2020年2月、3月の新刊より(2)ノンフィクション絵本(3/13追加有)


2020年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中から、今回は冊数が多いのでいくつかにわけて紹介します。1回めはグレタ・トゥーンベリについて書かれた本を紹介しましたが、2回目はその他のノンフィクション絵本を紹介します。(一部1月に出版されたものもあります)

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【ノンフィクションの絵本】

『はじまりはたき火 火とくらしてきたわたしたち』まつむらゆりこ/作 小林マキ/絵 福音館書店 2020/1/20 (出版社サイト→こちら

 

人類が火を使い始めてから現代まで、人々の生活を豊かにしてきたエネルギーの変遷の歴史を子どもにわかりやすく伝えてくれるノンフィクション絵本です。燃料としての草木も、石炭や石油も、それらから作られる電気も、すべてこの地球から得られる資源であり、自然の恵みであることを明確に位置づけ、だからこそ人間が便利な生活を享受することで引き起こされる問題にも目を向けるようにと気づかせてくれます。

 巻末には6ページを割いて、「エネルギーとわたしたち」という作者からのメッセージが書かれています。エネルギーには限りがあること、本当に豊かな暮らしとはなにか、地球温暖化が起き、それが原因で絶滅の危機にある生物へのまなざしなど、一緒に考えていこうという提案がなされています。親子で読んで自分たちには何が出来るかを考えてみるきっかけになるといいなと思います。

 

 

『ふたりの約束 アウシュヴィッツの3つの金貨』ブニーナ・ツヴィ、マーギー・ウォルフ/文 イザベル・カーディナル/絵 金原瑞人/訳 西村書店 2020/1/27 (出版社サイト→こちら

2020年はアウシュヴィッツ解放75周年です。この絵本はナチス政権によって両親と無理やり引き離され、アウシュヴィッツ収容所で生活をした姉妹の実録です。二人の姉妹の実の娘たちがこの絵本の作者です。過酷な環境の中で、両親が別れ際にそっと手渡した3つの金貨と「姉妹が決して離れることなく助け合うように」という言葉を胸に、姉妹は劣悪な収容所での日々を生き抜きます。しっかりと握りあっている手を描いた表紙をはじめ本文のコラージュを使った絵はとてもリアリティがあり、手に取った瞬間は少し恐ろしく感じましたが、文章を読み進めるうちに75年前に引き戻され、過酷な運命を生きた少女たちが大勢いたことを実感できました。辛い経験の実話ですが、強い絆に結ばれた姉妹の姿に希望を感じることができました。

 

 

 

 

 

 

『さくらがさくと』とうごうなりさ/作 福音館書店 2020/2/10 (出版社サイト→こちら

 

4月のおはなし会プラン「春のいのち」(→こちら)でも紹介した1冊です。3月のまだ風が冷たい朝、通勤、通学の人たちが川沿いの桜並木を歩いています。そんな中、桜の芽は開花の準備をはじめ、日一日と膨らんでいくのです。最初の開花から次々に花が咲いて満開になり、やがて花が散ってしまうと、枝先から葉っぱが萌え出て大きくなっていきます。青々とした緑陰を作るころには、さくらんぼの実がついています。3月半ばから4月半ばまでの桜の変化を美しい絵で表現しています。この絵は網とブラシを使うスパッタリング法を使ったと、とうごうなりささんご自身のブログ「クイナ通りSoi17」に記されていました。(→こちら)ぜひご覧になってください。

 

 

 

『琉球という国があった』たくさんのふしぎ傑作集 上里隆史/文 富山義則/写真 一ノ関圭/絵 福音館書店 2020/2/10 (出版社サイト→こちら

 

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2012年5月号のハードカバーです。ご存知のように琉球国の城である首里城は2019年10月31日に起きた火事によって焼失してしまいました。そこで、この本の売り上げの一部は「一般財団法人沖縄美ら島財団首里城基金」に寄付されることになっています。
2000年に沖縄県の「琉球王国のグスク及び関連遺産群」がユネスコ世界文化遺産に登録されました。この絵本では琉球王国というのはどんな国だったのか、どんな歴史があって、今は日本の一部になっているのかを、豊富な写真と資料を用いて説明をしてくれています。焼失してしまった首里城の写真も使われています。1609年に薩摩の大名島津氏が征服するまでは、琉球国が独立国として中国や東南アジアとの貿易の中継地点として栄えていたことなども詳しく知ることができます。ぜひこの本を手に取って琉球国の歴史や文化を学ぶと共に、首里城の再建に力を貸してほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

『春を探して カヌーの旅』たくさんのふしぎ傑作集 大竹英洋/文・写真 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→)

北米の湖水地方「ノースウッズ」をフィールドに野生動物や人々の暮らしを撮影し、人間と自然のつながりを問う写真絵本を多く出している大竹英洋さんが福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2006年4月号で発表した絵本のハードカバー版です。大竹英洋さんの公式サイト(→こちら)では、さまざまな写真や動画、ブログ記事にアクセスできます。
この絵本では、友達のウェインとともに森で育つヌマヒノキで作られたカヌーと弾力性のあるトネリコの木材を削って手作りしたバドルをを使って、ノースウッズの湖をめぐる3週間の旅の様子を写真と共に綴っています。まだ雪が残る5月初めに出発し、少しずつ森の中に花が咲き始める自然の移り変わりを肌で感じながら巡っていきます。私たち人間の生活もこの地球の大自然の恵みとは切っても切れない関係であることをこの旅の様子は知らせてくれています。

 

 

 

 

 

『いちご』荒井真紀/作 小学館 2020/2/24 (出版社サイト→こちら

 

2017年に『たんぽぽ』(金の星社→こちら)でブラティスラヴァ世界絵本原画展で金のりんご賞を受賞した荒井真紀さんは、その他にも『ひまわり』、『あさがお』(共に金の星社→こちら)や『チューリップ』(小学館→こちら)、『あずき』(福音館書店→こちら)など植物を細密に描くことで定評があります。『いちご』は、真っ赤に熟れたいちごを食べた時にする「ぷちぷちぷち」という音が何の音か調べるために、いちごが育っていく過程を丁寧に描いていきます。いちごの花の断面図を見ると、いちごの花のどの部分が膨らんで実になるのかがよくわかります。これを見ると自分でいちごを育ててみたくなります。

 

 

 

 

『おひなさまの平安生活えほん』ほりかわりまこ/作 あすなろ書房 2020/2/28 (出版社サイト→こちら

 

住宅事情の変化で七段飾りのお雛様を飾る家庭は以前ほど多くなくなっていると聞きますが、それでも桃の節句に雛飾りは欠かせないものです。この絵本に出てくる姉妹は、祖母とお母さんと一緒に雛飾りを並べて見ているうちに、牛車にのって平安時代へタイムスリップし、その時代の衣装や食事、遊びなどを学んで戻ってきます。お雛様の歴史や、どのような思いで作られ、飾られてきたのか、詳しく丁寧に描かれています。特に立派な七段飾りのひな人形は、平安時代の宮廷生活への憧れから武士の時代になって作られてきたことなどもわかります。この絵本を読みながら、姉妹と共に平安時代の宮廷生活の様子を覗いてみてくださいね。

 

 

(作成K・J)