2018年の新刊から*見落としていた本の紹介


2018年9月~12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、見落としていたおすすめの本を紹介いたします。(前回紹介した記事は→こちら

2019年1月の新刊は現在チェック、読んでいる最中です。2月に記事をUPしますので、もう少しお待ちください。

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、茗荷谷てんしん書房、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書売り場など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『リズムがみえる』ミシェル・ウッド/絵 トヨミ・アイガス/文 金原瑞人/訳 ピーター・バラカン/監修 サウザンブックス社 2018/9/25

リズムがみえる
トヨミ・アイガス
サウザンブックス社
2018-10-01

冒頭に「この本は、アフリカ系アメリカ人の音楽の歴史をアーティストの目を通して描いたものです。」とあります。読み進んでいくうちに 500年以上前の大航海時代に始まり300年も続いたと言う奴隷貿易の歴史と、過酷な環境に身を置きながらも音楽を通して先祖のリズムを伝えてきた人々の歴史に圧倒されました。躍動感溢れる絵と、その脇に小さく記された歴史の年表との落差に、アフリカ系アメリカ人の歩んできた道のりが見えてきます。ファンクやラップ、ヒップホップの好きなYA世代にぜひ手に取ってもらいたい1冊です。(サウザンブックスのページへ→こちら

サウザンブックス社は、クラウドファンディングを用いて、世界中の価値ある絵本を日本に紹介している出版社で(出版のコンセプト→こちら)、2018年10月にレズビアンの母親の家庭を描いた『ふたりママの家で』(パトリシア・ポラッコ/作 中川亜紀子/訳)も出版しています。
合わせて5年前に出版された岩波ジュニア新書の『魂をゆさぶる歌に出会う―アメリカ黒人文化のルーツへ』(ウェルズ恵子/著 岩波ジュニア新書 2014/2)も紹介するとよいでしょう。アフリカ系アメリカ人の文化の歴史がより詳しく、わかりやすく解説されています。(私も後輩から教えてもらいました)



 

『オーロラの国の子どもたち』イングリとエドガー・パーリン・ドーレア/作 かみじょうゆみこ/訳 福音館書店 2018/11/15

オーロラの国の子どもたち (世界傑作絵本シリーズ)
イングリとエドガー・パーリン・ドーレア
福音館書店
2018-11-14
 
北ヨーロッパ・ラップランド(スカンジナビア半島北部)に住むサーミ族の生活を、ラッセとリーセの兄妹の視点から描くドーレア夫妻の作品です。ドーレア夫妻はリンカーンの伝記絵本で1940年にコールデコット賞を受賞しています。妻のイングリはバイキング末裔で、ノルウェー育ちです。その美しい自然と生活を子どもたちに知らせたいと、実際にノルウェー北部を取材して絵本にしました。厳しい自然の中でトナカイを放牧し、夏の間だけ学校に通う子どもたちの姿が生き生きと描かれています。2017年12月には菱木晃子さんが『巨人の花嫁 スウェーデン・サーメのむかしばなし』(平澤朋子/絵 BL出版)(紹介文→こちら)を出版していますが、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアのコラ半島北部に暮らす先住民族サーミ(サーメ)に対する知識と理解が大きく進んできた証と言ってよいでしょう。福音館書店の公式サイト「ふくふく本棚」のページに、文化人類学者葛野昭浩氏によるサーミ族とこの絵本についてのエッセイが掲載されています。(→こちら

 

 

『つちをほらなくなったスチームショベル』ジョージ・ウォルターズ/文 ロジャー・デュボアザン/絵 こみやゆう/訳 好学社 2018/12/7 

つちをほらなくなったスチームショベル
ジョージ・ウォルターズ
好学社
2018-12-11
 
蒸気を使って動かすショベルカーは1839年に発明され、19世紀後半から20世紀の初頭に大活躍します。特にパナマ運河の掘削ではその威力を発揮しますが、1930年以降ディーゼルエンジンで動くショベルカーへと変遷していきます。この絵本は1948年にアメリカで出版されているので、世代交代が進み始めた頃のスチームショベルが主人公です。たまたまそばを通りかかった孫が「ぼく、スチームショベルになりたい」と言ったのに対し、おばあさんがスチームショベルは土を食べるから汚れている、そんなものになるな、と答えるのを聞いてしまいます。そして土を食べるのをやめで、その男の子が好きだという食べ物を探して暴走をするのです。色彩の魔術師と評されるデュボアザンが、黄色と青色を効果的に使った鮮やかで軽妙な絵で、ショベルカーをまるで恐竜のような命あるものとして描いていて、それがとてもユーモラスです。

 

【児童書】

『野生のロボット』ピーター・ブラウン/作・絵 前沢明枝/訳 福音館書店 2018/11/15 

野生のロボット (世界傑作童話シリーズ)
ピーター・ブラウン
福音館書店
2018-11-14

ロボットの輸送船が難破して無人島に流れ着いたロボットのロズ。ラッコのいたずらでスイッチが入り太陽光で充電され目覚めて活動を始めます。島の環境に順応しつつ野生動物から学ぶロズの姿に、動物たちもロズに心開いていきます。あれ?ロボットって感情を持ってないはず、野生化するなんてあり得るのだろうか、と思う方にはまずは読んでみてほしいと思います。

(作成K・J)