Tag Archive for 新刊

3月、4月の新刊から
2017年12月、2018年1月の新刊から
2017年11月、12月の新刊から(追加あり)
2017年8月、9月の新刊から
2017年5月、6月の新刊より(その1)*追加資料あり

3月、4月の新刊から


 2018年3月、4月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、見落としていた2月に出版された本も含まれています)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナー、茗荷谷てんしん書房など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

 

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【絵本】 

『ほうまん池のカッパ』椋鳩十/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2018/2/1

ほうまん池のカッパ
椋 鳩十
ビーエル出版
2018-01-26
 
種子島に伝わる昔話です。島一番の力持ちで、釣も腕も島一番といつも自慢するとらまつですが、ある日地面の下から伸びてきた手につかまり獲った魚を奪われてしまいます。カッパの仕業で、ほうまん池には十匹ものカッパが棲んでいるのでした。とらまつはカッパを捕まえようと待ち受けますが、カッパのほうがどうやら一枚上手のようです。さてさてこの勝負、いったいどうなることでしょう。再話は椋鳩十、絵は赤羽末吉で、1975年に銀河社から出版されて長く絶版になっていたものが、BL出版から復刊されました。

 

『大根はエライ』久住昌之/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2018/2/25

大根はエライ (たくさんのふしぎ傑作集)
久住 昌之
福音館書店
2018-01-10

月刊「たくさんのふしぎ」2003年9月号が、今年ハードカバーになりました。『孤独のグルメ』などの作品がある漫画家久住昌之氏の初の絵本作品です。大根おろしや刺身のつまとして他の食品の味を引き立てたり、おでんや煮物で一緒に煮るものによって美味しさがかわったりと、脇役でいながら無くてはならない存在の大根を、それこそ味わい尽くす1冊です。ユーモアたっぷりでいながら大根に関する知識が増す、まさに大根のような味わい深い1冊です。(銀座・教文館ナルニア国でバージニア・リー・バートン展に合せた久住氏のトークイベントに参加してきました。『せいめいのれきし』に大きな影響を受けてきたとのことでした。)

 

『おひさまでたよ』北村人/作 絵本館 2018/3

おひさまでたよ
北村 人
絵本館
2018-03-15

暖かい色のクレヨンの線で描いた小さい子向けの可愛らしい判型の絵本。「ぽかぽか ぽかぽか いいきもち」、「ぽかっぽかっ ふあーあ いいきもち」、ページをめくると動物たちがおひさまの温かい陽射しの中でのーんびりしています。のーんびりすること、これが出来そうでいて、なかなか出来ないからこそ、そんな時間を大事にしたいなと思います。

 

『黄金りゅうと天女』代田昇/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2018/3/20

黄金りゅうと天女
代田 昇
ビーエル出版
2018-03-15

沖縄慶良間諸島に伝わる昔話です。1974年に銀河社から出版されていましたが、この度BL出版から復刊されました。昔、沖縄の武士と百姓の娘が身分違いの恋に落ち、天女のお告げの通りに慶留間島に渡ります。そこで生まれた可愛(かな)という娘は、賢く育ちます。しかし七才になった朝、可愛は「天にいかねばならない」と言ってオタキ山へ登っていき、阿嘉島オタフキ山にいた黄金の竜の背に乗って天に昇って行ってしまったのです。人々が可愛のことを話題にしなくなった頃、島へ大和民族の海賊が襲ってきました。村々は略奪されますが、そこに黄金の竜が現れるのです。沖縄の昔話も大切に語り継いでいきたいですね。

 

『さとやまさん』工藤直子/文 今森光彦/写真 アリス館 2018/4/5

さとやまさん
工藤 直子
アリス館
2018-03-23

写真家今森光彦さんは滋賀県大津市の里山で暮し、四季折々の自然の変化を観察し、そこに集う蝶を始めとする虫たちとの生活を大切にしてこられました。そうした里山の動植物や生活はこれまでも写真絵本やNHKの番組「オーレリアンの庭-今森光彦 四季を楽しむ里山暮らし」で紹介されてきました。この度は里山で撮影された夥しい数の写真の中から、厳選された春夏秋冬の表情が切り取られ、それに工藤直子さんが詩をつけました。またその詩に新沢としひこさんが曲をつけて、出版記念トークイベントで披露されました。人々の暮らしを豊かに彩る里山が、過疎化によって各地で放置されているというニュースも聞きます。里山の存在価値が見直されてほしいと願います。

 

『ぐるぐるちゃん かくれんぼ』長江青/文・絵 菊地敦己/ブックデザイン 福音館書店 2018/4/5

ぐるぐるちゃん かくれんぼ (福音館あかちゃんの絵本)
長江 青
福音館書店
2018-04-04
 
福音館書店のあかちゃんの絵本で、こりすのぐるぐるちゃんが活躍する『ぐるぐるちゃん』、『ぐるぐるちゃんとふわふわちゃん』に続く3冊目です。ぐるぐるちゃんはある日おとうさんといっしょにさんぽに出かけ、かくれんぼをします。ぐるぐるちゃんがあまりに上手にかくれたので、おとうさんはみつけられません。さてさて、どうなるかしら。小さな子どもの心に寄り添う可愛らしい絵本です。
 
 
『パンダのあかちゃん おっとっと』まつもとさとみ/作 うしろよしあき/文 わたなべさとこ/絵 KADOKAWA 2018/4/26
 
パンダのあかちゃん おっとっと
まつもと さとみ
KADOKAWA
2018-04-26
 
あかちゃんと絵本について研究をされたいる後路好章さんが文章を書き、2015年にボローニャ国際絵本原画展で入選した渡邊智子さんが絵を描いたパンダのあかちゃんが愛らしい絵本です。パンダの絵本は、シャンシャン効果もあって、たくさん出ていますが、小さな子どもたちが喜ぶ耳心地のよさがあり、この作品を手に取ってみました。
 
 

『村じゅうみんなで』ヒラリー・ロダム・クリントン/文 マーラ・フレイジー/絵 落合恵子/訳 徳間書店 2018/4/30 

村じゅう みんなで (児童書)
ヒラリー・ロダム・クリントン
徳間書店
2018-04-25
 
3年前のアメリカ大統領選でトランプ大統領と競ったヒラリーさんが文章を書いた絵本です。「子どもを育てるには村中みんなの力が必要だ」というアフリカのことわざを、ヒラリーさんは信念としてきました。この絵本では、子どもが望む「こんな公園があったらいいな」を、おとなもこどもも、自分の出来ることを分担し合って、一緒に作り上げていきます。おとなは子どもの持っている良さを信じ、また家族という狭い枠だけでなく社会とのかかわりの中で育てていくことの大切さを、ヒラリーさん自身が子育ての中で、また政治活動の中で感じてきたといいます。マーラ・フレイジーの描く絵も、あちこちから子どもやおとなたちの声が聞こえそうなほど生き生きとしています。

 

『花ばあば』クォン・ユンドク/絵・文 桑畑優香/訳 ころから 2018/4/29

花ばぁば
クォン・ユンドク
ころから株式会社
2018-05-02
 
当初、童心社から10冊出ている日中韓平和絵本として出版される予定だった絵本です。日中韓平和絵本は戦争を体験した絵本作家浜田桂子さん、和歌山静子さん、田島征三さんたちが韓国、中国の絵本作家との交流を通して、次の世代へ平和な時代を手渡したいと、歴史と向き合い、日中韓双方の国で出版することを前提に、参加した絵本作家が作成しました。ところがクォン・ユンドクさんの描く日本軍慰安婦をテーマにした絵本だけは、このシリーズから出すことが出来ませんでした。韓国では出版されて版を重ねているこの美しい絵本を、なんとかして日本でも出版したいと、田島征三さんがクラウドファンディングで呼びかけ、多くの人の支援を受けて、この度新興の小さな出版社から出版されました。
 昨年は#MeToo運動が世界的に広がりをみせ、また世界各地でイスラム過激派による女子学生襲撃事件も繰り返されており、若い女性には関心のあるテーマです。日本人としてデリケートな問題を含んでいますが、この問題を正面から直視することは大切です。近年、ナチスドイツによるホロコーストをテーマに扱った児童書がたくさん出ています。それはドイツが第二次世界大戦後に自分たちの犯した過ちをきちんと受け止め総括しているからともいえます。一方で日本ではこの問題を無かったかのように扱う勢力があって、過去の清算が中途半端に終わっています。ユンドクさんの来日に合わせた講演会に参加してきました。日本を責めるものではなく客観的な事実に基づいて文章が練られ、戦争というものの愚かさを伝えています。絵は柔らかくとても美しい絵本です。YA世代にぜひ手渡していきたい1冊と考えています。
 
 
 
【児童書】

『石井桃子 子どもたちに本を読む喜びを(伝記を読もう)』竹内美紀/文 立花まこと/絵 あかね書房 2018/4/5
石井桃子: 子どもたちに本を読む喜びを (伝記を読もう)
竹内 美紀
あかね書房
2018-04-25
 
子どもの本の翻訳家として、作家として、戦後日本の児童書黄金時代を支えてこられた石井桃子さんについて描かれた伝記が出ました。作者は博士論文を『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか:「声を訳す」文体の秘密』(ミネルヴァ書房 2014)としてまとめ出版された竹内美紀さんです。前作は研究者の立場から書いた専門書ですが、この作品は子どもにわかりやすく石井桃子さんの生い立ちや遺した功績を伝えてくれています。あかね書房の「伝記を読もう」のシリーズは第1期で10冊第2期はこの本を含めて5冊出ています。

 
『四人のヤッコ』西内ミナミ/作 はたこうしろう/絵 すずき出版 2018/4/20

四人のヤッコ (おはなしのくに)
西内 ミナミ
鈴木出版
2018-04-16
 
 ヤッコは一人っ子です。ピアノの練習や学校の宿題で忙しい日々に、自分にそっくりな子がいればいいのになあと思います。ところがその願いがある日叶ってしまいます。ピアノを上手に弾くヤッコ、勉強をどんどん進めてくれるヤッコ、友達と楽しく遊ぶヤッコとほんとうのヤッコの四人になってしまったのです。最初は喜んだのもつかの間、ヤッコはなんだか浮かない顔です。『ぐるんぱのようちえん』などの作品がある西内ミナミさんは1979年に『四人のヤッコと半分のアッコ』(絵童話 山口みねやす/絵)を日本教文社から出しています。この度、はたこうしろうさんの絵でまったく新しい版として出ました。子どもたちにとっても身近なテーマで、楽しんで読めることでしょう。
 
 
 
【その他】
 
『子どもの人権をまもるために』木村草太/編 晶文社 2018/2/10
子どもの人権をまもるために (犀の教室)
木村草太
晶文社
2018-02-08
 
私たちが本を手渡そうとしている子どもたちの権利はどのように扱われているのか、第1部家庭、第2部学校、第3部法律・制度とわけて、今子どもたちが置かれている状況を伝えてくれている1冊ですこの本を読むと、現代の子どもたちを取り巻く状況は虐待や貧困、保育の不足など、報道等で知る以上に厳しい現実があることも見えてくる。こうした事実に目を向けることは、図書館の児童サービスをどのように地域の子どもたちに届けられるかを検討する上でも大切だと思います。ぜひ通読しておくことをお薦めします。

 
『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』金原瑞人、ひこ・田中/監修 西村書店 2018/4/18

13歳からの絵本ガイド YAのための100冊
金原 瑞人
西村書店
2018-04-18
 
絵本は文章と絵が互いに引き立て合って、独自の世界を表現したものです。芸術性の高い作品や、人生の深い機微に鋭く切り込んだ優れた作品も多く出ています。ところが絵本は幼い子どものためのものという先入観が強いせいか、小学生高学年や中高生にこそ読んでほしいという作品がなかなかその世代に手に取られてないということがありました。この絵本ガイドは、十代の子どもたちに手にしてほしい絵本の情報をぎゅっとひとまとめにしています。ここにある絵本は、YAコーナーで展示してみるとよいと思います。
 
(作成K・J)

2017年12月、2018年1月の新刊から


2017年12月、2018年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

YA本の紹介まで、なかなか手が回らず心苦しいところですが、これはという本は、時間が少し経ってからでも紹介したいと思っています。


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 【絵本】

『コウテイペンギン』ヨハンナ・ジョンストン/作 レナード・ワイスガード/絵 こみやゆう/訳 好学社 2017/12/18 

コウテイペンギン
ヨハンナ ジョンストン
好学社
2017-12-19

 コウテイペンギンの生態を描いた科学絵本です。この本は2015年にアメリカで出版されました。この本への感想を書いたサイトには「a nature documentary」という表現がありましたが(Books In My House→こちら)、まさに長編ドキュメンタリー映画を見たような充実感を読後に感じました。水族館では人気者のペンギンですが、実際にはこれほど過酷な自然の中で生きていること、ペンギンの両親が命がけで次の世代を育む様子が、レナード・ワイスガードの美しい絵(アートワークと表現されていますが、ステンシル技法でしょうか)で描かれています。科学絵本でありながら、芸術性も高い1冊です。こみやゆうさんの翻訳も、子どもたちに語りかけてくるようです。自分で読むには小学校低学年以上ですが、動物が好きな子に読んであげるのであれば、長いおはなしですが幼児でも十分に聞くことが出来るでしょう。

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』福井さとこ/作 JULA出版局 2017/12/25

おるすばんのぼうけん―スロバキアのともだち・はなとゆろ
福井 さとこ
JULA出版局
2017-12-25

 

プラチスラヴァ芸術大学版画学科大学院で、スロバキアの版画家で絵本作家ドゥシャン・カーライの下で版画と絵本製作について学んだ福井さんの卒業制作が、JULA出版局から出版されました。福井さんがスロバキアでベビーシッターをした時の子どもたちの様子を絵本にしたものだそうです。お留守番をすることになった幼い兄妹が空想の世界に遊びに出かけます。子どもらしい想像の広がる世界に読んでもらう子どもたちにもすっと入っていけることでしょう。折込にはスロバキアのわらべうたも楽譜入りで掲載されています。海の向こうの子どもたちの遊びに想いを馳せるのも素敵な経験になると思います。 

 

『巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし』菱木晃子/文 平澤朋子/絵 BL出版 2018/1/1 

スカンジナビア半島の北部ラップランドに住んでいる先住民族サーメの人たちに伝わる昔話が、美しい絵本になりました。あとがきに菱木さんが「サーメのむかしばなしにたびたびでてくる巨人は、ときに容赦なく人々の命やくらしをおびやかす存在という意味で、自然の脅威の象徴ととらえることができます。」と記しています。厳しい自然の中で暮らしてきた人々の想いが伝わってくるようです。画家の平澤さんは厳冬のラップランドを訪れて描かれた絵も臨場感に溢れて素晴らしいです。とくに北の大地に春が訪れるシーンはそのままタブロー画として飾っておきたいほどです。

 

『だるまちゃんとかまどんちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 だるまちゃんシリーズに新年3冊が仲間入りしました。91歳の加古里子さんがこれらの作品にこめた想いを受け取りたいと思います。子どもたちには、そんなことはあまり関係ないでしょう。新しい仲間をどう受け取るかは子どもたち次第。心優しいかまどんちゃんに懐かしい想いを抱くのは親世代、あるいは祖父母世代かもしれません。子どもたちにも、温かい想いは伝わることでしょう。

『だるまちゃんとはやたちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 豊かな自然と共に生きてきた東北の人々の生活に想いを寄せる作品です。おばけ大会に集まるたくさんのおばけたちは、どこかかわいらしくてユーモラス。子どもたちは、そんなたくさんのおばけをみて、面白がることでしょう。


『だるまちゃんとキジムナちゃん』加古里子/作 福音館書店 2018/1/15

 沖縄の子どもが登場する絵本です。加古里子さんは琉球の伝統への敬意と、戦中戦後の沖縄の人々の苦労を偲んでこの作品を描いたということです。大きなハブにつかまってしまっただるまどんを、キジムナちゃんの機転で助けます。子どもたちもドキドキしながら作品を楽しんでくれるといいなと思います。

かこさとし公式webサイトからは、この作品にかける加古里子さんの想いや、NHKワールドニュースでこの3作が取り上げられた動画を見ることができます。→かこさとし公式webサイト

 

『スプーンちゃん』小西英子/作 0.1.2えほん 福音館書店 2015/1/15

スプーンちゃん (0.1.2.えほん)
小西 英子
福音館書店
2018-01-10

「こどものとも0.1.2」の2012年6月号がハードカバーになりました。小さな子どもたちにとって、美味しい食べ物を口に運んでくれるスプーンって、とても身近な存在。そんなスプーンがプリンにメロン、いろんな美味しいものを次々にすくっていきます。自分で食べる練習を始めた小さなお友達に喜ばれそうな1冊です。


『にゃんにゃん』せなけいこ/作 福音館書店 2018/1/15 

にゃん にゃん (幼児絵本シリーズ)
せな けいこ
福音館書店
2018-01-11
 
 「こどものとも年少版」1977年11月号がハードカバーになりました。せなけいこさんの貼り絵によるねこたちの表情が、なんとも愛らしいです。最後の見開きページで母さんねこにおっぱいをもらって満足するこねこたちの表情は、そのまま読んでもらった子どもたちの笑顔につながる、そんな1冊です。

 

 【児童書】

『ハックルベリー・フィンの冒険』上・下 マーク・トウェイン/作 千葉茂樹/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2018/1/25

 

ハックルベリー・フィンの冒険(下) (岩波少年文庫)
マーク・トウェイン
岩波書店
2018-01-26
 
岩波少年文庫にこれまで『ハックルベリー・フィンの冒険』が入ってなかった?と思わず思ってしまいました。創元社の世界少年少女文学全集(吉田甲子太郎/訳)をはじめとして、岩波文庫(西田実/訳)、福音館書店の古典童話シリーズ(大塚勇三/訳)など多くの訳本が出ており、この作品のファンも多いと思います。同じくマーク・トウェインの代表作『トム・ソーヤ―の冒険』の続編ともいうべき、この作品では金に目のくらんだ実の父親が登場したり、南北戦争時代の前という時代背景からワトソン家の黒人使用人ジムとの逃走が描かれ、より社会的な問題を提起する作品になっています。ハックが、その時代的な善悪の判断ではなく、自分自身を深くみつめ葛藤し、良心による判断をしていくという彼の精神的な成長の過程が、読む者の心をつかみます。今回、翻訳を担当した千葉さんは、方言の表現にこだわらずに訳した事、「nigger」という差別用語の扱いについて他の訳者が注釈を入れて「くろんぼ」等としたところは、そのようには訳さなかったということです。この冒険の物語をわくわくしながら読む子どもたちにそうした差別用語を覚えてほしくないという訳者のたっての願いだったそうです。安心して子どもたちに手渡せますね。
 
 
 
『バレエ・シューズ』ノエル・ストレトフィールド/著 中村妙子/訳 教文館 2018/1/31
 
バレエ・シューズ
中村妙子
教文館
2018-01-01

 ノエル・ストレトフィールドが1936年に書いた『バレエ・シューズ』は、これまでも村岡花子の訳(講談社マスコット文庫 1967)で出版されたり、中村妙子の訳では1979年にすぐ書房から出版されています。中村さんご自身がお連れ合いの海外赴任でアメリカに住んでいた時に図書館で出合ったのがイギリスの作家ストレトフィールドの「劇場シリーズ」の作品だっだそうです。「劇場シリーズ」の新訳が教文館から2014年に『ふたりのエアリエル』が、昨年秋に『ふたりのスケーター』が出版され、この作品は3作目になります。赤ちゃんの時にそれぞれの事情で両親と死に別れた3人の女の子が、ひとつの家で姉妹のように育てられるおはなしです。考古学者のマシュー大おじさんは出かける先々で孤児を託されて自宅に連れて帰りますが、自分はまた研究の旅へ。世話をするのは姪のシルヴィアと留守を守る家政婦たちでした。3人の女の子たちはシルヴィアたちが自分たちを育てるのに苦労をしているのを知って、自分たちの才能でなんとか収入を得ようとします。健気な少女たちの成長の姿は、自立へと向かう思春期の子どもたちに勇気を与えてくれるはずです。

 

 『熊とにんげん』ライナー・チムニク/作・絵 上田真而子/訳 徳間書店 2018/1/31

熊とにんげん (児童書)
ライナー チムニク
徳間書店
2018-01-20
 
昨年12月に亡くなられたドイツ文学者で翻訳家の上田真而子さんが、ご自身で翻訳した作品の中で一番のお気に入りだったという『熊とにんげん』がこのほど復刊されました。おどる熊を連れて町から町へとあるく旅芸人のおじさんは、熊のことばがわかりました。おじさんと熊は、お互いに信頼し、訪れる町で人々を喜ばせていました。この作品はポーランド領生れのチムニクが24歳の時のデビュー作です。上田さんは訳者あとがきに「寓意をこめた後の作品とはちがって、ここにはやはり、ナイーヴな、純な、ういういしさがあると思います。それでいて、世の中を、人生を鋭く見透している眼があり、それはある意味で宮沢賢治の世界に重なるのではないかとも思いました。」と書いています。信仰深く誠実な生き方をした熊おじさんと、熊の、長い年月を辿る友情は、心の中に温かな風を送ってくれます。
 

 【研究書・エッセイ】

『チェコの十二カ月―おとぎの国に暮らす―』出久根育/文・絵 理論社 2017/12/1

 チェコの首都プラハに住む画家で絵本画家でもある出久根育さんの初めてのエッセイ集です。チェコの四季折々の風物や、自然の営みを、またチェコで出会った素朴でいて心優しい人々の暮らしを、静謐な筆致で丁寧に描き出しています。またところどころに散りばめられた出久根さんの描くチェコの街角や自然の風景は、そのまま新しい物語が始まりそうな予感に満ちています。

 

『大草原のローラ物語 パイオニアガール』ローラ・インガルス・ワイルダー/著 パメラ・スミス・ヒル/解説・注釈 谷口由美子/訳 大修館書店 2018/1/10

大草原のローラ物語―パイオニア・ガール[解説・注釈つき]
ローラ・インガルス・ワイルダー
大修館書店
2017-12-16

アメリカ開拓時代の少女ローラと家族の物語は、福音館書店から恩地三保子の訳でシリーズが出版され、またテレビドラマなどにもなって多くの人たちに親しまれています。また岩波少年文庫からは谷口由美子の訳で『長い冬』、『大草原の小さな町』などが出版されています。今回の作品は、ローラが作品を書く前に書き留めていた注釈付きの自伝『パイオニア・ガール』を谷口さんが訳したものです。単なる物語というのではなく、ローラが執筆した時代について、実に細かい注釈と資料、当時の様子を伝える貴重な写真などがついており、ローラ・インガルス・ワイルダーという作家について、あるいは作品についての研究書という趣になっています。昨年2017年はローラ生誕150周年でした。時代は違いますが、どんな逆境にも常に勇気と愛と希望をもって前向きに乗り越えようとしていた家族の姿から、読む者もまた勇気や愛を取り戻せるような気がします。(出版関連のイベント情報→こちら)現在、銀座教文館ナルニア国のナルニアホールにて『大草原のローラ物語パイオニア・ガール』刊行記念展実施中です。3月18日(日)まで。(ナルニア国イベントページ→こちら

(作成K・J)

2017年11月、12月の新刊から(追加あり)


2017年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部、9月、10月に見逃していた本もあり)

今年一年も、この新刊紹介コーナーを愛読していただきありがとうございました。ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

本来ならばYA向けの読物もたくさん紹介したいと思いながらも、ひとりで1か月で読める本が限られてしまい、購入しても積読になって、紹介が遅れることもありました。それでもこれからも少しずつ新刊の紹介を続けていきたいと思います。

いつも新しい本の情報を提供し、アドバイスしてくださる上記の書店の新刊担当の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『ハッピー・ハンター』ロジャー・デュボアザン/作 安藤紀子/訳 ロクリン社 2017/9/29 

ハッピーハンター
ロジャー デュボアザン
ロクリン社
2017-09-29

 

1961年に出版されたロジャー・デュボアザンの初邦訳です。ハンターの格好にあこがれたポピンさん。でも、ハンターの格好はしても、心優しいポピンさんは動物たちを打ち殺すなんて出来ません。そんなポピンさんと森の動物たちとの心温まるお話です。

 

『ふるいせんろのかたすみで』チャールズ・キーピング/作 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2017/10/31

ふるいせんろのかたすみで
チャールズ・キーピング
ロクリン社
2017-10-31

 

1983年にらくだ出版から出ていた『たそがれえきのひとびと』の新装新訳版です。古い線路沿いに長屋が六軒、軒を連ねて建っていました。そこに住むのは貧しいお年寄りたち。彼らは毎週10ペンスずつ出し合ってサッカーくじを買っていました。ある日、そのくじが大当たり。突然舞い降りた幸運、その賞金でみんなが何をするのでしょうか。最後まで読んで、ああこんなふうにお金って使いたいなと思いました。

 

『ひょうたんめん』神沢利子/文 赤羽末吉/画 復刊ドットコム 2017/11/25

ひょうたんめん
神沢 利子
復刊ドットコム
2017-11-25

 

鹿児島県種子島に伝わる妖怪「ひょうたんめん」を神沢利子が再話し、赤羽末吉が絵を描いた昔話絵本です。1984年に偕成社から出版されていましたが、長く絶版が続いていましたが、この度復刊ドットコムから新装復刊されました。ひょうたんめんは、塩も馬も食ってしまうという恐ろしい妖怪で、村人を困らせていました。ある日、馬をひいて塩を買いに行った「おとじろうまごじろう」は帰りが遅くなり、びくびくしながら山道に差し掛かります。するとやっぱり後ろからひょうたんめんの呼び止める声が!ひょうたんめんと、おとじろうまごじろうの攻防やいかに。赤羽末吉の描くひょうたんめんの飄々とした風貌にも注目です。

 

 

『へそとりごろべえ』赤羽末吉/詩・画 童心社 2017/12/7

へそとり ごろべえ
赤羽 末吉
童心社
2017-12-07

 

かみなりのごろべえは、おへそが大好物。たぬきにねずみ、ライオン、そして鬼や大仏のおへそまで「くりんくりんの シューすっぽん」と取ってまわります。しまいには自分のへそも気になって・・・抱腹絶倒の結末におとなも子どもも一緒に楽しめると思います。この度1976年に出版されていた童心社が創業60周年を記念して「ことばと詩のえほん」シリーズの3冊がこの度改訂新版として復刊しました。どれも40年経っていますが、今の子どもたちにとっても新鮮な面白さとして伝わると思います。

 

『あいうえどうぶつえん』小林純一/詩 和田誠/画 童心社 2017/12/7

あいうえどうぶつえん
小林 純一
童心社
2017-12-07

 

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの1冊です。見開き2ページの右側が詩(ことば)、左側が動物の絵になっています。詩は「ひるのあかちゃん けまでいって、 わぎをぬぐら ぷろんとって、 よぎのけいこで あいうえお」と、各行のはじまりがあ行~わ行で始まっていて、リズミカルで楽しい絵本です。

 

 

『かぜにもらったゆめ』佐藤さとる/詩 村上勉/画 童心社 2017/12/7

かぜにもらったゆめ
佐藤 さとる
童心社
2017-12-07

童心社「ことばと詩のえほん」シリーズの3作目は、今年2月に亡くなった佐藤さとるの作品です。眠りにつこうとして、布団の中で、春の夜に吹く風の音に、いたちが来たのか?ロケットが墜落したのか?雷様が落ちたのかも?と、どんどん妄想を膨らませていく男の子。「トントン」「トントントトン」「トトントントン」。短い詩の後に続く擬音が、その空想の世界をさらに広げていくようです。春先にぜひ読んであげたい1冊です。

 

【児童書】

『図書館につづく道』草谷桂子/作 いしいつとむ/挿絵 子どもの未来社 2017/12/18

図書館につづく道
草谷佳子/著
子どもの未来社
2017-12-22

 

山あいの図書館に集まってくる子どもから大人までの10人の、図書館に行き着くまでの物語が、やがてひとつの物語へと編まれていきます。作者の草谷さんは、ご自身でも家庭文庫を主宰し、静岡図書館友の会で活躍されている方だそうです。図書館の思わぬ魅力や、地域での役割が見えてくる、まさに図書館で働く人におすすめしたい1冊です。

 

【研究書】

『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子/著 文春文庫 文藝春秋 2017/10/10

 

1987年に日本エディタースクールから刊行されていた松岡享子さんの『えほんのせかい こどものせかい』が、文春文庫になりました。内容は、単行本のそのままですが、巻頭に東京子ども図書館での松岡さんの語りの様子や、館内の様子などを映し出した美しいカラー写真のページが加わりました。121pからの「グループの子どもたちに 絵本を読み聞かせるために」(~144p)は、図書館や学校の朝読の時間など、集団に向けて絵本を読んであげる場合の選書や準備について、初心者向けにわかりやすく書かれています。文庫版になった上に、フォントは単行本の時よりも大きくて読みやすいので、おはなし会に関わる人々の座右の書になると思います。

 

『紙芝居百科』紙芝居文化の会/企画・制作 童心社 2017/11/20

紙芝居百科 (単行本図書)
童心社
2017-11-20
 
日本独自の文化である「紙芝居」の魅力をもっと多くの人に伝えたい、海外の人へも伝えたいと研究と活動を続けてきた「紙芝居文化の会」が紙芝居に関する情報をまとめました。紙芝居の魅力や演じ方や、絵本との違いについてわかりやすくまとめられています。「紙芝居の選び方」として、おすすめの紙芝居が分野別に分類されてリストになっていますので、おはなし会で紙芝居を演じてみようとする時の助けになります。
 
 
『保育に活かす おはなしテクニック~3分で語れるオリジナル35話つき~』こがようこ/著 小学館 2017/12/20
保育に活かす おはなしテクニック: ~3分で語れるオリジナル35話つき~ (教育単行本)
こが ようこ
小学館
2017-12-15
 
今年度、児童部会では「お話(素話)を覚えて語ることを目標にして、「おはなし」とは何なのか、「おはなし」を聞く子どもたちの反応はどうなのか、について研究してきました。この本は保育の現場で長い間、子どもたちにおはなしを届けて来た作者が、幼い子どもたちにおはなしを語る意味をわかりやすく伝えてくれます。またオリジナルの短いおはなしは、今の子どもたちにとってもわかりやすく楽しい展開になっています。幼い子どもたちへの語りについて試行錯誤している方は、ぜひこちらも参考にしてみるとよいでしょう。
 

 

(作成K・J)

2017年8月、9月の新刊から


2017年8月、9月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。(一部7月出版の本もあり)

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店などにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。


 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『うたのえほん 1ぽんでもにんじん』長野ヒデ子/構成・絵 のら書店 2017/7

前田利博/作詞、佐瀬寿一/作曲の童謡「いっぽんでもニンジン」が、長野ヒデ子さんの楽しい絵で絵本になりました。絵本を読みながら歌いたくなります。歌詞カードが付録で付いています。図書館で装備する時に、後ろ見返しに紛失しないように固定できるといいでしょう。

 

『マスターさんとどうぶつえん』アーノルド・ローベル/作 こみやゆう/訳 好学社 2017/8/26

マスターさんとどうぶつえん
アーノルド ローベル
好学社
2017-09-11

 岩波子どもの本どうぶつえんのピクニック(舟崎克彦/訳 岩波書店 1978)の前に描かれた絵本がこちらです。どうしてマスターさんがどうぶつえんの飼育係になったのか、『マスターさんとどうぶつえん』を読むとわかります。こんなにどうぶつたちに愛されるマスターさんは、子どもたちにも受け入れられることでしょう。2冊いっしょに展示してあげるといいですね。


『なきたろう』松野正子/作・絵 赤羽末吉/絵 復刊ドットコム 2017/8/24

なきたろう
松野 正子
復刊ドットコム
2017-08-30

 1974年に文研出版から出ていた絵本が復刊されました。松野正子さんの民話風の創作に赤羽末吉さんが絵をつけたものです。泣いて泣いて泣いて、なきたろうのその泣き声は村中に迷惑をかけてしまいます。そこで山へ修行に出かけることになるのです。なきたろうは、ある時ぐっと泣くのを我慢する出来事に出会います。それを乗り越えようと成長していく姿がとても頼もしいです。

 

『きみはライオン たのしいヨガのポーズ』ユ・テウン/作・絵 竹下文子/訳 偕成社 2017/9

きみは ライオン!
ユ・テウン
偕成社
2017-08-24

韓国出身でアメリカでイラストレーターとして活躍するユ・テウンさんの新作です。子どもたちが金色の朝陽を浴びながら、庭に集まってきました。朝のヨガの時間です。「きちんとすわって りょうてをひざに おおきくくちをあけ したをだす!」、するとそれはライオンのポーズ。ほかにもちょうちょや、いぬ、へび、かえるなど様々な動物に変身です。「みんなおはよう きょうもいいひになりますように」朝の時間に読んであげたい1冊です。

『いっぽんのせんとマヌエル』マリア・ホセ・フェラーダ/作 パトリシオ・メナ/絵 星野由美/訳 偕成社 2017/9

いっぽんのせんとマヌエル
マリア・ホセ・フェラーダ
偕成社
2017-08-29

著者のマリアさんが、線の好きな自閉症の男の子と出会ったことで生まれた絵本です。自閉症の子どもたちは、世の中のことを認識するのに、それぞれの子どもたち特有のやり方があります。マヌエルくんは線が好きで、目に見えるものから線を探して、それで身の回りのことを認識しているのです。また、この絵本にはピクトグラム(絵文字)も付いています。障害のある子どもたちに読んであげるときに、子どもたちがおはなしを理解する助けになることでしょう。9月上旬には作者が来日し、トークショーも行われました。


『こどもってね・・・・・』ベアトリーチェ・アレマーニャ/作 みやがわえりこ/訳 きじとら出版 2017/9/25

こどもってね……
ベアトリーチェ・アレマーニャ
きじとら出版
2017-09-05

いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉受賞作品です。アレマーニャはイタリア・アンデルセン賞最優秀画家賞などを受賞しており、この作品は10か国以上で翻訳されています。この絵本に登場するひとりひとりの子どもたちの表情も豊かで素敵です。子ども時代は、おとなに見守られて子どもらしく生活できる保障がどの子にも平等に与えられるようにと願います。どんな国に生まれようとも、どんな家庭に生まれようとも、その子が成長する可能性は同じように大切です。子ども時代って、いつか終わってしまうけれど、子ども時代の輝きが未来への希望へとつながるからです。そんなことを想いながら読みました。

 

【児童書】

『メリーメリーへんしんする』ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 小宮由/訳 岩波書店 2017/9/14

メリーメリー へんしんする
ジョーン・G.ロビンソン
岩波書店
2017-09-15
 
メリーメリーおとまりにでかける(2017/3刊)、メリーメリーのびっくりプレゼント(2017/6刊)に続く「メリーメリーシリーズ」全3冊が、これですべて揃いました。メリーメリーは5人兄姉の末っ子です。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちはメリーメリーのことをまだ何もできない半人前だと思っていて、時には邪魔もの扱いをします。でもメリーメリーはそんなことにはめげません。そして周りがアッというようなことをやって、逆にお兄ちゃん、お姉ちゃんたちの鼻を明かすこともたびたびなのです。そんな楽しいエピソードのつまったお話が5つ、入っています。自分で読むなら小学校中学年くらい向けですが、これは小さな子どもたちに読んであげてほしいなと思います。
 

 『アイスクリームが溶けてしまう前に 家族のハロウィーンのための連作)』 小澤健二と日米恐怖学会 福音館書店 2017/0/10

 日本でもここ10年くらいの間に若い人たちの間で浸透してきたハロウィーンですが、アメリカでは家族ぐるみで楽しむもの。10月に入ると町のあちこちにジャック・オー・ランタンのためのおおきなカボチャの市がたったり、家をおどろおどろしく飾り立てたりします。この本の作者は昔話研究者の小澤俊夫さんの息子さんで、アメリカ在住のミュージシャンオザケンです。もともとはケルト民族のお祭りが、アメリカで今のような形になっていた理由や、アメリカにいる家族がどんな風に楽しんでいるか、子どもたちにわかりやすく、面白く伝えてくれています。なぜハロウィーンなのに題名が『アイスクリームが溶けてしまう前に』となっているのも気になりますね。その意味がわかると、余計に親子で楽しむハロウィーンが魅力的にみえてきます。ぜひ多くの人に読んでほしい1冊です。こちらのサイトもぜひどうぞ→福音館書店「アイスクリームが溶けてしまう前に」特設サイト

 

 
【詩歌】

 『ポケットのはらうた』工藤直子/詩 保手浜孝/画 2017/5/5

ポケットのはらうた
くどうなおこ
童話屋
2017-05-26

 今年5月に出版されていたのに見落としていました。現在教文館ナルニア国ナルニアホールにて”のはらうた”完結記念 わーいはなまるにじゅうまる「ポケットのはらうた原画展が開催されています。(2017/9/1~10/17)『のはらうた1』が出版されて今年で33年。多くの人が子ども時代に親しんだ詩がたくさんあるでしょう。「のはらうた」シリーズの最終巻になる『ポケットのはらうた』は、これまでの作品の350篇の中から選りすぐりの26篇を保手浜さんの版画/画と共にまとめたものです。永久保存版として手元に置いておきたい1冊です。

 【研究書】 

 『ヨーロッパの昔話ーその形と本質』マックス・リュティ/著 小澤俊夫/訳 岩波文庫 岩波書店 2017/8/18

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫)
マックス・リュティ
岩波書店
2017-08-19

昔話を学術的に研究し、学問体系にしたマックス・リュティの『ヨーロッパの昔話』が岩波文庫として再版されました。これまで昔話について学ぼうとすると図書館の閉架書庫から1969年に岩崎美術社から出版された『ヨーロッパの昔話ーその形式と本質』(小澤訳)を借りて紐解くしかありませんでした。この度文庫化するにあたり翻訳者の小澤俊夫さんが、読みやすさに考慮して改行を加えたりと手を入れています。昔話について学ぶ人は、一度は読んでおくとよい本です。小澤さんはドイツ語を学ぶ中でグリム童話に魅せられメルヒェン(昔話)の研究を始められます。その研究の中で出会ったのが昔話の口承文芸論をまとめたリュティでした。出会った当時、リュティは高校の国語教師だったそうですが、その研究の功績が認められて、その後チューリヒ大学の民俗学の教授になったということも小澤さんが語っています。(→こちら 小澤俊夫昔話へのご招待ポッドキャスト=提供絵本の店あっぷっぷ)小澤さんの「昔ばなし大学」のサイトは→こちら
 

【その他】

『森のノート』酒井駒子/作 筑摩書房 2017/9/10

森のノート (単行本)
酒井 駒子
筑摩書房
2017-09-04
 
 東京と森の中にある家を行ったり来たりしているという絵本作家、酒井駒子さんの画文集です。森の中で過ごす日々で見つけた小さな発見を、それはたとえば高原に立ち込める霧だったり、森に響くキツツキの木をつつく音だったりするのですが、見開きページに400字弱の短い文章で綴り、その小文にひとつづつ子どもや小動物の絵が並べられています。その静かな、それでいて確かな森の息遣いを感じる文章と、静謐でいて温かさを感じる絵は、忙しく時間に追われている日々に差し出されるご褒美のように受け取りました。(担当編集者のことば→こちら「ほんのひきだし
 

『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』佐々木正美 福音館書店  2017/9/10

はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに (福音館の単行本)
佐々木 正美
福音館書店
2017-09-06
 
 雑誌「暮しの手帖」2010年2・3月号から2015年6・7月号に連載された児童精神科医佐々木正美さんの「母子の手帖」の原稿をあらたに編集しなおして1冊にまとめたものです。今年の6月に亡くなられた佐々木正美さんの遺作となりました。「あとがき」には「世の中のすべての子どもたちが、お母さん、お父さん、そして周囲の人々から愛され、人間関係に恵まれた人生を送れるよう、願ってやみません。」と記されています。(2017年4月吉日と日付があります)子どもたちが健全に育っていくために必要なこと、それは愛されているという実感なのだと、佐々木さんは一貫しておっしゃってきました。その一方で子育てにあたる親たちは、たくさんの情報があふれる中でさまざまなプレッシャーを感じていて、単純に我が子をそのまま受け入れて愛するということが難しくなっている現実があります。この本では、そんな親たちにも「大丈夫だよ」と救いの手を差しのべてくださっているように感じます。これから子育てをする若い人にも、子育てで苦労したと思う人にも、寄り添ってくれる1冊です。
 
(作成K・J)
 

2017年5月、6月の新刊より(その1)*追加資料あり


 2017年5月、6月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの本を紹介します。なお、6/28に2冊追加しました。(2017年4月発行の書籍も含まれています)

(その1)では絵本を、(その2)で児童書、YA向けの書籍を紹介します。

また、ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。すべての新刊本を購入して読むことはできませんが、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナーなどにある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 (なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

 『えじえじえじじえ』佐藤可士和/絵 谷川俊太郎/字 クレヨンハウス 2017/4/10

 谷川俊太郎さんが多彩な画家やアーティストとコラボして作る「あかちゃんから絵本」シリーズの13作品目です。佐藤可士和さんは谷川さんからこのシリーズの依頼があって約2年半、どのような表現にしようかと初めての絵本への取組に答えが出せなかったそうです。ところが有田焼が創業400年を迎える2016年に向けて「ARITA 400project」に関わったことで、触発され自由に色をかけて表現したのが今回の絵になっています。その絵をみながら、今度は谷川さんが「字」をつけていきます。絵も字もあかちゃんにとっては、ひとつの表現であるということで、並んでいる文字に意味はなく、谷川さんが絵からイメージした「字」が並んでいるのです。ところが、実際に保育園で読み聞かせをしてみると、この不思議な絵本に小さな子どもたちが惹きつけられていく、そんな映像もおふたりのトークイベントで見せていただきました。小さな子どもの感性を揺すぶる絵本と言えるのかもしれませんね。

 

『なにもかも おちてくる』ジーン・ジオン/文 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 まさきるりこ/訳 瑞雲舎 2017/4/15

ほら なにもかも おちてくる
ジーン ジオン
瑞雲舎
2017-04-15

 この絵本の原書『All Falling Down』(1951)は、1952年のコールデコット・オナー賞受賞作品で、2005年にあすなろ書房から同じ訳者によって『あっ、おちてくる ふってくる』というタイトルで出版されていました。ジーン・ジオンとマーガレット・ブロイ・グレアムのコンビによる絵本としては『どろんこハリー』(わたなべしげお/訳 福音館書店 1964)が良く知られていますが、実はこちらがデビュー作です。今回、別の出版社から出すにあたり、タイトルだけではなく、内容もいくつか翻訳が変更されています。たとえばあすなろ書房版で「ひとびとは、いそいでいえじにつきます」→瑞雲舎版「ひとびとは、いえにむかっていそぎます」、あ「おばあさんのけいとのたまが おちてころがります。ころころ ころころ・・・」→瑞「おばあさんのけいとのたまがころがります。まるいためが、ころころ ころころ」、あ「おとうさんがジミーをしっかりうけとめます」→瑞「おとうさんが、ジミーをしっかりうけとめました」というように変更されています。2冊を読み比べてみると、たしかに声に出して読んだ時に、耳心地よく読みやすい訳になっているなと感じました。自然の営みの中で、落ちるもの、落ちてくるものとして花びらに、噴水の水、りんごに落ち葉など身の回りのものに目を向けさせる絵本です。と、同時に英語ではすべて「Falling Down」という表現ですむものが、日本語では「おちる」「おりる」「ふる」と違うことばで表現されていることも面白いなと思いました。

 

『アームストロング 宙飛ぶネズミの大冒険』トーベン・クールマン/作 金原瑞人/訳 2017/4/15 

アームストロング: 宙飛ぶネズミの大冒険
トーベン クールマン
ブロンズ新社
2017-04-15

2015年に出版された『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』(本のこまど紹介記事は→こちら)の第2弾です。今度は、仲間のネズミたちが「月は大きなチーズだ」と思い込んでいる中、天体望遠鏡で月を観測していて地球の衛星だと気がつくネズミが主人公です。仲間に理解してもらえないでいるネズミのもとにスミソニアン博物館の老ネズミから手紙が届き会いに行きます。この老ネズミは前作のネズミだと思われます。そして月へ行くことを決意したネズミは、大学の授業を聴講して(無断で)設計図を作成し、着々と準備を進めます。ところが大きな事故を起こし、人間に追われる身に・・・そんな中、無事に月へ着陸し、また地球へ帰還します。壮大な物語は、困難な状況を克服しながら月面着陸をはじめとして宇宙開発をすすめてきた人類の歩みを彷彿とさせます。前作と合わせて読んでみると、面白さも倍増しそうです。
 

 

『だれのこどももころさせない』西郷南海子・浜田桂子/作 浜田桂子/絵 安保関連法に反対するママの会/協力 かもがわ出版 2017/4/30

だれのこどももころさせない
西郷 南海子
かもがわ出版
2017-04-25

 「子育てまっ最中のママたちが、安保関連法案反対の声をあげたと知ったとき、わたしは胸打たれるものがありました。命を生み命を日々育んでい人たちの感性が、この法案を受け入れるはすがない。赤ちゃんや幼い子たちが、ママに大きな勇気を与え背中を押してくれたのだと。」と、この絵本の画家浜田桂子さんはあとがきに記しています。この絵本が出来たきっかけは、教育学を学ぶひとりのママが、わが子のこんな言葉を聞いたことだったそうです。新聞の安保関連法案審議を伝える記事を見て、「きょうのよる、せんそうにならない?」と不安げに聞く小さな声を。日本で今実際に寝ている家の上に爆弾が落ちてくることはないにしても、その問いかけは「いつのまにか、地球の向こうの子どもたちからのSOSに聞こえて」きたというのです。この法律制定の前に実は防衛装備移転三原則が閣議決定されており、いつのまにか武器輸出が可能になっています。国内で戦争は起きなくても、日本から輸出する武器が紛争地の子どもたちの上で使われるかもしれない。そうしたことに目を向け、命は補充可能な部品ではないことを、伝えていく決意を感じる絵本です。しかしその強い決意とは裏腹に絵は柔らかい色彩で優しく包み込むように「だれのこどももころさせない」と高らかに宣言しています。

 

『きゃべつばたけのぴょこり』甲斐信枝/作 ふしぎなたねシリーズ 福音館書店 2017/5/20

 きゃべつの上で育つもんしろ蝶のさなぎが主人公になっている小さな子どものための科学絵本です。植物の絵を描くのが大好きな甲斐信枝さんの、小さな生き物への愛情を感じる絵本です。蝶のさなぎだけではなく、きゃべつ畑にいる様々な昆虫など(たとえばてんとう虫の幼虫や成虫、カメムシなども)が丁寧に描かれています。

 

 『ちいさなかえるくん』甲斐信枝/作 ふしぎなたねシリーズ 福音館書店 2017/5/20

 こちらも甲斐信枝さんが描く小さな子どものための科学絵本です。『きゃべつばたけのぴょこり』に続くお話です。さなぎから孵ったばかりのもんしろ蝶を追いかけて逃げられてしまった蛙が主人公です。蝶が飛んでいくほうへ、どんどん追いかけていきます。おおいぬのふぐりにシロツメクサ、タンポポにナズナ、れんげに母子草、ハルジオンといろいろな春の雑草の中を飛んでいくもんしろ蝶。それを追いかける蛙、最後はまたきゃべつ畑に戻ってきます。蛙の姿を追いかけながら、春の野の花を親子で思い出せるといいなと思います。

 

 『よるのおと』たむらしげる/作 偕成社 2017/6 

よるのおと
たむら しげる
偕成社
2017-06-13

 たむらしげるさんは9歳の時、国語の授業かなにかで「古池や 蛙飛びこむ 水の音」という芭蕉の俳句を初めて耳にし、同時にその池の状況が音と共に鮮明に見えたというのです。あとがきでそのことを、「鳥肌が立つようなこの不思議な感覚をどう表現すればよいのだろう?(中略)ぼくは自分がこのすばらしい宇宙に存在する不思議に気づいた。」と書いています。60年を経て、その俳句を情景化したのがこの絵本なのです。絵本で表現されている時間は、おじいちゃんを訪ねてきた男の子が家の前の池にさしかかって玄関に到達するまでのほんの1,2分です。その間の、夜の池で繰り広げられる生き物たちの営みを「音」で表現しているのです。背景に星空が広がり、蛙が飛び込んだあとの波紋が太陽系のように見えるなどは、自分が「宇宙に存在する」と感じたかつてのたむら少年の心象風景を描き出しているのかもしれません。

 

『金剛山のトラ―韓国の昔話―』クォン・ジョンセン/再話 チェン・スンガク/絵 かみやにじ/訳 福音館書店 2017/6/10

金剛山のトラ 韓国の昔話 (世界傑作絵本シリーズ)
福音館書店
2017-06-07
 
 韓国の金剛山(クムガンサン)は歌にも歌われる代表的な山で、切り立った岩の峰々が連なる険しい山と深い渓谷とが織りなす景勝地とのこと。そこに伝わる昔話です。父親を人喰いトラに殺されたと聞いた少年ユボギが、母親と一緒に厳しい修行を積みます。その修業は母親が頭の上に載せた水瓶を矢で射った後に、泥団子を矢じりにつけて放ち、先ほどの穴をふさぐということであったり、鋭い竹の切り株の上を転がってみたり、自分の体の何倍もある大岩を持ち上げたりすることでした。そしていよいよトラ退治の旅に出かけていきます。旅の途中で出会った老婆の忠告を聞いてさまざまな試練を乗り越えるのですが、とうとう自分も人喰いトラに飲み込まれてしまいます。しかしユボギはトラのお腹の中で出会った娘と共に、必死で脱出する方法を探ります。とても迫力のある絵本ですが、最後は心温まる結論に、物語に引き込まれた子どもたちもホッとすることでしょう。 

 

 『ねむれないおうさま』ベンジャミン・エルキン/原作 ザ・キャビンカンパニー/絵 小宮由/訳 瑞雲舎 2017/6/15

ねむれない おうさま
ベンジャミン・エルキン
瑞雲舎
2017-06-30

 ある国の王さまは、なかなか寝付けません。家来たちは王さまに聞こえる限りの音を消し去ろうとします。飛行機や汽車を止めるだけでなく、子どもたちから積み木やくちゃくちゃかむ音がするチョコバーまで取り上げ、川のせせらぎや鳥の鳴き声まで聞こえないようにしました。それでも眠らない王さま。もう打つ手はないと思ったところへ、歌声が聞こえてきます。すわ大変!と家来たちが駆け付けると、新しく来た乳母が優しい声で子守歌を歌っていたのでした。そして赤ちゃんの王さまは安心して眠りにつくのです。途中までなんてわがままな王さまなんだろう?と思いながら読んでいると、最後に現れる可愛らしい赤ちゃんの寝顔に思わずこちらも頬が緩みます。 

 

 『スリランカの昔話 ふしぎな銀の木』シビル・ウェッタシンハ/再話・絵 松岡享子、市川雅子/訳 福音館書店 2017/6/15 

スリランカの昔話です。あるとき、王さまが不思議な夢を見ます。地面がぱっくりと割れて美しい銀色の木が生え、銀の花が咲き、銀の実がなり、銀の雄鶏がその上にたって時を告げたというのです。その木をほんとうに見たいと願い、三人の王子を探しにやります。三人の王子はそれぞれの道を探しに出かけますが、上の二人の王子はすぐに何かの魔力で姿を変えられてしまいます。末の王子は賢者の助言をもらって大蛇を倒し、不思議な洞窟の中で王さまが見たという夢の木を探し当てます。 大蛇の三人の美しい娘を連れて王さまの元へ戻ってくるのですが・・・正直な末の王子の優しさにホッとします。『きつねのホイティ』(松岡享子/訳 福音館書店 1994)や、『かさどろぼう』(いのくまようこ/訳 徳間書店 2007)で人気のスリランカの絵本作家シビル・ウェッタシンハさんの新しい絵本です。

 

『ホウホウフクロウ』井上洋介/作 福音館書店 2017/6/15

ホウホウフクロウ (日本傑作絵本シリーズ)
井上 洋介
福音館書店
2017-06-14
 
昨年2月に亡くなられた井上洋介さんの最後の絵本です。(訃報のお知らせは→こちら)シュールでいて温かみのある絵が魅力の井上作品ですが、最後のこの作品は水墨画です。淡々とした文章と、深い夜の闇の中を飛び回るフクロウやミミズクの圧倒的な存在感は、読む者を不思議な別世界に連れていきます。井上洋介さんのこれまでの仕事とはひと味違う作品をぜひ味わってほしいと思います。
 

 

 『どうぶつたちがねむるとき』イジー・ドヴォジャーク/作 マリエ・シュトゥンプフォヴァ―/絵 木村有子/訳 偕成社 2017/6

どうぶつたちがねむるとき
イジー・ドヴォジャーク
偕成社
2017-06-13

 「チェコの最も美しい本2014年」の児童書部門で3位を受賞した絵本です。抑えた色彩と、フロッタージュという技法で表現した動物たちの眠る様子は、ため息が出るほど美しく、それでいて科学的な視点をもった説明文がつけられています。ひとつひとつ読んであげているうちに、子どもも眠りに誘われていくことでしょう。

 

『手おけのふくろう』ひらののぶあき/文 あべ弘士/絵 福音館書店 2017/6/25

手おけのふくろう (日本傑作絵本シリーズ)
ひらの のぶあき
福音館書店
2017-06-21
 
 北国のある里山のお話です。古い桜の木のうろで子育てをしていたふくろうの夫婦がいました。ところがある大雪の日に雪の重さに桜の木が倒れてしまうのです。そこでふくろうたちは、民家の軒先につるされた手おけを代わりの巣にするのですが、雪やみぞれがおけの中には吹き込み、また天敵のハクビシンに狙われたりします。そんな危機を乗り越え、ふくろうの夫婦は三羽のひなを育てるのです。このお話は、実際にあった話がもとになっているそうです。野鳥を撮り続けているカメラマンの平野伸明さんが 文章を書き、旭山動物園の飼育員だったあべ弘士さんが現地を取材しながら絵を描いています。
 
 
『エルマーとブルーベリーパイ』ジェーン・セアー/作 シーモア・フレイシュマン/絵 おびかゆうこ/訳 ほるぷ出版 2017/6/24 
 
エルマーとブルーベリーパイ (海外秀作絵本)
ジェーン・セア
ほるぷ出版
2017-06-20

 1961年にアメリカで出版された絵本が、初邦訳されました。ある家にエルマーという妖精が住んでいます。ある日、おうちの人が焼いたブルーベリーパイをエルマーは食べてみました。あまりに美味しくて夢にまで見るほど。翌日もまたブルーベリーパイを食べられるかと思ったら、家の人が全部食べてしまっていました。もう一度食べたいと思ったエルマーはどうしたと思いますか?家の人たちが気がつかないうちに家じゅうの洗い物をし、掃除をし、ベッドメイキングまでしました。でも妖精は人間には見えないのです。どうやって「もう一度ブルーベリーパイ作ってほしい」とお願いするのでしょう?読んでみてくださいね。こんな妖精ならうちにもいて欲しいなと思いました。

 

『まるぽちゃ おまわりさん』マーガレット・ワイズ・ブラウン、イーディス・サッチャー・ハード/作 アリス&マーティン・プロベンセン/絵 こみやゆう/訳 PHP研究所 2017/6/26

まるぽちゃ おまわりさん (おひざにおいで)
イーディス・サッチャー・ハード マーガレット・ワイズ・ブラウン
PHP研究所
2017-06-13
 
 翻訳者として次々に楽しい子どもの本を紹介してくださるこみやゆうさんは、お子さんをお膝の上にのせて絵本を読んであげる至福の時間をこのように表現しています。「絵本を子どもと楽しむということは、その子の心に「よろこびの種」を蒔くということです。種は、いずれ木となり、実をむすびます。その子が大きくなった時、心にたくさんの実があれば、時に他人にわけ与え、時に自らを励ますことができるでしょう。」と。そんな親子の時間のためにと、こみやゆうさんが選ぶ「おひざにおいで」シリーズの第1作目がこの絵本です。ちいさくて太ったまるぽちゃおまわりさんが交通整理に、泥棒退治に、溺れた人の救助に大活躍するお話が3つ入っています。ポップで親しみやすい絵を描いたのは『たまごってふしぎ』(こみやゆう/訳 講談社 2012)の絵本があるプロベンセン夫妻です。 

 

『あめのひ』サム・アッシャー/作・絵 吉上恭太/訳 徳間書店 2017/6/30

あめのひ (児童書)
サム アッシャー
徳間書店
2017-06-13

 朝、目が覚めると外は雨、ぼくは外で遊びたいなと思います。おじいちゃんに「雨を口で受け止めたい」「水たまりにパシャーンと飛びこんだりしたい」「ふねにのってあそびたい」と次々ねだりますが、おじいちゃんは雨が止むまで待つようにと言うのです。さて、雨が止んで玄関のドアを開けると・・・一面の海のようになっているのです。そこで舟に乗って出かけるおじいちゃんとぼく。やりたかったことを全部やって、ぼくも大満足です。こん風に過ごせたら雨の日も楽しいだろうなと思わせてくれます。

 (作成K・J)

 

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