本に関する情報

『物語の森へ 児童図書館基本蔵書目録2』への想いを聞いてきました!
おすすめ幼年童話4『ちびっこタグボート』ハーディー・グラマトキー
2017年5月、6月の新刊より(その2)
訃報『くまのパディントン』の作者、マイケル・ボンドさん
『子どもへのまなざし』の佐々木正美さん逝去
2017年5月、6月の新刊より(その1)*追加資料あり
訃報 ウルフ・スタルクさん
おすすめ幼年童話3『こぶたのレーズン』バーリアント・アーグネシュ
子どもに本を手渡す人にぜひ読んでほしい2冊
2017年4月の新刊本より(追加)
2017年3月、4月の新刊から
おすすめ幼年童話2『じゃんけんの好きな女の子』松岡享子
今年のリンドグレーン児童文学賞が決まりました!
訃報 大岡信さん
おすすめ幼年童話1『おはようスーちゃん』ジョーン・G・ロビンソン 

『物語の森へ 児童図書館基本蔵書目録2』への想いを聞いてきました!


5月下旬に東京子ども図書館から児童図書館基本蔵書目録2『物語の森へ』が出版されました。予約で申し込みをしていたので、届くのがとても楽しみでした。(手違いで届いたのは6月下旬でした) 

 

 

 

2012年3月の児童図書館基本目録1『絵本の庭へ』の出版から約5年、多くの児童サービス関係者が待ちに待った出版でした。

 

 

7月7日に銀座・教文館ナルニア国で開催された「『物語の森へ』刊行記念トーク」に参加し、この目録作成に取り組まれた東京子ども図書館理事長の張替惠子さん、担当者の護得久えみ子さんのお話を伺ってきました。

この目録には戦後出版された内外の児童文学(創作物語・昔話・伝説・神話・古典文学・詩集)の中から、次世代の子どもたちに手渡したい本が1600点が収められています。

トークでは、最初になぜ東京子ども図書館(TCL)が子どもの本のリストを作って来たのかその理由と経緯が、TCLの歴史を紐解きながら語られました。

1974年にTCLが設立される以前に、初代理事長であった石井桃子さんが瀬田貞二さんたちと始められた「子どもの本研究会」から、『私たちの選んだ子どもの本』が1966年に出版されています。石井桃子さんのかつら文庫や、瀬田貞二さんの瀬田文庫に通ってくる親たちからの「うちの子にどんな本を選んだらよいか」という質問に答えられる本のリストとして誕生しました。

このリストに挙げられたものは、文庫にくる子どもたちの反応がもとになっていました。その後、リスト作成はTCLに引継がれ、改訂が行われてきました。しかし、品切れや絶版になったり、新訳や改訂版が出たり、復刊されたりという子どもの本の出版状況の中で、収録された作品の出版情報を最新のものに保ちながらリストの改訂を行うことが困難になったといいます。

そこでTCLでは『私たちの選んだ子どもの本』とは別に、1990年以降に出版された子どもの本の中から選んだ『子どもの本のリスト「こどもとしょかん」新刊案内 1990~2001セレクション』を出版しました。こちらには絵本、昔話、物語に限らず、伝記や知識の本なども収録され、詳細な索引(書名、人名、件名)が付きました。

 


 

 そのような流れの中で、なぜ再びTCLが児童図書館基本目録に着手したのか、その理由はこれまで子どもたちが読み継がれてきた、子どもたちが心躍らせてきた作品が、本の出版流通の中で手に入らなくなっただけではなく、公共図書館でも廃棄され入手困難になっているという現実にあるということでした。

『物語の森へ』の「はじめに」のページ(p6~7)にはこのように書かれています。(太字引用文)

“『絵本の庭へ』や『物語の森へ』がこれまでのブックリストと大きく異なる点は、入手が可能かどうかという出版状況の枠を取り払い、すぐれた作品を将来に向けて伝承すべき文化遺産として記録にとどめようとしたところです。1950年から60年代、戦後の再興に取り組んだ児童書のつくり手たちは、子どもたちに希望を託し、作家、画家、編集者がひとつの思いで、質の高い作品づくりに取り組みました。高度経済成長の恩恵もあり、子どもたちの本棚はかつてないほど彩り豊かになりました。70年、80年代には、その果実を行きわたらせるための公共図書館システムも整ってきました。しかし、その後の電子メディアの普及や受験競争の過熱により、子どもたちがゆったりと本に向きあう時間はどんどん限られるようになりました。少子化による購買層の減少も影響し、出版社は過去に生み出した読みごたえのある傑作を品切れ・絶版にせざるを得ないケースが増えています。たとえ書店で手に入らなくなっても、質の高い作品を蓄積して提供することが使命であるはずの図書館も、施設面や資料提供の利便性という点では飛躍的に進歩したものの、子どものためのサービスを担う専門職員の雇用環境が不安定で、その役割を十分に果たしているとはいえません。
 このような状況の中で、わたしたちができることはなにかと考えたとき、どうしてもやり遂げたいと思ったのが「基本蔵書目録」の刊行でした。「基本蔵書目録」とは、図書館で蔵書の核として常に揃えておくべきだという評価を得た本のリストです。もし、その本が紛失したり破損したときには、買い換えなければなりませんし、絶版で入手できなくなった場合には、傷んでも廃棄せず、修理して保存を心がけなければならない作品であることを示し、蔵書構築の指針としたものです。”

以上のような思いで作られたこの「児童図書館基本目録」は、私たちが常に児童室の蔵書に気を配り、棚を作っていく際に、さらに研修でよく質問を受ける「児童書の廃棄基準」について明確な指針を示してくれるものだと思います。

今回、選定にかけられた本は約5000冊。15年にわたる選定作業に関わった人は延べ320人だったとのこと。その膨大な作業を想い、ほんとうに頭が下がります。

『絵本の庭へ』に続いて、『物語の森へ』の索引の充実度は、子どもの本についてのレファレンスでも大変心強い味方です。特に件名の小項目は1129にもなっています。(『絵本の庭へ』では1095項目)また登場人物索引は909件(『絵本の庭へ』では557件)となっており、本を探すときの手がかりとなります。トークの際に、件名の種類も『絵本の庭へ』と『物語の森へ』では大きく変化したことが示されました。たとえば「気持ち・こころ」をあらわす件名は『絵本の庭へ』(a)では27項目80冊、『物語の森へ』(b)では33項目275冊となり、物語ではより複雑なこころの動きを表現した作品が多いということがわかります。もっと単純な比較では、「のりもの」の件名のうち、「電車」は(a)では36冊なのが(b)では10冊に、「車」は(a)23冊、(b)12冊と減っている中、「船」は(a)32冊、(b)36冊とさほど変化がないことなど、件名を見ていくだけでも、絵本と物語の違いもみえて面白いことがわかりました。

それに加えて、『物語の森へ』では作品の出版履歴が提示されています。最初に出版した出版社から復刊した出版社、あるいは翻訳者の変更、題名の変更なども併せて辿ることが可能になっています。

トークの終盤で「図書館員はこれに収録している本は捨てるな。これらの本がなければ図書館員稼業は出来ないと、思ってほしい」との言葉を聞いて、襟を正す思いになりました。本来は、子どもの本の選書眼は長く児童サービスに携わる中で、子どもたちの反応を見ながら身についていくもの。それがなかなか厳しい中で、どのように児童サービスに関わるスタッフの研修でそれを伝えていくか、苦心をしていたところだったからです。

「本のこまど」でも、「基本図書を読む」の連載をしたり、児童部会の活動報告の中で「基本図書から学ぶ」についてお伝えしてきました。しかし、今回TCLの「児童図書館基本目録」に対する覚悟と篤い想いを聞いて、これらについて児童サービスに関わるスタッフにもっと丁寧に伝えていくことの重要性を感じています。

まずは『絵本の庭へ』に続いて、『物語の森へ』を児童サービス業務の座右の銘として常にそばに置いてほしいと願います。

(作成K・J)

おすすめ幼年童話4『ちびっこタグボート』ハーディー・グラマトキー


連載第4回目は『ちびっこタグボート』(ハーディー・グラマトキー/作 わたなべしげお/訳 改訂新版 学習研究社 2005)です。

ちびっこタグボート (グラマトキーののりものどうわ)
ハーディー グラマトキー
学習研究社
2005-07


 

『ちびっこ・タグボート』はアメリカで1939年に出版されて以来長い間読みつがれ、日本でも1967年に翻訳出版され、たくさんの子ども達に親しまれてきました。2005年に文章を横書きに改めた改訂新版が出ました。

働くのが嫌いで、いたずら好きなタグボート・トゥートゥは、波の荒い海ではなく、いつも安全で穏やかな川で遊んでいました。しかし、ある嵐の夜に大型汽船が難破しているのを見つけます。小さなタグボートでは大きな船を引くことが出来ませんが、助け出さないと大変な事になります。トゥートゥは勇気を振り絞って、荒れ狂う海に立ち向かっていきます。

いたずら好きで遊ぶのが好き、そして、ちょっと弱虫なトゥートゥは、子どもたちに身近な存在に感じます。その小さなタグボート・トゥートゥが大活躍する様子は、トゥートゥの目線で描かれており、子どもたちは小さいながらに頑張るトゥートゥと同化して一緒に活躍した気持ちになれるでしょう。

全ページに描かれたイラストは可愛らしく、なんといっても登場キャラクター達の表情が豊かです。色合いも優しく温かな雰囲気を醸し出しています。また、トゥートゥがいる川や港の様子がわかる見開きの絵からは、タグボート達がどこで活躍しているか、場所を確認しながら想像する楽しさがあります。

この作品は、グラマトキーののりものどうわシリーズの第1作目です。他にも、『いたずらでんしゃ』や『ルーピーのだいひこうき』等、子どもたちが好きな乗り物が主人公になっているお話が全部で6作品あります。

やさしい文章で、読み聞かせなら4歳から、自分で読むなら小学校低学年の子どもたちにオススメです。ちびっこタグボート・トゥートゥの大活躍にドキドキ・ハラハラしてみませんか?

 (作成29年度児童部会部員F・N) 

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら

2017年5月、6月の新刊より(その2)


 

 2017年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(2017年4月発行の書籍も含まれています)

(その2)では児童書、YA向けの書籍を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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 【児童書】

『キキとジジ 魔女の宅急便特別篇その2』角野栄子/作 佐竹美保/画 福音館書店 2017/5/25


多くの子どもたちに夢を与えてくれる「魔女の宅急便」のシリーズは、第1巻が出てから32年になります。そのシリーズ最新作が5月に出ました。キキがオキノさん、コキリさん夫婦のもとに誕生した日から始まる物語です。つまり14歳になったキキが二人のもとを旅立つ日から始まった「魔女の宅急便」のお話が、その一番の始まりのキキの誕生に巻き戻されたといってもよいでしょう。そして赤ちゃんのキキのもとに、赤ちゃんネコのジジがやってきます。キキとジジ、二人(ひとりと一匹)の成長物語ですが、ところどころにジジの本音の気持ちが書かれていて、それがまたくすりと笑いを誘います。本編でのキキとジジの関係はこのように育まれてきたのだなと、読んでいてうれしくなりました。

 
 
『マウスさん一家とライオン』ジェームズ・ドーハティ/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/5/26

マウスさん一家とライオン
ジェームズ ドーハティ
ロクリン社
2017-05-30
 
この絵本は『アンディとらいおん』(村岡花子/訳 福音館書店 1661)でコルデコット賞を受賞したジェームズ・ドーハティの作です。ドーハティは『アンディとらいおん』で絵本作家としての地位を確立したのだそうですが、他の作家が作った文章に絵をつけることが多く、文章、絵ともに自作の作品は『アンディとらいおん』に次いでこちらの2冊だけなのだそうです。イソップ物語の「ねずみとライオン」をもとに作られたお話です。陽気なねずみのマウスさん一家がピクニックに出かけた時に、一家の末息子チェダーがぐっすり眠っていたライオンに悪戯をしてしまいます。怒ってチェダーを捕まえたライオンに許しを請う家族たち。ライオンはその愛情深く心優しい一家の姿に胸を打たれて逃してやります。チェダーが「あなたのピンチには助けるよ」と真顔で言うのを笑い転げるライオンでしたが、ある日人間のしかけた罠にかかてしまいます。チェダーたちは約束通りに駆け付けました。抑えた色味でセンスの良い絵が、このお話の面白さをさらに引き立てています。絵本に分類するか悩みましたが、低学年の子どもたちが自分で読むのにちょうどよいと考えて、児童書として紹介します。


『メリーメリーのびっくりプレゼント』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/6/15 
 
メリーメリーのびっくりプレゼント
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-06-16

3月に出版された『メリーメリーおとまりにでかける』に続く「メリーメリー」シリーズの2作目です。(『メリーメリーおとまりにでかける』の紹介文は→こちら)5人兄姉の末っ子メリーメリーは、とにかくお茶目で、みんなを驚かせます。子どもたちだけで留守番をしていたある退屈な土曜日なんて、家の前に消防自動車を呼んでしまいます。(通報したのは上の子たちですが)でも、メリーメリーはお騒がせなだけではありません。二人の姉ミリアムとメグよりも上手に赤ちゃんのお世話もしましたし、ご近所に住むサマーズさんの結婚式には立派に付き添いを務めました。このシリーズを読めば、きっとみんなメリーメリーが大好きになるはずです。

 

 
【ノンフィクション】

 『ほんはまっています のぞんでいます』かこさとし/作・絵 復刊ドットコム 2017/5/25

ほんはまっています のぞんでいます (かこさとし◆しゃかいの本)
かこ さとし
復刊ドットコム
2017-05-25

昨年夏の『こどものとうひょう おとなのせんきょ』に続いて、「かこさとし◆しゃかいの本」の2冊目が復刊されました。1985年に童心社から出ていた同名の本を底本として、よみがえりました。この本では子どもたちに本に出会うための公共図書館の機能をわかりやすく伝えています。また「あとがき」では、「親は大人は、子どもにだけ本を読めというだけで、良書の普及や図書館の状況が文明国の中でとても恥ずかしい状態なのを改める努力が少ないように思います。」と、子どもたちの読書離れについて大人に向けて苦言を呈しています。32年前にすでにそういう危惧があったこと、そして今それらが改善されているかということを振り返ってみて、図書館に関わるものとして胸を張って「その心配は杞憂に終わりました」と言えないことに忸怩たる思いがします。それでも今、新しい図書館が次々とオープンし、真剣に市民の側から図書館サービスを考えようとする機運が高まっていることも事実です。子どもたちにとって、子ども時代に本に出会うことの大切さは今も昔も変わっていません。この本は、子どもたちはもちろん子どもと本に関わる大人たちに読んでほしいと思います。(『こどものとうひょう おとなのせんきょ』についての紹介記事は→こちら

 

【YA向け】
 
『太陽と月の大地』コンチャ・ロペス=ナルバエス/作 宇野和美/訳 松本里美/画 福音館書店 2017/4/15
太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)
コンチャ・ロペス=ナルバエス
福音館書店
2017-04-15

世界史を学習した人は、記憶のどこかに「レコンキスタ」(国土回復運動)や「グラナダの陥落」という言葉が残っているのではないでしょうか。611年に興ったイスラム国家ウマイヤ朝は、710年にジブラルタル海峡を越えてイベリア半島に進出しました。それから1492年のグラナダ陥落までイスラム勢力(ナスル朝)による支配が現在のスペイン南部で続くことになります。この物語はグラナダ陥落後のグラナダを舞台にして、16世紀のキリスト教徒とイスラム教徒との確執のはざまで育まれた友情と引き裂かれていく運命について描いています。当時、イスラム教徒は強制的にキリスト教に改宗させられ「モスリコ」と呼ばれていました。その後アラビア語の使用や生活様式の禁止令も出て、徹底的な同化政策が行われていたようです。この物語の中心人物はモスリコの老人ディアス。彼らの家族はアルベーニャ伯爵家に仕えていました。ディアスと、前当主ドン・ゴンサロは、主と使用人という関係というよりは、少年時代から一緒に過ごしてきた親友のような存在でした。この関係は息子の代になっても続くと思っていたのですが、アラビア語禁止令が出たことによって変化していきます。ディアゴの孫のミゲルは山賊となってイスラム教徒の反乱に参加していくのです。物語は、民族、宗教に引き裂かれる人々の、しかし同じ人間同士として理解することもできるんだというメッセージをも含んでいます。キリスト教徒とイスラム教徒の軋轢の歴史は、今も続いています。テロとその影響で難民になって他国へと逃れていく姿は、16世紀の物語としてではなく、今まさに中東とEU諸国で起きていることと重なります。この本は1984年にスペインで出版されIBBY(国際児童図書評議会)のオナーリスト、そしてヘルマン・サンチェス・ルイペレス財団(*)による「20世紀のスペインの100冊」にも選ばれて、長く読み継がれているということです。スペイン留学中にこの本に出会ったという宇野和美さんによる翻訳は、とても読みやすく、言葉が心に沁みわたってきます。世界史を学ぶYA世代に、ぜひ手渡したい1冊です。
*この財団についての説明は、宇野和美さんのブログ「訳者の言いわけ」に詳細に書かれています。→こちら

 

『スレ―テッド』1,2,3 テリ・テリー/著 竹内美紀/訳 祥伝社文庫 祥伝社 2017

スレーテッド 消された記憶 (祥伝社文庫)
テリ ・ テリー
祥伝社
2017-04-12


スレーテッド3 砕かれた塔 (祥伝社文庫)
テリ・テリー
祥伝社
2017-06-21

題名になっている「スレーテッド」とは、解説によれば「「石板」を意味するslate(スレート葺きの屋根に使われてるあのスレートです)をもとにした造語。英語で”clean slate”と言えば、「白紙」のことだし、”wipe the slate clean”と言えば、「過去を清算する」とか「新たに出直す」という意味」で、この物語は2054年、EU離脱後のイギリスで、中央連合政府によって強制的にスレ―テッドつまり記憶を消去された少女カイラが、自分の過去に気づき、国家全体を揺るがす陰謀へと巻き込まれていく様を描くサスペンスです。カイラは16歳。当時、イギリスはEU離脱後の欧州経済危機に端を発する大混乱と国境封鎖を経て、超管理社会へと変化していました。犯罪行為など反社会的なことを行った16歳以下の子どもは矯正と再犯防止のために、強制的に脳手術を施され、記憶が消されてしまいます。その上、腕にはブレスレットのようなレポと呼ばれる監視装置を取り付けられています。レポは、脳内に埋めこまれているチップが測定する脳内物質の変化を数値化して表示します。強い不安や怒りを感じると、レポが脳内に埋め込まれたチップに電気ショックを与えて強制的にブラックアウトし、酷い場合には死に至るように設定されているのです。スレ―テッドされた少年少女は徹底的に管理化に置かれているのですが、カイラはある時、自分の過去の記憶が完全に消えていないことに気がつきます。そしてスレ―テッドの少年ベンと真相を探ろうとして、反政府組織と接触するようになってきます。4月から6月にかけて毎月1冊ずつ出版されましたが、読み始めると早く次が読みたくて出版が待ちきれなくなった作品です。この作品の翻訳は、『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか―「声を訳す」文体の秘密』(ミネルヴァ書房 2014)を書いた東洋大学准教授の竹内美紀さんです。YA世代が惹きつけられるような言葉を意識して翻訳したのだとか。近未来のディストピアは現実となるのでしょうか。このような未来を子どもに手渡してはいけないと思いつつ、多くの人に読んでほしいと思いました。
 
 
『高校図書館デイズ 生徒と司書の本をめぐる語らい』成田康子/著 ちくまプリマ―新書 筑摩書房 2017/6/10
高校図書館デイズ: 生徒と司書の本をめぐる語らい (ちくまプリマー新書)
成田 康子
筑摩書房
2017-06-05
 
北海道札幌南高校で学校司書をつとめる成田康子さんが、学校図書館を利用する13人の生徒たちの読書と日々の生活のことなどを綴ったノンフィクションです。今を生き高校生たちが、どんな本に出会っているのか、また読書を通してどんなことを感じているのかが、生き生きと描かれていて、その生徒の顔が見えてくるように思いました。ひとりの生徒が成田さんが司書として詰めている図書館を「ここって、仕事帰りにふらっと寄っていきたくなるような居酒屋」のようだと、「はじめに」の冒頭に書かれていますが、忙しい高校生活の中で、時間をみつけてちょっとだけ顔を出してみよう、司書の成田さんとひと言、ふた言話してみよう、そうすることでまた自分のすべきことへ向かうことができる、そんな関係性を作ったのはひとえに成田さんの学校司書としての働きにあることは明白です。自分も高校時代にこんな素敵な司書さんに学校図書館の中で出会いたかったなと思いました。(当時の学校図書館は、開かずの間でしたから)巻末にある13人の高校生が取り上げた本のリストも、図書館でのYAサービスの参考になるでしょう。高校生の不読率が5割を超えた(高校生の読書習慣に関する調査結果→こちら) という調査結果が一昨年出ましたが、だからこそまたこの本は多くの同世代の子どもたちにも読んでほしいと思います。
 
 
 【その他】
『おはなし会がはじまるよー特別支援学校(肢体不自由校)でび図書館活動―』おはなしの会うさぎ/編集・発行 2017/4/30
東京都立墨東特別支援学校での学校図書館の様子や、障害を持つ子どもへのおはなし会の実践についてまとめた小冊子です。現在、教文館ナルニア国においてのみ販売しています。値段は500円です。(教文館ナルニア国の紹介文→こちら
 
【おまけ】
『やさしいことばで日本国憲法―新訳条文+英文憲法+憲法前文』池田香代子/訳 C・ダグラス・ラミス/監修・解説 マガジンハウス 2002/12/10
やさしいことばで日本国憲法―新訳条文+英文憲法+憲法全文
C.Douglas Lummis
マガジンハウス
2002-12

 私たちの日本国憲法が実は双子だったってご存知でしたか?GHQのスタッフによって英語でも書かれていたのです。ただし日本語の憲法を英訳したものでもなく、また英語の憲法を和訳したのが現行の日本国憲法になったわけでもなく、同時に作られていたというのです。2002年に出版されていたこの本が、今年の春に増刷されました。『世界がもし100人の村だったら』を翻訳した池田香代子さんの訳です。日本語と英語の憲法を対にして読むことによって、この憲法に書かれていることが、世界の平和への希望だとわかります。基本的人権、そして誰もが恐怖や貧しさから免れて平和に生きる権利を有していることを、改めて考えたいと思いました。

(作成K・J)

訃報『くまのパディントン』の作者、マイケル・ボンドさん


イギリスで1958年に出版され、日本でも松岡享子さんの翻訳によって1967年に出版された『くまのパディントン』(福音館書店)の作者マイケル・ボンド氏が6月27日に亡くなられたという報道がありました。91歳だったそうです。(Yahooのニュース記事→こちら ハフィントンポストの記事→こちら

『くまのパディントン』マイケル・ボンド/作 ペギー・フォートナム/絵 松岡享子/訳 福音館書店 1967

くまのパディントン (世界傑作童話シリーズ)
マイケル・ボンド
福音館書店
1967-10-01

 

マイケル・ボンド氏が妻にプレゼントしたくまのぬいぐるみがモデルになったとのこと、そのパディントンのイギリス紳士らしい振る舞いと、それでいながらその周囲で起こる騒動がとても面白く、子どもたちだけでなく若い女性も夢中にさせる作品です。アニメ作品や映画にもなっており、本を読んでいない人でも、パディントンの魅力はよく知っていることでしょう。

シリーズは現在全部で10巻になっています。(5巻目からは田中治/訳)(福音館書店のサイト→こちら)これからも子どもたちに手渡していきたい作品です。

くまのパディントン 全10巻セット
マイケル・ボンド
福音館書店
2009-03-26

 

(作成K・J)

『子どもへのまなざし』の佐々木正美さん逝去


児童精神科医の佐々木正美先生が亡くなられたというニュースが飛び込んできました。昨日6月28日に骨髄線維症で亡くなられたとのこと、81歳でした。心より哀悼の誠を捧げます。(朝日新聞記事→こちら

1998年に福音館書店から出版された『子どもへのまなざし』との出会いは、当時思春期を迎えた子どもたちと、誕生まもない末っ子の4人の子育てに奔走していた私にとって何ものにも代えがたい僥倖でした。それまで義父母の期待に応えるべく「良い子」に育てなければと必死だったのですが、「ああ、こういう視点があったんだ」と肩の荷を下ろすことの出来たのでした。

多くのお母さんたちにとっても、この本は子育てのバイブルになったのではないでしょうか。

『子どもへのまなざし』佐々木正美/著 山脇百合子/挿絵 福音館書店 1998

子どもへのまなざし (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
1998-07-10

 

 


『続 子どもへのまなざし』佐々木正美/著 山脇百合子/挿絵 福音館書店 2001

続 子どもへのまなざし (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
2001-02-28

 

 


『完 子どもへのまなざし』佐々木正美/著 山脇百合子/挿絵 福音館書店 2011

完 子どもへのまなざし (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
2011-01-20

 

 

2011年5月28日に『完 子どもへのまなざし』が刊行記念の銀座・教文館ナルニア国が主催した佐々木正美先生の講演会に参加しました。当時、講演の内容を綴ったメモには

***メモ***

 講演の最初に佐々木先生が投げかけられた問いは、「豊かになって、ほんとうに幸せになったか?」というものでした。「子どもと青年と家族の健康と幸せを願って」児童精神科医の仕事を40年余り続けて来られた先生。日本は戦後豊かになったけれども、子どもを取り巻く環境は急速に変化し、子どもたちが巻き込まれる不幸な事件も後を絶たない・・・家族の崩壊の実体は目を覆うばかりだとおっしゃいます。

「人間は、誰もが自分の存在する意味、生きて行く意味を、人間関係の中でしか見いだせない」存在なんだと・・・今の日本の社会における人間関係の歪みについて、家庭内の関係も、家庭外の関係も含めてお話してくださいました。中でも印象的だったのは、家の人の前でいい子にふるまっている子が、外では問題児だということ。保育所では手がかからず、ルールを守れる子どもたちが、意外や、家庭では甘えっ子でダダっ子だという事実。家庭では、最低限のルールは定めても、気を許せる場所であってほしい。その家庭が、気の休まる所でなくなってしまうと、外で問題を起こしてしまう・・・ということでした。

その逆に、家庭の外での人間関係が豊かでないと家庭内での精神的な健康を保てないというお話も。つまりは、家庭で自分をそのまま受容してくれる場があれば、他者を尊重する生き方ができる・・・そうやって他者との関係をうまく築くことができれば、その人は家庭に帰っても外での鬱憤をぶつけることなく、穏やかに過ごすことができる。プラスのスパイラルが生まれるという事。

********

と、記していました。子どもと、そしてその子が育っていく家族を中心に、広く社会にまで目を向けながら、子どもの心に寄り添うことの大切さを、ずっと訴えて来られた佐々木先生の言葉のひとつひとつが胸にしみわたったことを思い出します。

思春期の子育てについての本も何冊か、書かれています。これらの本が、子育て中の方々に広く手渡されていくようにと願います。

 

『抱きしめよう、わが子のぜんぶ―思春期に向けて、いちばん大切なこと』佐々木正美/著 大和出版 2006

 

 


『子どもの心の育てかた』佐々木正美/著 河出書房新社 2016

子どもの心の育てかた
佐々木正美
河出書房新社
2016-07-19


 

(作成K・J)

2017年5月、6月の新刊より(その1)*追加資料あり


 2017年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。なお、6/28に2冊追加しました。(2017年4月発行の書籍も含まれています)

(その1)では絵本を、(その2)で児童書、YA向けの書籍を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

 『えじえじえじじえ』佐藤可士和/絵 谷川俊太郎/字 クレヨンハウス 2017/4/10

 谷川俊太郎さんが多彩な画家やアーティストとコラボして作る「あかちゃんから絵本」シリーズの13作品目です。佐藤可士和さんは谷川さんからこのシリーズの依頼があって約2年半、どのような表現にしようかと初めての絵本への取組に答えが出せなかったそうです。ところが有田焼が創業400年を迎える2016年に向けて「ARITA 400project」に関わったことで、触発され自由に色をかけて表現したのが今回の絵になっています。その絵をみながら、今度は谷川さんが「字」をつけていきます。絵も字もあかちゃんにとっては、ひとつの表現であるということで、並んでいる文字に意味はなく、谷川さんが絵からイメージした「字」が並んでいるのです。ところが、実際に保育園で読み聞かせをしてみると、この不思議な絵本に小さな子どもたちが惹きつけられていく、そんな映像もおふたりのトークイベントで見せていただきました。小さな子どもの感性を揺すぶる絵本と言えるのかもしれませんね。

 

『なにもかも おちてくる』ジーン・ジオン/文 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 まさきるりこ/訳 瑞雲舎 2017/4/15

ほら なにもかも おちてくる
ジーン ジオン
瑞雲舎
2017-04-15

 この絵本の原書『All Falling Down』(1951)は、1952年のコールデコット・オナー賞受賞作品で、2005年にあすなろ書房から同じ訳者によって『あっ、おちてくる ふってくる』というタイトルで出版されていました。ジーン・ジオンとマーガレット・ブロイ・グレアムのコンビによる絵本としては『どろんこハリー』(わたなべしげお/訳 福音館書店 1964)が良く知られていますが、実はこちらがデビュー作です。今回、別の出版社から出すにあたり、タイトルだけではなく、内容もいくつか翻訳が変更されています。たとえばあすなろ書房版で「ひとびとは、いそいでいえじにつきます」→瑞雲舎版「ひとびとは、いえにむかっていそぎます」、あ「おばあさんのけいとのたまが おちてころがります。ころころ ころころ・・・」→瑞「おばあさんのけいとのたまがころがります。まるいためが、ころころ ころころ」、あ「おとうさんがジミーをしっかりうけとめます」→瑞「おとうさんが、ジミーをしっかりうけとめました」というように変更されています。2冊を読み比べてみると、たしかに声に出して読んだ時に、耳心地よく読みやすい訳になっているなと感じました。自然の営みの中で、落ちるもの、落ちてくるものとして花びらに、噴水の水、りんごに落ち葉など身の回りのものに目を向けさせる絵本です。と、同時に英語ではすべて「Falling Down」という表現ですむものが、日本語では「おちる」「おりる」「ふる」と違うことばで表現されていることも面白いなと思いました。

 

『アームストロング 宙飛ぶネズミの大冒険』トーベン・クールマン/作 金原瑞人/訳 2017/4/15 

アームストロング: 宙飛ぶネズミの大冒険
トーベン クールマン
ブロンズ新社
2017-04-15

2015年に出版された『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』(本のこまど紹介記事は→こちら)の第2弾です。今度は、仲間のネズミたちが「月は大きなチーズだ」と思い込んでいる中、天体望遠鏡で月を観測していて地球の衛星だと気がつくネズミが主人公です。仲間に理解してもらえないでいるネズミのもとにスミソニアン博物館の老ネズミから手紙が届き会いに行きます。この老ネズミは前作のネズミだと思われます。そして月へ行くことを決意したネズミは、大学の授業を聴講して(無断で)設計図を作成し、着々と準備を進めます。ところが大きな事故を起こし、人間に追われる身に・・・そんな中、無事に月へ着陸し、また地球へ帰還します。壮大な物語は、困難な状況を克服しながら月面着陸をはじめとして宇宙開発をすすめてきた人類の歩みを彷彿とさせます。前作と合わせて読んでみると、面白さも倍増しそうです。
 

 

『だれのこどももころさせない』西郷南海子・浜田桂子/作 浜田桂子/絵 安保関連法に反対するママの会/協力 かもがわ出版 2017/4/30

だれのこどももころさせない
西郷 南海子
かもがわ出版
2017-04-25

 「子育てまっ最中のママたちが、安保関連法案反対の声をあげたと知ったとき、わたしは胸打たれるものがありました。命を生み命を日々育んでい人たちの感性が、この法案を受け入れるはすがない。赤ちゃんや幼い子たちが、ママに大きな勇気を与え背中を押してくれたのだと。」と、この絵本の画家浜田桂子さんはあとがきに記しています。この絵本が出来たきっかけは、教育学を学ぶひとりのママが、わが子のこんな言葉を聞いたことだったそうです。新聞の安保関連法案審議を伝える記事を見て、「きょうのよる、せんそうにならない?」と不安げに聞く小さな声を。日本で今実際に寝ている家の上に爆弾が落ちてくることはないにしても、その問いかけは「いつのまにか、地球の向こうの子どもたちからのSOSに聞こえて」きたというのです。この法律制定の前に実は防衛装備移転三原則が閣議決定されており、いつのまにか武器輸出が可能になっています。国内で戦争は起きなくても、日本から輸出する武器が紛争地の子どもたちの上で使われるかもしれない。そうしたことに目を向け、命は補充可能な部品ではないことを、伝えていく決意を感じる絵本です。しかしその強い決意とは裏腹に絵は柔らかい色彩で優しく包み込むように「だれのこどももころさせない」と高らかに宣言しています。

 

『きゃべつばたけのぴょこり』甲斐信枝/作 ふしぎなたねシリーズ 福音館書店 2017/5/20

 きゃべつの上で育つもんしろ蝶のさなぎが主人公になっている小さな子どものための科学絵本です。植物の絵を描くのが大好きな甲斐信枝さんの、小さな生き物への愛情を感じる絵本です。蝶のさなぎだけではなく、きゃべつ畑にいる様々な昆虫など(たとえばてんとう虫の幼虫や成虫、カメムシなども)が丁寧に描かれています。

 

 『ちいさなかえるくん』甲斐信枝/作 ふしぎなたねシリーズ 福音館書店 2017/5/20

 こちらも甲斐信枝さんが描く小さな子どものための科学絵本です。『きゃべつばたけのぴょこり』に続くお話です。さなぎから孵ったばかりのもんしろ蝶を追いかけて逃げられてしまった蛙が主人公です。蝶が飛んでいくほうへ、どんどん追いかけていきます。おおいぬのふぐりにシロツメクサ、タンポポにナズナ、れんげに母子草、ハルジオンといろいろな春の雑草の中を飛んでいくもんしろ蝶。それを追いかける蛙、最後はまたきゃべつ畑に戻ってきます。蛙の姿を追いかけながら、春の野の花を親子で思い出せるといいなと思います。

 

 『よるのおと』たむらしげる/作 偕成社 2017/6 

よるのおと
たむら しげる
偕成社
2017-06-13

 たむらしげるさんは9歳の時、国語の授業かなにかで「古池や 蛙飛びこむ 水の音」という芭蕉の俳句を初めて耳にし、同時にその池の状況が音と共に鮮明に見えたというのです。あとがきでそのことを、「鳥肌が立つようなこの不思議な感覚をどう表現すればよいのだろう?(中略)ぼくは自分がこのすばらしい宇宙に存在する不思議に気づいた。」と書いています。60年を経て、その俳句を情景化したのがこの絵本なのです。絵本で表現されている時間は、おじいちゃんを訪ねてきた男の子が家の前の池にさしかかって玄関に到達するまでのほんの1,2分です。その間の、夜の池で繰り広げられる生き物たちの営みを「音」で表現しているのです。背景に星空が広がり、蛙が飛び込んだあとの波紋が太陽系のように見えるなどは、自分が「宇宙に存在する」と感じたかつてのたむら少年の心象風景を描き出しているのかもしれません。

 

『金剛山のトラ―韓国の昔話―』クォン・ジョンセン/再話 チェン・スンガク/絵 かみやにじ/訳 福音館書店 2017/6/10

金剛山のトラ 韓国の昔話 (世界傑作絵本シリーズ)
福音館書店
2017-06-07
 
 韓国の金剛山(クムガンサン)は歌にも歌われる代表的な山で、切り立った岩の峰々が連なる険しい山と深い渓谷とが織りなす景勝地とのこと。そこに伝わる昔話です。父親を人喰いトラに殺されたと聞いた少年ユボギが、母親と一緒に厳しい修行を積みます。その修業は母親が頭の上に載せた水瓶を矢で射った後に、泥団子を矢じりにつけて放ち、先ほどの穴をふさぐということであったり、鋭い竹の切り株の上を転がってみたり、自分の体の何倍もある大岩を持ち上げたりすることでした。そしていよいよトラ退治の旅に出かけていきます。旅の途中で出会った老婆の忠告を聞いてさまざまな試練を乗り越えるのですが、とうとう自分も人喰いトラに飲み込まれてしまいます。しかしユボギはトラのお腹の中で出会った娘と共に、必死で脱出する方法を探ります。とても迫力のある絵本ですが、最後は心温まる結論に、物語に引き込まれた子どもたちもホッとすることでしょう。 

 

 『ねむれないおうさま』ベンジャミン・エルキン/原作 ザ・キャビンカンパニー/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2017/6/15

ねむれない おうさま
ベンジャミン・エルキン
瑞雲舎
2017-06-30

 ある国の王さまは、なかなか寝付けません。家来たちは王さまに聞こえる限りの音を消し去ろうとします。飛行機や汽車を止めるだけでなく、子どもたちから積み木やくちゃくちゃかむ音がするチョコバーまで取り上げ、川のせせらぎや鳥の鳴き声まで聞こえないようにしました。それでも眠らない王さま。もう打つ手はないと思ったところへ、歌声が聞こえてきます。すわ大変!と家来たちが駆け付けると、新しく来た乳母が優しい声で子守歌を歌っていたのでした。そして赤ちゃんの王さまは安心して眠りにつくのです。途中までなんてわがままな王さまなんだろう?と思いながら読んでいると、最後に現れる可愛らしい赤ちゃんの寝顔に思わずこちらも頬が緩みます。 

 

 『スリランカの昔話 ふしぎな銀の木』シビル・ウェッタシンハ/再話・絵 松岡享子、市川雅子/訳 福音館書店 2017/6/15 

スリランカの昔話です。あるとき、王さまが不思議な夢を見ます。地面がぱっくりと割れて美しい銀色の木が生え、銀の花が咲き、銀の実がなり、銀の雄鶏がその上にたって時を告げたというのです。その木をほんとうに見たいと願い、三人の王子を探しにやります。三人の王子はそれぞれの道を探しに出かけますが、上の二人の王子はすぐに何かの魔力で姿を変えられてしまいます。末の王子は賢者の助言をもらって大蛇を倒し、不思議な洞窟の中で王さまが見たという夢の木を探し当てます。 大蛇の三人の美しい娘を連れて王さまの元へ戻ってくるのですが・・・正直な末の王子の優しさにホッとします。『きつねのホイティ』(松岡享子/訳 福音館書店 1994)や、『かさどろぼう』(いのくまようこ/訳 徳間書店 2007)で人気のスリランカの絵本作家シビル・ウェッタシンハさんの新しい絵本です。

 

『ホウホウフクロウ』井上洋介/作 福音館書店 2017/6/15

ホウホウフクロウ (日本傑作絵本シリーズ)
井上 洋介
福音館書店
2017-06-14
 
昨年2月に亡くなられた井上洋介さんの最後の絵本です。(訃報のお知らせは→こちら)シュールでいて温かみのある絵が魅力の井上作品ですが、最後のこの作品は水墨画です。淡々とした文章と、深い夜の闇の中を飛び回るフクロウやミミズクの圧倒的な存在感は、読む者を不思議な別世界に連れていきます。井上洋介さんのこれまでの仕事とはひと味違う作品をぜひ味わってほしいと思います。
 

 

 『どうぶつたちがねむるとき』イジー・ドヴォジャーク/作 マリエ・シュトゥンプフォヴァ―/絵 木村有子/訳 偕成社 2017/6

どうぶつたちがねむるとき
イジー・ドヴォジャーク
偕成社
2017-06-13

 「チェコの最も美しい本2014年」の児童書部門で3位を受賞した絵本です。抑えた色彩と、フロッタージュという技法で表現した動物たちの眠る様子は、ため息が出るほど美しく、それでいて科学的な視点をもった説明文がつけられています。ひとつひとつ読んであげているうちに、子どもも眠りに誘われていくことでしょう。

 

『手おけのふくろう』ひらののぶあき/文 あべ弘士/絵 福音館書店 2017/6/25

手おけのふくろう (日本傑作絵本シリーズ)
ひらの のぶあき
福音館書店
2017-06-21
 
 北国のある里山のお話です。古い桜の木のうろで子育てをしていたふくろうの夫婦がいました。ところがある大雪の日に雪の重さに桜の木が倒れてしまうのです。そこでふくろうたちは、民家の軒先につるされた手おけを代わりの巣にするのですが、雪やみぞれがおけの中には吹き込み、また天敵のハクビシンに狙われたりします。そんな危機を乗り越え、ふくろうの夫婦は三羽のひなを育てるのです。このお話は、実際にあった話がもとになっているそうです。野鳥を撮り続けているカメラマンの平野伸明さんが 文章を書き、旭山動物園の飼育員だったあべ弘士さんが現地を取材しながら絵を描いています。
 
 
『エルマーとブルーベリーパイ』ジェーン・セアー/作 シーモア・フレイシュマン/絵 おびかゆうこ/訳 ほるぷ出版 2017/6/24 
 
エルマーとブルーベリーパイ (海外秀作絵本)
ジェーン・セア
ほるぷ出版
2017-06-20

 1961年にアメリカで出版された絵本が、初邦訳されました。ある家にエルマーという妖精が住んでいます。ある日、おうちの人が焼いたブルーベリーパイをエルマーは食べてみました。あまりに美味しくて夢にまで見るほど。翌日もまたブルーベリーパイを食べられるかと思ったら、家の人が全部食べてしまっていました。もう一度食べたいと思ったエルマーはどうしたと思いますか?家の人たちが気がつかないうちに家じゅうの洗い物をし、掃除をし、ベッドメイキングまでしました。でも妖精は人間には見えないのです。どうやって「もう一度ブルーベリーパイ作ってほしい」とお願いするのでしょう?読んでみてくださいね。こんな妖精ならうちにもいて欲しいなと思いました。

 

『まるぽちゃ おまわりさん』マーガレット・ワイズ・ブラウン、イーディス・サッチャー・ハード/作 アリス&マーティン・プロベンセン/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2017/6/26

まるぽちゃ おまわりさん (おひざにおいで)
イーディス・サッチャー・ハード マーガレット・ワイズ・ブラウン
PHP研究所
2017-06-13
 
 翻訳者として次々に楽しい子どもの本を紹介してくださるこみやゆうさんは、お子さんをお膝の上にのせて絵本を読んであげる至福の時間をこのように表現しています。「絵本を子どもと楽しむということは、その子の心に「よろこびの種」を蒔くということです。種は、いずれ木となり、実をむすびます。その子が大きくなった時、心にたくさんの実があれば、時に他人にわけ与え、時に自らを励ますことができるでしょう。」と。そんな親子の時間のためにと、こみやゆうさんが選ぶ「おひざにおいで」シリーズの第1作目がこの絵本です。ちいさくて太ったまるぽちゃおまわりさんが交通整理に、泥棒退治に、溺れた人の救助に大活躍するお話が3つ入っています。ポップで親しみやすい絵を描いたのは『たまごってふしぎ』(こみやゆう/訳 講談社 2012)の絵本があるプロベンセン夫妻です。 

 

『あめのひ』サム・アッシャー/作・絵 吉上恭太/訳 徳間書店 2017/6/30

あめのひ (児童書)
サム アッシャー
徳間書店
2017-06-13

 朝、目が覚めると外は雨、ぼくは外で遊びたいなと思います。おじいちゃんに「雨を口で受け止めたい」「水たまりにパシャーンと飛びこんだりしたい」「ふねにのってあそびたい」と次々ねだりますが、おじいちゃんは雨が止むまで待つようにと言うのです。さて、雨が止んで玄関のドアを開けると・・・一面の海のようになっているのです。そこで舟に乗って出かけるおじいちゃんとぼく。やりたかったことを全部やって、ぼくも大満足です。こん風に過ごせたら雨の日も楽しいだろうなと思わせてくれます。

 (作成K・J)

 

訃報 ウルフ・スタルクさん


スウェーデンの児童文学作家ウルフ・スタルクさんが6月13日に72歳で亡くなられたとJBBYのFacebookページで知りました。→JBBYのFacebook

『うそつきの天才』(菱木晃子/訳 はたこうしろう/絵 小峰書店 1996)は大好きなスタルクの作品でした。

うそつきの天才 (ショート・ストーリーズ)
ウルフ スタルク
小峰書店
1996-11

 

 

 

絵本では、『おじいちゃんの口笛』(菱木晃子/訳 アンナ・ヘグルンド/絵 ほるぷ出版 1995)、『ちいさくなったパパ』(菱木晃子.訳 はたこうしろう/絵 小峰書店 1999)、『パパが宇宙をみせてくれた』(菱木晃子/訳 エヴァ・エリクソン/絵 BL出版 2000)、『おにいちゃんといっしょ』(菱木晃子/訳 はたこうしろう/絵 小峰書店 2003)など、子どもたちの心に寄り添う優れた作品が多くあります。

おじいちゃんの口笛
ウルフ スタルク
ほるぷ出版
1995-02-01
 
 
 
 
パパが宇宙をみせてくれた
ウルフ スタルク
BL出版
2000-10


 

 
 

児童書には 『シロクマたちのダンス』(菱木晃子/訳 堀川理万子/絵 偕成社 1996)や、『夜行バスにのって』(遠藤美紀/訳 堀川理万子/絵 偕成社 1998)や、『パーシーの魔法の運動ぐつ』(菱木晃子/訳 はたこうしろう/絵 小峰書店 2009)などのパーシーシリーズががあります。

シロクマたちのダンス
ウルフ スタルク
偕成社
1996-05

 

 

夜行バスにのって
ウルフ スタルク
偕成社
1998-01
 
 
 
 
パーシーの魔法の運動ぐつ (パーシーシリーズ)
ウルフ スタルク
小峰書店
2009-07
 
 
 
スタルクさんは2018年の国際アンデルセン賞にノミネートされていたそうです。とても残念に思います。
 
これを機に、ぜひスタルフさんの作品を子どもたちに手渡してください。

(作成K・J)

 

おすすめ幼年童話3『こぶたのレーズン』バーリアント・アーグネシュ


連載第3回目は『こぶたのレーズン』(バーリント・アーグネシュ/作 ブローディ・ベラ/絵 うちかわかずみ/訳 偕成社 2012)です。

こぶたのレーズン (こぶたのレーズンのおはなし)
バーリント・アーグネシュ
偕成社
2012-06-02
 
 
 

 こびとのマノーが住む、かぼちゃの家にころがりこんできたみすぼらしいみどりのこぶた。こぶたは、レーズンという名前になり、マノーといっしょに暮らすことになりました。

 あまえんぼうでくいしんぼうなレーズン。おはなしを聞いたり、ともだちと遊んだり、いたずらをすることも大好きです。そんなレーズンに振りまわされるかと思いきや、マノーは一緒に楽しんだり(時には叱ったり)、おおらかに接します。ずっとひとりで暮らしていたマノーにも、レーズンのいる生活は新鮮だったのです。わるいことをしたと思ったら、積極的にマノーのお手伝いをしたり、マノーに甘えたりするレーズンは誰かさんと似ていませんか?

 この愛らしいレーズンは、ハンガリーで1963年に人形劇番組のキャラクターとして生まれました。そして本は全3巻のシリーズとして刊行されています。日本では、そのうちの1巻が2冊に分けて訳され、この本と、続編の『こぶたのレーズンとおともだち』が同時刊行されました。国民的人気のレーズンをデザインしたブローディ・ベラ氏が、この本のイラストも描いています。ひとり読みを始める小学生でも、みどりのこぶたの表紙の絵を見たらおはなしにひきこまれることでしょう。登場人物が増える続編もあわせてどうぞ。


 

偕成社公式サイトの紹介ページ→こちら

ハンガリーの人形劇MAZSOLA(ハンガリー語でレーズン)のページ→こちら(ハンガリー語)

 (作成28年度児童部会員K.M)

子どもに本を手渡す人にぜひ読んでほしい2冊


今年1月に出版されていながら、手に取るのが遅くなって紹介しそびれていた本が2冊あります。

1冊は子どもの本を専門にする出版社、福音館書店を作り上げてこられた松居直氏の絵本づくりへの篤い思いを膨大なインタビューの中からまとめあげた藤本朝巳著『松居直と絵本づくり』で、もう1冊は長く家庭文庫活動をされた後、54歳の時(1994年)にイギリスに留学し、6年間ヴィクトリア時代の絵本研究をされた当時の様々な記録をまとめた正置友子著『イギリス絵本留学滞在記ー現代絵本の源流ウォルター・クレインに魅せられてー』です。

 

『松居直と絵本づくり』藤本朝巳/著 教文館 2017/1/30

松居直と絵本づくり
藤本 朝巳
教文館
2017-01-25

白百合女子大学大学院に児童文学を学ぶ博士課程が開設された時、男性でありながら院生として迎えられた著者が、講師と院生として出会った福音館書店編集者の松居直氏に絵本や絵本の編集について多くのことを聞き取り記録されたことを1冊にまとめられました。膨大なインタビューの内容は、実は2012年から2014年にかけて、ミネルヴァ書房からシリーズ・松居直の世界として3冊出版されたいます。(『松居直・自伝ー軍国少年から児童文学の世界へ』2012/1/20刊、『松居直と「こどものとも」』2013/7/20刊、『翻訳絵本と海外児童文学との出会い』2017/7/15刊)
そのシリーズとは別の形で、しかも大変読みやすいコンパクトな形で、手に出来ることは、私たち、子どもたちに本を手渡すものにとってはありがたいことです。
戦後日本の絵本を語る時に、松居直氏と福音館書店の月刊「こどものとも」を避けて語ることはできません。この本を読むことによって、長く読み継がれている絵本が、編集者のどのような篤い思いから作られて来たのか、その一端を知ることができるでしょう。

第1部「こどものとも」の編集と松居直
第2部 松居直と名作絵本作り
第3部 松居直とともに絵本を作った人々
第4部 ロングセラーと新しい絵本

以上の4部構成となっており、私たちがよく知っている作品や作者についてわかりやすく解説されているので、親しみをもって読むことができます。
創刊当時から子どもに手渡す本であるからこそ、芸術性の高い絵本づくりを目指した「こどものとも」と松居直氏の姿勢は、デジタル時代を迎えた現代の子どもたちにどのような絵本を手渡していくのか、残していくのかを考えるのにも多くのヒントを与えてくれます。


『イギリス絵本留学滞在記ー現代絵本の源流ウォルター・クレインに魅せられてー』正置友子/著 風間書房 2017/1/31

イギリス絵本留学滞在記
正置 友子
風間書房
2017-02-13
 
著者の正置友子氏は、大学卒業後結婚され、子育ての傍ら、大阪千里ニュータウンで家庭文庫(青山台文庫)活動をずっと続けてこられています。子どもたちに直接本を手渡す活動をする中で、絵本についてもっと学びたい、絵本の歴史について深く研究したいと考え、古今の絵本の蔵書があり、絵本という芸術について造詣の深い研究者のいるところとしてイギリスへ留学します。その時点で、著者は54歳になっており。自分のお子さん達は成人していました。
イギリスでは、ウォルター・クレイン(1845~1915)の絵本に出会い、その運命的な出会いからヴィクトリア時代(1837~1901)の絵本の歴史を研究し、6年後に1千ページに及ぶ英文と900枚の図版入りの博士論文にまとめられました。それが、ヴィクトリア時代の絵本研究として世界で初めての本格的な研究であり、子どもの本の優れた歴史研究であると認められイギリスの子どもの本歴史協会から2008年に「ハーベイ・ダートン賞」を授与されました。
イギリスでの生活のこと、出会った人々のことなど、留学中のさまざまなエピソードが盛りだくさんで読み物として面白く、一気に読んでしまいました。
その中で、一番心に残ったのは、ロンドンの新聞図書館で著者が見つけた新聞記事でした。今から150年前の1865年12月12日づけの出版業界新聞『ブックセラー』の中に記されている言葉です。

「本を制作するとき、子どもの本を作製するときほど、いっそうの熟練の技と、良いセンスに培われた細やかな配慮とが必要とされる分野はないであろう。にもかかわらず、このことは概してなおざりにされてきた。子どもたちにはまるでガラクタモノで充分だというふうに考えられている。なんというひどい間違いだ!もし可能であるならば、本当に美しいもの、純粋なもの、良いものだけが、子ども時代の感じやすい目と耳に提供されるべきである。」(「第4部 ヴィクトリア時代の絵本に魅せられて 第6章 児童文学史上重要な一八六五年 第1節 子どもたちには最高の絵本を手渡すべきであるー一八六五年十二月」p202)
 
 松居直氏が、「こどものとも」で目指した絵本づくりの目標が、すでに150年前のイギリスで掲げられていたこと、そしてヴィクトリア時代の絵本にはウォルター・クレインをはじめとして、そのような作品が生み出されていたことを、この本を通して再確認できました。
 
 この本の「おわりに」で、著者はイギリス留学中に、自分の母と父を相次いで天国へ見送ったことが記されていました。ロンドンとご実家のある名古屋を何度も行き来されたこと、父危篤の知らせを受けた時に英国航空がしてくれた粋な計らいを読んだ時には思わず涙がこぼれました。
 この本を手にすることによって、絵本の研究を志す若い世代が現れることを期待するとも記されています。絵本の研究分野には、文学にも芸術にもデザインにも保育学にも押し込めることのできない広さと奥行を内包しているとして、絵本学の構築を目指して、今また大阪大学の大学院で学んでいるという正置氏。女性の生き方、学び続けることの価値についても教えてくださっていると感じました。
 
この2冊の本は、子どもたちに本を手渡す活動をされている方々にはぜひ読んでほしいと思います。

(作成K・J)

 

2017年4月の新刊本より(追加)


4月の出版された本の中より、保護者・研究者向けの本2冊を紹介します。

(その他の本について、こちら→2017年3月、4月の新刊から

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『深読み!絵本『せいめいのれきし』』真鍋真/著 岩波科学ライブラリー260 岩波書店 2017/4/13

1964年に石井桃子の翻訳で出版され長く読み継がれてきた『せいめいのれきし』(バージニア・リー・バートン/作 石井桃子/訳 岩波書店)の改訂版が、この本の著者真鍋真の監修で2015年7月に出版されました。(「本のこまど」での紹介記事→こちら)この絵本を子ども時代に何度も繰り返して読み、長じて科学者になった著者が解説する『せいめいのれきし 改訂版』の見どころ解説です。絵本の中に描かれていることをわかりやすい言葉で解説し、実際の写真なども添えるなど、読めば読むほど地球上の生命の歴史に興味がわき、もっと知りたいと思います。カラーの図版や、コラム記事などもたくさんあり、絵本の解説書としてだけでなく、この1冊だけでも十分に楽しめます。小学生高学年からYA世代、そして保護者まで多くの年代の人に手渡したい1冊です。この本は代官山蔦屋書店児童書コンシェルジュYさんのおすすめです。

 

『子どものアトリエ―絵本づくりを支えたもの』西巻茅子/著 こぐま社 2017/4/25

銀座・教文館9階ウェンライトホール(第2会場→6階ナルニア国・ナルニアホール)で5月28日まで開催中の「西巻茅子絵本デビュー50周年展」に合わせて出版された西巻茅子の初エッセー集です。50周年展の展示解説ボードに記された言葉が、そのまま1冊の本になって手元に置いておけることに感激しました。『わたしのワンピース』をはじめとして西巻茅子の絵本が子どもたちを魅了し続けるのか、そこに子どもの心に寄り添う作家の眼差しがあることに気がつきます。この展覧会を見に行く機会がない方も、西巻茅子の絵本に込められた思いを、この1冊を読むことで深く知ることができるでしょう。なお、展覧会は前期(~5月7日)と一部原画が入れ替えられ、後期展覧会として5月28日まで開催されています。機会があれば、ぜひ覗いてみてください。

(作成K・J) 

2017年3月、4月の新刊から


2017年3月、4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部2017年1月および2月下旬発行のものあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

 

『くろねこトミイ』神沢利子/作 林明子/絵 復刊ドットコム 2017/2/25

くろねこトミイ
神沢 利子
復刊ドットコム
2017-02-28

 1978年にひかりのくに社から出版された『おはなしひかりのくに くろねこトミイ』を底本に復刊された絵本です。1973年に福音館書店月刊かがくのとも『かみひこうき』でデビューした林明子さんが、神沢利子さんのお話に絵をつけていた比較的初期の作品です。仲良しのまこちゃんが知らないおじさんの車に乗り込んだと知ったくろねこトミイが、クロヒョウのごとく大きくなって、まこちゃん救出に向かいます。いつもはごろごろ甘えているトミイの凛々しい姿が、きっと子どもたちの記憶に残ったのでしょう。復刊希望が多く寄せられ復刊ドットコムから出版されました。
 
 
『猫魔ヶ岳の妖怪ー福島の伝説』八百板洋子/再話 齋藤隆夫/絵 福音館書店 2017/3/8

この本には、 福島に本当にあった話として伝わる四つの伝説が入っています。表題作の「猫魔ヶ岳の妖怪」は会津地方に伝わる伝説で、山に捨てられ、妖怪になってしまった猫と、退治を命じられた鉄砲うちの若者のふれあいと悲しい別れを描いています。その他に伊達市山舟生の伝説「天にのぼった若者」、福島市笹木野の伝説「大杉とむすめ」、福島市松川の伝説「おいなりさまの田んぼ」が収録されており、少し重いお話から、読みやすいお話までバラエティーに富んでいます。再話者の八百板さんは、福島県中通り出身です。ブルガリア・ソフィア大学留学経験があり、『吸血鬼の花よめ―ブルガリアの昔話』、『いちばんたいせつなもの―バルカンの昔話』、『ナスレディンのはなし―トルコの昔話』、『ほしをもったひめ―セルビアのむかしばなし』などバルカン半島各地の昔話を再話して出版しています。また留学体験記『ソフィアの白いばら』も書かれています。いずれも福音館書店刊です。機会があれば合わせて読んでみるとよいでしょう。 

 

『ぼくのおじいちゃん』カタリーナ・ソブラル/作 松浦弥太郎/訳 アノニマ・スタジオ 2017/3/12

ぼくのおじいちゃん
カタリーナ・ソブラル
アノニマ・スタジオ
2017-03-17

 人はかならず老いていきます。子どもたちにとって、老いるということがどんなイメージで捉えられるかは、その後の生き方にかかわる大切なことです。この絵本に描かれるおじいちゃんは、とても自然体で、さわやか。人生の時間を軽やかに楽しんでいます。歳を重ねるって素敵なことだなと、感じることでしょう。同じアパートメントに住む仕事に勤しむ現役のライトさんの生活を対比的に描いていて、忙しい勤務をリタイアした後の実り豊かな人生の日々をスマートに描いた絵本です。代官山蔦屋書店児童書売り場のコンシェルジュYさんに教えていただいた1冊です。

 
 
『ママのて』やまもとゆうこ/作 こぐま社 2017/4/15

ママのて
やまもと ゆうこ
こぐま社
2017-04-04

 小さな子どもにとって、ママの手ほど安心するものはないと思います。おにぎりを握ってくれる手、折り紙を折ってくれる手、お絵かきしてくれる手、お風呂で洗ってくれる手。この絵本ではママは手だけ描かれています。読んでもらった子どもたちは自分のママを思い描きながら聞くことができます。小さな子どもたちの読み聞かせにぴったりの絵本です。

 

【ノンフィクション絵本】

『ながいながい骨の旅』松田素子/文 川上和生/絵 桜木晃彦(宝塚大学教授)、群馬県立自然史博物館/監修 講談社 2017/2/23

ながいながい骨の旅
ながいながい骨の旅 [単行本]

松田 素子
講談社
2017-02-24

 『せいめいのれきし』のように、この地球上に生命が誕生してから現在までを時系列でわかりやすく説明する子ども向けの優れた本はこれまでもありましたが、この本は、特に「骨」に注目して作られた科学絵本です。いつ、「骨」が生物の中に生まれたのか、そしてそれはどのような役割を持っているのか、生物の進化に密接に影響を与えてきたのか、「骨」の進化の歴史を読み解くと、私たちの体が実に地球上の物質(ミネラル)を使って精巧に組み立てられていることがわかり、自然と生命のつながりを深く考える視点を与えてくれます。
 
 
 【児童書】
 
『ありづかのフェルダ』オンドジェイ・セコラ/作・絵 関沢明子/訳 福音館書店 2017/3/8 
ありづかのフェルダ (世界傑作童話シリーズ)
オンドジェイ・セコラ
福音館書店
2017-03-08

 チェコの子どもの本の黄金期(二つの大戦の間)に活躍したオンドジェイ・セコラ(1899~1967)の作品『ありのフェルダ』(2008)、『とらわれのフェルダ』(2011)の完結編がこの作品です。赤い水玉スカーフのはたらきあり「フェルダ」が登場するこのシリーズは、チェコでは知らない子はいないという長く読み継がれた作品です。この作品では、女王ありの産んだ卵から幼虫がかえり、さなぎから成虫になっていく様子を描いています。フェルダは、赤ちゃんありのためにミルクを出すアリマキを捕まえてきたり、お芝居をしたりと大活躍をします。そんな時に、大切なさなぎが盗まれる大事件が!この本も代官山蔦屋書店児童書コンシェルジュYさんにすすめていただきました。なお、2008年に国際子ども図書館では「チェコへの扉―子どもの本の世界」という展示会がありました。チェコの児童書のリストはこちらから見ることができます。→こちら

 
 
『河童のユウタの冒険 上』斎藤惇夫/作 金井田英津子/画 福音館書店 2017/4/15
『河童のユウタの冒険 下』斎藤惇夫/作 金井田英津子/画 福音館書店 2017/4/15
 
  

河童のユウタの冒険(下) (福音館創作童話シリーズ)
斎藤 惇夫
福音館書店
2017-04-12
 
『冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間たち』(岩波書店)の斎藤惇夫氏が満を持して発表する長編作品です。下巻あとがきには、この作品を書くことに至った経緯が書かれています。それは今年1月に出版された荒木田隆子氏による『子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝』の解説(『子どもの本のよあけ』p469)にも同様に書かれているのですが、瀬田貞二さんは、『指輪物語』の翻訳に取り組んでいたころに「我が国最後の天狗が、最後の魔法を使って戦いを挑む物語を書きたい」と斎藤氏に話していたというのです。信州の仕事場の前を通る炭焼きの老人が、人間に身をやつした天狗に見えきたのだそうです。しかし、瀬田氏はその思いを果たすことなく病に倒れます。天狗の話を書いていただかないと困ると言い寄る斎藤氏に、「これほど自然破壊がすすんでしまった国で、もう天狗の話は書けません」と答えた後に、そのアイディアを継いでほしいと瀬田氏が遺言されたと書かれています。(「あとがき」p400~401) 上下巻を手にしたとき、その分厚さに一瞬ひるみますが、読み始めるとぐいぐいと引き込む力があります。北国の「恵みの湖」で穏やかに暮らしていた河童のユウタのもとに、ある日尾が九に分かれているアカギツネが現れ、娘の旅の仲間にと声をかけるのでした。旅の目的もわからぬままキツネの娘アカネと、天狗のハヤテと龍川の水源を目指す旅へ出ます。彼らとともに、この旅の目的はなんだろうと探りながら読むのはとても楽しいものでした。金井田英津子氏の版画による挿し絵も、この本の魅力を高めています。文庫活動で中で紹介をしたら、小学5年生の女の子が早速、夢中になって読みふけっていました。この国にまだ残る豊かな自然と天狗や河童たちが息づく場所を、大切にしたいと思いました。
 

 
【ノンフィクション】
 
『世界がもし100人の村だったら お金篇 たった1人の大金持ちと50人の貧しい村人たち』池田香代子/C・ダグラス・スミス対訳
   マガジンハウス 2017/01/30
 
 2001年に『世界がもし100人の村だったら』が出版された時は、アメリカ同時多発テロの起きた後だったので、富の分配の不公平について考えさせられたものです。それから15年以上が過ぎて、世界情勢はあの頃以上に複雑になってきました。グローバリゼーションの反動も各地で起きています。この本は、その後、10億人増えた世界人口と、その過程で貧富の格差が広がったことを伝えてくれます。「100人の村では1人の大金持ちの富と99人の富がだいたい同じです」。貧しい者たちは、50人。世界の半分の人たちが食べるものにも事欠くという事実も突き付けられます。そして、それに対して、どうすればよいかを考えるヒントも与えてくれます。現代社会について学ぶYA世代が気軽に手に取れる1冊としておすすめします。
 
 
『知らなかった、ぼくらの戦争』アーサー・ビナード/編著 2017/4/2

知らなかった、ぼくらの戦争
アーサー ビナード
小学館
2017-03-28

第二次世界大戦終結から72年が経ち、当時実際に戦場に赴いた経験のある人、空襲など過酷な戦争体験をした人々の年齢がどんどん高齢化し、亡くなっていく方々が増えている今、その体験を書き記しておかなければ永遠に語られることのないままになってしまいそうです。この本は詩人のアーサー・ビナードさんが、そうした危惧を抱きつつ、1990年に来日して以降、勝戦国アメリカ人という立場から「日本の戦後」について考え、また多くの戦争体験者から直接聞いた話をまとめ、戦争とはいったい何なのかを私たちに問うています。現状を見ると、緊迫する朝鮮半島情勢などから、もはや「戦後」という雰囲気ではなく、戦前の状況に似てきたとする戦争体験者の声もあるほどです。私たちが今の状況を客観的に判断するためにも、第二次世界大戦を体験した人々の生の声に耳を傾けることはとても大事なことでしょう。

 

【研究書】
 

『子どもの本から平和を考える』児童図書館研究会/編 児童図書館研究会 2017/2/25

2015年11月に児童図書館研究会が主催して行われた児童文学者、山花郁子さんの「戦後七〇年、子どもの本から平和を考える」と題した講演会の講演録です。また機関誌『こどもの図書館』に連載された特集記事、ここ最近出版された平和を考えるための関連本リストも収録されています。子どもたちに平和について考えてもらう時の参考になると思います。この資料についての教文館ナルニア国の記事も併せて紹介します。→ナルニア国の紹介文

(作成K・J)

おすすめ幼年童話2『じゃんけんの好きな女の子』松岡享子


連載の2回目は、『じゃんけんの好きな女の子』(松岡享子/文 大社玲子/絵 学研教育出版 2013)です。

主人公の女の子は、もう寝なさいと言われても、お手伝いをしなさいと言われても「じゃんけんに勝ったらね」。相手がいないときは、右手と左手でひとりでじゃんけん。なんでもかんでもじゃんけんで決めてしまうほど、じゃんけんが大好き。

 


 

ある日女の子がひとり留守番をしていると、いっぴきのねこがやってきて「ここがきみのうちだってことは……ちゃんとじゃんけんできめたのか?」と聞き、「ぼくがきみとのじゃんけんにかったら、ここはぼくのうちで、おとうさんとおかあさんもぼくのおとうさんとおかあさんになる」と言いだしたものだから、さあ大変。女の子とねこのじゃんけん、どうなるのでしょうか?くすっと笑える、ねこの手のじゃんけんは、挿し絵の手のアップで楽しめるものになっています。

この作品は、40年前に発売以来、かしこい女の子とまぬけなオオカミのやりとりが楽しく読み継がれてきた『なぞなぞの好きな女の子』の姉妹版です。松岡享子さんの文に、大社玲子さんの絵のコンビも健在。今回の主人公は、ねことのじゃんけん勝負をきっかけに、「じゃんけんにかってもまけても、しなくちゃならないことは、しなくちゃならないの。」と、ぐーんと成長した姿を見せます。

著者のいっしょに暮らすねこが、作品の絵のモデルをつとめたり、見返しの絵までじゃんけんぽん!という、いろいろなお楽しみがつまった幼年童話です。

第1回『おはようスーちゃん』は→こちら


(作成児童部会事務局M・A)

今年のリンドグレーン児童文学賞が決まりました!


4月3日から6日までイタリア・ボローニャで開催されていたボローニャブックフェアにおいて、今年のリンドグレーン児童文学賞に『うんちしたのはだれよ!』の画家、ヴォルフ・エールブルッフ氏が選ばれたという知らせが入ってきました。

ヴォルフ・エールブルッフ氏は、それまでの功績が評価され2006年には国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。

リンドグレーン児童文学賞のページ→こちら(英文)

ロイター通信のサイト→こちら

『うんちしたのはだれよ!』ヴェルナー・ホルツヴァルト/文 ヴォルフ・エールブルッフ/絵 関口裕昭/訳 偕成社 1993

うんち したのは だれよ!
ヴェルナー ホルツヴァルト
偕成社
1993-11

 

 

ある日、もぐらの頭に空からだれかのうんちが落ちてきます。いったいだれの仕業かと、もぐらの犯人探しが始まります。はたして犯人はみるかるのか、なんとも、ユーモラスな絵本です。(偕成社の紹介サイト→こちら

ヴォルフ・エールブルックの邦訳されている作品は、このほかに『レオナルド』(うえのようこ/訳 BL出版 1996)や、『マイヤ―夫人のしんぱいのたねは?』(うえのようこ/訳 BL出版 1998)、『死神とアヒルさん』(三浦美紀子/訳 草土文化 2008)などをはじめとして、全部で9作あります。(絵本ナビサイト→著者詳細
 

『レオナルド』ヴォルフ・エールブルッフ/作 うえのようこ/訳 BL出版 1996

レオナルド
ヴォルフ・エァルブルッフ
ブックローン出版
1996-02

 

『マイヤ―夫人のしんぱいのたねは?』ヴォルフ・エールブルッフ/作 うえのようこ/訳 BL出版 1998

マイヤー夫人のしんぱいのたねは?
ヴォルフ エァルブルッフ
BL出版
1998-10
 
 
 
『死神さんとアヒルさん』ヴォルフ・エールブルッフ/作 三浦美紀子/訳 草土文化 2008
 
死神さんとアヒルさん
ヴォルフ エァルブルッフ
草土文化
2008-02
 
 
 
 
これを機会に、面出ししてはいかがでしょうか?
 
(作成K・J)

 

訃報 大岡信さん


詩人の大岡信さんが、本日4月5日に亡くなられたというニュースが入ってきました。86歳でした。(ニュース記事は→こちら

1979年1月25日から2007年3月31日まで朝日新聞紙上に掲載された、大岡信さんによる古今東西の詩歌の紹介は通算6762回に及びました。昨年は童話屋より、春夏秋冬に合わせた『折々のうた 春夏秋冬』が相次いで出版されました。詩を学ぶ子どもたちに相応しい装丁で、ブックトークなどにも使える作品となっていました。(私は教文館ナルニア国でサイン入り本を入手。今となっては貴重な宝物です。)

『折々のうた 春夏秋冬』大岡信/著 童話屋 2016

折々のうた 春夏秋冬・春
大岡信
童話屋
2016-06-23
 
 
 
 
折々のうた 春夏秋冬・夏
大岡信
童話屋
2016-06-23
 
 
 

折々のうた 春夏秋冬・秋
大岡信
童話屋
2016-09-30
 
 
 

折々のうた 春夏秋冬・冬
大岡信
童話屋
2016-09-30

 

 

また、大岡信さんは何冊かの海外の絵本の翻訳もされています。詩人らしく、とても素敵な訳文になっています。ぜひこちらの作品もこれを機会に手にしてみてください。

『みつけたぞ ぼくのにじ』ドン・フリーマン/作 大岡信/訳 岩波書店 1977

みつけたぞぼくのにじ (岩波の子どもの本)
ドン・フリーマン
岩波書店
1977-06-24
 
 
 
 

 

『まっくろけのまよなかネコよおはいり』J・ワーグナー/作 R・ブルッグス/絵 大岡信/訳 岩波書店 1978

 

 

 

『おふろばをそらいろにぬりたいな』ルース・クラウス/作 モーリス・センダック/絵 大岡信/訳 岩波書店 1979

 

 

 

『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』大岡信/編著 岩波少年文庫 岩波書店 2005


 

心より哀悼の誠を捧げます。

(作成K・J)

おすすめ幼年童話1『おはようスーちゃん』ジョーン・G・ロビンソン 


 

ヴィアックスには児童部会という部会活動があります。(詳しくはこちらを見てください。→児童部会のページほんのふくろう-9

児童部会では27年度、28年度の2年間「基本図書から学ぶ」をメインのテーマにして活動をしてきました。それは、毎年2000点を超える児童向け出版物の中から、子どもたちに自信をもって手渡していく本を選ぶ力を身につけていくための実践的な学びでした。

1年目の27年度は絵本の読み比べを通して、長く読み継がれてきた作品がどのように子どもたちに受け入れられてきたのか、文章と絵、またそれらが補完し合うことで生まれる相乗効果などについて学び、作品を評価する視点を養ってきました。28年度は絵本から読み物へ移行する時期の幼年期に出会ってほしい本とはどのようなものであるかについて、基本図書を読み込むことを通して学びました。加えて本の特徴や 本質を捉えてレビュースリップを作成し、それをもとに紹介文を書くことも課題として取り組みました。

そして1年間の学びのまとめとして、2002年以降に出版された幼年児童文学のうち、東京子ども図書館の「こどもとしょかん」で選定されている166作品の中から、絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに相応しく、これからも長く読み継がれていくであろう作品を部員たちが1冊ずつ選びました。

今年度は、部員たちが交代でおすすめの幼年童話を紹介していきます。どうぞお楽しみに!
(第1回目は、このサイトの管理人K・Jですが、第2回から交代での執筆になります。)

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連載の第1回目を飾るのは、『おはようスーちゃん』(ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 中川李枝子/訳 アリス館 2007)です。

おはようスーちゃん
ジョーン・G. ロビンソン
アリス館
2007-09

 

 

 スーちゃんはとても好奇心旺盛な小さな女の子です。ちいさなおうちにパパとママと一緒に住んでいます。

 ある時、ままごとでお人形のセモリナのお誕生日パーティーをしようと、スーちゃんは庭の植木鉢を逆さまにしてケーキにし、その上ママが大切にしている食器や銀のナイフを勝手に使ってママを驚かせます。スーちゃんに悪気がないことを理解したパパとママは、頭ごなしに叱ったりはせずにスーちゃんのために砂場を作り、ままごとの食器を用意してあげました。(「1スーちゃんの砂場」)

 パパやママだけでなく、スーちゃんを取り巻くほかの大人たちも、子どもらしい発想で行動をするスーちゃんを、優しい眼差しで温かく見守っています。そんな中でのびのびと生活をするスーちゃんの姿に、読み手の子どもたちにも安堵感を与えることでしょう。

 この本には、無邪気で可愛らしいスーちゃんの日常を描いたお話が9つ入っています。

 ジョーン・G・ロビンソンはイギリス児童文学作家で、『テディ・ロビンソン』シリーズ(福音館書店)や『思い出のマーニー』(岩波書店)などの作品があり、子どもたちに長く親しまれています。翻訳は『ぐりとぐら』の中川李枝子さんです。

 この本はイギリスで1953年に出版されました。60年以上前の作品です。けれども、3、4歳頃の子どもの特性は昔と今とでも、さほど変わっていないことがわかります。今、読んでも「あるある、こういうこと」と思える子どもの姿です。ただ、今は情報が多すぎて子育て中の親はスーちゃんのパパやママのようにおおらかに見守ることが難しくなっているかもしれません。だからこそ、スーちゃんと同年代の子にはぜひ読んであげてほしいと思います。一人で読める子どもたちには、温かなユーモアを感じながら、幼いスーちゃんの様子を楽しんで読むことができると思います。 

(作成児童部会事務局K・J)

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