンバの冒険』などの著作がある斎藤惇夫さんが、キリスト教の洗礼を受けた子どもたちに向けた詩を書かれたものが1冊の本になりました。書影は→こちら。陪餐とはキリストの最後の晩餐に倣って、パンとぶどう酒を礼拝の中でいただく儀式です。キリスト教徒(クリスチャン)は日本の人口の1%と少数派ですが、その子どもたちだけのものにしておくにはもったいないので、ここで紹介させていただきます。クリスマスは、イエス・キリストの誕生を祝う日。キリスト教が子どもを大切にすることの意味がすっと理解できることと思います。
 
 
『未来のだるまちゃんへ』かこさとし/作 文春文庫 文藝春秋 2016/12

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)
かこ さとし
文藝春秋
2016-12-01

2014年に文藝春秋からハードカバーで出版された絵本作家かこさとしさんの自伝が、文庫版になりました。表紙の絵もハードカバーの緑色の背景に大勢の絵本の登場人物に囲まれているかこさんの絵から、白地にだるまちゃんがすくっと立っているものに変わりました。また、文庫版のあとがきと、中川李枝子さんによる解説が付け加えられています。昭和20年(1945年)の敗戦が、かこさんの生き方を変え、子どもたちと寄り添う絵本作家としての歩みのスタートになったこと、戦後のセツルメント活動(詳しくは→こちら)で出会った子どもたちとの日々、絵本の創作についてなど絵本作家かこさとしの魅力が余すことなく記された1冊です。ロングセラー絵本『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店 1967)は来年出版50周年。なぜ、かこさんの絵本が子どもたちの心を捉えるか納得です。

 (作成K・J) 

限定増刷! 赤羽末吉の絵本2冊


ちひろ美術館・東京で2016年11月9日(水)から2017年1月15日(日)まで開催中の赤羽末吉・中国とモンゴルの大地」展に合わせて、長く品切れになっていた絵本2冊がこの度限定増刷されました。

君島久子さんが中国の少数部族に伝わる昔話を再話して翻訳し、それに赤羽末吉が中国国内を取材して絵を描いた美しい絵本です。この時期にしか手に入らない絵本です。所蔵していない図書館では、購入のチャンスです。また所蔵していても、出版から月日がたち、経年劣化しているのであれば、この機会に買い換えて、また子どもたちに手渡してあげて欲しいと思います。

 

『チワンのにしき―中国民話』(おはなし創作絵本21)君島久子/文 赤羽末吉/絵 ポプラ社 1977年7月第1刷 2016年11月第13刷

理想郷を錦に織り込んだおばばでしたが、織り上がったと同時に風に飛ばされて仙女のもとへ。錦を取り戻しに2人の息子たちが出かけて行きますが、それぞれ諦めてしまいます。末の息子はさまざまな困難を乗り越えて、錦を取り戻すと・・・中国の南方、ベトナムの国境付近に住むチワン族に伝わる昔話です。流れるような大胆かつ繊細な赤羽さんの絵がとても美しい1冊です。

 

『あかりの花―中国苗族民話』肖甘牛/採話 君島久子/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 1985年1月30日発行 2016年12月1日第9刷

段々畑で懸命に働くトーリンはある日ユリの花をみつけ楽しみに出かけていくようになりました。ある日、ユリの花が倒されているのを見て持ち帰り、石うすに上で育てます。十五夜の晩、トーリンのもとに美しい娘が現れます。娘と一緒に暮らし始めたトーリンは、暮らし向きが良くなると怠けるようになってしまいます。すると満月の夜金鶏鳥が現れ、娘をさらってしまうのです。このお話は、再び勤勉に仕事をするようになったトーリンのもとに娘が戻ってきるハッピーエンドです。赤羽さんは、「石うす」というものが実際にはどういうものなのか、物々交換をする市場がどのようなものだったのか、苗族の集落を訪れて取材を重ね、この絵を描いたとのことです。絵本の見返しから美しく趣向をこらしたこの作品をこれからの子どもたちにも手渡し続けて欲しいと思います。
 

(作成K・J)

2016年10月、11月の新刊から(その1)


10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの絵本いくつかを紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。クリスマスの絵本と、YA向けの本は、(その2)で紹介します。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

絵本

『おばあちゃんとバスにのって』マット・ラ・ペーニャ/作 クリスチャン・ロビンソン/絵 石津ちひろ/訳 すずき出版 2016/9/27 
おばあちゃんと バスにのって
マット デ・ラ・ペーニャ
鈴木出版
2016-10-01
 
ジェイは毎週日曜日、教会で礼拝をすませた後に、おばあちゃんと出かけるところがあります。それはスープ・キッチンと呼ばれるボランティア食堂です。このおばあちゃん、どんなことに対しても「良いところ」をさがす名人のようです。雨降りも植物には必要、スラム街でも美しいものは見つけられる、どんな人にも素晴らしいところがあると、折々に伝えてくれるのです。ボランティア活動も援助するというのではなく、そこにいる人々と時間と場所を共有するためで、とても自然体です。この絵本は2016年度のニューベリー賞(*)、そしてコールデコット賞(*)オナー賞のダブル受賞作です。
(*)ニューベリー賞:1922年よりアメリカ児童図書館協会が授与する、アメリカ合衆国における最も優れた児童文学の著者に与えられる賞
(*)コールデコット賞:1938年より同じく児童図書館協会が授与する、アメリカ合衆国におえる最も優れた絵本に与えられる賞。オナー賞はその次点作品に与えられる 
 
『シャクルトンの大漂流』ウィリアム・グリル/作 千葉茂樹/訳 岩波書店 2016/10/14 
シャクルトンの大漂流
ウィリアム・グリル
岩波書店
2016-10-15
 
1914年にイギリス帝国南極横断探検隊の隊長アーネスト・シャクルトンは、南極大陸を横断しようと隊員26名とともにエンデュアランス号に乗って出航します。しかし、南極大陸の手前で船ごと流氷の中に閉じ込められ、その後船が難破する不運に見舞われます。厳しい自然の中で、隊員たちが協力しながら苦難を乗り越え1917年に帰還するまでの大冒険を描いた作品です。色鉛筆で描いた絵は、とても繊細でありながらダイナミックで素晴らしく、2015年度のケイト・グリーナウェイ賞(*)を受賞しています。しかも作者はこの作品がデビュー作という25歳の青年です。同じ題材を扱った読物には千葉茂樹訳の『エンデュアランス号大漂流』(エリザベス・コーディー キメル/作 あすなろ書房 2000)もあります。
(*)ケイト・グリーナウェイ賞:1956年に英国図書館協会によって設立されたイギリスの絵本作家ケイト・グリーナウェイ(1846~1901)の名を冠した賞で、その年イギリスで出版された絵本のうち、最も優れた作品の画家に贈られる賞
 
 
 『わたしのそばできいていて』リサ・パップ/作 菊田まりこ/訳 WAVE出版 2016/10/20
わたしのそばできいていて
リサ・パップ
WAVE出版
2016-09-27
 
 アメリカにはライブラリー・ドッグがいる図書館があるのをご存知でしたか?字を読むのに困難を抱える子どもたちを、ライブラリー・ドッグがサポートします。この絵本の主人公、マディは字を読むのが苦手です。特に学校でクラスのみんなの前で音読をすると、クラスメートに笑われるので余計に緊張してしまうのです。そんなマディがライブラリー・ドックのボニーに出会い、ボニー相手に本を読むうちに、少しずつ自信をもって読めるようになっていきます。苦手なことを克服するために、静かに見守ってくれるボニーのような存在はとても大切なんだと感じます。
 
 
『ふたりはバレリーナ』バーバラ・マクリントック/作 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2016/10/20 
ふたりはバレリーナ
バーバラ・マクリントック
ほるぷ出版
2016-10-25
 
ないしょのともだち』(ビバリー・ドノフリオ/文 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2010)などの作品があるバーバラ・マクリントックの最新作です。2016年10月6日~11月27日まで銀座・教文館ナルニア国で原画展が行われていました。最終日にマクリントックさんのトークショーも聞いてきました。バレエを習い始めた女の子エマと、プリマバレリーナのジュリアのある一日が並行して描かれています。エマがその日、大きな劇場で見たバレエ公演のプリマがジュリアなのです。公演後、二人が出会うシーンが印象的です。バレエを習っている子どもたちにぜひ手渡してあげたい素敵な絵本です。 
 
 
『はじめてのオーケストラ』佐渡裕/原作 はたこうしろう/絵 小学館 2016/11/1 
はじめてのオーケストラ
佐渡 裕
小学館
2016-10-27
 
 こちらの絵本は世界的な指揮者・佐渡裕氏が、小学生になって初めてコンサートに行き感動を味わった我が子の体験をもとに、多くの小学生にもコンサートに足を運んでほしいと願い、書いた作品です。さまざまな楽器が響き合い、美しいハーモーニーになる様子を、はたこうしろうさんの絵が余すことなく表現しています。主人公のみーちゃんが初めてコンサートホールに行ったのはクリスマスシーズンで、演目はベートーベンの交響曲第九です。ちょうどこれからの季節におすすめできますね。佐渡裕氏の公式サイトからは、小学館の特集ページにリンクされており、インタビュー動画も見ることができます。こちら→佐渡裕オフィシャルファンサイト→「はじめてのオーケストラ
 
 
『パンタロンとケーキやさん』キャサリン・ジャクソン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2016/11/1
パンタロンとケーキやさん
キャサリン ジャクソン
好学社
2016-11-02

 1949年にイギリスで出版されたA Little Golden Bookシリーズの中の1冊として出版され、その後1951年にアメリカでも出版された絵本が日本で初めて紹介されました。翻訳はこみやゆうさん。ケーキが大好きなプードルのパンタロンが主人公。ケーキ屋さんのお手伝いがしたいのですが、ケーキ屋のベーカーさんに断られてしまいます。そんなパンタロンはベーカーさんが怪我でお休みの間、大活躍します。『あめがふるとき ちょうちょうはどこへ』(メイ・ゲアリック/文 岡部うた子/訳 1974 金の星社)や、『ちいさな島』(ゴールデン・マクドナルド/文 谷川俊太郎/訳 童話館出版 1996)の絵を描いたレナード・ワイスガードのふんわりとした素朴な絵が楽しい1冊です。 

 

『しろくまのそだてかた』うつみのりこ/作 飛鳥新社 2016/11/7

しろくまのそだてかた
うつみのりこ
飛鳥新社
2016-11-03
 
この絵本は、「子育ては大変だけど、お母さんになったときの喜びを思い出してと、ママ、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんなど、子育てに関わるすべてのみなさんに読んで欲しいと願って、2005年に神戸でミニ絵本として誕生」したとのこと。私は10cm×14.5cmのミニ絵本をまず紹介してもらっていました。それが口コミで多くの読者に広がり、10年以上の月日を経て、この度書籍化されました。この絵本は、子どものためのというよりは、お母さんに向けてのメッセージ絵本です。子育てに疲れたママたちが、ホッとできる場所を図書館でも提供できるといいですね。 

 

『かぜ』イブ・スパング・オルセン/作 ひだにれいこ/訳 亜紀書房 2016/11/7 
かぜ
イブ・スパング・オルセン
亜紀書房
2016-10-25
 
 『つきのぼうや』(やまのうちきよこ/訳 福音館書店 1975)というデンマークのロングセラー絵本の作者、イブ・スパング・オルセンが、「風」について丁寧に描いた絵本です。絵本の形をとっていますが、文字が小さく字数が多いので、ちいさなお子さんはご家庭で読んでもらったり、小学低学年のお子さんは自分で読むのにちょうどよいでしょう。「風」といっても、そよ風もあれば、温かい南風もあり、暴風もある、そんな身近な風について姉と弟が会話しながら展開していく絵本です。
 

 (作成K・J) 

『明日の平和をさがす本300』ブックガイドをぜひ座右に


幼児から多感なYA世代を対象に、手渡したい「戦争と平和」について考えるための本のガイドとして、『明日の平和をさがす本300―戦争と平和を考える 絵本からYAまで』(宇野和美/さくまゆみこ/土居安子/西山利佳/野上暁/編著 岩崎書店 2016/11/30)が、出版されました。

本の帯に「公共図書館・学校図書館・図書ボランティア必携!」という文字が踊りますが、内容を見るとそれが大げさな表現でないことがよくわかります。編集委員の5人は、子どもの本の翻訳や編集に携わったり、児童文学を研究し子どもの本の評論をされている、信頼できるプロです。それに加えて、図書館や学校図書館の司書として、書店員として子どもたちに本を手渡す仕事をしている方々、SEALD’s選書「“今”を生き抜くための102冊」選書に携わった方、安保法案に反対するママの会事務局の方など、多彩な21名が執筆者として名前を連ね、今、子どもたちに何をどのように伝えるべきかを真摯に考察し、選書していったことがわかります。

明日の平和をさがす本 戦争と平和を考える絵本からYAまで300
宇野 和美
岩崎書店
2016-11-18
 
 (アマゾンでの配本は2016年11月18日になっていますが、本の奥付の出版年は2016年11月30日です)
 
このブックガイドの特筆すべき点は、掲載されている本が2000年~2016年9月までに出版されたものであること、幼児からYA世代まで年齢に応じて手渡せる本が網羅されていること、絵本、創作文学、そしてノンフィクション、マンガとジャンルも様々であること、巻末に本の舞台となった地域の地図(世界と日本)、時代年表などの資料も充実していることです。
また、各紹介文は1冊に1ページで、読者対象年齢、時代背景、キーワードなどがひと目でわかる表示になっており、使いやすい作りになっています。
 
もうひとつの特徴は、章ごとのコラム記事です。ここでは過去に出版された戦争と平和をテーマにした本の評論や、2000年以前に出版された本で、これからもずっと手渡し続けていきたい作品の紹介などが書かれています。
 
「はじめに」で、野上暁氏が
“日本は、1945年8月15日に、アメリカやイギリスなどの連合国を敵に回した戦争に負けて以来、一度も戦争をしていません。310万人ともいわれる、尊い犠牲者を出した反省から、憲法で戦争をしないと決めたからです。その後、世界の国々と友好関係を築き、平和が続いてきたことで経済も発展し、戦争の荒廃から立ち直し豊かな暮らしを実現できました。
 ところが、それから70年以上もたつと、戦争の悲惨な記憶がうすれ、近隣の国々を侵略したことへの反省もなく、憲法の精神をないがしろにして、戦争ができる国に変えようとする力が強まってきています。世界の各地で、いまも戦争や紛争が起こっていますから、いつまた日本がそれに関わらないとも限りません。
 子どもの本に関わる私たちは、将来にわたって戦争の悲劇を子どもたちに味わわせることを断じて避けたいと願います。”(p3)
と、記しておられます。
 
 私たちの平和な暮らしは当たり前のものではなく、先の戦争をこえて獲得したものであることを痛感します。そして私たちは、子どもたちに平和な世の中をも未来永劫手渡していくんだという決意をもって、彼らが本を通して自分たちとは違う文化があることを理解し、また人と人が信頼をし合うことの大切さを学び、さらに、現在、困難な状況にある人々へ共感の気持ちを抱けるよう事実も知らせていけるよう、本を選書し、手渡していく必要があります。このブックガイドは、その際の道しるべになると思います。

第1章 戦争ってなんだろう?
第2章 生きるための冒険
第3章 声なきものたちの戦争
第4章 子どもたちの体験
第5章 絵のちから 音楽のきぼう
第6章 伝える人 語りつぐ意志
第7章 勇気ある決断 未来への思い
第8章 平和をつくるために
(作成K・J) 

2016年9月、10月の新刊から(11/2追記あり)


  9月、10月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本いくつかを紹介します。一部、これまでに見落としていた8月の作品も含まれています。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。YA向けの本は、読み終わるのに時間がかかっています。11月のまとめて紹介します。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

絵本

『プーさんとであった日』リンジー・マティック/文 ソフィー・ブラッコール/絵 山口文生/訳 評論社 2016/8/20

プーさんと であった日: 世界で いちばん ゆうめいな クマの ほんとうに あった お話 (児童図書館・絵本の部屋)
リンジー マティック
評論社
2016-08-27

 

今年コールデコット賞を受賞した作品です。A・A・ミルンの書いた『くまのプーさん』(石井桃子/訳 岩波書店)を知らない人はいないと思いますが、そのプーさんにモデルになったクマがいたのです。カナダ人獣医師が1914年夏に第一次世界大戦の従軍医師としてイギリスに渡った時に連れて行った子グマが、ロンドン動物園に預けられました。そのクマは獣医師の出身地ウィニペグにちなんでウィニーと名付けられます。そして戦争の終わった1925年、ミルンの息子クリストファー・ロビンは動物園でウィニーに会います。そこで、クリストファー・ロビンは自分のクマのぬいぐるみに「ウィニー・ザ・プー」と名付けるのでした。そんな事実をもとに、獣医師の孫にあたるリンジー・マティックがこの絵本の文章を書きました。巻末には写真資料もあり、サブタイトルに「世界でいちばんゆうめいなクマのほんとうにあったお話」とあるように、ノンフィクションであることがわかります。

 

『お月さまのこよみ絵本-旧暦で行事をたのしむ-』千葉望/文 阿部伸二/絵 理論社 2016/8

お月さまのこよみ絵本
千葉 望
理論社
2016-08-20
 
 日本古来の年中行事、例えばお正月やお月見、お盆などは、旧暦(太陰暦)で行われてきました。新年は必ず新月で月がないところから一年が始まります。お盆は旧暦の7月15日に行われ必ず満月になります。晴れた夜に提灯がいらないほどの明るさに照らされて夜通し踊ったことでしょう。太陽暦の中に無理やり年中行事を当てはめるために中秋の名月が毎年変わったりしていることなどもわかります。この絵本を通して、月の満ち欠けと昔の人が営んできた暮らしに思いを馳せて欲しいと思います。併せて『月の満ちかけ絵本』(大枝四郎/文 佐藤みき/絵 あすなろ書房 2012)や、『夜空をみあげよう』(松村由利子/文 ジョン・シェリー/絵 福音館書店)も紹介するとよいでしょう。 

 

 『おばあちゃんのあかいマント』ローレン・カスティーヨ/作 たがきょうこ/訳 ほるぷ出版 2016/8/25

おばあちゃんのあかいマント (海外秀作絵本)
ローレン・カスティーヨ
ほるぷ出版
2016-08-27

おばあちゃんは都会に引っ越していきました。まごのぼくが初めておばあちゃんのところへ泊まりに行きます。都会の雑踏にひるんでいるぼくにおばあちゃんはあかいマントを編んでくれます。マントを羽織ると、なんだか勇気が湧いてきて、おばあちゃんの大好きな都会の生活をあちこち覗いてまわることができました。おばあちゃんにとって、たくさんの刺激がある都会の暮らしが向いているんだなあと、その思いを共有して成長していく姿を、秋らしい色彩とともに描いた絵本です。コルデコット賞オナーブックに選ばれている絵本です。 

  

 『ひまなこなべ アイヌのむかしばなし』萱野茂/文 どいかや/絵 あすなろ書房 2016/8/30

ひまなこなべ アイヌのむかしばなし
萱野 茂
あすなろ書房
2016-08-31

 アイヌのむかしばなしが絵本になりました。アイヌに伝わるイオマンテ(熊送り)の儀式が題材になっています。カムイ(神)は、熊の姿になって人々のもとにやってきて、肉や毛皮をもたらします。それに感謝を捧げるために人々は歌って、踊り、ユカラとよばれる物語を語ります。アイヌの人々にとって自分たちの生活を豊かにしてくれる動物たち、とりわけ熊は信仰の対象であったのです。またこのおはなしには、普段家の人に丁寧に使ってもらっている小さなおなべが、神様となって出てきます。身の回りのものすべてに神が宿ると信じて大切に扱ったアイヌの人々の暮らしが昔話になっています。

 

『りゅうおうさまのたからもの』イチンノロブ・ガンバートル/文 バーサンスレン・ボロルマー/絵 津田紀子/訳 福音館書店 2016/9/15

りゅうおうさまのたからもの (世界傑作絵本シリーズ)
イチンノロブ・ガンバートル
福音館書店
2016-09-14

鳥に捕まえられたちいさな川魚を助けてあげた男の子が、そのお礼に竜王のもとに連れて行かれるところからはじまるモンゴルの昔話です。草原地帯であるモンゴルにこれほど豊かな水に関する昔話があると知って驚きました。それだけ草原での放牧に水の存在が大切だということでしょう。ガンバートル氏とボロルマーさんはご夫妻で、ともにモンゴル文化芸術大学美術学部卒。ウランバートル大学大学院修士課程修了の翻訳者津田さんとは、昨年出版された『トヤのひっこし』(福音館書店)という作品でも仕事をしています。

 

『まどべにならんだ五つのおもちゃ』ケビン・ヘンクス/作・絵 松井るり子/訳 徳間書店 2016/9/30

まどべに ならんだ 五つの おもちゃ (児童書)
ケビン ヘンクス
徳間書店
2016-09-10

 まどべに飾られた小さなお人形たちがなんとも愛らしい絵本です。なにか特別なことが起きるわけでもなく、淡々とまどべの人形たちは窓の外で起きることをじーっとみつめています。このまどべに最後に仲間入りしたのは、ねこの形のマトリョーシカ人形。さてこの人形はなにをまっているのでしょう。こちらもコールデコット賞オナーブックに選ばれた作品です。

 

『あくたれラルフのハロウィン』ジャック・ガントス/作 ニコール・ルベール/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2016/9/30

あくたれラルフのハロウィン
ジャック・ガントス
PHP研究所
2016-09-17

あくたれラルフ』(石井桃子/訳 童話館出版 1994)の続編として、こみやゆう氏が翻訳した『あくたれラルフのたんじょうび』(2010)、『あくたれラルフのクリスマス』(2013)(いずれもPHP研究所)の続編として、この秋のハロウィンに向けて出版された1冊です。お友達からハロウィンのパーティーに招待されたセイラは「あなたがいちばんすきなものにへんそうしてきてね」という呼びかけにラルフになって出かけます。ラルフはその逆にセイラに変装します。さて、パーティではセイラになったラルフがいつもの通りにいたずら三昧。セイラはどうなってしまうのでしょう。ちょっぴりハラハラドキドキする絵本です。

 

『七五三だよ 一・ニ・三』長野ヒデ子/作・絵 佼成出版社 2016/10/30

七五三だよ 一・二・三
長野ヒデ子
佼成出版社
2016-10-10
 
長野ヒデ子さんによる七五三の絵本が出来ました。どうして女の子の三才と七才、男の子五才でお祝いをするのか、そのいわれを子どもにもわかりやすく伝えてくれます。この絵本では姉弟妹がちょうど七五三の年齢で、祖父母もいっしょにお参りをしてお祝いをします。子どもの成長を願う七五三の行事がこれからも長く続いて欲しいと思いました。
 
その他
 
『大人に贈る子どもの文学』猪熊葉子/作 岩波書店 2016/8/31
大人に贈る子どもの文学
猪熊 葉子
岩波書店
2016-08-31
 
今年88歳を迎えられたイギリス児童文学者であり、翻訳家でもある猪熊葉子さんが、どうしても書き残しておきたいと書かれた本が出版されました。猪熊さんの子ども時代は裕福な家庭であったにもかかわらず、母親との確執があって決して幸せではなかったとのことですが、そのような子ども時代に出会った本が猪熊さんを支えたと「おわりに」に書かれています。本の世界で出会った主人公たちとともに困難を乗り越えることによって、自分の人生を肯定できる力になったというのです。そして「自分の人生にイエスといえる幸福」を、次の世代にも手渡してほしいと願っていらっしゃいます。子どもたちに本を手渡す私たちにとって、背筋がしゃんとなるメッセージです。

(作成K・J)

2016年8月、9月の新刊から


 8月、9月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本いくつかを紹介します。一部、これまでに見落としていた7月以前の作品も含まれています。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

絵本 

『ジャック船長とちびっこかいぞく』ピーター・ベントリー/文 ヘレン・オクセンバリー/絵 やましたはるお/訳 BL出版 2016/6/20

ジャック船長とちびっこかいぞく
ピーター ベントリー
BL出版
2016-06

 6月に出版された絵本です。ジャックは、ちいさな弟や友達と砂浜で砂の船を作ります。「われら、ジャックとザックとカスパー3人ぐみ。おそれをしらない海の勇者だ」と、たちまち砂の船はかいぞく船に。男の子ならではの勇ましい海の冒険が始まります。彼らがみつけた宝物とは・・・。この絵本をみつけたのは、9月になってから。夏休み前に紹介したかった1冊です。 

 

 『おおきくなったら』チェコのわらべうた 内田莉莎子/訳 ヨセフ・ラダ/絵 福音館書店   2016/8/25

 内田莉莎子の翻訳で、ヨセフ・ラダの絵といえば『きつねものがたり』(ヨセフ・ラダ/作 福音館書店 1966)を思い出します。チェコのわらべうたをいくつか再話され、収録されています。ひとつひとつがリズミカルで、声に出して読むと味わい深いものがあります。チェコでは1954年に出版されましたが、日本では1979年に月刊「こどものとも年少版」で出版され1982年にハードカバーになっていました。この8月に久しぶりに増刷されました。

 

『ぐやんよやん』長谷川摂子/文 ながさわまさこ/絵 福音館書店  2016/8/25

ぐやん よやん (幼児絵本シリーズ)
長谷川 摂子
福音館書店
2016-08-24

2011年に亡くなられた長谷川摂子さんの月刊「こどものとも年少版」1999年6月号の作品です。こちらはこの度、はじめてハードカバーになりました。ながさわさんの音を表現した絵が不思議な世界を創り出しています。月刊誌の折込付録には長谷川摂子さんが「この絵本は読むというより、リズムと抑揚を自在につけて、思い切って声を出し、歌って楽しんでほしいのです(中略)子どもといっしょに身体を右に左に揺すぶって、心ゆくまでうねり、のたうつ感覚を味わってください」と書かれていたあったそうです。そんな風に親子で楽しんでほしい絵本です。

 

 『おいしいかぞえうた』岸田衿子/文 古矢一穂/絵 福音館書店 2016/8/25

 「こどものとも年少版」2009年12月号のハードカバー版です。子どもたちが大好きな食べ物や飲み物が10登場します。お菓子だけでなく、「くじゃがも にこにこ たべる」、「くさいや はっぱもたべる」といろいろなものが出てきます。それに合わせて『きいちごだより』(岸田衿子/文 福音館書店)などで植物を繊細に描く古矢さんの、それとは違った味わい深い絵も楽しめます。

 

 ドライバーマイルズ』ジョン・バーミンガム/作 谷川俊太郎/絵 BL出版 2016/8/25

ジョン バーニンガム
BL出版
2016-08

ジョン・バーニンガムの作品を谷川俊太郎さんが翻訳した新しい絵本です。マイルズというのは、アリスとノーマン親子が飼っている犬です。この犬がとても厄介者なのです。散歩は嫌い、ドッグフードも嫌い、雨も嫌い・・・好きなのはドライブに連れて行ってもらうこと。ある日、隣の家のハディがマイルズ用の車を作り、マイルズも運転を覚えます。犬が運転するの?と、びっくりな展開ですが、バーミンガムの絵と谷川さんの文章がマッチしていて、すんなり物語の中に入っていくことができました。

 

『はこぶ』佐々木幹郎/文 いわむらかずお/絵 復刊ドットコム 2016/8/8 

はこぶ (五感のえほん10)
佐々木 幹郎
復刊ドットコム
2016-08-18

1983年に、谷川俊太郎と小松左京が監修し、訪問販売のみで発売されたブリタニカ絵本館ピコモス( 日本ブリタニカ社刊 全25巻)のうち、生活に根付く五感を扱う絵本をセレクトし、復刊されたシリーズ“五感のえほん”全10巻の最後の1冊です。「はこぶ」というと、物流だけに目がいきますが、風が運ぶもの、水が運ぶもの、そして血液によって運ばれるウィルスも、目には見えない心を相手に届けることばも「はこぶ」ものなんだと気づかせてくれる絵本です。『14ひきシリーズ』などを出版する前のいわむらかずおさんのごく初期の作品でもあり、絵にも注目です。 

 

 『きょうはそらにまるいつき』荒井良二/作 偕成社 2016/9 

きょうはそらにまるいつき
荒井 良二
偕成社
2016-09-09

 太陽の光に比べて、柔らかく優しい光を放つ月。それぞれの場所で懸命に生きるひとりひとりの上に注がれる優しい光は、古の時代から人々を慰めてきたことでしょう。この絵本を手に取る人は、まさにその柔らかい光に包まれて、硬くなった心もほどけていくことでしょう。「みんながそらをみています きょうはそらにまるいつき ごほうびのようなおつきさま」。『あさになったのでまどをあけますよ』に続く、懸命に生きる人へ贈られるエールです。

 

 『絵巻じたて ひろがるえほん かわ』加古里子/作 福音館書店 2016/9/10

 1966年に発行されたこどものとも絵本『かわ』は、川の源流から始まって、田畑を潤し、工場を動かし、ものを運び、その周辺の人々の生活をささえて海へ注ぎ込むところまでを丁寧に描いた秀作でした。教育現場などで、この絵本を複数冊購入した上で、解体して絵巻にして子どもたちに見せているという声を聞いた編集部が、絵巻絵本の形で出そうと苦心をし、この度出版したものです。広げると全長7メートル。私たちの生活を潤してくれる川の存在を再発見できるのではないでしょうか。片面は川の水色以外はモノトーンで、こちらにテキストが入っています。片面はカラーで文字がありません。絵巻になったので最終ページの水平線は地球が丸いということがよくわかります。図書館では箱ごと装備するのか、貸出には検討が必要かもしれませんが、学校図書館などでは授業にも使えるのではないでしょうか。 

 

『ぐるりヨーロッパ街歩き たびネコさん』ケイト・バンクス/作 ローレン・カスティーヨ/絵 住吉千夏子/訳 きじとら出版 2016/9/30 

たびネコさん ~ぐるりヨーロッパ街歩き~
ケイト・バンクス
きじとら出版
2016-09-05
 
 前回に続いて、きじとら出版からの新刊を紹介します。こちらの作品は第22回国際翻訳絵本大賞(英語部門)受賞作品です。家族の旅にくっついていくネコ。ローマを出発して、マルセイユ、バルセロナ、パリ、ロンドン、アムステルダム、ミュンヘン、そしてヴェネツィアと、その都市ごとの名所を訪れます。ネコの姿を追いかけながら、ヨーロッパをぐるりと巡ることが出来る絵本です。巻末に各地の名所の解説もついています。

 

『とうだい』斉藤倫/文 小池アミイゴ/絵 福音館書店 2016/9/15

とうだい (日本傑作絵本シリーズ)
斉藤 倫
福音館書店
2016-09-14
 
福音館書店から読み物『どろぼうのどろぼん』や『せなか町から、ずっと』を発表されている詩人の斉藤倫さんの初の絵本です。小さな灯台はいつも同じ場所に立って海を照らしています。沖をいく船や、渡り鳥を見ていて、自分が動けないことを情けなく思うのですが、変わらず海を照らし続ける灯台があるからこそ、嵐の夜に船は港に戻ることができ、渡り鳥も戻ってくることができると知り、自分の役割に誇りを持つのです。淡々と綴られていることばに、温かいまなざしを感じます。
 
 
『ぱーおーぽのうた』きくちちき/作 佼成出版社 2016/9/30
 
ぱーおーぽのうた
きくちちき
佼成出版社
2016-09-20
 
ブラティスラヴァ世界絵本原画展・金のりんご賞受賞作家きくちちきさんの最新作です。この絵本の原画展が、杉並区高円寺にあるギャラリーえほんやるすばんするかいしゃで開催されていると聞き、行ってきました。この絵本は制作も、ブックデザインもきくちさんご本人とのこと。原画は黒一色の線画。それをPCに取り込んでデジタルで彩色したとのことでした。小さなぞうがのっちのっち歩き始めると、大きなぞうも、ほかの動物たちもいっしょに歩き出します。オノマトペで表現されたことばもリズミカル。絵にも躍動感があふれ、読んでいるうちに元気になってくる、そんな絵本です。(原画展の会期は10月4日まで)
 
 
児童書
 

 『やぎと少年』I・B・シンガー/作 モーリス・センダック/絵 工藤幸雄/訳 岩波書店 2016/8/4(第9刷)

やぎと少年 (岩波の愛蔵版)
I.B.シンガー
岩波書店
1979-11-26
 
ノーベル文学賞作家によるユダヤのお話集です。7篇のお話は、人間の持つ業を軽やかに笑い飛ばすような視点で書かれており、面白いものばかりです。1979年に日本で出版された本です。しばらく手に入らなかった作品がこの度、増刷されました。モーリス・センダックの繊細な絵も魅力的です。所蔵していない館はぜひこの機会に購入するとよいでしょう。

 

『ちいさな曲芸師バーナビー』バーバラ・クーニー/再話・絵 末盛千枝子/訳 現代企画室 2016/8/20

ちいさな曲芸師 バーナビー フランスに伝わるお話 (末盛千枝子ブックス)
バーバラ・クーニー
現代企画室
2016-08-06
 
 こちらは2006年にすえもりブックスから出版されていたものの復刊です。この絵本の題材になった「聖母子マリアの曲芸師」は、フランスで何百年もの間語り継がれ、オペラの題材や歌になっている伝説なのだそうです。コルデコット賞作家のバーバラ・クーニーは、パリへ取材に出かけ、700年以上前から保存されている写本を手にし、フランス中を旅をしてこの絵本のためにスケッチをしたそうです。絵本の形をとっていますが、47ページあり、児童書と分類しました。自分で読める子どもたちももちろんですが、幼い子どもたちにも読んで聞かせてあげたいおはなしです。

 

ノンフィクション

『こどものとうひょう おとなのせんきょ』かこさとし 復刊ドットコム  2016/8/22

 1983年に出版された「かこさとし◆しゃかいの本」が、この度復刊されました。民主主義=多数決と思い込みがちな私たちですが、かこさんは、「この本は、少数でもすぐれた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な「民主主義の真髄」をとりもどしたいという願いでかいたものです。」と、あとがきに記しています。少数者の意見が踏みにじられていく今の社会を見ていると、余計にかこさんのことばが心に響きます。子どもたちにわかりやすい例とことばで説く優れた社会教育の1冊です。

(作成K・J)

東京子ども図書館から『ブックトークのきほん―21の事例つき』が出版されました


東京子ども図書館から『ブックトークの基本―21の事例つき』が出版されました。

近年ブックトークは、子どもたちに本を手渡す方法として、学校や公共図書館でさかんに行われるようになってきました。

すでに子どもたちの前で実践している方、これから取組みたいなと思っている方も多いのではないでしょうか。

この本では、「ブックトークの意義とその効果的方法」「ブックトークの歴史と実践のためのアドバイス」の2つの記事と、21の実践事例が掲載されていますので、

基本とおさえると同時に、ブックトークから広がる世界をたっぷり味わうことができます。ぜひ参考にしてみてください。

http://www.tcl.or.jp/pdf/invite/invite292.pdf (東京子ども図書館のホームページより

(作成T・I)

 

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オバマ大統領のスピーチが本になりました


2016年5月27日(金)に広島平和記念公園で語られたオバマ大統領のスピーチが、一冊の本になりポプラ社から出版されました。7月20日に出版されたこの本は、わずか1週間で第2刷になっています。

『オバマ大統領がヒロシマを訪れた日』広島テレビ放送/編 ポプラ社 2016/7/20

オバマ大統領がヒロシマを訪れた日[DVD付]
広島テレビ放送
ポプラ社
2016-07-20
 
 
 
 
歴史的にも大きな意味を持つ、現役のアメリカ大統領の訪問と、そこで語られた演説を記録し、後世に伝えていくためにと、広島テレビ放送が書籍化し、その映像のDVDとともに、こんなに早くに出版に漕ぎ着けられたということには、戦後71年が経ち、オバマ大統領が演説でも述べていたように「Someday the voice of the hibakusha will no longer be with us to bear witness. But the memory of August 6th,1945 must never fade. いつか、被爆者の声を聞けなく日がきます。しかし、1945年8月6日の朝の記憶を決して風化させてはなりません。」、つまり記録し、記憶に残すことの重要性の表れでしょう。 
オバマ大統領の演説を全文翻訳されたのは、広島市で一人出版社である「きじとら出版」の代表、小島明子さんです。小島さんは、オバマ大統領が若い世代に日本語で語りかけるならば、どのような言葉を選ぶだろうかと想像しながら、子どもたちに理解できる翻訳を心がけたとのことです。左ページに英語、右ページに日本語の対訳になっています。
 
また、小学校2年生の時に被爆した森重昭さんの手記も掲載されています。この方は、その後の生涯をかけて被爆者について調査を続けられました。とくに被爆して亡くなったアメリカ兵捕虜について調査をすすめ、ホワイトハウスにその事実を伝えてこられました。オバマ大統領の広島訪問の際に森さんを抱き寄せる姿は、ニュースを見た人々に感銘を与えました。
 
また外交ジャーナリストの手島龍一氏による解説も掲載されています。こちらは、テロリズムが横行し、また自国の利益だけを追求するナショナリズムの考え方が台頭している現在、このオバマ大統領のスピーチの持つ意味をわかりやすく解説してくれています。

ぜひ、小学校高学年からYA世代、また広く全ての年代の方に読んでいただきたい本として、ここで紹介いたします。

 

2016年6月、7月の新刊から


 6月、7月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本いくつかを紹介します。また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

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絵本

『みちくさしようよ!』はたこうしろう/作 奥山英治/作 ほるぷ出版 2016/6/24

はた こうしろう”
ほるぷ出版
2016-06-24
 
 2013年7月刊『むしとりにいこうよ!』(はたこうしろう/作)、2014年10月刊『ふゆのむしとり?!』(はたこうしろう/奥山英治共著)、2015年7月刊『いそあそびしようよ!』(はたこうしろう/奥山英治共著)に続く4冊目。おにいちゃんとの学校の帰り道。ほんの少しだけみちくさ、それは小さな冒険です。通学路の脇の畑で蝶の幼虫をみつけたり、桑の実を味わってみたり、アリの行列に驚嘆してみたり、神社の境内では葉っぱでひこうきを飛ばしたり・・・身近な自然の中に「!」をみつける目の大切さ、「?」と思う心の大切さを教えてくれます。ポケモンGOもいいけれど、身近な場所でちいさな発見をGet!できるといいですね。

 

『かぁかぁ もうもう』丹治匠/作 こぐま社 2016/6/24 

かぁかぁ もうもう
丹治 匠
こぐま社
2016-06-24
 
からすとうしが鳴き声自慢。お互いに自分のほうが上だといばってるうちは、どんどん大声になってとうとう喧嘩腰に。でもお互いの美しい声に耳を澄ますと・・・ことばは少ないけれど、鳴きわけしながら(!?)テンポよく、元気に読んであげたい1冊。最後はホッとして笑顔になれるおはなしです。

 

『あおのじかん』イザベル・シムレール/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店 2016/6/28  

あおのじかん
イザベル・シムレール
岩波書店
2016-06-29
 
 一口に「あお」色といっても、実に多様だということを教えてくれる美しい絵本です。「おひさまがしずみ よるが やってくるまでの ひととき あたりは あおい いろに そまる―それが あおの じかん」。夜の闇が迫って来るまでの世界各地、山や湖、草原、海・・・いろいろな場所で息づく生き物たちを詩のように味わい深く、繊細な色彩と線で描き出しています。表紙見返しには32色の「あお」色が・・・「ふじいろ」、「ラベンダーいろ」、「あいいろ」はなんとなくわかりますが、「こなゆきいろ」「みずたまりいろ」「ふかいうみのいろ」など、初めて出会う「あお」色に、想像力をかきたてられます。
 
 
『セラフィナせんちょうになる』ロラン・ド・ブリュノフ/作 石津ちひろ/訳 BL出版 2016/6

ロラン・ド ブリュノフ
BL出版
2016-06

 とても洒落た色使いだと思ったらフランスの『ぞうのババール』の作者、ジャン・ド・ブリュノフの長男の作品です。ロランは、早世した父親のあとを継いで、ババールの作画を手がけていました。今回の作品は、昨年7月に出版された『キリンのセラフィナ』の続編です。1作目では夏休みにおばあちゃんのところへ出かけて行き、ともだちとおばあちゃんのためにケーキを焼こうとしていろんな失敗をしてしまうお話でしたが、今度はおばあちゃんちからヨットに乗ってともだちと一緒に家に帰っていく設定です。船長はセラフィナ。順調に航海していたと思ったら、いろんなハプニングが次々に起こって最後までドキドキしてしまいます。でも最後はホッと安心できる、そんなお話です。 

 

 『こうさぎとほしのどうくつ』わたりむつこ/作 でくねいく/絵 のら書店 2016/7

27863438_1こうさぎとほしのどうくつ [大型本]

わたり むつこ
のら書店
2016-07
 
わたりむつこさんの文章に出久根育さんが絵を描いた 『もりのおとぶくろ』(2010年4月刊)、そして『こうさぎと4ほんのマフラー』(2013年12月刊)に続く3冊目の絵本です。おばあちゃん思いのやさしい4ひきのうさぎのきょうだい。ともだちに誘われて、森の奥にあるどうくつ探検に出かけます。明かりを落として真っ暗になったとき、そこに見えたのは!・・・夏休みにちょうど読んであげたい、素敵な作品です。  
 

 『日本の川 あらかわ・すみだがわ』村松昭/作 偕成社 2016/7/7

 東京都の東部を流れる荒川そして隅田川。その源流から東京湾へ流れ込むまでを鳥瞰図で描きながら、沿岸の地勢の様子や名所などを案内してくれる作品です。この「日本の川」シリーズは、2008年1月発行の『たまがわ』にはじまり、『ちくごがわ』、『ちくまがわ・しなのがわ』、『よしのがわ』、『いしかりがわ』、『よどがわ』と続き、この本が7冊目となります。今回、この絵本を手に、Google MapとGoogle Earthで源流から東京湾まで辿ってみました。(本当は実地へ行って源流から歩いてみたいのですが・・・)そうすると、この絵本が正確であるだけでなく、子どもたちが興味を持つようなトピックスを取り上げていることがよくわかります。 

 
『なんでもないなつの日 「夏の夕ぐれ」』ウォルター・デ・ラ・メア/詩 カロリーナ・ラベイ/絵 海後礼子/訳 岩崎書店 2016/7/8
 
なんでもない なつの日 「夏の夕ぐれ」
ウォルター・デ・ラ・メア
岩崎書店
2016-07-08
 
 イギリスの詩人で児童文学作家、怪奇小説家でも知られているウォルター・デ・ラ・メアの短い詩が美しい絵本になりました。夏の太陽が傾き、夕日色にそまる農場の様子、家族は屋外で食卓を囲み、家畜たちもそれぞれに餌を食む・・・穏やかで静かなひとときを、心に残る色彩で描いてくれました。『ハロウィーンの星めぐり「夜に飛ぶものたち」』、『ホワイトクリスマス「雪」』に続くコンビの絵本です。 

 

『船を見にいく』アントニオ・コック/作 ルーカ・カインミ/絵 なかのじゅんこ/訳 きじとら出版 2016/7/11

船を見にいく
アントニオ・コック
きじとら出版
2016-07-11

 力のある海外の作品を精力的に出版している一人出版社きじとら出版の最新刊です。大型客船を造っている造船所へ、毎晩見に行く少年の目を通して、完成に向けて変化していく大型船の様子と、そこで働く人々の息吹を伝えてくれます。この絵本は、いたばしボローニャ子ども絵本館主催の第22回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)受賞作品です。

 

 『えのでんタンコロ』倉部今日子/作 偕成社 2016/7/14

えのでん タンコロ
倉部 今日子
偕成社
2016-07-14

鎌倉を訪れたことのある人は一度は乗ったことのある「江ノ電」。この絵本では、孫のしょうちゃんと一緒に江ノ電に乗っていたおじいちゃんが、子どもの頃に江ノ電で活躍していた1両編成の100形電車「タンコロ」の思い出を語り始めます。昭和30年代の沿線の様子が描かれ、絵本でタイムスリップできてしまいます。作者は、鎌倉、江ノ電沿線にお住まいなんだとか。電車好きな子どもにも、昔を懐かしむ大人にもおすすめの1冊です。
 

児童書

 『モンスーンの贈りもの』ミタリ・バーキンス/作 永瀬比奈/訳 今井ちひろ/挿画 鈴木出版 2016/6/24

 アメリカ、バークレーに住む15歳の高校生のジャスミンは、夏休みの間、家族とともにインド・ムンバイに滞在することになります。目的は、社会運動家である母親が、ムンバイにある孤児院に妊婦さん向けのクリニックを立ち上げるのを、手伝うためでした。カースト制の考え方が色濃く残り、貧しい女性の生き方が限定されがちなインドという異文化に身を置く中で、自分をみつめ、そこで自分がどのように人の役に立てるのか、懸命に考えるジャスミンの姿はとても力強くて爽やかです。また、高校生が起業して自分で必要なもののためにお金を稼ぐ姿や、貧しい人でも起業できるようにする金利0のリボルビング・ローンの活用など、センチメンタルなだけでではない物語の展開は、現実を生きる若い世代の共感を呼ぶのではないでしょうか。

 

『アウシュヴィッツの図書係』アントニオ・G・イトゥルベ/著 小原京子/訳 集英社 2016/7/5 

アウシュヴィッツの図書係
アントニオ G イトゥルベ
集英社
2016-07-05

 人権剥奪の象徴のようなアウシュヴィッツ・ユダヤ人強制収容所の中に子どもたちを集めた学校があり、またその中に図書館があったなんて驚きです。戦後、生きて収容所を出ることができた図書係の少女に取材して書かれた作品です。本を持っているということが見つかれば射殺されかねないという過酷な環境の中で、8冊の「本」(どれもボロボロであったにもかかわらず)と、6冊の「生きた本」(先生たちが口述して伝える物語など)が、そこで生きる人々の希望の光となったというのです。「ディタは黙ったまま、今までに何本のマッチに火を点けてきただろうと思いめぐらした。(中略)ときには真っ暗闇のひどく辛い状況の中でも、本を開き、その世界に入り込むと灯りが灯った。彼女のちいさな図書館はマッチ箱だ。」(p312)主人公の少女ディタは、14歳。子ども時代に「本」の世界の持つ豊かさに出会っていたので、図書係という任務をやりとげることができたのです。ページを開くとびっしりと書かれた文字にひるみ、また強制収容所の酷い状況に読んでいて戦慄を覚えるのですが、ひたむきなディタの姿に希望を見出し、一気に読む進めることが出来ました。

 

 『もりモリさまの森』田島征三/作 さとうなおゆき/絵 理論社 2016/7

もりモリさまの森
田島 征三
理論社
2016-07

『やまからにげてきた・ゴミをぽいぽい』(童心社 1993)や、『たすけて』(宮入芳雄、さとうあきら/写真 童心社 1995)などの絵本で、環境問題について子ども達に投げかけてきた田島征三さんの初の童話です。理論社の編集者さんから、ぜひ読んでほしいとご案内をいただきました。「作者が20年かけて書き上げた初めての童話、人間の暮らしや行動をケモノの視点から見つめた視点が新鮮な作品」のとのことです。なお、田島征三さんのトーク&サイン会が8月30日(火)19:30~ジュンク堂池袋本店で、刊行記念講演会が8月31日(水)14:00~銀座・教文館ナルニア国ナルニアホールにて開催されます。

  

ノンフィクション

『宇宙人っているの?』長沼毅/著 吉田尚令/絵 金の星社 2016/6/21 

宇宙人っているの?
長沼 毅
金の星社
2016-06-21

 「ひとつの銀河は、およそ2000おく個の星でできているんだよ。宇宙には、その銀河が1000おく個いじょうあるんだ。」というプロローグから、おとうさんと子どもたちの会話が始まります。地球の環境から始まって太陽系、そしてその外へと次第に目線を広げながら、宇宙に存在する可能性がある生命体について、「この星に、もし宇宙人がいるとしたら、どんなすがたをしているだろう?」と、想像が広がっていきます。著者の長沼毅氏は広島大学大学院生物圏科学研究科の教授で、専門は深海生物学、微生物生態学、系統地理学です。その知識に裏付けられた想像上の宇宙生命体は、宇宙の広がりに興味を持つ子ども達に新鮮に映ることでしょう。50ページほどの絵本になっているので、低学年にもおすすめできそうです。

 

 その他

『あたらしい憲法草案のはなし』自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合 太郎次郎社エディタス 2016/6/22

あたらしい憲法草案のはなし
自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合
太郎次郎社エディタス
2016-07-02
 
2001年に童話屋から復刻出版された『あたらしい憲法のはなし』(童話屋編集部 2001)と比較しながら読めるように、装丁などを似せて出版された冊子です。今年から18歳選挙も始まり、参院選では改憲を肯定的に進めようとしている勢力が3分の2を超え、日本国憲法をこれからどうしていくのか、考えていく時期に入ってきました。改憲への考え方も、各党さまざまです。賛成するにしても、反対するにしても、今の憲法と、改正案とをしっかり比較研究することが大切です。とくにこれからこの国を担う若い世代に、関心をもってほしいと思います。『あたらしい憲法のはなし』といっしょに並べて、若い世代にぜひ手に取って欲しいなと思います。

 

『ねないこはわたし』せなけいこ/著 文藝春秋 2016/7/13

せな けいこ
文藝春秋
2016-07-13

 累計200万部と言われている『ねないこだれだ』(福音館書店 1969)の作者、せなけいこさんのエッセイです。『ねないこだれだ』と『にんじん』、『もじゃもじゃ』、『いやだいやだ』4冊でデビューしたせなさんは当時37才、2児のお母さん。『ねないこだれだ』は子どもを寝かしつけるしつけの絵本と誤解する向きもあるが、実はそうではないという告白からはじまるこの本には、せなワールドそのものが表現されています。また今まで公開されてこなかったデビュー作の原画もふんだんに紹介されています。小さい時にだれもが一度は読んでもらったこの絵本、最後はおばけになって飛んでいっちゃうというのでトラウマになったという話も聞きますが、このエッセイを読むとまた違った魅力を発見できるかもです。なお、8月31日まで銀座・教文館子どものほんの店ナルニア国の店内にてミニ原画展を開催中です。店内にはせなさんの画材道具などの展示もあります。また貼り絵で構成された原画は、絵本で見るのとは違った印象を受けます。ぜひお時間を作ってナルニア国へ行ってみてくださいね。 

 (作成K・J)

2016年5月、6月の新刊から(その2)(1冊追加あり)


 6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、(その2)で幼年童話や長編の読物などを紹介します。また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナーにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

児童書

『カルペパー一家のおはなし』マリオン・アピントン/作 ルイス・スロボドキン/絵 清水真砂子/訳 瑞雲舎 2016/6/1

カルペパー一家のおはなし
マリオン・アピントン
瑞雲舎
2016-06-15
 

 デビーのお父さんが紙を切り抜いて作ってくれた紙の家に、紙人形の家族たち。ハンサムなおとうさんとエプロンをしたおかあさん、手をつないだままの4人の男の子、そして女の子も・・・ただしひとりだけ切り離されて3人の手をつないだ女の子とひとりの女の子も、器用にハサミで紙を切り出してくれました。デビーはこの一家に色を塗り「カルペパー一家」と名づけました。この紙人形の一家は人が見ていないと、その辺りを見回して冒険を始めます。紙人形たちが繰り広げる愉快なエピソードは、子どもたちを夢中にさせてくれることでしょう。私も紙人形遊びに夢中になっていた幼い頃を思い出して、楽しかったです。

 

『おめでたこぶたその3 サムのおしごと』アリソン・アトリー/作 すがはらひろくに/訳 やまわきゆりこ/絵 福音館書店 2016/6/5

サムのおしごと おめでたこぶたその3 (世界傑作童話シリーズ)
アリソン・アトリー
福音館書店
2016-06-01
 
 『チム・ラビットのぼうけん』などの著者、イギリスの代表的な児童文学者アリソン・アトリーのシリーズ「おめでたこぶた」の3が出版されました。このシリーズは全部で6冊ある「Sam pig」のお話集のうち、3冊目の「Sam Pig Goes to Market」(1941)、4冊目の「Sam Pig and Sally」(1942)、5冊目の「Sam Pig at The Circus」(1943)の中から全部で6つのおはなしが選んで掲載されています。こぶたの4兄弟のうち、末っ子サムの活躍する可愛らしいお話は、読んであげるのもいいし、一人読みの子どもたちにもおすすめできます。『ぐりとぐら』の山脇百合子さんの挿絵も、こどもたちには親しみが持てることでしょう。
 

 『きかせたがりやの魔女』岡田淳/作 はたこうしろう/挿絵 偕成社 2016/6

きかせたがりやの魔女
岡田 淳
偕成社
2016-06-09

 小学5年生のぼくが、ある雨の日の中休みに図工室へ急ぐ学校の階段踊り場で出会った不思議な女の人。その人は学校にいる魔女なんだという。その魔女の口癖は「いそがなくてもだいじょうぶ。〈学校の時間〉はとまってる。話をきいてくれるだけでいい。ふゆかいなことはおこらない。いやならいつでももとにもどれる。ひとこと、いやだといえばいい。それであんたは、教室にいる。」、そしていろんな学校の魔女や魔法使いの話を聞かせてくれるのです。この魔女、実は定年退職をし、たまたま知ったストーリーテリングのことを知り、これからは子どもにおはなしを聞かせようと決意した「聞かせたがり」の魔女だったのです。ひとつひとつのお話が面白く、その上はたこうしろうさんの挿絵が想像力をかきたててくれる素敵な作品です。小学校中学年から読めるお話です。

 

『せなか町から、ずっと』斉藤倫/作 junaida/イラスト 福音館書店 2016/6/20

せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ)せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ) [単行本]
斉藤 倫
福音館書店
2016-06-15

 2014年9月発行の『どろぼうのどろぼん』で児童文学者協会新人賞、小学館児童出版文化賞を受賞した斉藤倫さんの待望の新作です。空色と水色の間に漂っている大きなエイの背中に出来た「せなか町」で繰り広げられる不思議な7つの物語で構成される短編集です。このエイは空に輝く星に憧れて天空の昇り、海に叩きつけられた後、長く気を失って海を何百年と漂ううちに人々が住みつき、町が出来たのですが、とにかく不思議なことが起こるのです。そのひとつひとつがファンタジーなのに、どこかとても懐かしく感じられ、読み終わったあとに心にふんわりと温かなものが残る、そんなお話ばかりです。

 

 『古森のひみつ』ディーノ・ブッツァーティ/作 山村浩二/挿絵 岩波書店 2016/6/16 

古森のひみつ (岩波少年文庫)
ディーノ・ブッツァーティ
岩波書店
2016-06-17
 

 第二次世界大戦前後にイタリアで活躍した作家、ディーノ・ブッツァーティの、児童向けのはじめての訳出作品です。北イタリア、ドロミティ・アルプスを舞台としたファンタジーです。樹齢数百年というモミの木がそびえる古森を遺産相続して所有することとなったブローコロ大佐が、森を伐採し始めるところから物語は始まります。木の精ベルナルディや、風のマッティーオなど、人間以外の登場人物の名前とその役割が頭に入るまでは少し読みにくいのですが、ブローコロ大佐が甥のベンヴェヌートを亡き者にしようと風のマッティーオと画策し始めるあたりから、ぐいぐいと物語の中に引き込まれていきます。人間と、自然、そして動物たちが交わり、物語を紡ぎ出していく中盤からは一気に読めてしまいました。挿絵は、絵本画家の山村浩二さん。不思議な物語にさらなる魅力を加えています。ブッツァーディの他の作品は『シチリアを制服したクマ王国の物語』(天沢退二郎/増山暁子/訳 福音館日曜文庫 2008)、『タタール人の砂漠』(脇功/訳 岩波文庫 2013)、『七人の使者・神を見た犬 他十三篇』(脇功/訳 岩波文庫 2013)があります。

 

 ノンフィクション

『世界の化学者12ヶ月 絵で見る科学の歴史』かこさとし 偕成社 2016/6

世界の化学者12か月 絵で見る科学の歴史
かこ さとし
偕成社
2016-06-15

 

1月から12月までのその月に生まれた化学者の功績を2~3人ずつ紹介するとともに、紀元前から現代までの科学年表や、各月の花ごよみ、味めぐりも盛り込まれた欲張りな1冊です。ご高齢のかこさとしさんが新たに書き下ろされたのかと思ったら、1982年に出版された『『かがやく年月 化学のこよみ~化学の偉人と科学の歴史〜』の改訂版として、一部新しい知見を加えて出版されました。たくさんのことが網羅されており、調べ学習の入口、ヒント探しに使える1冊です。

 

 

 その他

『折々のうた 春夏秋冬・春』大岡信/選 童話屋 2016/6/17

折々のうた 春夏秋冬・春
大岡信
童話屋
2016-06-23

 

 

『折々のうた 春夏秋冬・夏』大岡信/選 童話屋 2016/6/17

折々のうた 春夏秋冬・夏
大岡信
童話屋
2016-06-23


 朝日新聞創刊100年を記念して始められ1979年1月25日から2007年3月31日まで、朝刊紙上で足掛け29年、6762回にわたって連載された200文字ほどの詩歌の鑑賞文「折々のうた」が、子どもたちにも手に取りやすいように童話屋から詩集として出版されました。短歌、俳句、漢詩、川柳などを古典から現代の作品まで、季節や時事問題に絡めて解説したアンソロロジーとなったおり、「春」は谷川俊太郎さんが、「夏」は工藤直子さんが解説しています。座右に置いて折々に眺めたい、そんな詩集です。

(作成K・J)

2016年5月、6月の新刊から(その1)


5月~6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、(その1)では絵本のおすすめの本をいくつか紹介します。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。(その2)で幼年童話や長編の読物などを紹介します。(その2)のUPは6月末を予定しています。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 【絵本】

『すずめくん どこでごはんたべるの?』たしろちさと 福音館書店 2016/05/15

 福音館書店ちいさなかがくのとも2008年4月号がハードカバーになりました。小さなすずめの目線で動物園の動物たちが描かれています。すずめは自分専用の餌場を持たない代わりに、いろんな動物たちから餌のおすそ分け(つまみ食い?)をもらっているのですね。カバにキツネにライオン、動物たちがどんな食事をしているかも知ることが出来ます。 

 

 『夜空をみあげよう』松村由利子/文 ジョン・シェリー/絵 福音館書店 2016/5/15 

夜空をみあげよう (福音館の科学シリーズ)
松村 由利子
福音館書店
2016-05-11

夏の夕方にベランダで洗濯物を取り込んでいて一番星をみつけたはるか。それがきっかけで家族中での夜空の観測が始まります。子どもたちが関心をもったことを一緒に探求しようとしてくれる両親の姿勢はとても素晴らしいと思います。この絵本は科学絵本ではないのですが、読み終わると夜空を見上げてみたくなる、そんな作品です。「8月のおはなし会☆おすすめプラン」のその2としても、今回取り入れてみました。(→夏の夜に

 

『わたしのこねこ』澤口たまみ/文 あずみ虫/絵 福音館書店 2016/5/20

わたしのこねこ (福音館の科学シリーズ)
澤口 たまみ
福音館書店
2016-05-18

福音館の科学シリーズとして出版されました。わたしのところにやってきた小さな黒ねこ。「くろ」と名付けた子猫と仲良くなるために、前から家にいる「トラ」とのやりとりを通してねこの気持ちを理解していきます。ねこの気持ちがわかって、どんどん仲良しになれると嬉しいですね。切り絵で描かれたねこの表情がとても可愛らしい作品です。

 

『ぺんぎんたいそう』齎藤槙/作 福音館書店 2016/6/5

ぺんぎんたいそう (0.1.2.えほん)
齋藤 槙
福音館書店
2016-06-01

「こどものとも0.1.2」の2013年10月号でとても好評だった作品がハードカバーになりました。赤ちゃん向けの絵本ですが、大きい子に読んであげても「おっ」という感じで、最後の「おしりをふって~ またあした」というところでニンマリします。赤ちゃん向けのおはなし会でも大活躍しそうな1冊です。こちらも「8月のおはなし会☆おすすめプラン」に取り入れました。(→夏のいちにち

 

『ぞうきばやしのすもうたいかい』広野多珂子/作 廣野研一/絵 福音館書店 2016/6/5

「こどものとも年少版」2012年7月号のハードカバー版です。ぞうきばやしの切り株の上で虫たちの相撲大会です。カナブンとタマムシの勝負ではカナブンが勝つのは順当なのですが、ダンゴムシとカマキリの勝負ではなんとダンゴムシの勝ち。その他にもいろいろな虫たちが勝負をします。意外な結果に子どもたちも喜ぶことでしょう。絵は写実的ですが、内容は科学絵本ではなく、小さな子どもたちにふさわしいおはなし絵本です。 

 

『みみずくのナイトとプードルのデイ』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2016/6/1 

みみずくのナイトとプードルのデイ
ロジャー・デュボアザン
ロクリン社
2016-06-01

 みみずくのナイトとプードルのデイはひょんなことから仲良くなります。でも夜行性のナイトと、夜になると家に入れられてしまうデイはなかなか会うことが出来ません。お互いに餌を相手のねぐらに置いていくだけのすれ違いが続きます。そのうち夜になると台所のドア越しに会話をするようになります。「フーッ、フーッ、ホー」「ウー、ワァー、ワァー」という鳴き声で家の人は寝付けません。デイを地下室に閉じ込めると、鳴き交わす声はますます大きくなりました。すると子どものボブがひらめきます。それはみんなが幸せになれる解決策でした。読後感がとても爽やかで心温まる1冊です。

 

『ハワイ島のボンダンス』いわねあい/文 おおともやすお/絵 福音館書店 2016/6/10

 ハワイに住む日系人たちの間で長い間大切に伝統が守られている「ボンダンス」つまりは「盆踊り」について、詳しく調べた福音館の科学シリーズです。作者のいわね氏は、ハワイを訪れた際に一世紀以上前に移住した日系人が心の拠り所としてきたハマクア浄土院というお寺と出会い、日系人の歴史や生活について調査をするようになりました。この絵本では、小学生のマサルが、ハワイに嫁いだ姉を尋ねる祖母の旅に父親と共に同行し日系人の暮らしを初めて知るという設定です。マサルの目から見た「ボンダンス」の様子を描き、日系人の文化を理解する読物として読み応えがあります。

 『小さなサンと天の竜』チェン・ジャンホン/作 平岡敦/訳 徳間書店 2016/6/30 

小さなサンと 天の竜 (児童書)
チェン ジャンホン
徳間書店
2016-06-11
 
『ウェン王子とトラ』や『この世でいちばんすばらしい馬』、『ハスの花の精リアン』、『ロンと海からきた漁師』(いずれも平岡敦/訳 徳間書店)に続く、チェン・ジャンホンの絵本です。三つの高い山に囲まれた谷に小さな集落がありました。谷では、生活が不便であることから村人はみんな山を降りていましたが、まもなく赤ん坊が生まれる家族だけは谷に残ります。生まれてきた男の子はサンと名付けられすくすくと育ちます。サンはそのうち家族を手伝うようになり、険しい山の暮らしが年々辛くなる母親のために山を動かそうと思い立ちます。毎日、少しずつ、つるはしで山を削っていくサン。サンのひたむきな願いと努力は、ある時、不思議なおじいさんと出会うことで大きく動き出します。大胆で力強い絵が印象的です。
 
(作成K・J)

2016年4月、5月の新刊から


4月~5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。一部3月末に出版されているものも含まれています。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介しますので、翌月以降になることもあります。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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絵本

『こうまくん』きくちちき 大日本図書 2016/3/25

こうまくん
きくち ちき
大日本図書
2016-03
 
3月末に出版されていたきくちちきさんの最新刊です。先月、見落としていました。春を迎えて生命の力みなぎるままに走り回るこうまの表情が、大胆で流れるような筆致で描かれています。テンポよく読めて、爽快感を感じることができます。幼い子どもたちも、子ども時代はとにかく走り回って自分の好奇心をたっぷり満たして欲しいと願います。
 
 
『ねずみにぴったりののりもの』マリー・ホール・エッツ/作 こみやゆう/訳 好学社 2016/5/26 
ねずみにぴったりの のりもの
マリー・ホール・エッツ
好学社
2016-05-23
 
『もりのなか』など長く愛される作品の多いマリー・ホール・エッツ。1月にはこの絵本と同じこみやゆうさんの翻訳で、エッツがセツルメント活動に関わっていた時の実話をもとに、移民の子どもが懸命に字を覚えていく様子を描いた『ロベルトのてがみ』(好学社)も出版されました。それに続く訳出絵本でエッツの1964年の作品です。『もりのなか』ほかのエッツの絵本とは少し絵柄も構図も違っているので、最初は「ほんとにエッツの絵かしら?」と思ってしまいました。ねずみ一家が子供部屋でジョニーが出しっぱなしにしたのりもののおもちゃを発見。自分たちにぴったりと喜ぶのですが・・・色合いも含めて新しいエッツの絵本との出会いになることでしょう。
 
 
児童書
『くろグミ団は名探偵 カラス岩の宝物』ユリアン・プレス/作・絵 大社玲子/訳 岩波書店 2016/4/22


新刊をチェックしに通っている銀座教文館ナルニア国には「文字だけの本をずーっと読んでいくのが苦手な人も楽しく読める」とPOPに書いてあり、手に取りました。(ナルニア国ブログ記事→こちら)横書きで、見開きの左側が文章、右側は細かく描かれたイラストで、各ページに絵さがしが必ず入ってきます。文字を読むのを苦手とする小学校高学年の子達が図書室の後ろの方で『ウォーリーをさがせ』に夢中になっていたのを思い出します。ただ、単に絵さがしの本かというと、そうにはあらず、物語の方にもぐいぐい引き込まれていくという不思議な力を持っている作品です。なお岩波少年文庫から出ている『くろて団は名探偵』(ハンス・ユルゲン・プレス 岩波少年文庫 2010)に題名が似ており、そのパクリかしらと思いましたが、『くろて団・・・』の作者の息子の作品が、『くろグミ団は名探偵』です。まずは、読むのが苦手な子に、『くろグミ団・・・』を手渡しておいてから、読了後に『くろて団・・・』をそっと手渡してみるのもよいかもしれません。
 
 
『玉川百科 こども博物誌 動物のくらし』小原芳明/監修 高槻成紀/編 浅野文彦/絵 玉川大学出版部 2016/5/20
動物のくらし (玉川百科 こども博物誌)
玉川大学出版部
2016-05-19
 
 日本で初めて子どものための玉川児童百科辞典が出版されたのは1932年(昭和7年)のことでした。子どもが自学自習できるようにと時間をかけて編纂された子ども向け百科事典は、戦後も続けられてきました。その後1979年(昭和54年)に出版されたあとはしばらく更新がないままとなってきました。今年は玉川学園90周年を迎え、玉川百科こどもの博物誌の記念出版が始まりました。その第1巻が『動物のくらし』です。玉川百科こどもの博物誌について書かれたこちらのサイトにあるように、調べるというよりはむしろ読み通すことで対象を詳しく知っていくための本になっています。また自分でするフィールドワークや自由研究に対応できるように、巻末に読書案内と関連施設のリストが整備されているのもありがたいことです。全12巻刊行の予定。公共図書館や学校図書館にはぜひ置いておいてほしいシリーズです。
 
 
 
その他
『疾走した画家 ランドルフ・コールデコット』レナード・Sマーカス/著 灰島かり/訳 BL出版 2016/5/1
レナード・S. マーカス
BL出版
2016-05
 
アメリカの優れた絵本に贈られる「コールデコット賞」、その名前の由来となったランドルフ・コールデコットの生涯と、彼が子どもの本に果たした功績について、彼や、同時代を生きた画家たちの絵をふんだんに使って描いた絵本スタイルの本です。 著者はアメリカの児童文学を研究するレナード・マーカス氏。先日もJBBY主催のマーカス氏の講演会が開催されたところです。絵本の仕事をしていると「コールデコット」という名前は何度も何度も口にするのに、彼が15歳で銀行員として働いていたこと、その傍ら絵を描き続いけていたこと、26歳で銀行員をやめ、絵で食べていくと決意したこと、32歳の時『ジャックがたてた家』、『ジョン・ギルビンのこっけいな出来事』の2冊の絵本が出版されたこと、その後アメリカに新天地を求めて渡ったにも関わらず渡米直後に40歳を目前に病死してしまうことなど、初めて知ることが多くありました。短い生涯ではあったものの、「子どもに最良の本だけを提供することを使命としていた」1900年代初頭の熱心な公共図書館員によって「コールデコットの絵本はほかの絵本作家が見習うべき理想の芸術性を示していた。」(p59)として、彼の名を冠して名誉ある賞が作られたことは、ほんとうに素晴らしいことと思います。この本を読みながら、子どもたちに何をどう選んで手渡すべきか、再確認できたように思います。 
 
 
『わんぱく天国』佐藤さとる/著 岡本順/画 ゴブリン書房 2016/3
わんぱく天国
佐藤 さとる
ゴブリン書房
2016-03
 
『わんぱく天国』はこれまでいろいろなバージョンで出版されてきました。この作品は、作者があとがきで「さて、いままで何度か装いを替えて刊行している本作ですが、このたび若干の加筆と修正をおこないました。いわば決定版『わんぱく天国』です。」(p213)と記している通りです。昭和十年代の横須賀市を舞台に繰り広げられる子どもたちによる秘密の人力飛行機建造計画。知恵を出し合い、力を合わせて目的に向かっていく子どもたちの姿はとてもたくましい。今、こんなふうに大人の干渉を一切受けずに遊び倒す経験が出来る子は少ないだろうなと思いました。「生きる力の育成」「コミュニケーション能力を身につけさせる」と声高に叫ぶ教育関係者たちに、いやこうやって異年齢の子どもたちだけでしっかりと遊び倒せる時間と環境を子どもたちに取り戻すことが何より大切だと知ってほしいと願わずにいられません。
 
(作成K・J)
 

2016年3月、4月の新刊から


3月に出版されたもののうち見落としていたものと、4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介しますので、翌月以降になることもあります。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

絵本

『きかんしゃボブ・ノブ』ルース・エインズワース/作 安徳瑛/画 上條由美子/訳 福音館書店 2016/3/5

きかんしゃ ホブ・ノブ (こどものとも絵本)
ルース・エインズワース
福音館書店
2016-03-02

『こすずめのぼうけん』『ちいさなろば』など小さなものへの優しい眼差しで溢れる作品を多く発表しているイギリスの女流作家ルース・エインズワースの絵本です。「こどものとも年中向き」1985年8月号がハードカバーになりました。きかんしゃホブノブに次々動物が乗り込んで遊園地へ遊びに行きます。トンネルを怖がる動物たちにホブノブは素敵な配慮もしてくれます。電車・汽車好きの子どもにはたまらない1冊でしょう。

 

『かくれんぼ 朝鮮半島のわらべうた』池貴巳子/文・絵 福音館書店 2016/3/10


かくれんぼ 朝鮮半島のわらべうた (日本傑作絵本シリーズ)

 

子どもたちの生活に密接な関係だった「わらべうた」。日本だけでなくさまざまな国で口承で伝わってきていますが、この絵本は朝鮮半島に伝わるわらべうたを子どもたちの素朴な表情の絵とともに紹介してくれています。池さんの描く絵はその柔らかいタッチと色合いが素敵で、とくに表紙は韓国の国花木槿(ムクゲ)の絵はこの絵本が持っている魅力をストレートに伝えています。

 

『バンブルアーディ』モーリス・センダック/作 さくまゆみこ/訳 偕成社 2016/4

バンブルアーディ
モーリス・センダック
偕成社
2016-04-13

『かいじゅうたちのいるところ』をはじめ、多くの子どもたちに愛される絵本を作り続けたモーリス・センダックが2012年に亡くなる前年の2011年に描いた作品です。ぶたのバンブルは9才までお誕生日のお祝いをしてもらったことがありませんでした。両親と死別しおばさんが引き取ってくれた今年こそ9才になるお祝いをしてもらえることに!でもバンブルはおばさんが予定していたよりも早い時間に仮装した友だちをご招待。ああ、子ども達だったら、こんな風に大騒ぎ出来たら嬉しいはず!(でもおとなにとっては大変)そんな子どもの側に立った絵本を最後にこうして残してくれたことに感謝したいと思う絵本です。

 

『路線バスしゅっぱつ!』鎌田歩/作 ランドセルブックス 福音館書店 2016/4/15

路線バスしゅっぱつ! (ランドセルブックス)
鎌田 歩
福音館書店
2016-04-13

福音館書店の小学校1、2年生を対象としたランドセルブックスシリーズの新しい1冊です。子どもだけで路線バスに乗って目的地へ行くだけでも、なんだかすごい冒険ですよね。そんなわくわくした気持ちが伝わってくる1冊です。またバスの構造や、運転台の細かな描写など、物語を楽しむだけでなく知識の絵本としても楽しめる1冊で2度美味しい本です。細い道路で、対向車と離合するところの絵などは、ハンドルワークとタイヤの動きも図で説明されていて、乗り物好きにはたまりません。絵本というよりは、自分で読み始めた子ども向けの本という出版社のくくりですが、絵がふんだんに使われていて、ページ数も32ページと少ないので絵本の範疇に入れて紹介しました。

『ねこどけい』岸田衿子/作 山脇百合子/絵 福音館書店 2016/4/25

ねこどけい (こどものとも絵本)
岸田 衿子
福音館書店
2016-04-20

こちらも『きかんしゃボブノブ』と同じく「こどものとも年中向き」からのハードカバー化された絵本です。2009年4月号として発行されたものです。岸田衿子さんは2011年4月に82歳で亡くなられていますから、ちょうど80歳の時の作品です。鳩時計の鳩と遊びたがって壊してしまう猫の「ねねこ」。ことちゃんは仕方なく時計屋さんに修理を頼みに行きました。すると時計屋さんは、修理するだけでなく素敵なものを作ってくれました。愛らしい「ねねこ」の姿は好奇心いっぱいの子ども達と重なります。

 

『小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車』かこさとし/作 偕成社 2016/5/1

出発進行! 里山トロッコ列車 小湊鐵道沿線の旅
かこ さとし
偕成社
2016-04-23

小湊鐵道が観光用のトロッコ列車を走らせることになり、そのポスターに絵を描いてほしいと小湊鐵道の石川社長に依頼されたことが、この絵本の生まれるきっかけになりました。これは単なる絵本というよりは、沿線の自然環境や歴史などを織り込んだガイドブックのようです。たとえば昨年発見された77年前の逆転層(地球の南北を示す地磁気が現在と逆になっていて、地球の成り立ちについて貴重な資料となる地層、国際地質学会でチバニアンと名付けるよう審議中)のことや、1300年前の壬申の乱にまつわる伝説なども盛り込み、とても面白い内容となっています。春や秋は花見や紅葉狩り、夏にはキャンプやハイキングにトロッコ列車に乗って行ってみたくなりました。

児童書

『雨の日のせんたくやさん 森の小さなおはなし』にしなさちこ/作・絵 のら書店    2016/4/15

森の片隅で暮らす小さな生き物、かたつむりやからすにくまねずみ、しまりすにはりねずみ、ふくろうや虫たちが登場する短い物語が6つある本です。中には「まっくろ雪のこり」も登場。さあ、これは一体なんでしょう?私も最初は真っ黒な生き物かしら?「こり」っていう名前かしら?と思いながら読み進めると・・・意外な展開にびっくりすると同時に心がほっこりとするのでした。ひとつひとつのお話は短くて、字を読み始めた子どもたちが自分で読んだり、家族の人が一話ずつ読んであげるのにちょうど良い本です。この物語と絵はにしなさんが両方担当していますが、実は山梨県大月図書館の館長さん。図書館のおはなし会で朗読してあげても良いでしょう。

 

『日本全国ふしぎ案内2 菜の子ちゃんとカッパ石』富安陽子/作 YUJI/画 福音館書店 2016/4/25

富安陽子さんの「日本全国ふしぎ案内」シリーズの2巻目です。(1巻目は昨年3月に『菜の子ちゃんと龍の子』として出版されています)座敷童子のようにいつの間にかクラスにいて誰もが当然のように受け入れていて、けれども主人公の記憶にしか残っていない不思議な転校生の山田菜の子ちゃん。1では、奈良の吉野に伝わる伝説をベースにはぐれた龍の子を水神の祭りの日に天に昇らせようとしましたが、今回は平家が滅んだ壇ノ浦のある下関に伝わる河童伝説をベースに物語は展開していきます。いきなり今夜赤間神宮で行われるかっぱ評定までに、昔の洪水で流れてしまったかっぱ石をみつけて元の場所に置くというミッションに菜の子ちゃんと関わることになったトオル。いろんな助っ人が現れ、あれよあれよという間にミッション達成。なのに、どうも本当にあったことなのに、次の日には菜の子ちゃんの姿は学校にはなく・・・少し長いお話に挑戦したくなる2、3年生におすすめの不思議なお話です。

 

YA向け

『お金さえあればいい?子どもと考える経済のはなし』浜矩子/著 高畠純/絵 クレヨンハウス 2016/3

大人は知らない・子どもは知りたい! お金さえあればいい? 子どもと考える経済のはなし
浜 矩子
クレヨンハウス
2016-03-12

 

三菱総合研究所主任研究員として英国駐在事務所長などを務めたあと、同志社大学大学院で教授を務める浜矩子さんが、「お金はなんのためにあるのか」「お金はどうやってお金になるのか」など、子どもたちが抱くであろう疑問に明確に答えてくれる本です。経済学の父といわれるアダム・スミスは「経済とは基本的人権の上に成り立つ」と説いたとして、「本当の経済とは利益優先ではなく、人をしあわせにするための手段である」と明快に伝えてくれています。格差の広がる中で、幸福な生き方とはなんだろうと悩む若い世代にぜひ手渡したい1冊です。

 

『18歳からの民主主義』岩波新書編集部 岩波書店 2016/4/20

今年の夏の選挙から、選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられます。ちょうど我が家の四番目、末っ子の世代が今年その年齢にあたります。区役所からは、ひとりひとりに「選挙権が与えられました。選挙に行きましょう。」という内容の書類も届きました。いよいよ現実になったんだなと実感しました。今回、初めて投票する権利を持つ若い世代に、その1票の持つ意味を先輩たち(憲法学者や社会学者、経済学者や作家、芸術家、活動家など)や同世代を代表するアイドルグループのメンバーなどが語りかけるように問う内容になっています。図もふんだんに取り入れ、横書きで読みやすくなっています。ぜひ多くの若い人たちに読んで欲しいと思います。

 

その他

『幼い子は微笑む』長田弘/詩 いせひでこ/絵 講談社 2016/2/15

出版されてすぐ手にしていたにもかかわらず、3月に紹介しそびれていた1冊です。昨年の5月に亡くなった長田弘さんの詩に、いせひでこさんが柔らかいタッチで絵を描きました。二人のコラボレーションは『最初の質問』に続いて2冊目。人が生まれて、人になっていく過程の、「微笑む」ことに焦点を当てた詩は、心にずんと響きます。「まだことばを知らないので、幼い子は微笑む。微笑むことしか知らないので、幼い子は微笑む もう微笑むことをしない人たちを見て、幼い子は微笑む。」大人になるにつれて、ことばを獲得するにつれて失っていくものの多さを詩人は、静かに見つめていたのだと、そしてそれは私自身に問われているのだと感じました。子ども向けというよりは、子どもと常に相対する大人にぜひ読んでほしい詩です。

 

『小さな本の大きな世界』長田弘/著 酒井駒子/画 クレヨンハウス 2016/4/8

小さな本の大きな世界
長田 弘
クレヨンハウス
2016-04-08
 
こちらも長田弘さんの本です。長田さんがこれまでに書き溜めてこられた「本にまつわるエッセイ」145篇がぎゅっと詰め込まれています(2004年4月~2015年5月まで東京新聞・中日新聞連載の「小さな本の大きな世界」と、2005年4月~2006年3月までUCカード会員誌『てんとう虫』連載の「子どもの本のまわりで」を一部修正して集めてあります)。童話や小説、絵本に随筆、図鑑に至るまで、長田さんの選んださまざまなジャンルの本への長田さんの想いが伝わってきます。この中にきっとあなたの大好きな作品もあるはずです。また、未読の作品は読んでみたくなります。絵は酒井駒子さん。こちらの原画展は現在クレヨンハウス東京店絵本売り場で見ることが出来ます。(2016年5月8日まで開催中。詳しくは→こちら

(作成K・J)

 

2016年2月、3月の新刊から


2月から3月にかけて出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。なお、こ

こに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介になりますので、翌月以降に紹介をします。また3月後半に出版される本も来月紹介したいと思います。

絵本
『でんしゃがはしる』山本忠敬/作 福音館書店 2016/2/1 
 
でんしゃがはしる (福音館の単行本)
山本 忠敬
福音館書店
2016-02-01

『しょうぼうじどうしゃじぷた』『とらっくとらっくとらっく』など、子どもたちに長く愛されている乗りもの絵本の第一人者山本忠敬さん(1916~2003)の生誕100年を記念して特別復刊された絵本です。品川駅を出発した山手線外回りの電車が、山手線を一周してまた品川駅に戻ってくるまでを描いています。この絵本が描かれた1978年当時の車両が描かれており、現在とはずいぶん違っている部分もあります。例えば、渋谷駅では東急東横線は地下に潜り、山手線と並ぶことはなくなりましたし、新幹線も「ひかり」と「こだま」の旧車両、そのほか既に引退してしまった特急もたくさん描かれています。それでも山手線が一周走るうちにどんな私鉄と出会うのか、とてもわかりやすく電車好きな子どもには喜ばれることでしょう。でも、この絵本、当時を懐かしく思い出す高齢者や、一般の鉄道好きな利用者にも手渡したくなりますね。

『とっきゅうでんしゃ あつまれ』山本忠敬/作 福音館書店 2016/2/1 

この絵本も、山本忠敬さんの生誕100年を記念して復刊されました。どの特急電車も1987年当時のもので、新幹線もすでに新型車両に変わっていますし、寝台特急も次々引退していて、懐かしいという気持ちになります。それでも、山本さんの描く電車には温か味があり、これらに乗っていろいろな人が旅をしたのだという想像をかきたてます。この絵本も、乗りもの好きの子ども達だけではなく、広い世代に手にとってほしいと思います。

『ひみつのいもうと』アストリッド・リンドグレーン/文 ハンス・アーノルド/絵 石井登志子/訳 岩波書店 2016/2/26 

ひみつのいもうと
アストリッド・リンドグレーン
岩波書店
2016-02-26
 
スウェーデンで1973年に出版されていたアストリッド・リンドグレーンの絵本が日本で初訳出されました。バーブロという女の子には、おかあさんもおとうさんも知らない秘密があります。それは、ふたごのいもうとがいるってこと。いもうとの名前はイルヴァ・リー。バラのしげみのうしろにある穴の中に住んでいます。バーブロは、お母さんが生まれたばかりの弟の世話で忙しいので、バラのしげみのうしろに出かけていって、ここで日中たっぷりとイルヴァ・リーと遊んだり、冒険をしたりして過ごします。日が暮れて家に戻るとお母さんは顔を真っ青にして心配して待っていました。この絵本は、アストリッド・リンドグレーンの「はるかな国の兄弟」や「ミオよわたしのミオ」を彷彿とさせる幻想的な世界が描かれています。この絵本を読んだあとに、リンドグレーンの読み物へとつなげてあげたいと思いました。 
 
『おはなしかがくえほん うんちコロコロうんちはいのち』きむらだいすけ/作 岩崎書店 2016/2/22

 『ゴリラのジャングルジム』(集文社 2004 初出は1992年 福武書店刊)というゴリラの親子の心温まる作品のあるきむらだいすけさんの最新作。古代エジプトでは太陽神に似ているとして神聖視されたり、ファーブルもその不思議な生態に魅了された昆虫、フンコロガシが主人公。動物たちの糞もその食べるもので、形状などが違っており、フンコロガシが好む糞があるということを、わかりやすく教えてくれます。そしてその糞は次の命を育むゆりかごになっているということから、作者のきむらさんはこの絵本を通して、子どもたちにいのちのつながりについて考えてほしいとのことです。動物好きな子にも、虫好きの子にも、「うんち」に過剰反応する年代の子どもたちにも手渡したい1冊です。

『父は空 母は大地 インディアンからの伝言』寮美千子/編・訳 篠崎正喜/画 ロクリン社 2016/3/1

 chichisora父は空 母は大地―インディアンからの伝言 [大型本]

篠崎 正喜
ロクリン社
2016-03

 1995年にパロル舎から寮美千子さんの翻訳で、篠崎正喜さんの絵で出版されていた『父は空 母は大地 インディアンからの手紙』を、文章も絵も見直しをした改訂版です。1492年の新大陸の発見の後、アメリカ大陸にはいくつかの植民地が出来ますが、ヨーロッパからアメリカ大陸の多くの移民が押し寄せたのは1620年のメイフラワー号での清教徒の移住以降。英仏が植民地の奪い合いをするなかで、先住民族であるインディアンは、その住む土地をどんどんと奪われ、追われていきます。それから月日が流れること、230年以上経った1855年に当時の第14代大統領フランクリン・ピアスは先住民の土地を買い取る代わりに居留地を与えると申し出ます。これ以上、無駄な流血は避けたいと判断した先住民の酋長シアトルが、大統領との条約締結を受ける際に送った手紙が、この作品の元になっています。空や大地は自然のもの、人がお金で売り買いするものではない、大地と空を汚してはならないという酋長シアトルの言葉は、現代を生きる私たちにも力強いメッセージを伝えてくれています。絵本ですが、小学校高学年からYA世代、大人に読んで欲しいなと思います。ロクリン社のサイト→こちら

 
児童書
 
『きょうはかぜでおやすみ』パトリシア・マクラクラン/文 ウィリアム・ベン・デュボア/絵 こみやゆう/訳 大日本図書 2016/2/24
パトリシア マクラクラン
大日本図書
2016-02-24
こみやゆうさんが翻訳を手がける『ハリーとうたうおとなりさん』、『ウォーリーと16人のギャング』、『へっちゃらトーマス』に続く大日本図書「こころのほんばこ」シリーズの新しい1冊です。風邪で学校を休んだエミリー、実は家で仕事をしているパパと過ごせてご機嫌です。病人であることで、わがままに振舞うエミリーとそれを優しく包み込むパパとのやりとりも、なかなか素敵です。ひとりで読めるようになった低学年向けの1冊です。「こころのほんばこ」シリーズは『まるごとごくり!』が3月に出版されていますが、まだ手にしていません。次回紹介したいと思います。

 『ポンちゃんはお金もち』高楼方子/作・絵 こぐま社 2016/2/19

 コータのところにあらわれた不思議な友達、ポンちゃん。どこかで見たことがあるのですが、コータは思い出せません。お母さんに勉強するように言いつけられたのに、ポンちゃんに誘われてはらっぱ公園での移動遊園地へ出かけます。ポンちゃんはポケットにたくさん10円玉を持っていて、気前よくコータにいろいろな体験をさせてくれます。満足して家に帰ると不思議なことに、時間が経っておらず、お母さんが拾い上げた貯金箱を見て、その不思議な友達の正体がわかります。不思議な体験を親子で共有できるのは素敵だなと思いました。こぐま社が創業50周年に出版した「こぐまのどんどこぶんこ」、小学校低学年向きのやさしい読み物シリーズの1冊です。

 『たらふくまんま』馬場のぼる/作・絵 こぐま社 2016/2/19

1972年に学習研究社から出版されたいた馬場のぼるさんの作品が、こぐま社の「こぐまのどんどこぶんこ」で復刊されました。食いしん坊で乱暴者の山男、たらふくまんまは、村へ行っては食べ物を奪ってばかりの迷惑者です。村人はなんとかたらふくまんまを懲らしめようとするのですが・・・馬場のぼるさんらしい奇想天外、でもホッとするおはなしで、自分で本を読み始めた子どもたちにおすすめの1冊です。

『イワンとふしぎなこうま』ピョートル・エルショーフ/作 浦雅春/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2016/2/17

イワンとふしぎなこうま (岩波少年文庫)
ピョートル・エルショーフ
岩波書店
2016-02-17

 かつて『せむしの小馬』というタイトルで紹介されていた作品が、タイトルを変更し、訳も改めて、この度岩波少年文庫の1冊として出版されました。韻を踏んだ詩の形式そのままに新たに翻訳を改め、出版されました。(例えば王様がイワンに火の鳥を取りに行くよう命ずる箇所:旧訳「けれども、てみじかに言うならば/わたしは、おまえが火の鳥を、/わたしが命令するならば、/宮殿のへやへつれてくると、/じまんしていること、しっている。/な、いいか、つべこべ言わず、/火の鳥つくれてくるよう、ほねをおれ」→新訳「きけばわしがひとことめいじれば/おまえは火の鳥つかまえて/このしろにつれてまいるそな/そんなじまんばなしをしえおるそうな/よいかつべこべいわず/ここに火の鳥つれてこい」 声に出して読みやすく、耳心地よい翻訳に改められています)挿絵は旧版の岩波少年文庫(網野菊/訳 1978)と同じウラジミール・プレスニャコフの趣のある絵が使われています。日本語でも韻をふみ、リズミカルに読める文章です。ぜひ声に出して読んであげてほしいと思います。

 『てのひら島はどこにある』佐藤さとる/作 池田仙三郎/絵 理論社 2016/2

てのひら島はどこにある
佐藤 さとる
理論社
2016-02

『だれも知らない小さな国』の作者、佐藤さとるさんが1965年に出版した『てのひら島はどこにある』という、ほっこりと優しい気持ちになれる短い作品がこの度初版の挿絵・装丁で50年ぶりに復刊されました。実は同じタイトルの作品が1981年にも同じ理論社から出版されていましたが、こちらの挿絵は林静一になっています。ある時、おばあちゃんが孫娘に「おもしろいおはなしをしてあげようか」と言って“てのひら島”のおはなしをしてくれます。“てのひら島”とは、おはなしの主人公の太郎が、とある家のトマトを荒らしたことでおしおきをされ、それを忘れないためにお父さんが取った手型が島のように見えたことから名づけられました。“てのひら島”を舞台に子どもたちの空想が織り成す世界と、現実の暮らしとの境界を面白く描いた作品です。梨木香歩さんが子ども時代に読んで「私自身の人生と生活に、それから仕事にも、決定的な方向づけをもたらしました。」と述べている作品であり、今、読んでも新鮮な気持ちになれるファンタジー作品です。
 

 ノンフィクション

『奇想天外発明百科 ややっ、ひらめいた!』マウゴジャタ・ミチェルスカ/文 アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ/絵 阿部優子/訳 徳間書店 2016/2/27

奇想天外発明百科: ややっ、ひらめいた! (児童書)
マウゴジャタ ミチェルスカ
徳間書店
2016-02-27
 
人間は考えることの出来る動物です。こんなことが出来ればよいのに、こんなものがあれば生活が便利になるのに、という思いを、なんとか実現させようと、想像力を働かせ、さまざまな困難に挑戦してきたのが、発明家たち。それらの発明が今につながって、現代の私たちの生活を便利で豊かなものにしています。この本は紀元前3世紀ごろから現代までの奇想天外な28点を『マップス 新・世界図絵』で話題になったポーランドの絵本作家が、発想を形にしようと努力してきた人々の姿を生き生きと描き出してくれました。
 
 『田んぼのコレクション』内山りゅう/文・写真 フレーベル館 2016/3
 
田んぼのコレクション (ふしぎコレクション)
内山 りゅう
フレーベル館
2016-03

 『土のコレクション』や『時間のコレクション』などのブックトークでも使いやすいフレーベル館のシリーズ「ふしぎコレクション」に新しい仲間が加わりました。日本人の主食である米を作る田んぼに焦点をあてています。日本の原風景にもなっている田んぼは、米を生産するだけではなく、生き物の棲家ともなっていて、豊かな生命を育む場所でもあるのです。「お米」についての調べ学習教材としても使えそうです。ぜひコレクションに追加しましょう。

2016年1月の新刊から


昨年の12月後半から、今年の1月にかけて出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介になりますので、また次の月に紹介します。

絵本

『わたしのいえ』カーリン・エリス/作 木坂涼/訳 偕成社 2016/1/7

わたしのいえ
カーソン エリス
偕成社
2016-01-07

丘の上に建つ一軒の家から始まって、いろいろな家について思いを巡らせる。大きな家、小さな家、鳥やけもの、虫たちにとっての家、物語に出てくる家。「家」は私たちを守り、私たちが安らぐ、そんな場所。それぞれの人に、それぞれの生き方に合わせて家がある。そんなことを、美しいイラストとともに伝えてくれる1冊です。いろいろな家を思いめぐらせ、そしてまた自分の家に戻ってきます。戻る場所があるって素敵なことだなと思いました。

『ロベルトのてがみ』マリー・ホール・エッツ/作 こみやゆう/訳 好学社

ロベルトのてがみ
マリー・ホール・エッツ
好学社
2016-01-07

 『もりのなか』などの作品があるマリー・ホール・エッツの1967年の作品『BAD BOY,GOOD BOY』がこみやゆうさんの翻訳で、この度出版されました。エッツが若い頃にセツルメント運動(貧困地区の住民を援助する社会事業)に関わっていた時に出会った実在の少年をモデルにしている作品です。ロベルトは家族でメキシコからアメリカに移住してきたので、スペイン語しかわかりません。言葉が通じないことで、さまざまなトラブルを起こしてしまうのですが、子どもセンターに通い、字を覚えるようになって表情も変わってくるのです。大人の視点から読むと、子どもの貧困や、移民問題が話題になっている今、子どもたちにとって、言葉の問題が生活の中で大きな位置を示すのか、また適切な援助の手が差し伸べられることがいかに重要かわかります。でも、子どもたちの視点で読めば、自分で文字を書けた喜び、初めての手紙が家族の絆を守ったという喜びに大きな意味があるでしょう。絵本の形態ですが、文章はとても長いので、小学生向けにおすすめするとよいでしょう。

 

『ひとりぼっちのベロニカ』ロジャー・デュボアザン/作 神宮輝夫/訳 復刊ドットコム 2016/1/16

ひとりぼっちのベロニカ
ロジャー デュボアザン
復刊ドットコム
2016-01-16

1978年に佑学社から出版された『ひとりぼっちのベロニカ』は長く絶版となっていましたが、このたび復刊ドットコムから再編集ののち復刻されました。2015年11月に出版された『かばのベロニカ』に続く第2弾です。(「本のこまど」では紹介しそびれています。)何事にも興味津々のかばのベロニカは、また仲間たちから離れて高層ビルの立ち並ぶ街へやってきました。ビルの工事現場で、なにやら不思議な箱をみつけて乗ってしまいます。・・・ベロニカが巻き起こす事件は、いたずら盛りの子どもたちを惹きつけることでしょう。


『ペネロペひめとにげだしたこねこ』アリソン・マレー/作 美馬しょうこ/訳 徳間書店 2016/1/16

ペネロペひめと にげだしたこねこ (児童書)
アリソン マレー
徳間書店
2016-01-16

ペネロペひめは、真っ白なこねこを飼っています。ある日、こねこと一緒に遊ぼうとすると、こねこはピンク色の毛糸をからだに巻きつけたまま逃げ出してしまいます。お城のあっちの部屋、こっちの部屋とさまざまな騒ぎを起こしながら、ピンクの毛糸はどんどん伸びていきます。ペネロペひめが毛糸のあとを追って探しに行くと・・・とてもおしゃれで楽しい絵本です。

 

『しあわせないぬになるには にんげんにはないしょだよ!』ジョー・ウィリアムソン/作・絵 木坂涼/訳 徳間書店 2016/1/16

『ペネロペひめと・・・』と同時発売された絵本で、こちらは犬が主人公。犬としてしあわせに過ごすためには、どんなふうにすればいい?ということが犬の視点でユーモラスに描かれています。まずはどんな人間と一緒に住むかが一番大事!そしてどんなふうにふるまうか、たとえば食事についてはこんなふうに・・・「しょくじをすませたあとでも まだなんにもたべてないふりをすると もういちどもらえることがあります」 作者はファッションデザイナーとしても活躍しているだけに、こちらもおしゃれな絵本です。
  

児童書

『ウォーリーと16人のギャング』リチャード・ケネディ/作 マーク・シーモント/絵 こみやゆう/訳 大日本図書 2016/12/25

ウォーリーと16人のギャング (こころのほんばこ)
リチャード ケネディ
大日本図書
2015-12-25

 カウリックという町に、大人もふるえあがるような乱暴者のホグホーンとその手下の者、あわせて16人が押しかけてきます。ちょうどしょちょうとおまわりさんは釣りへ出かけて町には不在。大人たちは家にこもって鍵をかけ、ふるえていると・・・小さな男の子ウォーリーがホグホーンの前に現れて、力試しを申し出ます。5人の手下をかけっこで、5人の手下をはしごのぼりに、5人の手下を力比べに引き出して、勝たせたと思わせて実のところ、ホグホーンをぎゃふんと言わせてしまいます。その痛快さに、読んでいてひざを打ちたくなりました。自分で本を読めるようになった子に手渡したい1冊です。 

へっちゃらトーマス』パット・ハッチンス/作 こみやゆう/訳 大日本図書 2016/1/25

パット ハッチンス
大日本図書
2016-01-25
字をまったく覚えようとしないトーマスは、「きけん」と書いてあろうが、まわりの人が大きな声で注意しようとも、たった一言「かんけいないね」という言葉をはき、まったく無視をしてずんずん突き進みます。頭に緑色のペンキがかかろうとも、どんなトラブるを引き起こそうが、お構いなし。そうしてとうとう、トーマスはおまわりさんにつかまって・・・牢屋に保護された時に囚人のおじさんたちに字を教えてもらうと、今度はたちまち本が大好きに!絵本から読み物に移行する小学校低学年でも自分で読める幼年童話です。
 
『キキに出会った人びと 魔女の宅急便特別編』角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館書店 2016/1/25
 
 1985年1月25日に『魔女の宅急便』の1巻目が出版されてちょうど31年目の同じ日に、本編では触れられていなかった登場人物のその後や、裏の物語を集めた特別編が出版されました。Amazonでの流通開始日は2016年1月20日になっていますが、本の奥付には「2016年1月25日」となっています。キキが最初に居候したグーチョキパン店のおソノさんの小さい時の話、なぜ「グーチョキパン店」と名付けられたか?など興味深い「ソノちゃんがおソノさんになったわけ」や、コリコ町長が体験した不思議なおはなしなどが収められています。この本を読んでいると、また本編も読み直したくなります。この本をきっかけに、『魔女の宅急便』1~6巻を再び手にとってもらえるといいですね。
 
 

ノンフィクション

『生きものビックリ食事のじかん』スティーブ・ジェンキンス&ロビン・ペイジ/作 佐藤見果夢/訳 評論社 2015/12/23

生きものビックリ食事のじかん (児童図書館・絵本の部屋)
スティーブ ジェンキンズ
評論社
2015-12-23

美しいコラージュの技法を使って、動物たちに備わっている不思議な能力や習性を、子どもたちにわかりやすく伝えてくれる知識絵本。 「どうやって・・・さかなをつかまえる?」「どうやって・・・たまごをまもる?」「どうやって・・・葉っぱをつかう?」など6つのテーマにわかれています。本文では、「わあ、すごい!」と声があがりそうな特徴だけを伝えていますが、巻末に詳しい説明がつけられています。この本を入門書にして、動物たちが命をつなぐために、どのような生活をしているのか、さらに詳しく調べてみようとするきっかけになるとよいな、と思います。
(担当K・J)

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