Tag Archive for 子どもの本

おすすめ幼年童話15『ナスレディンのはなし』トルコの昔話
4月、5月の新刊から(2冊追加あり)
3月、4月の新刊から
7月のおすすめ本☆リスト2018(更新あり)
おすすめ幼年童話14『オンネリとアンネリのおうち』マリヤッタ・クレンニエミ
6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2018)(更新あり)
おすすめ幼年童話13『こぶたのピクルス』小風さち
2018年2月、3月の新刊から
おすすめ幼年童話12『ちびっこ大せんしゅ』シド・ホフ
2018年4月(その2)ひとりでできるもん(幼児~小学生)
2017年12月、2018年1月の新刊から
おすすめ幼年童話11『火曜日のごちそうはヒキガエル』ラッセル・E.エリクソン
2017年11月、12月の新刊から(追加あり)
おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター
1月のおはなし会☆おすすめ本リスト(更新あり)

おすすめ幼年童話15『ナスレディンのはなし』トルコの昔話


連載15回めは、『トルコの昔話 ナスレディンのはなし』(八百坂洋子/再話 佐々木マキ/絵 福音館書店 2012)です。

ナスレディンのはなし (ランドセルブックス)
福音館書店
2012-03-20

 

 

 

 

「ナスレディン」はおよそ800年前にトルコに生まれ、裁判官補佐や神学校の教師をした人の名前です。人を笑わせることが好きなナスレディンの話は、トルコや周辺の国々で長く語り継がれてきました。この本にはナスレディンのユーモアあふれる話が4つ収められています。

道で酔いつぶれた裁判官の上着をありがたくいただいて(というか持ち去って)着てしまうナスレディン。怒った裁判官の前でナスレディンが言ったこととは?(「ナスレディンと裁判官」)

威張った人をとんちで懲らしめつつ、ちゃっかり自分も得をしてしまう、一休さんなどの日本のとんち話とは一味違った面白さを味わえます。佐々木マキのユーモラスな絵も雰囲気にぴたりと合っています。

イスラム教の考え方、日本人との違いも味わえ、異文化理解の楽しさを味わってもらう入門編としてもおすすめです。

(作成:28年度児童部会部員M・H)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら
第13回『こぶたのピクルス』→こちら 
第14回『オンネリとアンネリ』→こちら

 

4月、5月の新刊から(2冊追加あり)


2018年4月、5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月、3月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

*****************************************

【絵本】

もりのこえほんシリーズ
『あそぼう!はなのこたち』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

あそぼう! はなのこたち (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

春先から初夏にかけて咲く花たちが主人公の絵本です。こまあそびにたけうま、わまわしにめかくしおにといろいろな遊びをしている様子がとても可愛らしい手のひらサイズの絵本です。

 

『ひなげしのおうじ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

ひなげしのおうじ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-03-24

ひなげしのおうじが麦の穂で出来た馬に乗って出かけます。途中で馬とはぐれてしまいますが、ひばりやマルハナバチたちに助けられます。素朴な味わいの絵本です。

 

『もりのたんじょうびパーティ』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

もりのたんじょうびパーティ (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

 もりのおうさま、きのこだいおうの誕生日のお祝いに、きのこたちはもちろん、森の小動物や昆虫たちが集まってきました。次々と繰り出される出し物も楽しませてくれます。

 

『サーカスくまさん』エリザベス・イワノフスキー/作 ふしみみさを/訳 岩波書店 2018/3/23

サーカスくまさん (もりのこえほん)
エリザベス・イワノフスキー
岩波書店
2018-04-19

サーカスのくまさんは、家に帰るとこぐまたちのおとうさんです。こぐまたちは、じぶんたちもやってみたくて、おおさわぎです。

もりのこえほん4冊は、1944年にベルギーのブリュッセルで出版されました。シリーズ名は「サン・スーシ(Sans Souci)」、フランス語で「心配なく、お気楽に」という意味だそうです。当時は第二次世界大戦中で物資が不足し、壁紙の試し刷り用紙を使って小さなサイズで出版したそうです。岩波書店から出た日本版も判型が小さく素朴な味わいです。作者はフランス、ベルギーの子どもの本の分野で活躍した旧ロシア帝国出身のエリザベス・イワノフスキー(1910~2006)で、グワッシュを使って花や動物たちを生き生きと描き出しています。

 『やまのかいしゃ』スズキコージ/作 かたやまけん/絵 福音館書店 2018/5/5

やまのかいしゃ (日本傑作絵本シリーズ)
スズキ コージ
福音館書店
2018-05-08

1991年に架空社から出版されていた『やまのかいしゃ』が、5月に福音館書店から復刊しました。もとは福音館書店月刊誌「母の友」1986年9月号に読みきりの童話として掲載されたものだと、架空社版の奥付にも記されていました。福音館書店のPR紙「あのね」2018年5月号は、この絵本について作者スズキコージさんのインタビュー記事が掲載されています。なぜ絵本にするときに福音館書店ではなく架空社だったのかということも書かれています。ぜひそちらもチェックしてみてください。朝、起きるのが苦手なほげたさんは今日も昼近くになってやっと駅へ。遅刻しているにも関わらず街へ向かう方向とは反対の電車に乗ってしまいます。山の奥の駅についたほげたさん、そのまま「きょうはやまのかいしゃへいこう」と山を登り始めます。山の上から「遅刻した~」と駆け下りていくほいくさんも誘って山の頂上へ。あまりの気持ちのよさに、街の会社からみんなを呼び寄せことを思いつきます。働き方改革が声高に言われている昨今、この絵本はいろいろな味わい方があるかなと思います。でも子どもたちはそんなことは関係なく、ほげたさんの突き抜けたとぼけ具合に魅了されることでしょう。

 

 『ようかいしりとり』おくはらゆめ/作 こぐま社 2018/5/10 

ようかいしりとり
おくはら ゆめ
こぐま社
2018-05-01

 NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で子どもたちに人気の歌「ようかいしりとり」が絵本になりました。妖怪といっても、おくはらさんの描くのは、ちょっととぼけていて、可愛らしくて、ちっとも怖くありません。夏の「こわいおはなし会」の導入に使えますね。その時は歌もチェックしておいて、子どもたちと一緒に歌えるといいですね。

 

 『はるなつあきふゆの詩(うた)』ジュリー・フォリアーノ/詩 ジュリー・モースタッド/絵 石津ちひろ/訳 偕成社 2018/6
はるなつあきふゆの詩
ジュリー・フォリアーノ
偕成社
2018-05-23
 
 四季折々の自然の変化を、日記のようにして詩に読んだ絵本です。春の詩だけでも13編あるので、図書館などの集団でのおはなし会では、1冊を通して読み聞かせをするには向かないのですが、ご家庭で親子で読んでほしいなと思います。また絵がとても美しく、パラパラとめくって、「ああ、こんな気持ち、わかるな~」と、のんびりと季節の変化に想いを馳せるのに相応しく、勉強に疲れたり、人間関係に悩むYA世代(10代の子たち)に手渡してもいいのではと思います。
 

 

【児童書】
絵本から児童書に移行する子どもたち向けの幼年童話を2冊紹介します。

 『ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ』マージョリー・ワインマン・シャーマット/文 バーバラ・クーニー/絵 福本友美子/訳 ほるぷ出版 2018/5/25
ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ (海外秀作絵本)
マージョリー・ワインマン・シャーマット
ほるぷ出版
2018-05-17
 
オポッサムのホイホイとフムフムが繰り広げるほのぼのとしたおはなしです。オポッサムはネズミにしていますが、カンガルーのような有袋類でアメリカ大陸に棲息している動物です。ホイホイはいつも家の中ばかりにいて、散歩に出かけたことのないフムフムをやっとのことで誘い出しますが、遠くまで歩いていくと、今度はホイホイが動けなくなってしまいます。ふたりのやりとりは、どこかとぼけていてアーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』を彷彿とさせます。

 『ふたごのカウボーイ』フローレンス・スロボドキン/文 ルイス・スロボドキン/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2018/6/1

ふたごのカウボーイ
フローレンス・スロボドキン
瑞雲舎
2018-06-01
 
 絵本『てぶくろがいっぱい』に出てくるふたごの兄弟、ネッドとドニーの楽しいおはなしです。ふたりはカウボーイになって遊ぶときは「オクラホマから来たスティーブとジム」になり切ります。町で出会う人に「おや、ネッドとドニーだね」と聞かれると、「ぼくたちはオクラホマから来たスティーブとジム」だと答えます。ふたりは町へ冒険に出かけますが、迷子になってしまいます。雨宿りしていたお宅からお母さんのところへ「もしかしてお宅のお子さん?」と尋ねられても、名前が違います。さてふたりはちゃんと家に戻れるかしら。幼児期に何か他の者になり切って遊ぶことはとても楽しいですよね。そんな時期の子どもたちもきっと共感しながら読めると思います。
 
 『アンデルセンのおはなし』ハンス・クリスチャン・アンデルセン/原作 スティーブン・コリン/英語訳 エドワード・アーディゾーニ/選・絵 江國香織/訳 のら書店 2018/5/25
アンデルセンのおはなし
ハンス・クリスチャン アンデルセン
のら書店
2018-05-18
 
 『チムとゆうかんなせんちょうさん』『時計つくりのジョニー』などでおなじみのイギリスの絵本作家エドワード・アーディゾーニがアンデルセン物語から14編選んで絵を描いた作品です。江國香織さんがあとがきに、「物語というものをほんとうに深く理解していた人で、物語によりそうのではなく、物語の一部になる挿絵をたくさん描きました。」と書いているのですが、画家であるアーディゾーニが描きたいと思ったおはなしを選んだのだと思います。「しっかりしたスズの兵隊」、「皇帝の新しい服」、「小さな人魚」などおはなしのタイトルもちょっとだけ違っています。読み比べてみてくださいね。
 
 
【研究書】
『絵を読み解く 絵本入門』藤本朝巳・生田美秋/編著 ミネルヴァ書房 2018/5/15
絵を読み解く 絵本入門
ミネルヴァ書房
2018-05-15
 
絵本学会に所属する研究者や、保育者、図書館員など子どもたちに本を手渡している人、また編集者や絵本作家、翻訳家たちが、絵本の「絵を読み解く」という共通のテーマで論じた研究書です。「絵本は、ことばと絵からなり、その相互の関係によって成立し、ページをめくることによって物語が展開していく視覚表現メディアであり、コミュニケーションアートである。そのため、絵本を読み解き、説明するためには、ことばについての理解、絵とことばの相互関係についての理解、絵本と子ども読者の関係についての理解が必要になる。」(あとがき)という視点から、第1部では物語絵本、昔話絵本、ファンタジー絵本、ポストモダン絵本、赤ちゃん絵本について絵の観点から論じ、第2部では古典作品(海外11、日本10)、現代作品(海外8、日本10)の39冊について1冊1冊分析しています。網羅的にわかりやすい解説書となっているので、絵本の選書をする人などは目を通しておくとよいでしょう。
 
『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』ダナ・サスキンド/著 掛札逸美/訳 高山静子/解説 明石書店 2018/5/15 
 
この本の著者はシカゴ大学以下大学院小児外科教授で小児人工内耳移植プログラムのディレクターです。彼女は、小児人工内耳手術の事例から、子どもたちが言語能力の発達にはたんに耳が聞こえるだけではなく、どんな言語環境の中で幼少期を過ごすかがいかに重要かに気がつきます。「人工内耳で聞く力を得たにしても、保護者の言葉の力に変わりはありません。豊かな言語環境がなければ、音が聞こえても何の意味もありませんし、子どもは本来の力を発揮できないでしょう。」と第1章でこの研究へ向かった意図を説いています。この本は親と保育者向けに書かれたものですが、「耳から聴く読書」が子どものことばと心をいかに育てていくかという観点でも読めるので、大変参考になりました。図書館児童サービスとは直接関係ないように思うでしょうが、アウトリーチサービスを考える際にもヒントを与えてくれそうです。
 

【その他】
 『小学生のうちに読みたい物語~学校司書が選んだブックガイド~』対馬初音/編著 少年写真新聞社 2018/5/29
小学生のうちに読みたい物語  ~学校司書が選んだブックガイド~
対馬 初音
少年写真新聞社
2018-05-26
 
杉並区の小中学校で学校司書をしている方々が、子どもたちに本を手渡す中で選んだ物語のブックガイドです。「絵本からの移行期に」、「少し読み物に慣れてきたら」、「主人公にそって物語を楽しみましょう」、「読書の達成感を経験しましょう」、「読書の広がりや深まりを楽しみましょう」、「より深い内容を味わいましょう」、「昔話に楽しみましょう」という7つの単元で、子どもたちの読書力の発達に応じた本を選んでいます。夏休みの読書案内の参考にもなることと思います。ノンフィクションと伝記は含まれておらず、物語(フィクション)だけですが、日々学校で子どもたちと接している司書の方々ならではのコラム記事も充実しています。
 
『遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考』かこさとし/絵・文 復刊ドットコム 2018/2/26

遊びの四季
かこさとし
復刊ドットコム
2018-02-24

 今年5月2日に亡くなられたかこさとしさんが1975年に出版された本を、92歳の誕生を祝って復刊された本です。ご本人が2018年2月の日付で復刊によせて「あとがき」も書いていらっしゃいます。
かこさとしさんが子ども時代に遊んだ遊びを、丁寧に思い出して生き生きと描き出したエッセイです。春夏秋冬、子どもたちが自然の中で自分たちで遊びを生み出していたんだなあと、読み物としてもとても面白かったです。

(作成K・J)

3月、4月の新刊から


 2018年3月、4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナー、茗荷谷てんしん書房など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

************************************

【絵本】 

『ほうまん池のカッパ』椋鳩十/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2018/2/1

ほうまん池のカッパ
椋 鳩十
ビーエル出版
2018-01-26
 
種子島に伝わる昔話です。島一番の力持ちで、釣も腕も島一番といつも自慢するとらまつですが、ある日地面の下から伸びてきた手につかまり獲った魚を奪われてしまいます。カッパの仕業で、ほうまん池には十匹ものカッパが棲んでいるのでした。とらまつはカッパを捕まえようと待ち受けますが、カッパのほうがどうやら一枚上手のようです。さてさてこの勝負、いったいどうなることでしょう。再話は椋鳩十、絵は赤羽末吉で、1975年に銀河社から出版されて長く絶版になっていたものが、BL出版から復刊されました。

 

『大根はエライ』久住昌之/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2018/2/25

大根はエライ (たくさんのふしぎ傑作集)
久住 昌之
福音館書店
2018-01-10

月刊「たくさんのふしぎ」2003年9月号が、今年ハードカバーになりました。『孤独のグルメ』などの作品がある漫画家久住昌之氏の初の絵本作品です。大根おろしや刺身のつまとして他の食品の味を引き立てたり、おでんや煮物で一緒に煮るものによって美味しさがかわったりと、脇役でいながら無くてはならない存在の大根を、それこそ味わい尽くす1冊です。ユーモアたっぷりでいながら大根に関する知識が増す、まさに大根のような味わい深い1冊です。(銀座・教文館ナルニア国でバージニア・リー・バートン展に合せた久住氏のトークイベントに参加してきました。『せいめいのれきし』に大きな影響を受けてきたとのことでした。)

 

『おひさまでたよ』北村人/作 絵本館 2018/3

おひさまでたよ
北村 人
絵本館
2018-03-15

暖かい色のクレヨンの線で描いた小さい子向けの可愛らしい判型の絵本。「ぽかぽか ぽかぽか いいきもち」、「ぽかっぽかっ ふあーあ いいきもち」、ページをめくると動物たちがおひさまの温かい陽射しの中でのーんびりしています。のーんびりすること、これが出来そうでいて、なかなか出来ないからこそ、そんな時間を大事にしたいなと思います。

 

『黄金りゅうと天女』代田昇/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2018/3/20

黄金りゅうと天女
代田 昇
ビーエル出版
2018-03-15

沖縄慶良間諸島に伝わる昔話です。1974年に銀河社から出版されていましたが、この度BL出版から復刊されました。昔、沖縄の武士と百姓の娘が身分違いの恋に落ち、天女のお告げの通りに慶留間島に渡ります。そこで生まれた可愛(かな)という娘は、賢く育ちます。しかし七才になった朝、可愛は「天にいかねばならない」と言ってオタキ山へ登っていき、阿嘉島オタフキ山にいた黄金の竜の背に乗って天に昇って行ってしまったのです。人々が可愛のことを話題にしなくなった頃、島へ大和民族の海賊が襲ってきました。村々は略奪されますが、そこに黄金の竜が現れるのです。沖縄の昔話も大切に語り継いでいきたいですね。

 

『さとやまさん』工藤直子/文 今森光彦/写真 アリス館 2018/4/5

さとやまさん
工藤 直子
アリス館
2018-03-23

写真家今森光彦さんは滋賀県大津市の里山で暮し、四季折々の自然の変化を観察し、そこに集う蝶を始めとする虫たちとの生活を大切にしてこられました。そうした里山の動植物や生活はこれまでも写真絵本やNHKの番組「オーレリアンの庭-今森光彦 四季を楽しむ里山暮らし」で紹介されてきました。この度は里山で撮影された夥しい数の写真の中から、厳選された春夏秋冬の表情が切り取られ、それに工藤直子さんが詩をつけました。またその詩に新沢としひこさんが曲をつけて、出版記念トークイベントで披露されました。人々の暮らしを豊かに彩る里山が、過疎化によって各地で放置されているというニュースも聞きます。里山の存在価値が見直されてほしいと願います。

 

『ぐるぐるちゃん かくれんぼ』長江青/文・絵 菊地敦己/ブックデザイン 福音館書店 2018/4/5

ぐるぐるちゃん かくれんぼ (福音館あかちゃんの絵本)
長江 青
福音館書店
2018-04-04
 
福音館書店のあかちゃんの絵本で、こりすのぐるぐるちゃんが活躍する『ぐるぐるちゃん』、『ぐるぐるちゃんとふわふわちゃん』に続く3冊目です。ぐるぐるちゃんはある日おとうさんといっしょにさんぽに出かけ、かくれんぼをします。ぐるぐるちゃんがあまりに上手にかくれたので、おとうさんはみつけられません。さてさて、どうなるかしら。小さな子どもの心に寄り添う可愛らしい絵本です。
 
 
『パンダのあかちゃん おっとっと』まつもとさとみ/作 うしろよしあき/文 わたなべさとこ/絵 KADOKAWA 2018/4/26
 
パンダのあかちゃん おっとっと
まつもと さとみ
KADOKAWA
2018-04-26
 
あかちゃんと絵本について研究をされたいる後路好章さんが文章を書き、2015年にボローニャ国際絵本原画展で入選した渡邊智子さんが絵を描いたパンダのあかちゃんが愛らしい絵本です。パンダの絵本は、シャンシャン効果もあって、たくさん出ていますが、小さな子どもたちが喜ぶ耳心地のよさがあり、この作品を手に取ってみました。
 
 

『村じゅうみんなで』ヒラリー・ロダム・クリントン/文 マーラ・フレイジー/絵 落合恵子/訳 徳間書店 2018/4/30 

村じゅう みんなで (児童書)
ヒラリー・ロダム・クリントン
徳間書店
2018-04-25
 
3年前のアメリカ大統領選でトランプ大統領と競ったヒラリーさんが文章を書いた絵本です。「子どもを育てるには村中みんなの力が必要だ」というアフリカのことわざを、ヒラリーさんは信念としてきました。この絵本では、子どもが望む「こんな公園があったらいいな」を、おとなもこどもも、自分の出来ることを分担し合って、一緒に作り上げていきます。おとなは子どもの持っている良さを信じ、また家族という狭い枠だけでなく社会とのかかわりの中で育てていくことの大切さを、ヒラリーさん自身が子育ての中で、また政治活動の中で感じてきたといいます。マーラ・フレイジーの描く絵も、あちこちから子どもやおとなたちの声が聞こえそうなほど生き生きとしています。

 

『花ばあば』クォン・ユンドク/絵・文 桑畑優香/訳 ころから 2018/4/29

花ばぁば
クォン・ユンドク
ころから株式会社
2018-05-02
 
当初、童心社から10冊出ている日中韓平和絵本として出版される予定だった絵本です。日中韓平和絵本は戦争を体験した絵本作家浜田桂子さん、和歌山静子さん、田島征三さんたちが韓国、中国の絵本作家との交流を通して、次の世代へ平和な時代を手渡したいと、歴史と向き合い、日中韓双方の国で出版することを前提に、参加した絵本作家が作成しました。ところがクォン・ユンドクさんの描く日本軍慰安婦をテーマにした絵本だけは、このシリーズから出すことが出来ませんでした。韓国では出版されて版を重ねているこの美しい絵本を、なんとかして日本でも出版したいと、田島征三さんがクラウドファンディングで呼びかけ、多くの人の支援を受けて、この度新興の小さな出版社から出版されました。
 昨年は#MeToo運動が世界的に広がりをみせ、また世界各地でイスラム過激派による女子学生襲撃事件も繰り返されており、若い女性には関心のあるテーマです。日本人としてデリケートな問題を含んでいますが、この問題を正面から直視することは大切です。近年、ナチスドイツによるホロコーストをテーマに扱った児童書がたくさん出ています。それはドイツが第二次世界大戦後に自分たちの犯した過ちをきちんと受け止め総括しているからともいえます。一方で日本ではこの問題を無かったかのように扱う勢力があって、過去の清算が中途半端に終わっています。ユンドクさんの来日に合わせた講演会に参加してきました。日本を責めるものではなく客観的な事実に基づいて文章が練られ、戦争というものの愚かさを伝えています。絵は柔らかくとても美しい絵本です。YA世代にぜひ手渡していきたい1冊と考えています。
 
 
 
【児童書】

『石井桃子 子どもたちに本を読む喜びを(伝記を読もう)』竹内美紀/文 立花まこと/絵 あかね書房 2018/4/5
石井桃子: 子どもたちに本を読む喜びを (伝記を読もう)
竹内 美紀
あかね書房
2018-04-25
 
子どもの本の翻訳家として、作家として、戦後日本の児童書黄金時代を支えてこられた石井桃子さんについて描かれた伝記が出ました。作者は博士論文を『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか:「声を訳す」文体の秘密』(ミネルヴァ書房 2014)としてまとめ出版された竹内美紀さんです。前作は研究者の立場から書いた専門書ですが、この作品は子どもにわかりやすく石井桃子さんの生い立ちや遺した功績を伝えてくれています。あかね書房の「伝記を読もう」のシリーズは第1期で10冊第2期はこの本を含めて5冊出ています。

 
『四人のヤッコ』西内ミナミ/作 はたこうしろう/絵 すずき出版 2018/4/20

四人のヤッコ (おはなしのくに)
西内 ミナミ
鈴木出版
2018-04-16
 
 ヤッコは一人っ子です。ピアノの練習や学校の宿題で忙しい日々に、自分にそっくりな子がいればいいのになあと思います。ところがその願いがある日叶ってしまいます。ピアノを上手に弾くヤッコ、勉強をどんどん進めてくれるヤッコ、友達と楽しく遊ぶヤッコとほんとうのヤッコの四人になってしまったのです。最初は喜んだのもつかの間、ヤッコはなんだか浮かない顔です。『ぐるんぱのようちえん』などの作品がある西内ミナミさんは1979年に『四人のヤッコと半分のアッコ』(絵童話 山口みねやす/絵)を日本教文社から出しています。この度、はたこうしろうさんの絵でまったく新しい版として出ました。子どもたちにとっても身近なテーマで、楽しんで読めることでしょう。
 
 
 
【その他】
 
『子どもの人権をまもるために』木村草太/編 晶文社 2018/2/10
子どもの人権をまもるために (犀の教室)
木村草太
晶文社
2018-02-08
 
私たちが本を手渡そうとしている子どもたちの権利はどのように扱われているのか、第1部家庭、第2部学校、第3部法律・制度とわけて、今子どもたちが置かれている状況を伝えてくれている1冊ですこの本を読むと、現代の子どもたちを取り巻く状況は虐待や貧困、保育の不足など、報道等で知る以上に厳しい現実があることも見えてくる。こうした事実に目を向けることは、図書館の児童サービスをどのように地域の子どもたちに届けられるかを検討する上でも大切だと思います。ぜひ通読しておくことをお薦めします。

 
『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』金原瑞人、ひこ・田中/監修 西村書店 2018/4/18

13歳からの絵本ガイド YAのための100冊
金原 瑞人
西村書店
2018-04-18
 
絵本は文章と絵が互いに引き立て合って、独自の世界を表現したものです。芸術性の高い作品や、人生の深い機微に鋭く切り込んだ優れた作品も多く出ています。ところが絵本は幼い子どものためのものという先入観が強いせいか、小学生高学年や中高生にこそ読んでほしいという作品がなかなかその世代に手に取られてないということがありました。この絵本ガイドは、十代の子どもたちに手にしてほしい絵本の情報をぎゅっとひとまとめにしています。ここにある絵本は、YAコーナーで展示してみるとよいと思います。
 
(作成K・J)

7月のおすすめ本☆リスト2018(更新あり)


7月のおはなし会やブックトーク、特集展示などで使える本のリストを更新しました。2017年、2018年に出版された本も追加しました。

プリントアウトしてファイリングしたり、利用者からの問い合わせにもご活用ください。

7月のおはなし会おすすめほんリスト2018

5月15日に3冊追加して更新しました。

illust1968_thumb

おすすめ幼年童話14『オンネリとアンネリのおうち』マリヤッタ・クレンニエミ


連載14回めは『オンネリとアンネリのおうち』(マリヤッタ・クレンニエミ/作 マイヤ・カルヤ/絵 渡部翠/訳 福音館書店 2015)です。フィンランドの児童文学の定番で、1975年に大日本図書から出版され、自立をテーマにしたこの作品は多くの子どもたちの心を捉えました。その後プチグラパブリッシングから復刊されましたが品切れとなっていました。2015年に福音館書店から出版され、再び子どもたちの手に届くようになったのは嬉しいことです。

今年6月9日より、映画となって劇場公開されます。作品が映画の中でどのように描かれているか楽しみです。(映画「オンネリとアンネリのおうち」公式サイト→こちら)映画公開に合わせて、図書館でも続編『オンネリとアンネリのふゆ』と共に面だし展示してみてください。

 

オンネリとアンネリのおうち (世界傑作童話シリーズ)
マリヤッタ・クレンニエミ
福音館書店
2015-10-25
 
 
 
 

小学生の女の子、オンネリとアンネリは大親友。オンネリは九人兄弟の真ん中で、家ではいつもなんとなくひとりぼっち。両親とたくさんのきょうだいたちと一緒にひとつのお部屋で暮らしています。アンネリには大学教授のお父さんと趣味に忙しいお母さんがいますが、その両親は別居中。お手伝いさんが二人いて生活には不自由しませんが、お父さんの家でもお母さんの家でも何だか居場所がありません。ちょっと複雑な家庭環境の女の子たちです。

 夏休みのある日、二人はひょんなことから「ふたりの小さな女の子が住むのにちょうどいいおうち」を手に入れます。真っ白いレースカーテンのかかった客間、かわいい二羽の小鳥がさえずる鳥かご、きれいな色のお皿も冷蔵庫も食料も全部そろったドールハウスのような台所、そして今まで見たこともないような素敵な遊び部屋! 女の子の憧れ満載のお城のようなおうちで、二人は大人たちに邪魔されずに暮らすことにします。

子どもの頃、「自分だけの素敵なお部屋があったらいいなぁ」と空想したことは誰でもあるのではないでしょうか。このお話にはそんな夢がそこかしこに溢れています。二人が家の中を探検して素敵なお部屋を発見していく描写には、子どもも大人も垣根を越えて胸がわくわくすることでしょう。

また、この夢のようなおうちで、オンネリとアンネリがきちんと地に足の着いた生活を営んでいく様子も魅力的です。自分たちで食事の支度をし、片づけもして、ご近所さんにご挨拶をしてお客様としてきちんともてなします。個性豊かなご近所さんとのやり取りが描かれながら、お話はハッピーエンドへ向かっていきます。

オンネリとアンネリは二人だけの家で楽しく過ごしながらも、両親に構ってもらえずに少しさみしい思いも抱えていました。そこで二人はオンネリの誕生日パーティを企画し、家族も含めたたくさんの人たちを招待します。パーティにやってきた両親とお互いの気持ちを伝えあい、家族の愛情を確認し、そして改めて二人の家で暮らしたいと宣言します。「わたし、わたしたち、この夏はしあわせだったと思うわ」(p.172)という台詞のとおり、オンネリとアンネリも、二人の家族も、ご近所さんたちも、もちろん読者も、幸せな気持ちが広がっていくフィンランド生まれの楽しい夏の物語です。

 

(作成:29年度児童部会部員A.K)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら
第13回『こぶたのピクルス』→こちら

 

6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2018)(更新あり)


6月のおはなし会☆おすすめ本リストを更新しました。

2017年に出た絵本や、新しく設けた「雷」をテーマとした絵本などを追加しました。

おはなし会の立案や、ブックトークの選書、テーマ展示などでご活用ください。

 

6月のおはなし会おすすめ本リスト2018

2018年4月16日に見落としていた絵本を4冊追加しました。
2018年4月19日にもう1冊追加しました。
illust522_thumb

 

 

おすすめ幼年童話13『こぶたのピクルス』小風さち


児童部会部員がおすすめする幼年童話の紹介も、2年目に突入です。連載13回目は、『こぶたのピクルス』(小風さち/文 夏目ちさ/絵 福音館書店 2015)です。


 

こぶたのピクルスは小学一年生の男の子。

「教科書、よし!

 ノート、よし! 

エンピツ、よし! 

ハンカチ、よし! 

わすれ物は、ひとつもなし!」

と、スキップしながら元気よく出かけたのに、途中で出会った牛乳屋さん、パン屋さん、新聞屋さんのそれぞれの配達の忘れ物を届けているうちに、自分の大事な用事を忘れてしまいます。

そんなピクルスの様子はほほえましく、両親に温かく見守られながら、ドキドキワクワクの毎日を送るピクルスに、読んでいる子どものだれもが自分を重ね合わせてしまうでしょう。

冒頭の「ピクルスのわすれ物」のほか、「ピクルスと卵」、「ピクルスの大ニュース」、「ピクルスの海水パンツ」の4話が収められています。

 作者は『わにわにのおふろ』などのわにわにシリーズや、『とべ!ちいさいプロペラき』を手がける小風さちさん。リズムよくうきうきする文章で、声に出して読むのも耳から聞くのもどちらも楽しく、読みきかせにも向いています。また、全ページに明るい色彩の大きな挿絵が入り、子どもたちがひとりで読み進める助けとなってくれます。絵本から物語へ移行する時期の子どもたちにぜひ手渡したい幼年童話です。

 続編の『ピクルスとふたごのいもうと』では、お兄ちゃんになったピクルスが成長した姿を見せてくれ、こちらもおすすめです。

 

(作成 29年度児童部会部員C・K)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら

2018年2月、3月の新刊から


2018年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

*****************************************

【絵本】

『はるは』ジャニーナ・ドマンスカ/作 谷川俊太郎/訳 童話館出版 2018/2/20

はるは
ジャニーナ ドマンスカ
童話館出版
2018-03-01

「はるは はるさめ  はるは はなざかり はるは うたう」と、春の情景から始まり、夏、秋、冬とめぐって「ふゆは はるをまつ」で締めくくられる詩の絵本です。美しい線描の絵に登場するのは茶色のダックスフント。季節ごとにかたつむりやクジラ、虫たち、鳥たち、うさぎと一緒に躍動する姿は、いろいろなことを想像させて楽しくなります。裏表の見返しには一面のクローバーが描かれています。2枚ほど四つ葉のクローバーがあります。子どもと一緒に探してみてください。

 

『とらのことらこ』きくちちき/作 小学館 2018/2/26 

とらのこ とらこ
きくち ちき
小学館
2018-02-26

 2013年に『しろねこくろねこ』(学研)でブラティスラヴァ国際絵本原画展金のりんご賞を取ったきくちちきさんの新作です。ご自身のお子さんの成長に合わせて絵本もどんどん進化しています。今度の絵本もお子さんとの関係の中から生まれた絵本とのこと。とらの子ども、とらこは母さんとらの真似をして一生懸命獲物を追いますが失敗ばかり。そんなとらこの姿を愛情いっぱいに母さんとらは温かく見守ってくれます。「とらこのことらこ つかまえて  母さんのしっぽにつかまった」と繰り返しのことばも心地よくストーリーが進みます。先日原画展に行ってきました。温かい色合いの原画の色を生かすため印刷では苦労をされたとのこと。表紙の黄色も、とらこの鼻の色も、装丁家と印刷技術者の丁寧な仕事のおかげです。(原画展は2018年4月1日まで。高円寺書肆サイコロにて→こちら) 

 

『さよならともだち』内田麟太郎/作 降矢なな/絵 偕成社 2018/2

さよなら ともだち (「おれたち、ともだち! 」絵本)
内田 麟太郎
偕成社
2018-02-28
 
 『ともだちや』(1998年刊)から始まった「おれたち、ともだち!」シリーズの13冊目の最新刊です。タイトルからキツネとオオカミの別れがテーマかと想像しましたが、キツネが「ともだちや」を始める前のお話でした。1館目の『ともだちや』をもう一度引っ張り出して読みたくなるような懐かしい場面もたくさんありました。「さよなら」は、次の新しい出会いへの一歩です。新しい年度が始まる時に、おすすめできる1冊です。
 
 
『かぶきやパン』かねまつすみれ/文 長野ヒデ子/絵 童心社 2018/2/20
 
かぶきやパン (絵本・こどものひろば)
かねまつ すみれ
童心社
2018-02-20
 
2月20日の「歌舞伎の日」に出版されたこの絵本は、2014年に童心社が実施した第7回絵本テキスト大賞を受賞した『まちのパンや「かぶきや」さん』という作品が元になっています。作者のかねまつさんはパン作りと芝居見物が大好きで、自然のこのお話が生まれたのだそうです。そのテキストをもとに長野ヒデ子さんがユーモアたっぷりの絵をつけられました。実際にお二人で歌舞伎の演目とパンの特徴を照らし合わせてストーリーを練り、市川海老蔵さん他、歌舞伎役者の皆さんにもこの絵本を見ていただいたとのこと。2月24日に都立多摩図書館で行われた童心社創業60周年記念講演会の中で長野ヒデ子さんは、歌舞伎の口上は言葉の響きもとても豊かで、歌舞伎を見たことのない子どもたちにも、絵本を通して日本の伝統文化「歌舞伎」の魅力を伝えたいとおっしゃっていました。声に出して子どもたちに読んであげたい絵本です。(童心社・長野ヒデ子さん×かねまつすみれさんスペシャルインタビューの記事→こちら

 

 『もしぼくが本だったら』ジョゼ・ジョルジェ・レトリア/文 アンドレ・レトリア/絵 宇野和美/訳 アノニマ・スタジオ 2018/3/2 

もしぼくが本だったら
ジョゼ・ジョルジェ・レトリア
アノニマ・スタジオ
2018-03-01

表紙にはベンチに残された本が1冊。「もしぼくが本だったら つれて帰ってくれるよう 出会った人にたのむだろう。」というように「もしぼくが本だったら」に続いてさまざまな本にまつわる文章が続いていきます。。最後のページは「もしぼくが本だったら 「この本がわたしの人生を変えた」とだれかが言うのをきいてみたい。」と、本が持っている力、可能性を示してくれます。作者はポルトガル語の詩人で、その文章に息子さんが絵をつけた親子作品です。デザイン的にも美しく、これまでに数々のデザイン賞を受賞し、13か国語に翻訳されています。日本語にはスペイン語圏の絵本や児童書の翻訳者・宇野和美さんが訳されました。YA世代や大人たちに手に取ってほしい1冊です。

 

『だんごむしのおうち』澤口たまみ/文 たしろちさと/絵 福音館書店 2018/3/10

だんごむしの おうち (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)
澤口 たまみ
福音館書店
2018-03-07
 
春の庭で小さな子どもが掌にだんごむしをのせて「ねえねえ、みてみて!」と見せてくれます。触ると丸くなるだんごむしは小さな子どもにとっては楽しい存在です。この絵本を読んで、もう25年以上前のこと、「お母さん、お土産!」といって筆箱にいっぱいのだんごむしを入れて持って帰ってきた我が子の得意気な顔を思い出しました。庭先で出会う小さなだんごむしは、子どもが身近な自然に興味を持つ入り口になります。よく似た虫で丸まらないわらじむしの説明も出てきます。小さな生命にも目をむける子どもたちの素直さを大切にしたいと思います。「ちいさなかがくのとも」2012年4月号のハードカバーです。3歳くらいから手渡せます。
 
 
 
『王さまになった羊飼い』チベットの昔話 松瀬七織/再話 イ・ヨンギョン/絵 福音館書店 2018/3/15
 
 貧しい羊飼いの男の子が働いて得るものは、毎日たった一握りのツァンパ(ハダカムギを粉にしたもの)でした。ある時、草原でお腹を空かせたうさぎに出会います。男の子はうさぎにツァンパを分けてやるようになります。そうして100日経った時、うさぎは老人に姿を変えました。なんとうさぎは天の神だったのです。老人はお礼を授けようと申し出ますが、男の子は「動物のことばがわかる力がほしい」と願います。男の子はその力で通りかかった王さまの家来の馬を助け、それが縁で王さまの元へ参内し、誰も治療できなかった王子の耳を治します。そして王さまから王国の半分を譲られたのです。小さな生命に注ぐ愛情と誠実さが、貧しい男の子を王へと導いたというチベットの昔話です。 
 
 
 
【児童書】
『おひとよしのりゅう』ケネス₌グレーアム/作 石井桃子/訳 学研プラス 2018/1/15
 『たのしい川べ』(本のこまどの記事は→こちら「基本図書を読む2『たのしい川べ』)を書いたケネス₌グレーアムの幻の名作と言われた『おひとよしのりゅう』(1966年に『新しい世界の童話シリーズ8 おひとよしのりゅう』として学研より出版 その後絶版)が、限定復刻されました。羊飼いの息子と争いごとが嫌いな優しい竜、そして竜退治の騎士セント・ジョージが織りなすなんともユーモラスなお話です。今回の復刻版は東京子ども図書館と教文館ナルニア国だけの限定発売です。のんびりとした話の進み具合は、今の子どもたちに、というよりこのお話にわくわくした昔の子どもだった人たちに喜ばれるのかもしれません。戦隊ものなどで怪獣は退治するものと思っている子どもたちに、戦うことがすべてではないというメッセージを届けられると思います。(教文館ナルニア国の紹介ページ→こちら
 
 
 『青い月の石』トンケ・ドラフト/作 岩波書店 2018/2/16
青い月の石 (岩波少年文庫)
トンケ・ドラフト
岩波書店
2018-02-17
 
作者のトンケ・ドラフトさんは2004年に、1962年に発表した『王への手紙』(岩波少年文庫 2005年)で過去50年にオランダで出版された子どもの本の中から第一位の賞「石筆賞の中の石筆賞」を受賞されました。当時すでに74歳でした。『王への手紙』、そして続編の『白い盾の少年騎士』(岩波少年文庫 2006年)は、困難な状況の中で任務を果たそうとする少年騎士のひたむきな思いと、彼を支える友情を描いて非常に読み応えのある作品でした。大きな賞を受賞した翌2005年に新たに発表した作品が『青い月の石』です。「どこから来たの?マホッフ、マホッフ、マホッヘルチェ」「地面の下からやってきた、マホッヘルチェ!」というオランダに伝わる日本の「はないちもんめ」に似た遊びをモチーフに、地上の世界と地下世界、そして主人公ヨーストのいる世界と中世を思わせる長ひげ王の国が交錯して展開する不思議な物語です。地下の国に君臨するマホッヘルチェを追って、いじめられっ子ヨーストが、いじめっ子ヤンと一緒に冒険に出ていき、同じようにマホッヘルチェを追う長ひげ王の息子イアン王子は地下世界のヒヤシンタ姫に恋をします。編んだセーターが魔力を持つヨーストのおばあちゃん、地下世界に通じる池の近くに住む魔法使いのオルムなどの魅力溢れる登場人物に導かれ一気に読めてしまうファンタジーです。 

 
『イースターのたまごの木』キャサリン・ミルハウス/作・絵 福本友美子/訳 徳間書店 2018/2/28

イースターのたまごの木 (児童書)
キャサリン ミルハウス
徳間書店
2018-02-20
 
1951年にアメリカで出版され、その年の最も優れた絵本に贈られるコールデコット賞を受賞した作品が、翻訳されました。「イースター(復活祭)」は、イエス・キリストが十字架刑を受けた3日後に蘇ったとする聖書にしたがい、キリスト教社会ではクリスマスと並ぶ大切なお祭りです。卵の殻を割って出てくる鳥は、墓から出てきたキリストの象徴とされ、イースターには卵を美しく彩色して飾ったり、庭に隠した卵を子どもたちが探すエッグハントをイースターの朝に行う習慣があります。このお話でも、イースターの朝に兄弟やいとこたちと庭でエッグハントするのを楽しみしている女の子ケイティが主人公です。ケイティがおばあちゃんが子ども時代に隠したイースターエッグを屋根裏で見つけたことから、そのイースターエッグを木に飾るようになり、多くの人に喜ばれるようになります。ここ数年の間に日本でもイースターエッグのお菓子が売られるようになり、ショーウィンドウにもイースターの装飾が施されるようになりました。興味をもった子どもたちに手渡してあげたい1冊です。自分で読むなら低学年から、読んであげるなら幼児でも大丈夫でしょう。なお、イースターは春分の日のすぐ後の満月から一番近い日曜日とされ、毎年変わります。今年のイースターは4月1日の日曜日です。
 
 
『パイパーさんのバス』エリナ―・クライマー/作 クルト・ヴィ―ゼ/絵 小宮由/訳 徳間書店 2018/2/28
パイパーさんのバス (児童書)
エリナー クライマー
徳間書店
2018-02-20
 
 パイパーさんは町でバスの運転手をしています。しかし、家族はなく独りぼっち。ある時、その寂しさにはたと気がついて塞ぎこみます。そんなパイパーさんを頼ってきてくれたのが迷子の犬バスターに、ねこのおくさん。その上バスの中で迷子になったチャボも飼うことになります。しかし町のアパートでは動物の飼育は許されていません。パイパーさんは仕事を休んで、古いバスを買ってバスターたちを乗せ、彼らを引き取ってくれる人を探しに田舎へ出かけていきます。でも動物たちはパイパーさんと別れたくありません。途方に暮れて山道を走っている時に雷雨に合って、山の上の空き家へ逃げ込みます。幸運なことが重なってパイパーさんはこの家を借りて動物たちと一緒に暮らせるようになるのですが・・・その幸運なことっていったいなんでしょう?読んでいると心がほっこりと温かくなる素敵なお話です。文字も大きく挿絵もたくさんついています。小学校低学年の子どもにおすすめできる1冊です。
 
 
 
『波うちぎわのシアン』斉藤倫/作 まめふく/画 偕成社 2018/3
波うちぎわのシアン
斉藤 倫
偕成社
2018-03-14
 
『どろぼうのどろぼん』(福音館書店 2014)や『せなか町から、ずっと』(福音館書店 2016)を書いた 詩人の斉藤倫さんの新作です。この物語の語り手はねこのカモメ。赤ん坊の時に鷗に命を救われたのでこの名前がついています。カモメはラーラという小さな島にある診療所のフジ先生のところで飼われています。カモメはある雨の夜、沖から激しい炎に包まれて港へ流れつく船を発見し、フジ先生に急を知らせます。そしてフジ先生は、焼け落ちる船の中から生まれたばかりの男の赤ん坊を助け出します。この赤ん坊の左の握り拳は固く閉じられ開くことができません。握り拳がシアンという青い巻貝にそっくりなことから、この赤ん坊はやがてシアンと呼ばれるようになります。フジ先生がシアンをはじめ島々の孤児を引き取るために作った孤児院「ちいさなやね」の中で物語が動いていきます。4歳になったシアンには不思議な力がありました。誰かが、シアンの閉じられたままの左手を耳に当てると、潮騒の音が聞こえてきます。それはおかあさんのお腹の中で聞いていた音で、聞いているうちに自分の生まれる前のおかあさんや周りの人の声まで聞こえてくるのでした。ある日シアンは海を隔てた「壁の国」からやってきた旅の一座に誘拐されてしまいます。フジ先生と「ちいさなやね」でおかあさん役のリネンさんが、ねこのカモメを連れてシアンを救出しに「壁の国」に向かうところから物語は急転します。シアンの左手には出生にまつわる重大な事件の秘密が握られていたのでした。ねこの視点から描かれているので、最初は少し読みにくいのですが、旅の一座が現れてくるあたりからぐいぐい惹き込まれていきます。本の好きな子なら、小学校の高学年から手渡せる作品です。
 
 
 
『4ミリ同盟』高楼方子/作 大野八生/絵 福音館書店 2018/3/10
4ミリ同盟 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2018-03-07
 
 この物語の世界では、人々は子どものうちは困らないのに、おとなになると〈フラココノ実〉を食べないと、どうにもこうにもやっていかれないとい体質をしているというのです。この〈フラココノ実〉は、大きな湖の中に浮かぶ〈フラココノ島〉に渡らないと手に入らないので、あちこちの港からその島へ行くルートはいくつもあるというのに、主人公のポイット氏は、いまだにその実を食べる機会が巡ってきません。切望しているにも関わらずです。そんなある日エビータという女性に声をかけられます。彼女もまだ〈フラココノ実〉を食べられていません。なんと〈フラココノ実〉を食べていない人は知らず知らずのうちに地上4ミリほど体が浮いていることを発見し、それでポイット氏が仲間だとわかったのです。同じように体が4ミリ浮いている他の2人とも知り合い、「4ミリ同盟」を作って4人一緒に〈フラココノ実〉を食べるための島にわたるのですが・・・「地に足がついてない」4人はいったいどうなったのでしょう。髙楼方子さんのなんとも不思議で味わい深いお話です。
 
 
 
【その他】
『『ちいさいおうち』『せいめいのれきし』の作者 ヴィ―ジニア・リー・バートンの世界』ギャラリーエークワッド/編 小学館 2018/3/19

昨年(2017年)6月1日から8月9日にかけてギャラリーエークワッドで行われた「ヴァージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」―時代を越えて生き続けるメッセージー」展のリーフレットを底本にして編集された図録で、2018年3月17日から5月7日まで銀座・教文館ウェンライトホールで開催中の「「ちいさいおうち」のばーじにあ・りー・ばーとん」展に併せて、発売されました。ヴァージニア・リー・バートンが遺した作品やさまざまな手仕事について、たくさんのカラー図表とともに展望できる貴重な1冊となっています。また、昨年夏にエークワッドで行われた恐竜学者真鍋真さんと生物学者福岡伸一さんの対談の模様も収録されています。(教文館で開催中の「ばーじにあ・りー・ばーとん」展の案内は→こちら 5/7まで)

 

『過去六年間を顧みて かこさとし小学校卒業のときの絵日記』かこさとし/著 偕成社 2018/3

過去六年間を顧みて かこさとし 小学校卒業のときの絵日記
かこ さとし
偕成社
2018-03-14

91歳のかこさとしさんが、小学卒業時に小学1年生からの6年間を思い出して綴った文集が1冊の本になりました。1926年(大正15年)生まれのかこさんですから、この文集が書かれたのは1938年(昭和13年)です。奇跡的にその当時書いていたものが戦災を免れて残っていたというのは驚きです。また当時の様子が文章と絵で克明に描かれていることに、かこさとしさんの後年の功績を彷彿とさせるものがあります。当時は日中戦争が始まり、戦時体制が強化された時代です。「二・二六事件」や「志那事変」のことが子どもの視点で書かれているのも興味深いです。6年生の時のクラスメートの名前とあだ名、そして相撲人気だったという時代を反映して全員に四股名がついているところなども、とても面白く、時代の記録として大変貴重な資料となるでしょう。かこさとしさんの作品の原点をここに見る思いです。(かこさとし公式webサイト→こちら

(作成K・J)

おすすめ幼年童話12『ちびっこ大せんしゅ』シド・ホフ


 
 
連載12回めは『ちびっこ大せんしゅ』(シド・ホフ/文と絵 光吉夏弥/訳 大日本図書 2010)です。
 

 リトルリーグでも1番小さいハロルドは、試合にも出られず、いつもベンチを温めているだけでした。そんなハロルドにも、シーズン最後の試合でチャンスが訪れます。ピンチヒッターとしてバッターボックスに立ちました。ハロルドは目をつぶって力いっぱいバットをふると、なんと奇跡のホームラン! 

 チームは見事に勝利し、今までからかっていたチーム・メートも、この瞬間にハロルドと共に喜びを分かち合います。そして彼の努力は報われ、バットを振った勇気に感動してしまいます。最後に、試合の前日自宅に来て励ましてくれたコーチのロンバルトさんが、名言を残します。それは最高の誉め言葉で、読んでいる私たちに喜びと自信を与えてくれます。

 みんなで協力すれば喜びを分かち合うことができ、日々一生懸命練習すればハロルドのようにチャンスを掴むことが出来るよ、とストレートに伝えているのがこの物語の最大の魅力です。とくに、スポーツが好きな子はハロルドに共感でき、読み終わった後はきっと爽快な気分になるでしょう。絵本から読み物の移行期の小学校低学年向けですが、イラストも多いので読み聞かせにも向いています。読みやすく、読書が苦手なお子さんにも楽しめるので、読書感想文の本としてもおすすめです。

 作者のシド.ホフは、ニューヨーク生まれのマンガ家。ロングセラーの「ダニーと恐竜」など子どもの本も50冊ほど出していて、そのユーモラスな絵で大きな人気を集めています。野球の本も「魔女とネコと野球のバット」「野球ネズミ」などがあるので、ぜひあわせて読んでみてください。

(作成 29年度児童部会部員C・S)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら

 

 

2018年4月(その2)ひとりでできるもん(幼児~小学生)


 子どもたちが成長していくということは、ひとりで出来ることが増えることです。ひとりで出来ることが増えて、自分で考えて自分で判断できるようになっていくと、いずれ親から自立していきます。学校へ通うということは、その第一歩。

日本の学校のシステムは、4月に一斉に入学して、同じようにランドセルを背負って、同じ進度で学習を進める一斉方式。海外では特に入学式も無く、子どもたちそれぞれの進度に応じて飛び級もあり、クラスの中に様々な年齢の子がいることも普通です。ひとクラスの人数も少なくて、ひとりひとりに合った教育が可能であるのは制度の違いもあるからです。今回紹介する絵本『くんちゃんのはじめてのがっこう』は、そんな海外の学校を描いていて、なんだか日本の入学とは違うなあと思うでしょう。でも、はじめての学校生活で感じる子どもたちの不安や喜びは、どこも同じなのではと思って選びました。素話は、巣立ちの練習をする「こすずめのぼうけん」です。

****************************
【ひとりでできるもん】

導入 詩「たんぽぽ」川崎洋/作 1分
 『声で読む日本の詩歌166 おーいぽぽんた』(茨城のり子・大岡信・川崎洋・岸田衿子・谷川俊太郎/編 柚木沙弥郎/画 福音館書店 2001)より

川崎洋の「たんぽぽ」には、この詩集のタイトルにもなった「おーい ぽぽんた」という言葉が出てきます。子どもたちと、その言葉の面白さを味わいながら、一緒に声に出して読んでみるといいでしょう。こちらが最初に読んで、復唱してもらうと、子どもたちも一緒に詩を味わうことが出来ます。
 

素話「こすずめのぼうけん」エインズワース/作 石井桃子/訳 (『おはなしのろうそく13』東京子ども図書館/刊 より)7分

おはなしのろうそく 13
東京子ども図書館
2001-05-01

絵本もありますが、素話で語ってあげるとまた味わいが違います。「いいえ、ぼく、ちゅん、ちゅん、ちゅんってきり いえないんです」の繰り返しに、子どもたちも我が事のようにおはなしの中に入り込み、最後に「あなたのおかあさんじゃないの」っていう言葉でホッと表情が緩むのがわかります。

 
 

絵本『くんちゃんのはじめてのがっこう』ドロシー・マリノ/作 まさきるりこ/訳 ペンギン社 7分

くんちゃんのはじめてのがっこう
ドロシー・マリノ
ペンギン社
1982-04
 
 はじめて学校へ行った日、くんちゃんは上級生がどんどん勉強するのをみて不安に思います。先生が新入生に声をかけ、前に出てくるようにいった隙に、くんちゃんは教室から飛び出します。でも中が気になって窓から覗いていたくんちゃんは、ちゃんと先生の問いかけに答えます。先生に受け入れてもらって安心したくんちゃんの様子に、聞いている子どもたちもほっと和むことでしょう。
 
 
絵本『せんをたどってがっこうへいこう』ローラ・ユングヴィスト/作 ふしみみさを/訳 講談社 2012 3分
せんをたどって がっこうへいこう (講談社の翻訳絵本)
ローラ・ユンクヴィスト
講談社
2012-02-28
 
一筆書きの文字をたどって、学校の教室を移動していきます。学校での学びはわくわくすることがいっぱい。図書室に行ったり、理科室へ行ったり、音楽室に行ったり!子どもたちに新学期を前向きに迎えてほしいなと思います。各ページに子どもたちに問いかける文章が下部にありますが、集団の読み聞かせの際は、本文だけを読んであげればよいでしょう。
 
(作成K・J)

 

2017年12月、2018年1月の新刊から


2017年12月、2018年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

YA本の紹介まで、なかなか手が回らず心苦しいところですが、これはという本は、時間が少し経ってからでも紹介したいと思っています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

******************************************

 【絵本】

『コウテイペンギン』ヨハンナ・ジョンストン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2017/12/18 

コウテイペンギン
ヨハンナ ジョンストン
好学社
2017-12-19

 コウテイペンギンの生態を描いた科学絵本です。この本は2015年にアメリカで出版されました。この本への感想を書いたサイトには「a nature documentary」という表現がありましたが(Books In My House→こちら)、まさに長編ドキュメンタリー映画を見たような充実感を読後に感じました。水族館では人気者のペンギンですが、実際にはこれほど過酷な自然の中で生きていること、ペンギンの両親が命がけで次の世代を育む様子が、レナード・ワイスガードの美しい絵(アートワークと表現されていますが、ステンシル技法でしょうか)で描かれています。科学絵本でありながら、芸術性も高い1冊です。こみやゆうさんの翻訳も、子どもたちに語りかけてくるようです。自分で読むには小学校低学年以上ですが、動物が好きな子に読んであげるのであれば、長いおはなしですが幼児でも十分に聞くことが出来るでしょう。

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』福井さとこ/作 JULA出版局 2017/12/25

おるすばんのぼうけん―スロバキアのともだち・はなとゆろ
福井 さとこ
JULA出版局
2017-12-25

 

プラチスラヴァ芸術大学版画学科大学院で、スロバキアの版画家で絵本作家ドゥシャン・カーライの下で版画と絵本製作について学んだ福井さんの卒業制作が、JULA出版局から出版されました。福井さんがスロバキアでベビーシッターをした時の子どもたちの様子を絵本にしたものだそうです。お留守番をすることになった幼い兄妹が空想の世界に遊びに出かけます。子どもらしい想像の広がる世界に読んでもらう子どもたちにもすっと入っていけることでしょう。折込にはスロバキアのわらべうたも楽譜入りで掲載されています。海の向こうの子どもたちの遊びに想いを馳せるのも素敵な経験になると思います。 

 

『巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし』菱木晃子/文 平澤朋子/絵 BL出版 2018/1/1 

スカンジナビア半島の北部ラップランドに住んでいる先住民族サーメの人たちに伝わる昔話が、美しい絵本になりました。あとがきに菱木さんが「サーメのむかしばなしにたびたびでてくる巨人は、ときに容赦なく人々の命やくらしをおびやかす存在という意味で、自然の脅威の象徴ととらえることができます。」と記しています。厳しい自然の中で暮らしてきた人々の想いが伝わってくるようです。画家の平澤さんは厳冬のラップランドを訪れて描かれた絵も臨場感に溢れて素晴らしいです。とくに北の大地に春が訪れるシーンはそのままタブロー画として飾っておきたいほどです。

 

『だるまちゃんとかまどんちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 だるまちゃんシリーズに新年3冊が仲間入りしました。91歳の加古里子さんがこれらの作品にこめた想いを受け取りたいと思います。子どもたちには、そんなことはあまり関係ないでしょう。新しい仲間をどう受け取るかは子どもたち次第。心優しいかまどんちゃんに懐かしい想いを抱くのは親世代、あるいは祖父母世代かもしれません。子どもたちにも、温かい想いは伝わることでしょう。

『だるまちゃんとはやたちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 豊かな自然と共に生きてきた東北の人々の生活に想いを寄せる作品です。おばけ大会に集まるたくさんのおばけたちは、どこかかわいらしくてユーモラス。子どもたちは、そんなたくさんのおばけをみて、面白がることでしょう。


『だるまちゃんとキジムナちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 沖縄の子どもが登場する絵本です。加古里子さんは琉球の伝統への敬意と、戦中戦後の沖縄の人々の苦労を偲んでこの作品を描いたということです。大きなハブにつかまってしまっただるまどんを、キジムナちゃんの機転で助けます。子どもたちもドキドキしながら作品を楽しんでくれるといいなと思います。

かこさとし公式webサイトからは、この作品にかける加古里子さんの想いや、NHKワールドニュースでこの3作が取り上げられた動画を見ることができます。→かこさとし公式webサイト

 

『スプーンちゃん』小西英子/作 0.1.2えほん 福音館書店 2018/1/15

スプーンちゃん (0.1.2.えほん)
小西 英子
福音館書店
2018-01-10

「こどものとも0.1.2」の2012年6月号がハードカバーになりました。小さな子どもたちにとって、美味しい食べ物を口に運んでくれるスプーンって、とても身近な存在。そんなスプーンがプリンにメロン、いろんな美味しいものを次々にすくっていきます。自分で食べる練習を始めた小さなお友達に喜ばれそうな1冊です。


『にゃんにゃん』せなけいこ/作 福音館書店 2018/1/15 

にゃん にゃん (幼児絵本シリーズ)
せな けいこ
福音館書店
2018-01-11
 
 「こどものとも年少版」1977年11月号がハードカバーになりました。せなけいこさんの貼り絵によるねこたちの表情が、なんとも愛らしいです。最後の見開きページで母さんねこにおっぱいをもらって満足するこねこたちの表情は、そのまま読んでもらった子どもたちの笑顔につながる、そんな1冊です。

 

 【児童書】

『ハックルベリー・フィンの冒険』上・下 マーク・トウェイン/作 千葉茂樹/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2018/1/25

 

ハックルベリー・フィンの冒険(下) (岩波少年文庫)
マーク・トウェイン
岩波書店
2018-01-26
 
岩波少年文庫にこれまで『ハックルベリー・フィンの冒険』が入ってなかった?と思わず思ってしまいました。創元社の世界少年少女文学全集(吉田甲子太郎/訳)をはじめとして、岩波文庫(西田実/訳)、福音館書店の古典童話シリーズ(大塚勇三/訳)など多くの訳本が出ており、この作品のファンも多いと思います。同じくマーク・トウェインの代表作『トム・ソーヤ―の冒険』の続編ともいうべき、この作品では金に目のくらんだ実の父親が登場したり、南北戦争時代の前という時代背景からワトソン家の黒人使用人ジムとの逃走が描かれ、より社会的な問題を提起する作品になっています。ハックが、その時代的な善悪の判断ではなく、自分自身を深くみつめ葛藤し、良心による判断をしていくという彼の精神的な成長の過程が、読む者の心をつかみます。今回、翻訳を担当した千葉さんは、方言の表現にこだわらずに訳した事、「nigger」という差別用語の扱いについて他の訳者が注釈を入れて「くろんぼ」等としたところは、そのようには訳さなかったということです。この冒険の物語をわくわくしながら読む子どもたちにそうした差別用語を覚えてほしくないという訳者のたっての願いだったそうです。安心して子どもたちに手渡せますね。
 
 
 
『バレエ・シューズ』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2018/1/31
 
バレエ・シューズ
中村妙子
教文館
2018-01-01

 ノエル・ストレトフィールドが1936年に書いた『バレエ・シューズ』は、これまでも村岡花子の訳(講談社マスコット文庫 1967)で出版されたり、中村妙子の訳では1979年にすぐ書房から出版されています。中村さんご自身がお連れ合いの海外赴任でアメリカに住んでいた時に図書館で出合ったのがイギリスの作家ストレトフィールドの「劇場シリーズ」の作品だっだそうです。「劇場シリーズ」の新訳が教文館から2014年に『ふたりのエアリエル』が、昨年秋に『ふたりのスケーター』が出版され、この作品は3作目になります。赤ちゃんの時にそれぞれの事情で両親と死に別れた3人の女の子が、ひとつの家で姉妹のように育てられるおはなしです。考古学者のマシュー大おじさんは出かける先々で孤児を託されて自宅に連れて帰りますが、自分はまた研究の旅へ。世話をするのは姪のシルヴィアと留守を守る家政婦たちでした。3人の女の子たちはシルヴィアたちが自分たちを育てるのに苦労をしているのを知って、自分たちの才能でなんとか収入を得ようとします。健気な少女たちの成長の姿は、自立へと向かう思春期の子どもたちに勇気を与えてくれるはずです。

 

 『熊とにんげん』ライナー・チムニク/作・絵 上田真而子/訳 徳間書店 2018/1/31

熊とにんげん (児童書)
ライナー チムニク
徳間書店
2018-01-20
 
昨年12月に亡くなられたドイツ文学者で翻訳家の上田真而子さんが、ご自身で翻訳した作品の中で一番のお気に入りだったという『熊とにんげん』がこのほど復刊されました。おどる熊を連れて町から町へとあるく旅芸人のおじさんは、熊のことばがわかりました。おじさんと熊は、お互いに信頼し、訪れる町で人々を喜ばせていました。この作品はポーランド領生れのチムニクが24歳の時のデビュー作です。上田さんは訳者あとがきに「寓意をこめた後の作品とはちがって、ここにはやはり、ナイーヴな、純な、ういういしさがあると思います。それでいて、世の中を、人生を鋭く見透している眼があり、それはある意味で宮沢賢治の世界に重なるのではないかとも思いました。」と書いています。信仰深く誠実な生き方をした熊おじさんと、熊の、長い年月を辿る友情は、心の中に温かな風を送ってくれます。
 

 【研究書・エッセイ】

『チェコの十二カ月―おとぎの国に暮らす―』出久根育/文・絵 理論社 2017/12/1

 チェコの首都プラハに住む画家で絵本画家でもある出久根育さんの初めてのエッセイ集です。チェコの四季折々の風物や、自然の営みを、またチェコで出会った素朴でいて心優しい人々の暮らしを、静謐な筆致で丁寧に描き出しています。またところどころに散りばめられた出久根さんの描くチェコの街角や自然の風景は、そのまま新しい物語が始まりそうな予感に満ちています。

 

『大草原のローラ物語 パイオニアガール』ローラ・インガルス・ワイルダー/著 パメラ・スミス・ヒル/解説・注釈 谷口由美子/訳 大修館書店 2018/1/10

大草原のローラ物語―パイオニア・ガール[解説・注釈つき]
ローラ・インガルス・ワイルダー
大修館書店
2017-12-16

アメリカ開拓時代の少女ローラと家族の物語は、福音館書店から恩地三保子の訳でシリーズが出版され、またテレビドラマなどにもなって多くの人たちに親しまれています。また岩波少年文庫からは谷口由美子の訳で『長い冬』、『大草原の小さな町』などが出版されています。今回の作品は、ローラが作品を書く前に書き留めていた注釈付きの自伝『パイオニア・ガール』を谷口さんが訳したものです。単なる物語というのではなく、ローラが執筆した時代について、実に細かい注釈と資料、当時の様子を伝える貴重な写真などがついており、ローラ・インガルス・ワイルダーという作家について、あるいは作品についての研究書という趣になっています。昨年2017年はローラ生誕150周年でした。時代は違いますが、どんな逆境にも常に勇気と愛と希望をもって前向きに乗り越えようとしていた家族の姿から、読む者もまた勇気や愛を取り戻せるような気がします。(出版関連のイベント情報→こちら)現在、銀座教文館ナルニア国のナルニアホールにて『大草原のローラ物語パイオニア・ガール』刊行記念展実施中です。3月18日(日)まで。(ナルニア国イベントページ→こちら

(作成K・J)

おすすめ幼年童話11『火曜日のごちそうはヒキガエル』ラッセル・E.エリクソン


連載第11回は、『火曜日のごちそうはヒキガエル』(ラッセル・E.エリクソン/作 ローレンス・ディ・フィオリ/絵 佐藤涼子/訳 2008)です。

火曜日のごちそうはヒキガエル―ヒキガエルとんだ大冒険〈1〉 (児童図書館・文学の部屋)
ラッセル・E. エリクソン
評論社
2008-02-01

 

 

  この本は、「ヒキガエルとんだ大冒険」シリーズの第1巻です。仲のよいヒキガエルの兄弟、掃除が大好きなウォートンと料理が大好きなモートンのハラハラドキドキさせるお話が7巻まで続きます。

 1巻は、ある冬の夜、モートンが作ったケーキをトゥーリアおばあさんに届けたいとウォートンが思い立ったところから物語が始まります。おばあさんは谷間を越えた先に住んでいます。その谷間は深い雪におおわれ、その上たちのわるいミミズクが住んでいて、とても危険な場所です。しかし、おいしいケーキをどうしても届けたいと、ウォートンは手作りのスキーを履いて、厚着をして出かけます。

 ウォートンは途中で雪に埋もれたシロアシネズミを助けてあげますが、その直後ミミズクに捕まってしまいました。ミミズクの家に連れていかれたウォートンは、ミミズクに「おまえは来週の火曜日のごちそうだ」と告げられます。6日後のその日はミミズクの誕生日だったのです。

 運命の日まで、ウォートンはどうやって過ごしたのでしょう。ミミズクの出かけた隙に逃げることは難しそうだとわかると気を取り直してミミズクの散らかっていた部屋の掃除をし、夜はミミズに美味しいお茶をすすめ、お互いの話をするようになるのです。

 でもウォートンは食べられるのはいやです。ミミズクのいない間にセーターを解いて脱出のためのはしごを作っていました。それをミミズクにみつかってしまいます。誕生日の前の夜は、気まずくて一言も話さずに過ごしました。

 誕生日の朝、助けたシロアシネズミの仲間がウォートンを救出に来てくれました。木の中の抜け穴を通って、外に出たウォートンを待っていたのは100匹のシロアシネズミ。みんなが一斉にスキーで谷間を滑り降りていく様子はすごくワクワクします。ところがその途中でミミズクがきつねに襲われているのを見て、ウォートンは迷うことなくシロアシネズミと協力して、きつねを追い払うのでした。

 ミミズクはウォートンと友だちになろうとして、ウォートンが好きなネズの実を取りにでかけてきつねに襲われたのでした。ウォートンは感激しました。ミミズクも、これからはヒキガエルもネズミも食べないと約束してくれました。

 最初は、食べる側と食べられる側という力関係だった二匹。でも陽気なウォートンとお茶を飲みながらおしゃべりするうちに、ミミズクの気持ちは友情へとかわっていったのです。

 この作品は1982年に出版され長く愛されてきました。小学校中学年の子どもたちに出合ってほしい1冊です。

(作成 29年度児童部会部員M・R)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら

 

2017年11月、12月の新刊から(追加あり)


2017年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、9月、10月に見逃していた本もあり)

今年一年も、この新刊紹介コーナーを愛読していただきありがとうございました。ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

本来ならばYA向けの読物もたくさん紹介したいと思いながらも、ひとりで1か月で読める本が限られてしまい、購入しても積読になって、紹介が遅れることもありました。それでもこれからも少しずつ新刊の紹介を続けていきたいと思います。

いつも新しい本の情報を提供し、アドバイスしてくださる上記の書店の新刊担当の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

***********************************

【絵本】

『ハッピー・ハンター』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/9/29 

ハッピーハンター
ロジャー デュボアザン
ロクリン社
2017-09-29

 

1961年に出版されたロジャー・デュボアザンの初邦訳です。ハンターの格好にあこがれたポピンさん。でも、ハンターの格好はしても、心優しいポピンさんは動物たちを打ち殺すなんて出来ません。そんなポピンさんと森の動物たちとの心温まるお話です。

 

『ふるいせんろのかたすみで』チャールズ・キーピング/作 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2017/10/31

ふるいせんろのかたすみで
チャールズ・キーピング
ロクリン社
2017-10-31

 

1983年にらくだ出版から出ていた『たそがれえきのひとびと』の新装新訳版です。古い線路沿いに長屋が六軒、軒を連ねて建っていました。そこに住むのは貧しいお年寄りたち。彼らは毎週10ペンスずつ出し合ってサッカーくじを買っていました。ある日、そのくじが大当たり。突然舞い降りた幸運、その賞金でみんなが何をするのでしょうか。最後まで読んで、ああこんなふうにお金って使いたいなと思いました。

 

『ひょうたんめん』神沢利子/文 赤羽末吉/画 復刊ドットコム 2017/11/25

ひょうたんめん
神沢 利子
復刊ドットコム
2017-11-25

 

鹿児島県種子島に伝わる妖怪「ひょうたんめん」を神沢利子が再話し、赤羽末吉が絵を描いた昔話絵本です。1984年に偕成社から出版されていましたが、長く絶版が続いていましたが、この度復刊ドットコムから新装復刊されました。ひょうたんめんは、塩も馬も食ってしまうという恐ろしい妖怪で、村人を困らせていました。ある日、馬をひいて塩を買いに行った「おとじろうまごじろう」は帰りが遅くなり、びくびくしながら山道に差し掛かります。するとやっぱり後ろからひょうたんめんの呼び止める声が!ひょうたんめんと、おとじろうまごじろうの攻防やいかに。赤羽末吉の描くひょうたんめんの飄々とした風貌にも注目です。

 

 

『へそとりごろべえ』赤羽末吉/詩・画 童心社 2017/12/7

へそとり ごろべえ
赤羽 末吉
童心社
2017-12-07

 

かみなりのごろべえは、おへそが大好物。たぬきにねずみ、ライオン、そして鬼や大仏のおへそまで「くりんくりんの シューすっぽん」と取ってまわります。しまいには自分のへそも気になって・・・抱腹絶倒の結末におとなも子どもも一緒に楽しめると思います。この度1976年に出版されていた童心社が創業60周年を記念して「ことばと詩のえほん」シリーズの3冊がこの度改訂新版として復刊しました。どれも40年経っていますが、今の子どもたちにとっても新鮮な面白さとして伝わると思います。

 

『あいうえどうぶつえん』小林純一/詩 和田誠/画 童心社 2017/12/7

あいうえどうぶつえん
小林 純一
童心社
2017-12-07

 

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの1冊です。見開き2ページの右側が詩(ことば)、左側が動物の絵になっています。詩は「ひるのあかちゃん けまでいって、 わぎをぬぐら ぷろんとって、 よぎのけいこで あいうえお」と、各行のはじまりがあ行~わ行で始まっていて、リズミカルで楽しい絵本です。

 

 

『かぜにもらったゆめ』佐藤さとる/詩 村上勉/画 童心社 2017/12/7

かぜにもらったゆめ
佐藤 さとる
童心社
2017-12-07

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの3作目は、今年2月に亡くなった佐藤さとるの作品です。眠りにつこうとして、布団の中で、春の夜に吹く風の音に、いたちが来たのか?ロケットが墜落したのか?雷様が落ちたのかも?と、どんどん妄想を膨らませていく男の子。「トントン」「トントントトン」「トトントントン」。短い詩の後に続く擬音が、その空想の世界をさらに広げていくようです。春先にぜひ読んであげたい1冊です。

 

【児童書】

『図書館につづく道』草谷桂子/作 いしいつとむ/挿絵 子どもの未来社 2017/12/18

図書館につづく道
草谷佳子/著
子どもの未来社
2017-12-22

 

山あいの図書館に集まってくる子どもから大人までの10人の、図書館に行き着くまでの物語が、やがてひとつの物語へと編まれていきます。作者の草谷さんは、ご自身でも家庭文庫を主宰し、静岡図書館友の会で活躍されている方だそうです。図書館の思わぬ魅力や、地域での役割が見えてくる、まさに図書館で働く人におすすめしたい1冊です。

 

【研究書】

『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子/著 文春文庫 文藝春秋 2017/10/10

 

1987年に日本エディタースクールから刊行されていた松岡享子さんの『えほんのせかい こどものせかい』が、文春文庫になりました。内容は、単行本のそのままですが、巻頭に東京子ども図書館での松岡さんの語りの様子や、館内の様子などを映し出した美しいカラー写真のページが加わりました。121pからの「グループの子どもたちに 絵本を読み聞かせるために」(~144p)は、図書館や学校の朝読の時間など、集団に向けて絵本を読んであげる場合の選書や準備について、初心者向けにわかりやすく書かれています。文庫版になった上に、フォントは単行本の時よりも大きくて読みやすいので、おはなし会に関わる人々の座右の書になると思います。

 

『紙芝居百科』紙芝居文化の会/企画・制作 童心社 2017/11/20

紙芝居百科 (単行本図書)
童心社
2017-11-20
 
日本独自の文化である「紙芝居」の魅力をもっと多くの人に伝えたい、海外の人へも伝えたいと研究と活動を続けてきた「紙芝居文化の会」が紙芝居に関する情報をまとめました。紙芝居の魅力や演じ方や、絵本との違いについてわかりやすくまとめられています。「紙芝居の選び方」として、おすすめの紙芝居が分野別に分類されてリストになっていますので、おはなし会で紙芝居を演じてみようとする時の助けになります。
 
 
『保育に活かす おはなしテクニック~3分で語れるオリジナル35話つき~』こがようこ/著 小学館 2017/12/20
保育に活かす おはなしテクニック: ~3分で語れるオリジナル35話つき~ (教育単行本)
こが ようこ
小学館
2017-12-15
 
今年度、児童部会では「お話(素話)を覚えて語ることを目標にして、「おはなし」とは何なのか、「おはなし」を聞く子どもたちの反応はどうなのか、について研究してきました。この本は保育の現場で長い間、子どもたちにおはなしを届けて来た作者が、幼い子どもたちにおはなしを語る意味をわかりやすく伝えてくれます。またオリジナルの短いおはなしは、今の子どもたちにとってもわかりやすく楽しい展開になっています。幼い子どもたちへの語りについて試行錯誤している方は、ぜひこちらも参考にしてみるとよいでしょう。
 

 

(作成K・J)

おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター


連載第9回は、『ごきげんいかが がちょうおくさん』(ミリアム・クラーク・ポター/作 松岡享子/訳 こうもとさちこ/絵 福音館書店 2004)です。


ごきげんいかが がちょうおくさん (世界傑作童話シリーズ)

ミリアム・クラーク ポター
福音館書店
2004-06-30

どうぶつ村に住むがちょうおくさんは、とてもそそっかしく失敗ばかりしています。

どんな失敗かというと、たとえば自転車旅行の計画をたてた時も、はいていくスラックスばかり心配して、肝心の自転車の手配を忘れたのを出発の瞬間に気づいてしまうとか、朝に玉ねぎの種をまいたら、昼には芽が出ないと騒いで、種の目を覚まさせようと畑に向かって鐘を鳴らして大騒ぎをしてしまったり。そんなドタバタやっているがちょうおくさんと、あきれながらも仲良く付き合っているぶたさん、りすおくさんなどとのやり取りが、ユーモラスです。どうぶつ村の住人はだれもが個性的で、とても人間臭いのです。

たとえば、ふくろうの老婦人は賢いけれど少し遊び心が足りません。屋根の上で食事をしているがちょうおくさんから一緒に食べようと誘われる場面があります。彼女は屋根の上でものを食べる必要があるのかと問いただし、十分な理由がないなら登らないと言います。

利発なりすおくさんも、がちょうおくさんの思いつきを聞かされたときなどは、内心では何か失敗するはずと思います。それでも口には出しません。そしてがちょうおくさんの行動に冷静なツッコミをしたりします。こんなやりとりは私たちの普段の人間関係を思い起こしてニヤリとしてしまいます。おとなが読んでも、とても面白い作品です。

短い6つの物語で構成されていて小学校の低学年から読むことができます。こうもとさちこさんの描く挿絵もやわらかく朗らかで、ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。

6つめの物語「クリスマスまであけないで」は、がちょうおくさんが村のみんなのためにクリスマスを用意するお話です。ここでもがちょうおくさんはやらかしてくれますよ。そんながちょうおくさんを囲んで村中のみんなが楽しそうにクリスマスをお祝いしているシーンが、最後の見開きページに描かれています。冬休みの読書におすすめしてもいいですね。

続編に『おっとあぶない がちょうおくさん』(2004)があります。

(作成 29年度児童部会部員M・Y)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら

1月のおはなし会☆おすすめ本リスト(更新あり)


11月も半ばに入ると、とたんに忘年会の話題が上るようになり、今年もあとわずかであることを自覚させられます。

1月のおはなし会や、展示特集などで使えるおすすめ本のリストは、新刊本はもちろんのこと、今まで見落としていた絵本や、2018年の干支であるいぬの絵本なども加えて更新しました。i-inu136

ぜひ業務に役立ててください。

1月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2017)(2017/11/28更新)

トップページに戻る