2020年7月、8月の新刊から


7月、8月に出版された絵本、児童書のうち、ぜひお薦めしたいものを紹介いたします。

ただし、都内における7月以降の新型コロナウィルス感染拡大の影響で、書店での十分な時間をかけての選書が出来ていません。こちらで紹介する本は、クレヨンハウスに立ち寄った際に購入したものと横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、そして一部献本していただいたものを、読み終わり記事にしています。すべての本をチェックしているわけではないので、参考程度にしてください。

 

また、先日お知らせた銀座教文館ナルニア国のきになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

 

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。(見逃していた5月に出版された絵本も含まれています)

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【絵本】

『ぼくのすきなおじさん』長新太/作 絵本塾出版 2020/5  (出版社サイト→こちら

 

2005年に亡くなられた長新太さんのこの絵本は、1993年に童心社から出版された後、長年品切れとなっていました。長新太さんのシュールでパワフルな作品の魅力たっぷりな本作が、この度絵本塾出版から復刊しました。
ぼくのすきなおじさんは、類い稀なる石頭です。その石頭ぶりときたら、月さえもぶっ飛ばしてしまうほどです。
長新太ワールドをたっぷり楽しめる1冊です。

 

 

 

 

『グリム童話 あかずきん』大塚勇三/訳 堀内誠一/絵 福音館書店 2020/5/15  (出版社サイト→こちら

 

こちらも、福音館書店から1970年にソフトカバーとして出版されていた絵本で、ハードカバーとして復刊されました。
グリム童話の「あかずきん」が、とても愛らしく、色鮮やかに描かれています。
50年前に描かれた絵を最新技術で蘇らせたという生き生きとした絵の「あかずきん」をぜひ手にしてほしいと思います。

 

 

 

 

 

『つかまえた』田島征三/作 偕成社 2020/7  (出版社サイト→こちら

 

川に潜って素手で魚を捕まえる野趣あふれる男の子を描いた絵本です。昨年の国際アンデルセン賞画家賞候補としてファイナリストにもなった田島征三さんの大胆な筆致が、絵に躍動感を与え、生命への賛歌ともいえる力強い作品となっています。読み継がれていってほしい作品です。

 

 

 

 

 

 

 

『こんにちは!わたしのえ』はたこうしろう/作 ほるぷ出版 2020/7/25  (出版社サイト→こちら

 

はたこうしろうさんが子どもたちと一緒に行うワークショップのお手伝いに伺ったことがあります。この絵本を手にしたときに、その時のはたさんの子どもたちへの働きかけや参加した子どもたちが生き生きと絵を描いている様子を思い出しました。
はじめは遠慮がちに紙に色を塗っていた子どもたちが、身体全体を使って描き始めると、みるみる表情が変わり、心が解放されていくのです。
そんな子どもの表情の変化、喜びがこの絵本の女の子からも伺えます。芸術の秋にむけて、たくさんの子どもたちに読んでほしいと思います。

 

 

 

 

 

『4さいのこどもって、なにがすき?』ウィリアム・コール/作 トミー・ウンゲラー/絵 こみやゆう/訳 好学社 2020/7/26  (出版社サイト→こちら

 

あなたにとって、4歳の子どものイメージはどんな感じですか?様々なことに興味関心を持って活動的になり、自己中心性から抜け出してお友達との関係も作れるようになる時期です。
そんな4歳の子どもたちが、地域のおばさんの家に集まって自分たちの好きな遊びや食べ物のことを伝えていきます。最後に「あたしたちがいちばんすきなこと。それはね、おばさんみたいなやさしいひとのいえで、あそぶってことよ!」と言って帰っていきます。地域で子どもたちを温かく見守ってくれる存在が増えると、子どもたちも情緒豊かに成長していくだろうなと思います。

 

 

 

 

『びんにいれたおほしさま』サム・ヘイ/文 サラ・マッシーニ/絵 福本友美子/訳 主婦の友社 2020/8/31  (出版社サイト→こちら

 

ある時、公園で弟がぴかぴか光るものを拾ってきました。姉弟は、いったい何だろう?と調べていくのですが、誰も答えてくれません。
男の子はその光るものを大切にびんに入れて片時も離しませんでしたが、その光るものはだんだん弱っていくようでした。そんな時夜空を見上げて男の子が見つけたものは「まいごです ちいさなほしがひとつ」というメッセージ。さて、迷子になったちいさなほしを、どうやって空に帰してあげられるでしょう?想像するだけでも楽しくなってくる絵本です。

 

 

 

 

 

『きっとどこかに』リチャード・ジョーンズ/作 福本友美子/訳 フレーベル館 2020/8  (出版社サイト→こちら

 

迷子になった一匹の子犬。居場所を探してとぼとぼ歩いています。ふと見た川面に葉っぱが一枚、どこかへ流れていきます。それを追っていくうちに都会に迷い込みます。
しかし、お腹を空かせて迷い込んだお店でも、嫌われ、追い出されてしまいます。どこにも行くところはないと諦めていた時に、子犬をみつけて追いかけてきた女の子に声をかけられます。
やっと受け入れてくれる人、場所に出会えた犬の安堵感が絵本からも伝わってきます。「きっとどこかに」という希望を抱くことの大切さを感じさせてくれました。

 

 

 

 

【児童書】

『ベルリン1945 はじめての春』上・下 クラウス・コルドン/作 酒寄進一/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2020/7/14  (出版社サイト→上巻こちら、下巻こちら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドイツの20世紀前半の転換期を描いた三部作のうちの完結編です。第一世界大戦終結後ワイマール共和国誕生へと動く1918年から1919年のベルリンを舞台にした『ベルリン1919 赤い水兵』、ワイマール共和国の終焉からナチスによるファシズム独裁へと移行した1932年から1933年のベルリンを舞台にした『ベルリン1933 壁を背にして』に続く第三部です。本作では、1945年春の第二次世界大戦末期の英米機による空爆にさらされた頃と、その後のソ連によるベルリン占領下にあるベルリンを描いています。第二次世界大戦下のドイツについてはナチスによるユダヤ人迫害や大虐殺がユダヤ人の立場から描かれる作品が多いのですが、ドイツ一般市民が空襲から逃げる地下壕の中で何を考えていたのか、またソ連の占領下で何が起きていたのか、12歳の少女エンネの目線から描いています。第一部の主人公はヘレ、第二部の主人公はヘレの弟ハンス、そして第三部の主人公エンネはヘレの娘で、歴史に翻弄される家族の物語でもあります。洋の東西を問わず、また戦争を仕掛けた方も、仕掛けられた方も、武力、暴力の応酬によって深く傷つき、犠牲になるのは一般市民であり、弱い立場に置かれる女性や子ども、高齢者たちです。その厳しい事実を直視し、考える契機になる作品です。

 

 

(作成K・J)