Tag Archive for 子どもの本

6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2018)(更新あり)
おすすめ幼年童話13『こぶたのピクルス』小風さち
2018年2月、3月の新刊から
おすすめ幼年童話12『ちびっこ大せんしゅ』シド・ホフ
2018年4月(その2)ひとりでできるもん(幼児~小学生)
2017年12月、2018年1月の新刊から
おすすめ幼年童話11『火曜日のごちそうはヒキガエル』ラッセル・E.エリクソン
2017年11月、12月の新刊から(追加あり)
おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター
1月のおはなし会☆おすすめ本リスト(更新あり)
おすすめ幼年童話8『宇宙からきたかんづめ』佐藤さとる
おすすめ幼年童話7『ちびねこグルのぼうけん』アン・ピートリ
おすすめ幼年童話6『プレゼントはお・ば・け』西内ミナミ
9月のおはなし会プラン(その2)耳を澄まして(幼児~小学生)
訃報 おかべりかさん

6月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2018)(更新あり)


6月のおはなし会☆おすすめ本リストを更新しました。

2017年に出た絵本や、新しく設けた「雷」をテーマとした絵本などを追加しました。

おはなし会の立案や、ブックトークの選書、テーマ展示などでご活用ください。

 

6月のおはなし会おすすめ本リスト2018

2018年4月16日に見落としていた絵本を4冊追加しました。
2018年4月19日にもう1冊追加しました。
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おすすめ幼年童話13『こぶたのピクルス』小風さち


児童部会部員がおすすめする幼年童話の紹介も、2年目に突入です。連載13回目は、『こぶたのピクルス』(小風さち/文 夏目ちさ/絵 福音館書店 2015)です。


 

こぶたのピクルスは小学一年生の男の子。

「教科書、よし!

 ノート、よし! 

エンピツ、よし! 

ハンカチ、よし! 

わすれ物は、ひとつもなし!」

と、スキップしながら元気よく出かけたのに、途中で出会った牛乳屋さん、パン屋さん、新聞屋さんのそれぞれの配達の忘れ物を届けているうちに、自分の大事な用事を忘れてしまいます。

そんなピクルスの様子はほほえましく、両親に温かく見守られながら、ドキドキワクワクの毎日を送るピクルスに、読んでいる子どものだれもが自分を重ね合わせてしまうでしょう。

冒頭の「ピクルスのわすれ物」のほか、「ピクルスと卵」、「ピクルスの大ニュース」、「ピクルスの海水パンツ」の4話が収められています。

 作者は『わにわにのおふろ』などのわにわにシリーズや、『とべ!ちいさいプロペラき』を手がける小風さちさん。リズムよくうきうきする文章で、声に出して読むのも耳から聞くのもどちらも楽しく、読みきかせにも向いています。また、全ページに明るい色彩の大きな挿絵が入り、子どもたちがひとりで読み進める助けとなってくれます。絵本から物語へ移行する時期の子どもたちにぜひ手渡したい幼年童話です。

 続編の『ピクルスとふたごのいもうと』では、お兄ちゃんになったピクルスが成長した姿を見せてくれ、こちらもおすすめです。

 

(作成 29年度児童部会部員C・K)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら

2018年2月、3月の新刊から


2018年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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絵本

『はるは』ジャニーナ・ドマンスカ/作 谷川俊太郎/訳 童話館出版 2018/2/20

はるは
ジャニーナ ドマンスカ
童話館出版
2018-03-01

「はるは はるさめ  はるは はなざかり はるは うたう」と、春の情景から始まり、夏、秋、冬とめぐって「ふゆは はるをまつ」で締めくくられる詩の絵本です。美しい線描の絵に登場するのは茶色のダックスフント。季節ごとにかたつむりやクジラ、虫たち、鳥たち、うさぎと一緒に躍動する姿は、いろいろなことを想像させて楽しくなります。裏表の見返しには一面のクローバーが描かれています。2枚ほど四つ葉のクローバーがあります。子どもと一緒に探してみてください。

 

『とらのことらこ』きくちちき/作 小学館 2018/2/26 

とらのこ とらこ
きくち ちき
小学館
2018-02-26

 2013年に『しろねこくろねこ』(学研)でブラティスラヴァ国際絵本原画展金のりんご賞を取ったきくちちきさんの新作です。ご自身のお子さんの成長に合わせて絵本もどんどん進化しています。今度の絵本もお子さんとの関係の中から生まれた絵本とのこと。とらの子ども、とらこは母さんとらの真似をして一生懸命獲物を追いますが失敗ばかり。そんなとらこの姿を愛情いっぱいに母さんとらは温かく見守ってくれます。「とらこのことらこ つかまえて  母さんのしっぽにつかまった」と繰り返しのことばも心地よくストーリーが進みます。先日原画展に行ってきました。温かい色合いの原画の色を生かすため印刷では苦労をされたとのこと。表紙の黄色も、とらこの鼻の色も、装丁家と印刷技術者の丁寧な仕事のおかげです。(原画展は2018年4月1日まで。高円寺書肆サイコロにて→こちら) 

 

『さよならともだち』内田麟太郎/作 降矢なな/絵 偕成社 2018/2

さよなら ともだち (「おれたち、ともだち! 」絵本)
内田 麟太郎
偕成社
2018-02-28
 
 『ともだちや』(1998年刊)から始まった「おれたち、ともだち!」シリーズの13冊目の最新刊です。タイトルからキツネとオオカミの別れがテーマかと想像しましたが、キツネが「ともだちや」を始める前のお話でした。1館目の『ともだちや』をもう一度引っ張り出して読みたくなるような懐かしい場面もたくさんありました。「さよなら」は、次の新しい出会いへの一歩です。新しい年度が始まる時に、おすすめできる1冊です。
 
 
『かぶきやパン』かねまつすみれ/文 長野ヒデ子/絵 童心社 2018/2/20
 
かぶきやパン (絵本・こどものひろば)
かねまつ すみれ
童心社
2018-02-20
 
2月20日の「歌舞伎の日」に出版されたこの絵本は、2014年に童心社が実施した第7回絵本テキスト大賞を受賞した『まちのパンや「かぶきや」さん』という作品が元になっています。作者のかねまつさんはパン作りと芝居見物が大好きで、自然のこのお話が生まれたのだそうです。そのテキストをもとに長野ヒデ子さんがユーモアたっぷりの絵をつけられました。実際にお二人で歌舞伎の演目とパンの特徴を照らし合わせてストーリーを練り、市川海老蔵さん他、歌舞伎役者の皆さんにもこの絵本を見ていただいたとのこと。2月24日に都立多摩図書館で行われた童心社創業60周年記念講演会の中で長野ヒデ子さんは、歌舞伎の口上は言葉の響きもとても豊かで、歌舞伎を見たことのない子どもたちにも、絵本を通して日本の伝統文化「歌舞伎」の魅力を伝えたいとおっしゃっていました。声に出して子どもたちに読んであげたい絵本です。(童心社・長野ヒデ子さん×かねまつすみれさんスペシャルインタビューの記事→こちら

 

 『もしぼくが本だったら』ジョゼ・ジョルジェ・レトリア/文 アンドレ・レトリア/絵 宇野和美/訳 アノニマ・スタジオ 2018/3/2 

もしぼくが本だったら
ジョゼ・ジョルジェ・レトリア
アノニマ・スタジオ
2018-03-01

表紙にはベンチに残された本が1冊。「もしぼくが本だったら つれて帰ってくれるよう 出会った人にたのむだろう。」というように「もしぼくが本だったら」に続いてさまざまな本にまつわる文章が続いていきます。。最後のページは「もしぼくが本だったら 「この本がわたしの人生を変えた」とだれかが言うのをきいてみたい。」と、本が持っている力、可能性を示してくれます。作者はポルトガル語の詩人で、その文章に息子さんが絵をつけた親子作品です。デザイン的にも美しく、これまでに数々のデザイン賞を受賞し、13か国語に翻訳されています。日本語にはスペイン語圏の絵本や児童書の翻訳者・宇野和美さんが訳されました。YA世代や大人たちに手に取ってほしい1冊です。

 

『だんごむしのおうち』澤口たまみ/文 たしろちさと/絵 福音館書店 2018/3/10

だんごむしの おうち (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)
澤口 たまみ
福音館書店
2018-03-07
 
春の庭で小さな子どもが掌にだんごむしをのせて「ねえねえ、みてみて!」と見せてくれます。触ると丸くなるだんごむしは小さな子どもにとっては楽しい存在です。この絵本を読んで、もう25年以上前のこと、「お母さん、お土産!」といって筆箱にいっぱいのだんごむしを入れて持って帰ってきた我が子の得意気な顔を思い出しました。庭先で出会う小さなだんごむしは、子どもが身近な自然に興味を持つ入り口になります。よく似た虫で丸まらないわらじむしの説明も出てきます。小さな生命にも目をむける子どもたちの素直さを大切にしたいと思います。「ちいさなかがくのとも」2012年4月号のハードカバーです。3歳くらいから手渡せます。
 
 
 
『王さまになった羊飼い』チベットの昔話 松瀬七織/再話 イ・ヨンギョン/絵 福音館書店 2018/3/15
 
 貧しい羊飼いの男の子が働いて得るものは、毎日たった一握りのツァンパ(ハダカムギを粉にしたもの)でした。ある時、草原でお腹を空かせたうさぎに出会います。男の子はうさぎにツァンパを分けてやるようになります。そうして100日経った時、うさぎは老人に姿を変えました。なんとうさぎは天の神だったのです。老人はお礼を授けようと申し出ますが、男の子は「動物のことばがわかる力がほしい」と願います。男の子はその力で通りかかった王さまの家来の馬を助け、それが縁で王さまの元へ参内し、誰も治療できなかった王子の耳を治します。そして王さまから王国の半分を譲られたのです。小さな生命に注ぐ愛情と誠実さが、貧しい男の子を王へと導いたというチベットの昔話です。 
 
 
 
児童書
『おひとよしのりゅう』ケネス₌グレーアム/作 石井桃子/訳 学研プラス 2018/1/15
 『たのしい川べ』(本のこまどの記事は→こちら「基本図書を読む2『たのしい川べ』)を書いたケネス₌グレーアムの幻の名作と言われた『おひとよしのりゅう』(1966年に『新しい世界の童話シリーズ8 おひとよしのりゅう』として学研より出版 その後絶版)が、限定復刻されました。羊飼いの息子と争いごとが嫌いな優しい竜、そして竜退治の騎士セント・ジョージが織りなすなんともユーモラスなお話です。今回の復刻版は東京子ども図書館と教文館ナルニア国だけの限定発売です。のんびりとした話の進み具合は、今の子どもたちに、というよりこのお話にわくわくした昔の子どもだった人たちに喜ばれるのかもしれません。戦隊ものなどで怪獣は退治するものと思っている子どもたちに、戦うことがすべてではないというメッセージを届けられると思います。(教文館ナルニア国の紹介ページ→こちら
 
 
 『青い月の石』トンケ・ドラフト/作 岩波書店 2018/2/16
青い月の石 (岩波少年文庫)
トンケ・ドラフト
岩波書店
2018-02-17
 
作者のトンケ・ドラフトさんは2004年に、1962年に発表した『王への手紙』(岩波少年文庫 2005年)で過去50年にオランダで出版された子どもの本の中から第一位の賞「石筆賞の中の石筆賞」を受賞されました。当時すでに74歳でした。『王への手紙』、そして続編の『白い盾の少年騎士』(岩波少年文庫 2006年)は、困難な状況の中で任務を果たそうとする少年騎士のひたむきな思いと、彼を支える友情を描いて非常に読み応えのある作品でした。大きな賞を受賞した翌2005年に新たに発表した作品が『青い月の石』です。「どこから来たの?マホッフ、マホッフ、マホッヘルチェ」「地面の下からやってきた、マホッヘルチェ!」というオランダに伝わる日本の「はないちもんめ」に似た遊びをモチーフに、地上の世界と地下世界、そして主人公ヨーストのいる世界と中世を思わせる長ひげ王の国が交錯して展開する不思議な物語です。地下の国に君臨するマホッヘルチェを追って、いじめられっ子ヨーストが、いじめっ子ヤンと一緒に冒険に出ていき、同じようにマホッヘルチェを追う長ひげ王の息子イアン王子は地下世界のヒヤシンタ姫に恋をします。編んだセーターが魔力を持つヨーストのおばあちゃん、地下世界に通じる池の近くに住む魔法使いのオルムなどの魅力溢れる登場人物に導かれ一気に読めてしまうファンタジーです。 

 
『イースターのたまごの木』キャサリン・ミルハウス/作・絵 福本友美子/訳 徳間書店 2018/2/28

イースターのたまごの木 (児童書)
キャサリン ミルハウス
徳間書店
2018-02-20
 
1951年にアメリカで出版され、その年の最も優れた絵本に贈られるコールデコット賞を受賞した作品が、翻訳されました。「イースター(復活祭)」は、イエス・キリストが十字架刑を受けた3日後に蘇ったとする聖書にしたがい、キリスト教社会ではクリスマスと並ぶ大切なお祭りです。卵の殻を割って出てくる鳥は、墓から出てきたキリストの象徴とされ、イースターには卵を美しく彩色して飾ったり、庭に隠した卵を子どもたちが探すエッグハントをイースターの朝に行う習慣があります。このお話でも、イースターの朝に兄弟やいとこたちと庭でエッグハントするのを楽しみしている女の子ケイティが主人公です。ケイティがおばあちゃんが子ども時代に隠したイースターエッグを屋根裏で見つけたことから、そのイースターエッグを木に飾るようになり、多くの人に喜ばれるようになります。ここ数年の間に日本でもイースターエッグのお菓子が売られるようになり、ショーウィンドウにもイースターの装飾が施されるようになりました。興味をもった子どもたちに手渡してあげたい1冊です。自分で読むなら低学年から、読んであげるなら幼児でも大丈夫でしょう。なお、イースターは春分の日のすぐ後の満月から一番近い日曜日とされ、毎年変わります。今年のイースターは4月1日の日曜日です。
 
 
『パイパーさんのバス』エリナ―・クライマー/作 クルト・ヴィ―ゼ/絵 小宮由/訳 徳間書店 2018/2/28
パイパーさんのバス (児童書)
エリナー クライマー
徳間書店
2018-02-20
 
 パイパーさんは町でバスの運転手をしています。しかし、家族はなく独りぼっち。ある時、その寂しさにはたと気がついて塞ぎこみます。そんなパイパーさんを頼ってきてくれたのが迷子の犬バスターに、ねこのおくさん。その上バスの中で迷子になったチャボも飼うことになります。しかし町のアパートでは動物の飼育は許されていません。パイパーさんは仕事を休んで、古いバスを買ってバスターたちを乗せ、彼らを引き取ってくれる人を探しに田舎へ出かけていきます。でも動物たちはパイパーさんと別れたくありません。途方に暮れて山道を走っている時に雷雨に合って、山の上の空き家へ逃げ込みます。幸運なことが重なってパイパーさんはこの家を借りて動物たちと一緒に暮らせるようになるのですが・・・その幸運なことっていったいなんでしょう?読んでいると心がほっこりと温かくなる素敵なお話です。文字も大きく挿絵もたくさんついています。小学校低学年の子どもにおすすめできる1冊です。
 
 
 
『波うちぎわのシアン』斉藤倫/作 まめふく/画 偕成社 2018/3
波うちぎわのシアン
斉藤 倫
偕成社
2018-03-14
 
『どろぼうのどろぼん』(福音館書店 2014)や『せなか町から、ずっと』(福音館書店 2016)を書いた 詩人の斉藤倫さんの新作です。この物語の語り手はねこのカモメ。赤ん坊の時に鷗に命を救われたのでこの名前がついています。カモメはラーラという小さな島にある診療所のフジ先生のところで飼われています。カモメはある雨の夜、沖から激しい炎に包まれて港へ流れつく船を発見し、フジ先生に急を知らせます。そしてフジ先生は、焼け落ちる船の中から生まれたばかりの男の赤ん坊を助け出します。この赤ん坊の左の握り拳は固く閉じられ開くことができません。握り拳がシアンという青い巻貝にそっくりなことから、この赤ん坊はやがてシアンと呼ばれるようになります。フジ先生がシアンをはじめ島々の孤児を引き取るために作った孤児院「ちいさなやね」の中で物語が動いていきます。4歳になったシアンには不思議な力がありました。誰かが、シアンの閉じられたままの左手を耳に当てると、潮騒の音が聞こえてきます。それはおかあさんのお腹の中で聞いていた音で、聞いているうちに自分の生まれる前のおかあさんや周りの人の声まで聞こえてくるのでした。ある日シアンは海を隔てた「壁の国」からやってきた旅の一座に誘拐されてしまいます。フジ先生と「ちいさなやね」でおかあさん役のリネンさんが、ねこのカモメを連れてシアンを救出しに「壁の国」に向かうところから物語は急転します。シアンの左手には出生にまつわる重大な事件の秘密が握られていたのでした。ねこの視点から描かれているので、最初は少し読みにくいのですが、旅の一座が現れてくるあたりからぐいぐい惹き込まれていきます。本の好きな子なら、小学校の高学年から手渡せる作品です。
 
 
 
『4ミリ同盟』高楼方子/作 大野八生/絵 福音館書店 2018/3/10
4ミリ同盟 (福音館創作童話シリーズ)
高楼 方子
福音館書店
2018-03-07
 
 この物語の世界では、人々は子どものうちは困らないのに、おとなになると〈フラココノ実〉を食べないと、どうにもこうにもやっていかれないとい体質をしているというのです。この〈フラココノ実〉は、大きな湖の中に浮かぶ〈フラココノ島〉に渡らないと手に入らないので、あちこちの港からその島へ行くルートはいくつもあるというのに、主人公のポイット氏は、いまだにその実を食べる機会が巡ってきません。切望しているにも関わらずです。そんなある日エビータという女性に声をかけられます。彼女もまだ〈フラココノ実〉を食べられていません。なんと〈フラココノ実〉を食べていない人は知らず知らずのうちに地上4ミリほど体が浮いていることを発見し、それでポイット氏が仲間だとわかったのです。同じように体が4ミリ浮いている他の2人とも知り合い、「4ミリ同盟」を作って4人一緒に〈フラココノ実〉を食べるための島にわたるのですが・・・「地に足がついてない」4人はいったいどうなったのでしょう。髙楼方子さんのなんとも不思議で味わい深いお話です。
 
 
 
【その他】
『『ちいさいおうち』『せいめいのれきし』の作者 ヴィ―ジニア・リー・バートンの世界』ギャラリーエークワッド/編 小学館 2018/3/19

昨年(2017年)6月1日から8月9日にかけてギャラリーエークワッドで行われた「ヴァージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」―時代を越えて生き続けるメッセージー」展のリーフレットを底本にして編集された図録で、2018年3月17日から5月7日まで銀座・教文館ウェンライトホールで開催中の「「ちいさいおうち」のばーじにあ・りー・ばーとん」展に併せて、発売されました。ヴァージニア・リー・バートンが遺した作品やさまざまな手仕事について、たくさんのカラー図表とともに展望できる貴重な1冊となっています。また、昨年夏にエークワッドで行われた恐竜学者真鍋真さんと生物学者福岡伸一さんの対談の模様も収録されています。(教文館で開催中の「ばーじにあ・りー・ばーとん」展の案内は→こちら 5/7まで)

 

『過去六年間を顧みて かこさとし小学校卒業のときの絵日記』かこさとし/著 偕成社 2018/3

過去六年間を顧みて かこさとし 小学校卒業のときの絵日記
かこ さとし
偕成社
2018-03-14

91歳のかこさとしさんが、小学卒業時に小学1年生からの6年間を思い出して綴った文集が1冊の本になりました。1926年(大正15年)生まれのかこさんですから、この文集が書かれたのは1938年(昭和13年)です。奇跡的にその当時書いていたものが戦災を免れて残っていたというのは驚きです。また当時の様子が文章と絵で克明に描かれていることに、かこさとしさんの後年の功績を彷彿とさせるものがあります。当時は日中戦争が始まり、戦時体制が強化された時代です。「二・二六事件」や「志那事変」のことが子どもの視点で書かれているのも興味深いです。6年生の時のクラスメートの名前とあだ名、そして相撲人気だったという時代を反映して全員に四股名がついているところなども、とても面白く、時代の記録として大変貴重な資料となるでしょう。かこさとしさんの作品の原点をここに見る思いです。(かこさとし公式webサイト→こちら

(作成K・J)

おすすめ幼年童話12『ちびっこ大せんしゅ』シド・ホフ


 
 
連載12回めは『ちびっこ大せんしゅ』(シド・ホフ/文と絵 光吉夏弥/訳 大日本図書 2010)です。
 

 リトルリーグでも1番小さいハロルドは、試合にも出られず、いつもベンチを温めているだけでした。そんなハロルドにも、シーズン最後の試合でチャンスが訪れます。ピンチヒッターとしてバッターボックスに立ちました。ハロルドは目をつぶって力いっぱいバットをふると、なんと奇跡のホームラン! 

 チームは見事に勝利し、今までからかっていたチーム・メートも、この瞬間にハロルドと共に喜びを分かち合います。そして彼の努力は報われ、バットを振った勇気に感動してしまいます。最後に、試合の前日自宅に来て励ましてくれたコーチのロンバルトさんが、名言を残します。それは最高の誉め言葉で、読んでいる私たちに喜びと自信を与えてくれます。

 みんなで協力すれば喜びを分かち合うことができ、日々一生懸命練習すればハロルドのようにチャンスを掴むことが出来るよ、とストレートに伝えているのがこの物語の最大の魅力です。とくに、スポーツが好きな子はハロルドに共感でき、読み終わった後はきっと爽快な気分になるでしょう。絵本から読み物の移行期の小学校低学年向けですが、イラストも多いので読み聞かせにも向いています。読みやすく、読書が苦手なお子さんにも楽しめるので、読書感想文の本としてもおすすめです。

 作者のシド.ホフは、ニューヨーク生まれのマンガ家。ロングセラーの「ダニーと恐竜」など子どもの本も50冊ほど出していて、そのユーモラスな絵で大きな人気を集めています。野球の本も「魔女とネコと野球のバット」「野球ネズミ」などがあるので、ぜひあわせて読んでみてください。

(作成 29年度児童部会部員C・S)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら

 

 

2018年4月(その2)ひとりでできるもん(幼児~小学生)


 子どもたちが成長していくということは、ひとりで出来ることが増えることです。ひとりで出来ることが増えて、自分で考えて自分で判断できるようになっていくと、いずれ親から自立していきます。学校へ通うということは、その第一歩。

日本の学校のシステムは、4月に一斉に入学して、同じようにランドセルを背負って、同じ進度で学習を進める一斉方式。海外では特に入学式も無く、子どもたちそれぞれの進度に応じて飛び級もあり、クラスの中に様々な年齢の子がいることも普通です。ひとクラスの人数も少なくて、ひとりひとりに合った教育が可能であるのは制度の違いもあるからです。今回紹介する絵本『くんちゃんのはじめてのがっこう』は、そんな海外の学校を描いていて、なんだか日本の入学とは違うなあと思うでしょう。でも、はじめての学校生活で感じる子どもたちの不安や喜びは、どこも同じなのではと思って選びました。素話は、巣立ちの練習をする「こすずめのぼうけん」です。

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【ひとりでできるもん】

導入 詩「たんぽぽ」川崎洋/作 1分
 『声で読む日本の詩歌166 おーいぽぽんた』(茨城のり子・大岡信・川崎洋・岸田衿子・谷川俊太郎/編 柚木沙弥郎/画 福音館書店 2001)より

川崎洋の「たんぽぽ」には、この詩集のタイトルにもなった「おーい ぽぽんた」という言葉が出てきます。子どもたちと、その言葉の面白さを味わいながら、一緒に声に出して読んでみるといいでしょう。こちらが最初に読んで、復唱してもらうと、子どもたちも一緒に詩を味わうことが出来ます。
 

素話「こすずめのぼうけん」エインズワース/作 石井桃子/訳 (『おはなしのろうそく13』東京子ども図書館/刊 より)7分

おはなしのろうそく 13
東京子ども図書館
2001-05-01

絵本もありますが、素話で語ってあげるとまた味わいが違います。「いいえ、ぼく、ちゅん、ちゅん、ちゅんってきり いえないんです」の繰り返しに、子どもたちも我が事のようにおはなしの中に入り込み、最後に「あなたのおかあさんじゃないの」っていう言葉でホッと表情が緩むのがわかります。

 
 

絵本『くんちゃんのはじめてのがっこう』ドロシー・マリノ/作 まさきるりこ/訳 ペンギン社 7分

くんちゃんのはじめてのがっこう
ドロシー・マリノ
ペンギン社
1982-04
 
 はじめて学校へ行った日、くんちゃんは上級生がどんどん勉強するのをみて不安に思います。先生が新入生に声をかけ、前に出てくるようにいった隙に、くんちゃんは教室から飛び出します。でも中が気になって窓から覗いていたくんちゃんは、ちゃんと先生の問いかけに答えます。先生に受け入れてもらって安心したくんちゃんの様子に、聞いている子どもたちもほっと和むことでしょう。
 
 
絵本『せんをたどってがっこうへいこう』ローラ・ユングヴィスト/作 ふしみみさを/訳 講談社 2012 3分
せんをたどって がっこうへいこう (講談社の翻訳絵本)
ローラ・ユンクヴィスト
講談社
2012-02-28
 
一筆書きの文字をたどって、学校の教室を移動していきます。学校での学びはわくわくすることがいっぱい。図書室に行ったり、理科室へ行ったり、音楽室に行ったり!子どもたちに新学期を前向きに迎えてほしいなと思います。各ページに子どもたちに問いかける文章が下部にありますが、集団の読み聞かせの際は、本文だけを読んであげればよいでしょう。
 
(作成K・J)

 

2017年12月、2018年1月の新刊から


2017年12月、2018年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

YA本の紹介まで、なかなか手が回らず心苦しいところですが、これはという本は、時間が少し経ってからでも紹介したいと思っています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

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 【絵本】

『コウテイペンギン』ヨハンナ・ジョンストン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2017/12/18 

コウテイペンギン
ヨハンナ ジョンストン
好学社
2017-12-19

 コウテイペンギンの生態を描いた科学絵本です。この本は2015年にアメリカで出版されました。この本への感想を書いたサイトには「a nature documentary」という表現がありましたが(Books In My House→こちら)、まさに長編ドキュメンタリー映画を見たような充実感を読後に感じました。水族館では人気者のペンギンですが、実際にはこれほど過酷な自然の中で生きていること、ペンギンの両親が命がけで次の世代を育む様子が、レナード・ワイスガードの美しい絵(アートワークと表現されていますが、ステンシル技法でしょうか)で描かれています。科学絵本でありながら、芸術性も高い1冊です。こみやゆうさんの翻訳も、子どもたちに語りかけてくるようです。自分で読むには小学校低学年以上ですが、動物が好きな子に読んであげるのであれば、長いおはなしですが幼児でも十分に聞くことが出来るでしょう。

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』福井さとこ/作 JULA出版局 2017/12/25

おるすばんのぼうけん―スロバキアのともだち・はなとゆろ
福井 さとこ
JULA出版局
2017-12-25

 

プラチスラヴァ芸術大学版画学科大学院で、スロバキアの版画家で絵本作家ドゥシャン・カーライの下で版画と絵本製作について学んだ福井さんの卒業制作が、JULA出版局から出版されました。福井さんがスロバキアでベビーシッターをした時の子どもたちの様子を絵本にしたものだそうです。お留守番をすることになった幼い兄妹が空想の世界に遊びに出かけます。子どもらしい想像の広がる世界に読んでもらう子どもたちにもすっと入っていけることでしょう。折込にはスロバキアのわらべうたも楽譜入りで掲載されています。海の向こうの子どもたちの遊びに想いを馳せるのも素敵な経験になると思います。 

 

『巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし』菱木晃子/文 平澤朋子/絵 BL出版 2018/1/1 

スカンジナビア半島の北部ラップランドに住んでいる先住民族サーメの人たちに伝わる昔話が、美しい絵本になりました。あとがきに菱木さんが「サーメのむかしばなしにたびたびでてくる巨人は、ときに容赦なく人々の命やくらしをおびやかす存在という意味で、自然の脅威の象徴ととらえることができます。」と記しています。厳しい自然の中で暮らしてきた人々の想いが伝わってくるようです。画家の平澤さんは厳冬のラップランドを訪れて描かれた絵も臨場感に溢れて素晴らしいです。とくに北の大地に春が訪れるシーンはそのままタブロー画として飾っておきたいほどです。

 

『だるまちゃんとかまどんちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 だるまちゃんシリーズに新年3冊が仲間入りしました。91歳の加古里子さんがこれらの作品にこめた想いを受け取りたいと思います。子どもたちには、そんなことはあまり関係ないでしょう。新しい仲間をどう受け取るかは子どもたち次第。心優しいかまどんちゃんに懐かしい想いを抱くのは親世代、あるいは祖父母世代かもしれません。子どもたちにも、温かい想いは伝わることでしょう。

『だるまちゃんとはやたちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 豊かな自然と共に生きてきた東北の人々の生活に想いを寄せる作品です。おばけ大会に集まるたくさんのおばけたちは、どこかかわいらしくてユーモラス。子どもたちは、そんなたくさんのおばけをみて、面白がることでしょう。


『だるまちゃんとキジムナちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 沖縄の子どもが登場する絵本です。加古里子さんは琉球の伝統への敬意と、戦中戦後の沖縄の人々の苦労を偲んでこの作品を描いたということです。大きなハブにつかまってしまっただるまどんを、キジムナちゃんの機転で助けます。子どもたちもドキドキしながら作品を楽しんでくれるといいなと思います。

かこさとし公式webサイトからは、この作品にかける加古里子さんの想いや、NHKワールドニュースでこの3作が取り上げられた動画を見ることができます。→かこさとし公式webサイト

 

『スプーンちゃん』小西英子/作 0.1.2えほん 福音館書店 2015/1/15

スプーンちゃん (0.1.2.えほん)
小西 英子
福音館書店
2018-01-10

「こどものとも0.1.2」の2012年6月号がハードカバーになりました。小さな子どもたちにとって、美味しい食べ物を口に運んでくれるスプーンって、とても身近な存在。そんなスプーンがプリンにメロン、いろんな美味しいものを次々にすくっていきます。自分で食べる練習を始めた小さなお友達に喜ばれそうな1冊です。


『にゃんにゃん』せなけいこ/作 福音館書店 2018/1/15 

にゃん にゃん (幼児絵本シリーズ)
せな けいこ
福音館書店
2018-01-11
 
 「こどものとも年少版」1977年11月号がハードカバーになりました。せなけいこさんの貼り絵によるねこたちの表情が、なんとも愛らしいです。最後の見開きページで母さんねこにおっぱいをもらって満足するこねこたちの表情は、そのまま読んでもらった子どもたちの笑顔につながる、そんな1冊です。

 

 【児童書】

『ハックルベリー・フィンの冒険』上・下 マーク・トウェイン/作 千葉茂樹/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2018/1/25

 

ハックルベリー・フィンの冒険(下) (岩波少年文庫)
マーク・トウェイン
岩波書店
2018-01-26
 
岩波少年文庫にこれまで『ハックルベリー・フィンの冒険』が入ってなかった?と思わず思ってしまいました。創元社の世界少年少女文学全集(吉田甲子太郎/訳)をはじめとして、岩波文庫(西田実/訳)、福音館書店の古典童話シリーズ(大塚勇三/訳)など多くの訳本が出ており、この作品のファンも多いと思います。同じくマーク・トウェインの代表作『トム・ソーヤ―の冒険』の続編ともいうべき、この作品では金に目のくらんだ実の父親が登場したり、南北戦争時代の前という時代背景からワトソン家の黒人使用人ジムとの逃走が描かれ、より社会的な問題を提起する作品になっています。ハックが、その時代的な善悪の判断ではなく、自分自身を深くみつめ葛藤し、良心による判断をしていくという彼の精神的な成長の過程が、読む者の心をつかみます。今回、翻訳を担当した千葉さんは、方言の表現にこだわらずに訳した事、「nigger」という差別用語の扱いについて他の訳者が注釈を入れて「くろんぼ」等としたところは、そのようには訳さなかったということです。この冒険の物語をわくわくしながら読む子どもたちにそうした差別用語を覚えてほしくないという訳者のたっての願いだったそうです。安心して子どもたちに手渡せますね。
 
 
 
『バレエ・シューズ』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2018/1/31
 
バレエ・シューズ
中村妙子
教文館
2018-01-01

 ノエル・ストレトフィールドが1936年に書いた『バレエ・シューズ』は、これまでも村岡花子の訳(講談社マスコット文庫 1967)で出版されたり、中村妙子の訳では1979年にすぐ書房から出版されています。中村さんご自身がお連れ合いの海外赴任でアメリカに住んでいた時に図書館で出合ったのがイギリスの作家ストレトフィールドの「劇場シリーズ」の作品だっだそうです。「劇場シリーズ」の新訳が教文館から2014年に『ふたりのエアリエル』が、昨年秋に『ふたりのスケーター』が出版され、この作品は3作目になります。赤ちゃんの時にそれぞれの事情で両親と死に別れた3人の女の子が、ひとつの家で姉妹のように育てられるおはなしです。考古学者のマシュー大おじさんは出かける先々で孤児を託されて自宅に連れて帰りますが、自分はまた研究の旅へ。世話をするのは姪のシルヴィアと留守を守る家政婦たちでした。3人の女の子たちはシルヴィアたちが自分たちを育てるのに苦労をしているのを知って、自分たちの才能でなんとか収入を得ようとします。健気な少女たちの成長の姿は、自立へと向かう思春期の子どもたちに勇気を与えてくれるはずです。

 

 『熊とにんげん』ライナー・チムニク/作・絵 上田真而子/訳 徳間書店 2018/1/31

熊とにんげん (児童書)
ライナー チムニク
徳間書店
2018-01-20
 
昨年12月に亡くなられたドイツ文学者で翻訳家の上田真而子さんが、ご自身で翻訳した作品の中で一番のお気に入りだったという『熊とにんげん』がこのほど復刊されました。おどる熊を連れて町から町へとあるく旅芸人のおじさんは、熊のことばがわかりました。おじさんと熊は、お互いに信頼し、訪れる町で人々を喜ばせていました。この作品はポーランド領生れのチムニクが24歳の時のデビュー作です。上田さんは訳者あとがきに「寓意をこめた後の作品とはちがって、ここにはやはり、ナイーヴな、純な、ういういしさがあると思います。それでいて、世の中を、人生を鋭く見透している眼があり、それはある意味で宮沢賢治の世界に重なるのではないかとも思いました。」と書いています。信仰深く誠実な生き方をした熊おじさんと、熊の、長い年月を辿る友情は、心の中に温かな風を送ってくれます。
 

 【研究書・エッセイ】

『チェコの十二カ月―おとぎの国に暮らす―』出久根育/文・絵 理論社 2017/12/1

 チェコの首都プラハに住む画家で絵本画家でもある出久根育さんの初めてのエッセイ集です。チェコの四季折々の風物や、自然の営みを、またチェコで出会った素朴でいて心優しい人々の暮らしを、静謐な筆致で丁寧に描き出しています。またところどころに散りばめられた出久根さんの描くチェコの街角や自然の風景は、そのまま新しい物語が始まりそうな予感に満ちています。

 

『大草原のローラ物語 パイオニアガール』ローラ・インガルス・ワイルダー/著 パメラ・スミス・ヒル/解説・注釈 谷口由美子/訳 大修館書店 2018/1/10

大草原のローラ物語―パイオニア・ガール[解説・注釈つき]
ローラ・インガルス・ワイルダー
大修館書店
2017-12-16

アメリカ開拓時代の少女ローラと家族の物語は、福音館書店から恩地三保子の訳でシリーズが出版され、またテレビドラマなどにもなって多くの人たちに親しまれています。また岩波少年文庫からは谷口由美子の訳で『長い冬』、『大草原の小さな町』などが出版されています。今回の作品は、ローラが作品を書く前に書き留めていた注釈付きの自伝『パイオニア・ガール』を谷口さんが訳したものです。単なる物語というのではなく、ローラが執筆した時代について、実に細かい注釈と資料、当時の様子を伝える貴重な写真などがついており、ローラ・インガルス・ワイルダーという作家について、あるいは作品についての研究書という趣になっています。昨年2017年はローラ生誕150周年でした。時代は違いますが、どんな逆境にも常に勇気と愛と希望をもって前向きに乗り越えようとしていた家族の姿から、読む者もまた勇気や愛を取り戻せるような気がします。(出版関連のイベント情報→こちら)現在、銀座教文館ナルニア国のナルニアホールにて『大草原のローラ物語パイオニア・ガール』刊行記念展実施中です。3月18日(日)まで。(ナルニア国イベントページ→こちら

(作成K・J)

おすすめ幼年童話11『火曜日のごちそうはヒキガエル』ラッセル・E.エリクソン


連載第11回は、『火曜日のごちそうはヒキガエル』(ラッセル・E.エリクソン/作 ローレンス・ディ・フィオリ/絵 佐藤涼子/訳 2008)です。

火曜日のごちそうはヒキガエル―ヒキガエルとんだ大冒険〈1〉 (児童図書館・文学の部屋)
ラッセル・E. エリクソン
評論社
2008-02-01

 

 

  この本は、「ヒキガエルとんだ大冒険」シリーズの第1巻です。仲のよいヒキガエルの兄弟、掃除が大好きなウォートンと料理が大好きなモートンのハラハラドキドキさせるお話が7巻まで続きます。

 1巻は、ある冬の夜、モートンが作ったケーキをトゥーリアおばあさんに届けたいとウォートンが思い立ったところから物語が始まります。おばあさんは谷間を越えた先に住んでいます。その谷間は深い雪におおわれ、その上たちのわるいミミズクが住んでいて、とても危険な場所です。しかし、おいしいケーキをどうしても届けたいと、ウォートンは手作りのスキーを履いて、厚着をして出かけます。

 ウォートンは途中で雪に埋もれたシロアシネズミを助けてあげますが、その直後ミミズクに捕まってしまいました。ミミズクの家に連れていかれたウォートンは、ミミズクに「おまえは来週の火曜日のごちそうだ」と告げられます。6日後のその日はミミズクの誕生日だったのです。

 運命の日まで、ウォートンはどうやって過ごしたのでしょう。ミミズクの出かけた隙に逃げることは難しそうだとわかると気を取り直してミミズクの散らかっていた部屋の掃除をし、夜はミミズに美味しいお茶をすすめ、お互いの話をするようになるのです。

 でもウォートンは食べられるのはいやです。ミミズクのいない間にセーターを解いて脱出のためのはしごを作っていました。それをミミズクにみつかってしまいます。誕生日の前の夜は、気まずくて一言も話さずに過ごしました。

 誕生日の朝、助けたシロアシネズミの仲間がウォートンを救出に来てくれました。木の中の抜け穴を通って、外に出たウォートンを待っていたのは100匹のシロアシネズミ。みんなが一斉にスキーで谷間を滑り降りていく様子はすごくワクワクします。ところがその途中でミミズクがきつねに襲われているのを見て、ウォートンは迷うことなくシロアシネズミと協力して、きつねを追い払うのでした。

 ミミズクはウォートンと友だちになろうとして、ウォートンが好きなネズの実を取りにでかけてきつねに襲われたのでした。ウォートンは感激しました。ミミズクも、これからはヒキガエルもネズミも食べないと約束してくれました。

 最初は、食べる側と食べられる側という力関係だった二匹。でも陽気なウォートンとお茶を飲みながらおしゃべりするうちに、ミミズクの気持ちは友情へとかわっていったのです。

 この作品は1982年に出版され長く愛されてきました。小学校中学年の子どもたちに出合ってほしい1冊です。

(作成 29年度児童部会部員M・R)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら

 

2017年11月、12月の新刊から(追加あり)


2017年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、9月、10月に見逃していた本もあり)

今年一年も、この新刊紹介コーナーを愛読していただきありがとうございました。ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

本来ならばYA向けの読物もたくさん紹介したいと思いながらも、ひとりで1か月で読める本が限られてしまい、購入しても積読になって、紹介が遅れることもありました。それでもこれからも少しずつ新刊の紹介を続けていきたいと思います。

いつも新しい本の情報を提供し、アドバイスしてくださる上記の書店の新刊担当の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『ハッピー・ハンター』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/9/29 

ハッピーハンター
ロジャー デュボアザン
ロクリン社
2017-09-29

 

1961年に出版されたロジャー・デュボアザンの初邦訳です。ハンターの格好にあこがれたポピンさん。でも、ハンターの格好はしても、心優しいポピンさんは動物たちを打ち殺すなんて出来ません。そんなポピンさんと森の動物たちとの心温まるお話です。

 

『ふるいせんろのかたすみで』チャールズ・キーピング/作 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2017/10/31

ふるいせんろのかたすみで
チャールズ・キーピング
ロクリン社
2017-10-31

 

1983年にらくだ出版から出ていた『たそがれえきのひとびと』の新装新訳版です。古い線路沿いに長屋が六軒、軒を連ねて建っていました。そこに住むのは貧しいお年寄りたち。彼らは毎週10ペンスずつ出し合ってサッカーくじを買っていました。ある日、そのくじが大当たり。突然舞い降りた幸運、その賞金でみんなが何をするのでしょうか。最後まで読んで、ああこんなふうにお金って使いたいなと思いました。

 

『ひょうたんめん』神沢利子/文 赤羽末吉/画 復刊ドットコム 2017/11/25

ひょうたんめん
神沢 利子
復刊ドットコム
2017-11-25

 

鹿児島県種子島に伝わる妖怪「ひょうたんめん」を神沢利子が再話し、赤羽末吉が絵を描いた昔話絵本です。1984年に偕成社から出版されていましたが、長く絶版が続いていましたが、この度復刊ドットコムから新装復刊されました。ひょうたんめんは、塩も馬も食ってしまうという恐ろしい妖怪で、村人を困らせていました。ある日、馬をひいて塩を買いに行った「おとじろうまごじろう」は帰りが遅くなり、びくびくしながら山道に差し掛かります。するとやっぱり後ろからひょうたんめんの呼び止める声が!ひょうたんめんと、おとじろうまごじろうの攻防やいかに。赤羽末吉の描くひょうたんめんの飄々とした風貌にも注目です。

 

 

『へそとりごろべえ』赤羽末吉/詩・画 童心社 2017/12/7

へそとり ごろべえ
赤羽 末吉
童心社
2017-12-07

 

かみなりのごろべえは、おへそが大好物。たぬきにねずみ、ライオン、そして鬼や大仏のおへそまで「くりんくりんの シューすっぽん」と取ってまわります。しまいには自分のへそも気になって・・・抱腹絶倒の結末におとなも子どもも一緒に楽しめると思います。この度1976年に出版されていた童心社が創業60周年を記念して「ことばと詩のえほん」シリーズの3冊がこの度改訂新版として復刊しました。どれも40年経っていますが、今の子どもたちにとっても新鮮な面白さとして伝わると思います。

 

『あいうえどうぶつえん』小林純一/詩 和田誠/画 童心社 2017/12/7

あいうえどうぶつえん
小林 純一
童心社
2017-12-07

 

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの1冊です。見開き2ページの右側が詩(ことば)、左側が動物の絵になっています。詩は「ひるのあかちゃん けまでいって、 わぎをぬぐら ぷろんとって、 よぎのけいこで あいうえお」と、各行のはじまりがあ行~わ行で始まっていて、リズミカルで楽しい絵本です。

 

 

『かぜにもらったゆめ』佐藤さとる/詩 村上勉/画 童心社 2017/12/7

かぜにもらったゆめ
佐藤 さとる
童心社
2017-12-07

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの3作目は、今年2月に亡くなった佐藤さとるの作品です。眠りにつこうとして、布団の中で、春の夜に吹く風の音に、いたちが来たのか?ロケットが墜落したのか?雷様が落ちたのかも?と、どんどん妄想を膨らませていく男の子。「トントン」「トントントトン」「トトントントン」。短い詩の後に続く擬音が、その空想の世界をさらに広げていくようです。春先にぜひ読んであげたい1冊です。

 

【児童書】

『図書館につづく道』草谷桂子/作 いしいつとむ/挿絵 子どもの未来社 2017/12/18

図書館につづく道
草谷佳子/著
子どもの未来社
2017-12-22

 

山あいの図書館に集まってくる子どもから大人までの10人の、図書館に行き着くまでの物語が、やがてひとつの物語へと編まれていきます。作者の草谷さんは、ご自身でも家庭文庫を主宰し、静岡図書館友の会で活躍されている方だそうです。図書館の思わぬ魅力や、地域での役割が見えてくる、まさに図書館で働く人におすすめしたい1冊です。

 

【研究書】

『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子/著 文春文庫 文藝春秋 2017/10/10

 

1987年に日本エディタースクールから刊行されていた松岡享子さんの『えほんのせかい こどものせかい』が、文春文庫になりました。内容は、単行本のそのままですが、巻頭に東京子ども図書館での松岡さんの語りの様子や、館内の様子などを映し出した美しいカラー写真のページが加わりました。121pからの「グループの子どもたちに 絵本を読み聞かせるために」(~144p)は、図書館や学校の朝読の時間など、集団に向けて絵本を読んであげる場合の選書や準備について、初心者向けにわかりやすく書かれています。文庫版になった上に、フォントは単行本の時よりも大きくて読みやすいので、おはなし会に関わる人々の座右の書になると思います。

 

『紙芝居百科』紙芝居文化の会/企画・制作 童心社 2017/11/20

紙芝居百科 (単行本図書)
童心社
2017-11-20
 
日本独自の文化である「紙芝居」の魅力をもっと多くの人に伝えたい、海外の人へも伝えたいと研究と活動を続けてきた「紙芝居文化の会」が紙芝居に関する情報をまとめました。紙芝居の魅力や演じ方や、絵本との違いについてわかりやすくまとめられています。「紙芝居の選び方」として、おすすめの紙芝居が分野別に分類されてリストになっていますので、おはなし会で紙芝居を演じてみようとする時の助けになります。
 
 
『保育に活かす おはなしテクニック~3分で語れるオリジナル35話つき~』こがようこ/著 小学館 2017/12/20
保育に活かす おはなしテクニック: ~3分で語れるオリジナル35話つき~ (教育単行本)
こが ようこ
小学館
2017-12-15
 
今年度、児童部会では「お話(素話)を覚えて語ることを目標にして、「おはなし」とは何なのか、「おはなし」を聞く子どもたちの反応はどうなのか、について研究してきました。この本は保育の現場で長い間、子どもたちにおはなしを届けて来た作者が、幼い子どもたちにおはなしを語る意味をわかりやすく伝えてくれます。またオリジナルの短いおはなしは、今の子どもたちにとってもわかりやすく楽しい展開になっています。幼い子どもたちへの語りについて試行錯誤している方は、ぜひこちらも参考にしてみるとよいでしょう。
 

 

(作成K・J)

おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター


連載第9回は、『ごきげんいかが がちょうおくさん』(ミリアム・クラーク・ポター/作 松岡享子/訳 こうもとさちこ/絵 福音館書店 2004)です。


ごきげんいかが がちょうおくさん (世界傑作童話シリーズ)

ミリアム・クラーク ポター
福音館書店
2004-06-30

どうぶつ村に住むがちょうおくさんは、とてもそそっかしく失敗ばかりしています。

どんな失敗かというと、たとえば自転車旅行の計画をたてた時も、はいていくスラックスばかり心配して、肝心の自転車の手配を忘れたのを出発の瞬間に気づいてしまうとか、朝に玉ねぎの種をまいたら、昼には芽が出ないと騒いで、種の目を覚まさせようと畑に向かって鐘を鳴らして大騒ぎをしてしまったり。そんなドタバタやっているがちょうおくさんと、あきれながらも仲良く付き合っているぶたさん、りすおくさんなどとのやり取りが、ユーモラスです。どうぶつ村の住人はだれもが個性的で、とても人間臭いのです。

たとえば、ふくろうの老婦人は賢いけれど少し遊び心が足りません。屋根の上で食事をしているがちょうおくさんから一緒に食べようと誘われる場面があります。彼女は屋根の上でものを食べる必要があるのかと問いただし、十分な理由がないなら登らないと言います。

利発なりすおくさんも、がちょうおくさんの思いつきを聞かされたときなどは、内心では何か失敗するはずと思います。それでも口には出しません。そしてがちょうおくさんの行動に冷静なツッコミをしたりします。こんなやりとりは私たちの普段の人間関係を思い起こしてニヤリとしてしまいます。おとなが読んでも、とても面白い作品です。

短い6つの物語で構成されていて小学校の低学年から読むことができます。こうもとさちこさんの描く挿絵もやわらかく朗らかで、ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。

6つめの物語「クリスマスまであけないで」は、がちょうおくさんが村のみんなのためにクリスマスを用意するお話です。ここでもがちょうおくさんはやらかしてくれますよ。そんながちょうおくさんを囲んで村中のみんなが楽しそうにクリスマスをお祝いしているシーンが、最後の見開きページに描かれています。冬休みの読書におすすめしてもいいですね。

続編に『おっとあぶない がちょうおくさん』(2004)があります。

(作成 29年度児童部会部員M・Y)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら

1月のおはなし会☆おすすめ本リスト(更新あり)


11月も半ばに入ると、とたんに忘年会の話題が上るようになり、今年もあとわずかであることを自覚させられます。

1月のおはなし会や、展示特集などで使えるおすすめ本のリストは、新刊本はもちろんのこと、今まで見落としていた絵本や、2018年の干支であるいぬの絵本なども加えて更新しました。i-inu136

ぜひ業務に役立ててください。

1月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2017)(2017/11/28更新)

おすすめ幼年童話8『宇宙からきたかんづめ』佐藤さとる


連載第8回は『宇宙からきたかんづめ』(佐藤さとる/作 岡本順/絵 ゴブリン書房 2011)です。

宇宙からきたかんづめ
佐藤 さとる
ゴブリン書房
2011-11

 

 

 

物語は、ぼくがスーパーマーケットで不思議なかんづめと出会うシーンからはじまります。いちごのジャムを買ってくるようにとたのまれて行ったのに、ぼくが手にしたのは、なんと、おしゃべりをする宇宙から来たかんづめだったのです!

 お金を払って、不思議なかんづめを家に持ち帰り、缶切りのついたナイフで空けてみようとしたそのとき、「やめろ!」頭の中に声が響きました。「いったいだれなんだ」と問うと、かんづめはしばらくだまっていましたが、「宇宙のはてからきたんだ。地球がどういう星か、調べているだけだ」と答えてくれました。

そこから、遠い宇宙からきた不思議なかんづめとぼくとの生活がはじまります。

 ぼくは、「タイムマシンは、本当にできるものですか?」「宇宙のはしへいったら、どうなりますか?」など、不思議に思ったことをかんづめに聞くと、そのたびに面白い話を聞かせてくれるのです。そんなかんづめが語る話が5話、収録されています。(①タイムマシンは川に落ちた、②タツオの戸だな、③いなくなったどろぼう、④おしゃべりなカビ、⑤とんがりぼうしの高い塔)

 かんづめに聞いた話③「いなくなったどろぼう」の中に、光を当てると物が小さくなる懐中電灯が登場します。あれ?どこかで見たことがあると思ったら、ドラえもんに出てくるスモールライトそっくりです。実はこの作品が最初に出版されたのは1967年で、「ドラえもん」が小学館の学習雑誌に連載されるようになったのは1969年なので、ドラえもんより先なのです。出版されてから半世紀、おもしろいお話は、何年たっても色褪せることはありませんね。ファンタジー文学の第一人者「コロボックルシリーズ」の佐藤さとるが描く少し不思議なSFストーリーです。漢字にはふりがなもふってあり、お話の展開にスピード感があるので、小学校低学年の子どもたちから読むことができるでしょう。

 (作成29年度児童部会部員 M・N)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 

おすすめ幼年童話7『ちびねこグルのぼうけん』アン・ピートリ


連載第7回は『ちびねこグルのぼうけん』(アン・ピートリ/作 古川博已・黒沢優子/訳 大社玲子/絵 福音館書店 2003)です。

 

 

 

主人公は、灰色の毛並みで、グルルル、グルルルとのどを鳴らすことから、グルと呼ばれるようになった子ねこです。しっぽが短くて、そして気までも短い主人公のグルは、お母さんや兄弟といっしょに納屋に住んでいましたが、ある日家族のもとから離れて、ドラッグストアを経営する人間のおじさんの家にもらわれて行きます。

最初は、話し相手も遊ぶ相手もいないグルでしたが、隣の家に住む男の子ピーターや、金色のステッキをもって毎朝散歩するおじいさんのスミスさんなどネコのことばがわかる人たちと友達になり、世界が広がり始めます。

グルにとっては、毎日の出来事が冒険そのもの。短気で怒りっぽいグルが起こす事件に、子どもたちは驚いたり、または応援したりしながら、お話の中にいつしか引き込まれていることでしょう。もといた納屋に連れ戻されちゃう? やんちゃなグルが巻き起こす冒険の展開に、ハラハラドキドキしながらも読み終わった後には、幸せな安心感で胸が満たされます。

作者のアン・ピートリは、アメリカの黒人作家です。1946年に黒人母子家庭の悲劇を描いた『街路』で、ホートン・ミフリン文学賞(*)を受けました。1949年に出版されたこの作品は、子ども向けに初めて書いたお話です。物語が何より好きな姪に読んでもらいたいと書いたそうです。

絵は『おはなしのろうそく』などの挿し絵で有名な大社玲子さん。優しいタッチの挿し絵が、幼い読み手の想像力をより豊かなものにしてくれます。やさしく、読みやすい文章なので、小学校低学年の子どもたちが楽しんで読める一冊です。

学校図書館で、表紙を見せてディスプレイしていたら、小学2年生の女の子が手に取ってくれて、すぐに借りていってくれました。表紙の絵の持つ魅力の大きさを感じた瞬間でもありました。愛らしいグルと一緒に、冒険の世界を楽しんでほしいと思います。

 (* アメリカの出版社が主催する文学賞)

(作成29年度児童部会部員H・Y)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら

 

おすすめ幼年童話6『プレゼントはお・ば・け』西内ミナミ


連載第6回は『プレゼントはお・ば・け』(西内ミナミ/作 西川おさむ/絵 フレーベル館 2010 新装版)です。

プレゼントはお・ば・け
西内 ミナミ
フレーベル館
2010-08-01

 

 

タイトルを見ると「えっ。なんだ?」と気になってしまうこの本。好奇心旺盛な子は、「おばけがプレゼントなんてほんと? 見てみたい!」、怖がりな子は、「こわいよ!そんなプレゼント欲しくない。」と思うかもしれません。どちらにせよ、思わず手に取って読みたくなってしまいます。

リュウはもうすぐ7歳。ひとりっ子の弱虫な男の子です。口では、すごく勇ましいことを言いますが、サッカーのボールが飛んでくると、思わず目をつぶってしまうし、夜に1人でトイレに行くこともできません。でも、「おばけだってこわくないもん。」と強がりばかり言っています。しまいには「ぼくはへいきだよ。ねえ、おかあさん、ためしにおばけをうちにつれてきてごらん。」と言い放つのです。おかあさんはにやっと笑って、リュウの誕生日に、おばけをプレゼントに連れてくると言いました。本当は、おばけがこわくてしかたないリュウは、気が気ではありません。

誕生日当日、お母さんはリュウがこわくないと言ったオバケたちを、工夫をこらして用意しました。ひとつ目こぞうのおばけは、ぬい針といったぐあいです。お父さんも最後にとっておきのおばけをつれてきてくれますが、こちらもユーモアたっぷりです。

強がりを言ってしまう息子を、楽しく愛情豊かに優しく見守る両親の姿は読んでいて安心します。怖いものにドキドキしながらも向き合おうとするリュウに幼い読者たちは、自分を重ね一体感を感じるでしょう。大人も、読むと思わずにっこりしてしまいます。「うちの子は弱虫で心配だ」なんていうお父さんとお母さんも、このお話を読むと、こんな返し方もあったのね!と楽しくなります。

親子で一緒に読んでほしい作品ですが、文章はやさしく、文字も大きく、ページ毎に挿絵があるので1人で本を読み始めた子どもにも、ぴったりの物語です。 

作者の西内ミナミさんは、広告会社にコピーライターとして勤務後、児童文学の創作に専念され地域で子どもの読書推進運動にも関わっていらっしゃいます。絵本『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)など多くの作品が子どもたちに親しまれています。 

(作成29年度児童部会部員M・G)

9月のおはなし会プラン(その2)耳を澄まして(幼児~小学生)


 
 
9月になると、夜にきこえる虫の声がいちだんと賑やかになり、それがまた涼しい秋風が吹くころにだんだんと静かになっていきます。虫の音を耳を澄まして聞いてみて、というテーマで選んでみました。
さて、そうすると組み合わせる素話は何がいいかな?と考えて、少し長いお話ですが「世界でいちばんやかましい音」にしました。覚えて語ってほしいと思いますが、1冊の本にもなっていますので、朗読してあげてもよいかもしれません。
 
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【耳を澄まして】
 
導入 詩「さびしいよる」こおろぎしんさく 『わっしょいのはらむら』(工藤直子/作 童話屋2010)より p80 1分
わっしょい のはらむら
くどう なおこ
童話屋
2010-08-01

『のはらうた1』に初出の詩です。


「くろい くろい よるのまんなか
 つちのつめたさが
 あしにしみとおると
 なぜか はねがふるえます
   なぜか でんわを かけたくなります
 リリリリ だれか いないかい
 リリリリ そばにきておくれ
 (以下略)         」

 

絵本『だんまりこおろぎ』エリック・カール/作 くどうなおこ/訳 偕成社 1990 8分

ちいさなこおろぎは、いろんな虫に出会ってあいさつをしますが、誰からも相手にされません。でも最後に出会ったのは・・・
この絵本は「音の出る絵本」として出版されました。電池が切れたりして、図書館の絵本は鳴らなくなっているかもしれません。その場合は最後のページはこおろぎの鳴き声を、読み手が出してあげるとよいでしょう。

 
 

本の紹介  2冊で5分前後
なく虫についての2冊の絵本を紹介します。科学絵本なので、通して読むには向いていませんが、子どもたちが興味を持ちそうな箇所を抜粋して紹介してあげましょう。
『スズムシくん』木坂涼/文 廣野研一/絵 福音館書店 2013

作者の木坂涼さんはこの絵本を書いた時点で18年間スズムシを飼っているのだそうです。その経験をもとにして作られた絵本です。おじいちゃんにもらったスズムシのたまごを育てる女の子の視点で、スズムシの孵化から産卵、そして次の世代へ受け継がれていく命を描いています。

『なく虫ずかん』大野正男/文 松岡達英/絵 篠原榮太/文字 佐藤聰明/音 福音館書店 1991

みるずかん・かんじるずかんシリーズの1冊です。見開きページに虫の鳴き声が楽しい文字で書いてあり、めくると、その鳴き声の虫の姿が写実的に書かれていて、子どもたちとやりとりしながら、楽しむことができます。巻末の「虫がなくのはどうして?」には、虫の鳴き方がわかりやすく書かれているので、ぜひ紹介してあげてください。登場する虫の索引と簡単な解説もついていて、いろいろな角度から楽しめる本です。2014年のおはなし会プランでT・Sさんが取り上げた本です。

素話「世界でいちばんやかましい音」ベンジャミン・エルキン/作 『おはなしのろうそく10』 14分

おはなしのろうそく 10
東京子ども図書館
2001-06
 
14分と長いおはなしですが、冒頭のやかましい音の洪水から、ギャオギャオ王子の誕生日を世界一やかましい音で祝おうとする後半のクライマックスへ続くところは子どもたちも「おっ」という表情に変わってきて引き込まれていきます。幼稚園の年長さんから小学生が対象です。こぐま社からも、幼年童話の形で出ています。語り終わってからこちらを紹介してもよいでしょう。
 
『世界でいちばんやかましい音』ベンジャミン・エルキン/作 松岡享子/訳 太田大八/絵 こぐま社 1999
世界でいちばんやかましい音
ベンジャミン エルキン
こぐま社
1999-03-01
 
 
 
 
(作成K・J) 

訃報 おかべりかさん


昨日は日野原重明先生が105歳で亡くなられたニュースをUPしましたが、漫画家のおかべりかさんが8日の亡くなられたというニュースも昨日飛びこんできました。(→こちら

2011年に休刊になった福音館書店の月刊誌「おおきなポケット」に連載されていた『よい子への道』は、「おとなが決めたよい子の枠にはまらない」のがこどもらしいよい子なんだという、子どもたちにとっては心強いメッセージが盛り込まれていて、おとなも子どもも大笑いの1冊でした。のちに『よい子への道2』も出版されましたし、同じ「おおきなポケット」からは『とちめんぼう劇場』も出版されています。

また偕成社から出されているおばけやさんシリーズ(1~7)も子どもたちに人気でした。

それ以外にも、富安陽子さんの「ムジナ探偵局」シリーズのほか、たくさんの子どもの本に挿絵も描いていました。絵本『よるにきこえるおと』では文章をおかべさん、絵は大島妙子さんが描いていて、この絵本もまだ眠りにつきたくない子どもの心がとても可愛らしく描かれていました。

まだ66歳だったというおかべさん。亡くなられたというニュースにもっとおかべさんの本を読みたいなと思いました。心より哀悼の意を表します。

『よい子への道』おかべりか 福音館書店 1995

よい子への道 (福音館の単行本)
おかべ りか
福音館書店
1995-10-10

 

 

『よい子への道2』おかべりか 福音館書店 2003

よい子への道 2 (福音館の単行本)
おかべ りか
福音館書店
2003-10-10
 
 

 

『ムジナ探偵局』富安陽子/作 おかべりか/画 童心社 1999

ムジナ探偵局 (シリーズじーんドキドキ)
富安 陽子
童心社
1999-03
 
 
 
 
『とちめんぼう劇場』おかべりか 福音館書店 1999

とちめんぼう劇場
おかべ りか
福音館書店
1999-05

 

 

『よるにきこえるおと』おかべりか/作 大島妙子/絵 フレーベル館 1999

 

 

『おばけやさん1 これがおばけやさんのしごとです』おかべりか 偕成社 2011

これがおばけやさんのしごとです
おかべ りか
偕成社
2011-05-28


 

(作成K・J)

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