2020年5月、6月の新刊から(絵本)


緊急事態宣言が解除されたので、6月初めにさっそく銀座にある子どもの本専門店銀座教文館ナルニア国へ選書に行ってきました。加えて横浜・日吉のともだち書店からも、お薦めの本を送っていただきました。それらを全冊読んだうえで、今回は絵本とそれ以外のものとを分けて、みなさまに紹介いたします。

また、3月~5月は実際に書店へ足を運べず、見落としていた本もありました。今回紹介する中には、見落としていた3月~4月に発行されたものもあります。

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

***********************
【絵本】

『自転車ものがたり』高頭祥八/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2020/3/5(出版社のサイト→こちら

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」1996年7月号のハードカバー版で、2016年4月に第1刷が出版されていましたが、この度増刷されました。限定復刊です。購入はお早めに。
子ども達にとって一番身近な自転車の歴史や、動く仕組みなどを詳しい図解などを通して伝えてくれます。
馬車などから始まった速く遠くへ走っていく乗り物のうち、自転車は自動車よりも50年遅いものでした。しかし、ほかの乗り物がスピードの速さを求めて大きく重くなり、その分たくさんのエネルギーを使って騒音や大気汚染を引き起こすのに対して、自転車は軽くてもしっかりと荷物も運べるし、何よりエネルギーは乗る人の足の力だけで環境に優しい乗り物です。
子ども達から大人まで誰もが乗れる乗り物であるからこそ、交通ルールを守って安全に乗ることの大切さも伝えてくれています。

 

 

『もぐらのモリス』ダン・ヤッカリーノ/絵・文 青山南となかまたち/訳 カクイチ研究所 2020/3/25(出版社のサイト→こちら

 

もぐらのモリスは、はたらきもののおにいさんたちといっしょに過ごしていましたが、体は一番小さく、またみんなとは違う考えを持っていました。
たべるものが無くなった時、おにいさんたちは、もっと深く掘ることを決めますが、モリスだけは上に向かって掘り進みます。地上に出てくると地下では見たことのない世界が広がっています。きつねに襲われそうになりますが、機転を利かせて逆にきつねを救います。そして地上からたくさんの美味しいお土産を持ち帰るモリス。人と違う視点を持つことも大切なんだと、励ましてくれているようです。

 

 

 

 

『もっと かぞえてみよう』ディック・ブルーナ/文・絵 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

2018年2月に出版されたディック・ブルーナの『かぞえてみよう』(→こちら)、『わたしたしざんできるの』(→こちら)と合わせて「こどもがはじめてであう絵本かず」のセットとして組まれることになった絵本です。
『かぞえてみよう』が1~12までの数(1ダース)だったので、こちらでは13から24まで色鮮やかな絵とともに数を数えていきます。
小さな子どもたちにとっては「たくさん」が具体的な数として認識できることは大きな発見であり、喜びに繋がります。

 

 

 

『とんでいく』風木一人/作 岡崎立/絵 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

左から右へ飛んでいくのは猛禽のタカ、右から左へ飛んでいくのはガン。タカの声は緑で印字され、ガンは赤で印字されています。でも絵はひとつだけ。どういうこと?と思われるでしょう。同じ黒い鳥のシルエットが、左から読んでいくとタカに見え、右から見るとガンに見えるという、しかけのないしかけ絵本なんです。同じシーンでふたつのお話、ぜひ手に取って楽しんでほしいなと思います。

 

 

 

『かなへび』竹中践/文 石森愛彦/絵 かがくのとも絵本 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

福音館書店月刊誌かがくのとも2015年5月号のハードカバーです。庭や草むらでよく見つけられるかなへび。小さな子どもたちにとっては一番身近な爬虫類ですね。そのかなへびの暮らしを小さな子どもたちにもわかりやすく教えてくれる1冊です。幼いころにかなへびを捕まえたのに、しっぽを切り落として逃げられた時の驚きは数十年経っても忘れられないものです。身近な生命への畏敬を伝えてあげたいですね。

 

 

 

 

『かぞえてみよう どうぶつスポーツたいかい』ヴィルジニー・モルガン/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店 2020/4/7(出版社のサイト→こちら

 

どうぶつたちのスポーツ大会がはじまります!「ゆうしょうかっぷはつだけ」「かいふえがなったらたいかいがはじまるよ」と、おはなしのなかに数字が1~20~1と盛り込まれて、「ぎんメダルはぜんぶでつ」「きんメダルはつ」「ぼくたちみんなのこころはつ ワンチーム!」で終わる楽しいお話です。
色もはっきりと鮮やか、うさぎにペンギン、チーターにピューマ、カンガルーにキリン、あしかにさるにくま、ワニにいぬと、子どもたちの大好きなどうぶつたちもたくさん登場します。小さな子どもから大きな子たちまで幅広く楽しめることでしょう。

 

 

 

『空を飛びたくなったら』ジュリー・フォリアーノ/文 クリスチャン・ロビンソン/絵 田中一明/訳 カクイチ研究所 2020/4/24(出版社のサイト→こちら

 

子どもたちに想像してみることの楽しさと広がりを、教えてくれる絵本です。子どもたちにとって世界は、知りたいことで溢れています。いろいろなものに触れ、たくさんのことばを聞き、やってみる。そんな日々を、温かく見守ってくれるおとながそばにいてくれたら、怖いものはありません。日々、ぼうけんをしながら学んでいくことができます。
この絵本の絵は『おばあちゃんとバスにのって』(マット・デ・ラ・ベーニャ/文 石津ちひろ/訳 鈴木出版→こちら)でコールデコット賞とニューベリー賞を、『がっこうだってどきどきしてる』(アダム・レックス/文 なかがわちひろ/訳 WAVE出版→こちら)で七つ星の書評を受けたクリスチャン・ロビンソンが描いています。文章はエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞しているジュリー・フィリアーノが書いています。

 

 

『うりこひめとあまんじゃく』堀尾青史/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2020/5/1(→こちら

 

赤羽末吉生誕110年を記念して、昨年から今年にかけて続々と赤羽末吉が描いた絵本が復刊されています。この絵本も1976年にフレーベル館から出版されていたものが、新たにBL出版から復刊されました。
川上から流れてきた桃から桃太郎が生まれるのはよく知られた昔話ですが、同様に川上からうりが流れてきて中からうりこひめが生まれたという昔話は、誰もが知っているポピュラーなものではないかもしれません。あまんじゃくの、なんとも憎めない悪さと合わせて、子どもたちに伝えていきたい昔話です。

 

 

 

 

『おばけのジョージ― とびだしたけいとだま』ロバート・ブライト/作 こみやゆう/訳 好学社(出版社のサイト→こちら) 

 

心優しいちいさなおばけのジョージ―のおはなしです。(『おばけのジョージ― こまどりをたすける』(→こちら)は「本のこまど」2019年11月、12月の新刊からで紹介しました→こちら)心温まるエピソードです。近所に住む女の子ジェイニーが転んで木の根っこにある穴にけいと玉を落としたことをてんとうむしから聞いたジョージ―はふくろうのオリバーとねこのハーマンに声をかけて助けに行きます。ジェイニーが泣き疲れて眠っている間にうさぎたちに頼んでけいと玉を拾ってきてもらい、オリバーがそっとカゴに入れ、ハーマンが鳴いて起こします。まさかジョージ―たちが助けてくれたと知らないジェイニーは「けいとだまをなくしたゆめをみたんだ」と元気にかけ出していくのです。ホッと心が温まるお話です。

 

 

『けんけんぱっ』にごまりこ/作 0.1.2えほん 福音館書店 2020/5/15(出版社のサイト→こちら

かたあし飛びで「けんけんぱっ」、ねこが跳ぶと、いぬもくまも、そしてりすもぞうもやってきて「けんけんぱっ」、最後はみんな楽しくなって、「けんけん ぱっぱっぱー」と跳び上がって遊びます。福音館書店月刊誌「こどものとも0.1.2」2016年2月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

『こぶたのプーちゃん』本田いづみ/文 さとうあや/絵 福音館書店 2020/5/15(出版社のサイト→こちら

こぶたのプーちゃんは好奇心旺盛。ぬかるみを見ると飛び込んでどろおばけに、そしてほしくさの山にそのままダイブ、もじゃもじゃおばけになってしまいます。そのうえ、たんぽぽの綿毛も体中にくっつけて遊ぶので、ふわふわおばけになります。でも、そんなプーちゃんをおかあさんがみつけると、川に連れて行ってきれいに洗ってくれました。いたずらが大好きな年代の子どもたちに読んであげたい1冊です。福音館書店月刊誌「こどものとも年少版」の2014年4月号のハードカバーです。

 

 

 

『えほんなぞなぞうた』谷川俊太郎/文 あべ弘士/絵 童話屋 2020/5/18(出版社のサイト→こちら

 

Q「ブレーキかけてもとまらない バックもできない まがれない なのにむじこでやすまずはたらく」A「じかん」
ページ1枚になぞなぞが描かれ、その裏側に答えが描かれています。

通しで読んでも楽しいし、おはなし会の導入に、ひとつふたつ選んで子どもたちになぞなぞをしてもいいですね。谷川さんのしゃれたなぞかけは大人が読んでも楽しくなります。

 

 

 

 

 

『語りかけ絵本 えだまめ』こがようこ/文・絵 大日本図書 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

こがようこさんの語りかけ絵本シリーズの最新刊です。(語りかけ絵本シリーズ→こちら
夏の間、食卓に並ぶえだまめ、小さな子どもたちにとってはさやを押して中からピュッ!と出てくるえだまめ、出すだけでも楽しいですよね。それを「ピュッ!パクッ!パクッ!」とリズミカルに繰り返されて、夢中になることでしょう。「おはなし会プラン2020年8月小さい子向け」でも、紹介しています。(→こちら

 

 

 

 

『わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話』鈴木海花/文 はたこうしろう/絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2016年11月号のハードカバーです。岩手県葛巻町立江刈小学校で実際にあったお話が絵本になっています。カメムシって臭いにおいを出すやっかいものだと考えられていましたが、ある時、校長先生がカメムシにもいろんな種類があること、それを調べてカメムシ博士になろうと呼びかけたのです。子どもたちが興味を持って調べ始めるといろいろな種類があることがわかり、独自の「カメムシずかん」を作るようになります。子どもたちが見つけたカメムシの名前がほんとうに正しいか確認するためにカメムシを専門に研究する人たちにも葛巻町に来てもらって一緒に研究するようになります。まさに「やっかいものが宝物になった」おはなしです。夏の自由研究の導入に子どもたちに紹介したい1冊です。

 

 

 

『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』石川直樹/文 梨木羊/絵 岩波書店 2020/5/28(出版社のサイト→こちら

 

世界中の登山家が憧れる世界一の山エベレスト。そこへの登頂はニュースになるほどで簡単なことではありません。近年は年間800人が登頂に挑むなど、エベレストを目指す人が増えていますが、その陰には土地を知り、また荷物を運んでくれるシェルパの存在があります。この絵本では、シェルパになったばかりのポルパの初めてのエベレスト山頂登山の様子が描かれています。山頂から眺める景色に感動の涙を流すポルパの姿は読む者の心を打ちます。彼らのような山岳民族のおかげで華々しい登山隊の活躍があることを多くの人に知ってほしいと、写真家の石川さんがこの絵本を作られました。

 

 

 

 

『ジュリアンはマーメイド』ジェシカ・ラブ/作 横山和江/訳 サウザンブックス社 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

ジュリアンは男の子だけれど、マーメイドが大好きです。ある日、プールに出かけた帰りの電車でマーメイドに扮した人たちに出会います。ジュリアンは自分もあんな風になりたいなあと想像を広げます。そして帰宅するとレースのカーテンやお花などでマーメイドに扮装するのです。それを見たおばあちゃん、止めるのではなく、ジュリアンにネックレスをかけてくれて一緒にマーメイドパレードに連れ出してくれました。このパレードはニューヨーク、コニーアイランドで毎年開かれるお祭りで(→こちら)昨年で37回になったそうです。この絵本はLGBTQを考える絵本としてクラウドファンディングで作成されました。自分がなりたいものになる、それを認めることがとても大切だということを教えてくれる絵本です。絵本の中のおばあちゃんたちもとてもグラマーでありのまま描かれています。表紙とカバーの絵が違っているので、ブッカーのかけ方に悩んでしまうかもしれません。

 

 

『はかせのふしぎなプール』中村至男/作 こどものとも傑作集 福音館書店 2020/6/5(出版社のサイト→こちら

 

はかせは、なんでも大きくなってしまうプールを発明します。プールの中から出てくるのは・・・読んできかせれば、ちょっとした形当てクイズになる面白さです。そして、最後にははかせまでそのプールに入ったのはよいのですが、元の大きさに戻すプールは発明してなくて、「おーい、じょしゅくん!もとにもどるプールをはつめいしてくれー」と叫ぶところ、なんともお茶目なはかせです。福音館書店月刊誌「こどものとも」2015年9月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

『こどもたちはまっている』荒井良二/作 亜紀書房 2020/6/17(出版社のサイト→こちら

 

「こどもたちはまっている」、ある時はふねが通るのを、ある時はかもつれっしゃが通るのを、ある時は雨上がりだったり、お祝いの日だったり、夕焼けだったり。何かを待つ、楽しみにするということは、生きていくうえでの希望に繋がっています。子どもたちにとって未来への希望、待っていることはたくさんあるわけで、おとなたちはそれを決して裏切ってはいけないなと、この絵本を読んでいて強く感じました。

 

 

 

(作成K・J)