新刊本・話題の本

2016年5月、6月の新刊から(その1)
2016年4月、5月の新刊から
2016年3月、4月の新刊から
2016年2月、3月の新刊から
2016年1月の新刊から
2015年11月、12月の新刊から
2015年10月、11月の新刊から
新米のおいしい季節にこの本を!
小学館児童出版文化賞に『どろぼうのどろぼん』ほか
2015年8月、9月の新刊から
BIB金のりんご賞をミロコマチコさんが受賞
2015年に出た子どもの本〈上半期〉から
2015年7月の新刊から
2015年5月、6月の新刊から(追加あり7/2)
2015年4月の新刊から

2016年5月、6月の新刊から(その1)


5月~6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、(その1)では絵本のおすすめの本をいくつか紹介します。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。(その2)で幼年童話や長編の読物などを紹介します。(その2)のUPは6月末を予定しています。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 【絵本】

『すずめくん どこでごはんたべるの?』たしろちさと 福音館書店 2016/05/15

 福音館書店ちいさなかがくのとも2008年4月号がハードカバーになりました。小さなすずめの目線で動物園の動物たちが描かれています。すずめは自分専用の餌場を持たない代わりに、いろんな動物たちから餌のおすそ分け(つまみ食い?)をもらっているのですね。カバにキツネにライオン、動物たちがどんな食事をしているかも知ることが出来ます。 

 

 『夜空をみあげよう』松村由利子/文 ジョン・シェリー/絵 福音館書店 2016/5/15 

夜空をみあげよう (福音館の科学シリーズ)
松村 由利子
福音館書店
2016-05-11

夏の夕方にベランダで洗濯物を取り込んでいて一番星をみつけたはるか。それがきっかけで家族中での夜空の観測が始まります。子どもたちが関心をもったことを一緒に探求しようとしてくれる両親の姿勢はとても素晴らしいと思います。この絵本は科学絵本ではないのですが、読み終わると夜空を見上げてみたくなる、そんな作品です。「8月のおはなし会☆おすすめプラン」のその2としても、今回取り入れてみました。(→夏の夜に

 

『わたしのこねこ』澤口たまみ/文 あずみ虫/絵 福音館書店 2016/5/20

わたしのこねこ (福音館の科学シリーズ)
澤口 たまみ
福音館書店
2016-05-18

福音館の科学シリーズとして出版されました。わたしのところにやってきた小さな黒ねこ。「くろ」と名付けた子猫と仲良くなるために、前から家にいる「トラ」とのやりとりを通してねこの気持ちを理解していきます。ねこの気持ちがわかって、どんどん仲良しになれると嬉しいですね。切り絵で描かれたねこの表情がとても可愛らしい作品です。

 

『ぺんぎんたいそう』齎藤槙/作 福音館書店 2016/6/5

ぺんぎんたいそう (0.1.2.えほん)
齋藤 槙
福音館書店
2016-06-01

「こどものとも0.1.2」の2013年10月号でとても好評だった作品がハードカバーになりました。赤ちゃん向けの絵本ですが、大きい子に読んであげても「おっ」という感じで、最後の「おしりをふって~ またあした」というところでニンマリします。赤ちゃん向けのおはなし会でも大活躍しそうな1冊です。こちらも「8月のおはなし会☆おすすめプラン」に取り入れました。(→夏のいちにち

 

『ぞうきばやしのすもうたいかい』広野多珂子/作 廣野研一/絵 福音館書店 2016/6/5

「こどものとも年少版」2012年7月号のハードカバー版です。ぞうきばやしの切り株の上で虫たちの相撲大会です。カナブンとタマムシの勝負ではカナブンが勝つのは順当なのですが、ダンゴムシとカマキリの勝負ではなんとダンゴムシの勝ち。その他にもいろいろな虫たちが勝負をします。意外な結果に子どもたちも喜ぶことでしょう。絵は写実的ですが、内容は科学絵本ではなく、小さな子どもたちにふさわしいおはなし絵本です。 

 

『みみずくのナイトとプードルのデイ』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2016/6/1 

みみずくのナイトとプードルのデイ
ロジャー・デュボアザン
ロクリン社
2016-06-01

 みみずくのナイトとプードルのデイはひょんなことから仲良くなります。でも夜行性のナイトと、夜になると家に入れられてしまうデイはなかなか会うことが出来ません。お互いに餌を相手のねぐらに置いていくだけのすれ違いが続きます。そのうち夜になると台所のドア越しに会話をするようになります。「フーッ、フーッ、ホー」「ウー、ワァー、ワァー」という鳴き声で家の人は寝付けません。デイを地下室に閉じ込めると、鳴き交わす声はますます大きくなりました。すると子どものボブがひらめきます。それはみんなが幸せになれる解決策でした。読後感がとても爽やかで心温まる1冊です。

 

『ハワイ島のボンダンス』いわねあい/文 おおともやすお/絵 福音館書店 2016/6/10

 ハワイに住む日系人たちの間で長い間大切に伝統が守られている「ボンダンス」つまりは「盆踊り」について、詳しく調べた福音館の科学シリーズです。作者のいわね氏は、ハワイを訪れた際に一世紀以上前に移住した日系人が心の拠り所としてきたハマクア浄土院というお寺と出会い、日系人の歴史や生活について調査をするようになりました。この絵本では、小学生のマサルが、ハワイに嫁いだ姉を尋ねる祖母の旅に父親と共に同行し日系人の暮らしを初めて知るという設定です。マサルの目から見た「ボンダンス」の様子を描き、日系人の文化を理解する読物として読み応えがあります。

 『小さなサンと天の竜』チェン・ジャンホン/作 平岡敦/訳 徳間書店 2016/6/30 

小さなサンと 天の竜 (児童書)
チェン ジャンホン
徳間書店
2016-06-11
 
『ウェン王子とトラ』や『この世でいちばんすばらしい馬』、『ハスの花の精リアン』、『ロンと海からきた漁師』(いずれも平岡敦/訳 徳間書店)に続く、チェン・ジャンホンの絵本です。三つの高い山に囲まれた谷に小さな集落がありました。谷では、生活が不便であることから村人はみんな山を降りていましたが、まもなく赤ん坊が生まれる家族だけは谷に残ります。生まれてきた男の子はサンと名付けられすくすくと育ちます。サンはそのうち家族を手伝うようになり、険しい山の暮らしが年々辛くなる母親のために山を動かそうと思い立ちます。毎日、少しずつ、つるはしで山を削っていくサン。サンのひたむきな願いと努力は、ある時、不思議なおじいさんと出会うことで大きく動き出します。大胆で力強い絵が印象的です。
 
(作成K・J)

2016年4月、5月の新刊から


4月~5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。一部3月末に出版されているものも含まれています。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介しますので、翌月以降になることもあります。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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絵本

『こうまくん』きくちちき 大日本図書 2016/3/25

こうまくん
きくち ちき
大日本図書
2016-03
 
3月末に出版されていたきくちちきさんの最新刊です。先月、見落としていました。春を迎えて生命の力みなぎるままに走り回るこうまの表情が、大胆で流れるような筆致で描かれています。テンポよく読めて、爽快感を感じることができます。幼い子どもたちも、子ども時代はとにかく走り回って自分の好奇心をたっぷり満たして欲しいと願います。
 
 
『ねずみにぴったりののりもの』マリー・ホール・エッツ/作 こみやゆう/訳 好学社 2016/5/26 
ねずみにぴったりの のりもの
マリー・ホール・エッツ
好学社
2016-05-23
 
『もりのなか』など長く愛される作品の多いマリー・ホール・エッツ。1月にはこの絵本と同じこみやゆうさんの翻訳で、エッツがセツルメント活動に関わっていた時の実話をもとに、移民の子どもが懸命に字を覚えていく様子を描いた『ロベルトのてがみ』(好学社)も出版されました。それに続く訳出絵本でエッツの1964年の作品です。『もりのなか』ほかのエッツの絵本とは少し絵柄も構図も違っているので、最初は「ほんとにエッツの絵かしら?」と思ってしまいました。ねずみ一家が子供部屋でジョニーが出しっぱなしにしたのりもののおもちゃを発見。自分たちにぴったりと喜ぶのですが・・・色合いも含めて新しいエッツの絵本との出会いになることでしょう。
 
 
児童書
『くろグミ団は名探偵 カラス岩の宝物』ユリアン・プレス/作・絵 大社玲子/訳 岩波書店 2016/4/22


新刊をチェックしに通っている銀座教文館ナルニア国には「文字だけの本をずーっと読んでいくのが苦手な人も楽しく読める」とPOPに書いてあり、手に取りました。(ナルニア国ブログ記事→こちら)横書きで、見開きの左側が文章、右側は細かく描かれたイラストで、各ページに絵さがしが必ず入ってきます。文字を読むのを苦手とする小学校高学年の子達が図書室の後ろの方で『ウォーリーをさがせ』に夢中になっていたのを思い出します。ただ、単に絵さがしの本かというと、そうにはあらず、物語の方にもぐいぐい引き込まれていくという不思議な力を持っている作品です。なお岩波少年文庫から出ている『くろて団は名探偵』(ハンス・ユルゲン・プレス 岩波少年文庫 2010)に題名が似ており、そのパクリかしらと思いましたが、『くろて団・・・』の作者の息子の作品が、『くろグミ団は名探偵』です。まずは、読むのが苦手な子に、『くろグミ団・・・』を手渡しておいてから、読了後に『くろて団・・・』をそっと手渡してみるのもよいかもしれません。
 
 
『玉川百科 こども博物誌 動物のくらし』小原芳明/監修 高槻成紀/編 浅野文彦/絵 玉川大学出版部 2016/5/20
動物のくらし (玉川百科 こども博物誌)
玉川大学出版部
2016-05-19
 
 日本で初めて子どものための玉川児童百科辞典が出版されたのは1932年(昭和7年)のことでした。子どもが自学自習できるようにと時間をかけて編纂された子ども向け百科事典は、戦後も続けられてきました。その後1979年(昭和54年)に出版されたあとはしばらく更新がないままとなってきました。今年は玉川学園90周年を迎え、玉川百科こどもの博物誌の記念出版が始まりました。その第1巻が『動物のくらし』です。玉川百科こどもの博物誌について書かれたこちらのサイトにあるように、調べるというよりはむしろ読み通すことで対象を詳しく知っていくための本になっています。また自分でするフィールドワークや自由研究に対応できるように、巻末に読書案内と関連施設のリストが整備されているのもありがたいことです。全12巻刊行の予定。公共図書館や学校図書館にはぜひ置いておいてほしいシリーズです。
 
 
 
その他
『疾走した画家 ランドルフ・コールデコット』レナード・Sマーカス/著 灰島かり/訳 BL出版 2016/5/1
レナード・S. マーカス
BL出版
2016-05
 
アメリカの優れた絵本に贈られる「コールデコット賞」、その名前の由来となったランドルフ・コールデコットの生涯と、彼が子どもの本に果たした功績について、彼や、同時代を生きた画家たちの絵をふんだんに使って描いた絵本スタイルの本です。 著者はアメリカの児童文学を研究するレナード・マーカス氏。先日もJBBY主催のマーカス氏の講演会が開催されたところです。絵本の仕事をしていると「コールデコット」という名前は何度も何度も口にするのに、彼が15歳で銀行員として働いていたこと、その傍ら絵を描き続いけていたこと、26歳で銀行員をやめ、絵で食べていくと決意したこと、32歳の時『ジャックがたてた家』、『ジョン・ギルビンのこっけいな出来事』の2冊の絵本が出版されたこと、その後アメリカに新天地を求めて渡ったにも関わらず渡米直後に40歳を目前に病死してしまうことなど、初めて知ることが多くありました。短い生涯ではあったものの、「子どもに最良の本だけを提供することを使命としていた」1900年代初頭の熱心な公共図書館員によって「コールデコットの絵本はほかの絵本作家が見習うべき理想の芸術性を示していた。」(p59)として、彼の名を冠して名誉ある賞が作られたことは、ほんとうに素晴らしいことと思います。この本を読みながら、子どもたちに何をどう選んで手渡すべきか、再確認できたように思います。 
 
 
『わんぱく天国』佐藤さとる/著 岡本順/画 ゴブリン書房 2016/3
わんぱく天国
佐藤 さとる
ゴブリン書房
2016-03
 
『わんぱく天国』はこれまでいろいろなバージョンで出版されてきました。この作品は、作者があとがきで「さて、いままで何度か装いを替えて刊行している本作ですが、このたび若干の加筆と修正をおこないました。いわば決定版『わんぱく天国』です。」(p213)と記している通りです。昭和十年代の横須賀市を舞台に繰り広げられる子どもたちによる秘密の人力飛行機建造計画。知恵を出し合い、力を合わせて目的に向かっていく子どもたちの姿はとてもたくましい。今、こんなふうに大人の干渉を一切受けずに遊び倒す経験が出来る子は少ないだろうなと思いました。「生きる力の育成」「コミュニケーション能力を身につけさせる」と声高に叫ぶ教育関係者たちに、いやこうやって異年齢の子どもたちだけでしっかりと遊び倒せる時間と環境を子どもたちに取り戻すことが何より大切だと知ってほしいと願わずにいられません。
 
(作成K・J)
 

2016年3月、4月の新刊から


3月に出版されたもののうち見落としていたものと、4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介しますので、翌月以降になることもあります。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。奥付の出版年月日とAmazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

絵本

『きかんしゃボブ・ノブ』ルース・エインズワース/作 安徳瑛/画 上條由美子/訳 福音館書店 2016/3/5

きかんしゃ ホブ・ノブ (こどものとも絵本)
ルース・エインズワース
福音館書店
2016-03-02

『こすずめのぼうけん』『ちいさなろば』など小さなものへの優しい眼差しで溢れる作品を多く発表しているイギリスの女流作家ルース・エインズワースの絵本です。「こどものとも年中向き」1985年8月号がハードカバーになりました。きかんしゃホブノブに次々動物が乗り込んで遊園地へ遊びに行きます。トンネルを怖がる動物たちにホブノブは素敵な配慮もしてくれます。電車・汽車好きの子どもにはたまらない1冊でしょう。

 

『かくれんぼ 朝鮮半島のわらべうた』池貴巳子/文・絵 福音館書店 2016/3/10


かくれんぼ 朝鮮半島のわらべうた (日本傑作絵本シリーズ)

 

子どもたちの生活に密接な関係だった「わらべうた」。日本だけでなくさまざまな国で口承で伝わってきていますが、この絵本は朝鮮半島に伝わるわらべうたを子どもたちの素朴な表情の絵とともに紹介してくれています。池さんの描く絵はその柔らかいタッチと色合いが素敵で、とくに表紙は韓国の国花木槿(ムクゲ)の絵はこの絵本が持っている魅力をストレートに伝えています。

 

『バンブルアーディ』モーリス・センダック/作 さくまゆみこ/訳 偕成社 2016/4

バンブルアーディ
モーリス・センダック
偕成社
2016-04-13

『かいじゅうたちのいるところ』をはじめ、多くの子どもたちに愛される絵本を作り続けたモーリス・センダックが2012年に亡くなる前年の2011年に描いた作品です。ぶたのバンブルは9才までお誕生日のお祝いをしてもらったことがありませんでした。両親と死別しおばさんが引き取ってくれた今年こそ9才になるお祝いをしてもらえることに!でもバンブルはおばさんが予定していたよりも早い時間に仮装した友だちをご招待。ああ、子ども達だったら、こんな風に大騒ぎ出来たら嬉しいはず!(でもおとなにとっては大変)そんな子どもの側に立った絵本を最後にこうして残してくれたことに感謝したいと思う絵本です。

 

『路線バスしゅっぱつ!』鎌田歩/作 ランドセルブックス 福音館書店 2016/4/15

路線バスしゅっぱつ! (ランドセルブックス)
鎌田 歩
福音館書店
2016-04-13

福音館書店の小学校1、2年生を対象としたランドセルブックスシリーズの新しい1冊です。子どもだけで路線バスに乗って目的地へ行くだけでも、なんだかすごい冒険ですよね。そんなわくわくした気持ちが伝わってくる1冊です。またバスの構造や、運転台の細かな描写など、物語を楽しむだけでなく知識の絵本としても楽しめる1冊で2度美味しい本です。細い道路で、対向車と離合するところの絵などは、ハンドルワークとタイヤの動きも図で説明されていて、乗り物好きにはたまりません。絵本というよりは、自分で読み始めた子ども向けの本という出版社のくくりですが、絵がふんだんに使われていて、ページ数も32ページと少ないので絵本の範疇に入れて紹介しました。

『ねこどけい』岸田衿子/作 山脇百合子/絵 福音館書店 2016/4/25

ねこどけい (こどものとも絵本)
岸田 衿子
福音館書店
2016-04-20

こちらも『きかんしゃボブノブ』と同じく「こどものとも年中向き」からのハードカバー化された絵本です。2009年4月号として発行されたものです。岸田衿子さんは2011年4月に82歳で亡くなられていますから、ちょうど80歳の時の作品です。鳩時計の鳩と遊びたがって壊してしまう猫の「ねねこ」。ことちゃんは仕方なく時計屋さんに修理を頼みに行きました。すると時計屋さんは、修理するだけでなく素敵なものを作ってくれました。愛らしい「ねねこ」の姿は好奇心いっぱいの子ども達と重なります。

 

『小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車』かこさとし/作 偕成社 2016/5/1

出発進行! 里山トロッコ列車 小湊鐵道沿線の旅
かこ さとし
偕成社
2016-04-23

小湊鐵道が観光用のトロッコ列車を走らせることになり、そのポスターに絵を描いてほしいと小湊鐵道の石川社長に依頼されたことが、この絵本の生まれるきっかけになりました。これは単なる絵本というよりは、沿線の自然環境や歴史などを織り込んだガイドブックのようです。たとえば昨年発見された77年前の逆転層(地球の南北を示す地磁気が現在と逆になっていて、地球の成り立ちについて貴重な資料となる地層、国際地質学会でチバニアンと名付けるよう審議中)のことや、1300年前の壬申の乱にまつわる伝説なども盛り込み、とても面白い内容となっています。春や秋は花見や紅葉狩り、夏にはキャンプやハイキングにトロッコ列車に乗って行ってみたくなりました。

児童書

『雨の日のせんたくやさん 森の小さなおはなし』にしなさちこ/作・絵 のら書店    2016/4/15

森の片隅で暮らす小さな生き物、かたつむりやからすにくまねずみ、しまりすにはりねずみ、ふくろうや虫たちが登場する短い物語が6つある本です。中には「まっくろ雪のこり」も登場。さあ、これは一体なんでしょう?私も最初は真っ黒な生き物かしら?「こり」っていう名前かしら?と思いながら読み進めると・・・意外な展開にびっくりすると同時に心がほっこりとするのでした。ひとつひとつのお話は短くて、字を読み始めた子どもたちが自分で読んだり、家族の人が一話ずつ読んであげるのにちょうど良い本です。この物語と絵はにしなさんが両方担当していますが、実は山梨県大月図書館の館長さん。図書館のおはなし会で朗読してあげても良いでしょう。

 

『日本全国ふしぎ案内2 菜の子ちゃんとカッパ石』富安陽子/作 YUJI/画 福音館書店 2016/4/25

富安陽子さんの「日本全国ふしぎ案内」シリーズの2巻目です。(1巻目は昨年3月に『菜の子ちゃんと龍の子』として出版されています)座敷童子のようにいつの間にかクラスにいて誰もが当然のように受け入れていて、けれども主人公の記憶にしか残っていない不思議な転校生の山田菜の子ちゃん。1では、奈良の吉野に伝わる伝説をベースにはぐれた龍の子を水神の祭りの日に天に昇らせようとしましたが、今回は平家が滅んだ壇ノ浦のある下関に伝わる河童伝説をベースに物語は展開していきます。いきなり今夜赤間神宮で行われるかっぱ評定までに、昔の洪水で流れてしまったかっぱ石をみつけて元の場所に置くというミッションに菜の子ちゃんと関わることになったトオル。いろんな助っ人が現れ、あれよあれよという間にミッション達成。なのに、どうも本当にあったことなのに、次の日には菜の子ちゃんの姿は学校にはなく・・・少し長いお話に挑戦したくなる2、3年生におすすめの不思議なお話です。

 

YA向け

『お金さえあればいい?子どもと考える経済のはなし』浜矩子/著 高畠純/絵 クレヨンハウス 2016/3

大人は知らない・子どもは知りたい! お金さえあればいい? 子どもと考える経済のはなし
浜 矩子
クレヨンハウス
2016-03-12

 

三菱総合研究所主任研究員として英国駐在事務所長などを務めたあと、同志社大学大学院で教授を務める浜矩子さんが、「お金はなんのためにあるのか」「お金はどうやってお金になるのか」など、子どもたちが抱くであろう疑問に明確に答えてくれる本です。経済学の父といわれるアダム・スミスは「経済とは基本的人権の上に成り立つ」と説いたとして、「本当の経済とは利益優先ではなく、人をしあわせにするための手段である」と明快に伝えてくれています。格差の広がる中で、幸福な生き方とはなんだろうと悩む若い世代にぜひ手渡したい1冊です。

 

『18歳からの民主主義』岩波新書編集部 岩波書店 2016/4/20

今年の夏の選挙から、選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられます。ちょうど我が家の四番目、末っ子の世代が今年その年齢にあたります。区役所からは、ひとりひとりに「選挙権が与えられました。選挙に行きましょう。」という内容の書類も届きました。いよいよ現実になったんだなと実感しました。今回、初めて投票する権利を持つ若い世代に、その1票の持つ意味を先輩たち(憲法学者や社会学者、経済学者や作家、芸術家、活動家など)や同世代を代表するアイドルグループのメンバーなどが語りかけるように問う内容になっています。図もふんだんに取り入れ、横書きで読みやすくなっています。ぜひ多くの若い人たちに読んで欲しいと思います。

 

その他

『幼い子は微笑む』長田弘/詩 いせひでこ/絵 講談社 2016/2/15

出版されてすぐ手にしていたにもかかわらず、3月に紹介しそびれていた1冊です。昨年の5月に亡くなった長田弘さんの詩に、いせひでこさんが柔らかいタッチで絵を描きました。二人のコラボレーションは『最初の質問』に続いて2冊目。人が生まれて、人になっていく過程の、「微笑む」ことに焦点を当てた詩は、心にずんと響きます。「まだことばを知らないので、幼い子は微笑む。微笑むことしか知らないので、幼い子は微笑む もう微笑むことをしない人たちを見て、幼い子は微笑む。」大人になるにつれて、ことばを獲得するにつれて失っていくものの多さを詩人は、静かに見つめていたのだと、そしてそれは私自身に問われているのだと感じました。子ども向けというよりは、子どもと常に相対する大人にぜひ読んでほしい詩です。

 

『小さな本の大きな世界』長田弘/著 酒井駒子/画 クレヨンハウス 2016/4/8

小さな本の大きな世界
長田 弘
クレヨンハウス
2016-04-08
 
こちらも長田弘さんの本です。長田さんがこれまでに書き溜めてこられた「本にまつわるエッセイ」145篇がぎゅっと詰め込まれています(2004年4月~2015年5月まで東京新聞・中日新聞連載の「小さな本の大きな世界」と、2005年4月~2006年3月までUCカード会員誌『てんとう虫』連載の「子どもの本のまわりで」を一部修正して集めてあります)。童話や小説、絵本に随筆、図鑑に至るまで、長田さんの選んださまざまなジャンルの本への長田さんの想いが伝わってきます。この中にきっとあなたの大好きな作品もあるはずです。また、未読の作品は読んでみたくなります。絵は酒井駒子さん。こちらの原画展は現在クレヨンハウス東京店絵本売り場で見ることが出来ます。(2016年5月8日まで開催中。詳しくは→こちら

(作成K・J)

 

2016年2月、3月の新刊から


2月から3月にかけて出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。なお、こ

こに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介になりますので、翌月以降に紹介をします。また3月後半に出版される本も来月紹介したいと思います。

絵本
『でんしゃがはしる』山本忠敬/作 福音館書店 2016/2/1 
 
でんしゃがはしる (福音館の単行本)
山本 忠敬
福音館書店
2016-02-01

『しょうぼうじどうしゃじぷた』『とらっくとらっくとらっく』など、子どもたちに長く愛されている乗りもの絵本の第一人者山本忠敬さん(1916~2003)の生誕100年を記念して特別復刊された絵本です。品川駅を出発した山手線外回りの電車が、山手線を一周してまた品川駅に戻ってくるまでを描いています。この絵本が描かれた1978年当時の車両が描かれており、現在とはずいぶん違っている部分もあります。例えば、渋谷駅では東急東横線は地下に潜り、山手線と並ぶことはなくなりましたし、新幹線も「ひかり」と「こだま」の旧車両、そのほか既に引退してしまった特急もたくさん描かれています。それでも山手線が一周走るうちにどんな私鉄と出会うのか、とてもわかりやすく電車好きな子どもには喜ばれることでしょう。でも、この絵本、当時を懐かしく思い出す高齢者や、一般の鉄道好きな利用者にも手渡したくなりますね。

『とっきゅうでんしゃ あつまれ』山本忠敬/作 福音館書店 2016/2/1 

この絵本も、山本忠敬さんの生誕100年を記念して復刊されました。どの特急電車も1987年当時のもので、新幹線もすでに新型車両に変わっていますし、寝台特急も次々引退していて、懐かしいという気持ちになります。それでも、山本さんの描く電車には温か味があり、これらに乗っていろいろな人が旅をしたのだという想像をかきたてます。この絵本も、乗りもの好きの子ども達だけではなく、広い世代に手にとってほしいと思います。

『ひみつのいもうと』アストリッド・リンドグレーン/文 ハンス・アーノルド/絵 石井登志子/訳 岩波書店 2016/2/26 

ひみつのいもうと
アストリッド・リンドグレーン
岩波書店
2016-02-26
 
スウェーデンで1973年に出版されていたアストリッド・リンドグレーンの絵本が日本で初訳出されました。バーブロという女の子には、おかあさんもおとうさんも知らない秘密があります。それは、ふたごのいもうとがいるってこと。いもうとの名前はイルヴァ・リー。バラのしげみのうしろにある穴の中に住んでいます。バーブロは、お母さんが生まれたばかりの弟の世話で忙しいので、バラのしげみのうしろに出かけていって、ここで日中たっぷりとイルヴァ・リーと遊んだり、冒険をしたりして過ごします。日が暮れて家に戻るとお母さんは顔を真っ青にして心配して待っていました。この絵本は、アストリッド・リンドグレーンの「はるかな国の兄弟」や「ミオよわたしのミオ」を彷彿とさせる幻想的な世界が描かれています。この絵本を読んだあとに、リンドグレーンの読み物へとつなげてあげたいと思いました。 
 
『おはなしかがくえほん うんちコロコロうんちはいのち』きむらだいすけ/作 岩崎書店 2016/2/22

 『ゴリラのジャングルジム』(集文社 2004 初出は1992年 福武書店刊)というゴリラの親子の心温まる作品のあるきむらだいすけさんの最新作。古代エジプトでは太陽神に似ているとして神聖視されたり、ファーブルもその不思議な生態に魅了された昆虫、フンコロガシが主人公。動物たちの糞もその食べるもので、形状などが違っており、フンコロガシが好む糞があるということを、わかりやすく教えてくれます。そしてその糞は次の命を育むゆりかごになっているということから、作者のきむらさんはこの絵本を通して、子どもたちにいのちのつながりについて考えてほしいとのことです。動物好きな子にも、虫好きの子にも、「うんち」に過剰反応する年代の子どもたちにも手渡したい1冊です。

『父は空 母は大地 インディアンからの伝言』寮美千子/編・訳 篠崎正喜/画 ロクリン社 2016/3/1

 chichisora父は空 母は大地―インディアンからの伝言 [大型本]

篠崎 正喜
ロクリン社
2016-03

 1995年にパロル舎から寮美千子さんの翻訳で、篠崎正喜さんの絵で出版されていた『父は空 母は大地 インディアンからの手紙』を、文章も絵も見直しをした改訂版です。1492年の新大陸の発見の後、アメリカ大陸にはいくつかの植民地が出来ますが、ヨーロッパからアメリカ大陸の多くの移民が押し寄せたのは1620年のメイフラワー号での清教徒の移住以降。英仏が植民地の奪い合いをするなかで、先住民族であるインディアンは、その住む土地をどんどんと奪われ、追われていきます。それから月日が流れること、230年以上経った1855年に当時の第14代大統領フランクリン・ピアスは先住民の土地を買い取る代わりに居留地を与えると申し出ます。これ以上、無駄な流血は避けたいと判断した先住民の酋長シアトルが、大統領との条約締結を受ける際に送った手紙が、この作品の元になっています。空や大地は自然のもの、人がお金で売り買いするものではない、大地と空を汚してはならないという酋長シアトルの言葉は、現代を生きる私たちにも力強いメッセージを伝えてくれています。絵本ですが、小学校高学年からYA世代、大人に読んで欲しいなと思います。ロクリン社のサイト→こちら

 
児童書
 
『きょうはかぜでおやすみ』パトリシア・マクラクラン/文 ウィリアム・ベン・デュボア/絵 こみやゆう/訳 大日本図書 2016/2/24
パトリシア マクラクラン
大日本図書
2016-02-24
こみやゆうさんが翻訳を手がける『ハリーとうたうおとなりさん』、『ウォーリーと16人のギャング』、『へっちゃらトーマス』に続く大日本図書「こころのほんばこ」シリーズの新しい1冊です。風邪で学校を休んだエミリー、実は家で仕事をしているパパと過ごせてご機嫌です。病人であることで、わがままに振舞うエミリーとそれを優しく包み込むパパとのやりとりも、なかなか素敵です。ひとりで読めるようになった低学年向けの1冊です。「こころのほんばこ」シリーズは『まるごとごくり!』が3月に出版されていますが、まだ手にしていません。次回紹介したいと思います。

 『ポンちゃんはお金もち』高楼方子/作・絵 こぐま社 2016/2/19

 コータのところにあらわれた不思議な友達、ポンちゃん。どこかで見たことがあるのですが、コータは思い出せません。お母さんに勉強するように言いつけられたのに、ポンちゃんに誘われてはらっぱ公園での移動遊園地へ出かけます。ポンちゃんはポケットにたくさん10円玉を持っていて、気前よくコータにいろいろな体験をさせてくれます。満足して家に帰ると不思議なことに、時間が経っておらず、お母さんが拾い上げた貯金箱を見て、その不思議な友達の正体がわかります。不思議な体験を親子で共有できるのは素敵だなと思いました。こぐま社が創業50周年に出版した「こぐまのどんどこぶんこ」、小学校低学年向きのやさしい読み物シリーズの1冊です。

 『たらふくまんま』馬場のぼる/作・絵 こぐま社 2016/2/19

1972年に学習研究社から出版されたいた馬場のぼるさんの作品が、こぐま社の「こぐまのどんどこぶんこ」で復刊されました。食いしん坊で乱暴者の山男、たらふくまんまは、村へ行っては食べ物を奪ってばかりの迷惑者です。村人はなんとかたらふくまんまを懲らしめようとするのですが・・・馬場のぼるさんらしい奇想天外、でもホッとするおはなしで、自分で本を読み始めた子どもたちにおすすめの1冊です。

『イワンとふしぎなこうま』ピョートル・エルショーフ/作 浦雅春/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2016/2/17

イワンとふしぎなこうま (岩波少年文庫)
ピョートル・エルショーフ
岩波書店
2016-02-17

 かつて『せむしの小馬』というタイトルで紹介されていた作品が、タイトルを変更し、訳も改めて、この度岩波少年文庫の1冊として出版されました。韻を踏んだ詩の形式そのままに新たに翻訳を改め、出版されました。(例えば王様がイワンに火の鳥を取りに行くよう命ずる箇所:旧訳「けれども、てみじかに言うならば/わたしは、おまえが火の鳥を、/わたしが命令するならば、/宮殿のへやへつれてくると、/じまんしていること、しっている。/な、いいか、つべこべ言わず、/火の鳥つくれてくるよう、ほねをおれ」→新訳「きけばわしがひとことめいじれば/おまえは火の鳥つかまえて/このしろにつれてまいるそな/そんなじまんばなしをしえおるそうな/よいかつべこべいわず/ここに火の鳥つれてこい」 声に出して読みやすく、耳心地よい翻訳に改められています)挿絵は旧版の岩波少年文庫(網野菊/訳 1978)と同じウラジミール・プレスニャコフの趣のある絵が使われています。日本語でも韻をふみ、リズミカルに読める文章です。ぜひ声に出して読んであげてほしいと思います。

 『てのひら島はどこにある』佐藤さとる/作 池田仙三郎/絵 理論社 2016/2

てのひら島はどこにある
佐藤 さとる
理論社
2016-02

『だれも知らない小さな国』の作者、佐藤さとるさんが1965年に出版した『てのひら島はどこにある』という、ほっこりと優しい気持ちになれる短い作品がこの度初版の挿絵・装丁で50年ぶりに復刊されました。実は同じタイトルの作品が1981年にも同じ理論社から出版されていましたが、こちらの挿絵は林静一になっています。ある時、おばあちゃんが孫娘に「おもしろいおはなしをしてあげようか」と言って“てのひら島”のおはなしをしてくれます。“てのひら島”とは、おはなしの主人公の太郎が、とある家のトマトを荒らしたことでおしおきをされ、それを忘れないためにお父さんが取った手型が島のように見えたことから名づけられました。“てのひら島”を舞台に子どもたちの空想が織り成す世界と、現実の暮らしとの境界を面白く描いた作品です。梨木香歩さんが子ども時代に読んで「私自身の人生と生活に、それから仕事にも、決定的な方向づけをもたらしました。」と述べている作品であり、今、読んでも新鮮な気持ちになれるファンタジー作品です。
 

 ノンフィクション

『奇想天外発明百科 ややっ、ひらめいた!』マウゴジャタ・ミチェルスカ/文 アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ/絵 阿部優子/訳 徳間書店 2016/2/27

奇想天外発明百科: ややっ、ひらめいた! (児童書)
マウゴジャタ ミチェルスカ
徳間書店
2016-02-27
 
人間は考えることの出来る動物です。こんなことが出来ればよいのに、こんなものがあれば生活が便利になるのに、という思いを、なんとか実現させようと、想像力を働かせ、さまざまな困難に挑戦してきたのが、発明家たち。それらの発明が今につながって、現代の私たちの生活を便利で豊かなものにしています。この本は紀元前3世紀ごろから現代までの奇想天外な28点を『マップス 新・世界図絵』で話題になったポーランドの絵本作家が、発想を形にしようと努力してきた人々の姿を生き生きと描き出してくれました。
 
 『田んぼのコレクション』内山りゅう/文・写真 フレーベル館 2016/3
 
田んぼのコレクション (ふしぎコレクション)
内山 りゅう
フレーベル館
2016-03

 『土のコレクション』や『時間のコレクション』などのブックトークでも使いやすいフレーベル館のシリーズ「ふしぎコレクション」に新しい仲間が加わりました。日本人の主食である米を作る田んぼに焦点をあてています。日本の原風景にもなっている田んぼは、米を生産するだけではなく、生き物の棲家ともなっていて、豊かな生命を育む場所でもあるのです。「お米」についての調べ学習教材としても使えそうです。ぜひコレクションに追加しましょう。

2016年1月の新刊から


昨年の12月後半から、今年の1月にかけて出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。なお、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。長編やYA向けの本は、読了してからの紹介になりますので、また次の月に紹介します。

絵本

『わたしのいえ』カーリン・エリス/作 木坂涼/訳 偕成社 2016/1/7

わたしのいえ
カーソン エリス
偕成社
2016-01-07

丘の上に建つ一軒の家から始まって、いろいろな家について思いを巡らせる。大きな家、小さな家、鳥やけもの、虫たちにとっての家、物語に出てくる家。「家」は私たちを守り、私たちが安らぐ、そんな場所。それぞれの人に、それぞれの生き方に合わせて家がある。そんなことを、美しいイラストとともに伝えてくれる1冊です。いろいろな家を思いめぐらせ、そしてまた自分の家に戻ってきます。戻る場所があるって素敵なことだなと思いました。

『ロベルトのてがみ』マリー・ホール・エッツ/作 こみやゆう/訳 好学社

ロベルトのてがみ
マリー・ホール・エッツ
好学社
2016-01-07

 『もりのなか』などの作品があるマリー・ホール・エッツの1967年の作品『BAD BOY,GOOD BOY』がこみやゆうさんの翻訳で、この度出版されました。エッツが若い頃にセツルメント運動(貧困地区の住民を援助する社会事業)に関わっていた時に出会った実在の少年をモデルにしている作品です。ロベルトは家族でメキシコからアメリカに移住してきたので、スペイン語しかわかりません。言葉が通じないことで、さまざまなトラブルを起こしてしまうのですが、子どもセンターに通い、字を覚えるようになって表情も変わってくるのです。大人の視点から読むと、子どもの貧困や、移民問題が話題になっている今、子どもたちにとって、言葉の問題が生活の中で大きな位置を示すのか、また適切な援助の手が差し伸べられることがいかに重要かわかります。でも、子どもたちの視点で読めば、自分で文字を書けた喜び、初めての手紙が家族の絆を守ったという喜びに大きな意味があるでしょう。絵本の形態ですが、文章はとても長いので、小学生向けにおすすめするとよいでしょう。

 

『ひとりぼっちのベロニカ』ロジャー・デュボアザン/作 神宮輝夫/訳 復刊ドットコム 2016/1/16

ひとりぼっちのベロニカ
ロジャー デュボアザン
復刊ドットコム
2016-01-16

1978年に佑学社から出版された『ひとりぼっちのベロニカ』は長く絶版となっていましたが、このたび復刊ドットコムから再編集ののち復刻されました。2015年11月に出版された『かばのベロニカ』に続く第2弾です。(「本のこまど」では紹介しそびれています。)何事にも興味津々のかばのベロニカは、また仲間たちから離れて高層ビルの立ち並ぶ街へやってきました。ビルの工事現場で、なにやら不思議な箱をみつけて乗ってしまいます。・・・ベロニカが巻き起こす事件は、いたずら盛りの子どもたちを惹きつけることでしょう。


『ペネロペひめとにげだしたこねこ』アリソン・マレー/作 美馬しょうこ/訳 徳間書店 2016/1/16

ペネロペひめと にげだしたこねこ (児童書)
アリソン マレー
徳間書店
2016-01-16

ペネロペひめは、真っ白なこねこを飼っています。ある日、こねこと一緒に遊ぼうとすると、こねこはピンク色の毛糸をからだに巻きつけたまま逃げ出してしまいます。お城のあっちの部屋、こっちの部屋とさまざまな騒ぎを起こしながら、ピンクの毛糸はどんどん伸びていきます。ペネロペひめが毛糸のあとを追って探しに行くと・・・とてもおしゃれで楽しい絵本です。

 

『しあわせないぬになるには にんげんにはないしょだよ!』ジョー・ウィリアムソン/作・絵 木坂涼/訳 徳間書店 2016/1/16

『ペネロペひめと・・・』と同時発売された絵本で、こちらは犬が主人公。犬としてしあわせに過ごすためには、どんなふうにすればいい?ということが犬の視点でユーモラスに描かれています。まずはどんな人間と一緒に住むかが一番大事!そしてどんなふうにふるまうか、たとえば食事についてはこんなふうに・・・「しょくじをすませたあとでも まだなんにもたべてないふりをすると もういちどもらえることがあります」 作者はファッションデザイナーとしても活躍しているだけに、こちらもおしゃれな絵本です。
  

児童書

『ウォーリーと16人のギャング』リチャード・ケネディ/作 マーク・シーモント/絵 こみやゆう/訳 大日本図書 2016/12/25

ウォーリーと16人のギャング (こころのほんばこ)
リチャード ケネディ
大日本図書
2015-12-25

 カウリックという町に、大人もふるえあがるような乱暴者のホグホーンとその手下の者、あわせて16人が押しかけてきます。ちょうどしょちょうとおまわりさんは釣りへ出かけて町には不在。大人たちは家にこもって鍵をかけ、ふるえていると・・・小さな男の子ウォーリーがホグホーンの前に現れて、力試しを申し出ます。5人の手下をかけっこで、5人の手下をはしごのぼりに、5人の手下を力比べに引き出して、勝たせたと思わせて実のところ、ホグホーンをぎゃふんと言わせてしまいます。その痛快さに、読んでいてひざを打ちたくなりました。自分で本を読めるようになった子に手渡したい1冊です。 

へっちゃらトーマス』パット・ハッチンス/作 こみやゆう/訳 大日本図書 2016/1/25

パット ハッチンス
大日本図書
2016-01-25
字をまったく覚えようとしないトーマスは、「きけん」と書いてあろうが、まわりの人が大きな声で注意しようとも、たった一言「かんけいないね」という言葉をはき、まったく無視をしてずんずん突き進みます。頭に緑色のペンキがかかろうとも、どんなトラブるを引き起こそうが、お構いなし。そうしてとうとう、トーマスはおまわりさんにつかまって・・・牢屋に保護された時に囚人のおじさんたちに字を教えてもらうと、今度はたちまち本が大好きに!絵本から読み物に移行する小学校低学年でも自分で読める幼年童話です。
 
『キキに出会った人びと 魔女の宅急便特別編』角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館書店 2016/1/25
 
 1985年1月25日に『魔女の宅急便』の1巻目が出版されてちょうど31年目の同じ日に、本編では触れられていなかった登場人物のその後や、裏の物語を集めた特別編が出版されました。Amazonでの流通開始日は2016年1月20日になっていますが、本の奥付には「2016年1月25日」となっています。キキが最初に居候したグーチョキパン店のおソノさんの小さい時の話、なぜ「グーチョキパン店」と名付けられたか?など興味深い「ソノちゃんがおソノさんになったわけ」や、コリコ町長が体験した不思議なおはなしなどが収められています。この本を読んでいると、また本編も読み直したくなります。この本をきっかけに、『魔女の宅急便』1~6巻を再び手にとってもらえるといいですね。
 
 

ノンフィクション

『生きものビックリ食事のじかん』スティーブ・ジェンキンス&ロビン・ペイジ/作 佐藤見果夢/訳 評論社 2015/12/23

生きものビックリ食事のじかん (児童図書館・絵本の部屋)
スティーブ ジェンキンズ
評論社
2015-12-23

美しいコラージュの技法を使って、動物たちに備わっている不思議な能力や習性を、子どもたちにわかりやすく伝えてくれる知識絵本。 「どうやって・・・さかなをつかまえる?」「どうやって・・・たまごをまもる?」「どうやって・・・葉っぱをつかう?」など6つのテーマにわかれています。本文では、「わあ、すごい!」と声があがりそうな特徴だけを伝えていますが、巻末に詳しい説明がつけられています。この本を入門書にして、動物たちが命をつなぐために、どのような生活をしているのか、さらに詳しく調べてみようとするきっかけになるとよいな、と思います。
(担当K・J)

2015年11月、12月の新刊から


 先月の新刊紹介で11月に出た本もいくつか紹介しましたが、見落としていた作品もありました。11月に出版された本も追加して新刊を紹介します。選書などの参考にしていただけるとありがたいです。 

絵本

『クリスマスイヴの木』デリア・ハディノ/文 エミリー・サットン/絵 三原泉/訳 BL出版 2015/11/1

デリア ハディ
BL出版
2015-11

 しっかりと植えられなかったために、曲がって大きくなれなかったモミの木は、クリスマスイブの夜になっても売れ残ったままでした。そのモミの木をもらった男の子は橋の下のねぐらへと持ち帰ります。その夜、ホームレス仲間のおじいさんがツリーのそばでバンドネオンを弾き鳴らし、そのまわりにクリスマスキャロルを歌う人の輪が出来上がります。きらびやかな家がなくても、豪華なご馳走がなくても、ささやかな喜びを分かち合う姿に心が温かくなります。その後、このモミの木は掃除のおじさんの機転で公園に植えられ大きく育っていくのですが、この男の子はその後どうなったかは描かれていません。男の子が幸せに育っていてほしいと願いつつこの絵本を閉じました。

 

『おもち!』石津ちひろ/作 村上康成/絵  小峰書店 2015/11/12

おもち! (にじいろえほん)
石津 ちひろ
小峰書店
2015-11-12

 ことば遊びの達人、石津ちひろさんのリズミカルで元気な言葉がお餅つきの情景を描き出します。村上康成さんのユーモラスな絵も、搗きたてで、よ~くのびるお餅にぴったり。昔はお正月を迎える準備にどこの家でも年末には臼と杵を出してきて餅つきをしたものですが、今では臼と杵で搗く餅つきは子どもたちには珍しいかもしれませんね。

 

『いちばんのなかよしさん』エリック・カール/作 アーサー・ビナード/訳 偕成社 2015/11

いちばんのなかよしさん
エリック・カール
偕成社
2015-11-18

 いつも何をするにも一緒だったお友達が、ある日突然いなくなってしまいます。やっぱり一緒がいい!と男の子は探しに出かけます。この絵本の裏見返しにエリック・カールの3歳の時の写真が載っています。当時仲良しだった女の子と、この絵本の表紙のようにぎゅ~っと抱きしめあっている写真です。エリックが幼少期を過ごしたニューヨークのお隣の女の子でした。でもエリックの家族はドイツへ引越し、長い年月が経つうちに相手の名前もわからなくなったままだったそうです。ところが、この絵本が出版されたことで写真に写っていた女の子のお嬢さんが気がつき、80年ぶりにお互いの存在がわかったそうです。素敵なおまけですね。

『かようびのドレス』ボニ・アッシュバーン/作 ジュリア・デーノス/絵 小川糸/訳 ほるぷ出版 2015/11/20

かようびのドレス (海外秀作絵本)
ボニ・アッシュバーン
ほるぷ出版
2015-11-20

先月、紹介した『おじいちゃんのコート』と同じように、大好きだった服がいつのまにか着古して小さくなるたびに、ほかのものに変身していくというおはなしの女の子版です。お気に入りのたくさんフリルのついたドレスが小さくなってしまった時、ママが「ぎゃくてんのはっそうがだいじ」といいながら、違うものに仕立て直してくれます。柔らかなパステルカラーで描かれた絵は、おしゃれが大好きな女の子の夢が詰まっているようにも見えます。

 

ユーゴ修道士と本をあいしすぎたクマ』ケイティ・ビービ/文 S.D.シンドラー/絵 千葉茂樹/訳 光村教育図書 2015/12/20

ケイティ ビービ
光村教育図書
2015-12-20
修道院の図書館から大事な経典を借りたまま返せなかったユーゴ修道士。それはクマに襲われた時にとっさに本を投げつけたからでしたが、クマはその味をしめてしまいます。ユーゴ修道士は別の修道院から経典を借り、仲間たちに助けてもらって写本を完成させます。そして経典を返しに行くのですが・・・本の味に目覚めたクマに出会わなきゃいいですね。この絵本を読んでいると中世の書物の作られる過程や、扱いについても興味を持つのではないでしょうか。中世フランスでほんとうにあったお話をベースに作られた絵本だそうです。

 

児童書

『どうぶつたちがはしっていく』長新太/作 子どもの未来社 2015/11/26

どうぶつたちがはしっていく 1 (長新太のおはなし絵本)
長 新太
子どもの未来社
2015-11-26

 「長新太のおはなし絵本」として『キャベツくんのおしゃべり』と2冊が同時に出版されました。絵本となっていますが、絵本から読み物へ移る幼稚園の年長さんくらいから小学校低学年の子どもたちにちょうどよい幼年童話です。「どうぶつたちがはしっていく」「ゾウのオネエサン」の2話が収録されています。とにかくおもしろい長新太ワールドが広がります。 

『キャベツくんのおしゃべり』長新太/作 子どもの未来社 2015/11/26

 こちらには「キャベツくんのおしゃべり」のほか、「ゾウのオジイサン」「こうえんのすなば」の3話が収録されています。長新太さんならではの、おかしくも、ちょっぴりシュールな世界が繰り広げられています。読んであげてもいいし、自分でも読める、そんな短いお話です。

『さかさ町』F・エマーソン・アンドリュース/作 ルイス・スロボドキン/絵 こみやゆう/訳 岩波書店 2015/12/17

さかさ町
F.エマーソン・アンドリュース
岩波書店
2015-12-18
 
リッキーとアンの兄妹は自分たちだけでランカスターに住むおじいちゃんを訪ねていくために汽車に乗っていました。ところが途中で橋が壊れて前に進めなくなり、「さかさ町」という見知らぬ町で一日待たされることになりました。この町はその名のとおり、なにもかもが逆さま。なんだかへんてこりんな町です。でも、読めばこんな町があればいいのになぁ~ときっと思うことでしょう。こちらも幼稚園年長さんくらいから小学生低学年向けの幼年童話です。
 
『ゆうかんな猫ミランダ』エレナー・エスティス/作 エドワード・アーディゾーニ/絵 津森優子/訳 岩波書店 2015/12/15
ゆうかんな猫ミランダ
エレナー・エスティス
岩波書店
2015-12-16
 
読み終わって感じたのは、どんな困難な時にも生命を生み育てる母性の強さでした。物語はうんと昔のローマの街。まだコロッセオでライオンのショーが行われていたような昔です。人間の家族に飼われていた母猫のミランダは、ある時蛮族が街を襲い火をつけたことから人間の家族と離れてしまい、迫り来る火と煙の中を子猫たちを連れて逃げていきます。途中で親猫からはぐれた子猫も一緒に・・・街外れのコロッセオに着いた頃には子猫の数は34匹。おまけに自分にも赤ちゃんが4匹生まれます。さあ、ミランダはどうやってたくさんの子猫たちを育て守っていくのでしょう。この物語の作者は『百まいのドレス』のエレナー・エスティス、そして繊細な絵はエドワード・アーディゾーニです。
 
『少年キム』ラドヤード・キプリング/作 三辺律子/訳  岩波少年文庫 岩波書店 2015/11/17
少年キム(上) (岩波少年文庫)
ラドヤード・キプリング
岩波書店
2015-11-18

少年キム(下) (岩波少年文庫)
ラドヤード・キプリング
岩波書店
2015-11-18
 
英国初史上最年少ノーベル文学賞受賞作家で『ジャングル・ブック』でも有名なラドヤード・キプリングの作品です。日本では『少年キムの冒険』(亀山竜樹/訳 世界名作全集 講談社 1960)、『少年キム』(斎藤兆史/訳 晶文社 1997)など既にほかの訳者によって発表されてきた作品ですが、この度若手翻訳家の三辺さんにより岩波少年文庫として出版されました。大英帝国が植民地としていた19世紀のインドを舞台に、13歳の孤児キムがチベットのラマ(高僧)と出会い、伝説の聖なる河を探す旅に出ます。当時ロシアもインドの覇権を狙っており、キムは英国側のスパイとしての活動もすることになります。利発なキムはスパイとして「大いなるゲーム」に加わりながらも、ラマの弟子としてその教えも彼の中に深く影響を与えていきます。多感な時期を懸命に生きるキムの姿から目が離せなくなります。三辺さんは今年5月には『ジャングル・ブック』を岩波少年文庫として訳していらっしゃいます。合わせて読んでほしいと思います。
 
 『お静かに、父が昼寝しております ユダヤの民話』母袋夏生/編訳 岩波少年文庫 岩波書店 2015/12/17
お静かに、父が昼寝しております――ユダヤの民話 (岩波少年文庫)
岩波書店
2015-12-17
 
紀元70年にローマ帝国がイスラエル王国を滅ぼして以来、世界中に散らばって生活を続けているユダヤ民族に伝わる昔話を集めて母袋さんが翻訳されました。世界各地に伝わる昔話が32編、旧約聖書の創世記の中から6編の合わせて38編が紹介されています。「あとがき」を読むと、これらの昔話は口承で伝えられ、記録されるようになったのは19世紀末になってからとのこと。20世紀以降中東問題の火種となり続けているイスラエル建国のことも含めて、ユダヤ民族が2000年もの間バラバラになりながらも伝えてきた文化、考え方に触れることができるのも、そのために多くの研究者の労があってのことと感じ入ります。どのお話も既知に富んだものばかりです。
 
その他
『10代のためのYAブックガイド150』金原瑞人、ひこ田中/監修 ポプラ社 2015/11/10
今すぐ読みたい! 10代のための YAブックガイド150!
ポプラ社
2015-11-11
 
金原瑞人さんとひこ田中さんが選んだYA世代向けのブックガイドです。この本の出版記念の金原さんのトークショーに行った際に、“ティーンエイジャーって、先生や親に隠れて本を読みたいわけで・・・ここに挙げているのはそんな本。決して良い本というわけではない。その世代って性のこととか、暴力とか、とにかく近づいちゃダメというものに近づきたい時代。そんな多感な時期に読んでほしい本を選んである”とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。自分も親や先生に反抗してた時期がありました。その時の気持ちを思い出して、YA世代に本を手渡せるといいなと思います。
 
 
『司書が先生とつくる学校図書館』福岡淳子/作 玉川大学出版部 2015/11
司書と先生がつくる学校図書館
福岡 淳子
玉川大学出版部
2015-11-28
 
中野区で長く図書館指導員として学校図書館の仕事をしてこられた筆者が、学校教育の中でどのように司書教諭をはじめとして先生方と協働して、図書館を利用する教育を展開していったのか、学校司書としてそれにどのように関わってこられたのかを克明に書き綴った実践記録です。読書の支援だけではなく、どのように蔵書構成を作るのか、また学年別にどのように働きかけをすればよいのか、ということが具体的に書かれており、学校図書館現場で働く人の力強い味方になってくれる1冊です。
 
『石井桃子談話集 子どもに歯ごたえのある本を』石井桃子/著 河出書房新社 2015/12/9
子どもに歯ごたえのある本を
石井 桃子
河出書房新社
2015-12-09

 1965年から2007年までの雑誌や出版社から出される小冊子に残された石井桃子さんへのインタビュー記事、あるいは対談をまとめて「石井桃子談話集」としている本です。内容は今までの石井桃子さんのエッセイで読んだことのあるものなのですが、インタビュアーによって様々な聞き方、つっこみ方をしていて、石井桃子さんの素の姿が立ち現れてくるかのようです。たとえば詩人の吉原幸子さんは、そのものズバリ「ご家族はお持ちにならなかった。」「ずっとお一人でいらっしゃいます?」「たとえば、『ノンちゃん』に出てくる少年が戦争から帰ってこなかったように、密かに待ってた方が、帰っていらっしゃらなかったとか。」などと質問し、それに対して石井桃子さんが「「そりゃね、結婚しようかと思った人はありましたけどもね、とてもその頃はね。」などと答えていらっしゃり、人間味溢れる人物像が浮き上がります。タイトルになっている「子どもに歯ごたえのある本を」は、1996年8月の『文藝春秋』掲載の短いインタビュー記事です。他にも何編か、「子どもの本」について論じているものもありますが、それ以上に約40年強の時間の中から拾い上げられてまとめられた談話集であるにもかかわらず一貫して語られる子どもへの、創作への変わらぬ姿勢というものに敬服いたしました。

 (作成K・J)

2015年10月、11月の新刊から


2015年10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

絵本

『スワン アンナ・パブロワのゆめ』ローレル・スナイダー/文 ジュリー・モースタッド/絵 石津ちひろ/訳 BL出版 2015/10/20
ローレル スナイダー
BL出版
2015-10
 
20世紀の初めに活躍した ロシアの伝説的なバレリーナ、アンナ・パブロワを題材にした絵本。「ひん死の白鳥」で世界的に有名になったパブロワが、貧しかった子ども時代を思い出して小さな村にまで出かけて行って踊ったことなどが描かれています。絵がとても美しい絵本ですが、パブロワの一生を描くという点では、終わり方が少し中途半端な気がします。それでもバレリーナを題材にした絵本が少ないので、バレエに興味を持つ子どもたちに手渡してあげてもよいでしょう。またこの絵本から、今年6月に出版された『夢へ翔けて 戦争孤児から世界的バレリーナへ』(ミケーラ・デプリンス、エレーン・デプリンス/文 田中奈津子/訳 ポプラ社 2015/06)につなげてあげるとよいでしょう。
 
『子どものためのラ・フォンテーヌのおはなし』マーガレット・ワイズ・ブラウン/再話 アンドレ・エレ/絵 あべきみこ/訳 こぐま社 2015/10/24
子どものためのラ・フォンテーヌのおはなし
マーガレット・ワイズ ブラウン
こぐま社
2015-10-24
 
イソップの物語を17世紀のフランスの詩人ジャン・ド・フォンテーヌ(1621-1695)が寓話集にしたものを、マーガレット・ワイズ・ブラウンが再話したものです。「コオロギとアリ」「キツネとぶどう」「オオカミとヤギと子ヤギ」など、読めばどこかで聞いたことのあるおはなしばかり13話が収められています。アンドレ・エレの絵もはっきりとしてわかりやすく想像をかきたてます。 
 
『おじいちゃんのコート』ジム・エイルズワース/文 バーバラ・マクリントック/絵 ほるぷ出版 2015/10/28
おじいちゃんのコート (海外秀作絵本)
ジム エイルズワース
ほるぷ出版
2015-10-28
 
イディッシュ語(東ヨーロッパなどで使用されるユダヤ人の言語)の民謡が元になっているおはなしです。同じ民謡を元にした絵本に『おじいさんならできる』(フィービ・ギルマン/作 芦田ルリ/訳 福音館書店 1998)や、コールデコット賞受賞作の『ヨセフのだいじなコート』(シムズ・タバック/作 木坂涼/訳 フレーベル館 2001)があります。それぞれの作品は、最初が赤ちゃんの時におじいさんに贈られたブランケットだったり、すりきれた古いコートだったりするのですが、この作品では仕立て屋だったおじいちゃんが結婚する時に自分で仕立てたコートがはじまりです。古くなってすりきれるたびに上着やベスト、ネクタイと変化していくところは同じですが、最後には孫のためのねずみのおもちゃになるのです。『ないしょのおともだち』(ビバリー・ドノフリオ/作 ほるぷ出版 2009)などの作品があるバーバラ・マクリントックの絵は、品があり、家族の暖かさを伝えてくれます。並べて展示をしても面白いと思います。  
 
『わいわいきのこの おいわいかい』レーマ・ペトルシャーンスカヤ/文 タチヤーナ・マーヴリナ/絵 まきのはらようこ/訳 保坂健太郎/きのこ監修 カランダーシ 2015/11/2
わいわいきのこのおいわいかい きのこ解説つき
レーマ・ペトルシャーンスカヤ
カランダーシ
2015-11-02
 
 ロシアの絵本を専門に出版しているひとり出版社カランダーシ(K・Jの大学の同級生がやっています)から新しい絵本が出ました。国際アンデルセン賞受賞画家タチヤーナ・マーヴリナの描くきのこのにぎやかな声が聞こえてきそうな楽しい絵本です。おはなしの中でも、さまざまなきのこの特徴が描かれていますが、絵本の末尾に国立科学博物館 植物研究部 菌類・藻類研究グループ研究員の保坂健太郎氏によるカラー写真付のきのこの解説もあり、一層おはなしに親しみがもてることでしょう。
 
 『ゆき』きくちちき ほるぷ出版 2015/11/20
ゆき (ほるぷ創作絵本)
きくちちき
ほるぷ出版
2015-11-20
 
2013年にブラティスラヴァ世界絵本原画展で見事「金のりんご」賞を受賞されたきくちちきさんの最新作が出版されました。パリの古本屋さんでブーテ・ド・モンヴェルの絵本に出会い、衝撃を受けて100年以上読み継がれる絵本を作りたいと絵本を創り始められたきくちちきさんですが、一作ごとに絵本の表現も磨かれていっています。きくちさんが生まれ育った北海道の大地を舞台に晩秋の森に雪が降り始め、やがて一面の雪に閉ざされるまでをダイナミックな筆使いで描いた作品です。動物や子どもたちの息遣いも聞こえてきそうです。  

『おうさまのくつ』ヘレン・ビル/文 ルイス・スロボドキン/絵 こみやゆう/訳 瑞雲舎 2015/11/24
おうさまのくつ
ヘレン ビル
瑞雲舎
2015-11-24
 
うぬぼれやのくつが、自分たちこそお城に住むのにふさわしいと、はりきってお城へ出かけていくのですが、どしゃぶりの雨にふられてしまいます。そしてお城中に泥まみれの足あとをつけて、追い返されるはめに・・・お城の中でのやり放題なくつにはハラハラドキドキするでしょう。しかし、その後くつがどのようになったかの結末は子どもたちにとってもホッとするものです。 
 
 
児童書

『クリスマスの森』ルイーズ・ファティオ/文 ロジャー・デュボアザン/絵 つちやきょうこ/訳 福音館書店 2015/10/7

クリスマスの森 (世界傑作絵本シリーズ)
ルイーズ・ファティオ
福音館書店
2015-10-07
 
プレゼントの準備に忙しくて寝不足のまま、トナカイたちと飛び立ったサンタクロースは、プレゼントを配り始める前に一休み。おくさんが作ってくれたコーヒーを飲んでサンドイッチを食べると睡魔が襲ってきて眠り込んでしまいます。このままではプレゼントがみんなのところに届きません。そこで森の動物たちが大活躍。デュボアザンの絵も温かい雰囲気を醸し、ほのぼのとした物語です。 
 
 
『ハリーとうたうおとなりさん』ジーン・ジオン/文 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 こみやゆう/訳 大日本図書 2015/11/25
ジーン ジオン
大日本図書
2015-11
 
どろんこハリー』(福音館書店 1964) などの絵本でハリーのファンになった子どもたちに読んでほしい幼年童話です。ハリーの家のとなりに住む歌手のおばさんは、いつも高く大きな声で歌の練習をしています。ハリーにはそれがとても不快でした。なんとか歌うのをやめさせようとするのですが・・・ハリーにとっても歌手のおとなりさんにとってもハッピーな解決方法はあるのかしら。今年1月に亡くなられたマーガレット・ブロイ・グレアムの最新邦訳の1冊です。
 
 
 『雪の女王』ハンス・クリスチャンセン・アンデルセン/作 サンナ・アンヌッカ/絵 こみやゆう/訳 中央出版(アノニマスタジオ) 2015/11/6
雪の女王
ハンス・クリスチャン アンデルセン
KTC中央出版
2015-11-06
 
フィンランドのファッションブランド、マリメッコのデザイナー サンナ・アンヌッカが絵と装丁を手がけた美しい本です。児童室に置くには字体も小さいので迷うかもしれません。それでもこみやゆう氏による翻訳は読みやすく、おしゃれに敏感なYA世代には手にとってもらえるのではないかと思います。同じくサンナ・アンヌッカが描き、こみやゆう氏が翻訳したの『もみの木』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン/作 サンナ・アンヌッカ/絵 こみやゆう/訳 中央出版(アノニマスタジオ) 2013)と合わせて、アンデルセン童話の真髄を伝える試みも面白いと思います。 
 
『北風のうしろの国』上・下 ジョージ・マクドナルド/作 脇明子./訳 岩波少年文庫 岩波書店 2015/1016
北風のうしろの国(上) (岩波少年文庫)
ジョージ・マクドナルド
岩波書店
2015-10-17

北風のうしろの国(下) (岩波少年文庫)
ジョージ・マクドナルド
岩波書店
2015-10-17
 
 19世紀のイギリスを代表する児童文学作家のジョージ・マクドナルドの作品で、1868年から69年にかけて『Good Words for the Young」という雑誌に連載されていた物語が1871年に単行本化された作品です。当時、イギリスは産業革命を成し遂げ、日本は1968年に明治維新が起きています。ダイヤモンドという主人公の男の子は、美しい北風と出会い、北風のうしろの国へ行ってきます。そこはとても美しく平和で、誰もが穏やかに過ごしていました。そこから戻ってきてからのダイヤモンドは、人の痛みに寄り添い、素晴らしい働きをします。どの時代にも貧富の差があり、貧しいながらも高潔な気持ちを保ちながら懸命に生きていた子どもたちがいたのだということ感じました。1977年に田谷多枝子訳で太平出版から出され、2005年にはハヤカワ文庫として中村妙子訳が出版されています。この度岩波少年文庫となり、現代の子どもたちに手渡されることになりました。脇明子さんの翻訳も子どもたちにとって、読みやすいでしょう。
 
『だれもが知ってる小さな国』有川浩/作 村上勉/絵 講談社 2015/10/28
だれもが知ってる小さな国
有川 浩
講談社
2015-10-28
 
 子ども時代に佐藤さとるの『だれも知らない小さな国』をはじめとするコロボックル物語シリーズを愛読していた有川浩さんが、その続きの物語を完成され、出版されました。昨年、『コロボックル絵物語』(村上勉/絵 講談社)を出版された時から、単行本の出版を予告されており楽しみにしていました。(講談社「コロボックル物語」特設ページは→こちら)この本の語り手は「ヒコ」という男の子。養蜂家の両親に連れられて日本中を転々とする生活をしています。そのヒコが、ある時小人のハリー(ハリエンジュノヒコ=ハヤタ)と出会います。お話の舞台も主役も違っていますが、佐藤さとるさんのコロボックルの世界観をしっかりと引き継いで、物語が展開していきます。佐藤さとるさんの作品も青い鳥文庫や講談社文庫で手に入ります。合わせて読んでもらえるような展示ができるとよいでしょう。(連載「基本図書を読む⑮『だれも知らない小さな国』の記事は→こちら
 
『森のプレゼント』ローラ・インガルス・ワイルダー/作 安野光雅/絵・訳 朝日出版社 2015/11/20 
森のプレゼント
ローラ・インガルス・ワイルダー
朝日出版社
2015-11-20
 
『大草原の小さな家』の作家、ローラ・インガルス・ワイルダーの子ども時代のあるクリスマスの数日が描かれた美しい本です。普段は離れた場所で生活をしているおじさん一家がやってくるので、両親も準備に忙しくしています。そして久しぶりのいとこ同士の再会のシーンもとても心温まります。家族がお互いを想い合って手作りのプレゼントを作ったり、クリスマスプレゼントにもらったキャンデーを大切にするなど、今のクリスマスの風景とは随分違っています。安野光雅さんの描く絵も優しく美しく、私たちの心を温めてくれる、そんな1冊です。
 
 
ノンフィクション
『世界でいちばん貧しい大統領からきみへ』くさばよしみ/編 田口実千代/絵 汐文社 2015/10/9
世界でいちばん貧しい大統領からきみへ
くさば よしみ
汐文社
2015-10-09

 2014年3月に出版されて話題になった絵本『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(くさばよしみ/編 中川学/絵 汐文社 2014)を受けて出版された南米・ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領へのインタビューを小学生でも読みやすいようにまとめたものです。「いちばん大切なものは命なんだ。お金で命を買うことはできないんだよ。命は奇跡なんだ。」という語りかけは、前大統領の信念でもあり、その生き方は多くのことを私たちに教えてくれます。世界が憎しみに憎しみで報復しようとしている今だからこそ、子どもたちに読んでほしいと思います。 

 

その他

『読む力・聴く力』河合隼雄 立花隆 谷川俊太郎 岩波現代文庫 岩波書店 2015/10/17

読む力・聴く力 (岩波現代文庫)
河合 隼雄
岩波書店
2015-10-17
 
2005年11月20日に小樽市民会館で行われた絵本・児童文学研究センター主催の第10回文化セミナー「読む 聞く」を一冊にまとめた本です。2006年に岩波書店から単行本として出版(現在、品切れ中)されたものが、このほど岩波現代文庫として出版されました。2007年に79歳で亡くなられた河合隼雄氏の「読むこと・聴くこと・生きること」と、立花隆氏の「人間の未来と読むこと・聴くこと」、そして詩人の谷川俊太郎氏がコーディネーターになってのシンポジウムとどれも示唆に富む内容です。
 
 『「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガーネット』前沢明枝 福音館書店 2015/11/18
「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガネット (福音館の単行本)
前沢 明枝
福音館書店
2015-11-18
 
『エルマーのぼうけん』の著者、ルース・S・ガーネットさんが2010年に来日した時に通訳した児童文学の翻訳者前沢さんが、その後渡米してルースにインタビューをして書いた人物記です。書評家だったルースの父親の友人に『100まんびきのねこ』の作者、ワンダ・ガアグがいて、父親はルースがワンダ・ガアグと結婚するのではないかと思っていたというエピソードや、父親の再婚相手で継母は『ミス・ヒッコリーと森の仲間たち』(キャロライン・シャーウィンベイリー/作 福音館文庫 2005)でも絵を描いている画家で、ルースが『エルマーのぼうけん』(原題は「ぼくのおとうさんのりゅう」)の物語を書いた時に、その世界観を描いてくれる画家を探していた時に継母が一番それにふさわしい絵を描いてくれたというエピソードなどが盛り込まれています。絵本から読み物へ移行するときに、だれもが一度は手にする『エルマーのぼうけん』がどのように誕生したかがわかる1冊です。
 
(作成K・J)

新米のおいしい季節にこの本を!


10月に入って、あちこちで稲刈りが行われ、新米のおいしい季節が訪れました。日本人にとって、炊きたての白いご飯はなによりのご馳走なのではないでしょうか。

そんな季節におすすめの1冊です。

『稲と日本人』甲斐信枝/作 佐藤洋一郎/監修 福音館書店 2015/9/5

稲と日本人 (福音館の科学シリーズ)
甲斐 信枝
福音館書店
2015-09-02

 

 

福音館書店の『稲と日本人』についての詳細ページは→こちら

科学絵本『たねがとぶ』や『雑草のくらし あき地の五年間』など、植物について丁寧に観察して描く作品を多く手がけてきた甲斐信枝さん、85歳での渾身の作です。私たち、日本人の生活や文化は二千数百年という稲作農業と切っても切れない関係があります。 

そのことを歴史的な背景から、わかりやすく解き明かしてくれる1冊です。絵本なのに、読み終えると、新書本1冊読み終えたような気分になります。小学生の調べ学習の導入としても手渡してあげたいと思います。

小学館児童出版文化賞に『どろぼうのどろぼん』ほか


今年度の小学館児童出版文化賞に、『どろぼうのどろぼん』(斉藤倫/作 牡丹靖佳/イラスト 福音館書店 2014/9)が、写真絵本『オオサンショウウオ』(福田幸広/写真 ゆうきえつこ/文 そうえん社 2014/7)とともに決定いたしました。→小学館のプレスリリース

特に『どろぼうのどろぼん』は、詩人の斉藤倫さんの美しい文章が印象的な作品です。「子どもというには年をとりすぎているけど、おじいさんというには若すぎる。背はのっぽというには低すぎるけど、ちびというには高すぎる」という、特徴のないどろぼうのどろぼんは、声なきモノの声が聞こえる不思議な能力を持っていて、持ち主がその存在さえ忘れてしまったモノを盗み出し(救い出し)ているのです。

そんなどろぼんにある雨の日に刑事であるぼくは出会います。そのシーンは、「あじさいの小さな花びらのひとつひとつに雨つぶが包まれるように当たって、そのささやかな音がたくさん集まって冷たい空気をふるわせていた。あじさいにはじかれた雨つぶは、さらに小さくくだけて紫色の煙幕になり、むせかえるようにあたりをかすませていた。それがどろぼんと、ぼくの出会いだった。」(p6)と、心の襞の中にじんわりと染み込むような文章で描かれています。

どろぼんは、事情聴取で、刑事たちに、それまでの盗みについて打ち明けます。ぼくをはじめとして、聴取にかかわった人々はどろぼんの不思議な話にどんどん引き込まれていきます。読む者もいっしょになって、その不思議なお話に魅了されることでしょう。

そのどろぼんがある夏の夜に、あるものの声を聞き、そのものとの関係を築く中で、能力が失われていくのです。その時にどろぼんは自分の生き方を見つめ直します。読み終わったあとに、まるでどろぼんがそうであるように、その特徴を言い表せないようなふんわりと温かい気持ちになっている、そんな作品です。

大きな事件や心躍る冒険があるわけでもなく、私たちの日常のすぐそばにあるそんな物語ですが、モノと人との関係や、人と命あるものとの関係など、さまざまなことを考えさせてくれる作品です。図書館の棚の中に、もし目立たずに眠っていたら、ぜひ面出しをして光をあててあげてほしいと思います。


 (作成 K・J)

2015年8月、9月の新刊から


2015年8月、9月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

絵本

『はね』 曹文軒/作 ホジェル・メロ/絵 濱野京子/訳 マイティブック 2015/8/31

曹 文軒
マイティブック
2015-08
2014年に上橋菜穂子さんと共に国際アンデルセン賞を受賞したブラジルの画家ホジェル・メロ氏の日本初の翻訳絵本です。文章は2016年のら国際アンデルセン賞に中国から推薦されている曹文軒氏。読んでもらった子は、自分はどこから来て、どこへ行くのかという根源的な問いを「はね」を通して考えるきっかけになることでしょう。大人の入口にいる子どもたちに読んでほしいと出版社は勧めていますが、ホジェル・メロ氏の美しい絵と濱野京子さんの美しい日本語の物語は、5、6歳の子どもでも読んで聞かせてもらえれば十分にその作品世界に入っていくことができます。この絵本を出版したマイティブックは一人出版社ですが、こうして国際アンデルセン賞受賞作家の絵本を日本で初出版してくれました。ぜひ図書館でも購入して、多くの子どもたちに手渡してほしいと願います。

 

『ゴリラのおとうちゃん』 三浦太郎/作 こぐま社 2015/9/1

ゴリラのおとうちゃん
三浦 太郎
こぐま社
2015-09
こちらは赤ちゃん絵本として人気のある『くっついた』『なーらんだ』などの作者、三浦太郎さんの新作絵本です。おとうとさんと子どもが身体を使って遊ぶ様子を、とても楽しく描いた絵本です。“おとうさんすべりだい”、“おとうちゃんひこうき”など、子どもたちが大好きな遊びが満載。こんな風に父と子が触れ合って遊べるのは子育ての中のほんの短い間だけです。いっぱい遊んでもらった子は、父性への信頼を深めることでしょう。そんな安心して読んでもらえる1冊です。

 

『戦争と平和を見つめる絵本 わたしの「やめて」』 自由と平和のための京大有志の会声明書【こども語訳】 塚本やすし/絵 朝日新聞出版 2015/9/11

戦争と平和を見つめる絵本 わたしの「やめて」
自由と平和のための京大有志の会
朝日新聞出版
2015-09-11
9月15日の朝日新聞朝刊「天声人語」でこの絵本が取り上げられました。この夏、終戦70年の節目の年に安保法案をめぐって国民の間でさまざまな意見が交わされました。そうした動きのひとつとして「自由と平和のための京大有志の会」が7月に出した声明を、子どもたちにわかりやすい形で埼玉県在住の塾講師山岡信幸さんが訳して会のホームページに載せました。それを見た絵本作家の塚本やすしさんが、多くの子どもたちに知ってほしいと、急いで絵を描き、緊急出版された絵本です。普通、絵本の絵は対象の子どもたちに合わせて、何度も検討がなされ、描き直されるものなのですが、この作品は日数をかけずに逆に勢いで描かれており、それが子どもたちに大切なことを訴える力にもなっています。その後多くのメディアでも紹介されました。子どもたちにいろいろなことを考えるきっかけを与えてくれる1冊になるでしょう。

 

児童書

『ルイージといじわるなへいたいさん』 ルイス・スロボドキン/作・絵 こみやゆう/訳 徳間書店 2015/9/10

ルイージといじわるなへいたいさん (児童書)

ルイス スロボドキン
徳間書店
2015-09-10
コールデコット賞受賞作家スロボドキンのユーモア溢れる幼年童話です。ルイージという小学生の男の子はイタリアの国境近くの小さな村に住んでいます。そして毎週土曜日にバスに乗ってスイスに住むバイオリンの先生のところへ通っています。いつもは国境警備隊の兵士はルイージのことを優しく見守るだけで、荷物を調べたりしません。ところがある日いじわるな兵隊さんがバスに乗り込んで、ルイージのお弁当箱まで開けさせて調べるようになります。それを知ったバイオリンのタリアティーニ先生は、その兵隊さんをこらしめてやろうと決心します。一体どんな風にしてこらしめるのでしょう?絵本を卒業する年齢の子どもたちに手渡したい1冊です。小さな子どもたちには読んで聞かせてあげましょう。 

 

『大きなたまご』 オリバー・バターワース/作 松岡享子/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2015/8/19

大きなたまご (岩波少年文庫)
オリバー・バターワース
岩波書店
2015-08-19
この本は、1968年に学習研究社から出版されましたが、長く絶版になっていました。この度、岩波少年文庫として蘇りました。アメリカ、ニューハンプシャー州の小さな町、フリーダムに住むネイトの家で飼うめんどりが、とても大きな卵を産みます。それから6週間が過ぎた頃、そのたまごがとうとう孵ります。ネイトたちがそこに見たものは、なんと恐竜トリケラトプスの赤ん坊だったのです。さて、そこからが大変。6千万年前に絶滅したはずの恐竜が、化石ではなく生きた存在として生まれたのですから研究者を始め、多くの人が小さな町に押し寄せてきます。その一方でネイトがアンクル・ビーズレーと名付けたトリケラトプスを剥製にすべきだという国会議員まで現れます。さてさてどうなるのでしょう。50年前のアメリカの子どもたちに親しまれたこの物語、ぜひ今の子どもたちにも、楽しんでもらいたいと思います。

 

 『岸辺のヤービ』 梨木香歩/作 小沢さかえ/画 福音館書店 2015/9/9

岸辺のヤービ (福音館創作童話シリーズ)

梨木 香歩
福音館書店
2015-09-09
梨木香歩さんが久々に小学高学年からの世代に親しめる美しくも楽しいファンタジー作品を生み出しました。この本は美しい箱入りです。そして箱の内側も見逃してほしくないのですが、図書館の本は箱を外して装備するので残念ですね・・・美しいのは装丁でけではなく、物語の流れもとても美しい 梨木さんの自然への思い、生きとし生けるものへの温かい眼差しを感じる物語です。この物語の舞台はマッドガイド・ウォーターという小さな三日月湖の岸辺です。その近くにある寄宿学校の教師である「わたし」が、湖に浮かべたボートの中で読書をしている時に、はりねずみのような姿をしているクーイ族の小さな男の子ヤービと出会うことで物語が始まります。読み終わって爽やかな一陣の風が吹き渡るような気持ちになりました。多くの子どもたちにもヤービに出会ってほしいと思います。

  
『ぼくたちに翼があったころ コルチャック先生と107人の子どもたち』 タミ・シェム=トヴ/作 樋口範子/訳 岡本よしろう/画 2015/9/16

ぼくたちに翼があったころ コルチャック先生と107人の子どもたち (世界傑作童話シリーズ)
タミ・シェム=トヴ
福音館書店
2015-09-16
ユダヤ系ポーランド人で医者であり、教育者であったヤヌシュ・コルチャックと、彼がその生涯を捧げた「孤児たちの家」の子どもたちとの生活を描いたノンフィクション・ノベルです。「かけこみ所」と呼ばれる孤児収容施設で虐待により足の骨を骨折した後、コルチャック先生のもとで生活を始めるヤネクという少年の目を通して、コルチャック先生の教育方針、つまり子どもたちの権利を尊重し、ひとりひとりの特質を見抜き、的確なアドバイスを与えて伸ばしていく、そのような「孤児たちの家」での様子を描きます。子どもたちはお互いの存在を認め、許し合い、信頼関係を築いていきます。それはまさに、次に紹介する『暴力は絶対だめ!』でリンドグレーンが訴えた教育を具現化したものでした。この物語は第二次世界大戦勃発の前の「孤児たちの家」の様子を描いて終わっています。その後、ナチス・ドイツによってコルチャック先生と子どもたちはワルシャワ・ゲットーに移され、自分だけは恩赦を受けられる機会があったのにコルチャック先生は子どもたちと共に強制収容所に行き、共にガス室で虐殺されてしまいます。この本は、多くのことを私たちに投げかけてくれています。小学校高学年くらいから読める作品です。なお、著者の前作『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』(母袋夏生/訳 岩波書店 2011)もぜひ、子どもたちに手渡してほしいと思います。 
 
ノンフィクション

『暴力は絶対だめ!』 アストリッド・リンドグレーン/作 石井登志子/訳 荒井良二/挿画 岩波書店 2015/8/7

暴力は絶対だめ!
アストリッド・リンドグレーン
岩波書店
2015-08-07
1978年に行われたドイツ書店協会平和賞授賞式で、『長くつ下のピッピ』の作者、リンドグレーンが行ったスピーチがこの度一冊の本として刊行されました。当時のスウェーデンでは体罰についての白熱した議論が繰り広げられており、一部の大人は子どもを躾けるのに体罰が必要だと主張していました。それに呼応して世界の平和を望むのであれば、まず子どもたちが安心して育つ家庭が必要であること、親が子どもを暴力で支配するのではなく互いに敬意をもちながら、大人が規範を示していく必要があること、愛情たっぷり育てることは、放任を意味するのではなく、子どもたちが自分で考えて自分の行動に責任を持つことに繋がる、そしてそうして育てられた者は暴力と手を切ることができるとリンドグレーンは訴えています。それが世界を平和に導いていく第一歩であると。世界中に溢れている暴力、内戦のニュースに子どもたちも触れることの多い今、どうしたら本当の平和が訪れるのか、子ども達と一緒に読んでそれを考えるきっかけにしてほしいと思います。 

 
『自然のとびら』 ケイ・マグワイア/文 ダニエル・クロル/絵 さいとうみわ/訳 アノニマ・スタジオ 2015/8/21
自然のとびら
ケイ・マグワイア
アノニマ・スタジオ
2015-08-21 
 「自然は、わたしたちのそばにいます。ただそこに、背すじをただし、呼吸をし、生きています。」という文章ではじまる『自然のとびら』。四季折々の自然の変化を、“庭”、“野菜畑”、“森”、“農場”、“畑”、“池”、“果樹園”、“街”の8つの場面で追っていく図鑑のような美しい絵本です。私たちの身近な自然へ目を向けさせ、私たちが自然の一部であることや、自然からの恩恵をたくさん受けていることを伝えてくれます。子どもたちの“センス・オブ・ワンダー”、“何だろう?不思議だな”って感じる気持ちに答えてくれる宝石箱のような一冊です。
 
 
その他
 omura1982年に、子どもの本の出版社として出発したJULA出版局。その案内には「子どもの本の世界に新風を巻き起こすような、新しく独創的な本の出版をめざし、小さい出版社、JULA出版局の冒険ははじまりました。絵本、子どもと大人が一緒に読む詩集、子どものことをみんなで考えていこうとする本など、JULAは領域を広げ、子どもたちの明日に役立つ本の発行を志し、旅をつづけています。」とあります。そんな出版社がどのようにして生まれたのかを、代表の大村祐子さんが講演会で語りました。それをまとめた冊子がこのほど出来上がりました。とても薄い冊子ですが、「子どもに本を手渡すとはどういうことか」ということを問いかける内容はとても濃いのです。この冊子も大手の流通にはのらないと思いますが、ぜひ児童サービス担当の方々には手にとって読んでほしいと思います。申込方法は、こちらをご覧下さい。→JULA出版局サイト
 
(作成 K・J)  

BIB金のりんご賞をミロコマチコさんが受賞


2013年のきくちちきさん、はいじまのぶひこさんに次いで、今年のブラティスラヴァ国際絵本原画展でミロコマチコさんが金のりんご賞を受賞しました。

受賞作品は『オレときいろ』(WAVE出版 2014)です。

オレときいろ
ミロコ マチコ
WAVE出版
2014-11-11

 

 

 

前回の受賞記事は→こちら

ミロコ
さんの生命力と躍動感あふれる表現の世界が、国際的にも認められた嬉しいニュースでした。

その他の受賞作品については、JBBY公式サイトへ→こちら

2015年に出た子どもの本〈上半期〉から


8月5日(水)に教文館ナルニア国で行われた「2015年夏休み特別企画・夜のブックトークの会“2015年に出た子どもの本〈上半期〉よりおすすめの本”」に参加してきました。

「本のこまど」では、今年1月よりほぼ毎月新刊情報を発信していますが、すべての本を手にすることがなかなかできず抜け落ちている作品がたくさんいくつかありました。その中からいくつか手にして読み、特筆すべきものをご紹介します。また当日ご紹介いただいたものをリストにまとめました。「本のこまど」新刊情報で紹介したものには「紹介済」と記載しています。

【フィクション】

『アラスカの小さな家族 バラードクリークのボー』カークパトリック・ヒル/作 レウィン・ファム/絵 田中奈津子/訳 講談社 2015

アラスカの小さな家族 バラードクリークのボー (文学の扉)
カークパトリック・ヒル
講談社
2015-01-16

 

この本の作者はアラスカ・フェアバンクス在住です。長い間小学校を先生をしていましたが多くの本の中でアラスカが誤ったイメージで捉えられているのに不満を感じ、アラスカを舞台に本を書くようになりました。ゴールドラッシュで湧いたアラスカにもそれが終焉を迎える時が来ます。そのような1920年代のアラスカの自然の中で天真爛漫に育つボーという少女。彼女を育てるのは二人のお父さんです。・・・という出だしから惹きつけられる作品です。

『アルカーディのゴール』ユージン・イェルチン/作・絵 若林千鶴/訳 岩波書店 2015

アルカーディのゴール
ユージン・イェルチン
岩波書店
2015-02-14

旧ソ連のスターリン政権下、孤児院育ちのアルカーディはサッカー選手という夢に向って一生懸命にボールを追いかけていました。あるとき謎の男に養子として迎えられるのですが・・・国の政治体制に子どももまた理不尽な思いをするのですが、その中で夢を失わないアルカーディの姿が印象的です。ロシア系ユダヤ人の作者の著作には『スターリンの鼻が落っこちた』(若林千鶴/訳 岩波書店 2013年)があります。 

 『狐物語』レオポルド・ショヴォー/作 山脇百合子/訳 福音館書店 2015

狐物語 (福音館古典童話シリーズ)
福音館書店
2015-06-17

フランスの中世に成立した動物叙事詩をレオポルド・ショボーが編集し絵を描いた作品『狐物語』をなんと『ぐりとぐら』の絵でお馴染みの山脇百合子さんが翻訳しました。山脇さんは以前、福音館書店から『狐物語』をやさしく直した『きつねのルナール』(2002年)を絵と翻訳両方を手がけて出版されています。それがきっかけで高学年向きに訳されたのです。しなやかな訳文が中世の物語を生き生きと今の子どもたちにも伝えてくれます。

 

【ノンフィクション】

『ハートのはっぱ かたばみ』多田多恵子/文 広野多珂子/絵 福音館書店 2015

ハートの はっぱ かたばみ (かがくのとも絵本)
多田 多恵子
福音館書店
2015-03-04
 
以前、福音館書店の「かがくのとも」編集部の方のお話を伺う機会がありました。子どもたちの身近にある自然の不思議さ、素晴らしさに気がついてほしいと丁寧に絵本を作っているとのことでした。私たちの足元に健気に生えている「かたばみ」が、とても愛おしく感じられる、そんな作品です。
 
『アイちゃんのいる教室 3年1組』高倉正樹/文・写真 偕成社 2015
アイちゃんのいる教室 3年1組
高倉 正樹
偕成社
2015-01-28
 
『アイちゃんのいる教室』の続編が出版されました。アイちゃんも3年生になりました。アイちゃんを取り巻く子どもたちはみんなとてもよい表情をしています。それはアイちゃんにダウン症という障害があるからまわりが特別なことをしているからではなく、先生も教室のひとりひとりの個性を大切にしているからだということがわかります。子どもたちがお互いに影響を与え合い成長していく様子がとてもよくわかります。
 
『テンプル・グランディン 自閉症と生きる』サイ・モンゴメリー/著 杉本詠美/訳 汐文社 2015
テンプル・グランディン―自閉症と生きる
サイ モンゴメリー
汐文社
2015-02-26
 
自閉症をもつテンプル・グランディンは、タイム誌で「世界で最も影響力をもつ100人」に選ばれました。動物愛護活動家でもあり、同時に食肉処理施設の設計者である彼女の子ども時代から今に至る歩みを描いたノンフィクションです。
 
『ガザ 戦争しか知らないこどもたち』清田明宏 ポプラ社 2015   
ガザ: 戦争しか知らないこどもたち (単行本)
清田 明宏
ポプラ社
2015-05-27
 
イスラエルとパレスチナの紛争は1948年以降断続的に続いています。2000年代に入ってからもすでに4度の戦争が起きています。そのような厳しい状況下でも生まれ、育つ子どもたちがいます。そして彼らは「それでも、わたしはガザを再建する。わたしたちが再建する。」と将来に希望を持ち続けているのです。どうしたら戦争のない世界にできるのか、子ども達と一緒に考えたい1冊です。
 
『戦場』亀山亮/著 晶文社 2015
戦場
亀山 亮
晶文社
2015-01-31

上に紹介した本もそうだが、わたしたちにとって「戦争」とは何かを知ることのできる一番の教材は、戦地へ出かけていって戦場の様子を知らせてくれるカメラマンたちが知らせてくれる写真集です。『戦場』の作者、亀山氏はパレスチナ取材で片目を撃たれて失明したにもかかわらず、日本には情報の届きにくい中東やアフリカの戦場の画像を撮り続けました。戦争とは何なのかを突きつける渾身の作品です。

こちらのリストは、教文館ナルニア国の「2015年夏休み特別企画・夜のブックトークの会“2015年に出た子どもの本〈上半期〉よりおすすめの本”」で紹介された本をリスト化したものです。図書館での選書などの参考にしてください。

2015年上半期に出た子どもの本おすすめリスト

(K・T) 

2015年7月の新刊から


2015年7月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

絵本

『せいめいのれきし改訂版』バージニア・リー・バートン 文・絵 いしいももこ訳 まなべまこと監修 岩波書店 2015/7/22

せいめいのれきし 改訂版
バージニア・リー・バートン
岩波書店
2015-07-22

1964年に石井桃子の翻訳で出版されて以来、長く読み継がれてきた名作『せいめいのれきし』は、多くの子どもたちに地球科学や古生物への関心を抱かせ、大きな影響を与えてきました。しかしここ20年ほどで地殻変動や気候変動、進化の流れなどについて新しい知見が出され、内容が一部古くなってきていました。その一方で、地球誕生から現在に至るまでの生命のつながりをプロローグ+5つの場面(幕)でわかりやすく伝えながら、その生命のつながりの中に今の私がいるということを伝えるバージニア・リー・バートンの秀逸なる絵物語に勝るものはほかにはなく、その考え方は子どもたちにぜひ伝えたいと思ってきました。アメリカでは2009年に『LIFE STORY Update Edition』が出版され、それを基にこの度日本でも改訂版として、新しい知見を反映した新訳が出版されました。監修を務めたのは国立科学博物館生命進化史研究グループ長の真鍋真氏で、石井桃子の訳を生かしながら東京子ども図書館の協力のもと、改訂が行われました。旧版と見比べながらぜひ中身を確認していただきたいのですが、例えばプロローグ2場の「太陽系」の説明ページでは、「太陽の家族にあたる、九つの惑星のひとつで」というところが、「太陽の家族にあたる、8つの惑星のひとつで」と書き直され、絵からも冥王星が削除されています。特に生物が誕生してからの記述は最新の知見に合わせて時代区分や生物の名前などが多くが書き直されていますが、5幕はほとんどが石井桃子訳のままに残されています。初版から50年間もの間に64刷40万部出版されて読み継がれたこの作品を、この改訂により、現代の子どもたちにも自信を持って手渡していくことができるでしょう。岩波書店での紹介ページは→こちら 

『アンドルーのひみつきち』ドリス・バーン 文・絵 千葉茂樹 訳 岩波書店 2015/7/7

アンドルーのひみつきち
ドリス・バーン
岩波書店
2015-07-07

 

昨年の秋に「本のこまど」でも紹介した『クリスティーナとおおきなはこ』(偕成社)の絵を描いたドリス・バーンの作品です。『クリスティーナ・・・』では大きな冷蔵庫の入っていたダンボール箱を次々に形を変えて遊ぶ子どもを描いていましたが、今度のテーマは「ひみつきち」です。アンドルーは身近にあるモノを使って次々に発明をし、様々な作品を作り上げますが、家庭の中では邪魔者扱いにされ、さっさと片付けるように注意をされてしまいます。思い切り自分の作品作りがしたいと思ったアンドルーは、秘密基地になる場所をみつけ、そこに自分の居場所を作ります。ところがそこには、同じように自分の居場所を求めて他の子どもたちも集まってきます。この絵本の良いところは、秘密基地を作って出て行った子どもたちが親に自分たちのやっていることの価値を認めてもらって、また家庭に居場所を作ることです。親たちの子どもの気持ちに寄り添い、理解しようとする姿勢に、読んでもらう子ども達も安心感を味わうことができるでしょう。

 『しりたがりやのこねこのポコ』安藤美紀夫 文 スズキコージ 絵 復刊ドットコム 2015/7/21

しりたがりやのこねこのポコ
安藤 美紀夫
復刊ドットコム
2015-07-22

 1979年に文研ジョイフルえほんNo.59として出版されていて、長く絶版になっていた絵本が読者の要望に応えて復刊されました。まさとくんちにもらわれてきたねこのポコは好奇心満々。ある日まさとくんの家族が出かけてしまった留守の間にポコはまだ行ったことのない2階へと上がって行きます。子ども部屋で、絵本の世界に引き込まれ、絵本の中で不思議な冒険を続けていきます。安藤美紀夫のリズミカルな文章に合わせたスズキコージの絵が、その不思議な雰囲気を一層醸し出しています。

 

『いそあそび しようよ!』はたこうしろう 文・絵 奥山英治 文 ほるぷ出版 2015/7/18

いそあそびしようよ! (ほるぷ創作絵本)
はた こうしろう
ほるぷ出版
2015-07-18

 夏休みにおばあちゃんのいる海辺の町へ出かけた兄弟が、おばあちゃんの知恵を基にして、磯でいろいろな生き物をみつけて実に楽しそうに遊びます。砂浜と違ってたくさんの生き物のいる磯ですが、岩がごつごつしていて怪我もしやすい場所でもあります。絵本の中ではさりげなく磯遊びのための安全な出で立ちなども説明をしながら、子どもたちの興味関心を引き出すように、兄弟が生き生きと楽しんでいる様子を描いています。生き物の生態なども描かれており、磯遊びのお供に出来る1冊です。また、共著者の奥山さんは雑誌『BE-PAL』に連載記事を書いている日本野生生物研究所の研究員です。(公式ブログは→こちら)なお、2013年に出版された『むしとりにいこうよ!』、2014年に出版された『ふゆのむしとり』の続編です。はたこうしろうさんのサイト→『いそあそびしようよ!

 

 児童書

 『波のそこにも』末吉暁子 著 佐竹美保 挿絵 偕成社 2015/7/15

波のそこにも
末吉暁子
偕成社
2015-07-15
 
「ぞくぞく村のおばけ」シリーズや「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズなどのロングセラーを書いている末吉暁子さんの本格的な歴史ファンタジーです。「平家物語」に描かれる壇ノ浦の合戦でわずか8歳で祖母にあたる尼御前に抱かれて身を投げた安徳天皇が水底の国で生きていたら、という想定で繰り広げられる物語です。皇子が主人公の女の子タマオをはじめとする水底の国に住む人々と出会い、帝の御印である宝剣を探す旅に出かけます。周囲の人に守られるのが当たり前のように思っていた皇子が旅を通して成長していく様子や、タマオの微かな恋の物語などを織り込みながら、また日本神話をベースにして描かれた『地と潮の王』(藤川秀之 挿絵 講談社 1996)や、羽衣伝説をベースにして描かれた『水のしろたえ』(丹地陽子 挿絵 理論社 2008)とも繋がって物語は展開していきます。結末はとてもほっとできるもので、「がんこちゃん」シリーズなどに親しんできた子どもたちにも、4年生くらいから手渡せる作品になっています。絵は『魔女の宅急便』3巻以降や『魔法使いハウルと火の悪魔』などのイラストを手がける佐竹美保さんです。
 
 
『スカラブ号の夏休み 上』『スカラブ号の夏休み 下』アーサー・ランサム 著 神宮輝夫 訳 岩波少年文庫 岩波書店 2015/7/16
スカラブ号の夏休み(下) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)
アーサー・ランサム
岩波書店
2015-07-16
 
 「本のこまど」本に関する情報→連載「基本図書を読む」14回で紹介をしたアーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』から始まるランサム・サーガの11巻目が少年文庫として出版されました。この物語の重要な登場人物は2巻の『ツバメの谷』に出てくるアマゾン海賊(ナンシィとペギィのブラケット姉妹)の大おばと、4巻目の『長い冬休み』に登場するドロシアとディックというカラム家の姉弟(D’s)たちです。ナンシィとペギィ姉妹の母親ブラケット夫人の招待で、夏休みを北の湖で過ごそうと楽しみにしてやってきたD’sでしたが、実はブラケット夫人とナンシィたちの叔父であるフリント船長は旅行中でした。ブラケット夫人は、子どもたちの自律を信じて招くのですが、「娘たちを使用人に任せて留守にするなんて」と、躾に厳しい大おばがその事実を知って急遽やってくることになり、彼らはブラケット家に居られなくなります。アマゾン海賊の提案で森の中の「犬小屋」に潜伏することになったD’sと、大おばの前では白いワンピースを着ておしとやかに振舞うアマゾン海賊の涙ぐましい演技、ワンマンな大おばに振り回されながらも、たくましくその困難を楽しんでいる様子の子どもたちの姿は私たちを惹きつけ、物語の急展開と相まってぐいぐい引き込まれていきます。70年以上前に書かれた物語ですが、理不尽にも子どもを型にはめようと押さえつける大人に対抗して、知恵を働かせる子供たちの姿は、現代の子どもが読んでも、きっと面白いと思います。ランサム・サーガの魅力に、この『スカラブ号の夏休み』で出会って欲しいと思います。

 

『トンネルの森1945』角野栄子 著 大庭賢哉 挿画  角川書店 2015/7/20

トンネルの森 1945<トンネルの森 1945>
角野 栄子
KADOKAWA / メディアファクトリー
2015-07-20

 角野栄子さんご自身の戦争体験から書き下ろした作品です。この本を読むと、当時の小学生が置かれていた状況がとても手に取るようにわかります。平和だった日々の生活が一変し、田舎に疎開する、大切な人が空襲で亡くなる、父親が行方不明になるというようなエピソードはこれまでも多くの作家が子ども向けに書いてきました。この本では、子どもの気持ちの動きを中心にして描き、田舎の緑深い情景描写が、凛として静かに響いてきます。疎開していた山奥の一軒家と小学校などのある村を隔てるトンネルのような森の道を「トンネル」と表現し、その先に見えてくる光が象徴的に描かれています。それは子ども心にいつか戦争が終わるという微かな希望に繋がっているようにも感じました。

 その他

『最後の詩集』長田弘 著  大橋歩 イラスト みすず書房 2015/7/2

最後の詩集
長田 弘
みすず書房
2015-07-02

 今年の5月3日に75歳で亡くなられた詩人・長田弘さんの文字通りの「最後の詩集」です。前半は十五篇の詩が、後半は、「日々の楽しみ」という短いエッセイが六篇収められています。いずれも2013年以降から昨年末までの間に発表されたものだそうです。長田さんの晩年の物事を静謐に見つめる視線を感じる詩や文章です。この詩集の原稿を出版社に推敲して渡した時点で、長田さんご自身は「これが最後」という覚悟をしていらしたとのこと。(みすず書房のサイト→こちら)児童向けではありませんが、「子どもの詩」(読売新聞)の選者として長年子どもたちに関わってきた長田弘さんに敬意を表し、こちらで紹介させていただきます。

(K・J)

2015年5月、6月の新刊から(追加あり7/2)


2015年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

5月23日(土)から7月13日(月)の会期で銀座・教文館ウェンライトホールで開催中の「エドワード・アーディゾーニ展―英国イラストレーションの伝統―」に合わせて、アーディゾーニの新刊が出されたこと、4月末に亡くなったマーシャ・ブラウンのデビュー作品が邦訳されたこと、また夏休みに向けてノンフィクションの本に面白いものがいくつか出されたことなど、特筆すべきものがいくつかありました。ぜひ自分でも手にとって確認してみてください。

*エドワード・アーディゾーニの本*

『エドワード・アーディゾーニ 若い日の自伝』エドワード・アーディゾーニ 阿部公子訳 こぐま社 2015/5/21

エドワード・アーディゾーニ―若き日の自伝
エドワード アーディゾーニ
こぐま社
2015-05-21
 文字通り、アーディゾーニが物心ついた頃、5歳くらいからの若い日々を記憶を辿って克明に描いたイラストともに振り返る自伝。驚くのは彼の記憶力の良さで、6歳の頃に住んでいたイースト・バーゴルドの散歩道に日々草やゼラニウム、スミレやセンノウが咲いていたことを覚えていたり、小学生の時期に過ごしたイプスウィッチの町中で目撃した夫婦喧嘩の様子、とくに肉厚な女性のむき出しの二の腕まで覚えているのです。18歳で軍隊への入隊を志望するものの入隊できず、それまで絵を描くことを慰めとしていたアーディゾーニが本格的に絵を学んで行く様子など、『チムとゆうかんなせんちょうさん』が世に出るまでの前半生は読み物としても、画集としても興味深いです。特に1900年生まれのアーディゾーニの幼少期の家の中の設えや服装など、100年前のイギリスの暮らしを垣間見ることが出来ます。なお「人生を織りなすのは「懐しさ」。アーディゾーニこそ「懐しさ」の巨匠だった。」という帯の言葉はこの5月に亡くなられた長田弘さんのものです。

『エドワード・アーディゾーニ 友へのスケッチ』エドワード・アーディゾーニ ジュディ・テイラー編 阿部公子訳 こぐま社 2015/6/1

エドワード・アーディゾーニ 友へのスケッチ
エドワード アーディゾーニ
こぐま社
2001-06-01
 2001年に出版されたいたスケッチ集が、「エドワード・アーディゾーニ展」開催に合わせて増刷されました。ここに収められている絵はすべて家族や友人へ送った手紙です。アーディゾーニは自分が見聞したものを克明に描いて、それを手紙として送っていたのでした。絵に付けられた短い言葉には彼の優しさやユーモア溢れており、アーディゾーニをさらに深く理解することが出来そうです。

『詩集 ライラックの枝野クロウタドリ』ジェイムス・リーブス エドワード・アーディゾーニ 間崎ルリ子訳 こぐま社 2015/5/27

詩集 ライラックの枝のクロウタドリ
ジェイムズ リーヴズ
こぐま社
2015-05-27
 イギリスの詩人で、子どものための詩やお話を手がけたジェイムズ・リーヴズの詩に、アーディゾーニがイラストをつけた詩集です。英語圏では1952年に出版され長く読み継がれてきていた作品です。この詩集を翻訳された間崎ルリ子さんは、若い頃にニューヨーク公共図書館で児童図書館員として働いていた時に、この詩集を読んで聞かせてもらっていたというのです。長く日本では出版されていませんでしたが、2012年にこぐま社から完訳版の『チムとゆうかんなせんちょうさん』が出版された折に来日して教文館ナルニア国で講演されたイギリス児童文学評論家のブライアン・オルダーソン氏が「二十世紀に出た一番すぐれた本」と称され、出版の運びとなったようです。翻訳の言葉も子どもたちの耳に心地よいように、丁寧に選ばれており、アーディゾーニの挿絵とともに詩のもつ味わいにも十分触れてほしいと思います。 
 

*マーシャ・ブラウンのデビュー作品*

『ちいさなメリーゴーランド』マーシャ・ブラウン こみやゆう訳 瑞雲舎 2015/6/20

ちいさなメリーゴーランド
マーシャ・ブラウン
瑞雲舎
2015-06-20
 1946年にアメリカで出版されていたマーシャ・ブラウンのデビュー作です。5月7日の「追悼 マーシャ・ブラウン」という記事でもお知らせしたとおり、マーシャ・ブラウンは今年の4月28日に亡くなりました。絵本の最後に「この作品について」と題して、マーシャ・ブラウン自身がデビュー当時を振り返って短い文章を寄せています。その日付は「2015年1月3日」。まさに彼女の最後の仕事となったのでした。まだ、通りで子どもたちが遊ぶことが出来た時代に、移動式のメリーゴーランドが馬車でやってきます。子どもたちは大喜び。貧しい家のアンソニーも乗りたいけれど、おこずかいを持っていません。そんなアンソニーを見ていたメリーゴーランドを引いてきたコレッリさんはアンソニーにメリーゴーランドを回す仕事を手伝わせ、その代償に最後に乗せてくれたのでした。メリーゴーランドから降りてきた時のアンソニーの喜びの表情ったら!マーシャ・ブラウンの原点を見たような気がしました。 

*その他のこみやゆうの翻訳作品*

『ベッツィ・メイとにんぎょう』イーニッド・ブライトン ジョーン・G・トーマス こみやゆう訳 岩波書店 2015/5/27

ベッツィ・メイと にんぎょう
イーニッド・ブライトン
岩波書店
2015-05-27
 もうすぐ6歳になる女の子ベッツィ・メイの日常の何気ない出来事が9つのおはなしになって収められています。どれも子どもらしい、ちょっとしたエピソードが巻き起こるのですが、両親も乳母のナニーも温かく育っていくのを見守ってくれているということがわかります。「ベッツィ・メイ おにんぎょうとパーティーをひらく」などは、ベッツィが楽しみにしていたお隣のピーターの家でのパーティーに風邪をひいて行けなくなるのですが、ナニーが子ども部屋にあるお人形たちを座らせて、素敵なティーパーティーのセッティングをしてくれるのです。相手がお人形なら風邪をうつす心配もないですものね。この作品は1940年に発表されましたが、今回初めて邦訳が出版されました。絵を描いているのは、“ジョーン・G・トーマス”ですが、あとがきで翻訳者のこみやさんが、『テディ・ロビンソン』シリーズや『思い出のマーニー』を書いた作家ジョーン・G・ロビンソンのことだと説明しています。そうやって読むとロビンソンの『おはようスーちゃん』の女の子にもベッツィ・メイは雰囲気が似ているように思います。絵本から読み物へ移行する時期の幼年童話としておすすめです。同じ原書から分冊して『ベッツィ・メイとこいぬ』が4月末に発行されています。 

『かわうそオスカーのすべりだい』ナサニエル・ベンチリー アーノルド・ローベル 小宮由訳 好学社 2015/5/25

かわうそオスカーのすべりだい
ナサニエル・ベンチリー
好学社
2015-05-25
 かわうそのオスカーは滑り台で遊ぶのが大好きです。もっと高いところから滑りたくなって、お父さんの止めるのも無視して山のてっぺんへ向かっていきます。ところがオスカーを狙うきつねが現われ、さらにそのきつねを狙っておおかみが現れます。オスカーはいったいどうなっちゃうのでしょう。この本も絵本から読み物へ移行していく時期の子どもたちにぴったりです。テンポよくお話が進んでいくので、初めて読み物を手にする子どもたちも自分で次々ページをめくって読み進めることが出来るでしょう。 
 

*絵本*

『あかいはねのふくろう』フェリンドル・オラル 広松由希子訳 復刊ドットコム 2015/5/30

あかいはねのふくろう
フェリドゥン・オラル
復刊ドットコム
2015-05-30 
 昨年、日本各地の美術館を巡回したブラティスラヴァ国際絵本原画展のノミネート作品への中学生までが投票出来る「子ども審査員賞」で各地で一位を獲得したトルコの絵本作家フェリンドル・オラルの絵本です。昨年、私も平塚市立美術館での展示を見ましたが、文章はトルコ語で書かれているのにも関わらず、絵の美しさと、流れるようなストーリー展開から、文字が読めなくても作品世界にぐっと惹き込まれるという不思議な体験をしました。その人気ぶりを受けて、ブラティスラヴァ国際絵本原画展の審査員でもある広松由希子さんが翻訳されました。ぜひ、手にとって読んでみてください。
 

『ロンと海からきた漁師』チェ・ジェンホン 平岡敦訳 徳間書店 2015/6/11

ロンと海からきた漁師 (児童書)
チェン ジャンホン
徳間書店
2015-06-11
 『ウェン王子とトラ』などの作品があるチェン・ジャンホンの新作絵本です。ロンは親を亡くしひとりで漁をしています。ある嵐の夜、どうしても食料を得るために亡くなった父親の言いつけをやぶって漁に出ます。その時、釣竿に引っかかってきたのは、なんとガイコツでした。ガイコツを自分の家に連れて帰り、食べ物を分け与えると・・・実は、ガイコツは嵐の海で息子を亡くした漁師でした。とても力強い筆致で描く不思議な物語です。 
 
 *読み物*
『ジャングル・ブック』ラドヤード・キプリング 三辺律子訳 岩波書店 2015/5/15
ジャングル・ブック (岩波少年文庫)
ラドヤード・キプリング
岩波書店
2015-05-16
福音館書店古典シリーズの木島始訳(1979年)で読み継がれてきたキプリングの『ジャングル・ブック』がこの度新しい翻訳で岩波少年文庫になって出版されました。ジャングルで狼に助けられ育てられた人間の子、モウグリと、ジャングルの掟を教えるヒグマのバルーと黒豹のバギーラの物語は、今も読む者を引きつけていきます。キプリングが『ジャングル・ブック』と『続ジャングル・ブック』を著したのは1894年と1895年のこと。舞台となったインドのジャングルは大英帝国の植民地でした。そうした時代背景は今の子どもたちにはあまり意味をもたず、さまざまな解釈ができるファンタジーとして読んでもよいと翻訳者の三辺さんが訳者あとがきに書いています。ディズニーアニメとは違う、インドのジャングルを舞台にした冒険物語を ぜひ今の子どもたちにも読んでほしいと思います。 
 
『マザーランドの月』サリー・ガードナー 三辺律子訳 小学館 2015/5/20 
マザーランドの月 (SUPER!YA)
サリー ガードナー
小学館
2015-05-20 
上で紹介した『ジャングル・ブック』の翻訳者と同じ三辺さんの訳で、2013年にカーネギー賞、イタリア・アンデルセン賞、フランス文学賞、全米図書YA部門ベストフィクションなどに選ばれたサリー・ガードナーの作品です。「もしなにかがちがったら、とおれは考える。もしサッカーボールが塀の向こうへいってなかったら。」舞台は1965年。実際にあった事実をベースに、もしその歴史的事実が違っていたら・・・という設定で書かれている作品です。100の章から成り立っていますが、それぞれの章はせいぜい3ページ程度の短いもので、時系列もバラバラで、行きつ戻りつしながら、一気に話の中に引き込まれていきます。「圧倒的なパワーのある歴史改変SFだ。」、「感嘆にふるえ、息がつけないほどの完璧な物語。」と裏表紙に印刷されているキャッチコピーがそのままのYA作品です。 
 
『コービーの海』ベン・マイケルセン 代田亜香子訳 鈴木出版 2015/6/19
2011年の青少年読書感想文全国コンクールの中学生の部の課題図書となった『スピリットベアにふれた島』を書いたベン・マイケルセンの最新刊です。主人公は12歳の女の子コービー。実は4年前の交通事故で彼女は片足を失っています。 そんなコービーは海の中だけでは自由にいられます。ある日、コービーは岩場に座礁していたクジラの母子をみつけ助けます。そこからコービーの新しい日々が始まっていきます。 
 
『夢へ翔けて 戦争孤児から世界的バレリーナへ』ミケーラ・デプリンス エレーン・デプリンス 田中奈津子訳 ポプラ社 2015/6/30
 表紙カバーの裏側に「西アフリカのシエラレオネで戦争孤児だた少女が、アメリカでバレリーナになるまでの実話」と書いてありますが、2011年に公開されたドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション」のモデルとなったミケーラ・デプリンスの自伝です。内戦の激しいアフリカ、シエラレオネで3歳で孤児になるという壮絶な体験、親切なアメリカ人夫婦の養子になってバレエを始めるものの、黒人であるということで差別を受けるという二重の苦しみを受けます。それを乗り越え、前向きに努力するミケーラの姿は、生きにくい社会で育っていくYA世代の子どもたちにとっても勇気を与えてくれるはずです。表紙絵は酒井駒子さんです。(自伝ですが、「ポプラせかいの文学」というシリーズになっているので、読み物に分類しました。)
  
『走れ、走って逃げろ』ウーリー・オブレブ 母袋夏生訳 岩波書店 2015/6/17
走れ、走って逃げろ (岩波少年文庫)
ウーリー・オルレブ
岩波書店
2015-06-17 
2015年8月15日にヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開予定の映画「ふたつの名前を持つ少年」の原作本です。この本は2003年に岩波書店からハードカバーで出版されていましたが、この6月に岩波少年文庫のラインナップに入りました。若い世代により気軽に手にしてもらえると思います。8歳の少年、スルリックはポーランドに住んでいたユダヤ人でした。第二次世界大戦下で強制収容所(ゲットー)に強制移住させられますが、家族と生き別れ、ゲットーを脱出します。森や農村を転々として生き延びていく中で不思議と助け手が現われホロコーストの嵐を生き延びて行きます。戦後70年の節目となる今年の夏。「戦争と平和」は今年は特に取り上げられるテーマですが、この本もぜひ手渡してほしいと思います。
 
 
*ノンフィクション*
『かき氷 天然氷をつくる』伊地知英信 細島雅代 岩崎書店(ちしきのぽけっと20) 岩崎書店 2015/5/31
とにかく暑い夏に、表紙を見せて展示しておくだけでも、涼しくなること請け合いの1冊です。埼玉県長瀞町で100年も続く天然氷について、どのように作られ、切り出されていくか、知識の本としても 知っておきたいところ。長瀞町では以前は何軒もあったという製氷業に携わる家が、今ではこの本のモデルとなっている阿佐美冷蔵だけになっているとのこと。せっかくの天然氷を作る歴史と伝統が引き継がれてほしいとも思いました。 
 
『エゾリス(北国からの動物記)』竹田津 実  アリス館 2015/6/25
エゾリス (北国からの動物記)
竹田津 実
アリス館
2015-06
北海道でキタキツネの観察を続けてきた獣医師で写真家の竹田津さんの、エゾリスへの豊かな愛情の伝わってくる写真集です。その愛くるしいエゾリスの表情に目が釘付けになります。家に通ってくるようになった子リスに「アカキチ」と名付け、彼を看取るまでの1匹のエゾリスとの4年間の記録です。竹田津さんの文章も合わせて味わってほしいと思います。 
 
『広島の木に会いにいく』石田優子 偕成社 2015/6/16
広島の木に会いにいく
石田 優子
偕成社
2015-06-16
2011年に公開されたドキュメンタリー映画「はだしのゲンが見たヒロシマ」を制作した石田さんは、その映画がきっかけで広島の爆心地に残る「被爆樹木」について知ります。それから3年の歳月をかけて東京から広島に通い、「被爆樹木」について調べ、それらの木にかかわる人々から被爆について証言を聞いたり、戦後すぐに被爆樹木をスケッチしていた大学生などから聞き取り調査をします。スケッチや地図など手描きの資料も多く、ヒロシマについて、「木」という視点から考えるための興味深いノンフィクション作品となっています。
 
『天井からジネズミ』佐伯元子 あべ弘士 学研教育出版 2015/5/25
 「ジネズミ」って知っていますか?数年前に我が家のご近所が建て替えになり、天井裏にネズミが居着いて困ったことがありました。同じような「ネズミ」なのだと思って読み始めると、どうも「ネズミ」と名前がつくものの、種としては「モグラ」の仲間の体長わずか3cmの「ジネズミ」なのです。随所に創意工夫を施したジネズミハウスを作り、「ちうちゃん」と名付けたジネズミを観察、育てていきます。小さなジネズミの生き生きとした様子をぜひ一緒になって味わってください。この作品は第5回子どものための感動ノンフィクション大賞を受賞しています。 
 
『オキノタユウの島で 無人島滞在“アホウドリ”調査日記』長谷川博 偕成社 2015/5/19
 1949年に一旦は絶滅したと言われたアホウドリ=オキノタユウの保護と観察を、40年間地道に続けてきた克明な記録です。特に著者の長谷川さんは1973年以降、20年間毎年1ヶ月以上の無人島生活を繰り返し、それを克明に記録につけてきました。研究者としての熱意の裏に、オキノタユウへの愛情と、自然環境への思いがあることが伝わってきます。 
 
『奥本昆虫記』奥本大三郎 教育評論社 2015/6/28
奥本昆虫記
奥本 大三郎
教育評論社
2015-06-27 
 「ファーブル昆虫記」ならぬ「奥本昆虫記」です。見開き2ページにつき、ひとつの昆虫について愛情あふれるエッセイが記されています。その数、100種類。その中には今まで知らなかった昆虫も含まれており、読みながら「ほお~」「へえ~」と唸るような楽しい発見がたくさんあります。虫好きだけでなく、虫嫌いの人も読めば、虫への理解が深まること、請け合いです。 
 
『本屋になりたい この島の本を売る』宇田知子 高野文子 ちくまプリマー新書 筑摩書房 2015/6/10
本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)
宇田 智子
筑摩書房
2015-06-08 
 2014年1月の朝日新聞新年特集「もう一つの生き方」で、作者の宇田さんが東京の大手書店の店員をやめて、沖縄は那覇にある小さな古書店を立ち上げたという記事を読みました。その宇田さんの活動の記録がちくまプリマー新書にまとめられました。小さな本屋さんで、「地産地消」について考え、本を売るということについて真剣に考えている著者の姿勢に、こちらも衿を正して向き合いたくなります。YA世代には働き方への指南にもなることでしょう。イラストは高野文子さんです。ぜひ手にして欲しい1冊です。
 
*大人向け(教育者・研究者および保護者)
『石井桃子コレクションⅤ エッセイ集』石井桃子 岩波現代文庫 岩波書店 2015/5/15
エッセイ集〈石井桃子コレクションV〉 (岩波現代文庫)
石井 桃子
岩波書店
2015-05-16
今年の1月から毎月1冊ずつ刊行された岩波現代文庫の「石井桃子コレクション」が、5月の『エッセイ集』で完了しました。このエッセイ集は1999年に刊行された『石井桃子集7 エッセイ集』をベースに新たに27篇の新しいエッセイが加わっています。自然や暮らしのエッセイでは石井さんの豊かな感受性に触れ、子どもと本に関わるエッセイでは、ここまで子どもを理解して本を書いたり翻訳されていたのかと、改めてその偉業について思いを馳せることができました。1950年代から2002年までの50年以上に及ぶ期間に書きためられた85篇のエッセイに一貫してあるのは、「子どもに寄り添う」という思いのように感じました。
(K・J)

2015年4月の新刊から


2015年4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者・保護者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

絵本

『のっていこう』木内達朗 福音館書店 2015/4/1

お父さんとお出掛けをする男の子。3つの乗り物を乗り継いでどこへ行くのでしょう?関西に住んだことのある人は、登場する電車を見て「あっ!」と声をあげることでしょう。そして海沿いを走って乗り換えた乗り物はロープウェー。これって、六甲山系のあの山へ登るロープウェイだと、山頂からの景色を見て思いました。山頂から俯瞰する景色には今まで乗ってきた道筋も見えます。父子が乗る乗り物以外にもタクシーや自転車、船などたくさんの乗り物が登場し、乗り物好きの子どもたちを魅了することでしょう。もとは「ちいさなかがくのとも」の月刊誌だったものです。 

おばあさんのひっこし』エドナ・ベッカー作 神沢利子/山田ルイ訳 白根美代子絵 福音館書店 2015/4/1

おばあさんのひっこし (こどものとも絵本)
エドナ・ベッカー
福音館書店
2015-04-01

 東京子ども図書館刊の『おはなしのろうそく16』に収録(愛蔵版では『赤鬼エティン』の中に収録)されている「おばあさんのひっこし」が絵本になりました。1898年にアメリカで生まれたエドナ・ベッカーが子ども向けに書いた作品で、ちょっととぼけたおばあさんが主人公です。可愛がっている猫と牝牛とろばを連れて、古い家を出てお引越しをするのですが…動物たちが一番満足する家を探しているうちに、最後に引っ越してきたのが元々おばあさんたちが住んでいた家だったという楽しいお話です。語りでも楽しいお話が絵本になって、より多くの人に知ってもらえるのは嬉しいことです。 

『ごはん』平野恵理子 福音館書店 2015/4/8

ごはん (日本傑作絵本シリーズ)
平野 恵理子
福音館書店
2015-04-08

 日本人に生まれて何が一番ごちそうかって?やっぱり炊き立てのご飯でしょう。この絵本はそのごはん文化を余すことなく伝えてくれる”よだれ”の出る絵本です。表紙は美味しそうな一膳のごはん。本を開くとお櫃に入ったごはん。そしてたきこみごはんやがいこくごはん(洋食のことを、こう表現しています)、どんぶりごはんにおにぎり・・・と美味しそうなごはんが、「どーん!」「ずらーり!」と並んでいます。それぞれのごはんが盛られている器にも注目です。新米の穫れる秋に読んであげてもいいし、いやいつでも読んであげられる楽しい絵本です。作者の平野恵理子さんは、2010年にあすなろ書房から『和菓子の絵本ー和菓子っておいしい!』を出版されています。 

 『だれかさん』内田麟太郎作 今森光彦 切り絵 アリス館 2015/4/10

だれかさん
内田 麟太郎
アリス館
2015-04

 ねこはねずみを追いかけて食べるものって思っていませんか?この絵本では、なんとねことねずみの素敵な関係を、内田麟太郎さんの洒脱な言葉遊びと、今森光彦さんの切り絵で表現しています。その言葉のリズミカルで面白いこと!そして切り絵のお洒落なこと!各ページの背景の色と共に楽しんでほしいと思います。子どもたちもそのリズミカルな言葉に聞き入ることでしょう。 

『カワと7にんのむすこたち クルドのおはなし』アマンジ・シャクリー/野坂悦子文 おぼまこと絵 福音館書店 2015/4/15

中東情勢のニュースで耳にするクルド人。イラク戦争では難民として、今はISと戦う人々として登場するクルド人ですが、実は第一次世界大戦後のサイクス・ピコ協定によって中東各国に分割されているだけで、民族の歴史も古く人口も2500万人~3000万人、中東ではアラブ人、トルコ人、ペルシャ人の次に継いで多数を占めています。そのクルド人が語り継いできた英雄カワの伝説が日本でこうして紹介されることは、中東の歴史を知り現在を知るためにも大切なことでしょう。ある朝、王さまパシャは呪いによって肩からヘビが生えて来ます。かじ屋のカワと自慢の7人の息子たちは、その王さまからの「男の子をふたりずつさらってきてヘビに捧げろ」という命令にどうするのでしょう。ドキドキする展開が待っています。子どもたちにぜひ読んであげてほしいと思います。 

『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』トーベン・クールマン作 金原瑞人訳 ブロンズ新社 2015/4/15

リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険
トーベン クールマン
ブロンズ新社
2015-04-15

1912年、ドイツ・ハンブルグの街に本の大好きなネズミがいました。ネズミは図書館でたくさんの知識を得ていました。ある時、仲間のネズミが大量に殺される事件が起きます。そしてネズミは決意をするのです。空を飛んでここから逃げようと!それからネズミの飛行機制作の試行錯誤が始まります。幾多の失敗を重ねて、いよいよネズミは大西洋横断を成功させます。その後ネズミは航空ショーのスターへ。そのポスターをみつめる少年の姿が・・・その少年の名前はチャールズ・リンドバーグ。リンドバーグが大西洋横断を成功させる前のお話として描かれているこの絵本は、ドイツの絵本作家トーベン・クールマンのデビュー作です。お話の面白さもさることながら緻密に描かれた絵から、子どもたちは本から学ぶことや、自分で何かを創りあげることの面白さを知ることでしょう。小学生低・中学年の子どもたちにぜひ読んでほしい作品です。この作品についてのブロンズ新社のサイト→こちら 

YA向け

『大人になるっておもしろい?』清水真砂子 岩波ジュニア新書 2015/4/21

 目次にまず目をやると、”第1信 「かわいい」を疑ってみない?、第2信 怒れ!怒れ!怒れ!、第3信 ひとりでいるっていけないこと?”と気になるタイトルが続きます。周囲の目を必要以上に意識し、それに雁字搦めになって”自分らしさ”を見つけることのできない若い世代に向かって『ゲド戦記』の翻訳者であり児童文学者である清水真砂子さんの直球勝負の手紙です。「おとなになるっておもしろい?うん、だんぜん‼でも焦らないで。現在をていねいに生きてほしい。自分をごまかさず、はぐらかさず、スマホからも解放された独り居の時間を確保して。孤独と孤立が全く違うことは、ここまで読んできてくださったあなたには、もう十分おわかりでしょう。人は個が確立してこそ、初めて他者とつながることができる。そして個の確立には独り居の時間の確保は不可欠だと思います。人と人がつながるのではなく、ただ群れているにすぎないとしたら、それこそさびしすぎませんか。」(あとがきより p224)教育者として40年以上若い世代と向き合って来られた清水真砂子さんの力強い言葉は、悩める10代に希望の灯火を点けてくれることでしょう。巻末に本文で引用された本や、「●他人の悪意にうれたとき ●心惹かれる他人の支配下にとりこまれそうになったとき」など、さまざまな気持ちや状況になった時に手にしてほしい本のリストが掲載されていて、この本から次の読書へとつなげていくきっかけにもなります。ぜひYA世代向けにおすすめしたい1冊です。でも、まずおとなのあなたが手に取って読んでみてください! 

その他

『本物そっくり!昆虫の立体切り紙』今森光彦 日本ヴォーグ社 2015/4/23

昆虫の立体切り紙
今森光彦
日本ヴォーグ社
2015-04-23

 

 昆虫写真家の今森光彦さんが贈る昆虫切り紙の作り方の本です。単なる工作のハウツー本ではなく、今森さんが作る昆虫たちの今にも飛び立ちそうなリアル感がとても素敵です。夏休みの宿題で工作に取り組む子どもたちにもおすすめしたい1冊ですが、何よりその精巧さに大人もまた眺めていて楽しい本です。コラムの中で今森さんが「あしを折ったり、触覚を立たせたり、関節を折り込んだり・・・、最後に必ず体全体のバランスを整え、その昆虫らしさを表現する、これがまさに、作品にいのちを吹き込む大事な作業です。このとき、いつもどれだけ、その昆虫を観察していたかがためされるといっても過言ではありません。」と語っており、単なる工作本ではなく、実物の昆虫の観察へと誘うところがおすすめするポイントです。

(K・J)

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