Yearly Archives: 2020

2020年12月(その2)クリスマスはおうちでね!(大きい子)
2020年12月(その1)クリスマスおめでとう(小さい子)
12月のおはなし会☆おすすめ本リスト(2020)
基本図書を読む31『クラバート』プロイスラー(再掲載)
東京子ども図書館「ブックトークカフェ・なないろ[ライブ配信のみ]」のご案内
JBBYオンラインセミナー#4 JBBY世界の子どもの本講座2020-② 「デビューから55年 挑戦する絵本作家・田島征三の現在、そしてこれから!」のご案内
JBBYオンラインセミナー#3 JBBY新・編集者講座① 株式会社コルク代表取締役 佐渡島庸平さん「エージェントが考える、進化するデジタルとは?~変容する漫画と子どもの本のゆくさき」のご案内
2020年8月、9月の新刊から(追記あり)
おすすめの幼年童話42『アレハンドロの大旅行』きたむらえり作
2020年11月(その2)さるとかに(幼児~小学生)
2020年11月(その1)もみじのはっぱ(小さい子)
科学道100冊2020年版が発表されました!
SLA情報局online 第1弾「学校図書館と著作権について」のご案内
特別研修「読書のバリアフリーをすすめるために」のご案内
基本図書を読む30『エイブ・リンカーン』 吉野源三郎(再掲載)

2020年12月(その2)クリスマスはおうちでね!(大きい子)


日本国内の新型コロナウィルス感染は、現在は比較的落ち着いた状況にありますが、ヨーロッパ各地では第3波とも考えられる感染者急増が続いています。

今年のクリスマスは、特別なことをせずに、家族でおうちで過ごす、そんな時間になりそうですね。

例年12月はクリスマスにちなんだ特別プログラムを準備する館が多いと思いますが、3密を避けるためにイベントではなく、展示やクリスマス仕様のお楽しみ袋での貸出など、違う形での本の提供を工夫してみてください。

そんなわけで、12月のおはなし会プラン大きい子向けは、おうちで過ごすクリスマスを意識して作成してみました。

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【クリスマスはおうちでね!】

導入 詩 「冬の絵本」(『改訂版 ある子どもの詩の庭で』ロバート・ルイス・スティーヴンソン/詩 イーヴ・ガーネット/絵 間崎ルリ子/訳 瑞雲舎 2019)より 1分

「夏は去り、冬が来る―
霜がたつ、ゆびがかじかむ。
コマドリが窓辺にきてとまる。
冬のカラスのすがたが見える。
たのしい絵本の時がきた。
(中略)
ああ、なんてすてきな日々だろう。
あたたかい暖炉のそばで、
絵本を読んでもらうのは
子ども部屋での、しあわせな時間!」

冬の寒い日、外で遊べないけれど、絵本を読んでもらえるなら、子どもたちには想像の世界でいろんなものに出会えるよという、子どものつぶやきを詩にしています。コロナ禍で家にいる時間が増えたら、多くの人が子どもにたくさん本を読んであげたということをニュースで聞きました。この冬もおうちで一緒に絵本を読んで楽しい時間を過ごせるといいですね。

 

 

素話「星の銀貨」(『子どもに語るグリムの昔話3』佐々梨代子・野村泫/訳 こぐま社 1991)より 4分

みなしごのちいさい女の子が、自分の持っているものを、もっと困っている人に譲っていくお話です。最後は何も無くなってしまうのですが、そこに空から星が落ちてきて銀貨になるのです。そんなこと、おとぎ話の中だけと思いがちです。たしかに空から銀貨は降って来ないかもしれませんが、誰かのために助けたことが、まわりまわって自分を助けてくれることはよくあること。そんな優しい気持ちが伝わるといいですね。

 

 

 

 

 

絵本『クリスマスツリーをかざろうよ』トミー・デ・パオラ/作 福本友美子/訳 光村教育図書 2020 9分

12月がくると、いえ今では10月31日のハロウィンが終わると、街中にクリスマスツリーを飾ります。図書館でも飾っていますよね。でもクリスマスツリーはなぜこの時期に飾るようになったのでしょう。それを親子の会話を通してわかりやすく伝えてくれる絵本です。ヨーロッパやアメリカの歴史上の人物が出てくるのですが、大きくなった時に世界史で必ず聞く人名です。そしてもともとはキリスト教に深く結びついていたものが日本でも宗教に関係なく飾られるようになった背景には、日本にも常緑樹を大切にする文化があったからでしょう。ゆっくり読むと9分と少し長いですが、クリスマスツリーの謂れを知って、おうちで飾りを楽しめるといいなと思って選びました。10月に出たばかりの新刊です。

 

 

 

絵本『きょうというひ』荒井良二/作 BL出版 2005 2分

最後に短い絵本を1冊。雪の中にロウソクの灯りをひとつひとつ灯していく女の子は、ロウソクに火をつけながら祈っています。
「きえないように」「きえないように」
ひとりひとりの命の輝きが、ひとりひとりの心にある希望が、夢が、愛が、「きえないように」と。
2020年は新型コロナウィルス感染拡大に揺れた一年でした。おとなも子どもも大変な状況の中で不安がたくさんあったでしょう。一年の最後に、みんなが幸せに、健康に過ごせるようにと静かに祈りながら読みたい1冊です。

 

(作成K・J)

2020年12月(その1)クリスマスおめでとう(小さい子)


小さな子どもたちには、クリスマスはツリーの飾りつけやイルミネーションがなんだかキラキラしていて、美味しいお菓子をたくさん食べて楽しいお祭りですね。

寒い季節だからこそ、そんな楽しさや賑わいをすべての子どもたちに届けてあげたいと願います。

(なお、このおはなし会プランに掲載しているわらべうたの楽譜は、中国地方で育ったK・Jが覚えているわらべうたを採譜したものです。市販のわらべうたの楽譜とは音程や、速度が違う場合があります。予め、ご了承ください。)

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【クリスマスおめでとう】

導入 わらべうた おすわりやす

 

 

 

 

 

おひざの上にお子さんを乗せて、上下に揺らします。しっかり子どもを抱きとめながら遊んであげましょう。

 

 

このこどこのこ

 

 

 

 

おひざの上で乗せて、おとなが左右に揺れながら遊びます。「〇〇ちゃん」と自分のお子さんの名前を入れて歌ったら、「ギュー」と抱きしめてあげましょう。

 

 

絵本『クリスマスおめでとう』ひぐちみちこ/作 こぐま社 1997 2分20秒

 

クリスマスってなに?小さな子どもたちには説明するのもとてもむずかしいですね。この絵本では、それに答えてくれています。みんなの誕生日も、このように嬉しいことなんだよと伝えられるといいですね。

 

 

 

 

わらべうた いっちくたっちく

 

 

 

 

 

 

 

となえ歌遊びです。「たいも」は里芋のことです。片方の指で、片方の指を一本ずつ指していき「すってんどん」で止まった指を折っていきます。クリスマスバージョンにしてサンタクロースやトナカイ、天使などの指人形をはめて遊んでも良いでしょう。

 

絵本『さんかくサンタ』tupera tupera/作 絵本館 2011 1分

 

「さんかくサンタが まんまるふくろをせなかにしょって しかくいおうちにはいっていった」△、〇、▢を使ったリズミカルで楽しい絵本です。

 

 

 

 

 

パネルシアター「赤鼻のトナカイ」『ブラックパネルシアター』(古宇田亮順・月下和恵/共著 アイ企画 1995)より 1分半

 

たまにはおはなし会でパネルシアターをしてみませんか?みんなが良く知っている「赤鼻のトナカイ」を歌いながらパネルを動かします。型紙がついているので、すぐに作ることができます。またブラックパネルでなくても、「赤鼻のトナカイ」だけならば普通のパネルで演じても十分楽しめます。

 

 

 

 

 

 

絵本『サンタのおまじない』菊地清/作 冨山房 1991 3分

 

3分と小さい子にはちょっと長い絵本ですが、「いちにいサンタ!」と繰り返しが続くので飽きずに聞くことができます。

 

 

 

 

終わりのわらべうた さよならあんころもち

 

 

 

 

 

(作成K・J)

基本図書を読む31『クラバート』プロイスラー(再掲載)


こちらは2016年10月28日に掲載した記事の再掲載です。児童文学というにはとても深い内容の作品、秋の夜長に再読するのにぴったりです。

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 今回の基本図書を読むでは、小学校低学年くらいから中学年くらいの子が楽しむ『大どろぼうホッツエンプロッツ』でも有名なドイツの作家オトフリート・プロイスラーが11年かけて書き上げた『クラバート』を紹介します。この作品は、国際アンデルセン賞・作家賞・次席、ドイツ児童文学賞、ヨーロッバ児童文学賞を受賞しています。

『クラバート』オトフリート・プロイスラー/作 中村浩三/訳 偕成社 1980

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

  物語は、14歳で孤児となった主人公クラバートは、自分に呼びかける奇妙な夢に誘われ、湿地のほとりにある水車小屋で11人の粉ひき職人の仲間になるところから始まります。

 「クラバートはしばらくのあいだ、霧につつまれた森のなかを、まるで盲人のように手さぐりで歩いた。するとあき地にゆきついた。ちょうど木立の下からぬけ出ようとしたとき、雲が切れて、月があらわれ、あたりのすべてが急につめたい月光のなかに浮かびあがった。

 そのとき、クラバートは水車場を見た。

 それはすぐ目の前にあった。雪のなかに黒ぐろと、おどすようにうずくまっていて、さながら、獲物を待ちぶせている、巨大な、おそろしいけだもののようであった。」(P17)

 実は水車小屋の親方は魔法使いで、金曜日の夜になると、職人たちをカラスに変え、魔法を教えていたのです、魔法を使えば、苦しい労働も楽にでき、他人をも支配することができると思ったクラバートは懸命に魔法を勉強します。しかし、クラバートが水車小屋に来て1年目の大みそか、クラバートを何かと気遣ってくれた職人頭のトンダの死をきっかけに、親方の変わりに毎年職人の中から一人、犠牲にならなければならないことを知るのです。最初の1年がふつうの3年に相当する水車小屋で、クラバートは少しずつ秘密を知りながら、心も体も成長していきます。そして、村の少女に恋をし、娘の愛を得、親方から自由になるために、生死をかけた対決をするのです。

 この物語は、ドイツのラウジッツ地方に伝わる<クラバート伝説>を素材に描かれたもので、プロイスラーは、少年のときに読んだクラバート伝説から受けた感銘の深さについて、次のように述べています。

「この物語は当時わたしに強烈な印象をあたえました。なかでも、神秘的なひびきをもつクラバートという名前がわたしの記憶に強くきざみこまれました。それにまた、水車場の職人たちの頭上に死の運命がただよい、年ねんかれらのひとりにおそいかかるという話に、わたしはひどくうごかされ、心をうばわれました。ですから、その後二十年にたって、クラバートに再会したような気持ちになったのも、けっしてふしぎではありません」(「解説」より P379)

 ラウジッツ地方は、ドイツ人(ゲルマン民族)のほかにヴェント人という少数のスラブ系の人々も住んでいる地域で、キリスト教もはいってきましたが、在来の異教の信仰の風習を濃くとどめ、魔女や魔法使いの伝説も豊富に残っているそうです。作品の中で描かれる、湿地のほとりにある不気味な水車小屋の様子、粉ひき職人や村人たちの生活などは、土地に根ざした現実感があります。

 作品の構成は、「1年目」「2年目」「3年目」の3章から成っており、年を重ねるごとに親方との対決が近づき、迫力が増していきます。1年目のクラバートはまだ何も知らない少年で、魅惑的な魔法の力に魅かれますが、次第にその力の代償の大きさを知り、自分の全てをかけて打ち勝とうとします。親方にさとされないように力になってくれる仲間、恋した少女との心のつながり、そして何としてでも抗うのだという自分の強い意志をもってして対決に臨んだとき、クラバートを解放してくれたものは何だったのでしょうか。クラバートを支えてくれた友人ユーローは、対決前のクラバートにこう伝えます。

「苦労して習得しなければならない種類の魔法がある。それが『魔法典』に書いてある魔法だ、記号につぐ記号、呪文につぐ呪文で習得してゆく。それからもうひとつ、心の奥底からはぐくまれる魔法がある。愛する人にたいする心配からうまれる魔法だ。なかなか理解しがたいことだってことはおれにもわかる。――でも、おまえはそれを信頼すべきだよ、クラバート。」(P355)

 この物語は、これから世に出て様々な矛盾と向き合いながらも、希望をもって前に進んでいこうとする若い人たちに、生きていくうえで大切なものは何かを教えてくれます。分厚い本ではありますが、文体は簡潔で読みやすく、振り仮名も丁寧に振られていますので、読みやすいと思います。

 尚、プロイスラー氏が1984年に日本講演のなかで語ったものを再話した「クラバート伝説」が、季刊誌<「子どもと昔話」33号 2007年秋 小澤昔ばなし研究所編集・発行>に掲載されています。プロイスラーの作品との大きな違いは、クラバートを解放するのは恋人ではなく母という点ですが、水車小屋で働くこと、実は親方は魔法使いであること、馬や牛に化けて取引することなど、モチーフが生かされていることがわかります。

(作成 T.I)

東京子ども図書館「ブックトークカフェ・なないろ[ライブ配信のみ]」のご案内


公益財団法人 東京子ども図書館が主催の「ブックトークカフェ・なないろ[ライブ配信のみ]」についてご案内します。
(自己啓発(自己研鑽)のための研修としてご案内しています)

気軽な雰囲気でブックトークを聞いてたのしむ会で、参加者どおしの情報交換もできるとのことです。
ブックトークを見てみたいという方、ぜひご参加ください。

申込方法など詳細は、東京子ども図書館のWebサイト→こちらをご覧ください。
※新型コロナウイルス感染拡大の状況を考慮し、「ライブ配信のみ」での開催に変更されています。   

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「ブックトークカフェ・なないろ[ライブ配信のみ]」

<日時> 2020年10月31日、2021年1月30日 *いずれも土曜日 16時半~18時
<会費> 1,000円
<定員> 30名 先着順

(作成 T.I)

JBBYオンラインセミナー#4 JBBY世界の子どもの本講座2020-② 「デビューから55年 挑戦する絵本作家・田島征三の現在、そしてこれから!」のご案内


日本国際児童図書評議会(JBBY)主催のJBBYオンラインセミナー#4についてご案内します。
(自己啓発(自己研鑽)のための研修としてご案内しています)

『ふるやのもり』(福音館書店刊)で絵本作家としてデビューし、斬新な挑戦をし続けている田島征三さんが、少年時の故郷・高知での原体験をモチーフにした絵本『つかまえた』(偕成社刊)に込めた熱い思いや、これから30年かけて描きたい様々な作品への抱負などをお話されます。

申込方法など詳細は、JBBYのWebサイト→こちらをご覧ください。

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JBBY世界の子どもの本講座2020-② 「デビューから55年 挑戦する絵本作家・田島征三の現在、そしてこれから!」のご案内

<日 時> 2020年10月31日(土)14:00~16:00(開場13:30予定)
<主 催> 日本国際児童図書評議会(JBBY)
<講 師> 田島征三さん
<参加費>  1,200円(事前払い込み)
<参加方法>  オンライン(ZOOM)
※事前予約・事前払い込みが必要です。

(作成 T.I)

JBBYオンラインセミナー#3 JBBY新・編集者講座① 株式会社コルク代表取締役 佐渡島庸平さん「エージェントが考える、進化するデジタルとは?~変容する漫画と子どもの本のゆくさき」のご案内


日本国際児童図書評議会(JBBY)主催のJBBYオンラインセミナー#3についてご案内します。
(自己啓発(自己研鑽)のための研修としてご案内しています)

JBBY新・編集者講座は、子どもの本の編集者に向けた連続講座です。今期は「今、編集者が考えるべきこと」をテーマに、オンライン講座として開催されます。

第1回は、ベストセラー作の誕生に関わり続けている佐渡島氏が、エージェントの視点からマンガと子どもの本の未来についてお話されます。興味・関心のある方はぜひご参加ください。

申込方法など詳細は、JBBYのWebサイト→こちらをご覧ください。

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JBBY新・編集者講座① 株式会社コルク代表取締役 佐渡島庸平さん「エージェントが考える、進化するデジタルとは?~変容する漫画と子どもの本のゆくさき」

<日 時> 2020年10月21日(水)19:30~21:00(開場19:00予定)
<主 催> 日本国際児童図書評議会(JBBY)
<講 師> 佐渡島庸平さん
<参加費>  1,800円(事前払い込み)
<参加方法>  オンライン(ZOOM)
※事前予約・事前払い込みが必要です。

(作成 T.I)

2020年8月、9月の新刊から(追記あり)


8月、9月に出版された絵本、児童書のうち、ぜひお薦めしたいものを紹介いたします。

ただし、まだ書店での十分な時間をかけての選書が出来ていません。こちらで紹介する本は、横浜日吉のともだち書店、神保町ブックハウスカフェに注文し送付いただいたものを、読んで記事にしています。なお、一部7月以前に出版された本もあります。

また今回は読み物をチェックできず絵本のみになっています。

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国のきになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】

『ふーってして』松田奈那子/作 KADOKAWA  2020/7/9 (出版社サイト→こちら

 

(書影は出版社サイトでご確認ください)

水彩絵の具をぽたりと落として、それに息を吹きかけて出来上がる「ドリッピング」という技法で作成されています。偶然が織りなすさまざまな形が、絵本にダイナミックな展開を与えています。巻末には「ふーってしてみよう」とドリッピングの方法も説明しています。
絵本を読んで、自分でもドリッピングで絵を描いてみられるといいですね。

 

 

『みんなみんな おやすみなさい』いまむらあしこ/文 にしざかひろみ/絵 あすなろ書房 2020/7/30 (出版社サイト→こちら

 

17.8×18の小さな判型の絵本です。抑えた色彩で、満月の夜につぎつぎ動物たちが眠りについていきます。「よるのまきばに、おつきさまがのぼる こひつじたちは、とってもねむたくなってきた おやすみ おやすみ こひつじたち」、「よるのもりに、おつきさまがのぼる ふくろうたちは、とってもねむたくなってきた おやすみ おやすみ  ふくろうたち」と繰り返しが続きます。それにつられてだんだん眠くなってくる穏やかな絵本です。

 

 

 

『ひろいひろいひろいせかいに』ルイス・スロボドキン/作 木坂涼/訳 偕成社 2020/8 (出版社サイト→こちら

 

わたしたちを取り巻く世界にはたくさんのものや人、動物たちがあふれていると、カラーページと白黒のページで次々に見せてくれます。それでも最後のページでは「だけど せかいじゅうさがしても あなたはひとり あなたしか いない わたしもひとり わたししかいない」と結ばれています。この世界の多様性を示しつつ、ひとりひとりの尊厳を伝えてくれる素敵な1冊です。

 

 

 

 

 

『これがぼくらにぴったり!』アン・ローズ/作 アーノルド・ローベル/絵 こみやゆう/訳 好学社 2020/8/23 (出版社サイト→こちら

 

20.8×18.5のこちらも判型の小さな絵本ですが、ある意味、哲学的な意味を持っている深いテーマを扱っています。ロンソンさんは有る時くつひもが切れてしまい新調します。くつひもだけが新しいと釣り合わないといって、靴を新調します。すると来ている服も帽子も何もかも新調しないと気が済まなくなるのです。そして奥さんの服も新しくするとぼろ屋に住んでいては釣り合わないと借金をして大きな屋敷まで買うのですが・・・身の丈に合った暮らしの大切さに気づかせてくれるおはなしです。

 

 

 

『まほうのハッピーハロウィン』石津ちひろ/文 岡田千晶/絵 ブロンズ新社 2020/8/25 (出版社サイト→こちら

 

個人的なことになりますが30年ちょっと前に香港に住んでいた時に初めてハロウィンを我が子たちと体験しました。同じコンドミニアムの中で目印のかぼちゃを玄関先に置いてある家々を子どもたちが仮装してまわりました。大きい子が小さい子の手を引きながら、アメリカ人、イギリス人、香港人、日本人、さまざまな国の子どもたちが手をつないでまわりました。帰国した日本ではまだハロウィンのお祭りは一般的ではありませんでした。ところが2度目の海外転勤から戻った2004年には日本でもあちこちでハロウィンが定着し、お菓子メーカーも第2のバレンタインデーのように楽しいお菓子を販売していますね。
この絵本は、主人公の女の子みのりが手作りの衣装で参加したこども会のハロウィン祭りが描かれています。小さないとこのあきとくんは初めての参加で、なかなか声が出せません。みのりはあるやり方であきとくんに魔法をかけるのです。岡田千晶さんの描く優しいイラストが、楽しいハロウィンの夜を柔らかく表現していて素敵です。

 

 

 

『トラといっしょに』ダイアン・ホフマイアー/文 ジェシー・ホジスン/絵 さくまゆみこ/訳 徳間書店 2020/8/30 (出版社サイト→こちら

 

トムはある時美術館でトラの描かれた絵を見ます。そのトラはトムに気づいて草の間からじっとこちらを見ているように感じられました。家に帰ってトムはトラの絵を描きます。
その夜、トムの部屋の中にトラがあらわれます。そして「さんぽにいこう」と誘ってきたのです。月の光に誘われて、トムとトラは夜の森へと出かけていきます。幻想的で美しい絵が、ファンタジーの世界を彩ってくれます。トムが美術館で見た絵はフランスの画家アンリ・ルソーが1891年に描いた「不意打ち」という作品であることが巻末で示され、日本でルソーの絵を見られる美術館のリストも示されています。この絵本を読んだ子どもたちが、絵を見に美術館へ足を運ぶことができたら、素敵ですね。

 

 

 

『あ』谷川俊太郎/文 広瀬弦/絵 アリス館 2020/9/1 (出版社サイト→こちら

 

「あ」で始まることばを、物語のように表現した絵本です。谷川俊太郎さんの文に絵をつけるのは佐野洋子さんの息子さんの広瀬弦さん。レタリングで表現される流れるような文字の配置と、背景の色やイラストレーション、どれも味わい深い新しいスタイルの絵本です。

 

 

 

 

『珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界』奥修/文・写真 福音館書店 2020/9/5(出版社サイト→こちら

 

福音館書店月刊誌たくさんのふしぎ2019年6月号のハードカバー版です。福音館書店の月刊誌がこんなに早くハードカバー化されるのは、それだけ話題を呼んだということなんでしょう。
珪藻がこんな形でこんなに美しいということを、この絵本で初めて知りました。この絵本では、珪藻とは0.0005ミリから0.5ミリの小さな藻です。そんな小さな藻をどのような場所で、どのように採取するのか、そしてそれをどのように分別して珪藻アートに仕立てていくのか、詳しく説明が載っています。絵本の帯に「顕微鏡の奥にひろがる満天の星空、打ちあげ花火のきらめき 極小の微生物による、世界一ちいさい”ガラスアート”」と書かれています。そうなんです。珪藻はガラスの殻を持っているため、その殻を顕微鏡下で並べて、創り出したアートなのです。ため息が出るほどに美しい自然の造形を楽しめる絵本です。

 

 

 

『あるヘラジカの物語』星野道夫/原案 鈴木まもる/絵と文 あすなろ書房 2020/9/15 (出版社サイト→こちら

 

1996年8月にロシア・カムチャッカ半島で取材中にヒグマに襲われ亡くなった動物写真家星野道夫さんが残した一枚の写真から着想を得て作られた絵本です。その写真とは2頭のヘラジカが角を絡ませたまま骨になっているものです。(裏表紙にその写真が掲載されています)絵本作家鈴木まもるさんは自然を愛し、世界中の鳥の巣を取材して描いていますが、同じように自然を愛する星野さんとは同い年で自然の中で暮らし動物を愛しているということで意気投合されたそうです。印象深いこの写真の絵本を作りたいと、写真が撮られたアラスカに取材に行かれ、星野さんのお連れ合いの了解を得て制作されました。厳しいアラスカの自然の中で生きるヘラジカや動物たちの生命の連鎖を描く大作です。

 

 

『ねこはるすばん』町田尚子/作 ほるぷ出版 2020/9/15 (出版社サイト→こちら

我が家も猫を飼っています。出かけて帰ってくると玄関先まで必ずお迎えに来てくれます。いい子でお留守番していたんだなと、室内に入るとティッシュペーパーが引き出されてかじられていたり、花瓶の花が全部引っ張り出されていたりします。
この絵本に出てくる猫はその程度のいたずらなんかには見向きもしません。おとなしく留守番していると思いきや、洋服ダンスの向こう側に通り抜け・・・その先に広がっているのは猫たちの世界。気の向くままカフェにより、散髪に行き、映画も見る、釣りもする。でも飼い主が帰宅するころまでには、ちゃんと元の世界に戻ってお出迎え。思わず、我が家の猫にも「こんな風に過ごしてるの?」と聞きたくなってしまう、そんな絵本です。

 

 

 

『がろあむし』舘野鴻/作 偕成社 2020/9 (出版社サイト→こちら

しでむし』、『ぎふちょう』、『つちはんみょうなど、緻密な描写で昆虫の生態を描いた絵本で高い評価を得ている舘野鴻さん(公式サイト→こちら)の新作絵本です。
「がろあむし」という聞きなれないこの昆虫は、1914年に栃木県日光市の中禅寺湖畔でフランス人外交官ガロアさんが発見したことで命名されました。暗黒多湿の地下世界で生きるこの昆虫を描くために苦労をして観察したことなどが巻末に詳細に記載されています。絵本は上空高くから俯瞰した川と里山の景色から始まり、落ち葉が積み重なる地面へと移っていきます。そして地中に蠢く虫たちの世界を描き出します。舘野さんは「私たちの生活とはまったく関係のなさそうな暗黒の地下世界は、じつは私たちの暮らしのすぐそばにあり、その基礎となる地面を支えています。こうした大地の長い歴史と大きな循環の中に、私たちは暮らしているのです。」と書いています。同じ地球に棲む生命として誰も気にかけない小さな昆虫に想いを馳せることが、これからの時代を生きていく上でもとても重要なことだと知らされました。この絵本の表紙絵を描く過程が動画で紹介されています。ぜひこちらもご覧ください。YouTube画像(→こちら

 

 

(作成K・J)

おすすめの幼年童話42『アレハンドロの大旅行』きたむらえり作


今回は、小さなアレハンドロの頑張りに励まされる『アレハンドロの大旅行』を紹介します。

『アレハンドロの大旅行』 きたむらえり作 福音館書店 2015

 イノシシのアレハンドロは、にぎやかな大家族で暮らしていましたが、とてもおとなしい子で一言も話しません。心配した両親は、アレハンドロを遠くの丘まで、一人で行かせることにしました。旅の途中、アレハンドロは、勇気を出して、こんにちは、ありがとう、さようなら、を言おうとするのですが、いつもタイミングを逃してしまいます。誰とも話せないまま、ようやく丘の頂上にたどり着いたとき、アレハンドロの前には、見たこともない高い山がそびえたっていました。初めてみるながめに、アレハンドロが思わず、「こんにちはー」と叫ぶと、山は「こんにちはー」と返事をしてくれました。アレハンドロは嬉しくなって、山に「ありがとう」と言うと、「ありがとう」と返してくれました。アレハンドロは喜んで、とんだり、はねたり、おどったりしました。帰り道、アレハンドロは自分の名前も大きな声で言えるようになっていて、「ただいまー」と元気に家に帰っていくのです。

 大きな危険に見舞われる大冒険ではありませんが、見事に使命を果たす行きて帰りし物語になっています。子どもたちもアレハンドロの頑張りに共感するところが多いでしょう。初めてのこと、苦手なことを、ドキドキしながら乗り越え成長していく子どもたちに、優しく寄り添ってくれる作品です。

 著者がアルゼンチンに住んでいたときの思い出をもとに描いた作品とのことで、グアナコ、アルマジロ、コンドルなど登場する動物は、独特で愉快です。力のぬけたほのぼのした絵は、豊かに広がる草原の空気が伝わってきますし、アレハンドロのおっとりした雰囲気にもよく合っています。

 一文一文が短いので、自分で読み始めたばかりの子でも読みやすいでしょう。また落ち着いた装丁と挿絵のため、小学校の中学年くらいの子も手に取りやすいと思います。長いお話は難しそうだけれど、小さい子の本は読みたくないなという子にも、さりげなくおすすめしてはいかがでしょうか。

(作成 T.I)

 

 

2020年11月(その2)さるとかに(幼児~小学生)


昔話は、まだテレビもないうんと昔、囲炉裏端に座り、祖父母から孫へ、親から子への語り継がれた庶民の伝承です。

その中には人生を生きるヒントがなにか隠れています。秋になると私は「さるとかに」(「かにむかし」や「さるかに合戦」というタイトルになっている本も)を思い出します。

因果応報、そして弱きものを助けるチームワーク、そんな教訓もあるのでしょうが、テンポよく語られるおはなしは小気味のよいものです。

11月のおはなし会プランその2は、この「さるとかに」を中心に組み立ててみました。

 

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【さるとかに】

導入 詩「かき」 『まど・みちお詩集 ぞうさん』(まど・みちお 童話屋 2019)より 1分

「かきがまっかに
 うれたので
 からすが みんなに
 しらせます
  かあかあ 
  かきのみ
  まっかっか(後略)」

 

 

 

柿の実が熟れて真っ赤になっている様子を、からすの目線で詠んだ短い詩です。2度、3度繰り返して口に出して読んでみましょう。子ども達と交互に声に出してみます。

 

 

 

素話「さるとかに」『子どもに語る 日本の昔話②』(稲田和子・筒井悦子/編著 こぐま社 1995)より 8分半

「さるとかに」のテキストは、今回こぐま社の『子どもに語る 日本の昔話②』を選びました。
福音館書店『日本の昔話④さるかにかっせん』に再話されている「猿かに合戦」(10分)もあります。語りやすいテキストを選ぶとよいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

わらべうた さるのこしかけ

 

 

 

 

輪になって歩きながら「めたかけろ」で身体を屈伸を3回する遊びですが、おはなし会の時は、おとなのお膝の上に座って歌に合わせて上下に揺らします。

 

 

 

絵本『さるとびっき』山形の昔話 武田正/再話 梶山俊夫/画 福音館書店 2016 5分半

 

 

もうひとつもさるの出てくる昔話です。「びっき」とはかえるです。さるのほうから一緒に田んぼを作って稲を育てようと誘うのですが、稲刈りまでは作業をする時になると頭が痛い、お腹が痛い、腰が痛いなどと言っては、すべての作業をびっきに任せっぱなし。それなのに収穫が終わり餅つきが始まると・・・昔話の中のさるは欲張りに描かれていますが、ちょっと間抜けで憎めません。

 

 

 

 

 

 

絵本『もりのてぶくろ』八百板洋子/文 ナターリヤ・チャルーシナ/絵 福音館書店 2010 1分10秒

 

落ち葉っててぶくろにみえるんですよね。きれいな葉っぱをみつけた動物たちが「てぶくろみたい」と言って前足をあてていきます。秋の深まるころに読んであげたい1冊です。

 

 

 

 

 

終わりのわらべうた さよならあんころもち

(作成K・J)

2020年11月(その1)もみじのはっぱ(小さい子)


幼い時に、母が良く歌ってくれていた童謡「もみじ」(古村徹三/作詞)の「あかいあかいもみじのは もみじのはっぱは きれいだな ぱっとひろげた あかちゃんの おててのように かわいいな」という歌詞が、秋が深まってくると自然に体の中から湧き出してきて口をついて出てきます。

赤ちゃんの小さな指を思い出しながら、11月のおはなし会プランを作成しました。わらべうたも指で遊ぶものを選びました。

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【もみじのはっぱ】

導入 わらべうた このこどこのこ

 

 

 

お膝の上にお子さんを乗せて、おとなのほうが左右に静かに揺れます。「〇〇ちゃん」とお子さんの名前を呼んだあとはぎゅーっと抱きしめてあげましょう。

 

 

 

絵本『さわさわもみじ』ひがしなおこ/作 きうちたつろう/絵 くもん出版 2013 1分半

 

詩人のひがしなおこさんが描写するもみじが散る様子。赤ちゃんには難しいと思うかもしれませんが、小さな赤ちゃんも音の響きを楽しむことができます。ぜひ読んであげてください。どんぐりが「ぽとん ことん ぽとん ことん」と落ちる音など、とても喜びます。

 

 

 

 

わらべうた ここはてっくび

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手首→掌→親指→人差し指→中指→薬指→小指と順番にさわっていく遊びです。新型コロナウィルスだけでなく、寒くなっていく時期はインフルエンザも流行し始める時期と重なります。ウィルスをもらうのは圧倒的に手で触ることが多いのです。このわらべうたは手洗いのためのものではありませんが、手首から一本一本の指の間を洗うことを歌いながら子どもに促すことができるので、若いパパ、ママも喜んで覚えてくれます。

 

 

 

絵本『ててちゃん』土橋悦子/文 織茂恭子/絵 福音館書店 2008 1分

 

顔を触って遊ぶわらべうたが元になっている絵本です。はじまりは「おおやぶをかきわけて」、これは髪の毛を触ります。おでこ、眉毛、耳、鼻、頬、口、胸、お腹をさわってくすぐるという順番になっています。絵本を一通り読んだ後に、親子で遊んでもらいましょう。

 

 

 

 

わらべうた いっちくたっちく

 

 

 

 

 

 

 

指を一本ずつ触って遊ぶ唱え歌です。「たいも」とは大きな里芋のこと。「すってんどん」のところで触った指を折り畳み、四本指で続きを歌います。

 

 

絵本『あきぞらさんぽ』えがしらみちこ/作 講談社 2018 2分

 

女の子がお散歩にでかけます。どんぐりやみのむし、落ち葉をみて真似っこ遊び。読んでもらいながら、子どもたちも一緒にやってみるといいですね。小さい子向けにはちょっと長めの2分ほどのおはなしですが、場面がかわったり、最後はおとうさんに「高い、高い」をしてもらったりと、飽きさせないと思います。

 

 

 

 

 

 

わらべうた おやゆびねむれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも指を触っていくわらべうたです。親指から順番に折りたたんでいきます。「ねんねしな ねんねしな ねんねしな」の部分では、指を寝かしつけるように優しく撫でます。

 

終わりのわらべうた さよならあんころもち

 

 

 

 

 

 

(作成K・J)

科学道100冊2020年版が発表されました!


自然科学の総合研究所、理化学研究所と編集工学研究所による科学書のセレクト「科学道100冊」の2020年版が発表されました。

「科学道100冊2020」

「科学道100冊」プロジェクトは、書籍を通じて科学者の生き方・考え方、科学の面白さ・素晴らしさを届ける事業として、2017年に始まりました。

「科学」と「本」という、理化学研究所と編集工学研究所の強みを生かして、中学生・高校生を中心に幅広い層に科学の魅力を多様な視点から伝えるものになっています。

 

 

昨年の「科学道100冊」の記事は、「ロウソクの科学」を紹介するページでジュニア版についてお知らせしました。(→こちら
(ジュニア版は小学生にも理解できるラインナップになっています)

ブックレットなども取り寄せて館内で展示することも可能です。ぜひ参考にしてみてください。

(作成K・J)

SLA情報局online 第1弾「学校図書館と著作権について」のご案内


全国学校図書館協議会(全国SLA)が開局する,オンラインイベント「SLA情報局online」についてご案内します。
(自己啓発(自己研鑽)のための研修としてご案内しています)

「SLA情報局online」は、コロナ禍により、全国大会や研修会が中止となる中、一人職場になりがちな学校図書館担当者に向けて、有用な情報を届け、スキルアップや交流の場となるよう、企画されたとのことです。第1弾は,「学校教育に関わるすべての人に! みんなで学ぼう 学校教育と著作権」となっています。関心のある方はぜひご参加ください。

申込方法など詳細は、全国学校図書館協議会Webページ→こちらをご覧ください。

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SLA情報局online「学校教育に関わるすべての人に! みんなで学ぼう 学校教育と著作権」

<日時>2020年10月10日(土)10:00~11:20〈予定〉
<会場>オンライン開催
<講師>森田盛行氏(全国SLA顧問)
<参加者>学校図書館や教育、子どもの読書など、関心のある方ならどなたでも
<参加費>無料(通信費は自身でのご負担となります)
<申込締切>2020年10月7日(水)

(作成 T.I)

特別研修「読書のバリアフリーをすすめるために」のご案内


公益財団法人 伊藤忠記念財団主催の特別研修「読書のバリアフリーをすすめるために」についてご案内します。
(自己啓発(自己研鑽)のための研修としてご案内しています)

この研修は、読むための障害を解消するさまざまなバリアフリー資料の紹介を中心に、障害の特徴とそれにあった支援方法について学ぶことが目的となっています。障害のある子どもたちへ読む楽しさを届けることに興味・関心のある方は、ぜひご参加ください。

詳細は、公益財団法人伊藤忠記念財団Webページ→こちらをご覧ください。

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特別研修「読書のバリアフリーをすすめるために」

<日時> 2020年10月17日(土) 午後12時30分~午後4時30分(開場:12時00分)
<会場> 国立国会図書館 国際子ども図書館 アーチ棟1階 研修室1(台東区上野公園12-49)
<主催> 公益財団法人 伊藤忠記念財団
<対象> 学校教職員、図書館職員、医療関係者、障害のあるお子さんのいるご家族、その他この事業に興味や関心のある方。(原則として18歳以上)
<定員> 50名(申し込み先着順 締切:9月30日(水))
<受講料> 無料
<講義内容>
Ⅰ.国際子ども図書館が所蔵する障害者向け資料とその提供について【国立国会図書館国際子ども図書館職員】
Ⅱ.読書バリアフリー法 開始より1年~法の精神と第1次基本計画 徹底解説~【筑波大学附属 視覚特別支援学校 教諭 宇野和博 先生】
Ⅲ.やさしく読める本を届ける~知的障害がある方の読書ニーズと支援プログラム例~【新潟リハビリテーション大学大学院 リハビリテーション研究科 教授 藤澤和子 先生】
Ⅳ.一人ひとりにあった読書スタイルを提供する~わいわい文庫の校内周知と活用の実際~【横浜市立上菅田特別支援学校 教諭 岩﨑有美 先生】
・伊藤忠記念財団の目指す活動【伊藤忠記念財団電子図書普及事業部】

(作成 T.I)

基本図書を読む30『エイブ・リンカーン』 吉野源三郎(再掲載)


こちらは2016年9月30日に公開した記事の再掲載です。4年前の11月のアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が選ばれました。それからの4年間は世界的にもナショナリズムが台頭してきました。今年もまたアメリカ大統領選挙が行われます。トランプ大統領が再選されるか、世界中が注目しています。その動きを注視しながら、再読したいと思います。

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 2016年11月8日にアメリカ大統領選挙が行われますが、今回の「基本図書を読む」では、「人民の、人民による、人民のための政治を、断じてこの地上から死滅させない」というゲティスバーグ演説で有名な第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの伝記を紹介します。

エイブ・リンカーン (ジュニア版 吉野源三郎全集) 
吉野 源三郎
ポプラ社
2000-08

 

 

 

 

 

 リンカーンの伝記は多数出版されていますが、この作品は、子どもたちが読み物として読めるよう、事実に基づいて物語風に書かれています。肩書や成し遂げたことだけでなく、リンカーンが何を見て、何を感じたのか、内面まで掘りさげて描かれているので、信念をもち自分の成すべきことにしっかり向き合った一人の人間を感じることができます。

「都会育ちの人びとから見ると、彼は感じのにぶい男に見えましたし、たしかに彼の心は、ものごとに応じて軽快に、しなやかに動いてゆくほうではありませんでした。しかし、彼はものごとをどっしりと深く経験してゆく男でした。心の表面ではなく、魂のしんで経験してゆく男でした。このしんまでひびいてくるほどの経験はめったにありませんが、その代わり、このしんまでしみ通った以上は、一生心から消しとることができない思いとなって残ります。」(P124)

 リンカーンは、貧しい家庭に生まれながら、自分の力で身を立て、州議会の議員からやがてアメリカ大統領となります。当時アメリカでは、奴隷制をめぐる争いが激しさを増していました。リンカーンは、ニューオリンズの奴隷市場で混血の少女が裸にされて売られていく場面に衝撃を受け、その出来事を生涯忘れることがなかったそうで、奴隷制に反対し続けました。ただしすぐに廃止するという姿勢をとっていたわけではなく、アメリカが分裂することがないよう、少しずつ奴隷州より自由州を多くしていくことで、奴隷制をなくそうと考えを持っていたそうです。しかし奴隷制への反対を表明していたリンカーンが大統領となることで、ついにアメリカ南北戦争が起こります。リンカーンは、その南北戦争中に奴隷解放宣言を出しますが、結局戦いは4年も続くことになります。そして、北軍が勝利をおさめた11日後にリンカーンは暗殺されるのです。

 リンカーンが奴隷解放宣言を出すに至るまで、奴隷制をめぐってアメリカがどのように揺れ動いたのか、当時のアメリカの政治や人々の生活も物語の中でわかりやすく描かれています。物語になっていることで、過去の出来事を読んでいるというよりは、リンカーンの生きた時代の空気を感じながらその場にいるように読むことができます。リンカーンの一生をみていると、苦難が多く、華々しく幸福な人生を歩んだとは言い難いかもしれまん。冗談を言って人を笑わせるのが好きで、明るく朗らかな人柄だったそうですが、一人でいるときは深い悲しみの表情を浮かべ沈みこんでいることもあったようです。この本を読み終えると、長年の苦労に耐え、深いしわの刻まれた、それでもしっかり立っている老木のような独りの人間が心に残ります。(リンカーンの身長は193センチもあったそうです。)

 著者の吉野源三郎は、哲学者でもあり、編集者でもありました。戦前、新潮社の「日本少国民文庫」の編集に携わり、『エイブ・リンカーン』の原型となった数章もこの文庫に収められています。このエイブ・リンカーンの伝記から、子どもたちに「人としてどのように生きるか」という問いに真摯に向き合ってほしいという著者の強い思いが伝わってきます。子どもたちは、この本を通して、エイブ・リンカーンその人と、一人の人間を描き出した著者、信念をもった二人の大人に出会うことができるのではないでしょうか。

 また、リンカーンの有名な子ども向けの伝記に、ニューベリー賞など数々の賞を受賞した『リンカン―アメリカを変えた大統領』があります。

 『リンカン―アメリカを変えた大統領』(ラッセル・フリードマン著 金原瑞人訳 偕成社 1993)

 
リンカン―アメリカを変えた大統領 
ラッセル・フリードマン
偕成社
1993-07

 

 

 

 

 

  著者のラッセル・フリードマンはジャーナリストで、この本では数多くの写真や資料をもとに、リンカーンの一生を客観的に描いています。少し通った小学校で学んだときのノート、「私は奴隷になりたくありません」と書いた自筆の文、またたくさんの顔写真から、リンカーンの人柄を感じることができます。南北戦争の戦場の写真(戦場で倒れた兵士たちの写真もあります)や大統領就任演説の写真(当時流行していたシルクハットをかぶっている観衆がたくさんいます)などから当時の様子が伝わってきます。 吉野源三郎の物語風の伝記とは異なった手法ですが、その人の生きた時代がどのようなもので、その中でどのように生きたのか、欠点や失敗を含め一人の人間の生き様がに描かれていることは共通しています。

 リリアン・スミスは『児童文学論』(岩波書店 1964)の「知識の本」の章の中で、次のように記しています。

「歴史や伝記にでてくる人物の生涯は、想像力を豊かにし、希望や競争心を高めてくれるものにみちている。この種類の本を読むことは、子どの人生経験を広める。つまり、人間の生活という大きなドラマにたいする共鳴と理解を、子どもの内によびおこすのである。」(P345)

 小学校高学年になると社会に目を向けるようになり、その中で自分はどう生きていくのか?と考えるようになってきます。そのような子どもたちの力になる、しっかりと時代をとらえ、その人物を描き出した伝記を手渡していきたいものです。

(作成 T.I)

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