2019年11月、12月の新刊から(その2)読み物ほか


2019年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、読み物など絵本以外の新刊作品を紹介します。

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。今回は一部寄贈された作品も含まれています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【詩集】

『改訂版 ある子どもの詩の庭で』ロバート・ルイス・スティーヴンソン/詩 イーヴ・ガーネット/絵 間崎ルリ子/訳 瑞雲舎  2019/12/1 (出版社のサイト→こちら

『宝島』を書いたスティーヴンソンによる子どものための詩集です。子どもたちが、日常の中で出会うセンスオブワンダーがちりばめられた素敵な詩がたくさんおさめられています。翻訳者の間崎ルリ子さんが「訳者あとがき」に、若いころにニューヨーク公共図書館で働いていた時に同僚が読んでくれた詩の中にスティーヴンソンの詩もあったこと、そして「そのリズムと脚韻による韻律の響きの楽しさ、そこから湧き上がるイメージの心躍る思いに」気がつき、詩を楽しむようになったと綴っています。欧米の子どもたちは幼い時にたくさん詩を聞き、暗誦していきます。そういう積み重ねがことばへの感性を育てていくのです。スマホの普及によって、私たちのコミュニケーションで使うことばはどんどん短くなってきて、それだけで意志疎通が出来ている気になっていますが、実は大切なことを伝え忘れているのではと思うこともあります。この詩集は、2010年に出版されましたが、この1年品切れになっていたそうです。子どもに本を手渡す活動をされている方からの要望に応じて、この度改訂版を出版するにあたり、間崎ルリ子さんも翻訳を丁寧に見直され、単語の入れ替えや句読点の付け替えなどをされたとのことです。「2月のおはなし会プラン(幼児~小学生)」(→こちら)の導入でも、この詩集から「冬の絵本」を使っています。詩の楽しさを伝えるために、図書館のおはなし会で積極的に詩を読んであげてほしいと思っています。

 

 

『谷川俊太郎詩集 たったいま』谷川俊太郎/詩 広瀬弦/絵 講談社青い鳥文庫 講談社 2019/12/15 (出版社サイト→こちら

子どもたちに詩の楽しみを伝えたいと、上記のスティーヴンソンの詩集のところでも書いていますが、子どもたちが自分で手に取って楽しめる谷川俊太郎さんの詩集が青い鳥文庫から出版されました。『そのひとがうたうとき』、『春に』から始まり、ことば遊びなどを盛り込みながら、後半では『信じる』、『こころの色』、『愛が消える』、『ひとり』など思春期の迷いに寄り添い、またそれを支えてくれる詩が紹介されています。最後の方には『卒業式』、『交響曲』、『終わりと始まり』など新しい旅立ちに贈りたい詩が収録されています。一緒に声に出して読んでもいいし、折に触れて自分でそっと開いて読んでもいい。そんな38篇の詩が、広瀬弦さん(佐野洋子さんのご子息)のイラストとともに収められた青い鳥文庫です。おはなし会やブックトークなどで、ぜひ子どもたちに紹介してください。

 

 

 

【児童書】

『あたまをつかった小さなおばあさん がんばる』ホープ・ニューウェル/作 松岡享子/訳 降矢なな/絵 福音館書店 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

1970年に出版されて多くの子どもたちに愛されてきた『あたまをつかった小さなおばあさん』(→こちら)の続きのおはなしが2冊、この秋に出版されました。前作は『ぐりとぐら』の山脇百合子さんの挿画でしたが、今回は降矢ななさんが挿画を担当されました。長く愛されてきたちょっととんちんかんで憎めないおばあさんの雰囲気をそのままに降矢さんが描いていらっしゃいます。おばあさんは、なにか困ったことにぶつかると、頭にぬれタオルをまいて椅子に座り、人差し指を鼻の横にあてて目を閉じて考えます。その思いつくことの、面白いこと!たとえばクリスマスに大きなモミの木を切ってきて、家の中に入らないとわかると床と屋根に穴をあけて、モミの木を立てたり、クリスマスイブにはモミの木のてっぺんの星を見るためにわざわざ屋根に登って世界中の人々の幸せを祈ったり。ひとつひとつのおはなしは短くて独立しているので、おはなし会で分けて読んであげるのもよいでしょう。また、漢字も少なくルビもふってあるので、自分で読めるようになった子どもたちにおすすめできる1冊です。

 

 

 

『あたまをつかった小さなおばあさん のんびりする』ホープ・ニューウェル/作 松岡享子/訳 降矢なな/絵 福音館書店 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

小さなおばあさんは、自分の住む小さな家に誰も訪ねて来てくれないのは、通りから玄関のドアが見えないからだと思い当たります。そこでおばあさんがやったのは、ドアを外して通りの近くまで持っていくことでした。でもドアはそれだけでは立ってくれません。そこでおばあさんは蝶番とドアの枠を外してきますが、それでもだめ。となると、おばあさんはまたぬれタオルを頭に巻いて椅子に座り、人差し指を鼻のわきにあてて目を閉じて考えます。さて、思いついたことってなんだったのでしょう。こちらの巻では、おばあさんが手相を見てもらった後、旅行に出かけたり、スキーをしたり、なんともとんちんかんで楽しいおはなしがたくさんです。

 

 

 

 

 

『明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち』アラン・グラッツ/作 さくまゆみこ/訳 福音館書店 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

1939年、ナチスの侵攻から逃れるためにベルリンからハンブルクの港を経由してキューバへと向かう船に乗り込んだユダヤ人の少年ヨーゼフの家族。1994年、キューバの食糧難から逃れるために自由を求めてカリブ海を小さなボートで亡命の旅に出たイザベルの一家。2015年、シリアの内戦によって、アレッポの自宅が爆撃されたマフムードの家族は、トルコ国境を越え、地中海を渡ってヨーロッパへと逃避行を始めます。違う時代に、それぞれの家族が国を追われ難民となって困難な旅を続けていく様子が、同時進行で3人の子どもの視点から描かれます。やがて彼らの運命は、思わぬところで結びついていくのです。あとがきには難民に待ち受ける三つの試練を次のように挙げています。1)故郷での恐怖体験から逃れる試練、2)危険に満ちた難民の旅、住まいや食べ物を求め続ける旅の試練、3)新たな国で人生を一からやり直す試練。この本の作者は、印税の一部を世界の難民を救援する活動を支援するためにユニセフに寄付することも明記しています。読み進めていくにつれ、厳しい現実を突きつけられました。それでも現実を知ることはとても大事なことです。国連難民高等弁務官事務所の報告によると、2018年の難民は2590万人に上っており、そのうちの半数以上は子どもたちです。少しでも若い世代に関心を持ってもらえるといいなと思います。

 

 

 

 

『レディオワン』斉藤倫/作 クリハラタカシ/画 光村図書出版 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

詩人の斉藤倫さんはこれまでも『どろぼうのどろぼん』や『せなか町から、ずっと』など優しくてどこか切ない作品を発表してこられました。その新作は、なんと犬が主人公。「みなさん、こんばんわん。月曜夜九時。レディオワンの時間です。」と快活にトークをするDJジョン。「DJジョンさんは、どうしてそんなに犬の気持ちがわかるのですか」と質問をされるのですが、DJジョンが犬だからなのです。動物言語翻訳機コピンジャー・マシンを通すと・・・ちょっと不思議で、ほろりとするお話です。
雑誌「飛ぶ教室」に連載された作品の単行本化です。単行本になるにあたり、書下ろしで追加された部分は、水色の用紙で印刷されています。

 

 

 

 

『うちの弟、どうしたらいい?』エリナー・クライマー/作 小宮由/訳 岩波書店 2019/11/26 (出版社サイト→こちら

アニーは12歳。お母さんは8歳の弟スティーヴィーのことを「たのむわね」とだけ言い残して出ていってしまいます。育児放棄された姉弟と祖母の3人の生活は、スティーヴィーの心を荒ませます。彼は問題ばかり起こし、祖母はそんな弟を有無を言わさず暴力でねじ伏せようとして、事態は悪くなるばかりです。そんな時、アニーは新しく着任したストーバー先生は、弟をそのまま受容してくれていることに気づき、先生に相談することにします。弟は落ち着き始めるものの、家庭の事情でストーバー先生が実家に帰ってしまいます。
ある日、一大決心をして先生を訪ねていった二人は、先生は親を亡くしたあと里親に育てられていたことを知ります。家庭が機能しなくなって、精神的に不安定な子どもたちを支えていくために、必要なことは何か、それを物語を通して語りかけてくれる作品です。

 

 

 

 

『図書館からの冒険』岡田淳/作・絵 偕成社 2019/12 (出版社サイト→こちら

6年生の渉は、両親が海外出張となったゴールデンウイークの間、大叔父さんの家で過ごすことになるのですが、渉はひとつ決心していることがありました。それは大叔父さんの家に隣接している廃校になった小学校の図書館に忍び込み、そこでひと晩泊まるということだったのです。それは大叔父から聞いていた図書館にあらわれる幽霊を確かめたいと思ったのでした。ところが図書館はパラレルワールドへの入り口だったのです。嵐と地震で荒れ果てた島に迷い込んだ渉は、その島を救うために動き始めるのでした。

 

 

 

 

 

『ほんとうの願いがかなうとき』バーバラ・オコーナー/作 中野怜奈/訳 偕成社 2019/12 (出版社サイト→こちら

5年生のチャーリーの家族は、父親が拘置所に収容され、母親は心を病んでしまって育児が出来なくなったことで、バラバラになってしまいます。姉は親友の家でホームステイすることになり、チャーリーは母親の姉一家へと引き取られていきます。そこは生まれ育った街とは違って、自然豊かな山地コルビー。チャーリーは、自分は一刻も早く母親のもとへ帰るんだと、いつも斜に構えています。ところが伯母夫婦のバーサとガスは、そんなチャーリーをそのまま受け止め、そっと寄り添います。チャーリーは、近所に住むハワードと少しずつ友情を深めながら、心の傷を癒し、成長していきます。子どもが安心して成長できる居場所について、深く考えさせられました。子ども同士の友情を軸におはなしはテンポよくすすみ、野良犬から飼い犬になったウィッシュボーンの存在も絡まって、とても読みやすい本です。

 

 

 

 

『ねこと王さま』ニック・シャラット/作・絵 市田泉/訳 徳間書店 2019/12/31 (出版社サイト→こちら

 

お城を竜に壊されて、ねこと二人だけで町の三十七番地の小さな家で暮らすことになった王さまの、ちょっと不思議で楽しいおはなしです。
昔話の「長靴をはいた猫」のように利発で気の利くねこと、この世離れした王さまとのやりとりが、どこかとぼけていて、面白いです。ちょっとした息抜きに読んでみるのもいいですね。

 

 

 

 

【その他】

『はじめよう!ブックコミュニケーション 響きあう教室へ』村中李衣・伊木洋/著 金子書房 2019/11/27 (出版社サイト→こちら

 

「ブックコミュニケーション」と聞いて、「ブックトーク」とはどう違うんだろう?と思う方は多いと思います。小さな子から老人と、あるいは刑務所の受刑者と共に「本を読み合う」という活動をしてきた村中李衣さんが、教師から子どもへ、おとなから子どもへという一方通行の本の紹介ではなく、1冊の本を通しておとなと子どもが自由に感じたことを共有できるような、本を仲立ちにして会話を生み出す、そんな実践を記録したものです。もっと自由に、「こんな本を読んだよ」、「この本、おすすめだよ」と子どもたちに語りかけ、人と人とのかかわり合いの中で新しい本との出合いをどんどん作っていかないと、子どもたちの読書離れはもっと進んでしまうのではないかという危惧が背景にあるのだろうと感じながら読みました。

 

(作成K・J)