訃報 シビル・ウェッタシンハさん


『きつねのホイティ』(福音館書店→こちら)や『かさどろぼう』(徳間書店→こちら)など色鮮やかな色彩で、クスっと笑える上質なユーモアのある絵本を生み出してきたスリランカの絵本作家シビル・ウェッタシンハさんが7月1日に亡くなられました。92歳でした。(スリランカ交流会Facebook投稿より→こちら

 

『きつねのホイティ』シビル・ウェッタシンハ/作 松岡享子/訳 福音館書店 1994

 

 

 

 

 

 

 

 

『かさどろぼう』シビル・ウェッタシンハ/作 いのくまようこ/訳 徳間書店 2007(日本での初版はベネッセコーポレーションより1995年刊)

 

 

 

 

 

 

2011年に出版された『わたしのなかの子ども』(松岡享子/訳 福音館書店→こちら)には、ウェッタシンハさんがスリランカの古い港町ゴールに近い小さな村で過ごした6歳までの幼い日の思い出が、克明に記されています。

 

『わたしのなかの子ども』シビル・ウェッタシンハ/著 松岡享子/訳 福音館書店 2011

 

 

 

 

このエッセイを書かれた時(スリランカでの発行は1995年)には、すでに67歳になっていらしたのですが、幼い日々の暮らし、自然、さまざまな出来事、特にアッタンマーと呼んでいた祖母との記憶が、ついこの前のように描き出されていて、夢中になって読むことが出来ました。

 

「その当時、夜、寝床にはいると、わたしは、真っ暗闇を通してかがやく色がつぎつぎに現れるのを見ました。わたしの目の前には、夜の漆黒の向こうに、目のさめるようにあざやかで、火のようにかがやいているデザインが無数に浮かび、めまぐるしく現れたり消えたりしました。ひとつひとつのデザインは、色も形もすべて奇妙に違っていて、それは、色とデザインの爆発といってもよく、暗闇とまざりあって、まるで生きているもののようでした。眠りに落ちるとき、わたしの心は、ことばでいいあらわせない喜びにみたされました。
 この喜びは、その後もわたしの心のなかに、たえることなく生きつづけてきたと、わたしは信じています。そうです。ですから、今日までずっとわたしのなかにある子どもが、わたしの道をみちびく光でありつづけたのです。わたしのなかの子どもは、たえずわたしに、幼い子どもの空想世界の謎と魅力、魔法のふしぎを思い出させてくれます。」(p255~256)

 

翻訳を担当した松岡享子さんは、1970年代にユネスコのアジア共同出版計画事業を通してウェッタシンハさんと知り合っていらっしゃいます。

松岡享子さんが、1992年の国際児童図書評議会国際アンデルセン賞の選考委員だった時に、スリランカからウェッタシンハさんが画家賞候補として推薦されました。惜しくも賞には選出されませんでしたが、その時のことを「ウェッタシンハさんの絵本は、くったくのなさという点で際立っていました。緻密、繊細、重厚、あるいは高度にデザイン化された、と評されるであろう他の国々の候補者の作品のなかにあって、ウェッタシンハさんの絵は、素朴で明るく、のびのびとしていて、絵を描くたのしさにあふれているように見えたのです。子どもたちが絵を描いているときのような、とらわれのなさ。たとえば、ろう石で道路に落書きをしているような、あるいは、紙のはしまで来てしまったら、そのまま紙を裏返しにして描きつづけるような、自在で、自然な動きが感じられたのです。わたしは、それを好もしく思いました。」と、評されています。(『わたしのなかの子ども』あとがきより)

 

内なる子どもに背中を押されて描いてきた絵本だからこそ、異国の子どもたちの心を今も捉え続けているのでしょう。

 

『ねこのくにのおきゃくさま』シビル・ウェッタシンハ/作 松岡享子/訳 福音館書店 1996(→こちら

 

 

 

 

 

 

『スリランカの昔話 ふしぎな銀の木』シビル・ウェッタシンハ/作 松岡享子・市川雅子/訳 福音館書店 2017(→こちら

 

 

 

 

 

 

こころより、哀悼の誠を捧げます。

 

(作成K・J)