2020年11月、12月の新刊から(その1)


11月、12月に出版された絵本を紹介いたします。一部、見落としていた11月以前に発行された新刊も含まれます。また読み物に関しては、年末年始のお休みに読んで年明けに紹介できればと思います。

今回は表参道クレヨンハウスで購入したもの、横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、出版社を通して著者、翻訳者から献本していただいたものを、読んで記事にしています。

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

***************************
【絵本】

『ポラーノの広場』宮沢賢治/作 みやこしあきこ/絵 三起商行 2020/10/24(出版社サイト→こちら

宮澤賢治がイーハトーブを舞台に描く童話が絵本になりました。体裁は絵本ですが、88ページの大作です。
みやこしあきこさんが描く絵が、賢治の幻想的なイーハトーブの世界観を見事に表現しています。

「つめくさの花の かおる夜は
 ポランの広場の 夏まつり」

モリーオ市の博物局で働くキューストと、農夫の子ファゼーロが出会って、昔話に語られる野原の真ん中にあるポラーノの広場を探し求めていきます。ミキハウスの宮沢賢治の絵本シリーズの33巻めの絵本です。

 

 

 

 

『おやこでよもう/金子みすゞ もしもわたしがおはななら』金子みすゞ/詩 松本春野/絵 JULA出版局 2020/11(出版社サイト→こちら

おやこでよもう/金子みすゞ」シリーズの最新刊(5冊目)です。
「おはなし会プラン(2021年2月その1)」(→こちら)で紹介した「はねぶとん」以外に、「つもったゆき」、「いしころ」、「おはなだったら」、「おおきなもじ」、「ほしとたんぽぽ」など全部で9編の詩が紹介されています。
ナビゲーターは、歌舞伎役者の中村勘九郎さん。コロナ禍だからこそ「ほしとたんぽぽ」にうたわれている見えないもののつながりや大切さについて語っていらっしゃいます。優しい表情の子どもたちを描くのはいわさきちひろさんの孫の松本春野さんです。

 

 

 

 

『あの湖のあの家におきたこと』トーマス・ハーディング/文 ブリッタ・テッケントラップ/絵 落合恵子/訳 クレヨンハウス 2020/11/1(出版社サイト→こちら

 

クレヨンハウス創業45周年を記念して落合恵子さんが翻訳し出版された絵本の1冊です。
作者の曽祖父が4人の子どもたちと自然の中で暮らすために湖の畔に建てた家が約90年近い歴史を経てどう変わってきたかを描き出しています。曽祖父一家はユダヤ人だったためナチスが権力を握るとイギリスへ亡命します。その後、まずは音楽好きな一家が移り住み、彼らがオーストリアに逃げると、その知人の夫婦がその家に隠れ住みます。戦後、他の家族が移り住みますが、その後湖と家との間に大きな壁が築かれてしまいます。いわゆるベルリンの壁でした。その後、空き家になっていたのですが、作者の手によってレクリエーションセンター(Alexander House)に生まれ変わりました。一軒の家の歴史から戦争に翻弄される人々の暮らしが伝わってきました。

 

 

 

 

『こうさぎたちのクリスマス』エイドリアン・アダムズ/作・絵 三原泉/訳 徳間書店 2020/11/30 (出版社サイト→こちら

 

クリスマス前に紹介できればよかったのですが、遅れてしまいました。ツリーハウスに住むうさぎの少年オーソンは、村のこうさぎたちに「おとなにはないしょ」でクリスマスパーティーの準備を頼まれます。オーソンの家の庭でこうさぎたちがクリスマスの準備をする様子がとても美しく描かれています。
小さなこうさぎたちに頼りにされるオーソンが、最初は面倒臭がりながらも最後はサンタになりきって大活躍します。『みならいうさぎのイースターエッグ』(→こちら)の姉妹本です。なお、この絵本は1979年に佑学社より乾侑美子訳で出版されていました。(→こちら

 

 

 

 

『悲しみのゴリラ』ジャッキー・アズーア・クレイマー/文 シンディ・ダービー/絵 落合恵子/訳 クレヨンハウス 2020/12/1(出版社サイト→こちら

こちらもクレヨンハウス45周年を記念して出版されました。ママを亡くした男の子のそばにゴリラが現れて、男の子の悲しみにそっと寄り添ってくれます。
「どうしてママはしんだの?」
「いのちあるものはかならずしぬんだ。あいするものをおいていくのはかなしいけれど。」
「いつになったら、かなしくなくなるの?」
「ママがずっといっしょにいるとわかったときだよ。」
男の子がパパとその悲しみを分かち合えた時、ゴリラはそっと消えていきます。大切な人を喪うという深い悲しみに寄り添い、それをゴリラのような大きな腕で丸ごと受け止めてくれる、そんな絵本です。
2020年、新型コロナウイルス感染症で多くの人が亡くなりました。ニュースで伝えられる人数は、その数の一人一人に大切な家族がいて、かけがえのない人生があったことまで想像しないと、自分事として受け止められません。

今年は、感染予防のために、新型コロナウイルスでない他の病気で入院している場合でも、あるいは高齢で施設で過ごしている家族にも、面会ができないという事態になって、最期の別れに立ち会えないという大きな悲しみに揺れた人も多くいたことと思います。私も母を7月に天国に見送りましたが、東京からの面会は謝絶と言われ、最期を看取ることができませんでした。

2020年の最後の投稿で、この絵本『悲しみのゴリラ』を紹介できることを、運命の巡り合わせのように感じています。

 

 

 

 

『怪物園』junaida/作 福音館書店 2020/12/5(出版社サイト→こちら

 

昨年『の』(→こちら)という絵本で話題になったjunaidaさんの新刊絵本です。
怪物たちをたくさん乗せて長い旅をしてきた怪物園が、ある夜うっかり玄関を開けっぱなしにしたために、怪物たちが街にあふれ行進するようになります。外で遊べなくなった子どもたちは、空想の世界で遊び始めるのです。
この不思議な世界観はぜひ手に取って味わってみてほしいと思います。

 

 

 

 

(作成K・J)