Tag Archive for 絵本から読み物へ

おすすめ幼年童話15『ナスレディンのはなし』トルコの昔話
おすすめ幼年童話14『オンネリとアンネリのおうち』マリヤッタ・クレンニエミ
おすすめ幼年童話13『こぶたのピクルス』小風さち
おすすめ幼年童話12『ちびっこ大せんしゅ』シド・ホフ
おすすめ幼年童話11『火曜日のごちそうはヒキガエル』ラッセル・E.エリクソン
おすすめ幼年童話10『ジェニーとキャットクラブ』エスター・アベリル
おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター
おすすめ幼年童話8『宇宙からきたかんづめ』佐藤さとる
おすすめ幼年童話7『ちびねこグルのぼうけん』アン・ピートリ
おすすめ幼年童話6『プレゼントはお・ば・け』西内ミナミ
おすすめ幼年童話5『スプーン王子のぼうけん』竹下文子
おすすめ幼年童話4『ちびっこタグボート』ハーディー・グラマトキー
おすすめ幼年童話3『こぶたのレーズン』バーリアント・アーグネシュ
おすすめ幼年童話2『じゃんけんの好きな女の子』松岡享子
おすすめ幼年童話1『おはようスーちゃん』ジョーン・G・ロビンソン 

おすすめ幼年童話15『ナスレディンのはなし』トルコの昔話


連載15回めは、『トルコの昔話 ナスレディンのはなし』(八百坂洋子/再話 佐々木マキ/絵 福音館書店 2012)です。

ナスレディンのはなし (ランドセルブックス)
福音館書店
2012-03-20

 

 

 

 

「ナスレディン」はおよそ800年前にトルコに生まれ、裁判官補佐や神学校の教師をした人の名前です。人を笑わせることが好きなナスレディンの話は、トルコや周辺の国々で長く語り継がれてきました。この本にはナスレディンのユーモアあふれる話が4つ収められています。

道で酔いつぶれた裁判官の上着をありがたくいただいて(というか持ち去って)着てしまうナスレディン。怒った裁判官の前でナスレディンが言ったこととは?(「ナスレディンと裁判官」)

威張った人をとんちで懲らしめつつ、ちゃっかり自分も得をしてしまう、一休さんなどの日本のとんち話とは一味違った面白さを味わえます。佐々木マキのユーモラスな絵も雰囲気にぴたりと合っています。

イスラム教の考え方、日本人との違いも味わえ、異文化理解の楽しさを味わってもらう入門編としてもおすすめです。

(作成:28年度児童部会部員M・H)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら
第13回『こぶたのピクルス』→こちら 
第14回『オンネリとアンネリ』→こちら

 

おすすめ幼年童話14『オンネリとアンネリのおうち』マリヤッタ・クレンニエミ


連載14回めは『オンネリとアンネリのおうち』(マリヤッタ・クレンニエミ/作 マイヤ・カルヤ/絵 渡部翠/訳 福音館書店 2015)です。フィンランドの児童文学の定番で、1975年に大日本図書から出版され、自立をテーマにしたこの作品は多くの子どもたちの心を捉えました。その後プチグラパブリッシングから復刊されましたが品切れとなっていました。2015年に福音館書店から出版され、再び子どもたちの手に届くようになったのは嬉しいことです。

今年6月9日より、映画となって劇場公開されます。作品が映画の中でどのように描かれているか楽しみです。(映画「オンネリとアンネリのおうち」公式サイト→こちら)映画公開に合わせて、図書館でも続編『オンネリとアンネリのふゆ』と共に面だし展示してみてください。

 

オンネリとアンネリのおうち (世界傑作童話シリーズ)
マリヤッタ・クレンニエミ
福音館書店
2015-10-25
 
 
 
 

小学生の女の子、オンネリとアンネリは大親友。オンネリは九人兄弟の真ん中で、家ではいつもなんとなくひとりぼっち。両親とたくさんのきょうだいたちと一緒にひとつのお部屋で暮らしています。アンネリには大学教授のお父さんと趣味に忙しいお母さんがいますが、その両親は別居中。お手伝いさんが二人いて生活には不自由しませんが、お父さんの家でもお母さんの家でも何だか居場所がありません。ちょっと複雑な家庭環境の女の子たちです。

 夏休みのある日、二人はひょんなことから「ふたりの小さな女の子が住むのにちょうどいいおうち」を手に入れます。真っ白いレースカーテンのかかった客間、かわいい二羽の小鳥がさえずる鳥かご、きれいな色のお皿も冷蔵庫も食料も全部そろったドールハウスのような台所、そして今まで見たこともないような素敵な遊び部屋! 女の子の憧れ満載のお城のようなおうちで、二人は大人たちに邪魔されずに暮らすことにします。

子どもの頃、「自分だけの素敵なお部屋があったらいいなぁ」と空想したことは誰でもあるのではないでしょうか。このお話にはそんな夢がそこかしこに溢れています。二人が家の中を探検して素敵なお部屋を発見していく描写には、子どもも大人も垣根を越えて胸がわくわくすることでしょう。

また、この夢のようなおうちで、オンネリとアンネリがきちんと地に足の着いた生活を営んでいく様子も魅力的です。自分たちで食事の支度をし、片づけもして、ご近所さんにご挨拶をしてお客様としてきちんともてなします。個性豊かなご近所さんとのやり取りが描かれながら、お話はハッピーエンドへ向かっていきます。

オンネリとアンネリは二人だけの家で楽しく過ごしながらも、両親に構ってもらえずに少しさみしい思いも抱えていました。そこで二人はオンネリの誕生日パーティを企画し、家族も含めたたくさんの人たちを招待します。パーティにやってきた両親とお互いの気持ちを伝えあい、家族の愛情を確認し、そして改めて二人の家で暮らしたいと宣言します。「わたし、わたしたち、この夏はしあわせだったと思うわ」(p.172)という台詞のとおり、オンネリとアンネリも、二人の家族も、ご近所さんたちも、もちろん読者も、幸せな気持ちが広がっていくフィンランド生まれの楽しい夏の物語です。

 

(作成:29年度児童部会部員A.K)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら
第13回『こぶたのピクルス』→こちら

 

おすすめ幼年童話13『こぶたのピクルス』小風さち


児童部会部員がおすすめする幼年童話の紹介も、2年目に突入です。連載13回目は、『こぶたのピクルス』(小風さち/文 夏目ちさ/絵 福音館書店 2015)です。


 

こぶたのピクルスは小学一年生の男の子。

「教科書、よし!

 ノート、よし! 

エンピツ、よし! 

ハンカチ、よし! 

わすれ物は、ひとつもなし!」

と、スキップしながら元気よく出かけたのに、途中で出会った牛乳屋さん、パン屋さん、新聞屋さんのそれぞれの配達の忘れ物を届けているうちに、自分の大事な用事を忘れてしまいます。

そんなピクルスの様子はほほえましく、両親に温かく見守られながら、ドキドキワクワクの毎日を送るピクルスに、読んでいる子どものだれもが自分を重ね合わせてしまうでしょう。

冒頭の「ピクルスのわすれ物」のほか、「ピクルスと卵」、「ピクルスの大ニュース」、「ピクルスの海水パンツ」の4話が収められています。

 作者は『わにわにのおふろ』などのわにわにシリーズや、『とべ!ちいさいプロペラき』を手がける小風さちさん。リズムよくうきうきする文章で、声に出して読むのも耳から聞くのもどちらも楽しく、読みきかせにも向いています。また、全ページに明るい色彩の大きな挿絵が入り、子どもたちがひとりで読み進める助けとなってくれます。絵本から物語へ移行する時期の子どもたちにぜひ手渡したい幼年童話です。

 続編の『ピクルスとふたごのいもうと』では、お兄ちゃんになったピクルスが成長した姿を見せてくれ、こちらもおすすめです。

 

(作成 29年度児童部会部員C・K)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
第11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら
第12回『ちびっこ大せんしゅ』→こちら

おすすめ幼年童話12『ちびっこ大せんしゅ』シド・ホフ


 
 
連載12回めは『ちびっこ大せんしゅ』(シド・ホフ/文と絵 光吉夏弥/訳 大日本図書 2010)です。
 

 リトルリーグでも1番小さいハロルドは、試合にも出られず、いつもベンチを温めているだけでした。そんなハロルドにも、シーズン最後の試合でチャンスが訪れます。ピンチヒッターとしてバッターボックスに立ちました。ハロルドは目をつぶって力いっぱいバットをふると、なんと奇跡のホームラン! 

 チームは見事に勝利し、今までからかっていたチーム・メートも、この瞬間にハロルドと共に喜びを分かち合います。そして彼の努力は報われ、バットを振った勇気に感動してしまいます。最後に、試合の前日自宅に来て励ましてくれたコーチのロンバルトさんが、名言を残します。それは最高の誉め言葉で、読んでいる私たちに喜びと自信を与えてくれます。

 みんなで協力すれば喜びを分かち合うことができ、日々一生懸命練習すればハロルドのようにチャンスを掴むことが出来るよ、とストレートに伝えているのがこの物語の最大の魅力です。とくに、スポーツが好きな子はハロルドに共感でき、読み終わった後はきっと爽快な気分になるでしょう。絵本から読み物の移行期の小学校低学年向けですが、イラストも多いので読み聞かせにも向いています。読みやすく、読書が苦手なお子さんにも楽しめるので、読書感想文の本としてもおすすめです。

 作者のシド.ホフは、ニューヨーク生まれのマンガ家。ロングセラーの「ダニーと恐竜」など子どもの本も50冊ほど出していて、そのユーモラスな絵で大きな人気を集めています。野球の本も「魔女とネコと野球のバット」「野球ネズミ」などがあるので、ぜひあわせて読んでみてください。

(作成 29年度児童部会部員C・S)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら
11回『火曜日のごちそうはヒキガエル』→こちら

 

 

おすすめ幼年童話11『火曜日のごちそうはヒキガエル』ラッセル・E.エリクソン


連載第11回は、『火曜日のごちそうはヒキガエル』(ラッセル・E.エリクソン/作 ローレンス・ディ・フィオリ/絵 佐藤涼子/訳 2008)です。

火曜日のごちそうはヒキガエル―ヒキガエルとんだ大冒険〈1〉 (児童図書館・文学の部屋)
ラッセル・E. エリクソン
評論社
2008-02-01

 

 

  この本は、「ヒキガエルとんだ大冒険」シリーズの第1巻です。仲のよいヒキガエルの兄弟、掃除が大好きなウォートンと料理が大好きなモートンのハラハラドキドキさせるお話が7巻まで続きます。

 1巻は、ある冬の夜、モートンが作ったケーキをトゥーリアおばあさんに届けたいとウォートンが思い立ったところから物語が始まります。おばあさんは谷間を越えた先に住んでいます。その谷間は深い雪におおわれ、その上たちのわるいミミズクが住んでいて、とても危険な場所です。しかし、おいしいケーキをどうしても届けたいと、ウォートンは手作りのスキーを履いて、厚着をして出かけます。

 ウォートンは途中で雪に埋もれたシロアシネズミを助けてあげますが、その直後ミミズクに捕まってしまいました。ミミズクの家に連れていかれたウォートンは、ミミズクに「おまえは来週の火曜日のごちそうだ」と告げられます。6日後のその日はミミズクの誕生日だったのです。

 運命の日まで、ウォートンはどうやって過ごしたのでしょう。ミミズクの出かけた隙に逃げることは難しそうだとわかると気を取り直してミミズクの散らかっていた部屋の掃除をし、夜はミミズに美味しいお茶をすすめ、お互いの話をするようになるのです。

 でもウォートンは食べられるのはいやです。ミミズクのいない間にセーターを解いて脱出のためのはしごを作っていました。それをミミズクにみつかってしまいます。誕生日の前の夜は、気まずくて一言も話さずに過ごしました。

 誕生日の朝、助けたシロアシネズミの仲間がウォートンを救出に来てくれました。木の中の抜け穴を通って、外に出たウォートンを待っていたのは100匹のシロアシネズミ。みんなが一斉にスキーで谷間を滑り降りていく様子はすごくワクワクします。ところがその途中でミミズクがきつねに襲われているのを見て、ウォートンは迷うことなくシロアシネズミと協力して、きつねを追い払うのでした。

 ミミズクはウォートンと友だちになろうとして、ウォートンが好きなネズの実を取りにでかけてきつねに襲われたのでした。ウォートンは感激しました。ミミズクも、これからはヒキガエルもネズミも食べないと約束してくれました。

 最初は、食べる側と食べられる側という力関係だった二匹。でも陽気なウォートンとお茶を飲みながらおしゃべりするうちに、ミミズクの気持ちは友情へとかわっていったのです。

 この作品は1982年に出版され長く愛されてきました。小学校中学年の子どもたちに出合ってほしい1冊です。

(作成 29年度児童部会部員M・R)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら
第10回『ジェニーとキャットクラブ』→こちら

 

おすすめ幼年童話10『ジェニーとキャットクラブ』エスター・アベリル


 連載第10回は、『ジェニーとキャットクラブ 黒ネコジェニーのおはなし1』(エスター・アベリル/作・絵 松岡享子、張替惠子/共訳 福音館書店 2011)です。


 

 黒ネコのジェニーは、はにかみやで引っ込み思案の女の子。飼い主のキャプテン・ティンカーさんと一緒に暮らしています。ティンカーさんの家の庭には、近所のネコたちが集まる「キャットクラブ」という集まりがありました。ジェニーも「キャットクラブ」に入りたいと思いますが、特技のない自分に自信が持てず、一歩踏み出す勇気が持せん。初めは落ち込むジェニーでしたが、ティンカーさんに後押しされ、自分なりの方法で殻を打ち破ります。(「ジェニーがキャットクラブにはいるはなし」」

 この本には全部で3つのお話が入っています。「ジェニーがネコの学校にいくはなし」では、小さいジェニーを車で追いかけまわすしょうぼうねこのピックルズが登場したり、「ジェニーがはじめてネコのパーティーにいくはなし」では、ジェニーを赤ちゃん扱いするネコが現れたりと、それぞれの話の中で、ジェニーの前には様々な困難が立ちはだかります。初めは弱気になるジェニーですが、勇気を奮い起こし前進していく彼女の姿に読み手の子どもたちは共感したり、元気をもらったりしながら読み進めることができるでしょう。 

 黄色い装丁が目を惹くおしゃれな挿絵は作者エスターアベリル自らが描いたもの。ユーモラスで可愛らしく、個性的なキャットクラブの面々が生き生きと描かれています。 

 続編の『ジェニーのぼうけん』『ジェニーときょうだい』では、キャットクラブの仲間や兄弟のために奔走する、より成長したジェニーの姿を見ることができます。また、本作より前に出版された同作者の『しょうぼうねこ』も併せて読んでみると、新たな発見があるかもしれませんよ。

 

(作成 28年度児童部会部員M.N) 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
第7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら
第9回『ごきげんいかが がちょうのおくさん』→こちら

おすすめ幼年童話9『ごきげんいかが がちょうおくさん』ミリアム・クラーク・ポター


連載第9回は、『ごきげんいかが がちょうおくさん』(ミリアム・クラーク・ポター/作 松岡享子/訳 こうもとさちこ/絵 福音館書店 2004)です。


ごきげんいかが がちょうおくさん (世界傑作童話シリーズ)

ミリアム・クラーク ポター
福音館書店
2004-06-30

どうぶつ村に住むがちょうおくさんは、とてもそそっかしく失敗ばかりしています。

どんな失敗かというと、たとえば自転車旅行の計画をたてた時も、はいていくスラックスばかり心配して、肝心の自転車の手配を忘れたのを出発の瞬間に気づいてしまうとか、朝に玉ねぎの種をまいたら、昼には芽が出ないと騒いで、種の目を覚まさせようと畑に向かって鐘を鳴らして大騒ぎをしてしまったり。そんなドタバタやっているがちょうおくさんと、あきれながらも仲良く付き合っているぶたさん、りすおくさんなどとのやり取りが、ユーモラスです。どうぶつ村の住人はだれもが個性的で、とても人間臭いのです。

たとえば、ふくろうの老婦人は賢いけれど少し遊び心が足りません。屋根の上で食事をしているがちょうおくさんから一緒に食べようと誘われる場面があります。彼女は屋根の上でものを食べる必要があるのかと問いただし、十分な理由がないなら登らないと言います。

利発なりすおくさんも、がちょうおくさんの思いつきを聞かされたときなどは、内心では何か失敗するはずと思います。それでも口には出しません。そしてがちょうおくさんの行動に冷静なツッコミをしたりします。こんなやりとりは私たちの普段の人間関係を思い起こしてニヤリとしてしまいます。おとなが読んでも、とても面白い作品です。

短い6つの物語で構成されていて小学校の低学年から読むことができます。こうもとさちこさんの描く挿絵もやわらかく朗らかで、ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。

6つめの物語「クリスマスまであけないで」は、がちょうおくさんが村のみんなのためにクリスマスを用意するお話です。ここでもがちょうおくさんはやらかしてくれますよ。そんながちょうおくさんを囲んで村中のみんなが楽しそうにクリスマスをお祝いしているシーンが、最後の見開きページに描かれています。冬休みの読書におすすめしてもいいですね。

続編に『おっとあぶない がちょうおくさん』(2004)があります。

(作成 29年度児童部会部員M・Y)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 
第8回『宇宙からきたかんづめ』→こちら

おすすめ幼年童話8『宇宙からきたかんづめ』佐藤さとる


連載第8回は『宇宙からきたかんづめ』(佐藤さとる/作 岡本順/絵 ゴブリン書房 2011)です。

宇宙からきたかんづめ
佐藤 さとる
ゴブリン書房
2011-11

 

 

 

物語は、ぼくがスーパーマーケットで不思議なかんづめと出会うシーンからはじまります。いちごのジャムを買ってくるようにとたのまれて行ったのに、ぼくが手にしたのは、なんと、おしゃべりをする宇宙から来たかんづめだったのです!

 お金を払って、不思議なかんづめを家に持ち帰り、缶切りのついたナイフで空けてみようとしたそのとき、「やめろ!」頭の中に声が響きました。「いったいだれなんだ」と問うと、かんづめはしばらくだまっていましたが、「宇宙のはてからきたんだ。地球がどういう星か、調べているだけだ」と答えてくれました。

そこから、遠い宇宙からきた不思議なかんづめとぼくとの生活がはじまります。

 ぼくは、「タイムマシンは、本当にできるものですか?」「宇宙のはしへいったら、どうなりますか?」など、不思議に思ったことをかんづめに聞くと、そのたびに面白い話を聞かせてくれるのです。そんなかんづめが語る話が5話、収録されています。(①タイムマシンは川に落ちた、②タツオの戸だな、③いなくなったどろぼう、④おしゃべりなカビ、⑤とんがりぼうしの高い塔)

 かんづめに聞いた話③「いなくなったどろぼう」の中に、光を当てると物が小さくなる懐中電灯が登場します。あれ?どこかで見たことがあると思ったら、ドラえもんに出てくるスモールライトそっくりです。実はこの作品が最初に出版されたのは1967年で、「ドラえもん」が小学館の学習雑誌に連載されるようになったのは1969年なので、ドラえもんより先なのです。出版されてから半世紀、おもしろいお話は、何年たっても色褪せることはありませんね。ファンタジー文学の第一人者「コロボックルシリーズ」の佐藤さとるが描く少し不思議なSFストーリーです。漢字にはふりがなもふってあり、お話の展開にスピード感があるので、小学校低学年の子どもたちから読むことができるでしょう。

 (作成29年度児童部会部員 M・N)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら
7回『ちびねこグルのぼうけん』→こちら 

おすすめ幼年童話7『ちびねこグルのぼうけん』アン・ピートリ


連載第7回は『ちびねこグルのぼうけん』(アン・ピートリ/作 古川博已・黒沢優子/訳 大社玲子/絵 福音館書店 2003)です。

 

 

 

主人公は、灰色の毛並みで、グルルル、グルルルとのどを鳴らすことから、グルと呼ばれるようになった子ねこです。しっぽが短くて、そして気までも短い主人公のグルは、お母さんや兄弟といっしょに納屋に住んでいましたが、ある日家族のもとから離れて、ドラッグストアを経営する人間のおじさんの家にもらわれて行きます。

最初は、話し相手も遊ぶ相手もいないグルでしたが、隣の家に住む男の子ピーターや、金色のステッキをもって毎朝散歩するおじいさんのスミスさんなどネコのことばがわかる人たちと友達になり、世界が広がり始めます。

グルにとっては、毎日の出来事が冒険そのもの。短気で怒りっぽいグルが起こす事件に、子どもたちは驚いたり、または応援したりしながら、お話の中にいつしか引き込まれていることでしょう。もといた納屋に連れ戻されちゃう? やんちゃなグルが巻き起こす冒険の展開に、ハラハラドキドキしながらも読み終わった後には、幸せな安心感で胸が満たされます。

作者のアン・ピートリは、アメリカの黒人作家です。1946年に黒人母子家庭の悲劇を描いた『街路』で、ホートン・ミフリン文学賞(*)を受けました。1949年に出版されたこの作品は、子ども向けに初めて書いたお話です。物語が何より好きな姪に読んでもらいたいと書いたそうです。

絵は『おはなしのろうそく』などの挿し絵で有名な大社玲子さん。優しいタッチの挿し絵が、幼い読み手の想像力をより豊かなものにしてくれます。やさしく、読みやすい文章なので、小学校低学年の子どもたちが楽しんで読める一冊です。

学校図書館で、表紙を見せてディスプレイしていたら、小学2年生の女の子が手に取ってくれて、すぐに借りていってくれました。表紙の絵の持つ魅力の大きさを感じた瞬間でもありました。愛らしいグルと一緒に、冒険の世界を楽しんでほしいと思います。

 (* アメリカの出版社が主催する文学賞)

(作成29年度児童部会部員H・Y)

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら
第5回『スプーン王子のぼうけん』→こちら
第6回『プレゼントはお・ば・け』→こちら

 

おすすめ幼年童話6『プレゼントはお・ば・け』西内ミナミ


連載第6回は『プレゼントはお・ば・け』(西内ミナミ/作 西川おさむ/絵 フレーベル館 2010 新装版)です。

プレゼントはお・ば・け
西内 ミナミ
フレーベル館
2010-08-01

 

 

タイトルを見ると「えっ。なんだ?」と気になってしまうこの本。好奇心旺盛な子は、「おばけがプレゼントなんてほんと? 見てみたい!」、怖がりな子は、「こわいよ!そんなプレゼント欲しくない。」と思うかもしれません。どちらにせよ、思わず手に取って読みたくなってしまいます。

リュウはもうすぐ7歳。ひとりっ子の弱虫な男の子です。口では、すごく勇ましいことを言いますが、サッカーのボールが飛んでくると、思わず目をつぶってしまうし、夜に1人でトイレに行くこともできません。でも、「おばけだってこわくないもん。」と強がりばかり言っています。しまいには「ぼくはへいきだよ。ねえ、おかあさん、ためしにおばけをうちにつれてきてごらん。」と言い放つのです。おかあさんはにやっと笑って、リュウの誕生日に、おばけをプレゼントに連れてくると言いました。本当は、おばけがこわくてしかたないリュウは、気が気ではありません。

誕生日当日、お母さんはリュウがこわくないと言ったオバケたちを、工夫をこらして用意しました。ひとつ目こぞうのおばけは、ぬい針といったぐあいです。お父さんも最後にとっておきのおばけをつれてきてくれますが、こちらもユーモアたっぷりです。

強がりを言ってしまう息子を、楽しく愛情豊かに優しく見守る両親の姿は読んでいて安心します。怖いものにドキドキしながらも向き合おうとするリュウに幼い読者たちは、自分を重ね一体感を感じるでしょう。大人も、読むと思わずにっこりしてしまいます。「うちの子は弱虫で心配だ」なんていうお父さんとお母さんも、このお話を読むと、こんな返し方もあったのね!と楽しくなります。

親子で一緒に読んでほしい作品ですが、文章はやさしく、文字も大きく、ページ毎に挿絵があるので1人で本を読み始めた子どもにも、ぴったりの物語です。 

作者の西内ミナミさんは、広告会社にコピーライターとして勤務後、児童文学の創作に専念され地域で子どもの読書推進運動にも関わっていらっしゃいます。絵本『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)など多くの作品が子どもたちに親しまれています。 

(作成29年度児童部会部員M・G)

おすすめ幼年童話5『スプーン王子のぼうけん』竹下文子


連載5回目は『スプーン王子のぼうけん』(竹下文子/作 こばようこ/絵 すずき出版 2015)です。


 

ある国に王子さまが誕生した時、妖精たちがお祝いに特別なスプーンを王子さまにプレゼントしました。そのスプーンをにぎると王子さまは泣いている時も機嫌が悪い時も、不思議と笑顔になりました。スプーンが大好きな王子さまなので、いつのまにか「スプーン王子」と呼ばれるようになりました。

王子さまが七さいになった時、王さまにたくさん勉強をして経験を積むようにと言われます。王子さまはその国の歴史を学び、ある日経験を積むために冒険に出かけることにします。そこでけんかをしている三匹の竜に出会うのです。はたして、王子さまは竜を退治することができるのでしょうか。

知りたがりで食べる事が大好きな王子さまの姿は、この本を読む子どもたちにとっては身近に感じられることでしょう。また三匹の竜の話に耳をかたむけ、問題を解決する王子さまはとても勇敢で賢く、成長を感じます。「スプーン王子」らしい解決方法に子ども達はきっと満足することでしょう。

作者は『黒ねこサンゴロウ』シリーズや『おてつだいねこ』シリーズを書いている竹下文子さん。また親しみやすい挿絵は『おひるねけん』や『いもほりコロッケ』などの絵本作品があるこばようこさんです。たくさんのかわいらしい絵が冒険をさらに盛り上げてくれています。

心優しく勇敢な王子さまの活躍するこの本は、どの子にも安心して手渡せる一冊と言えるでしょう。文字も大きく読みやすく、絵本から物語に移行する子どもたちにおすすめ出来ます。

(作成:29年度児童部会部員M・Y)

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら
第4回『ちびっこタグボート』→こちら

おすすめ幼年童話4『ちびっこタグボート』ハーディー・グラマトキー


連載第4回目は『ちびっこタグボート』(ハーディー・グラマトキー/作 わたなべしげお/訳 改訂新版 学習研究社 2005)です。

ちびっこタグボート (グラマトキーののりものどうわ)
ハーディー グラマトキー
学習研究社
2005-07


 

『ちびっこ・タグボート』はアメリカで1939年に出版されて以来長い間読みつがれ、日本でも1967年に翻訳出版され、たくさんの子ども達に親しまれてきました。2005年に文章を横書きに改めた改訂新版が出ました。

働くのが嫌いで、いたずら好きなタグボート・トゥートゥは、波の荒い海ではなく、いつも安全で穏やかな川で遊んでいました。しかし、ある嵐の夜に大型汽船が難破しているのを見つけます。小さなタグボートでは大きな船を引くことが出来ませんが、助け出さないと大変な事になります。トゥートゥは勇気を振り絞って、荒れ狂う海に立ち向かっていきます。

いたずら好きで遊ぶのが好き、そして、ちょっと弱虫なトゥートゥは、子どもたちに身近な存在に感じます。その小さなタグボート・トゥートゥが大活躍する様子は、トゥートゥの目線で描かれており、子どもたちは小さいながらに頑張るトゥートゥと同化して一緒に活躍した気持ちになれるでしょう。

全ページに描かれたイラストは可愛らしく、なんといっても登場キャラクター達の表情が豊かです。色合いも優しく温かな雰囲気を醸し出しています。また、トゥートゥがいる川や港の様子がわかる見開きの絵からは、タグボート達がどこで活躍しているか、場所を確認しながら想像する楽しさがあります。

この作品は、グラマトキーののりものどうわシリーズの第1作目です。他にも、『いたずらでんしゃ』や『ルーピーのだいひこうき』等、子どもたちが好きな乗り物が主人公になっているお話が全部で6作品あります。

やさしい文章で、読み聞かせなら4歳から、自分で読むなら小学校低学年の子どもたちにオススメです。ちびっこタグボート・トゥートゥの大活躍にドキドキ・ハラハラしてみませんか?

 (作成29年度児童部会部員F・N) 

 

第1回『おはようスーちゃん』→こちら
第2回『じゃんけんの好きな女の子』→こちら
第3回『こぶたのレーズン』→こちら

おすすめ幼年童話3『こぶたのレーズン』バーリアント・アーグネシュ


連載第3回目は『こぶたのレーズン』(バーリント・アーグネシュ/作 ブローディ・ベラ/絵 うちかわかずみ/訳 偕成社 2012)です。

こぶたのレーズン (こぶたのレーズンのおはなし)
バーリント・アーグネシュ
偕成社
2012-06-02
 
 
 

 こびとのマノーが住む、かぼちゃの家にころがりこんできたみすぼらしいみどりのこぶた。こぶたは、レーズンという名前になり、マノーといっしょに暮らすことになりました。

 あまえんぼうでくいしんぼうなレーズン。おはなしを聞いたり、ともだちと遊んだり、いたずらをすることも大好きです。そんなレーズンに振りまわされるかと思いきや、マノーは一緒に楽しんだり(時には叱ったり)、おおらかに接します。ずっとひとりで暮らしていたマノーにも、レーズンのいる生活は新鮮だったのです。わるいことをしたと思ったら、積極的にマノーのお手伝いをしたり、マノーに甘えたりするレーズンは誰かさんと似ていませんか?

 この愛らしいレーズンは、ハンガリーで1963年に人形劇番組のキャラクターとして生まれました。そして本は全3巻のシリーズとして刊行されています。日本では、そのうちの1巻が2冊に分けて訳され、この本と、続編の『こぶたのレーズンとおともだち』が同時刊行されました。国民的人気のレーズンをデザインしたブローディ・ベラ氏が、この本のイラストも描いています。ひとり読みを始める小学生でも、みどりのこぶたの表紙の絵を見たらおはなしにひきこまれることでしょう。登場人物が増える続編もあわせてどうぞ。


 

偕成社公式サイトの紹介ページ→こちら

ハンガリーの人形劇MAZSOLA(ハンガリー語でレーズン)のページ→こちら(ハンガリー語)

 (作成28年度児童部会員K.M)

おすすめ幼年童話2『じゃんけんの好きな女の子』松岡享子


連載の2回目は、『じゃんけんの好きな女の子』(松岡享子/文 大社玲子/絵 学研教育出版 2013)です。

主人公の女の子は、もう寝なさいと言われても、お手伝いをしなさいと言われても「じゃんけんに勝ったらね」。相手がいないときは、右手と左手でひとりでじゃんけん。なんでもかんでもじゃんけんで決めてしまうほど、じゃんけんが大好き。

 


 

ある日女の子がひとり留守番をしていると、いっぴきのねこがやってきて「ここがきみのうちだってことは……ちゃんとじゃんけんできめたのか?」と聞き、「ぼくがきみとのじゃんけんにかったら、ここはぼくのうちで、おとうさんとおかあさんもぼくのおとうさんとおかあさんになる」と言いだしたものだから、さあ大変。女の子とねこのじゃんけん、どうなるのでしょうか?くすっと笑える、ねこの手のじゃんけんは、挿し絵の手のアップで楽しめるものになっています。

この作品は、40年前に発売以来、かしこい女の子とまぬけなオオカミのやりとりが楽しく読み継がれてきた『なぞなぞの好きな女の子』の姉妹版です。松岡享子さんの文に、大社玲子さんの絵のコンビも健在。今回の主人公は、ねことのじゃんけん勝負をきっかけに、「じゃんけんにかってもまけても、しなくちゃならないことは、しなくちゃならないの。」と、ぐーんと成長した姿を見せます。

著者のいっしょに暮らすねこが、作品の絵のモデルをつとめたり、見返しの絵までじゃんけんぽん!という、いろいろなお楽しみがつまった幼年童話です。

第1回『おはようスーちゃん』は→こちら


(作成児童部会事務局M・A)

おすすめ幼年童話1『おはようスーちゃん』ジョーン・G・ロビンソン 


 

ヴィアックスには児童部会という部会活動があります。(詳しくはこちらを見てください。→児童部会のページほんのふくろう-9

児童部会では27年度、28年度の2年間「基本図書から学ぶ」をメインのテーマにして活動をしてきました。それは、毎年2000点を超える児童向け出版物の中から、子どもたちに自信をもって手渡していく本を選ぶ力を身につけていくための実践的な学びでした。

1年目の27年度は絵本の読み比べを通して、長く読み継がれてきた作品がどのように子どもたちに受け入れられてきたのか、文章と絵、またそれらが補完し合うことで生まれる相乗効果などについて学び、作品を評価する視点を養ってきました。28年度は絵本から読み物へ移行する時期の幼年期に出会ってほしい本とはどのようなものであるかについて、基本図書を読み込むことを通して学びました。加えて本の特徴や 本質を捉えてレビュースリップを作成し、それをもとに紹介文を書くことも課題として取り組みました。

そして1年間の学びのまとめとして、2002年以降に出版された幼年児童文学のうち、東京子ども図書館の「こどもとしょかん」で選定されている166作品の中から、絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに相応しく、これからも長く読み継がれていくであろう作品を部員たちが1冊ずつ選びました。

今年度は、部員たちが交代でおすすめの幼年童話を紹介していきます。どうぞお楽しみに!
(第1回目は、このサイトの管理人K・Jですが、第2回から交代での執筆になります。)

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連載の第1回目を飾るのは、『おはようスーちゃん』(ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 中川李枝子/訳 アリス館 2007)です。

おはようスーちゃん
ジョーン・G. ロビンソン
アリス館
2007-09

 

 

 スーちゃんはとても好奇心旺盛な小さな女の子です。ちいさなおうちにパパとママと一緒に住んでいます。

 ある時、ままごとでお人形のセモリナのお誕生日パーティーをしようと、スーちゃんは庭の植木鉢を逆さまにしてケーキにし、その上ママが大切にしている食器や銀のナイフを勝手に使ってママを驚かせます。スーちゃんに悪気がないことを理解したパパとママは、頭ごなしに叱ったりはせずにスーちゃんのために砂場を作り、ままごとの食器を用意してあげました。(「1スーちゃんの砂場」)

 パパやママだけでなく、スーちゃんを取り巻くほかの大人たちも、子どもらしい発想で行動をするスーちゃんを、優しい眼差しで温かく見守っています。そんな中でのびのびと生活をするスーちゃんの姿に、読み手の子どもたちにも安堵感を与えることでしょう。

 この本には、無邪気で可愛らしいスーちゃんの日常を描いたお話が9つ入っています。

 ジョーン・G・ロビンソンはイギリス児童文学作家で、『テディ・ロビンソン』シリーズ(福音館書店)や『思い出のマーニー』(岩波書店)などの作品があり、子どもたちに長く親しまれています。翻訳は『ぐりとぐら』の中川李枝子さんです。

 この本はイギリスで1953年に出版されました。60年以上前の作品です。けれども、3、4歳頃の子どもの特性は昔と今とでも、さほど変わっていないことがわかります。今、読んでも「あるある、こういうこと」と思える子どもの姿です。ただ、今は情報が多すぎて子育て中の親はスーちゃんのパパやママのようにおおらかに見守ることが難しくなっているかもしれません。だからこそ、スーちゃんと同年代の子にはぜひ読んであげてほしいと思います。一人で読める子どもたちには、温かなユーモアを感じながら、幼いスーちゃんの様子を楽しんで読むことができると思います。 

(作成児童部会事務局K・J)

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