Tag Archive for 新刊

2021年3,4月の新刊から(その2)
2021年3月、4月の新刊から(その1)
2021年2月、3月の新刊から
2020年12月、2021年1月の新刊から
2020年11月、12月の新刊から(その2)
2020年11月、12月の新刊から(その1)
2020年10月、11月の新刊から(修正アリ)
2020年9月、10月の新刊から(その2・読み物)
2020年9月、10月の新刊から(その1・絵本)
2020年7月、8月の新刊から
2020年5月、6月の新刊から(読み物、その他)
教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナー
2020年5月、6月の新刊から(絵本)
2020年4月、5月の新刊から
2020年2月、3月の新刊より(読み物・その他)

2021年3,4月の新刊から(その2)


3月、4月に出版された子どもの本のうち、(その1→こちら)で紹介できなかったものを紹介します。一部、見落としていた3月以前に発行された新刊も含まれています。

この度は4月15日に銀座・教文館ナルニア国へ選書に伺い、購入したものと、神保町にあるブックハウスカフェから取り寄せたものを、読み終えた上で紹介しています。

 

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】
《物語絵本》

『オサム』谷川俊太郎/文 あべ弘士/絵 童話屋 2021/3/22(出版社サイト→こちら

巻末に掲載されている谷川さんの「ぼくのゆめ」という詩には、「おおきくなったらなにになりたい? と おとながきく いいひとになりたい と ぼくがこたえる(中略)えらくならなくていい かねもちにならなくていい いいひとになるのが ぼくのゆめ と くちにださずに ぼくはおもう」という一節があります。
谷川さんの思う「いいひと」をあべ弘士さんが絵に描いたら、ゴリラになったそうです。ゴリラの優しい表情を見ているとホッとします。子どもにもおとなにも読んでほしい絵本です。

 

 

 

 

『ともだちいっしゅうかん』内田麟太郎/作 降矢なな/絵 偕成社 2021/4(出版社サイト→こちら

1998年に『ともだちや』(→こちら)が出版されて23年。「おれたち、ともだち!」シリーズ(→こちら)の14冊目となるこちらの絵本は、『ともだちおまじない』(→こちら)と合わせて番外編に位置付けられます。
月曜日から始まって日曜日までロシア民謡の「一週間」のように、毎日きつねとその友だちの楽しいエピソードが描かれます。よく見ると、各曜日の最初のページは「月」「火」「水」などの漢字を模った絵になっています。そんなところも子どもたちが発見して喜びそうです。

 

 

 

 

 

 

『たべたのだーれだ?』たむらしげる/作 0.1.2えほん 福音館書店 2021/4/10(出版社サイト→こちら

月刊絵本「こどものとも0.1.2」2016年8月号のハードカバーです。ボードブックのページに穴が空いていて、向こう側に木の実や果物を食べている動物や虫の一部が見えています。それを予測しながらページをめくるのは、小さな子どもにとっては、まるで「いないいないばあ」遊びをしているような楽しさがあるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

『まよなかのトイレ』まるやまあやこ/作 福音館書店 2021/4/10(出版社サイト→こちら

月刊絵本「こどものとも」年中向きの2010年6月号のハードカバーです。夜中にトイレに起きたひろこ。おかあさんは、小さな赤ちゃんのお世話の真っ最中で、ひろこはねこのぬいぐるみのみいこを連れて、トイレへ行くことになりました。不安な気持ちで暗い廊下に出ると、ぬいぐるみのみいこがすくっと立ち上がり、トイレまで先導してくれるのです。ぬいぐるみは、幼い子どもの不安な気持ちに寄り添ってくれる心強い存在です。そんな子どもの気持ちが柔らかなタッチの絵で丁寧に描かれています。

 

 

 

 

 

 

《ノンフィクション絵本》
『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』キース・ネグレー/作 石井睦美/訳 光村教育図書 2020/12/23 (2021/4/15第二刷発行)(出版社サイト→こちら

昨年12月に出版されていた絵本ですが、見落としていました。この度第二刷が発行されたので、紹介します。
この絵本のモデルになっているメアリー・エドワーズ・ウォーカーは1832年生まれです。メアリーが育った時代は、日本では江戸後期にあたります。彼女は小さなころから独立心と正義感に満ち溢れていました。そして当時、女性が身につけるべきと思われていた体を締め付けるドレスではなく、活動のしやすいズボンをはいて学校へ通うようになるのです。それは社会への挑戦でした。あとがきにはそのことを理由に何度も逮捕されたと書かれています。その度に「男の子のふくをきているんじゃないわ わたしはわたしのふくをきているのよ!」と主張したのです。その後、メアリーは南北戦争の際に北軍の軍医になり、医師を引退した後も女性の選挙権や、服装の自由についての権利を訴えて活動を続けました。ジェンダーについて考えるきっかけになる絵本です。

 

 

 

 

『女の子だから、男の子だからをなくす本』ユン・ウンジュ/文 イ・ヘジョン/絵 すんみ/訳 エトセトラブックス 2021/3/30(出版社サイト→こちら

「女の子は女らしく」「男の子は男らしく」というように性別によって行動を決めつけられることへの疑問をもち、性別の枠組みから自由になることの大切さを子どもたちにもわかりやすく解く韓国の作家による絵本です。日本と同様に儒教的な家父長制が重視されてきた韓国でも、急速にジェンダー問題への関心は高まっているようです。これからの時代、子どもたちがもっと自由に、自分のやりたいことに挑戦できるように、大人の凝り固まった固定観念をまずはほぐす必要があります。子どもと共に読みたい1冊です。

 

 

 

 

 

 

 

『雪虫』石黒誠/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2021/3/30(出版社サイト→こちら

北国では、雪がふりはじめる前に飛び交う白い小さな雪虫のことを、冬の訪れを知らせる虫と親しんでいるそうです。
その雪虫の生態を北海道、富良野の森で一年間追った写真絵本です。雪虫は、不思議な生態を持っています。春にヤチダモの木の上で卵から孵った時と、夏にトドマツの根元の地下で過ごす時、白い綿毛を身にまとって雪虫になって飛んでヤチダモの森へ飛んで帰る時、そして秋に次の世代を産む時では、全く違う姿かたちに変わります。その間に7回世代が交代するのです。春から夏にかけてはメスがメスだけを産み、秋になるとオスとメスが生まれます。その時は翅も口もなく交尾をする為だけに数日間生きて、次の年に孵る卵を産むと死ぬという独特の生態を具に記録しています。私たちの暮らしとはなんら関わりのないように感じるこうした小さな昆虫は、他の昆虫や鳥の餌となり生態系を支えています。小さな昆虫の一生を知ることで、私たちは生命がもつ「センス・オブ・ワンダー」を感じることができるのです。月刊絵本「たくさんのふしぎ」の2013年11月号のハードカバーです。

 

 

 

 

『桜島の赤い火』宮武健仁/文・写真 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2021/3/30(出版社サイト→こちら

こちらも月刊絵本「たくさんのふしぎ」の2013年1月号のハードカバーです。写真家の宮武さんは小学校の修学旅行で阿蘇山を訪れ、その際に購入した絵葉書セットの中にある夜の闇に赤く光る火口の写真を見て「地球の中が赤く光っている」と感じ、そのことに強く惹かれたそうです。
大人になって赤い火口を写真に収めようと阿蘇山を訪れますが、それならば毎日噴火している桜島のほうがよいと勧められて、桜島に通うようになります。鹿児島市内からは噴煙が見えるだけですが、大隅半島側からは昭和火口が見えるとわかると、そちらからカメラを構えて撮影に挑みます。そして噴火の瞬間を写真に収めていきます。
真っ赤な火が噴き出す火口、そして火山雷の稲妻、それらの写真を見ていると地球は今も地中奥深くにマグマを湛え、常に変化しているのだと感じます。この本の中には火山が身近にある人びとの暮らし、過去の大噴火がもたらした地形や水の流れなどもわかりやすく伝えてくれます。何万年という時間の流れの中で今の地形が形作られていますが、それもまたこれから何万年も経つとまったく違う形に変わっていくのだろうと、その壮大な時間の流れの中のほんの一瞬を生きているのだと、この本を読んで感じました。

 

 

 

 

『富岡製糸場 生糸がつくった近代の日本』田村仁/写真・文 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2021/3/30(出版社サイト→こちら

2014年にユネスコ世界遺産として登録された富岡製糸場の成り立ちと、そこに至る日本の養蚕と製糸の歴史を詳細に伝えてくれる写真絵本です。現在放映中のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で今後描かれる明治期の日本の近代化の象徴でもある富岡製糸場が、なぜあの立地になったのか、また富岡製糸場がどんな役割を担っていたのかが、よくわかります。月刊絵本「たくさんのふしぎ」の2016年6月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

 

 

『富士山のまりも 夏休み自由研究50年後の大発見』亀田良成/文 斉藤俊行/絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2021/3/30(出版社サイト→こちら

月刊絵本「たくさんのふしぎ」の2014年4月号のハードカバーです。昭和22年に東京で生まれ育った作者の亀田さんは、小学生だった昭和30年代に富士山麓の山中湖に毎年夏に通うようになります。小学3年生の時に「ししの糞」と呼ばれる小さなまりもを採取し、東京に持ち帰りジャム瓶で育てるようになります。小学4年生の担任の先生は「一人一研究」と自由研究を熱心に呼びかけます。それに応じて亀田さんは自由研究に「山中湖のなりたちとまりも」をテーマに選びます。そして再びまりもを採取して大きな水槽で観察を始めました。
まりもはその後も亀田さんのご実家の庭で50年もの間、育てられていたのです。長年まりもの世話をしてくれていた母親が老人ホームで暮らすようになった2011年に、亀田さんはインターネットでまりもについて検索してみました。すると、山中湖のまりもが絶滅状態であることがわかります。国立科学博物館に報告をすると、50年以上前の観察記録や遺伝子解析により、幻のフジマリモとわかりニュースにもなりました。亀田さんはいずれ山中湖にまりもを返すために、今も研究を続けているとのことです。子ども時代の自由研究が生涯にわたる研究テーマになることもあるのですね。

 

 

 

【児童書】

《昔話・物語》

『火の鳥ときつねのリシカ チェコの昔話』木村有子/編訳 出久根育/絵 岩波少年文庫 岩波書店 2021/4/15(出版社サイト→こちら

チェコで子ども時代を過ごし、また大学時代にチェコへ留学した木村有子さんが、チェコに伝わる昔話を24選んだチェコの昔話集です。挿絵を担当したのは、『命の水―チェコの民話集』(カレル・ヤロミール・エルベン/編 阿部賢一/訳 西村書店 2017→こちら)でも絵を描いたチェコ在住の出久根育さんです。
また2013年に出版された『中・東欧のむかしばなし 三本の金の髪の毛』(松岡享子/訳 降矢なな/絵 のら書店 2013→こちら)にも共通のお話が収録されていますが、当然のことですが翻訳者によっておはなしの雰囲気が少しずつ違っています。子ども時代にチェコで過ごし、身近に昔話を聞いていた木村さんならではの親しみやすい訳で、チェコの昔話を味わってほしいと思います。また木村有子さんのオンライントークイベントが、JBBY主催で6月に行われます。(JBBY国際アンデルセン賞と世界の子どもの本講座2021-②「チェコの国際アンデルセン賞画家が開く絵本の世界」こちら)ぜひ、こちらにもご参加ください。

 

 

 

 

『こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ』岡田淳/作 理論社 2021/5(出版社サイト→こちら

「こそあどの森」シリーズ(→こちら)は2017年に12巻目の『水の森の秘密』(→こちら)で完結しました。
この本は「こそあどの森」の物語に出てくる個性豊かなおとなたちが、どんな子ども時代だったのかを描く番外編です。
主人公のスキッパーが作家のトワイエさんから借りた本の中に、子ども時代の写真が挟まっていたのに気づいたことから、スキッパーとふたごが、次々に森のおとなたちに子どもの頃の思い出を聞き出していきます。トワイエさんが子ども時代に通っていた図書館で体験した不思議な出来事、トマトさんが料理が得意になったわけなど、本編に続く子どもの頃のエピソードがわかって楽しくなります。

 

 

 

 

 

 

《ノンフィクション》

『こどもジェンダー』シオリーヌ(大貫詩織)/著 松岡宗嗣/監修 村田エリー/絵 ワニブックス 2021/5/10(出版社サイト→こちら

助産師としてYoutubeチャンネルでジェンダーとセクシュアリティにまつわる動画を公開してきたシオリーヌさんによる子ども向けに、ジェンダーについて考えるヒントを集めた本です。(性教育YouTuberシオリーヌ公式チャンネル→こちら
「ぼくランドセルはあかがいいんだ でもそれはオンナノコのいろだから ダメといわれちゃった」「わたしね スカートなんかすきじゃない フリフリのようふくなんかきたくない」「おとうさんに「オトコなんだからメソメソなくな!」っていわれちゃった ぼくがオンナノコだったら いいの」など、子どもたちの身近にある疑問に答えてくれます。今回紹介した『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』『女の子だから、男の子だからをなくす本』など、子どもの本の世界でもジェンダーに関する書籍が増えています。SDGsの第5番目の目標に「ジェンダー平等を実現しよう」が入り、また2018年の#MeToo運動以降、この問題は子どもの本の世界でも重要なトピックスになっていることの表れです。

 

 

 

【その他】

『つぎに読むの、どれにしよ? 私の親愛なる海外児童文学』越高綾乃/著 かもがわ出版 2021/2/1(出版社サイト→こちら

長野県松本市にある子どもの本の専門店「ちいさいおうち」(→こちら)の経営者の一人娘である作者が、子ども時代から親しんできた海外児童文学について語るエッセイです。
幼少期はもちろんのこと、思春期の辛い時も、子どもの本の主人公たちがそばに寄り添ってくれたという24作品への想いを読むと、ああ、私もそんな風に思ったなと感じたり、もう一度読み返してみたくなったりします。そして翻訳家の石井登志子さんとの対談からは、リンドグレーン作品への想いが溢れています。子ども時代に出会う本がどれだけその後の人生を支えるかということがわかります。

 

 

 

 

『絵本のなかへ帰る』高村志保/著 岬書店 2021/2/16(出版社サイト→こちら

こちらは長野県茅野市にある今井書店の二代目店主による絵本のエッセイです。子ども時代に出会った絵本、とくに父親のひざの上で読んでもらった絵本の思い出、ご自身が子育て中に我が子と読んだ絵本など27冊が並びます。『つぎに読むの、どれにしよ? 私の親愛なる海外児童文学』の越高さんと同様に子ども時代に出会う本がいかに子どもの人格形成に影響を与えるか、人生を彩るかを語っています。
出版元は夏葉社の新レーベル、岬書店、そして表紙の絵はきくちちきさんです。(今井書店本店のtwitter→こちら

 

 

 

 

『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』若菜晃子/編著 岩波少年文庫別冊 岩波書店 2021/3/12(出版社サイト→こちら

子ども時代に岩波少年文庫に親しんだという編集者でエッセイストの若菜さんによる岩波少年文庫愛がつまったエッセイです。
岩波少年文庫は1950年、終戦後5年後に創刊されました。岩波少年文庫の各巻の巻末には「岩波少年文庫創刊五十年ー新版の発足に際して」には「心躍る辺境の冒険、海賊たちの不気味な唄、垣間みる大人の世界への不安、魔法使いの老婆が棲む深い森、無垢の少年たちの友情と別離―幼少期の読書の記憶の断片は、個個人のその後の人生のさまざまな局面で、あるときは勇気と励ましを与え、またある時は孤独への慰めともなり、意識の深層に蔵され、原風景として消えることがない」という一文が掲載されています。まさにそれを体感してきた作者による70年の歩みをまとめた「岩波少年文庫大全」です。また岩波少年文庫の総目録としても活用できる保存版です。

 

 

(作成K・J)

2021年3月、4月の新刊から(その1)


3月、4月に出版された子どもの本を紹介します。一部、見落としていた3月以前に発行された新刊も含まれています。

この度は横浜・日吉にあるともだち書店と、代官山蔦屋書店にに注文し届けていただいたものと、本の編集者からお届けいただいたものもあります。それらを読んで紹介文を作成しました。今回は、児童書が1冊と少ないですが、4月中に銀座・教文館ナルニア国へ選書に伺い、出来るだけ早くに紹介できるようにいたします。

 

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

 

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【絵本】

『ことりはこえだのてっぺんに』(おやこでよもう!金子みすゞ)金子みすゞ/詩 松本春野/絵 中村勘九郎/ナビゲーター 監修/矢崎節夫 JULA出版局 2021/3(出版社サイト→こちら

JULA出版局から出ている「おやこでよもう!金子みすゞ」シリーズの最新刊です。
絵本のタイトルになっているのは「き」という詩の中のことばです。
「き」のほかに「あかいくつ」、「いろがみ」や「こだまでしょうか」など10篇の詩が収められています。

 

 

 

 

 

『おひさま わらった』きくちちき/作 JULA出版局 2021/3(出版社サイト→こちら

こちらもJULA出版局からの新刊です。ブラティスラヴァ世界絵本原画展で何度も受賞しているきくちちきさんの最新刊です。身近な森の中にさんぽにでかけた子どもが、たくさんのいのちたちと出会い、ふれあい、少し怖い思いをしながらも、すべてがつながっていることを体感していく様子を、4色刷りの木版画で表現しています。
赤、青、黄、黒、それぞれの版を描き分け、直接それぞれの色で印刷し、紙面上で版画が完成するという手法で丁寧に作られています。温かみのある版画だからこそ、命溢れる森の中での躍動感が伝わってくると思います。

 

 

 

 

『かえるのごほうび』絵巻「鳥獣人物戯画」より 木島始/作 梶山俊夫/レイアウト 協力/高山寺 福音館書店 2021/3/20(出版社サイト→こちら

2021年4月13日より東京国立博物館で特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」が始まりました。(公式サイト→こちら)それに合わせて、福音館書店月刊誌「こどものとも」1967年1月号として刊行されていた作品が、新装製版されてこの度出版されました。つまり国宝が絵本になったのです。
今から800年以上前に描かれた素晴らしい絵巻には詞書がつけられていませんが、素晴らしい作品を子どもたちの身近に置けないのかと考えて物語がつけられたと裏表紙に木島始さんの言葉が記されています。まるではじめから、そういう詞書だったと思うほどに自然で楽しいお話になっています。

 

 

 

『気のいいバルテクとアヒルのはなし』クリスティーナ・トゥルスカ/作・絵 おびかゆうこ/訳 徳間書店 2021/3/31(出版社サイト→こちら

ポーランド出身の絵本作家が描いた昔話風の物語です。バルテクという名の気のいい若者は、1わのアヒルと一緒に山奥の村はずれにあるみすぼらしい家に住んでいました。ある時カエルの王様を助けたことから魔法の力を授かります。
そこへ、兵士たちの隊列がやってきます。バクテクは自分の家を宿舎として提供しようとしますが、大将はバクテクのアヒルを丸焼きにしろと命令してきます。それだけは出来ないと、バクテクはカエルの王様に授けられた魔法を使うのでした。1972年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞した作品の初邦訳です。

 

 

 

 

 

 

『ヴォドニークの水の館 チェコのむかしばなし』まきのあつこ/文 降矢なな/絵 BL出版 2021/4/1(出版社サイト→こちら

世界のむかしばなし絵本シリーズ[第2期]の5冊目で、チェコの昔話に、スロヴァキア在住の降矢ななさんが絵をつけています。
ヴォドニークとは、ボヘミア地方で語り継がれてきた水の魔物です。日本の河童と同じように、人間を水に引きずり込んで溺れさせる存在であったり、一方では人に親切でいたずら好きな存在として語り継がれているそうです。その姿もたいてい緑色の体をしていると「あとがき」に描かれていて、日本の河童と似ていることに驚きました。
貧しい家の娘があまりのひもじさに家を出て、川に身を投げたのをヴォドニークがつかまえ、水の館に連れ帰ります。娘はヴォドニークに仕えることになるのですが、広間にある壺の中だけは覗いてはならないと言いつけられます。ある時壺の中から前に川でおぼれ死んだ声が聞こえてきたのです。昨年春、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で中断された原画展が、銀座・教文館9階ウェンライトホールで再開されています。(降矢なな絵本原画展2021年3月27日~5月5日 公式サイト→こちら)この絵本の原画が追加されており、早速見てきました。水の中の世界は透明で、娘が壺の中の魂を解放するシーンは幻想的で原画ならではの美しさでした。ぜひお時間を作って見にいってください。

 

 

 

 

【児童書】
*読み物*

『さいごのゆうれい』斉藤倫/作 西村ツチカ/画 福音館書店 2021/4/10 (出版社サイト→こちら

ハジメは、小5の夏休みを父親が仕事でいない間、田舎のおばあちゃんの家で過ごすことになりました。ハジメが幼い時に亡くなった母親の実家です。
飛行機が好きなハジメは、おばあちゃんの家の近くに出来た新しい空港を毎日見に行って過ごしていました。8月13日の午後、いつものように空港を見に行くと、飛行船のようにずんぐりした飛行機が降りてくるかと思ったらその飛行機は大きさを変えながら降りてくるのです。そのままその飛行機は滑走路を外れ、すすきの原を越えてハジメのいるフェンスの前で止まるのでした。そして降りてきたのはゆうれいの女の子だったのです。ネムと名乗るゆうれいの女の子と過ごすうちに、ハジメはこの世界から「かなしみ」という感情が消されていること、それは父親が研究開発した薬に因るものだと気づきます。「かなしみ」がないと人は亡くなった人を思い出すこともなくなり、するとゆうれいも居なくなってしまうというのです。「かなしみ」とは何なのか、読み進めるうちに考えさせられます。「かなしみ」を取り戻すために、ハジメとネムと一緒に不思議な旅をするミャオ・ターとゲンゾウなど脇役も魅力的です。

 

 

 

【その他】

『アーノルド・ローベルの全仕事 がまくんとかえるくんができるまで』永岡綾、大久保美夏/編集 ブルーシープ 2021/1/8 (出版社サイト→こちら

今年1月9日から3月28日までの会期で立川市にあるPLAY MUSEUM(公式サイト→こちら)で開催されていた「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念アーノルド・ローベル展の図録です。この原画展は、2021年4月3日(土)− 2021年5月23日(日)に広島のひろしま美術館、その後も2022年春に伊丹市立美術館などへ巡回します。(原画展情報→こちら
アーノルド・ローベルの全作品と、ラフスケッチなどの資料がふんだんに集められていて、彼の作品の魅力を深く知ることが出来ます。研究資料としても価値が高いものになっています。

 

 

 

 

 

 

 

『おはなし会で楽しむ手ぶくろ人形』保育と人形の会/編著 児童図書館研究会 2021/3/1(児童図書館研究会のサイト→こちら

「本のこまど」でも何度も紹介しているミトンくまなど、おはなし会で活躍できる手ぶくろ人形の他、さまざまな小物の作り方と演じ方をコンパクトにまとめた本です。
後半には図書館などでの実践報告がまとめられています。絵本やわらべうたとどのように手ぶくろ人形を組み合わせるのか、詳細に書いてありますので、即実践に役立つことでしょう。コロナ禍で子どもたちと距離を保たなければならない昨今のおはなし会ですが、間に人形が入ることで、子どもたちの心もホッと和らぐことと思います。ぜひ図書館事務室に1冊、揃えておいてください。

 

 

 

 

 

 

 

『乳幼児期の性教育ハンドブック』浅井春夫、安達倭雅子、良香織、北山ひと美/編著 “人間と性”教育研究協議会・乳幼児の性と性教育サークル/著 かもがわ出版 2021/4/15(出版社サイト→こちら

世界経済フォーラムが発表した日本の最新のジェンダー・ギャップ指数が120位というニュースはご覧になったと思います。
性差はあるけれど、それが人間の価値の差ではないことを私たちは認識しなければなりません。
しかし男尊女卑の考え方はどんなところから来るのでしょうか。意外と幼いころからの性教育にも起因しているのかもしれません。
性の問題は深く人権に結びついています。このハンドブックは主に保育園、幼稚園の教師向けに書かれたものですが、図書館にも幼い子供たちが大勢やってきます。知らないうちに本や配布物も「男の子向け、女の子向け」と分けてしまっているかもしれないですね。そのあたりから見直してみるためにも一読をお勧めします。

 

 

(作成K・J)

2021年2月、3月の新刊から


2月、3月に出版された子どもの本を紹介します。一部、見落としていた2月以前に発行された新刊も含まれています。

2月末に銀座・教文館ナルニア国で久しぶりに新刊チェックをしてきました。また、横浜・日吉にあるともだち書店に注文し届けていただいたものもあります。それらを購入し読んで紹介文を作成しました。

 

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】

『ぺこぺこ ペコリン』こがようこ/作 くさかみなこ/絵 講談社 2021/1/15 (出版社のサイト→こちら

とってもくいしんぼのペコリン。なんでもたべちゃいます。たべたものは、マラカスにたいこ、ラッパにピアノ。それをたべちゃうと、ペコリンは楽器に変身して楽しい音を出すのです。ちょっと不思議、でも楽しい、赤ちゃんから楽しめるおはなし絵本です。

 

 

 

 

 

 

 

『おばけのジョージ― こいぬをつれだす』ロバート・ブライト/作 こみやゆう/訳 好学社 2021/1/24 (出版社のサイト→こちら

心優しいおばけのジョージー、好学社から出ているシリーズは『おばけのジョージー こまどりをたすける』、『おばけのジョージー とびだしたけいとだま』、『おばけのジョージー メリーメリークリスマス』に続いて4冊目です。
ある日、散歩に連れ出してもらえない子犬マフィンを外に連れ出したジョージーと仲間たち。ところがマフィンはうさぎの巣穴にはまって動けなくなります。そこで猫のハーマンに飼い主のアイビスさんを呼んできてもらうのです。最後はホッとする結末になっています。

 

 

 

 

『なりきりマイケルのきかんしゃりょこう』ルイス・スロボドキン/作 こみやゆう/訳 出版ワークス 2021/1/25 (出版社のサイト→こちら

マイケルは、想像力豊かな男の子です。マイケルが居間で機関車ごっこを始めると、パパもお姉ちゃんも一緒になって汽車の旅を楽しんでくれます。マイケルは機関車の運転士にも、車掌にもなり、乗り換えバスの運転手にも、跳ね橋の開閉係にもなるのです。想像する力があれば、なんにでもなれる、そんな我が子の姿を温かく見守るパパの姿もほほえましい、そんな絵本です。

 

 

 

 

 

『うみがめのおじいさん』いとうひろし/作 講談社 2021/2/10 (出版社のサイト→こちら

いとうひろしさんの名作『おさるのまいにち』の名脇役うみがめのおじいさんのおはなしです。うみがめのおじいさんは波に揺られてうつらうつら。そうするとたくさんの思い出が波の間からあらわれてきます。そしてたくさんの思い出と一緒に心も体もどんどん海にとけていくように感じるのです。なんともゆったりとした、しずかなしずかな、それでいて気持ちが温かくなってくるお話です。

 

 

 

 

 

 

 

『ひびけわたしのうたごえ』カロライン・ウッドワード/文 ジュリー・モースタッド/絵 むらおかみえ/訳 福音館書店 2021/2/15 (出版社のサイト→こちら

 

カナダに住む6歳の女の子の物語です。学校へ行くために朝早く家を出て、スクールバスが停まる道路までの長い道のりを森を抜けて歩いていきます。まだ朝陽が昇らぬ前の暗い森の中を通り抜けながら、不安な気持ちを吹き飛ばすために女の子は歌を歌うのです。ブリティッシュ・コロンビア州のピース・リバー流域のセシル湖畔で少女時代を過ごした作者の実体験がもとになっています。絵本では夜明け前の通学路を描いていますが、人生における不安な時期と置き換えて読むことができます。どんなに困難な時でも前を向いて心に歌を、そうすればきっと希望がわいてくる。そんな応援歌になる絵本です。絵を描いたのは昨年10月に紹介した『サディ―がいるよ』(「本のこまど」記事→こちら)のジュリー・モースタッドです。

 

 

 

 

 

『おばあちゃんのたからもの』シモーナ・チラオロ/作 福本友美子/訳 光村教育図書 2021/2/20 (出版社のサイト→こちら

おばあちゃんの誕生日を祝うために家族が集まりました。孫娘がおばあちゃんの顔を覗き込んで「そんなにしわがあっていやじゃない?」と尋ねます。でもおばあちゃんは「ちっとも。だってしわは おばあちゃんのたからもの。だいじなおもいでがぜんぶしまってある、だいじなたからもの!」と答えるのです。孫娘は疑って、おばあちゃんの顔のしわを指さしながら「おばあちゃん、ここにはなにがしまっているの?」と次々に聞きます。おばあちゃんは幼い日の春の庭や、娘時代の海辺でのピクニック、おじいちゃんとの初めてのデートのことなど、孫娘に語っていくのです。老いていくことを前向きに捉えた心温まるおはなしです。

 

 

 

 

 

『めぐりめぐる』ジーニー・ベイカー/作 わだすなお/訳 ポリフォニープレス 2021/2 (出版社のサイト→こちら

渡り鳥のオオソリハシシギは南の住処オーストラリアやニュージーランドから飛び立ち、北の住処であるアラスカまで長い旅をします。その壮大な旅の様子を美しいコラージュで描き出しています。北へ飛ぶ旅の途中で立ち寄るのは中国大陸黄海近くの干潟です。急速な開発でどんどん干潟が失われていることもさりげなく描かれています。11000キロメートルをノンストップで飛びつづける鳥たちには「おおむかしからいききしていた しるしのないみちをたどる」能力があるようです。絵本の見開きに車いすの少年が描かれています。長い旅を終えて鳥たちが戻ってきた時には、少年は松葉杖になっていて、季節の移り変わりと時間の経過をさりげなく表現しています。

 

 

 

 

 

『まだまだ まだまだ』五味太郎/作 偕成社 2021/3(出版社のサイト→こちら

2021年2月6日にNHK、ETV特集で五味太郎さんが取り上げられました。(ETV特集「五味太郎はいかが?」→こちら
この番組の中で、制作過程を紹介していたのが、この絵本でした。
かけっこでゴールをしても、まだ走り続けたい男の子は町の中をどんどんかけていきます。
既成概念を常に突き破り、新しい挑戦を続ける五味さんらしい絵本です。人生の挑戦も「ここまで」と決めてしまうのではなく、自分らしく、自分で納得するまで走っていいんだよと、背中を押してくれるおはなしです。

 

 

 

 

 

 

【児童書】
*物語*

『町にきたヘラジカ』フィル・ストング/作 クルト・ヴィーゼ/絵 瀬田貞二/訳 徳間書店 2021/1/31(出版社のサイト→こちら

 

1969年に学習研究社から刊行された『町にきたヘラジカ』の訳文を、翻訳者である故・瀬田貞二さんのご遺族の了承を得て若干の見直しをした上で、この度徳間書店より再版されました。
アメリカ・ミネソタ州で実際にあった出来事を元にして書かれたおはなしで、厳しい寒波のやってきた冬のある日、仲良しの男の子イバールとワイノは、イバールの父さんの馬屋の中に大きなヘラジカを発見するのです。お腹を空かせて馬の飼い葉をたらふく食べてしまい、父さんや町の人たちは驚きますが、だれもこのヘラジカを撃ち殺すことはせず、町で飼うことにしたのでした。春になってようやくヘラジカは町から出ていきます。次の冬はいままでになく暖かい冬で、山にはヘラジカの餌がたくさんあるはずです。ところが、なんとヘラジカはまたやってきたのでした。ヘラジカを見て驚く町の人々の反応が楽しいおはなしです。文字も大きくルビがふってあるので、小学校低学年の子どもたちに手渡せる1冊です。

 

 

 

 

 

『見知らぬ友』マルセロ・ビルマヘール/作 宇野和美/訳 オーガフミヒロ/絵 福音館書店 2021/2/15(出版社のサイト→こちら

テストで数学の問題が解けない時、好きな女の子に告白したい時など人生のピンチになると現れる「見知らぬ友」。それは自分にしか見えない存在だけど、どうして現れるのか、わからない。そんな不思議なおはなしを皮切りに、思いがけない展開が待ち受けている10の短編が収められているYA向きの作品集です。
作者はアルゼンチンの作家で、物語の舞台は主に首都ブエノスアイレスです。「世界一強い男」のパートではこんな言葉があります。「八月のある寒い金曜日の」、北半球で暮らす私たちにはピンとこないのですが、南半球では真冬なのです。翻訳者の宇野さんは訳者あとがきに「地球の反対側のブエノスアイレスの街で繰り広げられる、肩の力が抜けたような、ちょっととぼけた、けれども、どこか温かな味わいのある物語を楽しんでいけたらうれしいです。」と記しています。そんな洒脱な作品をぜひ若い世代に手渡してあげてください。

 

 

 

 

 

『さくら村は大さわぎ』朽木祥/作 大社玲子/絵 小学館 2021/2/23 (出版社のサイト→こちら

さくら村には、昔からどこのうちでも子どもが生まれたら、さくらの苗木を一本、植える約束がありました。なので春になると村じゅうがさくらでいっぱいになるのです。大きなさくらはひいおじいちゃんやひいおばあちゃんが生まれた時のもの、小さなさくらは子どもたちが生まれた時のものです。
そんなさくら村の満開の四月から、夏と秋を過ごして冬へ、そして次の年の春にもう一本さくらの苗木が植えられるまで一年間の、小学校三年生のハナちゃんとお友達が繰り広げる楽しくも心温まる村の暮らしを描いたおはなしです。小学校低学年から中学年の子どもたちにおすすめです。

 

 

 

 

 

『ロザリンドの庭』エルサ・ベスコフ/作 菱木晃子/訳 植垣歩子/絵 あすなろ書房 2021/2/25 (出版社のサイト→こちら

北欧で読み継がれてきたエルサ・ベスコフの、不思議で美しい幼年童話です。6歳の男の子ラーシュ・エリックは、体が弱くいつもベッドに横になって壁紙に描かれた美しい花の絵を眺めていました。ラーシュは壁紙を見て「あの大きなふしぎな花は、いったいどこの国の花なんだろう?いつかその国をみてみたい」と思っていました。するとある日お母さんが仕事に出かけたあとに壁紙の中からノックする音が聞こえてくるではありませんか。そして壁紙の中から現れたロザリンドは壁紙の花々に水をやりはじめるのです。そのうちラーシュはロザリンドと一緒に壁紙の向こうのロザリンドの庭に行って遊ぶようになるのです。ところがお母さんにその話をしても信じてもらえません。次第に元気になってくるラーシュを見て、おかあさんは田舎に引っ越そうと考えるようになるのです。引っ越していった先は、ロザリンドの庭とそっくり。最後まで柔らかい光に包まれたような優しいファンタジーです。小学校中学年向けの童話です。

 

 

 

 

 

『あしたの幸福』いとうみく/作 松倉香子/絵 理論社 2021/2(出版社のサイト→こちら

中学生の雨音はパパと二人暮らしですが、来月にはパパは恋人の帆波さんと結婚することになっていました。ところが突然パパが交通事故で亡くなったしまいます。帆波さんと信号待ちをしている時に車に突っ込まれ、パパは帆波さんをかばうようにして即死し、帆波さんは助かったのです。
パパの葬儀のあと、雨音を誰が引き取るか、親族たちが話し合う中、彼女はパパと一緒に住んでいたマンションに残りたいと言い出します。そこへ突然現れたのが、雨音を産んだ後に家を出ていった母親。母である国吉京香さんはアスペルガーなのか、人との関わり方が苦手だったのです。それでも、今の家に住み続けるために、雨音は母親である京香さんと同居することにします。その上、お腹に赤ちゃんを宿しているパパの恋人帆波さんも一緒に住むことになるのです。そんな奇妙な関係の中で、少しずつ雨音は両親の愛情や離別のいきさつを知り、緩やかに母親のことを理解しようとしていきます。多感な少女の心の動きが、温かな視線で描かれていて、読後感は爽やかです。YA向けの作品です。

 

 

 

『ヤーガの走る家』ソフィー・アンダーソン/作 長友恵子/訳 小学館 2021/3/1(出版社のサイト→こちら

 

ロシア民話に出てくる「バーバ・ヤガー」をモチーフにした長編ファンタジーです。
「わたしの家には、鳥の尾がはえている。
 家は、年にニ、三度、真夜中にすっくと立ちあがり、猛スピードで走りだす。」というプロローグの最初の一行で、この物語の中にすーっと惹き込まれていきます。
この奇妙な家は、死者をなぐさめ、人生を祝福し、星へ返すための場所、つまり生と死の境界にあるのでした。そして少女マリンカは生と死の境界を守る「門」の番人になることを運命づけられていたのです。しかしマリンカは生きている人たちの世界で友だちが欲しいと願い、言いつけには従わずに自分の意思を押し通そうとします。マリンカのそんな気持ちは自己中心的に映りますが、さまざまな出会いから人を思いやる温かい気持ちを学び、落ち着いた気持ちで自分の将来を考えるようになっていきます。自分の望む未来を決してあきらめないマリンカの姿は思春期の子どもたちに力を与えてくれます。

 

 

 

 

*ノンフィクション*

『女の子はどう生きるか 教えて、上野先生!』上野千鶴子/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2021/1/20 (出版社のサイト→こちら

 

日本のジェンダーギャップは、世界経済フォーラム(WEF)の「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2020」によると世界153か国中121位。先進国の中でも最低です。
そんな女性が生きにくい社会で、どう生きていくか、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長で東大名誉教授の上野千鶴子さんが、気持ちがよいほどにすっぱりと答えてくれます。いつの間にか刷り込まれた「女子力」という呪縛から解き放たれ、一人の人間として自分らしく生きていくことを力強く応援してくれるのです。巻末にはネット上でも話題になった2019年度東京大学学部入学式祝辞が収められています。中高生のみなさんに男女問わず読んでほしい1冊です。

 

 

 

 

『SDGs時代の国際協力 アジアで共に学校をつくる』西村幹子・小野道子・井上儀子/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2021/2/19(出版社のサイト→こちら

 

三人の著者は、バングラデシュで長く学校づくりに取り組んできたアジアキリスト教教育基金(Asia Christian Education Fund=ACEF)に二十年以上携わってきました。過去30年の間に国際情勢は大きく変化し、国際協力のあり方も急速に進展しつつ変化しているというのです。
特にSDGs(持続可能な開発目標)の4番目にある「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」を実現するために、先進国が後進国へ施すというような「援助」ではなく、問題に共に立ち向かう「協働」の方向へ、変化しているのです。そうした国際協力の本質を見極め整理しつつ、これからの若い世代にも関心を持ってほしいと願ってこの本は書かれています。

 

 

 

 

【その他】

『昔話と子どもの空想』TCLブックレット 東京子ども図書館 2021/1/29 (出版社のサイト→こちら

東京子ども図書館の機関紙「こどもとしょかん」に掲載されたおはなしに関する評論の中から、バックナンバーの要求がもっとも多かった三篇が収録されたブックレットです。
「人間形成における空想の意味」(小川捷之)、「昔話と子どもの空想」(シャルロッテ・ビューラー 森本真実/訳・松岡享子/編)、「昔話における”先取り”の様式―子どもの文学としての昔話」(松岡享子)の三篇は、どれを読んでも心に深く響く内容です。子どもたちにおはなしを手渡す活動をしている児童担当であれば、ぜひ目を通しておきたいものです。

 

 

 

 

『草木鳥鳥文様』梨木香歩/文 ユカワアツコ/絵 長嶋有里枝/写真 福音館書店 2021/3/15(出版社のサイト→こちら

福音館書店から出版されているけれど、児童向けではなくかなり趣向を凝らした贅沢な大人の趣味本だなと、これは自分の宝物にして何度も眺めていたいと感じた1冊です。
梨木香歩さんの鳥をめぐるエッセイに、古い箪笥の引き出しの内側に描くという手法のユカワアツコさんの鳥の絵。そしてそれをさまざまな風景と共に切り取って撮影した長嶋有里枝さんの写真。
それがぴったりとはまっていて、読む者の心を静かな自然の懐へ返してくれます。「冬の林の中で」(ツグミ/シバ属)、「水上で恋して」(カイツブリ/コウホネ)、「初夏の始まりの知らせ」(アオバズク/ケヤキ)・・・鳥と植物を組み合わせた全36篇のエッセイが収められています。

 

 

 

 

『科学絵本の世界100 学びをもっと楽しくする』別冊太陽 平凡社 2021/3/15(出版社のサイト→こちら

 

子どもの好奇心の扉を開く科学絵本100冊が見開き2ページ、カラーでたっぷりと紹介されています。
どの絵本も、子どもたちにすぐに紹介したくなるものばかり。
このままレファレンスの資料としても重宝しそうです。

 

 

 

 

(作成K・J)

2020年12月、2021年1月の新刊から


昨年12月と今年に入ってからに出版された子どもの本を紹介いたします。
一部、見落としていた12月以前に発行された新刊も含まれます。

今回は、横浜・日吉のともだち書店に注文していた本の中からの紹介です。なお、2月上旬にはまた教文館ナルニア国で選書して、情報をお届けできるようにいたします。

 

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】

『100歳ランナーの物語 夢をあきらめなかったファウジャ』シムラン・ジート・シング/文 バルジンダー・カウル/絵 金哲彦/監修 おおつかのりこ/訳 西村書店 2020/12/12(出版社のサイト→こちら

幼少期に身体が弱く5歳になるまで歩けなかったファウジャが100歳でトロント・ウォーターマラソンを完走するまでのお話です。ファウジャは、インドのパンジャブ地方の出身。シク教の信徒で髪の毛を切らずターバンを巻いています。
5歳で歩けるようになりましたが、当時遠方の学校に通う体力はなく、地元で畑仕事をしながら身体を鍛え、大人になって家族にも恵まれました。子どもたちが独立し、妻にも先立たれた81歳の時、息子家族が住むロンドンへ移り住みます。そこでマラソンに出会い、走るようになります。
89歳でロンドンマラソンを完走した後も、次々に記録を塗り替えていきますが、そこには子ども時代にいつも母から言われていた言葉がありました。「あなたのことはあなたがよく知っている。あなたにできることもね。今日は自分の力を出しきれるかしら?」いくつになっても挑戦することの大切さを、また自分を信じることの強さを教えてくれる伝記絵本です。

 

 

 

 

『よんひゃくまんさいのびわこさん』梨木香歩/作 小沢さかえ/絵 理論社 2020/12(出版社のサイト→こちら

2017年から続くNHKスペシャル「列島誕生ジオ・ジャパン」という番組があります。日本列島の成り立ちがよくわかる大変優れた番組でした。
この絵本は、その列島誕生の過程で生まれた琵琶湖の成り立ちをファンタジーとして描いています。
あとがきには、「日本列島がユーラシア大陸から分離しはじめたのは今から約2000万年前。当時の東アジアの推測図を見ていると、日本列島はあちこち沈んだり現れたり、赤ん坊が母親の胎内の羊水のなかで、ちゃぽんちゃぽんと浮かんだり沈んだりを繰り返しているかのように見えます。(中略)そして列島の真ん中、現在の伊賀辺りで琵琶湖初期の古琵琶湖とされる、大山田湖が現れます。それが400万年前から360万年前まで。その後320万年前、北方向で阿山湖、さらに甲賀湖が、240万年前頃から180万年前頃前までは蒲生野の辺りで蒲生沼沢地が、少しずつ移動するかのように出現します。それから100万年ほど前から現在の琵琶湖の堅田地域を中心とし、現在の琵琶湖の位置、大きさへと近づいていきます。」とあります。こうした悠久の時の流れ、大地の記憶が梨木さんによってファンタジーとなり、琵琶湖畔で育った画家小沢さんの幻想的で美しい絵でそれを表現しています。

 

 

 

 

【読み物】

『くもとり山のイノシシびょういん 7つのおはなし』かこさとし/文 かこさとし・なかじまかめい/絵 福音館書店 2021/1/10(出版社のサイト→こちら

 

2018年に亡くなられたかこさとしさんが、晩年福音館書店の月刊誌「母の友」2011年11月~2019年7月号までに発表された創作童話をまとめたものです。「母の友」2019年4月号の「編集だより」(p85)にこのようなことが書かれています。
「今月は昨年五月に亡くなった絵本作家、加古里子さんの未発表童話をお届けしました。この作品は昨年、加古さんのお嬢さん、鈴木万里さんが遺稿の中から”発見”してくれたものです。加古さんは2011年以降何度か「母の友」の依頼に応え、「一日一話」に「イノシシ病院」の物語を寄せてくれました。その後独自に三作、書きためておいてくださったようなのです。「完成原稿まで描いていたというのが驚きで、加古本人もイノシシ先生のことが気に入って、筆がのったんじゃないでしょうか」(鈴木さん)。亡き加古さんから「母の友」への贈り物。涙が出る気持ちでありました。三作のうち、残りの二話は今年度のどこかの号で掲載出来たらと思っています。」
「母の友」では見開き2ページに2枚のかこさとしさんの絵がありますが、この度子どもが自分で読めるように漢字をひらがなに開き、文字を大きくしたために一話8ページになっています。そこでなかじまかめいさんによるイラストが加わりました。どれもイノシシ先生がかこさとしさんご本人に見えてくるような優しく温かいお話です。文字を読み始めた子どもたちにぜひ読んでほしいと思います。

 

 

 

 

【その他】

『音楽の肖像 堀内誠一×谷川俊太郎』堀内誠一・谷川俊太郎/著 小学館 2020/11/4(第2刷2021/1/17)(出版社のサイト→こちら

 

児童向けではないかもしれませんが、YA世代には楽しめる1冊です。2020年12月5日から2021年1月24日まで荒川区立図書館ゆいの森あらかわで堀内誠一展が開催されていました。『音楽の肖像』の原画も何枚か展示されていました。
バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンからストラヴィンスキー、エリック・サティまで堀内誠一が遺した28人の作曲家の肖像画とエッセイに加えて、谷川俊太郎が32編の詩をつけた芸術を愛する人にはたまらない1冊です。

 

 

 

 

『学校司書おすすめ!小学校学年別知識読みもの240』福岡淳子・金澤磨樹子/編 少年写真新聞社 2020/11/20(出版社のサイト→こちら

 

知識の本を、小学校の学年別に紹介したブックリストです。ブックトークや授業で使う資料として、また団体貸出の選書に役立つことでしょう。各学年ごとに子どもたちの語彙力、読解力の発達に応じためあてが書かれており、とてもわかりやすい選書基準が示されています。また、コラム記事も充実しており、学校図書館だけでなく、公共図書館の司書にとっても、心強い味方になると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

『デジタル・シティズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び』坂本旬・芳賀高洋・豊福晋平・今度珠美・林一真/著 大月書店 2020/12/15(出版社のサイト→こちら

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、これまで遅々として進まなかった我が国のデジタル教育を大きく変えていくことになりました。これまで子どもたちにデジタルデバイスを手渡す際には、抑制的な「情報モラル」を教えることが主流でした。
しかし、これからの世の中はデジタルを賢く使いこなす時代です。子どもたちが主体的に関われるデジタル・シティズンシップが必要になるとこの本では説いています。デジタル・シティズンシップとは、デジタル世界で生活し、学習し、働くことの権利、責任、機会を理解し、安全で合法的、倫理的な方法で行動できるためのポジティブな捉え方なのです。GIGAスクール構想が前倒しで着手されることになるでしょう。私たち司書もこの視点をもっていたいと思います。

 

 

 

 

『学校が「とまった」日 ウィズ・コロナの学びを支える人々の挑戦』中原淳/監修 田中智輝・村松灯・高崎美佐/編著 東洋館出版 2021/2/1(出版社のサイト→こちら

昨年3月に、なんの根拠も議論もなく、いきなり日本中の学校での学びが止まりました。政府の一方的な通達により、小学校、中学校、高校が臨時休校になり、学びの中断が起きたのでした。
その時、生徒には、保護者には、家庭には、何が起こったのか。そして学校では、どのような意思決定がなされ、教員は何を思っていたのか。NPOなどの学校でもなく、家庭でもない機関は、どのような教育支援を行ったのかを、まとめたものです。
中心にいたのは立教大学経営学部教授の中原淳さん。SNSを通して、どうしたら学びを止めずにいられるのか、すぐに共同研究プロジェクトを立ち上げ、発信していました。私もそのグループの情報を活用し、TS室のeラーニング作成に必要なノウハウを得ることが出来ました。図書館も閉館していた昨年春の緊急事態の中で、何が出来たのか、出来なかったのか、再び学びを止めないために、すべての子どもに関わる人に読んでほしい1冊です。

 

 

(作成K・J)

2020年11月、12月の新刊から(その2)


11月、12月に出版された絵本と読み物を追加で紹介いたします。(12月29日に公開した「2020年11月、12月の新刊から(その1)」は→こちら
一部、見落としていた11月以前に発行された新刊も含まれます。

今回は12月29日に、約2か月ぶりに銀座教文館ナルニア国へ行って選書をしてきました。年末年始に、読んで記事にしています。また、1月11日には横浜・日吉のともだち書店に注文していた本が届きました。こちらも急いで読みました。

 

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】

『ねこのオーランドー 3びきのグレイス』キャスリーン・ヘイル/作 こみやゆう/訳 好学社 2020/11/6 (出版社サイト→こちら

 

クリスマス前後のねこのオーランドー一家の物語です。クリスマスの買い物に出かけたのに、こねこのティンクルは買い物そっちのけで雪遊びをし家族へのプレゼントを買いそびれます。そこでクリスマスにもらった手品セットの中の「のろいの水」スプレーを香水だと思ってお母さんのグレイスの枕元に置きます。目覚めたグレイスが香水だと思って使うと、なんとグレイスが3びきになってしまったのです。そこでオーランドーたちは、天の川を越えて、しし座のレオが門番をするサンタクロースの家まで、解決方法を聞きに行くのでした。1965年に原作は出版されました。なんとも不思議なファンタジーに仕上がっています。

 

 

 

 

『氷上カーニバル』あべ弘士/作 のら書店 2020/11/10 (出版社サイト→こちら

 

氷上カーニバルは、冬の終わりに開かれるお祭り。花火が上がる中、みんな思い思いの仮装して公園の中の凍った池に集まり、一緒に踊って夜を過ごします。実際に、北海道札幌市の中島公園内の凍った池で大正時代の終わりから昭和にかけて行われていた冬のお祭りで、児童文学作家の神沢利子さんが子ども時代に参加して心に深い感動を覚え、『いないいないばあや』にも書いているとのこと。そのお祭りをテーマに作られたカラフルで楽しい絵本です。新型コロナウイルス感染拡大の第3波が襲う中だからこそ、子どもたちにはこのような心が楽しくなるようなお話を届けたいと思います。

 

 

 

 

『こたつ』麻生知子/作 福音館書店 2020/11/15(出版社サイト→こちら

 

部屋の真ん中に置かれたこたつを上から俯瞰する形で、大みそかから元日までの家族の様子を描く絵本です。おばあちゃんと両親、そして孫のこうたくん、そして猫一匹の心温まる一家の団らんの様子をのぞき見しているうちに、こちらまで懐かしい気持ちにさせられます。飲み物の描き方だけが横向き(倒れているように見える)なのですが、飲み物が何であるか伝えるための苦肉の策だったのでしょうか。そこだけが立体的に見えず少し残念でした。

 

 

 

 

『おともだちになってくれる?』サム・マクブラットニィ/文 アニタ・ジェラーム/絵 小川仁央/訳 評論社 2020/12/5(出版社サイト→現在アクセスできなくなっています)

 

長く読み継がれている『どんなにきみがすきだかあててごらん』(絵本ナビサイト→こちら)の続編です。前作が出版されたのが1995年なので25年ぶりの続編です。
ちゃいろいちびのノウサギは、ひとりで遊びに出かけて、ヒースの茂みの中で白いウサギに出会います。二匹はとても楽しい時間を過ごします。ともだちっていいなと思える絵本です。

 

 

 

 

 

『みえないこいぬ ぽっち』ワンダ・ガアグ/作 こみやゆう/訳 好学社 2020/12/21(出版社サイト→こちら

 

1994年に村中李衣さんの訳でブックグローブ社から出版されたなんにもないないの改訳再版です。原作は1941年刊の『NOTHING AT ALL』です。古い農家の片隅に子犬の兄弟が住んでいたのですが、一匹は姿が「これっぽっちもみえない」、なので「ぽっち」という名前だったのです。二匹の兄弟は農場にやってきた子どもたちにもらわれていくのですが、ぽっちは見えないので置いてけぼりです。ぽっちは兄弟を探す中で物知りのコクマルカラスと知り合い、姿が見えるようになる魔法の呪文を教えてもらいます。その呪文は「ああ、いそがしや ああ、くらくらする」。それを日の出とともにぐるぐる回りながら九日間唱えるようにというのです。果たしてぽっちは見えるようになるのでしょうか。『なんにもないない』では「てんてこまいまい ぐるぐるまい」という呪文でした。図書館には旧訳の絵本もあると思います。ぜひ読み比べてみてください。

 

 

 

『ヨーロッパの古城 輪切り図鑑クロスセクション』スティーブン・ビースティー/画 リチャード・プラット/文 赤尾秀子/訳 あすなろ書房 2020/12/30 (出版社サイト→こちら

 

重機もない時代にヨーロッパの古城が、どのように造られたのか、断面図にして詳しく説明しているノンフィクション絵本です。当時の封建社会がどのように形作られていったのか、領主がどのように権力を集中していったのか、歴史的な背景も知ることができます。中世を舞台にしたファンタジーなどを読む時にも、このような城の構造を知っているとイメージも膨らんで、何倍も物語の世界を楽しめると思います。

 

 

 

 

 

【児童書】

『アイルランドの妖精のおはなし クリスマスの小屋』ルース・ソーヤー/再話 上條由美子/訳 岸野衣里子/画 福音館書店 2020/10/15 (出版社サイト→こちら

 

アイルランドの妖精伝説です。赤ん坊の時に捨てられ、子だくさんの夫婦に育てられたオーナは、村一番の美しい娘に育ちます。しかし捨て子であったためにオーナは家庭を持つことも出来ず、あちこちの家で奉公をして暮らしていました。その地方を凶作が襲った時、年老いたオーナは行く当てもないまま暇を出されます。オーナは村はずれの沼地の脇のブラックゾーン(すももの仲間)の茂みに隠れます。雪の降り積もるクリスマスイブ、オーナの周りには数えきれないほどの妖精が現れ、夢描いていた暖かい家を建ててくれるのです。心優しいオーナはその家に、貧しい者、飢えている者を温かく迎えるのでした。アイルランドに留学経験のある岸野衣里子さんのイラストも幻想的でイマジネーションをかきたてられます。

 

 

 

 

『コヨーテのはなし アメリカ先住民のむかしばなし』リー・ベック/作 ヴァージニア・リー・バートン/絵 安藤紀子/訳  徳間書店 2020/10/31 (出版社サイト→こちら

 

2012年に同じ翻訳者によって長崎書店から出版されていた本が、別の出版社から再版されました。長崎書店版は横書きでしたが、徳間書店版では縦書きになり、それに合わせて絵がページによっては、左右逆に配置されています。また長崎書店版は原作のうち10話のみが収録されていましたが、こちらには17話が収録された全訳となっています。アメリカ先住民にとって身近な動物であったコヨーテは、いたずら好きで悪さをするものの、人間のために火を取ってきてくれたり、太陽や月、星をつくってくれる存在として描かれています。

 

 

 

 

『はねるのだいすき』神沢利子/文 長新太/絵 絵本塾出版 2020/11 (出版社サイト→こちら

 

1970年に偕成社から出版されていた作品が、再版されました。はねて遊ぶのが大好きなうさぎの子ピコ。野原では「とんぼがえりはきつねの発明だ」といううそぶくきつねをやりこめます。その次に出会ったのはまるで変なおじさんでした。ピコはこのおじさんに自分が何者であるかを必死で伝えます。文中にこのおじさんがたばこを吸ってドーナッツのような輪を作るシーンが出てきます。現在では喫煙シーンを子どもの本で描くことが少なくなりましたが、お話のオリジナリティを損なわないためにもそのままにしたとの注釈もついています。元気なピコのかわいらしさや、長新太さんの勢いのある絵が、そうした部分も十分に補っています。文字を読み始めた子向けの幼年童話です。

 

 

 

 

『かるいお姫さま』ジョージ・マクドナルド/作 モーリス・センダック/絵 脇明子/訳 岩波書店 2020/11/10 (出版社サイト→こちら

 

19世紀のイギリスの文学者ジョージ・マクドナルドの作品にモーリス・センダックが絵を描いた作品が2点、岩波書店から同時発売されました。どちらもセンダックの繊細な挿絵と、表紙には金箔をはった豪華な装丁で(表紙カバーで隠れてしまいますが)出版されました。
こちらの作品は、洗礼式に招かれなかった魔女の呪いで、重力がなくなってしまったお姫様の物語です。すてきな王子様に出会って愛を知ることで重さが戻ってくるのですが、それにしても不思議でロマンティックなおとぎ話です。

 

 

 

 

 

『金の鍵』ジョージ・マクドナルド/作 モーリス・センダック/絵 脇明子/訳 岩波書店 2020/11/10 (出版社サイト→こちら

 

大伯母さんに、もし虹のはしっこにたどり着くことが出来たら、そこに金の鍵がみつかると聞いた男の子モシーは、ある夏の夕方、キラキラと輝く虹のはしっこを森の中にみつけて走り込みます。するとそこは妖精の国でした。モシーは、金の鍵を手に入れましたが、鍵があっても、その鍵で開く錠前がなければ役に立たないことを知り、それを探す旅に出ます。旅の途中でタングルという女の子と出会い一緒に冒険を続けます。二人は影の世界で離ればなれになるのですが、幾多の困難を潜り抜けて、二人は再会できるのです。空飛ぶ魚、海の老人、洞窟とファンタジーの異世界に導かれる作品です。

 

 

 

 

『彼方の光』シェリー・ピアソル/作 斎藤倫子/訳 偕成社 2020/12 (出版社サイト→こちら

 

黒人奴隷の少年サミュエルは、ある夜年老いたハリソンからカナダへの逃亡を告げられます。迫りくる追っ手をかわしながら、身を潜め、川を渡り、北へと向かう二人。その時々に助け手が現れ、最終的にはカナダへと辿り着きます。舞台は逃亡奴隷を手助けしたり匿った者すべてに厳罰を与えるという1850年の逃亡奴隷法が成立した後の1858年のケンタッキー州です。自由州であるオハイオ州との境にある川を越えて、多くの奴隷が北へ北へと逃亡していきました。1861年に南北戦争が始まる、その少し前の物語です。途中で、なぜハリソンが高齢で足にけがをしながらもサミュエルを逃亡へ誘ったのか、その理由がわかります。彼方遠くに見える希望の光を目指して逃げる黒人たちの姿に、現在のアメリカ合衆国の政治の混迷も透けて見えるような気がします。後ほど紹介するちくま新書『アメリカ黒人史―奴隷制からBLMまで』(ジェームス・M・バーダマン/著  森本豊富/訳)に歴史的な背景や、実際に逃亡を手助けした人たちのことも書かれています。合わせて読むと、作品世界を深く理解することができるでしょう。

 

 

 

 

『名探偵カッレ 危険な夏の島』アストリッド・リンドグレーン/作 菱木晃子/訳 平澤朋子/絵 岩波書店 2020/12/17 (出版社サイト→こちら

 

名探偵カッレシリーズの中でも、一番手に汗握るというか、カッレたち白ばら軍に危険が迫りくる作品で、『名探偵カッレとスパイ団』(尾崎義/訳 岩波書店 1960)という題名で出版されていたものの新訳です。
ある夏の夜、赤バラ軍と城跡で合戦をした帰り道、カッレ、アンデッシュ、エヴァロッタは誘拐事件を目撃します。見過ごせないと犯人の車に乗り込んだエヴァロッタを追ってカッレたちの追跡が始まります。隠れ家の無人島で繰り広げられる攻防戦は、ハラハラドキドキの連続で最後まで息を抜くことができません。原作は1953年ですから70年近く前の作品です。それでもカッレたちの推理力と行動力は現代の子どもたちにも魅力的に映ることと思います。ただし今だったらGPSで追跡したり、スマホで証拠撮影したり、まったく違う展開になるとは思いますが、だからこそアナログな時代の子どもたちの逞しさがまぶしく感じるのかもしれません。

 

 

 

 

 

『オン・ザ・カム・アップ』アンジー・トーマス/作 服部理佳/訳 岩崎書店 2020/12/31 (出版社サイト→こちら

 

2020年は、大統領選挙もあってアメリカでBLM(Black Lives Matter)運動が盛り上がった年でした。なぜ、黒人が差別を受けるのか、歴史を遡ってみる必要があります。そして近年BLMをテーマにした児童・YA向けの作品が多く出ているということも、私たちにその問題について学ぶ機会を与えてくれています。若い世代が熱狂するヒップホップもラップも、もともとはアフリカ系アメリカ人、つまりは遡れば400年も前にアフリカから奴隷として連れてこられた人々が、苦難の歴史の中から生み出し創りあげてきた文化なのだということを認識しておく必要があるでしょう。
この作品は、有名なラッパーだった父親譲りの才能を持つ高校生プリアンナが、人種差別による偏見や貧困と闘いながら、自分らしさをみつけていく物語です。「黒人だけちがうルールで戦わなくちゃいけないことはよくあるのよ。」と母親ジェイは半分諦め気分で目立たないことを娘に諭します。しかしプリや友人たちは、黒人というだけで白人であれば見逃されるような軽い失敗も許されない理不尽な学校のやり方に抗議していきます。タイトルになった”on the come up”は、プリがラップに乗せて歌った歌詞で、「這い上がれ」という意味。デビュー作『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』(出版社サイト→こちら)でデビューした作家の第2作目です。

 

 

 

 

【その他】

『アメリカ黒人史―奴隷制からBLMまで』ジェームス・M・バーダマン/著 森本豊富/訳 ちくま新書 筑摩書房 2020/12/10(出版社サイト→こちら

 

現代のアメリカで巻き起こっているBLM運動について理解するために必要な知識がぎゅっとまとめられています。奴隷制度がどのように始まったのか、アメリカ大陸へどのようにしてアフリカから奴隷にされたたちが連れてこられたのか(アフリカ西海岸で拉致されされた黒人は、奴隷として港に集められ「出荷」まで「奴隷の家」と呼ばれる収容所に入れられ「出荷」を何カ月も待たされることも)、奴隷の生活はどうだったのか、南北戦争から公民権運動、そしてオバマ政権誕生、そしてジョージ・フロイド事件からBLM運動までを順を追ってわかりやすくまとめられています。今回、紹介している『彼方の光』や『オン・ザ・カム・アップ』だけでなく、12月に紹介した『オール・アメリカン・ボーイズ』(「本のこまど」記事→こちら)など、児童向けの作品を理解するためにもぜひ一度読んでおいてほしいとおもいます。またアフリカ系アメリカ人が作ってきた音楽について書かれた絵本『リズムがみえる』(ミシェル・ウッド/絵 トヨミ・アイガス/文 金原瑞人/訳 ピーター・バラカン/監修 サウザンブックス社 2018/9/25)(「本のこまど」記事→こちら)の背景でもあります。一方でこのような作品に出会いながら、自分の国に現にある在日外国人への差別などについても広く考える契機になればと思います。

 

 

(作成K・J)

2020年11月、12月の新刊から(その1)


11月、12月に出版された絵本を紹介いたします。一部、見落としていた11月以前に発行された新刊も含まれます。また読み物に関しては、年末年始のお休みに読んで年明けに紹介できればと思います。

今回は表参道クレヨンハウスで購入したもの、横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、出版社を通して著者、翻訳者から献本していただいたものを、読んで記事にしています。

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】

『ポラーノの広場』宮沢賢治/作 みやこしあきこ/絵 三起商行 2020/10/24(出版社サイト→こちら

宮澤賢治がイーハトーブを舞台に描く童話が絵本になりました。体裁は絵本ですが、88ページの大作です。
みやこしあきこさんが描く絵が、賢治の幻想的なイーハトーブの世界観を見事に表現しています。

「つめくさの花の かおる夜は
 ポランの広場の 夏まつり」

モリーオ市の博物局で働くキューストと、農夫の子ファゼーロが出会って、昔話に語られる野原の真ん中にあるポラーノの広場を探し求めていきます。ミキハウスの宮沢賢治の絵本シリーズの33巻めの絵本です。

 

 

 

 

『おやこでよもう/金子みすゞ もしもわたしがおはななら』金子みすゞ/詩 松本春野/絵 JULA出版局 2020/11(出版社サイト→こちら

おやこでよもう/金子みすゞ」シリーズの最新刊(5冊目)です。
「おはなし会プラン(2021年2月その1)」(→こちら)で紹介した「はねぶとん」以外に、「つもったゆき」、「いしころ」、「おはなだったら」、「おおきなもじ」、「ほしとたんぽぽ」など全部で9編の詩が紹介されています。
ナビゲーターは、歌舞伎役者の中村勘九郎さん。コロナ禍だからこそ「ほしとたんぽぽ」にうたわれている見えないもののつながりや大切さについて語っていらっしゃいます。優しい表情の子どもたちを描くのはいわさきちひろさんの孫の松本春野さんです。

 

 

 

 

『あの湖のあの家におきたこと』トーマス・ハーディング/文 ブリッタ・テッケントラップ/絵 落合恵子/訳 クレヨンハウス 2020/11/1(出版社サイト→こちら

 

クレヨンハウス創業45周年を記念して落合恵子さんが翻訳し出版された絵本の1冊です。
作者の曽祖父が4人の子どもたちと自然の中で暮らすために湖の畔に建てた家が約90年近い歴史を経てどう変わってきたかを描き出しています。曽祖父一家はユダヤ人だったためナチスが権力を握るとイギリスへ亡命します。その後、まずは音楽好きな一家が移り住み、彼らがオーストリアに逃げると、その知人の夫婦がその家に隠れ住みます。戦後、他の家族が移り住みますが、その後湖と家との間に大きな壁が築かれてしまいます。いわゆるベルリンの壁でした。その後、空き家になっていたのですが、作者の手によってレクリエーションセンター(Alexander House)に生まれ変わりました。一軒の家の歴史から戦争に翻弄される人々の暮らしが伝わってきました。

 

 

 

 

『こうさぎたちのクリスマス』エイドリアン・アダムズ/作・絵 三原泉/訳 徳間書店 2020/11/30 (出版社サイト→こちら

 

クリスマス前に紹介できればよかったのですが、遅れてしまいました。ツリーハウスに住むうさぎの少年オーソンは、村のこうさぎたちに「おとなにはないしょ」でクリスマスパーティーの準備を頼まれます。オーソンの家の庭でこうさぎたちがクリスマスの準備をする様子がとても美しく描かれています。
小さなこうさぎたちに頼りにされるオーソンが、最初は面倒臭がりながらも最後はサンタになりきって大活躍します。『みならいうさぎのイースターエッグ』(→こちら)の姉妹本です。なお、この絵本は1979年に佑学社より乾侑美子訳で出版されていました。(→こちら

 

 

 

 

『悲しみのゴリラ』ジャッキー・アズーア・クレイマー/文 シンディ・ダービー/絵 落合恵子/訳 クレヨンハウス 2020/12/1(出版社サイト→こちら

こちらもクレヨンハウス45周年を記念して出版されました。ママを亡くした男の子のそばにゴリラが現れて、男の子の悲しみにそっと寄り添ってくれます。
「どうしてママはしんだの?」
「いのちあるものはかならずしぬんだ。あいするものをおいていくのはかなしいけれど。」
「いつになったら、かなしくなくなるの?」
「ママがずっといっしょにいるとわかったときだよ。」
男の子がパパとその悲しみを分かち合えた時、ゴリラはそっと消えていきます。大切な人を喪うという深い悲しみに寄り添い、それをゴリラのような大きな腕で丸ごと受け止めてくれる、そんな絵本です。
2020年、新型コロナウイルス感染症で多くの人が亡くなりました。ニュースで伝えられる人数は、その数の一人一人に大切な家族がいて、かけがえのない人生があったことまで想像しないと、自分事として受け止められません。

今年は、感染予防のために、新型コロナウイルスでない他の病気で入院している場合でも、あるいは高齢で施設で過ごしている家族にも、面会ができないという事態になって、最期の別れに立ち会えないという大きな悲しみに揺れた人も多くいたことと思います。私も母を7月に天国に見送りましたが、東京からの面会は謝絶と言われ、最期を看取ることができませんでした。

2020年の最後の投稿で、この絵本『悲しみのゴリラ』を紹介できることを、運命の巡り合わせのように感じています。

 

 

 

 

『怪物園』junaida/作 福音館書店 2020/12/5(出版社サイト→こちら

 

昨年『の』(→こちら)という絵本で話題になったjunaidaさんの新刊絵本です。
怪物たちをたくさん乗せて長い旅をしてきた怪物園が、ある夜うっかり玄関を開けっぱなしにしたために、怪物たちが街にあふれ行進するようになります。外で遊べなくなった子どもたちは、空想の世界で遊び始めるのです。
この不思議な世界観はぜひ手に取って味わってみてほしいと思います。

 

 

 

 

(作成K・J)

2020年10月、11月の新刊から(修正アリ)


10月、11月に出版された絵本、児童書、および参考資料を紹介いたします。(一部、見落としていた10月以前に発行された新刊も含まれます。)

今回は表参道クレヨンハウスで購入したもの、横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、出版社を通して著者、翻訳者から献本していただいたものを、読んで記事にしています。なお、一部9月以前に出版された本もあります。

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

 

【絵本】

『つるかめつるかめ』中脇初枝/文 あずみ虫/絵 あすなろ書房 2020/8/15 (出版社サイト→こちら

自分の力ではどうしようもないことが起こった時、昔の人達はおまじないの言葉を唱えて、それを乗り越えてきたそうです。
今年1月以降、世界を襲った新型コロナウイルスによるパンデミックは、子どもたちには一体それが何なのかさえ理解できず、大人の不安がそのまま投影され、より不安を感じていることでしょう。
「くわばらくわばら」「まじゃらくまじゃらく」「とーしーとーしー」「ちちんぷいぷいちちんぷい」。そんな言葉を声に出してみると気持ちがすっと楽になりそうですね。最後のページの「なにがあっても」「だいじょうぶ だいじょうぶ」の言葉がどれほど安心を与えてくれることでしょう。親子で読んでほしいですね。

 

 

 

『アルフィー』ティラ・ヒーダー/作 石津ちひろ/訳 絵本塾出版 2020/9(出版社サイト→こちら

ニアは6歳の誕生日に同い年だというカメのアルフィーを買うことにしました。ニアにとって、カメでもアルフィーは友達です。たくさん話しかけますが、アルフィーの反応は薄いまま。さて、7歳の誕生日を前にアルフィーが行方不明になってしまいます。さて、アルフィーはどこへ行ってしまったのでしょう?絵本の後半はアルフィーの視点から描かれます。そして驚きの結末を知って、胸が熱くなります。この絵本は作者ティラ・ヒーダーの体験をヒントにしているそうです。

 

 

 

 

 

 

『まどのむこうのくだものなあに?』荒井真紀/作 福音館書店 2020/10/10(出版社サイト→こちら

ため息が出るほど美しい絵本です。ほんとうにこれが子ども向けなのかと思うほどのクオリティです。題材はくだもの。最初のページは黒一面に四角い窓が切り抜いてあり、次のページに描かれている果物の一部が見えています。子どもたちは、その窓から見える情報をもとに果物の名前を当てる文字のない絵本です。写真ではなく絵であることにも驚きですが、果物の反対のページには果物を半分に切った断面が描かれており、それも窓を通して見ることが出来ます。自然の造形の美しさ、センス・オブ・ワンダーをこのような形で子どもたちに示すことのできる絵本は稀有といってもいいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

『おばけのジョージ― メリーメリークリスマス!』ロバート・ブライト/作 こみやゆう/訳 好学社 2020/10/19(出版社サイト→こちら

おばけのジョージ―シリーズの最新刊です。クリスマスに向けて、もみの木に飾りつけをして、美味しい食事を用意し、家族や友達とにぎやかに過ごすためにわくわくしながら準備をしているのに、たったひとり丘の大きなお屋敷に住むグロームズさんだけは変わり者で、クリスマスなんて大嫌いでした。ところがその年は、姪と甥のサラとトニーを預かることになってしまったのです。サンタなんてとんでもないというグロームズさんでしたが、サラとトニーはおじさんのためにもサンタさんに宛てた手紙を書くのです。今回もおばけのジョージ―と仲間たちが大活躍。グロームズさんも最後には笑顔になるのですが、どんなことがあったのかは読んでのお楽しみに!

 

 

 

『ピーターラビットのクリスマス 25の物語のアドベント』レイチェル・ボーデン/文 長友恵子/訳 文化出版局 2020/10/25(出版社サイト→こちら

ピーター・ラビットのお話を愛読してきたレイチェル・ボーデンが、そのお話からインスパイアされて新しく描き下ろしたクリスマスアドベントの物語です。12月1日から25日まで毎日1章ずつ読み進めていくことが出来るのです。ひとつひとつのお話の終わりには、クリスマスにちなんだ遊びやレシピが紹介されています。ビアトリクス・ポターが描いたピーター・ラビットのシリーズに出てくる仲間たちも登場するおはなしは、どれも心温まるものばかりです。

 

 

 

 

 

 

『まほうつかいウーのふしぎなえ』エド・エンバリー/作 小宮由/訳 文溪堂 2020/10(出版社サイト→こちら

モノクロの絵の中に作り出される影、色、光。錯覚をテーマにした絵本です。コマ割りで描かれたカエルに姿を変えられた王子と魔法使いウーの会話の部分と、見開きで現れる錯覚を起こさせるモノクロの模様画が交互に出てきながら、おはなしが進んでいきます。
不思議で、面白いアート絵本です。

 

 

 

 

 

『なぞなぞのにわ』石津ちひろ/なぞなぞ 中上あゆみ/絵 偕成社 2020/10(出版社サイト→こちら

春夏秋冬、四季折々の庭の中に描かれる花や虫、小動物・・・眺めているだけでも心豊かになります。絵の中に隠れているものを、なぞなぞで問いかける絵本です。なぞなぞはちょっと難しいかな。それでも、最後に答えが出ていて「あ~そうか!」と思って、もう一度絵をよく見て、何度でも探して遊べます。読み聞かせというよりは、親子で絵を探して遊ぶ、そんな絵本です。

 

 

 

 

 

 

『ふゆごもりのまえに』ジャン・ブレット/作 こうのすゆきこ/訳 福音館書店 2020/11/5(出版社サイト→こちら

はりねずみのハリーは、冬ごもりの前に農場の中を一回り散歩をすることにします。ところが農場の動物たちに出会うたびに、ハリーが冬ごもりした後の冬の景色の美しさを次々に聞かされます。ハリーは、この冬は起きていてそれを目撃したいと巣穴に入らずにいたのですが、夜になって凍え死にそうになってしまいます。それを助けてくれたのは農場の女の子リサ。リサはハリーが冬景色を楽しめるように、ハリーを温かいティーポットカバーに入れて窓辺に居場所を作ってくれました。ハリーは生まれて初めて雪を、つららを、氷のはった池をみることが出来たのでした。ペットとして今はりねずみが人気だそうですね。そんな愛らしいハリネズミの寝姿も見られる絵本です。

 

 

 

『ねこはすっぽり』石津ちひろ/文 松田奈那子/絵 こぐま社 2020/11/5(出版社サイト→こちら

愛らしい猫のいろいろな格好を楽しいオノマトペで表現した絵本です。「ごろりーん ごろりーん ねこはすきなばしょで ごろりーん」「のびーん のびーん ねこはどこまでも のびーん」「ぴょーん ぴょーん ねこははこのなかへ ぴょーん」。帯に書かれた作者のことばには「猫たちは気の向くままに、遊び、食べ、よく眠る。時にはニンゲンが頭を抱えるくらいのいたずらをする。軽やかに跳んで、走り回り、思い切り体をねじったり、気持ちよさそうにのびをする。(中略)この絵本の猫のように、世界中の子どもたちがのびのびと安心して過ごせる日常が早く戻ってきますように。」とあります。そんな温かい思いを感じられる絵本です。

 

 

 

『サンタさんのおとしもの』三浦太郎/作 あすなろ書房 2020/11/20(出版社サイト→こちら

クリスマスイブにおつかいにでかけた女の子は、大きな赤いてぶくろを拾います。これはサンタさんの落とし物に違いないと思った女の子はサンタさんを探すことにします。町でいちばん高い教会の塔に登って見渡すと、今まさにサンタさんがえんとつに入っていこうとしているところでした。しかもそこは女の子のおうち。女の子は大急ぎで家に走って帰ります。女の子は無事にサンタさんに落とし物を渡せるでしょうか?黒い背景に赤や緑、白の色が鮮やかな楽しい絵本です。

 

 

 

 

 

『赤ずきん RED RIDING HOOD』ビアトリクス・ポター/再話 ヘレン・オクセンバリー/絵 角野栄子/訳 文化出版局 2020/11/22(出版社サイト→こちら

ピーター・ラビットのシリーズを書いたビアトリクス・ポターが再話した『赤ずきん』です。それに絵本作家へレン・オクセンバリーが絵をつけたものを角野栄子さんが翻訳されました。
シャルル・ペロー再話の昔話に近いストーリーですが、ヘレン・オクセンバリーはその文章を手にしたときに野の花の咲く牧草地や、白樺林などの広がるイギリスの田舎の風景を思い出したそうです。見返しページには赤ずきんの家からおばあちゃんの家までの地図が描かれていて、たしかにピーター・ラビットも出てきそうな雰囲気です。結末は「そして、それが赤ずきんのさいごでした。」で終わっていますが、ヘレン・オクセンバリーの絵がその先の物語を想像させてくれて救いを感じました。

 

 

 

『ネコとなかよくなろうよ』トミー・デ・パオラ/作 福本友美子/訳 光村教育図書 2020/11/30(出版社サイト→こちら

今年3月に亡くなったトミー・デ・パオラさんの1979年の作品です。日本では1990年にほるぷ出版から『きみとぼくのネコのほん』(森下美根子/訳)として出版されていました。ネコがどのようにして人間の生活の中にペットとして飼われるようになったのか、どのような種類がいて、どんな特徴があるか、飼う時はどんなことに気をつければいいのかを、ネコを保護しているキララおばさんと、ネコをもらいにきたパトリックの会話形式で知ることができます。なお新版では、ネコをもらったら最後まで飼うというのが今はルールとして浸透しているため、主人公がたくさんネコをもらってきたのに両親から1匹だけと言われておばさんに返しに行く結末の部分がカットされたとのことです。10月29日に紹介した『クリスマスツリーをかざろうよ!』(→こちら)と同じ判型、形式の絵本です。

 

 

 

 

『大統領を動かした女性 ルース・ギンズバーグ 男女差別とたたかう最高裁判事』ジョナ・ウィンター/著 ステイシー・イナースト/絵 渋谷弘子/訳 汐文社 2020/11第2刷 (初版は2018年3月)(出版社サイト→こちら

今年9月18日に亡くなったギンズバーグ最高裁判事のニュースは、アメリカ大統領選挙のニュースとともに耳にした人も多いことでしょう。(BUSINESS INSIDER記事→こちら)その後、トランプ大統領は即座に自分に有利になるよう保守派の最高裁判事を任命し話題になりましたね。それに合わせてこの度増刷されました。
R.G.Bと呼ばれて若い人からも人気の高かったギンズバーグは貧しい家庭に生まれたものの努力を惜しまず学び続け、弁護士になってからも男女差別と闘い、大統領の心を動かすアメリカの正義と平等を象徴する女性となっていく姿を描いた伝記絵本です。この翻訳絵本が2018年3月に出版された時はまだ存命だったギンズバーグさん。あとがきに「84歳となったR.G.Bは衰える気配などまったく見せていない」と記されていて、心に迫ります。

 

 

 

 

【読み物】

『ハジメテヒラク』こまつあやこ/作 講談社 2020/8/25(出版社サイト→こちら

 

講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー作『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』が2019年度中学入試最多出題作になったこまつあやこの待望の2作目です。
遅くなりましたが、YA世代、とくに中学生に読んでほしくて紹介します。
主人公のあみは、小学生の時に友達に仲間外れにされるのですが、そんな時従姉から教えてもらった脳内実況でやり過ごしてきたのでした。そんなあみが、中学受験をして入学した中高一貫校で、ひょんなことから生け花部に入ることになりました。個性豊かな部活の仲間たちの中で様々なことに気づきながら成長していくあみの姿を爽やかに描いた作品です。

 

 

 

 

『雪山のエンジェル』ローセン・セントジョン/作 さくまゆみこ/訳 評論社 2020/10/25(翻訳者さくまゆみこさんのブログ→こちら

本を読むのが大好きなケニアの12歳の少女マケナは、山岳ガイドの父親と学校教師の母親の愛情を受けて幸せに暮らしていました。ところが両親は親族の看病に出かけたシエラレオネでエボラ出血熱にかかって突然亡くなってしまいます。引き取られた家では、死因がエボラ出血熱だと知られるとおばさんにまるでマケナがウイルスをまき散らしている恐ろしい存在かのように扱われ、追い出されてしまいます。スラム街をうろつく中で出会ったスノウと呼ばれる少女は、アルビノでやはり虐殺の危機から逃れてスラム街に流れついたのでした。マケナはスノウからどんな困難な中でも希望をもって生き抜くことを教えられます。しかしスラム街が強制的に破壊された夜、ふたりは離れ離れになってしまいます。その後、アフリカで孤児の保護活動をしているスコットランド人のヘレンと出会うのです。過酷な運命の中で生き抜き、自分の居場所を見つけていくマケナの物語を読みながら、今、この瞬間にも新型コロナウイルスの影響で差別を受けたり、困難な状況下に置かれている子どもたちが世界には多くいることを想像しています。もうすぐクリスマス、そんな子どもたちにもマケナのように暖かいクリスマスが訪れるようにと願うばかりです。

 

 

 

 

『オール・アメリカン・ボーイズ』ジェイソン・レノルズ、ブレンダン・カイリー/著 中野怜奈/訳 偕成社 2020/12(出版社サイト→こちら

今年は、アメリカにおいて黒人に対する差別問題が浮き彫りにされ、「BLM (Black Lives Matter)」が大きく取り上げられました。テニスの全米オープン選手権では女子で優勝した大坂なおみ選手が、無実の罪で暴行死した黒人の名前が書かれたマスクをして毎回登場したことでも話題になりました。
この作品は、2013年に17歳の黒人少年を射殺した白人の自警団員に無罪判決が出て、翌年にまた18歳の黒人少年が無防備なまま警官に射殺された事件に胸を痛めた黒人作家ジェイソン・レイノルズと白人作家ブレンダン・カイリーの二人が書きあげました。出版された2015年にはニューヨークタイムズ紙のベストセラーとなり、さまざまな賞を受賞しました。
この小説は、パーティーに出かけるために立ち寄った店で、白人女性に不注意でぶつかられ警官に万引き犯だと誤認逮捕された黒人少年のラシャドと、その現場を目撃した白人少年クインのそれぞれの立場から、事件が起きた金曜日から翌週木曜日までの1週間の様子が交互に書かれます。2人の作家がそれぞれの体験に基づいて書くからこそ、この物語が現実味を帯びて読むものに迫ってきます。訳者あとがきに「もともと先住民が暮らしていた土地に他の国々からやってきたり、連れてこられた人たちが築いた国に、外見的なアメリカ人らしさなど本来あるわけがなく、なにをもってアメリカ人としての内面の価値とするかを、だれかが決められるはずもありません。しかし社会の中に依然としてある、そのステレオタイプなイメージのために、黒人のラシャドも白人のクインも苦しんでいるように見えます。それは「アメリカ人らしい」という大ざっぱな表現が、現実の多様さを無視したものだからでしょう。」と書かれています。そのギャップに真正面から取り組んだこの作品を、多くの人に読んでほしいと願います。

 

 

 

 

【ノンフィクション】

『自由への手紙』オードリー・タン/語り クーリエ・ジャポン編集チーム/編 講談社 2020/11/17(出版社サイト→こちら

台湾の最年少デジタル大臣のオードリー・タンの活躍ぶりは、新型コロナウイルス感染の拡大に歯止めをかけたことで日本でもずいぶん報道されていました。自分がトランスジェンダーであることも公表しているオードリー・タンさんにインタビューしてまとめられた本です。
「本当に自由な人」とは、「自分が変えたいと思っていることを、変えられる人。自分が起こしたいと思っている変化を起こせる人。それこそ自由な人です。」と語るタンさん。帯にも「誰かが決めた「正しさ」には、もう合わせなくていい」とあるように、ほんとうに自分らしく生きるにはどうしたらいいのか、力強いメッセージが込められています。YA世代にはぜひ手にしてほしい1冊です。

 

 

 

 

『カカ・ムラドーナカムラのおじさん』ガフワラ/原作 さだまさし/訳・文 双葉社 2020/12/6(プレスリリース→こちら

12月4日は中村哲医師の命日です。中村先生がアフガニスタンで凶弾に倒れてちょうど1年になります。1984年にアフガニスタンへ医師として赴き、アフガニスタンの山岳地帯で治療を続けるうちに、その地方の貧困問題に関心を持つようになります。2000年からは飲料水・灌漑用の井戸を掘る事業を始め、03年からは農村復興のための大掛かりな水利事業を始めていました。
亡くなった後に、中村医師の功績を後世に語り伝えようとアフガニスタンで2冊の絵本が出版されました。『カカ・ムラド~ナカムラのおじさん』と『カカ・ムラドと魔法の小箱』です。その2冊を翻訳し、解説をつけたものが日本で出版されました。翻訳は歌手のさだまさしさんです。また通販会社フェリシモの「LOVE AND PEACE PROJECT」を通じて出版のための基金が集められました。日本の子どもたちにも伝えていきたい絵本です。

 

 

 

【その他】

『世界で読み継がれる 子どもの本100』コリン・ソルター/著 金原瑞人+安納令奈/訳 原書房2020/10/31(出版社サイト→こちら

19世紀に刊行された古典的な作品から、映画化されたYA向けの作品まで、ジャンルは絵本、昔話、ファンタジーと広い分野から選ばれた100作品をフルカラーで紹介する本です。1作品につき3ページを使ってその作品の時代背景、作者の経歴、そしてその作品が持っている魅力を語り、次の世代へと受け渡していく価値があることを伝えてくれています。この作品は、児童書の研究者でもなく、マニアックな愛好家でもなく、パヴィリオンブックス社の依頼を受けたプロのライターだそうです。訳者の金原さんは、そういう人が書いたからこそ、客観的にバランスよく説明がなされていて、読み物として読みやすいと指摘しています。たしかにエッセイを読んでいるようで、昔読んだ本は再読したくなるし、未読のままだった本は読んでみようという気持ちにさせられます。この本を片手に、児童書の魅力を再発見する旅に出たくなります。

 

 

 

『世界の児童文学をめぐる旅』池田正孝/著 エクスナレッジ 2020/10/19(出版社サイト→こちら

こちらのエッセイは、中央大学名誉教授で東京子ども図書館理事の池田正孝さんが、イギリスを中心とした児童文学の舞台を、実際に旅をして書かれたものです。『ピーター・ラビットのおはなし』『ツバメ号とアマゾン号』『リンゴ畑のマーティン・ピピン』『運命の騎士』『クマのプーさん』『秘密の花園』『トムは真夜中の庭で』や「ナルニア国物語シリーズ」など、その作品数は22にも上ります。またアンデルセン童話やアストリッド・リンドグレーンの世界や『ハイジ』など、イギリス以外にも北欧やスイスなども訪れ、美しい写真と一緒に物語の舞台や背景をあますことなく紹介しています。この本を読んでいると、自分もかの地を旅したいと熱望してしまいます。せめて本の中で旅をしたいと思います。

 

 

(作成K・J)

2020年9月、10月の新刊から(その2・読み物)


9月,10月に出版された絵本、児童書のうち、先週絵本を紹介しましたので、本日は児童書、および参考資料を紹介いたします。

今回は先月久しぶりに訪れた銀座・教文館ナルニア国で新刊チェックをしました。それに加えて横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、出版社を通して著者、翻訳者から献本していただいたものを、読んで記事にしています。なお、一部9月以前に出版された本もあります。

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

 

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【児童書】
《創作》

『めいたんていサムくん』那須正幹/作 はたこうしろう/絵 童心社 2020/9/4  (出版社サイト→こちら

小学2年生のオサムくんは、みんなが困っている時に推理して解決する名人なので、「めいたんていサムくん」と呼ばれています。
ある朝はタケシくんのうわぐつが無くなっているのを、推理でなぜ無くなっているか当てました。ある時は公園で行方不明になった人形を見つけ出しました。また3年生のハルミさんにまとわりつく犬が、なぜそうするのか、推理して解決しました。サムくんの活躍は子どもたちの日常で起きるちょっとした事件です。きっとサムくんのことを身近に感じられるでしょう。小学校低学年向けの幼年童話です。

 

 

 

 

『はりねずみともぐらのふうせんりょこう アリソン・アトリーのおはなし集』アリソン・アトリー/作 上條由美子/訳 東郷なりさ/絵 福音館書店 2020/9/5  (出版社サイト→こちら

『チム・ラビットのおはなし』など動物を主人公にした素敵なおはなしをたくさん残したイギリスの児童文学者アリソン・アトリー(1884~1976)の、おはなし集です。「小さな人形の家」、表題にもなっている「はりねずみともぐらのふうせんりょこう」、そして「のねずみとうさぎと小さな白いめんどり」の3つのおはなしが収められています。どれも夢があって、心がわくわくしてくるおはなしです。読んであげるなら小さな子どもたちでも楽しむことができる幼年童話です。

 

 

 

 

 

 

『かじ屋と妖精たち イギリスの昔話』脇明子/編訳 岩波少年文庫 岩波書店 2020/9/15 (出版社サイト→こちら

素話(ストーリーテリング)でよく語られるイギリスの昔話が、脇明子さんの訳で、新しく編まれました。全部で31のおはなしが、゛ゆかいで短いお話”、゛ちょっとハラハラするお話”、゛知恵が役に立つお話”、゛こわくてドキドキするお話”、゛ふしぎなことに出会うお話”、゛妖精たちの出てくるお話”、゛女の子が幸せをつかむお話”、゛大冒険のお話”、゛すてきな幸運にめぐりあうお話”の8つのカテゴリーに分けられていて、おはなし選びにも役立ちます。「ものぐさジャック」や「トム・ティット・トット」、「三びきの子ブタのお話」、「ジャックと豆の木」、「ノロウェイの黒い雄牛」などよく知られているお話もたくさん。読んでもらうのもよし、自分で読むのもよし、そして自分でおはなしを語れればもっとよし。いろいろな楽しみ方ができる1冊です。

 

 

 

『おとうさんのかお』岩瀬成子/作 いざわ直子/絵 佼成出版社 2020/9/30  (出版社サイト→こちら

利里は3年生が終わった春休み、単身赴任中のお父さんのところで過ごすことにしました。きっかけはお兄ちゃんとけんかをして、顔も見たくなかったからです。お父さんならわかってくれると思ったのに、お父さんともなかなか気持ちが通じ合いません。そんな時、公園で出会った女の子、雪ちゃんは、拾った石に顔の絵を描いて遊んでいました。雪ちゃんとの出会いを通して、利里とお父さんの気持ちも近づいていきます。
だんだん人間関係に悩みはじめる小学校中学年向けのお話です。

 

 

 

 

 

『宇宙の神秘 時を超える宇宙船』ホーキング博士のスペース・アドベンチャーⅡ‐3 ルーシー・ホーキング/作 さくまゆみこ/訳 佐藤勝彦/監修 岩崎書店 2020/9/30 (出版社サイト→こちら

ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患いながらも、宇宙物理学を研究し続けたスティーヴン・ホーキング博士が、娘のルーシー・ホーキングさんとともに著したスペース・アドベンチャーシリーズの完結編です。ホーキング博士は2018年3月に亡くなられましたが、存命中にほぼ書き終えていたそうです。前号で、主人公のジョージは、AIロボットのボルツマンとふたりだけで宇宙船アルテミス号で宇宙へ飛び出します。しかし、超高速の宇宙船は簡単には行き先を変更できません。アインシュタインの相対性理論を物語で体験できる壮大な冒険物語です。シリーズですが、単独で読んでも、思わず惹きこまれていきます。後半には「タイムトラベルと、移動する時計の不思議」や「感染症、パンデミック、地球の健康」、「人工知能(AI)」など10のテーマでの科学エッセイも収められており、そこも読みごたえがあります。

 

 

 

 

『おじいちゃんとの最後の旅』ウルフ・スタルク/作 キティ・クローザー/絵 菱木晃子/訳 徳間書店 2020/9/30 (出版社サイト→こちら

おじいちゃんは口が悪くて乱暴で、入院先でも看護婦さんに呆れられ、パパもお見舞いに行きたがりません。でもぼくはそんなおじいちゃんが大好きです。そのおじいちゃんが、おばあちゃんと一緒に住んでいた家に死ぬ前にもう一度行きたいと願っているのを知って、病院を抜け出す計画を立てます。その計画は、パン屋のアダムも巻き込んで完璧ですが、「うそをつく」ことに少しだけ胸が痛みます。それでもおじいちゃんが、思い出の家で一晩過ごせたことは、良かったと思うのでした。死が近いおじいちゃんと孫の、心温まる、ちょっぴり切ない物語です。『おじいちゃんの口笛』などの作品があるスタルクは2017年に亡くなりました。これが最後の作品となりました。

 

 

 

 

『イワンの馬鹿』レフ・トルストイ/作 ハンス・フィッシャー/絵 小宮由/訳 アノニマ・スタジオ 2020/10/2 (出版社サイト→こちら

レフ・トルストイは『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』などの大作があるロシアを代表する文豪です。その彼は50 代半ばで「無学で、貧しい、素朴な、額に汗して働く人たちの信仰の中に、真実がある」と悟り、「これからは、民衆とともに生き、人生のために有益な、しかも一般の民衆に理解されるものを、民衆自身の言葉で、民衆自身の表現で、単純に、簡素に、わかりやすく書こう」としたのが『イワンの馬鹿』です。人間の幸せとは何なのか、本質的な問いを投げかけてくれる寓話です。
注目すべきなのは、翻訳者小宮由さんです。由さんの祖父、北御門二郎氏は、17歳の時にトルストイの作品、特に『人は何で生きるか』、『イワンの馬鹿』に出会って、トルストイの説く絶対非暴力の思想に目覚め、それまで受けてきた忠君愛国の学校教育がいかに間違っているかということに気づき、良心的兵役拒否をしました。北御門氏はトルストイの翻訳に力を注ぎ、『イワンの馬鹿』も翻訳しました。孫である由さんが、なぜ『イワンの馬鹿』を翻訳することになったのかを書いているあとがきがまた読み応えがあります。 なお、挿絵はハンス・フィッシャーで、繊細でとても素敵です。

 

 

 

『ミスエデュケーション』エミリー・M・ダンフォース/著 有澤真庭/訳 サウザンブックス社 2020/11/6 (出版社サイト→こちら

アメリカで2012年に出版されたYA小説で、アメリカ図書館協会が優れたYA小説のデビュー作品に贈るウィリアム・C・モリス・デビューアワードの最終候補に残るなど高い評価を受けました。
12歳の夏休みに、親友アイリーンの挑戦で初めて彼女にキスしたキャメロン。女の子に惹かれるという性的指向に気づきながらも、周囲の無理解と宗教的葛藤に悩みながらも、仲間たちと自分らしさを見出していきます。LGBTQをテーマにした作品で、日本ではクラウドファンディングを用いて出版されました。アイリーンと過ごした夏休み二日間を描いた第一部、両親の事故死を知っておばあちゃん、ルースおばさんと暮らすことになった中学・高校時代の第二部、同性愛者であることがバレてキリスト教系の矯正施設に強制的に送り込まれる第三部となっています。この作品がデビュー作になったエミリー・M・ダンフォースはロード・アイランド大学の助教授で同性パートナーと暮らすレズビアンです。世間の無理解に苦しむLGBTQの子どもの成長物語を描きたいと、同性愛矯正治療キャンプなどを取材して書かれました。

 

 

 

 

《ノンフィクション》

『子どもを守る言葉『同意』って何?YES、NOは自分が決める!』レイチェル・ブライアン/作 中井はるの/訳 集英社 2020/10/31 (出版社サイト→こちら

『ワンダー』(R・J・パラシオ/著 ほるぷ出版)などの翻訳を手掛けた中井はるのさんが訳出された人権に関するノンフィクション新刊です。SNS などを通して知り合った卑劣な大人に騙される少女の事件がニュースでも報じられました。自分を守るために、イヤなこと、ダメなことを相手にもわかるように意思表示することの大切さを、イラストをたっぷり使って小さな子どもにもわかりやすく説いています。親子で一緒に読みながら、この本で使われる「同意」と「バウンダリー(境界線)」の意味について、話し合えるといいですね。

 

 

 

 

 

【その他】

『子どもの本から世界をみる 子どもとおとなのブックガイド88』石井郁子、片岡洋子、川上蓉子、鈴木佐喜子、田代康子、三輪ほう子、田中孝彦/著 かもがわ出版 2020/9/30 (出版社サイト→こちら

このブックガイドは、月刊誌『教育』(教育科学研究会編集)の1990年11月号から2018年3月号までの、「子どもの本」欄に掲載された紹介・書評のうちの84の記事に書きおろしの4点を加えて、加筆・再構成されたものです。選者の6人は、子育てや生徒と関わる仕事を通して、幼児から高校生までそれぞれの成長過程にふさわしいと思われる本を選び、紹介してきました。その選書基準は、他のブックリストと同様のもに加えて、”子どもたちが新しい世界を知り、おとなの世界も広がっていき、今をそして明日を考えることができる本”という点が特徴的です。世界的なパンデミックの中で、子どもたちの「どう生きるべきか」という問いを感じ取り、おとなも共に考え合える本、子どもの本を通して社会や時代をみつめる本が選ばれています。ぜひみなさんの選書の際の一助にしていただきたいと思います。

 

 

 

『藤田浩子の手・顔・からだでおはなし』なにもなくてもいつでも・どこでも楽しめる⑤ 藤田浩子/編著 保坂あけみ/絵 一声社 2020/10/30 (出版社サイト→こちら

楽しい語りや、わらべうた遊び、おはなし会小道具などを精力的に紹介する藤田浩子さんの新刊です。手元に絵本やさまざまな小道具が無くても、手や顔、身体を使って、子どもたちと触れ合って遊べる遊びやおはなしが50以上紹介されています。1章では小さな赤ちゃんを中心にした親子遊び、第2章では1~3歳向けの遊びやおはなし、3章では4~6歳向けの遊びやおはなしというように分けられています。図書館のおはなし会でも使えるものがたくさんあります。ぜひいくつか覚えて演じてみてください。

 

 

(作成K・J)

2020年9月、10月の新刊から(その1・絵本)


9月,10月に出版された絵本、児童書のうち、お薦めしたい作品を紹介いたします。(その1で絵本を、その2で児童書・その他を紹介します)

先月、久しぶりに銀座・教文館ナルニア国へ行き、新刊チェックをすることができました。それに加えて横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、出版社を通して著者、翻訳者から献本していただいたものを、読んで記事にしています。なお、一部9月以前に出版された本もあります。

その他の書籍に関しては銀座教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【絵本】

『いのち』シンシア・ライラント/文 ブレンダン・ウェンツェル/絵 田中一明/訳 カクイチ研究所ぷねうま舎 2020/8/21(出版社サイト→こちら

この地球上に溢れている「いのち」。どんな大きな動物も最初は小さなはじまりがありました。そして「いのち」が大きく育っていくためには、大切な必要なものがあるということを、語りかけてくれます。答えはひとつではないかもしれません。環境問題なのか、命の連鎖のことなのか、答えは明確には示されません。おとなが読むと哲学的な問いかけのようにも聞こえます。おとなと子どもが一緒に読みながら、「いのち」について考えるきっかけにするとよいでしょう。絵はとても美しく希望を感じることができます。

 

 

 

 

 

『ぼうしかぶって』三浦太郎/作 童心社 2020/9/1 (出版社サイト→こちら

「あかちゃん ととととと」シリーズの1冊です。「ぼうし」だけど、登場人物はみんな野菜や果物です。「へた」をぼうしに見立てています。
「なすのとうさん たたたたた ぼうしかぶって いってきまーす」
「パイナップルのにいさん どどどどど ぼうしかぶって いってきまーす」
繰り返しが楽しい絵本です。

 

 

 

 

『おふろにはいろ』三浦太郎/作 童心社 2020/9/1 (出版社サイト→こちら

こちらも野菜や果物が主人公。
こちらでは、皮を服に見立てて、それを脱いでお風呂に入ります。
「すすすすす たまねぎのばあさん ふくぬいで おふろにはいろ あ~ いいゆだな」
「ららららら とうもろこしのかあさん ふくぬいで おふろにはいろ あ~ おはだつるつる」
こちらも繰り返しが楽しい絵本です。

 

 

 

 

『サディがいるよ』サラ・オレアリー/文 ジュリー・モースタッド/絵 横山和江/訳 福音館書店 2020/9/5 (出版社サイト→こちら

サディは想像力豊かな女の子。ダンボール箱に入ればたちまち大海原を航海する船で旅する気分になれます。ある時は人魚になったり、ある時はオオカミ少年になったり、空を飛ぶことだってできる。想像することの楽しさ、豊かさを伝えてくれる絵本です。

 

 

 

 

 

 

 

『子どもの本の世界を変えたニューベリーの物語』ミシェル・マーケル/文 ナンシー・カーペンター/絵 金原瑞人/訳 西村書店 2020/9/10 (出版社サイト→こちら

世界初の児童文学賞といえば米国図書館協会児童サービス協会が選定するニューベリー賞です。(国際子ども図書館のサイト→こちら)国際子ども図書館の説明文には「18世紀の英国で児童図書の出版に携わったジョン・ニューベリーの名を冠して創設されました、世界で最初の児童文学賞。最も優れた米国の児童図書を書いた作家に贈られます」と書かれています。
この絵本は、そのジョン・ニューベリーがどんな子どもだったのか、そしてどうして子どもの本を出版しようとしたのかを教えてくれる伝記絵本です。その当時、おとなが子どもを躾・教育しようとする本ばかりの中で、ジョンは「子どもの本の主役は、「子ども」」と位置づけ、子どもたちが自由に想像し、楽しめる作品を出版しました。読書週間を迎えて、ジョン・ニューベリーの願いに想いを馳せたいですね。

 

 

 

『わにのなみだはうそなきなみだ』アンドレ・フランソワ/作 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2020/9/15 (出版社サイト→こちら

12.6×26.2㎝の横長の判型の絵本です。表紙カバーを全部開くとわにの全長がちょうど入り込みます。
この絵本は1979年にほるぷ出版から出ていた『わにのなみだ』の新装新訳版です。
おはなしは、「うそなきのことを、わにのなみだっていうんだよ」という問いかけから始まります。そしてそれを確かめるためにエジプトへ行って・・・読んでいくうちに、それがなんとも面白いナンセンスなおはなしになっていきます。

 

 

『パパとすうすう』ケイト・メイズ/原作 サラ・アクトン/絵 古藤ゆず/翻案 学研プラス 2020/9/29 (出版社サイト→こちら

小さな子は、おとなたちが休日の朝くらいゆっくり眠っていたいと思っても、早起きして容赦なく起こしにきます。
まだ寝ていたいパパと、「はやくおきて!」とあの手この手で起こしにかかります。観念したパパが、「おいで。えほんをよもうよ」と言ってくれた時の、うさぎちゃんの幸せな表情。読んでいてほほえましくなってきます。

 

 

 

 

 

『ママとすうすう』ケイト・メイズ/原作 サラ・アクトン/絵 古藤ゆず/翻案 学研プラス 2020/9/29 (出版社サイト→こちら

『パパとすうすう』と一緒に出版されたこちらの絵本は、今度は夜、小さな子を寝かしつける様子が描かれています。
「もうねるじかんだよ」と言っても、すぐに起きてきて、「あれしよう!」「これしよう!」と誘ってきます。
ママと小さなうさぎちゃんとのお休み前のひとときはかけがえのない時間です。最後はママの腕の中ですやすや。安らぎと幸せを感じられる絵本です。

 

 

 

 

 

『はたらくくるまたちのかいたいこうじ』シェリー・ダスキー・リンカー/文 AG・フォード/絵 福本友美子/訳 ひさかたチャイルド (出版社サイト→こちら

「2020年3月、4月の新刊から」(→こちら)で紹介した『はたらくくるまたちとちいさなステアちゃん』の続編です。
今度はビルの解体工事に力を合わせます。お話を読んでもらっているうちに、ブルドーザー、クレーン車、ショベルカー、フロントエンドローダーなど、はたらくくるまの役割分担というのもわかって面白いです。今回もスキッドステアローダーのステアちゃんも、大活躍します。

 

 

 

 

『おおかみのはなし』はやかわじゅんこ/作 瑞雲舎 2020/10/1 (出版社サイト→こちら

ことば遊び絵本『はやくちこぶた』(→こちら)に出てきたおおかみとこぶたが登場する絵本です。
このおおかみ、ちょっとドジでおかしいのです。大切な牙を転んで折ってしまい肉を食べることはもちろん冷たいアイスクリームさえも沁みていたいのです。そこで3びきのこぶたたちは歯医者さんに行くように勧めるのですが、歯医者が怖いおおかみは逃げ出してしまいます。ナンセンスだけれど、なんだかホッとする、そんな味わい深い絵本です。

 

 

 

『はんぶんこ』多田ヒロシ/作 こぐま社 2020/10/15 (出版社サイト→こちら

いろんな動物たちが、たったひとつしかない食べ物を、「はんぶんこ」といって分け合います。分け合って食べるのって、子どもたちにとってはうれしい成長です。ちゃんと半分に切って分けられるものはいいのですが、あれあれ、ごりらくんたちは、「はんぶんこ」といってバナナを食べ始めたけれど、早く食べた方がいっぱい。「はんぶんこじゃない」と言って泣くのも当然だよね。そのあとどうしたかな?「はんぶんこ」で分けることができるようになった2歳前後くらいの子どもたちに読んであげたい1冊です。

 

 

 

 

 

『ねむねむさんがやってくる 眠りが訪れる話』ユ・ヒジン/作・絵 中井はるの/訳 世界文化社 2020/10/20(出版社サイト→こちら

ベッドに入ってもなかなか寝付けない我が子に、眠気を「ねむねむさん」と名付けて、ねむねむさんは「ゆっくりくるのよ。ゆったりと。のんびり のんびりやってくる。」と伝えるおかあさん。「早く寝なさい」なんて言わないで、「だから ゆっくり めをとじて、しずかにそっと おまじない」「ねむねむさん ねむねむさん わたしのゆめを もってきて」と、安らかな眠りが訪れるのを待っていてくれます。子どもを寝かしつけるときは、ゆったり、ゆっくり構えることが何より大切。そのうちこちらも気持ちが落ち着いて、眠くなってきますよ。

 

 

 

『クリスマスツリーをかざろうよ』トミー・デ・パオラ/作 福本友美子/訳 光村教育図書 2020/10/30 (出版社サイト→こちら)(10/29現在未掲載・サイト確認でき次第リンクします)

おはなし会プラン「2020年12月(その2)クリスマスはおうちでね」(→こちら)でも紹介した作品です。12月になるとあちこちにクリスマスツリーが飾られますが、なぜクリスマスツリーを飾るようになったのか、ご存知ですか?それを親子の会話を通してわかりやすく教えてくれる絵本です。ヨーロッパやアメリカの歴史上の人物が出てくるのですが、大きくなった時に世界史で必ず聞く人名です。キリスト教に深く結びついていたものが日本でも宗教に関係なく飾られるようになった背景には、日本にも常緑樹を大切にする文化があったからでしょう。この絵本はアメリカでは1980年に出版されていますが、日本では今回が初めて。今年3月に亡くなられたトミー・デ・パオラさんの(→こちら)日本での最新刊です。

 

 

 

 

『おしゃべりくらげ』あまんきみこ/作 みずうちさとみ/絵 JULA出版局 2020/10 (出版社サイト→こちら

あまんきみこさんの、のんびりとしながらも、毅然とした意志を感じるお話です。くらげの子は「ほねなし」と言われるのが悔しくてたまりません。でも、それは周りから「ほねなし」とからかわれるからなのです。くらげのかあちゃんは、「おまえは、いつのまにか、あたりをうかがいながら、自分をきめるようになったんだい?」と、諭します。ガーゼ生地に刺繍で描いた絵も優しくて素敵です。夏に出版する予定が、春先はガーゼ生地が品切れとなり(布マスクの材料になるため)出版が秋にずれ込んだということです。「忖度」という言葉が、一般的になって久しいのですが、「忖度しない」毅然とした態度を取ることの大切さも物語から感じ取ることができます。

 

 

【ノンフィクション絵本】

『集めてわかるぬけがらのなぞ ゲッチョ先生のぬけがらコレクション』盛口満/文・絵 少年写真新聞社 2020/7/20 (出版社サイト→こちら

夏休み前に出版されたので、すでに多くの図書館には入っていることでしょう。今年の夏もたくさんのせみのぬけがらを見かけました。短い夏休みでしたが、図書館には「何のぬけがら?」と聞きにくる子もいたことでしょう。
こちらの本にはセミだけでなく、いろいろな昆虫のぬけがらを集めてあります。昆虫が苦手な人も、この本を手に取ると、小さな昆虫の精巧な造り、自然のもつ不思議さを感じることができるのではないかと思います。児童のレファレンス用にもぜひ揃えてほしい1冊です。

 

 

 

 

 

『どうなってるの?ウイルスと細菌』サラ・ハル/文 ピーター・アレン/絵 福本友美子/訳 堀川晃菜/監修 ひさかたチャイルド 2020/10 (出版社サイト→こちら

2020年を振り返る時に、世界中に猛威を振るった新型コロナウィルスCOVID-19によるパンデミックのことは必ず語られることでしょう。
子どもたちの日々の生活の中にも「ウイルス」ということばが定着しました。その「ウイルス」とはいったい何なのか、「細菌」とはなにか、そして私たちの身体に備わっている防御システムについて小学校低学年の子にもわかりやすく、めくるとさらに詳しい説明が書いてある111のしかけとともに、理解を助けてくれることでしょう。

 

 

 

(作成K・J)

2020年7月、8月の新刊から


7月、8月に出版された絵本、児童書のうち、ぜひお薦めしたいものを紹介いたします。

ただし、都内における7月以降の新型コロナウィルス感染拡大の影響で、書店での十分な時間をかけての選書が出来ていません。こちらで紹介する本は、クレヨンハウスに立ち寄った際に購入したものと横浜日吉のともだち書店に注文し送付いただいたもの、そして一部献本していただいたものを、読み終わり記事にしています。すべての本をチェックしているわけではないので、参考程度にしてください。

 

また、先日お知らせた銀座教文館ナルニア国のきになる新刊」コーナーをぜひご活用ください。(「本のこまど」紹介記事→こちら

 

なお、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。(見逃していた5月に出版された絵本も含まれています)

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【絵本】

『ぼくのすきなおじさん』長新太/作 絵本塾出版 2020/5  (出版社サイト→こちら

 

2005年に亡くなられた長新太さんのこの絵本は、1993年に童心社から出版された後、長年品切れとなっていました。長新太さんのシュールでパワフルな作品の魅力たっぷりな本作が、この度絵本塾出版から復刊しました。
ぼくのすきなおじさんは、類い稀なる石頭です。その石頭ぶりときたら、月さえもぶっ飛ばしてしまうほどです。
長新太ワールドをたっぷり楽しめる1冊です。

 

 

 

 

『グリム童話 あかずきん』大塚勇三/訳 堀内誠一/絵 福音館書店 2020/5/15  (出版社サイト→こちら

 

こちらも、福音館書店から1970年にソフトカバーとして出版されていた絵本で、ハードカバーとして復刊されました。
グリム童話の「あかずきん」が、とても愛らしく、色鮮やかに描かれています。
50年前に描かれた絵を最新技術で蘇らせたという生き生きとした絵の「あかずきん」をぜひ手にしてほしいと思います。

 

 

 

 

 

『つかまえた』田島征三/作 偕成社 2020/7  (出版社サイト→こちら

 

川に潜って素手で魚を捕まえる野趣あふれる男の子を描いた絵本です。昨年の国際アンデルセン賞画家賞候補としてファイナリストにもなった田島征三さんの大胆な筆致が、絵に躍動感を与え、生命への賛歌ともいえる力強い作品となっています。読み継がれていってほしい作品です。

 

 

 

 

 

 

 

『こんにちは!わたしのえ』はたこうしろう/作 ほるぷ出版 2020/7/25  (出版社サイト→こちら

 

はたこうしろうさんが子どもたちと一緒に行うワークショップのお手伝いに伺ったことがあります。この絵本を手にしたときに、その時のはたさんの子どもたちへの働きかけや参加した子どもたちが生き生きと絵を描いている様子を思い出しました。
はじめは遠慮がちに紙に色を塗っていた子どもたちが、身体全体を使って描き始めると、みるみる表情が変わり、心が解放されていくのです。
そんな子どもの表情の変化、喜びがこの絵本の女の子からも伺えます。芸術の秋にむけて、たくさんの子どもたちに読んでほしいと思います。

 

 

 

 

 

『4さいのこどもって、なにがすき?』ウィリアム・コール/作 トミー・ウンゲラー/絵 こみやゆう/訳 好学社 2020/7/26  (出版社サイト→こちら

 

あなたにとって、4歳の子どものイメージはどんな感じですか?様々なことに興味関心を持って活動的になり、自己中心性から抜け出してお友達との関係も作れるようになる時期です。
そんな4歳の子どもたちが、地域のおばさんの家に集まって自分たちの好きな遊びや食べ物のことを伝えていきます。最後に「あたしたちがいちばんすきなこと。それはね、おばさんみたいなやさしいひとのいえで、あそぶってことよ!」と言って帰っていきます。地域で子どもたちを温かく見守ってくれる存在が増えると、子どもたちも情緒豊かに成長していくだろうなと思います。

 

 

 

 

『びんにいれたおほしさま』サム・ヘイ/文 サラ・マッシーニ/絵 福本友美子/訳 主婦の友社 2020/8/31  (出版社サイト→こちら

 

ある時、公園で弟がぴかぴか光るものを拾ってきました。姉弟は、いったい何だろう?と調べていくのですが、誰も答えてくれません。
男の子はその光るものを大切にびんに入れて片時も離しませんでしたが、その光るものはだんだん弱っていくようでした。そんな時夜空を見上げて男の子が見つけたものは「まいごです ちいさなほしがひとつ」というメッセージ。さて、迷子になったちいさなほしを、どうやって空に帰してあげられるでしょう?想像するだけでも楽しくなってくる絵本です。

 

 

 

 

 

『きっとどこかに』リチャード・ジョーンズ/作 福本友美子/訳 フレーベル館 2020/8  (出版社サイト→こちら

 

迷子になった一匹の子犬。居場所を探してとぼとぼ歩いています。ふと見た川面に葉っぱが一枚、どこかへ流れていきます。それを追っていくうちに都会に迷い込みます。
しかし、お腹を空かせて迷い込んだお店でも、嫌われ、追い出されてしまいます。どこにも行くところはないと諦めていた時に、子犬をみつけて追いかけてきた女の子に声をかけられます。
やっと受け入れてくれる人、場所に出会えた犬の安堵感が絵本からも伝わってきます。「きっとどこかに」という希望を抱くことの大切さを感じさせてくれました。

 

 

 

 

【児童書】

『ベルリン1945 はじめての春』上・下 クラウス・コルドン/作 酒寄進一/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2020/7/14  (出版社サイト→上巻こちら、下巻こちら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドイツの20世紀前半の転換期を描いた三部作のうちの完結編です。第一世界大戦終結後ワイマール共和国誕生へと動く1918年から1919年のベルリンを舞台にした『ベルリン1919 赤い水兵』、ワイマール共和国の終焉からナチスによるファシズム独裁へと移行した1932年から1933年のベルリンを舞台にした『ベルリン1933 壁を背にして』に続く第三部です。本作では、1945年春の第二次世界大戦末期の英米機による空爆にさらされた頃と、その後のソ連によるベルリン占領下にあるベルリンを描いています。第二次世界大戦下のドイツについてはナチスによるユダヤ人迫害や大虐殺がユダヤ人の立場から描かれる作品が多いのですが、ドイツ一般市民が空襲から逃げる地下壕の中で何を考えていたのか、またソ連の占領下で何が起きていたのか、12歳の少女エンネの目線から描いています。第一部の主人公はヘレ、第二部の主人公はヘレの弟ハンス、そして第三部の主人公エンネはヘレの娘で、歴史に翻弄される家族の物語でもあります。洋の東西を問わず、また戦争を仕掛けた方も、仕掛けられた方も、武力、暴力の応酬によって深く傷つき、犠牲になるのは一般市民であり、弱い立場に置かれる女性や子ども、高齢者たちです。その厳しい事実を直視し、考える契機になる作品です。

 

 

(作成K・J)

2020年5月、6月の新刊から(読み物、その他)


7月2日に「2020年5月、6月の新刊から(絵本)」(→こちら)を紹介してから、期間が開いてしまいましたが、読み物を紹介いたします。なお、4月、5月には書店が休業していた関係で、それ以前に出版された本も含まれています。

こちらの本は、銀座教文館ナルニア国と横浜日吉のともだち書店に注文して送付していただき、読み終わって記事を作成しています。

また、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【児童書】
《児童文学》

『ケルトとローマの息子』(新版)ローズマリー・サトクリフ/作 灰島かり/訳 ほるぷ出版 2020/2/20 (出版社サイト→こちら

英国を代表する歴史小説家、ローズマリー・サトクリフの読み応えのある作品で2000年に出版されたものの新版です。翻訳者は2016年に早世された灰島かりさんです。
舞台は2世紀前半のブリトン島とローマ帝国です。ケルトの部族社会ドゥムノニー族の中で育てられたべリックは、実は海で遭難したローマ人の遺児。育ての親や部族の長老によって十五歳の成人の儀式も受けることが出来ました。しかし、その後天候不良と疫病の流行が部族の暮らしを襲うと、異国の血がこの地に災いをもたらしているとして部族を追放されることになります。ローマ軍前線の街に赴いたべリックは騙されて奴隷としてローマへ連れていかれます。そこから始まる過酷な運命は、読んでいて胸が苦しくなるほどです。しかしべリックは持ち前の聡明さと勇気をもって、その人生を切り拓いていくのです。先が見えない現代だからこそ、時代の流れに翻弄されつつも、希望を捨てなかったべリックの生き方は私たちにかすかな光明をもたらしてくれると思います。

 

 

 

『夜明けの風』(新版) ローズマリー・サトクリフ/作 灰島かり/訳 ほるぷ出版 2020/3/20  (出版社サイト→こちら

こちらもローズマリー・サトクリフの歴史小説です。時代は『ケルトとローマの息子』から進んだ6世紀後半で、ローマ軍団が去ったブリテン島が舞台となっています。
当時のブリテン島はローマ文明を受け継いだケルト部族であるブリトン人と、侵入者であるサクソン人とのし烈な戦いが続いていました。
主人公オウェインはブリトン人で、ブリトン人とサクソン人との最後の大掛かりな戦いでひとり生き残った少年です。
一緒に参戦した父と兄を亡くし、北へ逃れる道中で同じようにひとり生き残った少女と出会います。大陸へ逃亡する旅の途中で少女が病気になったことからオウェインはサクソン人に少女レジナを託し、自分は奴隷として生きる道を選びます。
聡明なオウェインは、雇い主の信頼を得、のちの戦で彼を救ったことで自由の身になります。物語の後半ではローマ教皇グレゴリウス1世の命を受けてイギリスに布教のために遣わされ、のちにカンタベリー大司教となるアウグスティヌスの到着とケント王エゼルベルフトによる歓迎という実際にあった歴史上の出来事も描かれています。
時代に翻弄され、支配者たちの争いに巻き込まれていく庶民が、実は時代を作ってきたのだと読んでいて感じました。今、私たちもコロナ禍により先の見えない時代に生きていますが、こうした歴史小説を読むことは、生きる力を与えてくれるのではないでしょうか。若い世代にぜひ読んでほしいと思います。

 

 

 

『王の祭り』小川英子/作 ゴブリン書房 2020/4 (出版社サイト→こちら

 

16世紀、イングランド王国ではエリザベス1世が女王として統治していました。同じ頃、日本では信長が戦国時代の覇者として君臨しようとしていました。
物語は、信長が長篠・設楽原の合戦に勝利したことを朝廷に報告するために京の明智光秀の屋敷に滞在しているところから始まります。そこに訪ねてきた伴天連の宣教師から、信長は地球儀を見せられヨーロッパ大陸の果てにある島国がイングランド王国であること、そこには16年間在位を続けている女王がいることを聞くのです。
舞台は変わって、イングランド王国ではエリザベス女王を密かに暗殺しようとするものがいたのです。
革職人の息子ウィルは、ある夜家を飛び出して暗い森を歩いているときに妖精を捕まえます。そのウィルは妖精に「エリザベス女王がいる間にケニルワース城へ行きたい」と願うのです。伯爵の依頼で父が献上する女王の手袋を持っていくことになったウィルは、刺客に狙われた女王とともに妖精の力で時空を越えて戦国時代の安土桃山城へ降り立ちます。信長は大喜びで絢爛豪華な城をエリザベス女王に案内し、帰国を望む女王たちを京へ送って本能寺に出向いたそのさ中に、明智光秀に襲撃されます。まさに「〈時〉と〈処〉を超えて繰り広げられる壮大な歴史ファンタジー」、その後どのようにして女王とウィルがイングランドに戻るのかも、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

 

《ノンフィクション》

『有権者って誰?』藪野祐三/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/4/17 (出版社サイト→こちら

2015年に選挙権年齢が満18歳に引き下げられましたが、20歳以下、および20歳代の投票率の低さが目立っています。
この本では、「どうせ、ぼくの、わたしの1票で政治は変わらない」という意識を、無理やり変えようとするのではなく、まずは「さまざまな有権者がいるという事実」を伝えていこうとしています。
若い世代の人の問題だけではなく、公共性に対する権利と義務をもっているという市民性の問題として、広く訴えています。
作者は、その市民性を身につけるために、まず自分の「無知」に気づくこと、異文化との交流を勧めています。そうすることによって、選挙の重要性を理解し、有権者としての自覚が生まれるとの指摘に、私自身もさまざまな気づきを与えられました。親子で読むのもいいですね。中高生にもわかりやすい言葉で、グラフや図表を用いて書かれています。

 

 

 

『チョウはなぜ飛ぶか』日高敏隆/著 岩波少年文庫 岩波書店 2020/5/15(出版社サイト→こちら

この本には、動物行動学者日高敏隆さん(1930-2009)が1975年に著した岩波科学の本16『チョウはなぜ飛ぶか』と、エッセイ「思っていたこと  思っていること」(『動物は何を見ているか』2013年 青土社)、「今なぜナチュラル・ヒストリーか?」(『ぼくの世界博物誌』2006年 玉川大学出版部)が収められています。
日高さんの蝶の研究は、小学生の時にアゲハ蝶を捕まえようと観察していて「チョウの飛ぶ道はきまっているのだろうか?」という疑問を持ったことに始まります。「その当時、春の最初のアゲハが去年の春と同じ道を飛ぶのには、きっとなにか、それなりのわけがあると考えた」ことが、その後の研究へとつながっています。この夏も多くの子どもたちが夏の自由研究などの資料を探しに図書館を利用することと思います。幼い時の小さな疑問が、大きな研究の業績に繋がることを考えると、そこでどんな資料を手渡すかがとても重要になるなあと思いました。岩波少年文庫にするにあたり、『しでむし』(2009年 偕成社)などの作品がある絵本画家舘野鴻さんが表紙絵を描き、「「なぜ」の発見」という一文を載せています。小学校高学年以上であれば読めるようになっています。ぜひ昆虫好きな子どもたちに手渡してください。

 

 

 

『議会制民主主義の活かし方 未来を選ぶために』糠塚康江/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/5/27 (出版社サイト→こちら)

こちらの岩波ジュニア新書も、『有権者って誰?』と同じように、若い世代に向けて書かれています。議会制民主主義の歴史を紐解き、現在の選挙制度についてわかりやすく解説しています。また現在の国会の形骸化、政権への忖度や、統計や文書の改ざん問題などにも言及しています。
作者は、3月末まで大学教授として憲法学などを教えていました。新型コロナウイルス感染症対策における政治の迷走などについても、あとがきで触れつつ、これからの時代を生きる私たちに、有権者として、国民として何が必要であるかを語りかけてくれています。
この本はUDフォントが使用されており、誰もが読みやすい配慮もされています。

 

 

 

 

 

 

【その他研究書など】

『新装版 私の絵本ろん 中・高校生のための絵本入門』赤羽末吉/著 平凡社 2020/5/8 (出版社サイト→こちら

今年は赤羽末吉生誕110周年で、ロングセラー『かさじぞう』が生まれて60年になる節目の年として、赤羽末吉が描いた絵本なども多く復刊されています。
また各地で行われる予定だった「赤羽末吉原画展」(多くは2021年に延期されています)に合わせて、赤羽末吉の研究書なども復刊されています。こちらは、1983年に偕成社から出版され、2005年に平凡社ライブラリーに収録された赤羽末吉のエッセイの新装復刻版です。
赤羽末吉の絵本創作にかける思いや、『そら、にげろ』、『へそとりごろべえ』、『つるにょうぼう』など12冊の絵本の制作過程、紀行などからなっている読み応えのあるエッセイになっています。
4月に『絵本作家赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』(福音館書店)を上梓した義理の娘の赤羽茂乃さんが「新装版に寄せて―赤羽末吉への扉」という一文を寄せています。文庫版で手に取りやすい1冊です。
なお、生誕100年の記念に出版された『画集 赤羽末吉の絵本』(2010年 講談社)が増刷発行されています。こちらも併せて再読してほしいと思います。(所蔵してない図書館は購入するチャンスです)

 

 

 

 

『年齢別!子育てママ&パパの頼れる絵本193』遠藤裕美/監修 ユーキャン学び出版/自由国民社 2020/5/27 (出版社サイト→こちら

 

現役保育士で絵本講師(NPO法人絵本で子育てセンター認定)の資格を持つ遠藤裕美さんが執筆、監修した0~6歳の子ども向けの絵本ガイドブックです。それぞれの年齢の子どもたちの発達の特性が書かれ、またひとつひとつのテーマごとに「育児アドバイス」がついていて、子育て中のママ&パパには頼りになる1冊になっています。
この本の編集を担当された坂田さんが「新刊JP」のインタビューに答えている記事(→こちら)もぜひご覧になってください。このガイドブックの特徴とおすすめポイントがよくわかると思います。

 

 

 

(作成K・J)

教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナー


いつも私が児童書の新刊をチェックするために定期的に足を運び、さまざまな情報をいただいている銀座の老舗書店・教文館の児童書専門店、ナルニア国が6月より公式サイト上に「きになる新刊」コーナーの掲載を始めました。

教文館ナルニア国「きになる新刊」コーナー

 

「きになる新刊」は毎週火曜日に更新されます。

 

以前、ナルニア国から発信されていた新刊案内メルマガとは違って、すべての本を読んだ上でお薦めするという性質のものとは違うとのことです。

しかし長年培われてきた児童書を見る目を通しての「きになる新刊」は、それこそ気になりますね。ぜひチェックしてみてください。

 

また同じコーナーに「本日入荷の最新刊」も掲載されています。こちらは入荷日に掲載されます。また「学校図書館・文庫の選書リストにオススメの新刊」も、随時発信されるとのこと。選書の心強い味方になってくれそうですね。

 

なお、「本のこまど」での新刊情報も、緩やかに今後も続けていきますが、これからは「これは絶対お薦めしたい」という本に絞っていこうと思っています。

「5、6月の新刊から」は近々公開いたします。お楽しみに。

(作成K・J)

2020年5月、6月の新刊から(絵本)


緊急事態宣言が解除されたので、6月初めにさっそく銀座にある子どもの本専門店銀座教文館ナルニア国へ選書に行ってきました。加えて横浜・日吉のともだち書店からも、お薦めの本を送っていただきました。それらを全冊読んだうえで、今回は絵本とそれ以外のものとを分けて、みなさまに紹介いたします。

また、3月~5月は実際に書店へ足を運べず、見落としていた本もありました。今回紹介する中には、見落としていた3月~4月に発行されたものもあります。

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

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【絵本】

『自転車ものがたり』高頭祥八/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2020/3/5(出版社のサイト→こちら

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」1996年7月号のハードカバー版で、2016年4月に第1刷が出版されていましたが、この度増刷されました。限定復刊です。購入はお早めに。
子ども達にとって一番身近な自転車の歴史や、動く仕組みなどを詳しい図解などを通して伝えてくれます。
馬車などから始まった速く遠くへ走っていく乗り物のうち、自転車は自動車よりも50年遅いものでした。しかし、ほかの乗り物がスピードの速さを求めて大きく重くなり、その分たくさんのエネルギーを使って騒音や大気汚染を引き起こすのに対して、自転車は軽くてもしっかりと荷物も運べるし、何よりエネルギーは乗る人の足の力だけで環境に優しい乗り物です。
子ども達から大人まで誰もが乗れる乗り物であるからこそ、交通ルールを守って安全に乗ることの大切さも伝えてくれています。

 

 

『もぐらのモリス』ダン・ヤッカリーノ/絵・文 青山南となかまたち/訳 カクイチ研究所 2020/3/25(出版社のサイト→こちら

 

もぐらのモリスは、はたらきもののおにいさんたちといっしょに過ごしていましたが、体は一番小さく、またみんなとは違う考えを持っていました。
たべるものが無くなった時、おにいさんたちは、もっと深く掘ることを決めますが、モリスだけは上に向かって掘り進みます。地上に出てくると地下では見たことのない世界が広がっています。きつねに襲われそうになりますが、機転を利かせて逆にきつねを救います。そして地上からたくさんの美味しいお土産を持ち帰るモリス。人と違う視点を持つことも大切なんだと、励ましてくれているようです。

 

 

 

 

『もっと かぞえてみよう』ディック・ブルーナ/文・絵 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

2018年2月に出版されたディック・ブルーナの『かぞえてみよう』(→こちら)、『わたしたしざんできるの』(→こちら)と合わせて「こどもがはじめてであう絵本かず」のセットとして組まれることになった絵本です。
『かぞえてみよう』が1~12までの数(1ダース)だったので、こちらでは13から24まで色鮮やかな絵とともに数を数えていきます。
小さな子どもたちにとっては「たくさん」が具体的な数として認識できることは大きな発見であり、喜びに繋がります。

 

 

 

『とんでいく』風木一人/作 岡崎立/絵 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

左から右へ飛んでいくのは猛禽のタカ、右から左へ飛んでいくのはガン。タカの声は緑で印字され、ガンは赤で印字されています。でも絵はひとつだけ。どういうこと?と思われるでしょう。同じ黒い鳥のシルエットが、左から読んでいくとタカに見え、右から見るとガンに見えるという、しかけのないしかけ絵本なんです。同じシーンでふたつのお話、ぜひ手に取って楽しんでほしいなと思います。

 

 

 

『かなへび』竹中践/文 石森愛彦/絵 かがくのとも絵本 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

福音館書店月刊誌かがくのとも2015年5月号のハードカバーです。庭や草むらでよく見つけられるかなへび。小さな子どもたちにとっては一番身近な爬虫類ですね。そのかなへびの暮らしを小さな子どもたちにもわかりやすく教えてくれる1冊です。幼いころにかなへびを捕まえたのに、しっぽを切り落として逃げられた時の驚きは数十年経っても忘れられないものです。身近な生命への畏敬を伝えてあげたいですね。

 

 

 

 

『かぞえてみよう どうぶつスポーツたいかい』ヴィルジニー・モルガン/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店 2020/4/7(出版社のサイト→こちら

 

どうぶつたちのスポーツ大会がはじまります!「ゆうしょうかっぷはつだけ」「かいふえがなったらたいかいがはじまるよ」と、おはなしのなかに数字が1~20~1と盛り込まれて、「ぎんメダルはぜんぶでつ」「きんメダルはつ」「ぼくたちみんなのこころはつ ワンチーム!」で終わる楽しいお話です。
色もはっきりと鮮やか、うさぎにペンギン、チーターにピューマ、カンガルーにキリン、あしかにさるにくま、ワニにいぬと、子どもたちの大好きなどうぶつたちもたくさん登場します。小さな子どもから大きな子たちまで幅広く楽しめることでしょう。

 

 

 

『空を飛びたくなったら』ジュリー・フォリアーノ/文 クリスチャン・ロビンソン/絵 田中一明/訳 カクイチ研究所 2020/4/24(出版社のサイト→こちら

 

子どもたちに想像してみることの楽しさと広がりを、教えてくれる絵本です。子どもたちにとって世界は、知りたいことで溢れています。いろいろなものに触れ、たくさんのことばを聞き、やってみる。そんな日々を、温かく見守ってくれるおとながそばにいてくれたら、怖いものはありません。日々、ぼうけんをしながら学んでいくことができます。
この絵本の絵は『おばあちゃんとバスにのって』(マット・デ・ラ・ベーニャ/文 石津ちひろ/訳 鈴木出版→こちら)でコールデコット賞とニューベリー賞を、『がっこうだってどきどきしてる』(アダム・レックス/文 なかがわちひろ/訳 WAVE出版→こちら)で七つ星の書評を受けたクリスチャン・ロビンソンが描いています。文章はエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞しているジュリー・フィリアーノが書いています。

 

 

『うりこひめとあまんじゃく』堀尾青史/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2020/5/1(→こちら

 

赤羽末吉生誕110年を記念して、昨年から今年にかけて続々と赤羽末吉が描いた絵本が復刊されています。この絵本も1976年にフレーベル館から出版されていたものが、新たにBL出版から復刊されました。
川上から流れてきた桃から桃太郎が生まれるのはよく知られた昔話ですが、同様に川上からうりが流れてきて中からうりこひめが生まれたという昔話は、誰もが知っているポピュラーなものではないかもしれません。あまんじゃくの、なんとも憎めない悪さと合わせて、子どもたちに伝えていきたい昔話です。

 

 

 

 

『おばけのジョージ― とびだしたけいとだま』ロバート・ブライト/作 こみやゆう/訳 好学社(出版社のサイト→こちら) 

 

心優しいちいさなおばけのジョージ―のおはなしです。(『おばけのジョージ― こまどりをたすける』(→こちら)は「本のこまど」2019年11月、12月の新刊からで紹介しました→こちら)心温まるエピソードです。近所に住む女の子ジェイニーが転んで木の根っこにある穴にけいと玉を落としたことをてんとうむしから聞いたジョージ―はふくろうのオリバーとねこのハーマンに声をかけて助けに行きます。ジェイニーが泣き疲れて眠っている間にうさぎたちに頼んでけいと玉を拾ってきてもらい、オリバーがそっとカゴに入れ、ハーマンが鳴いて起こします。まさかジョージ―たちが助けてくれたと知らないジェイニーは「けいとだまをなくしたゆめをみたんだ」と元気にかけ出していくのです。ホッと心が温まるお話です。

 

 

『けんけんぱっ』にごまりこ/作 0.1.2えほん 福音館書店 2020/5/15(出版社のサイト→こちら

かたあし飛びで「けんけんぱっ」、ねこが跳ぶと、いぬもくまも、そしてりすもぞうもやってきて「けんけんぱっ」、最後はみんな楽しくなって、「けんけん ぱっぱっぱー」と跳び上がって遊びます。福音館書店月刊誌「こどものとも0.1.2」2016年2月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

『こぶたのプーちゃん』本田いづみ/文 さとうあや/絵 福音館書店 2020/5/15(出版社のサイト→こちら

こぶたのプーちゃんは好奇心旺盛。ぬかるみを見ると飛び込んでどろおばけに、そしてほしくさの山にそのままダイブ、もじゃもじゃおばけになってしまいます。そのうえ、たんぽぽの綿毛も体中にくっつけて遊ぶので、ふわふわおばけになります。でも、そんなプーちゃんをおかあさんがみつけると、川に連れて行ってきれいに洗ってくれました。いたずらが大好きな年代の子どもたちに読んであげたい1冊です。福音館書店月刊誌「こどものとも年少版」の2014年4月号のハードカバーです。

 

 

 

『えほんなぞなぞうた』谷川俊太郎/文 あべ弘士/絵 童話屋 2020/5/18(出版社のサイト→こちら

 

Q「ブレーキかけてもとまらない バックもできない まがれない なのにむじこでやすまずはたらく」A「じかん」
ページ1枚になぞなぞが描かれ、その裏側に答えが描かれています。

通しで読んでも楽しいし、おはなし会の導入に、ひとつふたつ選んで子どもたちになぞなぞをしてもいいですね。谷川さんのしゃれたなぞかけは大人が読んでも楽しくなります。

 

 

 

 

 

『語りかけ絵本 えだまめ』こがようこ/文・絵 大日本図書 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

こがようこさんの語りかけ絵本シリーズの最新刊です。(語りかけ絵本シリーズ→こちら
夏の間、食卓に並ぶえだまめ、小さな子どもたちにとってはさやを押して中からピュッ!と出てくるえだまめ、出すだけでも楽しいですよね。それを「ピュッ!パクッ!パクッ!」とリズミカルに繰り返されて、夢中になることでしょう。「おはなし会プラン2020年8月小さい子向け」でも、紹介しています。(→こちら

 

 

 

 

『わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話』鈴木海花/文 はたこうしろう/絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2016年11月号のハードカバーです。岩手県葛巻町立江刈小学校で実際にあったお話が絵本になっています。カメムシって臭いにおいを出すやっかいものだと考えられていましたが、ある時、校長先生がカメムシにもいろんな種類があること、それを調べてカメムシ博士になろうと呼びかけたのです。子どもたちが興味を持って調べ始めるといろいろな種類があることがわかり、独自の「カメムシずかん」を作るようになります。子どもたちが見つけたカメムシの名前がほんとうに正しいか確認するためにカメムシを専門に研究する人たちにも葛巻町に来てもらって一緒に研究するようになります。まさに「やっかいものが宝物になった」おはなしです。夏の自由研究の導入に子どもたちに紹介したい1冊です。

 

 

 

『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』石川直樹/文 梨木羊/絵 岩波書店 2020/5/28(出版社のサイト→こちら

 

世界中の登山家が憧れる世界一の山エベレスト。そこへの登頂はニュースになるほどで簡単なことではありません。近年は年間800人が登頂に挑むなど、エベレストを目指す人が増えていますが、その陰には土地を知り、また荷物を運んでくれるシェルパの存在があります。この絵本では、シェルパになったばかりのポルパの初めてのエベレスト山頂登山の様子が描かれています。山頂から眺める景色に感動の涙を流すポルパの姿は読む者の心を打ちます。彼らのような山岳民族のおかげで華々しい登山隊の活躍があることを多くの人に知ってほしいと、写真家の石川さんがこの絵本を作られました。

 

 

 

 

『ジュリアンはマーメイド』ジェシカ・ラブ/作 横山和江/訳 サウザンブックス社 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

ジュリアンは男の子だけれど、マーメイドが大好きです。ある日、プールに出かけた帰りの電車でマーメイドに扮した人たちに出会います。ジュリアンは自分もあんな風になりたいなあと想像を広げます。そして帰宅するとレースのカーテンやお花などでマーメイドに扮装するのです。それを見たおばあちゃん、止めるのではなく、ジュリアンにネックレスをかけてくれて一緒にマーメイドパレードに連れ出してくれました。このパレードはニューヨーク、コニーアイランドで毎年開かれるお祭りで(→こちら)昨年で37回になったそうです。この絵本はLGBTQを考える絵本としてクラウドファンディングで作成されました。自分がなりたいものになる、それを認めることがとても大切だということを教えてくれる絵本です。絵本の中のおばあちゃんたちもとてもグラマーでありのまま描かれています。表紙とカバーの絵が違っているので、ブッカーのかけ方に悩んでしまうかもしれません。

 

 

『はかせのふしぎなプール』中村至男/作 こどものとも傑作集 福音館書店 2020/6/5(出版社のサイト→こちら

 

はかせは、なんでも大きくなってしまうプールを発明します。プールの中から出てくるのは・・・読んできかせれば、ちょっとした形当てクイズになる面白さです。そして、最後にははかせまでそのプールに入ったのはよいのですが、元の大きさに戻すプールは発明してなくて、「おーい、じょしゅくん!もとにもどるプールをはつめいしてくれー」と叫ぶところ、なんともお茶目なはかせです。福音館書店月刊誌「こどものとも」2015年9月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

『こどもたちはまっている』荒井良二/作 亜紀書房 2020/6/17(出版社のサイト→こちら

 

「こどもたちはまっている」、ある時はふねが通るのを、ある時はかもつれっしゃが通るのを、ある時は雨上がりだったり、お祝いの日だったり、夕焼けだったり。何かを待つ、楽しみにするということは、生きていくうえでの希望に繋がっています。子どもたちにとって未来への希望、待っていることはたくさんあるわけで、おとなたちはそれを決して裏切ってはいけないなと、この絵本を読んでいて強く感じました。

 

 

 

(作成K・J)

2020年4月、5月の新刊から


今回は、銀座にある子どもの本専門店銀座教文館ナルニア国からおすすめの本を教えていただき、その中から選んで送っていただいた本を中心に、全冊読んだうえでみなさまに紹介いたします。

なお、3月上旬から実店舗へ足を運ぶことができなかったため、3月以前に出た新刊もチェックできてないものがあり、それも含めての紹介となります。

図書館でも見計らい以外の選書が難しくなっていると思いますが、参考にしていただければ幸いです。

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

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【絵本】
『ぱかぱかももんちゃん』とよたかずひこ/作 童心社 2020/3/5 (出版社サイト→こちら

ちいさなお子さんをお膝にのせて、上下に「ぱかぱか」と言いながら動かすだけでもとても喜びますね。
「ももんちゃんあそぼう」シリーズの21冊目の今作では、ももんちゃんがしまうまの背中にのって、ひたすら「ぱかぱかぱかぱか ぱかぱかぱかぱか 」走っていくのです。途中で小川をとびこえて、「ぱかぱか」まっしぐらに向かった先には・・・小さな子どもたちにとって一番安心できる結末になっています。この絵本はクレヨンハウスにて1月18日(土)とよたかずひこさんの講座に参加した際に、予約していたものです。

 

 

 

『うさぎのバレエだん』石井睦美/文 南塚直子/絵 小学館 2020/3/8 (出版社サイト→こちら

1989年に安房直子さん作『うさぎのくれたバレエシューズ』(南塚直子/絵 小峰書店)の続編と帯に書かれています。1993年に亡くなられた安房直子さんに代わり、石井睦美さんがバレエが上手になりたい女の子の物語を創作、絵は31年前と同じ南塚直子さんが担当しています。バレエがなかなか上達せず先生に注意された女の子は、練習を抜け出します。すると大きな桜の木の下で上手にバレエを踊る男の子に出会います。別れ際に「こんや、さくらげきじょうで「うさぎのシンデレラ」っていうバレエをおどるんだ」と誘われます。夜、外に出てみると・・・バレエ好きな子どもたちに贈りたい絵本です。

 

 

 

『ブルーがはばたくとき』ブリッタ・テッケントラップ/作 三原泉/訳 BL出版 2020/3/10 (出版社サイト→こちら(BL出版トップページから書名検索で詳細ページを参照してください)

ブルーのことりは、ずっと森の奥深くにひとりぼっちでいました。長い間仲間と離れてひとりでいたので、空の飛び方も歌うことも忘れています。そんな時に一羽のことりイエローが現れます。そのとりがとぶと金色の光が広がり、枝にとまれば緑の葉っぱがめぶくのです。イエローはくらがりにいるブルーをみつけて、近づいていきます。最初はイエローのうたに気づかないブルーでしたが、とうとうブルーは心を開いて一緒に歌いはじめるのです。ドイツ人絵本作家による美しい色彩の絵本です。

 

 

『ねえさんの青いヒジャブ』イブティハージ・ハンマド&S・K・アリ/文 ハテム・アリ/絵 野坂悦子/訳 BL出版 2020/4/1 (出版社サイト→こちら(BL出版トップページから書名検索で詳細ページを参照してください)

イスラム教徒の女性が頭に着けるスカーフのことをヒジャブといいます。信仰によって人前で髪の毛や肌を露出しないように被ります。身に着けるタイミングは初潮を迎えるころからということですが、厳密には決まってなく国や環境によるそうです。この絵本の女の子はアメリカに住んでいます。ねえさんが海のように真っ青なヒジャブを身に着けて学校に行く日、妹は誇らしげについていきます。しかし陰で笑う人がいたり、心無い言葉を投げつける男の子がいたりと、少数派への差別の目を感じることになります。そんな中ねえさんは凛としています。この絵本を通して、作者はひとりひとりに尊厳があり、信念を貫くことの大切さを伝えてくれています。

 

 

『サンゴのもり』きむらだいすけ/作 イマジネイション・プラス 2020/4 (出版社サイト→こちら

サンゴのもりにすむ海の仲間たちは、みんな個性的です。色も形も性格もみんな違っています。みんなと同じ行動が出来なくてはみ出てしまうことがあったり、落ち着きがなかったりしますが、お互いにその違いを認め合って、助け合っています。この絵本を作ったきむらだいすけさんは、ひとりひとりの存在を大切にしてほしいと語っています。誰もが欠点はもっているとしても、この世に存在していくことが尊いのです。お互いの良さを生かし合い、リスペクトする社会であってほしいと思います。繰り返し読んでもらっているうちに、そんな大切なメッセージも伝わってくるといいなと思います。

 

 

『ひとはなくもの』みやのすみれ/作 やべみつのり/絵 こぐま社 2020/5/5 (出版社サイト→こちら

この絵本を作ったのは、今年3月に中学を卒業したばかりのみやのすみれさん。絵本作家やべみつのりさんのお孫さんです。すみれさんが小学校1年生の時に作った紙芝居がもとになっています。しゅくだいを忘れ叱られて泣く、転んで泣く、飼い猫が死んで泣く、けんかして泣く、ゲームで負けて泣く、とにかくいろんな時に泣くとお母さんに「泣く子はきらい」と言われてしまいます。でも「泣くことは子どもが自分の気持ちをコントロールするための修行。だから大丈夫、ちゃんと成長しているんだな」と思ってほしいとすみれさんは言います。「いまの社会では、泣くこと=悪い、みっともないこと、弱い奴が泣くんだ、みたいな雰囲気がある気がします。でも私は、泣くことは人間にとって必要なこと」で、心を浄化し、成長させていくために大切だと、素直に伝えてくれています。

 

 

 

【児童書】

『名探偵カッレ 地主館の罠』アストリッド・リンドグレーン/作 菱木晃子/訳 平澤朋子/絵 岩波書店 2020/4/15 (出版社サイト→こちら

『名探偵カッレくん」シリーズの新訳の2冊目です。菱木晃子さんの訳で平澤朋子さんの挿絵のものは、『名探偵カッレ 夏休みが城跡の謎』が昨年9月に出版されています。
夏休みが来て、カッレ君とエヴァロッタ、アンデッシュたち白バラ軍の仲間は赤バラ軍のシックステンたちと、〈聖像〉を奪い合うバラ戦争という遊びに明け暮れていました。町はずれにある大草原(プレーリー)と呼ばれる町はずれの公用地と、そこに建つ朽ち果てかけた地主館は格好の彼らの遊び場でした。
ある日、エヴァロッタは〈聖像〉の隠し場所を変えようとしてひとり地主館の近くを訪れて殺人事件に遭遇してしまいます。唯一の目撃者としてエヴァロッタに危険が迫る中、カッレの名探偵ならではの推理が事件を解決に導いていきます。ドキドキハラハラする展開に、一気に読み進めてしまうでしょう。そして最後はエヴァロッタの父でパン職人のリサンデル氏の焼いたシナモンロールが登場。そこでホッと一息つくこと間違いなしです。

 

 

 

【ノンフィクション】

『みんなの園芸店 春夏秋冬を楽しむ庭づくり』大野八生/著 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→こちら

造園家でイラストレーターの大野八生さんによる庭づくり指南書です。出版予告を見た時は、科学絵本かと思っていましたが、ずっしりと重い実用書です。しかし、家族でいっしょに花や果実、野菜を育てられるよう、イラストつきの詳しい解説があり、初心者にもとてもわかりやすいです。普段の忙しい生活の中で、見逃していた自然の変化に目を留めて感じる‛センス・オブ・ワンダー’に溢れています。一家に一冊あってもよい本ではないでしょうか。大野八生さんの作品は、ほかに『盆栽えほん』(あすなろ書房 2013)、『ハーブをたのしむ絵本』(あすなろ書房 2016)などがあります。また『かわいいゴキブリのおんなの子メイベルのぼうけん』(ケイティ・スペック/文 おびかゆうこ/訳 福音館書店 2013)、『かわいいゴキブリのおんなの子メイベルとゆめのケーキ』(ケイティ・スペック/文 おびかゆうこ/訳 福音館書店 2017)、『草木とみた夢 牧野富太郎ものがたり』(谷本雄治/文 出版ワークス 2019)などの挿絵も手掛けています。

 

 

『13歳からの天皇制 憲法の仕組みに照らして考えよう』堀新/著 かもがわ出版 2020/2/25 (出版社サイト→こちら

昨年は天皇の代替わりがあり平成の世は令和へとなりました。昨年11月の即位パレードは印象に残っていると思います。しかし「天皇」とはなにか、「天皇制」とは何かを、きちんと説明できる人は少ないと思います。こちらの本では、「天皇制とは何か」を改めて定義しなおすところから始めて、憲法上の地位、国民との関係、さらに国民が憲法でどのような基本的人権を保障されているか、憲法の変遷について、丁寧に整理されています。順に読んでいくことで、天皇・皇室と憲法について理解を深めるとともに基本的人権とは何かについても学んでみることをお勧めします。

 

 

 

『小学生からの憲法入門 ほとんど憲法 上』木村草太/著 朝倉世界一/絵 河出書房新社 2020/2/28 (出版社サイト→こちら

 

この本は、毎日小学生新聞に2017年3月31日から翌2018年3月30日まで週1回連載された「ほとんど憲法」をまとめたものです。この企画は「子どもたちが読んで楽しめること」と「憲法についてよくわかること」の2つを目的で編集部から著者に提案されたとのことです。連載では毎月、お題を立ててお便りを送ってもらい、それに関係のある憲法の話をするという形で進められました。朝倉世界一さんによるマンガも読みやすく、子どもたちにわかりやすい憲法を学ぶ本になっています。

 

 

『小学生からの憲法入門 ほとんど憲法 下』木村草太/著 朝倉世界一/絵 河出書房新社 2020/2/28

 

上巻の続きです。2冊合わせて読んでほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

『読解力を身につける』村上慎一/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/3/19(出版社サイト→こちら

「読解力」とはどんな能力なのか、単に読むというだけなく、「聞くこと」はもちろん「話すこと」「書くこと」のベースにも大切な力であると、この本では述べられています。
「読解力」とは、言葉の表現者の意図を正確に読み取って、それを自分の言葉に置き換えて解釈することだという。そのためにとても大切になるのが「想像力」であるというのです。どのように「読解力」を鍛えていくのか、先生と生徒が対話する形で解明していきます。「評論」の読解、「実用的な文章」の読解、資料(グラフ)の読解、文学的な文章の読解などに分かれています。

 

 

 

『プラスチックモンスターをやっつけよう!きみが地球のためにできること』高田秀重/監修 クリハラタカシ/絵 クレヨンハウス編集部/編 クレヨンハウス 2020/4/10(出版社サイト→こちら

高度成長期に私たちの生活を豊かにしてくれると考えられて開発されてきたプラスチック製品。それが世界中の海にごみとして溢れ、環境を壊し、海洋生物や鳥たちの生命をも脅かしています。この本は、「きょうからできるプラスチックフリー!」として、私たちの生活の中にあるプラスチック製品を知って、それを使わないためにはどうすればよいかを、小さな子どもたちにもわかりやすく伝えてくれます。プラスチックをごみモンスターにしないためには、買わない、使わない、捨てないことが大切です。親子でひとつずつ確認しながら、減らすという意識を身に着けていくことが第一歩だと思います。

 

 

 

 

【その他】

エッセイ

『風と双眼鏡、膝掛け毛布』梨木果歩/著 筑摩書房 2020/3/20(出版社サイト→こちら

梨木果歩さんが日本中を旅して歩いたことを書いた旅のエッセー。タイトルの由来は、梨木さんが旅に出て「思い起こされる個人的な経験や、調べられる範囲で知り得た情報、知人の体験談、それこそ風が運んで来たような話、双眼鏡で鳥を観察しに行ったときの経験、カヤックを漕ぎに(浮かびに行くのである、ほんとうは。それで悠長に膝掛け毛布を使う)行った川や湖のこと。そういうとりとめのない、「地名」が自分に喚起するもろもろのゆるい括りとして」なんだそうです。ちょうどステイホームの期間に手にしたので、外出自粛が解除されたら旅に出たいなあと旅情を掻き立ててくれました。

 

 

 

 

講演録

『子ども・社会を考えるシリーズ 講演録 父の話をしましょうか~加古さんと松居さん~』鈴木万里(加古里子長女)・小風さち(松居直長女/講師 NPOブックスタート/編 NPOブックスタート 2020/3/31 (出版社サイト→こちら

2018年に亡くなられた絵本作家加古里子氏の長女鈴木万里さんと、『だるまちゃんとてんぐちゃん』などで絵本作家かこさとしの名前を世に知らしめた福音館書店こどものともの創刊者で福音館書店相談役の松居直氏の長女小風さちさんとの対談録です。どのような経緯で、こどものともで加古さんが絵本を描くことになったのか、絵本の黄金期といわれる1960年~70年代の絵本作りへの思いなどが、二人の絵本作りをそばでみつめてきた娘の視点から語られています。
作品への愛情だけでなく、偉業をなした親への敬意、そして日本中の子どもたちへの思いもまた熱いものがありました。

 

 

 

 

伝記

『絵本画家赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』赤羽茂乃/著 福音館書店 2020/4/25  (出版社サイト→こちら

スーホの白い馬』(大塚勇三/再話 福音館書店)や『かさじぞう』(瀬田貞二/再話 福音館書店)など長く読み継がれている作品がある絵本画家赤羽末吉氏の生誕110年を記念して、息子嫁である赤羽茂乃さんが10年以上の年月をかけて、末吉氏の足跡を歩き、資料を集めて検証しながら書いた伝記です。嫁という立場でそばで父の偉業を見守ってきた人ならではの温かい眼差しと愛情に裏打ちされ、またユーモラスなエピソードも満載で、550ページを超える大作ですが惹きつけられて読み進めました。今年は銀座・教文館ナルニア国やちひろ美術館・東京で赤羽末吉絵本原画展が開催される予定でしたが、それぞれ開催が延期になっています。赤羽末吉の絵本がなぜ子どもたちを惹きつけるのか、その意味が彼の人生を通して見えてきます。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

 

 

 

(作成K・J)

2020年2月、3月の新刊より(読み物・その他)


2020年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中から、今回は冊数が多いのでいくつかにわけて紹介します。1回めはグレタ・トゥーンベリについて書かれた本を紹介(→こちら)、2回目はその他のノンフィクション絵本を紹介(→こちら)、3回目は物語絵本を紹介(→こちら)しました。今回は読み物です。(一部12月、1月に出版されたものもあります)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【児童書】
幼年童話

『きれいずきのマグスおばさん』イーディス・サッチャー・ハード/文 クレメント・ハード/絵 小宮由/訳 大日本図書 2019/12/20 (出版社サイト→こちら

小宮由さんが「子どもたちがワクワクしながら、主人公や登場人物と心を重ね、うれしいこと、悲しいこと、楽しいこと、苦しいことを我がことのように体験し」てほしいと願って、海外の幼年童話を選りすぐって翻訳してくださっている「こころのほんばこ」シリーズ(→こちら)の1冊です。なにかに一生懸命になるあまり、他のことが抜けてしまうことってよくあります。スージーの家に来てくれる家政婦のマグスおばさんは、きれい好きなのはよいのですが、何かが少しでも汚れていると許せなくて他のことが目に入らなくなってしまいます。そんなマグスおばさんはスージーとの約束で動物園に出かけたのですが・・・自分で物語を読み始めた子どもたちにおすすめの1冊です。

 

 

 

 

『デイビッド・マックチーバーと29ひきの犬』マーガレット・ホルト/文 ウォルター・ロレイン/絵 小宮由/訳 大日本図書 2020/1/20 (出版社サイト→こちら

こちらも「こころのほんばこ」シリーズの1冊、最新刊です。ある町に引っ越してきたばかりのデイビッドは、おかあさんに頼まれて近くのスーパーマーケットに出かけました。頼まれた3種類のお肉などを買って帰ってくる途中、スーパーの紙袋に穴が開いてお肉が次々落っこちてしまいます。それに気がついたデイビットが拾いに戻るたびに犬がたくさんついてきます。その様子を見た町の人たちはパレードだと勘違い。どんどんパレードに加わり、しまいにはブラスバントの人たちも入って町を練り歩くことに。デイビッドが家に帰るころには、デイビッドは町の有名人になっていたという、楽しいお話です。自分で読み始めた子どもたちにおすすめです。

 

 

 

 

 

YA向け

『窓』小手鞠るい/作 小学館 2020/2/9 (出版社サイト→こちら

アメリカ駐在中に自分でやりたいことをみつけ、父親と離婚してアメリカに残った母の遺品であるノートを受けとった中学生の窓香の心の成長を描く作品です。母が亡くなったと知って1年ほど経って届いたそのノートには、母が会えなくなった娘を思って綴った手紙が記されていました。母は自分の人生を生きるためにジャーナリストを目指してアメリカで学び、世界へと目が開かれルワンダやシリアなどの難民キャンプで子どもたちを支援する活動を始めていました。窓香はその手紙を通して、日本で生活していると意識せずに済むけれども、世界のあちこちで戦争が起きて、命が脅かされている子どもたちがいるという事実を知っていきます。そして「中学生の主張」のグループ発表のテーマとして「戦争と子ども」を提案します。母への複雑な想いを乗り越え、自らも広い世界を見ようとする窓香の姿はとても爽やかです。

 

 

 

 

【エッセイ】

『暇なんかないわ 大切なことを 考えるのに 忙しくて ル⁼グウィンのエッセイ』アーシュラ・K・ル⁼グウィン/著 谷垣暁美/訳 河出書房新社 (出版社サイト→こちら

2018年1月22日に88歳で亡くなったアメリカのファンタジー作家アーシュラ・K・ル=グウィンさん(訃報記事→こちら)が、晩年2010年10月から2017年9月まで書き記していたブログ記事より、選りすぐりの41篇をまとめたエッセイ集です。タイトルの『暇なんかないわ 大切なことを 考えるのに 忙しくて』は、ハーバード大学1951年卒業クラスの60年目の同窓会を前にして送られてきたアンケートへの彼女の答えです。その経緯は冒頭のエッセイ「余暇には何を」に書かれています。老いを自覚し、自分の生き方を振返り、人類の行く末も見据えた痛快な言葉は、読んでいて胸のすく思いがします。「自分自身の子どもたちが幼かったころにはまだ、私たち人類が子どもたちのための環境を全面的に破壊するとは限らないという希望がもてた。だが、私たちがそれをやらかしてしまい、目先の利潤を追求する産業主義に、ますます卑屈にひれふしている今、来るべき世代が人生でくつろぎと安らぎを得られるという希望はあまりにもか細く、それにすがるのは、道もない暗闇の中を長く進んでいくことだ。」(「余暇には何を」p18)と、未来を憂い、「空腹のノートルダム大聖堂」という記事の中では、「天は自ら助くる者を助くと彼らは言い、貧しい者や失業者は、過保護な政府に寄生する無能な怠け者に過ぎないとのたまう。貧困があることを否定しないが、貧困について知りたがらない人たちがいる。あまりにひどすぎる状況だし、どうせ自分には何もできないし、と言うのだ。そして、手を差し伸べる人たちがいる。」(p230)と述べ、貧困に直面している人々への温かな眼差しを向けています。ひとつひとつのエッセイは、その時々に感じたことを素直に書き記したブログだからこそ、解説者カレン・ジョイ・ファウラーは「ふだん着のル=グウィン、自宅でくつろいでいるル=グウィン」としての魅力があるとしています。『ゲド戦記』など物語の世界を創造して読者をそこへ引き込んでいく作品とは違う、晩年のル=グウィンの素顔にこのエッセイを通して触れてみるのもよいでしょう。

 

 

『人生の1冊の絵本』柳田邦男/著 岩波新書 岩波書店 2020/2/27 (出版社サイト→こちら

かねてより「大人こそ絵本を」、「絵本は人生に三度(幼少期、子育て期、中高年期)」、「大人の気づき、子どものこころの発達」ということを呼びかけてこられたノンフィクション作家柳田邦男氏の絵本紹介エッセイ。この本の中では、「1.こころの転機」「2.こころのかたち」「3.子どもの感性」「4.無垢な時間」「5.笑いも悲しみもあって」「6.木は見ている」「7.星よ月よ」「8.祈りの灯」というテーマで150冊の絵本が紹介されています。長く読み継がれた名作と呼ばれる絵本だけではなく、ここ数年の間に出版された新しい絵本も多く紹介されており、見落としていた作品はすぐにでも読みたくなります。「絵本は、子どもが読んで理解できるだけでなく、大人が自らの人生経験やこころにかかえている問題を重ねてじっくり読むと、小説などとは違う独特の深い味わいがあることがわかってくる。」とは著者によるあとがきの言葉(p336)は、深く頷くところです。ぜひ多くの人にこのエッセイを読んでいただき、そこに紹介されている絵本も手に取ってほしいと思います。

(作成K・J)

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