2019年12月、2020年1月の新刊から(追記あり)


2019年12月、2020年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中からおすすめのものを紹介します。(一部11月に出版されたものもあります)

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。今回は一部寄贈された作品も含まれています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【絵本】

『もし地球に植物がなかったら?』きねふちなつみ/作 真鍋真、ジョン・ブルタン/監修 あすなろ書房 2019/11/30

2019年は日本では猛暑や台風による水害が襲い、南半球オーストラリアでは年末から、かつてないほどの山火事、森林火災が続いています。
温暖化による地球環境の変化が私たちの生活にどんな影響を与えているか、多くの人が関心を寄せていることでしょう。
さて、この絵本は46億年前の地球誕生のあと、どのように生命が誕生していったのか、特に植物がどのように発生し、動物の生命を支えてきたかを、描いている科学絵本です。科学的な視点で書かれていますが、絵は美しい木版画で、絵を見ながら想像を膨らませ、何億年、何万年もさかのった地球の姿を思い浮かべることが出来るでしょう。

 

 

 

 

『ライオンとタカとアリになった男の子 ノルウェーのむかしばなし』菱木晃子/文 MARUU/絵 BL出版 2019/11/  

身寄りのなくなった男の子が、たったひとつ父が遺してくれた剣と知恵を使ってライオンとタカとアリの争いをおさめます。そのお礼に、ライオンとタカとアリは、望む時にライオンにもタカにもアリにも変身できる力を与えてくれました。その力を使って恐ろしいトロルに狙われている王国を救う冒険をします。19世紀半ばにペーテル・アスビョルセンとヨルゲン・モーがノルウェー各地に伝わるおはなしを集めて民話集を編みました。その民話集の中にあるおはなしを元に作られた絵本です。MARUUさんの描く繊細で美しい絵も、むかしばなしの世界に私たちを誘ってくれることでしょう。

 

 

 

 

 

『チンチラカと大男 ジョージアのむかしばなし』片山ふえ/文 スズキコージ/絵 BL出版 2019/12/10  

2015年までグルジアと呼ばれていたジョージアに伝わる昔話です。貧しい家に住む三人兄弟は、仕事を探しに出かけます。末っ子のチンチラカは知恵があることで知られていました。そのため、すぐに王さまに雇ってもらえました。しかし王さまからの依頼は、魔の山にすむ大男から黄金の壺を取って来いというもの。黄金の壺を取ってくると、王さまは次の命令をくだします。その度にチンチラカは知恵を使って、最後にはとうとう大男をやっつけてしまいます。国土のほとんどが山岳地帯ならではのダイナミックなおはなしで、スズキコージさんの絵がさらにそのおはなしに勢いをつけています。遠い国ジョージアに想いを馳せながら読みたい絵本です。

 

 

 

 

 

『メキシコのおはなし おまつりをたのしんだおつきさま 』マシュー・ゴラブ/文 レオビヒルド・マルティネス/絵 さくまゆみこ/訳 のら書店 2019/12/15

メキシコ南部オアハカ州の先住民族に伝わる昔話です。天体の動きを太古から人間は観察し、いろいろな物語を紡いできました。月が地球のまわりをひと月かけて周っていく中で、月が昇る時間は月の満ち欠けと共に変化していきます。太陽が昇っても、まだ空に薄っすらと残る月を見て「ゆうべは月がおまつりしていたんだ」と、想像力を膨らませていたのです。このお話は、ある日、星たちが「おひさまの空に引越ししたい」「昼間には楽しい遊びやお祭りがある」とおしゃべりしているのをお月さまが聞いたことから始まります。そして夜通しお祭りのお祭りが実現するのですが…メキシコの暮らしがわかるカラフルな絵は、オアハカ在住の画家が描いています。

 

 

 

 

 

 

『ブラウンぼうやのとびきりさいこうのひ』イソベル・ハリス/文 アンドレ・フランソワ/絵 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2019/12/21

4才のブラウンぼうやは両親と共にホテルの高層階に住んでいます。両親は共に、ホテルから直結している地下鉄で仕事先へ向かいます。仕事をしているビルも地下鉄と直結しているので、一度も外に出る必要がありません。そんな暮らしをしているブラウンぼうやがある日ホテルのメイドをしているヒルダの家に遊びに行くことになりました。バスに乗って着いた先は田舎の一軒家。エレベーターではなくて階段で昇り降りすることにも驚くブラウンぼうや。生まれてはじめて雪だるまを作ったり、手作りケーキをいただいたり。質素だけれど温かい家族のふれあいがそこにはありました。それはブラウンぼうやにとっては、わくわくする最高の一日です。大都会で土に触れあうこともなく育つというと現代の作品のようですが、1949年の作品です。普遍的なテーマがこの絵本には含まれています。

 

 

 

 

 

『のりまき』小西英子/作 福音館書店 2019/12/30 (出版社サイト→こちら

子どもの頃、遠足や運動会の時に、いつも父が海苔巻きを作ってくれていました。海苔の上にすし飯を置いて、手際よく具を並べ、くるっくるっと巻いて出来上がるのが楽しくて見ていて飽きないものでした。そんなわくわくする子どもの気持ちにぴったり寄り添うような絵本です。声に出して読むと、さらに楽しい気持ちになって「のりまき作って!」とリクエストする子もきっといることでしょう。食べることが大好きな2才くらいの子どもたちも楽しめる絵本です。

 

 

 

 

『かえるの天神さん』日野十成/文 斎藤隆夫/絵 福音館書店 2020/1/10 (出版社サイト→こちら

かえるの平家ものがたり』『かえるの竹取ものがたり』に続く「かえるの絵巻シリーズ」の3冊目です。
受験シーズンに多くの日本人が祈願に訪れる天神さま。その祭神は菅原道真。彼は才気煥発だったために帝に重用され、藤原時平の恨みをかって陥れられ太宰府へ流されました。「北野天神縁起」「松崎天神縁起」に基づき、その後菅原道真が、どうして天神さまとして祭られるようになったのか、それをかえるの姿で表現した絵巻物語です。美しくも、コミカルな表情のかえるたちが、子どもたちを古典の世界にいざなうことでしょう。

追記:こちらの絵本は、2020年3月11日付で福音館書店より回収するという通達が出ております。詳しくは→こちら

 

 

 

 

『はるのうた』もちなおみ/作 イマジネイション・プラス 2020/1/27 (出版社サイト→こちら

秋、独り立ちをしたしまりすのチョコはゆきうさぎのネネと出会います。冬になるとチョコは冬眠します。冬眠しないネネとはしばらくの間お別れです。チョコはネネに預かった球根を抱いて眠ります。春が訪れ目が覚めると、球根からは茎が伸びています。そして美しい花を咲かせました。チョコとネネは花の咲く野原で再会しました。全ページ羊毛フェルトを使って描かれており、おはなしと相まって温かさが伝わってきます。

 

 

 

 

 

『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』マリア・ホセ・フェラーダ/文 パト・メナ/絵 星野由美/訳 偕成社 2020/1 (出版社サイト→こちら

作者のマリアさんが自閉症の男の子マヌエルくんと出会ったことで生まれた絵本『いっぽんのせんとマヌエル』(「本のこまど」では2017年8月、9月の新刊として紹介しています→こちら)の続編です。周囲からの刺激の多い都会の生活は自閉症のマヌエルくんにとっては強いストレスです。なのでマヌエルくんはいっぽんの線をたどって田舎へとドライブに出かけます。田舎で出会う鳥ややぎに馬、いろんなものがマヌエルくんにとっては新しい出会いと発見に満ちています。ピクトグラムが描かれていることで、自閉症などの子どもたちにとって、内容を理解することの助けになっている絵本です。

 

 

 

『こだまでしょうか?いちどは失われたみすゞの詩』金子みすゞ/詩 デイヴィッド・ジェイコブソン/物語 サリー・イトウ、坪井美智子/詩の英訳 羽尻利門/絵 JULA出版局 2020/1/25 

2016年にアメリカで「ARE YOU AN ECHO? The Lost Poetry of Misuzu Kaneko」が出版されました。それは出版元のChin Music Pressの編集者でもある著者デイヴィッド・ジェイコブソンさんが友人から贈られた金子みすゞの詩集に出会い、日本語を勉強していた彼はその詩から受け取るみすゞの感性に感銘を受けたことから始まりました。金子みすゞの詩は「私と小鳥とすずと」など代表作は国語の教科書に掲載されると共に、多くの言語に翻訳されて親しまれていますが、英訳されたものがなかったため、デイヴィッドさんは日系カナダ人のサリー・イトウさんとその叔母であり英語教師でもあった坪井さんに詩の英訳を依頼しました。デイヴィッドさんは、みすゞのいた時代の日本を描くことのできる画家を探していて日本ではまだ絵本作家デビュー前だった羽尻さんをみつけて絵を描いてもらいました。この出版に当たっては『金子みすゞ童謡全集』を出版しているJULA出版局が全面協力をしました。2020年は金子みすゞの没後90周年に当たることから、この度JULA出版局から邦訳出版の運びとなりました。前半には金子みすゞの生涯が、彼女の詩を発見し世に広めた研究者矢崎節夫氏の視点から書かれています。後半はみすゞの詩の代表作が日英2か国語で紹介されています。羽尻さんの描く絵も躍動感があり、この作品がアメリカで高い評価を受けたことにも納得できます。

 

 

 

『みずうみにきえた村(新版)』ジェーン・ヨーレン/文 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳 ほるぷ出版 2020/1/30  (出版社サイト→こちら

ほるぷ出版の創業50周年を記念して、1996年に出版された絵本の新版が出ました。色もより鮮明になっています。『月夜のみみずく』(コルデコット賞)の作者が、自分の家の近くにあるクアビン貯水池の成り立ちを題材に文章を書きました。20世紀前半に大都市への水の供給を担うために、大きなダムを作り、美しい谷間の町や村を貯水湖の下に沈めていったのです。『にぐるまひいて』(コルデコット賞)などを描いたバーバラ・クーニーが、谷間の四季折々の変化や、ダムが出来ることで住み慣れた家を壊していく人々の苦悩を余すところなく描いています。アメリカだけでなく、日本でも、世界各地でも同じように都市化を支えるために犠牲を強いられた美しい山間の集落はたくさんあったことでしょう。

 

 

 

 

 

【その他】

『おはなし聞いて語って  東京子ども図書館月例お話の会500回記念プログラム集』東京子ども図書館/刊 2019/12/24

東京子ども図書館では、1972年1月から毎月「月例お話の会」が開催され、そこから47年、昨年12月24日のクリスマスイブに500回を迎えました。それを記念して、500回分のプログラム集がこのたび出版されました。図書館でお話を語る時に、どんなお話があって出典はなにか、またどんなお話を組み合わせればよいか、知ることのできる貴重な資料です。ぜひ、おはなし会のプログラムを作成するときに、また新しいお話を覚えて語る時の参考にしていただければと思います。東京子ども図書館公式サイトの紹介ページは→こちらです。

 

 

 

 

 

『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』白井明大/文 辻恵子/絵 村松稔之/歌 福音館書店 2020/1/10 (出版社サイト→こちら

二十四節気の季節に合わせて歌い継がれてきた童謡やわらべうたを選び、それに沿って自分の幼少期の思い出や、子育てにまつわること、四季折々に大切にしたい風物や景色などを綴ったエッセイです。詩人らしい視点で書かれた文章は、読んでいて懐かしさと温かさに包まれます。
今、若いお母さんが子育ての中で歌わなくなっている童謡やわらべうたを、ぜひ覚えて歌ってほしいという願いからか、CDがついています。声楽家村松稔之さんの歌声も優しく、まさに「歌声は贈りもの」とは、このことかと思います。ぜひ多くの人に手に取ってほしい1冊です。プレゼントにも最適です。

 

 

(作成K・J)