2020年4月、5月の新刊から


今回は、銀座にある子どもの本専門店銀座教文館ナルニア国からおすすめの本を教えていただき、その中から選んで送っていただいた本を中心に、全冊読んだうえでみなさまに紹介いたします。

なお、3月上旬から実店舗へ足を運ぶことができなかったため、3月以前に出た新刊もチェックできてないものがあり、それも含めての紹介となります。

図書館でも見計らい以外の選書が難しくなっていると思いますが、参考にしていただければ幸いです。

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

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【絵本】
『ぱかぱかももんちゃん』とよたかずひこ/作 童心社 2020/3/5 (出版社サイト→こちら

ちいさなお子さんをお膝にのせて、上下に「ぱかぱか」と言いながら動かすだけでもとても喜びますね。
「ももんちゃんあそぼう」シリーズの21冊目の今作では、ももんちゃんがしまうまの背中にのって、ひたすら「ぱかぱかぱかぱか ぱかぱかぱかぱか 」走っていくのです。途中で小川をとびこえて、「ぱかぱか」まっしぐらに向かった先には・・・小さな子どもたちにとって一番安心できる結末になっています。この絵本はクレヨンハウスにて1月18日(土)とよたかずひこさんの講座に参加した際に、予約していたものです。

 

 

 

『うさぎのバレエだん』石井睦美/文 南塚直子/絵 小学館 2020/3/8 (出版社サイト→こちら

1989年に安房直子さん作『うさぎのくれたバレエシューズ』(南塚直子/絵 小峰書店)の続編と帯に書かれています。1993年に亡くなられた安房直子さんに代わり、石井睦美さんがバレエが上手になりたい女の子の物語を創作、絵は31年前と同じ南塚直子さんが担当しています。バレエがなかなか上達せず先生に注意された女の子は、練習を抜け出します。すると大きな桜の木の下で上手にバレエを踊る男の子に出会います。別れ際に「こんや、さくらげきじょうで「うさぎのシンデレラ」っていうバレエをおどるんだ」と誘われます。夜、外に出てみると・・・バレエ好きな子どもたちに贈りたい絵本です。

 

 

 

『ブルーがはばたくとき』ブリッタ・テッケントラップ/作 三原泉/訳 BL出版 2020/3/10 (出版社サイト→こちら(BL出版トップページから書名検索で詳細ページを参照してください)

ブルーのことりは、ずっと森の奥深くにひとりぼっちでいました。長い間仲間と離れてひとりでいたので、空の飛び方も歌うことも忘れています。そんな時に一羽のことりイエローが現れます。そのとりがとぶと金色の光が広がり、枝にとまれば緑の葉っぱがめぶくのです。イエローはくらがりにいるブルーをみつけて、近づいていきます。最初はイエローのうたに気づかないブルーでしたが、とうとうブルーは心を開いて一緒に歌いはじめるのです。ドイツ人絵本作家による美しい色彩の絵本です。

 

 

『ねえさんの青いヒジャブ』イブティハージ・ハンマド&S・K・アリ/文 ハテム・アリ/絵 野坂悦子/訳 BL出版 2020/4/1 (出版社サイト→こちら(BL出版トップページから書名検索で詳細ページを参照してください)

イスラム教徒の女性が頭に着けるスカーフのことをヒジャブといいます。信仰によって人前で髪の毛や肌を露出しないように被ります。身に着けるタイミングは初潮を迎えるころからということですが、厳密には決まってなく国や環境によるそうです。この絵本の女の子はアメリカに住んでいます。ねえさんが海のように真っ青なヒジャブを身に着けて学校に行く日、妹は誇らしげについていきます。しかし陰で笑う人がいたり、心無い言葉を投げつける男の子がいたりと、少数派への差別の目を感じることになります。そんな中ねえさんは凛としています。この絵本を通して、作者はひとりひとりに尊厳があり、信念を貫くことの大切さを伝えてくれています。

 

 

『サンゴのもり』きむらだいすけ/作 イマジネイション・プラス 2020/4 (出版社サイト→こちら

サンゴのもりにすむ海の仲間たちは、みんな個性的です。色も形も性格もみんな違っています。みんなと同じ行動が出来なくてはみ出てしまうことがあったり、落ち着きがなかったりしますが、お互いにその違いを認め合って、助け合っています。この絵本を作ったきむらだいすけさんは、ひとりひとりの存在を大切にしてほしいと語っています。誰もが欠点はもっているとしても、この世に存在していくことが尊いのです。お互いの良さを生かし合い、リスペクトする社会であってほしいと思います。繰り返し読んでもらっているうちに、そんな大切なメッセージも伝わってくるといいなと思います。

 

 

『ひとはなくもの』みやのすみれ/作 やべみつのり/絵 こぐま社 2020/5/5 (出版社サイト→こちら

この絵本を作ったのは、今年3月に中学を卒業したばかりのみやのすみれさん。絵本作家やべみつのりさんのお孫さんです。すみれさんが小学校1年生の時に作った紙芝居がもとになっています。しゅくだいを忘れ叱られて泣く、転んで泣く、飼い猫が死んで泣く、けんかして泣く、ゲームで負けて泣く、とにかくいろんな時に泣くとお母さんに「泣く子はきらい」と言われてしまいます。でも「泣くことは子どもが自分の気持ちをコントロールするための修行。だから大丈夫、ちゃんと成長しているんだな」と思ってほしいとすみれさんは言います。「いまの社会では、泣くこと=悪い、みっともないこと、弱い奴が泣くんだ、みたいな雰囲気がある気がします。でも私は、泣くことは人間にとって必要なこと」で、心を浄化し、成長させていくために大切だと、素直に伝えてくれています。

 

 

 

【児童書】

『名探偵カッレ 地主館の罠』アストリッド・リンドグレーン/作 菱木晃子/訳 平澤朋子/絵 岩波書店 2020/4/15 (出版社サイト→こちら

『名探偵カッレくん」シリーズの新訳の2冊目です。菱木晃子さんの訳で平澤朋子さんの挿絵のものは、『名探偵カッレ 夏休みが城跡の謎』が昨年9月に出版されています。
夏休みが来て、カッレ君とエヴァロッタ、アンデッシュたち白バラ軍の仲間は赤バラ軍のシックステンたちと、〈聖像〉を奪い合うバラ戦争という遊びに明け暮れていました。町はずれにある大草原(プレーリー)と呼ばれる町はずれの公用地と、そこに建つ朽ち果てかけた地主館は格好の彼らの遊び場でした。
ある日、エヴァロッタは〈聖像〉の隠し場所を変えようとしてひとり地主館の近くを訪れて殺人事件に遭遇してしまいます。唯一の目撃者としてエヴァロッタに危険が迫る中、カッレの名探偵ならではの推理が事件を解決に導いていきます。ドキドキハラハラする展開に、一気に読み進めてしまうでしょう。そして最後はエヴァロッタの父でパン職人のリサンデル氏の焼いたシナモンロールが登場。そこでホッと一息つくこと間違いなしです。

 

 

 

【ノンフィクション】

『みんなの園芸店 春夏秋冬を楽しむ庭づくり』大野八生/著 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→こちら

造園家でイラストレーターの大野八生さんによる庭づくり指南書です。出版予告を見た時は、科学絵本かと思っていましたが、ずっしりと重い実用書です。しかし、家族でいっしょに花や果実、野菜を育てられるよう、イラストつきの詳しい解説があり、初心者にもとてもわかりやすいです。普段の忙しい生活の中で、見逃していた自然の変化に目を留めて感じる‛センス・オブ・ワンダー’に溢れています。一家に一冊あってもよい本ではないでしょうか。大野八生さんの作品は、ほかに『盆栽えほん』(あすなろ書房 2013)、『ハーブをたのしむ絵本』(あすなろ書房 2016)などがあります。また『かわいいゴキブリのおんなの子メイベルのぼうけん』(ケイティ・スペック/文 おびかゆうこ/訳 福音館書店 2013)、『かわいいゴキブリのおんなの子メイベルとゆめのケーキ』(ケイティ・スペック/文 おびかゆうこ/訳 福音館書店 2017)、『草木とみた夢 牧野富太郎ものがたり』(谷本雄治/文 出版ワークス 2019)などの挿絵も手掛けています。

 

 

『13歳からの天皇制 憲法の仕組みに照らして考えよう』堀新/著 かもがわ出版 2020/2/25 (出版社サイト→こちら

昨年は天皇の代替わりがあり平成の世は令和へとなりました。昨年11月の即位パレードは印象に残っていると思います。しかし「天皇」とはなにか、「天皇制」とは何かを、きちんと説明できる人は少ないと思います。こちらの本では、「天皇制とは何か」を改めて定義しなおすところから始めて、憲法上の地位、国民との関係、さらに国民が憲法でどのような基本的人権を保障されているか、憲法の変遷について、丁寧に整理されています。順に読んでいくことで、天皇・皇室と憲法について理解を深めるとともに基本的人権とは何かについても学んでみることをお勧めします。

 

 

 

『小学生からの憲法入門 ほとんど憲法 上』木村草太/著 朝倉世界一/絵 河出書房新社 2020/2/28 (出版社サイト→こちら

 

この本は、毎日小学生新聞に2017年3月31日から翌2018年3月30日まで週1回連載された「ほとんど憲法」をまとめたものです。この企画は「子どもたちが読んで楽しめること」と「憲法についてよくわかること」の2つを目的で編集部から著者に提案されたとのことです。連載では毎月、お題を立ててお便りを送ってもらい、それに関係のある憲法の話をするという形で進められました。朝倉世界一さんによるマンガも読みやすく、子どもたちにわかりやすい憲法を学ぶ本になっています。

 

 

『小学生からの憲法入門 ほとんど憲法 下』木村草太/著 朝倉世界一/絵 河出書房新社 2020/2/28

 

上巻の続きです。2冊合わせて読んでほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

『読解力を身につける』村上慎一/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/3/19(出版社サイト→こちら

「読解力」とはどんな能力なのか、単に読むというだけなく、「聞くこと」はもちろん「話すこと」「書くこと」のベースにも大切な力であると、この本では述べられています。
「読解力」とは、言葉の表現者の意図を正確に読み取って、それを自分の言葉に置き換えて解釈することだという。そのためにとても大切になるのが「想像力」であるというのです。どのように「読解力」を鍛えていくのか、先生と生徒が対話する形で解明していきます。「評論」の読解、「実用的な文章」の読解、資料(グラフ)の読解、文学的な文章の読解などに分かれています。

 

 

 

『プラスチックモンスターをやっつけよう!きみが地球のためにできること』高田秀重/監修 クリハラタカシ/絵 クレヨンハウス編集部/編 クレヨンハウス 2020/4/10(出版社サイト→こちら

高度成長期に私たちの生活を豊かにしてくれると考えられて開発されてきたプラスチック製品。それが世界中の海にごみとして溢れ、環境を壊し、海洋生物や鳥たちの生命をも脅かしています。この本は、「きょうからできるプラスチックフリー!」として、私たちの生活の中にあるプラスチック製品を知って、それを使わないためにはどうすればよいかを、小さな子どもたちにもわかりやすく伝えてくれます。プラスチックをごみモンスターにしないためには、買わない、使わない、捨てないことが大切です。親子でひとつずつ確認しながら、減らすという意識を身に着けていくことが第一歩だと思います。

 

 

 

 

【その他】

エッセイ

『風と双眼鏡、膝掛け毛布』梨木果歩/著 筑摩書房 2020/3/20(出版社サイト→こちら

梨木果歩さんが日本中を旅して歩いたことを書いた旅のエッセー。タイトルの由来は、梨木さんが旅に出て「思い起こされる個人的な経験や、調べられる範囲で知り得た情報、知人の体験談、それこそ風が運んで来たような話、双眼鏡で鳥を観察しに行ったときの経験、カヤックを漕ぎに(浮かびに行くのである、ほんとうは。それで悠長に膝掛け毛布を使う)行った川や湖のこと。そういうとりとめのない、「地名」が自分に喚起するもろもろのゆるい括りとして」なんだそうです。ちょうどステイホームの期間に手にしたので、外出自粛が解除されたら旅に出たいなあと旅情を掻き立ててくれました。

 

 

 

 

講演録

『子ども・社会を考えるシリーズ 講演録 父の話をしましょうか~加古さんと松居さん~』鈴木万里(加古里子長女)・小風さち(松居直長女/講師 NPOブックスタート/編 NPOブックスタート 2020/3/31 (出版社サイト→こちら

2018年に亡くなられた絵本作家加古里子氏の長女鈴木万里さんと、『だるまちゃんとてんぐちゃん』などで絵本作家かこさとしの名前を世に知らしめた福音館書店こどものともの創刊者で福音館書店相談役の松居直氏の長女小風さちさんとの対談録です。どのような経緯で、こどものともで加古さんが絵本を描くことになったのか、絵本の黄金期といわれる1960年~70年代の絵本作りへの思いなどが、二人の絵本作りをそばでみつめてきた娘の視点から語られています。
作品への愛情だけでなく、偉業をなした親への敬意、そして日本中の子どもたちへの思いもまた熱いものがありました。

 

 

 

 

伝記

『絵本画家赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』赤羽茂乃/著 福音館書店 2020/4/25  (出版社サイト→こちら

スーホの白い馬』(大塚勇三/再話 福音館書店)や『かさじぞう』(瀬田貞二/再話 福音館書店)など長く読み継がれている作品がある絵本画家赤羽末吉氏の生誕110年を記念して、息子嫁である赤羽茂乃さんが10年以上の年月をかけて、末吉氏の足跡を歩き、資料を集めて検証しながら書いた伝記です。嫁という立場でそばで父の偉業を見守ってきた人ならではの温かい眼差しと愛情に裏打ちされ、またユーモラスなエピソードも満載で、550ページを超える大作ですが惹きつけられて読み進めました。今年は銀座・教文館ナルニア国やちひろ美術館・東京で赤羽末吉絵本原画展が開催される予定でしたが、それぞれ開催が延期になっています。赤羽末吉の絵本がなぜ子どもたちを惹きつけるのか、その意味が彼の人生を通して見えてきます。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

 

 

 

(作成K・J)