2019年4月、5月の新刊から(その1)絵本(追記あり)


2019年4月、5月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、おすすめの絵本(特にノンフィクション絵本)を紹介します。(一部、見落としていた3月以前の新刊も含まれます)

 

児童書、YA向けの本は現在読んでいます。6月上旬にUPする予定です。

*6月7日に1冊追加しました。『ロバくんのみみ』

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、茗荷谷てんしん書房、横浜日吉にあるともだち書店、代官山蔦屋書店児童書売り場など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】
《ものがたり絵本》

『へいわとせんそう』谷川俊太郎/文 Noritake/絵 ブロンズ新社 2019/3/25

へいわとせんそう
たにかわ しゅんたろう
ブロンズ新社
2019-03-13
 
「へいわの〇〇/せんそうの〇〇」と、平和の時の姿と戦時中の姿を対比して見開きで次々に見せていく絵本です。「ボク」「ワタシ」「チチ」「ハハ」「かぞく」、平和の時は安らいでいるのに、戦争の時は悲しんでいたり緊張したりしています。際立つのは「どうぐ」でペンがピストルに変わります。そうやって次々ページをめくっていくと、「みかたのかお」「てきのかお」、「みかたのあかちゃん」「てきのあかちゃん」は変化せず同じ絵が使われています。敵と味方といえども同じ時代を生きている人であり、同じように未来があることをその絵で示しながら、国を背負って殺し合いをすることがどれ程無意味なことか、読者の側に気づかせようとしています。この絵本は短期間に3刷(2019/4/10)になっているように、反響が大きいことがわかります。ただ幼い子ども向きかというと、それは違うと思います。むしろ絵を見て言語化でき、その背景にまで想像を馳せることのできるYA世代~大人向けの絵本であるといえるでしょう。
 
 

『あるくくま』谷川俊太郎/文 祖敷大輔/絵 クレヨンハウス  2019/4/10

あるくくま
谷川 俊太郎
クレヨンハウス
2019-03-27
 
こちらも谷川俊太郎さんの作品です。87歳の今も衰えることのない創作意欲に驚かされます。この絵本は挿絵画家として活躍されているイラストレーター祖敷大輔さんの初の絵本作品です。未知の世界に向けて歩き出すくまの子。向かっていく先はどこでしょう。どこへでも行ける、そんな可能性を持っています。ところが、行き止まりになったかと思うとそれはとうさんぐまだったのです。絵本を読んでいて、ここで「あっ、これはくまの子の夢だったのか」と単純に判断しそうになります。子どもたちが育っていく中で、既成概念の枠で我が子を囲いがちな親という存在への谷川さんなりのメッセージなのかも。それでも「ぼくはばかじゃない」と高らかに宣言をして、親を踏み越えていくのが、成長であると思います。そう思うと、この絵本も可愛い絵だから小さい子向けかと思いがちですが、対象年齢はYA世代ではないでしょうか。(2019年5月18日に作者お二人のトークをクレヨンハウスで伺いました。→こちら
 
 

『なまえのないねこ』竹下文子/文 町田尚子/絵 小峰書店 2019/4/25

なまえのないねこ
竹下文子
小峰書店

 

この絵本の主人公は表紙絵になっているこの猫です。野良猫であるゆえに名前がありません。なまえのない猫は、名づけられているいろんな猫たちを紹介していきます。最後に雨の降る公園で少女に「きみ、きれいなメロンいろのめをしているね」と言われます。そして「おいで、メロン」と声をかけられてついていくのです。猫は「ほしかったのは、なまえじゃないんだ。なまえをよんでくれるひとなんだ。」と思うのです。名づけるということの意味を改めて感じさせてくれる絵本です。でも幼い子どもはもっと単純に、身寄りのないねこが少女に出会う絵本として楽しめるのではと思います。2019年5月9日から20日まで西荻窪にあるギャラリーURESICAにて絵本原画展も行われていました。

 

『ロバくんのみみ』ロジャー・デュボアザン/作 こみやゆう/訳 好学社 2019/5/18

ロバくんのみみ
ロジャー・デュボアザン
好学社
2019-05-16
 
ロバくんは、仲良しのうまのパットくんと水を飲んでいて、「パットくんのみみって、みじかくてすてきだな」と思います。そう感じた途端、自分の長くて立っている耳がみすぼらしく見えてしまいます。そこで牧場の仲間たちにどうしたらいいか聞いても回ります。いろんな仲間がいろんなアドバイスをくれるのですが、その度にうまくいきません。自分がそのままで受け入れられてるって自信がつくと、ロバくんに笑顔が戻ります。幼い子どもたちも「そのままでいいんだよ」とメッセージを受けとれることでしょう。絵本の見返しから美しく、大事に読み継ぎたい1冊です。原作は1940年に出版されています。
 

 

『あまがえるのかくれんぼ』舘野鴻/作 かわしまはるこ/絵 世界文化社 2019/5/20

あまがえるのかくれんぼ (世界文化社のワンダー絵本)
たての ひろし
世界文化社
2019-05-09
 
 
 
『しでむし』『つちはんみょう』など昆虫たちの精密かつ力強く描くことで定評のある舘野鴻さんが、今回は描画を生物画家かわしまはるこさんに任せて、あまがえるの生態についてのおはなしを作りました。子どもたちはあまがえるの子どもたちの目線にたって、あまがえるの体の色の変化について理解していくことでしょう。かわしまさんはご自身で何年もあまがえるを飼育しているそうです。絵からもあまがえるへの愛情を感じることが出来ます。

 

《ノンフィクション絵本》

『家をせおって歩く かんぜん版』村上慧/作 福音館書店 2019/3/10

 
福音館の月刊誌「たくさんのふしぎ」2016年3月号として出版された『家をせおって歩く』は、出版当時とても話題になりました。今回改訂、増補しハードカバーになって出版されました。家をせおう?それで全国あるく?高学年以上の子どもたちにとっては「家とはなにか」、「住むとはなにか」という既成概念を打ち破ることになるかもしれません。YA世代以上には、家をせおって歩きながら生活した日記をまとめた『家をせおって歩いた』(夕書房 2017/4)も一緒に合わせて読むことをお勧めします。
 

 

『牧野富太郎ものがたり 草木とみた夢』谷本雄治/文 大野八生/絵 出版ワークス 2019/3/20

草木とみた夢: 牧野富太郎ものがたり
谷本 雄治
出版ワークス
2019-02-27

「日本植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎の伝記絵本です。江戸時代の終わりごろ、高知に生まれた富太郎は、幼い時から植物が大好きで、草木の観察をずっと続けていました。やがて東京に出て植物の研究をするようになるのですが、学歴のない富太郎は疎まれるようになります。そのような中で独学で研究を重ね、『大日本植物誌』を編纂します。大好きなものに没頭し、やがて夢をかなえた富太郎の生き方は、いろいろな示唆に富んでいます。園芸家でもある大野八生さんの絵も、柔らかい線なのに、強い意志を感じます。

 

『ダーウィンの「種の起源」はじめての進化論』サビーナ・ラデヴァ/作・絵 福岡伸一/訳 岩波書店 2019/4/23

ダーウィンの「種の起源」: はじめての進化論
サビーナ ラデヴァ
岩波書店
2019-04-24

1859年に『種の起源』を出版して、世に進化論を問いかけたチャールズ・ダーウィンのことは、誰でもよく知っていると思います。しかし『種の起源』を読んで、それをまた子どもにわかりやすく説明できる人は少ないのではないでしょうか。こちらの絵本は、『種の起源』を美しい絵と、子どもにわかりやすい表現で、解き明かしてくれます。作者のサビーナ・ラデヴァさんは分子生物学を学んだ後に、科学とアートを結び付ける仕事がしたいとイラストレーターになりました。この絵本が最初の作品です。日本語訳は生物学者の福岡伸一さんです。

 

 

《かがくのとも》

福音館書店の月刊誌「かがくのとも」は、創刊から50年を迎えました。この月刊誌が出始めた時のことは、とても印象に残っています。当時5歳下の弟がちょうど幼稚園の年長児で、その4月よりこの月刊誌を取り始めたからです。創刊号の『しっぽのはたらき』(川田健/文 薮内正幸/絵 1969年4月号)からして、5歳児の弟だけでなく当時10歳の私も夢中になりました。それまで当たり前のように感じていた身近なものを思いもよらぬ切り口で、「なぜだろう」「どうなっているんだろう」「どうすればいいのかな」と考える習慣を与えてくれました。その体験は、今もこうして「子どもに本を手渡す」という仕事の根幹に息づいています。4月に出版された記念誌と記念出版された作品を紹介します。(福音館書店の50周年記念サイト→こちら

『かがくのとものもと 月刊科学絵本「かがくのとも」の50年』かがくのとも編集部 福音館書店 2019/4/15

かがくのとものもと 月刊科学絵本「かがくのとも」の50年 (福音館の単行本)
寄藤文平+吉田考宏(文平銀座)デザイン
福音館書店
2019-04-16

 

世界で初めて創刊された月刊科学絵本「かがくのとも」の50年の歴史と、その全作品について知ることができる1冊です。これまで数回、「かがくのとも」の編集者の方々のおはなしを伺う機会があり、1冊の月刊誌にかけている時間は、構想から始まって完成まで平均3年~4年と聞いていましたが、この本の第3部「1冊のかがくのともができるまで」には、その過程が丁寧に書かれています。この1冊で「かがくのとも」のすべてがわかる、そんな貴重な資料です。

 

『イワシ むれでいきるさかな』大片忠明/作 福音館書店 2019/4/15

イワシ むれで いきる さかな (かがくのとも絵本)
大片 忠明
福音館書店
2019-04-10

この絵本の初出は2013年5月号でした。小さなイワシがどのように海の中で生活しているのか、なぜむれで生きているのか、子どもたちにわかりやすく伝えてくれます。群れで生きて、たくさんの卵を産み、他の生みの生き物の餌としても貴重な存在であるイワシは、海の生態系の中でいかに重要なのか、示唆に富んでいます。

 

『かずくらべ』西内久典/文 安野光雅/絵 福音館書店 2019/4/15

かずくらべ (かがくのとも絵本)
西内 久典
福音館書店
2019-04-19

小さな子どもが数の概念を獲得していく時に使うのが指の数。指の数と対象とを比較して、5と同じか、多いか、少ないか、そんなところから数に対する概念が獲得されていきます。この絵本では数を比べることで理解できるように促してくれます。初出は、1969年9月号でした。

 

『まるのおうさま』谷川俊太郎/文 粟津潔/絵 福音館書店 2019/4/15

美しい絵柄の皿は「ぼくはなんてまるいんだろう。ぼくこそまるのおうさまだ。」と威張ります。ところが割れてしまうと、今度はシンバルが自分こそ王様だと主張します。でも大きなタイヤが登場すると、轢かれてしまいます。そうやって次々に我こそはまるのおうさまだと名乗るのですが、最後は宇宙にまで広がっていき・・・何が一番なのか結論は出ないのですが、身の回りにあるたくさんの丸、球について気づいていく作品です。初出は1971年2月号です。

 

『みち』五味太郎/作 福音館書店 2019/4/15

みち (かがくのとも絵本)
五味 太郎
福音館書店
2019-04-17

1973年5月号の『みち』は、五味太郎さんが28歳の時に作った絵本デビュー作品です。道といっても狭い道もあれば広い道もある。陸上だけでなく、川は船の道、そらにも飛行機の通り道が定められている、道を通るのは人間だけではなく、電線は電気の通り道、水道は水の通り道、というようにさまざまなものに道があるということを伝えたうえで、きみはきみの道を歩いてごらんと背中を押してくれるのです。

 

『やぶかのはなし』栗原毅/文 長新太/絵 福音館書店 2019/4/15

やぶかのはなし (かがくのとも傑作集 どきどきしぜん)
栗原 毅
福音館書店
1994-05-20

子どもたちに一番身近な害虫って、夏にその柔肌から血を吸う蚊でしょう。その蚊はなぜ血を吸うのか、そもそもすべての蚊が人間の血を吸うのか、蚊が吸うのは人間の血だけなのか、身近過ぎてあまり知らないことを、蚊の目線から教えてくれます。小さな生き物にも道理があるんだと知ることができるのではないでしょうか。この初出は1990年の7月号です。

 

『のうさぎ』高橋喜平/文 薮内正幸/絵 福音館書店 2019/4/15

のうさぎ (かがくのとも絵本)
高橋 喜平
福音館書店
2019-04-17

雪の上にてんてんと足跡がついています。これは野うさぎの足跡です。ピンと耳を立てて緊張している野うさぎ。そこへ空からクマタカが襲い掛かってきました。さて野うさぎは逃げおおせることができるでしょうか?動物や鳥の絵本を描くと右に出るものがないと言われた薮内さんが丁寧に描いた作品です。初出は1999年4月号でした。

 

その他、50周年記念の期間限定復刻出版で『むかしのしょうぼう いまのしょうぼう』(山本忠敬/作 1984年4月号→こちら)と、『せんせい』(大場牧夫/文 長新太/絵 1996年2月号→こちら)が出版されています。こちらの2冊はすでに持っているため、今回購入しませんでした。紹介は、福音館書店の公式サイトをご覧になってください。

 

(作成K・J)