Tag Archive for 新刊紹介

NetGalley活用のおすすめ
2020年5月、6月の新刊から(読み物、その他)
教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナー
2020年5月、6月の新刊から(絵本)
2020年4月、5月の新刊から
2020年3月、4月の新刊より
2020年2月、3月の新刊より(読み物・その他)
2020年2月、3月の新刊より(物語絵本・詩の絵本)
2020年2月、3月の新刊より(2)ノンフィクション絵本(3/13追加有)
2020年2月、3月の新刊から(1)グレタ・トゥーンベリさんの本
2019年12月、2020年1月の新刊から(追記あり)
2019年11月、12月の新刊から(その2)読み物ほか
2019年11月、12月の新刊から(その1)絵本
2019年9月、10月の新刊から
2019年7月、8月、9月の新刊から(その2)読み物ほか

NetGalley活用のおすすめ


株式会社メディアドゥが提供するサービスNetGalleyをご存知ですか?

 

 

NetGalleyとは、アメリカで誕生した本を応援するWEBツールです。

 

 

 

公式サイトの「NetGalley(ネットギャリー)とは」には、以下のように書かれています。

「NetGalley(ネットギャリー)は、アメリカで誕生した本を応援するWEBツールです。出版社が掲載する作品を、登録会員は各出版社の承認にもとづいて読むことができます。
 出版社は刊行前の作品のゲラやプルーフ本をデジタル化させることで、安価で迅速に、そしてより多くの関係者に本の情報を提供することができます。ゲラ読み読者となる会員は、書店関係者、図書館関係者、教育関係者、メディア関係者、レビュアーの5タイプから本業にあったものをお選びいただきます。レビュアーとは、出版業界ではない他業界の方、または読んだ本にレビューをお返しするモニター読者を表します。
 NetGalleyは、出版に関するテクノロジー、サービス、ソリューションを提供するリーディングカンパニーFirebrand Technologiesの一部門です。日本では 株式会社メディアドゥがこのサービスを提供しています。」

図書館で本を選定するためのいち早い情報を得ることも出来ますし、またレビューを書いて投稿することで作家と出版社を応援することも出来ます。レビューを送信すれば、出版社に直接送られます。そのレビューが「本の帯」などに採用されることもあるとのこと。レビューの腕をブラッシュアップさせるためにも、登録してレビューしてみましょう。

 

ぜひ、登録し、活用してみてください。なお、画像等はNetGallyよりご提供いただきました。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(作成K・J)

2020年5月、6月の新刊から(読み物、その他)


7月2日に「2020年5月、6月の新刊から(絵本)」(→こちら)を紹介してから、期間が開いてしまいましたが、読み物を紹介いたします。なお、4月、5月には書店が休業していた関係で、それ以前に出版された本も含まれています。

こちらの本は、銀座教文館ナルニア国と横浜日吉のともだち書店に注文して送付していただき、読み終わって記事を作成しています。

また、書影は各出版社の許諾要件に従って使用しています。

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【児童書】
《児童文学》

『ケルトとローマの息子』(新版)ローズマリー・サトクリフ/作 灰島かり/訳 ほるぷ出版 2020/2/20 (出版社サイト→こちら

英国を代表する歴史小説家、ローズマリー・サトクリフの読み応えのある作品で2000年に出版されたものの新版です。翻訳者は2016年に早世された灰島かりさんです。
舞台は2世紀前半のブリトン島とローマ帝国です。ケルトの部族社会ドゥムノニー族の中で育てられたべリックは、実は海で遭難したローマ人の遺児。育ての親や部族の長老によって十五歳の成人の儀式も受けることが出来ました。しかし、その後天候不良と疫病の流行が部族の暮らしを襲うと、異国の血がこの地に災いをもたらしているとして部族を追放されることになります。ローマ軍前線の街に赴いたべリックは騙されて奴隷としてローマへ連れていかれます。そこから始まる過酷な運命は、読んでいて胸が苦しくなるほどです。しかしべリックは持ち前の聡明さと勇気をもって、その人生を切り拓いていくのです。先が見えない現代だからこそ、時代の流れに翻弄されつつも、希望を捨てなかったべリックの生き方は私たちにかすかな光明をもたらしてくれると思います。

 

 

 

『夜明けの風』(新版) ローズマリー・サトクリフ/作 灰島かり/訳 ほるぷ出版 2020/3/20  (出版社サイト→こちら

こちらもローズマリー・サトクリフの歴史小説です。時代は『ケルトとローマの息子』から進んだ6世紀後半で、ローマ軍団が去ったブリテン島が舞台となっています。
当時のブリテン島はローマ文明を受け継いだケルト部族であるブリトン人と、侵入者であるサクソン人とのし烈な戦いが続いていました。
主人公オウェインはブリトン人で、ブリトン人とサクソン人との最後の大掛かりな戦いでひとり生き残った少年です。
一緒に参戦した父と兄を亡くし、北へ逃れる道中で同じようにひとり生き残った少女と出会います。大陸へ逃亡する旅の途中で少女が病気になったことからオウェインはサクソン人に少女レジナを託し、自分は奴隷として生きる道を選びます。
聡明なオウェインは、雇い主の信頼を得、のちの戦で彼を救ったことで自由の身になります。物語の後半ではローマ教皇グレゴリウス1世の命を受けてイギリスに布教のために遣わされ、のちにカンタベリー大司教となるアウグスティヌスの到着とケント王エゼルベルフトによる歓迎という実際にあった歴史上の出来事も描かれています。
時代に翻弄され、支配者たちの争いに巻き込まれていく庶民が、実は時代を作ってきたのだと読んでいて感じました。今、私たちもコロナ禍により先の見えない時代に生きていますが、こうした歴史小説を読むことは、生きる力を与えてくれるのではないでしょうか。若い世代にぜひ読んでほしいと思います。

 

 

 

『王の祭り』小川英子/作 ゴブリン書房 2020/4 (出版社サイト→こちら

 

16世紀、イングランド王国ではエリザベス1世が女王として統治していました。同じ頃、日本では信長が戦国時代の覇者として君臨しようとしていました。
物語は、信長が長篠・設楽原の合戦に勝利したことを朝廷に報告するために京の明智光秀の屋敷に滞在しているところから始まります。そこに訪ねてきた伴天連の宣教師から、信長は地球儀を見せられヨーロッパ大陸の果てにある島国がイングランド王国であること、そこには16年間在位を続けている女王がいることを聞くのです。
舞台は変わって、イングランド王国ではエリザベス女王を密かに暗殺しようとするものがいたのです。
革職人の息子ウィルは、ある夜家を飛び出して暗い森を歩いているときに妖精を捕まえます。そのウィルは妖精に「エリザベス女王がいる間にケニルワース城へ行きたい」と願うのです。伯爵の依頼で父が献上する女王の手袋を持っていくことになったウィルは、刺客に狙われた女王とともに妖精の力で時空を越えて戦国時代の安土桃山城へ降り立ちます。信長は大喜びで絢爛豪華な城をエリザベス女王に案内し、帰国を望む女王たちを京へ送って本能寺に出向いたそのさ中に、明智光秀に襲撃されます。まさに「〈時〉と〈処〉を超えて繰り広げられる壮大な歴史ファンタジー」、その後どのようにして女王とウィルがイングランドに戻るのかも、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

 

《ノンフィクション》

『有権者って誰?』藪野祐三/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/4/17 (出版社サイト→こちら

2015年に選挙権年齢が満18歳に引き下げられましたが、20歳以下、および20歳代の投票率の低さが目立っています。
この本では、「どうせ、ぼくの、わたしの1票で政治は変わらない」という意識を、無理やり変えようとするのではなく、まずは「さまざまな有権者がいるという事実」を伝えていこうとしています。
若い世代の人の問題だけではなく、公共性に対する権利と義務をもっているという市民性の問題として、広く訴えています。
作者は、その市民性を身につけるために、まず自分の「無知」に気づくこと、異文化との交流を勧めています。そうすることによって、選挙の重要性を理解し、有権者としての自覚が生まれるとの指摘に、私自身もさまざまな気づきを与えられました。親子で読むのもいいですね。中高生にもわかりやすい言葉で、グラフや図表を用いて書かれています。

 

 

 

『チョウはなぜ飛ぶか』日高敏隆/著 岩波少年文庫 岩波書店 2020/5/15(出版社サイト→こちら

この本には、動物行動学者日高敏隆さん(1930-2009)が1975年に著した岩波科学の本16『チョウはなぜ飛ぶか』と、エッセイ「思っていたこと  思っていること」(『動物は何を見ているか』2013年 青土社)、「今なぜナチュラル・ヒストリーか?」(『ぼくの世界博物誌』2006年 玉川大学出版部)が収められています。
日高さんの蝶の研究は、小学生の時にアゲハ蝶を捕まえようと観察していて「チョウの飛ぶ道はきまっているのだろうか?」という疑問を持ったことに始まります。「その当時、春の最初のアゲハが去年の春と同じ道を飛ぶのには、きっとなにか、それなりのわけがあると考えた」ことが、その後の研究へとつながっています。この夏も多くの子どもたちが夏の自由研究などの資料を探しに図書館を利用することと思います。幼い時の小さな疑問が、大きな研究の業績に繋がることを考えると、そこでどんな資料を手渡すかがとても重要になるなあと思いました。岩波少年文庫にするにあたり、『しでむし』(2009年 偕成社)などの作品がある絵本画家舘野鴻さんが表紙絵を描き、「「なぜ」の発見」という一文を載せています。小学校高学年以上であれば読めるようになっています。ぜひ昆虫好きな子どもたちに手渡してください。

 

 

 

『議会制民主主義の活かし方 未来を選ぶために』糠塚康江/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/5/27 (出版社サイト→こちら)

こちらの岩波ジュニア新書も、『有権者って誰?』と同じように、若い世代に向けて書かれています。議会制民主主義の歴史を紐解き、現在の選挙制度についてわかりやすく解説しています。また現在の国会の形骸化、政権への忖度や、統計や文書の改ざん問題などにも言及しています。
作者は、3月末まで大学教授として憲法学などを教えていました。新型コロナウイルス感染症対策における政治の迷走などについても、あとがきで触れつつ、これからの時代を生きる私たちに、有権者として、国民として何が必要であるかを語りかけてくれています。
この本はUDフォントが使用されており、誰もが読みやすい配慮もされています。

 

 

 

 

 

 

【その他研究書など】

『新装版 私の絵本ろん 中・高校生のための絵本入門』赤羽末吉/著 平凡社 2020/5/8 (出版社サイト→こちら

今年は赤羽末吉生誕110周年で、ロングセラー『かさじぞう』が生まれて60年になる節目の年として、赤羽末吉が描いた絵本なども多く復刊されています。
また各地で行われる予定だった「赤羽末吉原画展」(多くは2021年に延期されています)に合わせて、赤羽末吉の研究書なども復刊されています。こちらは、1983年に偕成社から出版され、2005年に平凡社ライブラリーに収録された赤羽末吉のエッセイの新装復刻版です。
赤羽末吉の絵本創作にかける思いや、『そら、にげろ』、『へそとりごろべえ』、『つるにょうぼう』など12冊の絵本の制作過程、紀行などからなっている読み応えのあるエッセイになっています。
4月に『絵本作家赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』(福音館書店)を上梓した義理の娘の赤羽茂乃さんが「新装版に寄せて―赤羽末吉への扉」という一文を寄せています。文庫版で手に取りやすい1冊です。
なお、生誕100年の記念に出版された『画集 赤羽末吉の絵本』(2010年 講談社)が増刷発行されています。こちらも併せて再読してほしいと思います。(所蔵してない図書館は購入するチャンスです)

 

 

 

 

『年齢別!子育てママ&パパの頼れる絵本193』遠藤裕美/監修 ユーキャン学び出版/自由国民社 2020/5/27 (出版社サイト→こちら

 

現役保育士で絵本講師(NPO法人絵本で子育てセンター認定)の資格を持つ遠藤裕美さんが執筆、監修した0~6歳の子ども向けの絵本ガイドブックです。それぞれの年齢の子どもたちの発達の特性が書かれ、またひとつひとつのテーマごとに「育児アドバイス」がついていて、子育て中のママ&パパには頼りになる1冊になっています。
この本の編集を担当された坂田さんが「新刊JP」のインタビューに答えている記事(→こちら)もぜひご覧になってください。このガイドブックの特徴とおすすめポイントがよくわかると思います。

 

 

 

(作成K・J)

教文館ナルニア国の「きになる新刊」コーナー


いつも私が児童書の新刊をチェックするために定期的に足を運び、さまざまな情報をいただいている銀座の老舗書店・教文館の児童書専門店、ナルニア国が6月より公式サイト上に「きになる新刊」コーナーの掲載を始めました。

教文館ナルニア国「きになる新刊」コーナー

 

「きになる新刊」は毎週火曜日に更新されます。

 

以前、ナルニア国から発信されていた新刊案内メルマガとは違って、すべての本を読んだ上でお薦めするという性質のものとは違うとのことです。

しかし長年培われてきた児童書を見る目を通しての「きになる新刊」は、それこそ気になりますね。ぜひチェックしてみてください。

 

また同じコーナーに「本日入荷の最新刊」も掲載されています。こちらは入荷日に掲載されます。また「学校図書館・文庫の選書リストにオススメの新刊」も、随時発信されるとのこと。選書の心強い味方になってくれそうですね。

 

なお、「本のこまど」での新刊情報も、緩やかに今後も続けていきますが、これからは「これは絶対お薦めしたい」という本に絞っていこうと思っています。

「5、6月の新刊から」は近々公開いたします。お楽しみに。

(作成K・J)

2020年5月、6月の新刊から(絵本)


緊急事態宣言が解除されたので、6月初めにさっそく銀座にある子どもの本専門店銀座教文館ナルニア国へ選書に行ってきました。加えて横浜・日吉のともだち書店からも、お薦めの本を送っていただきました。それらを全冊読んだうえで、今回は絵本とそれ以外のものとを分けて、みなさまに紹介いたします。

また、3月~5月は実際に書店へ足を運べず、見落としていた本もありました。今回紹介する中には、見落としていた3月~4月に発行されたものもあります。

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

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【絵本】

『自転車ものがたり』高頭祥八/文・絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2020/3/5(出版社のサイト→こちら

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」1996年7月号のハードカバー版で、2016年4月に第1刷が出版されていましたが、この度増刷されました。限定復刊です。購入はお早めに。
子ども達にとって一番身近な自転車の歴史や、動く仕組みなどを詳しい図解などを通して伝えてくれます。
馬車などから始まった速く遠くへ走っていく乗り物のうち、自転車は自動車よりも50年遅いものでした。しかし、ほかの乗り物がスピードの速さを求めて大きく重くなり、その分たくさんのエネルギーを使って騒音や大気汚染を引き起こすのに対して、自転車は軽くてもしっかりと荷物も運べるし、何よりエネルギーは乗る人の足の力だけで環境に優しい乗り物です。
子ども達から大人まで誰もが乗れる乗り物であるからこそ、交通ルールを守って安全に乗ることの大切さも伝えてくれています。

 

 

『もぐらのモリス』ダン・ヤッカリーノ/絵・文 青山南となかまたち/訳 カクイチ研究所 2020/3/25(出版社のサイト→こちら

 

もぐらのモリスは、はたらきもののおにいさんたちといっしょに過ごしていましたが、体は一番小さく、またみんなとは違う考えを持っていました。
たべるものが無くなった時、おにいさんたちは、もっと深く掘ることを決めますが、モリスだけは上に向かって掘り進みます。地上に出てくると地下では見たことのない世界が広がっています。きつねに襲われそうになりますが、機転を利かせて逆にきつねを救います。そして地上からたくさんの美味しいお土産を持ち帰るモリス。人と違う視点を持つことも大切なんだと、励ましてくれているようです。

 

 

 

 

『もっと かぞえてみよう』ディック・ブルーナ/文・絵 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

2018年2月に出版されたディック・ブルーナの『かぞえてみよう』(→こちら)、『わたしたしざんできるの』(→こちら)と合わせて「こどもがはじめてであう絵本かず」のセットとして組まれることになった絵本です。
『かぞえてみよう』が1~12までの数(1ダース)だったので、こちらでは13から24まで色鮮やかな絵とともに数を数えていきます。
小さな子どもたちにとっては「たくさん」が具体的な数として認識できることは大きな発見であり、喜びに繋がります。

 

 

 

『とんでいく』風木一人/作 岡崎立/絵 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

左から右へ飛んでいくのは猛禽のタカ、右から左へ飛んでいくのはガン。タカの声は緑で印字され、ガンは赤で印字されています。でも絵はひとつだけ。どういうこと?と思われるでしょう。同じ黒い鳥のシルエットが、左から読んでいくとタカに見え、右から見るとガンに見えるという、しかけのないしかけ絵本なんです。同じシーンでふたつのお話、ぜひ手に取って楽しんでほしいなと思います。

 

 

 

『かなへび』竹中践/文 石森愛彦/絵 かがくのとも絵本 福音館書店 2020/4/5(出版社のサイト→こちら

 

福音館書店月刊誌かがくのとも2015年5月号のハードカバーです。庭や草むらでよく見つけられるかなへび。小さな子どもたちにとっては一番身近な爬虫類ですね。そのかなへびの暮らしを小さな子どもたちにもわかりやすく教えてくれる1冊です。幼いころにかなへびを捕まえたのに、しっぽを切り落として逃げられた時の驚きは数十年経っても忘れられないものです。身近な生命への畏敬を伝えてあげたいですね。

 

 

 

 

『かぞえてみよう どうぶつスポーツたいかい』ヴィルジニー・モルガン/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店 2020/4/7(出版社のサイト→こちら

 

どうぶつたちのスポーツ大会がはじまります!「ゆうしょうかっぷはつだけ」「かいふえがなったらたいかいがはじまるよ」と、おはなしのなかに数字が1~20~1と盛り込まれて、「ぎんメダルはぜんぶでつ」「きんメダルはつ」「ぼくたちみんなのこころはつ ワンチーム!」で終わる楽しいお話です。
色もはっきりと鮮やか、うさぎにペンギン、チーターにピューマ、カンガルーにキリン、あしかにさるにくま、ワニにいぬと、子どもたちの大好きなどうぶつたちもたくさん登場します。小さな子どもから大きな子たちまで幅広く楽しめることでしょう。

 

 

 

『空を飛びたくなったら』ジュリー・フォリアーノ/文 クリスチャン・ロビンソン/絵 田中一明/訳 カクイチ研究所 2020/4/24(出版社のサイト→こちら

 

子どもたちに想像してみることの楽しさと広がりを、教えてくれる絵本です。子どもたちにとって世界は、知りたいことで溢れています。いろいろなものに触れ、たくさんのことばを聞き、やってみる。そんな日々を、温かく見守ってくれるおとながそばにいてくれたら、怖いものはありません。日々、ぼうけんをしながら学んでいくことができます。
この絵本の絵は『おばあちゃんとバスにのって』(マット・デ・ラ・ベーニャ/文 石津ちひろ/訳 鈴木出版→こちら)でコールデコット賞とニューベリー賞を、『がっこうだってどきどきしてる』(アダム・レックス/文 なかがわちひろ/訳 WAVE出版→こちら)で七つ星の書評を受けたクリスチャン・ロビンソンが描いています。文章はエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞しているジュリー・フィリアーノが書いています。

 

 

『うりこひめとあまんじゃく』堀尾青史/文 赤羽末吉/絵 BL出版 2020/5/1(→こちら

 

赤羽末吉生誕110年を記念して、昨年から今年にかけて続々と赤羽末吉が描いた絵本が復刊されています。この絵本も1976年にフレーベル館から出版されていたものが、新たにBL出版から復刊されました。
川上から流れてきた桃から桃太郎が生まれるのはよく知られた昔話ですが、同様に川上からうりが流れてきて中からうりこひめが生まれたという昔話は、誰もが知っているポピュラーなものではないかもしれません。あまんじゃくの、なんとも憎めない悪さと合わせて、子どもたちに伝えていきたい昔話です。

 

 

 

 

『おばけのジョージ― とびだしたけいとだま』ロバート・ブライト/作 こみやゆう/訳 好学社(出版社のサイト→こちら) 

 

心優しいちいさなおばけのジョージ―のおはなしです。(『おばけのジョージ― こまどりをたすける』(→こちら)は「本のこまど」2019年11月、12月の新刊からで紹介しました→こちら)心温まるエピソードです。近所に住む女の子ジェイニーが転んで木の根っこにある穴にけいと玉を落としたことをてんとうむしから聞いたジョージ―はふくろうのオリバーとねこのハーマンに声をかけて助けに行きます。ジェイニーが泣き疲れて眠っている間にうさぎたちに頼んでけいと玉を拾ってきてもらい、オリバーがそっとカゴに入れ、ハーマンが鳴いて起こします。まさかジョージ―たちが助けてくれたと知らないジェイニーは「けいとだまをなくしたゆめをみたんだ」と元気にかけ出していくのです。ホッと心が温まるお話です。

 

 

『けんけんぱっ』にごまりこ/作 0.1.2えほん 福音館書店 2020/5/15(出版社のサイト→こちら

かたあし飛びで「けんけんぱっ」、ねこが跳ぶと、いぬもくまも、そしてりすもぞうもやってきて「けんけんぱっ」、最後はみんな楽しくなって、「けんけん ぱっぱっぱー」と跳び上がって遊びます。福音館書店月刊誌「こどものとも0.1.2」2016年2月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

『こぶたのプーちゃん』本田いづみ/文 さとうあや/絵 福音館書店 2020/5/15(出版社のサイト→こちら

こぶたのプーちゃんは好奇心旺盛。ぬかるみを見ると飛び込んでどろおばけに、そしてほしくさの山にそのままダイブ、もじゃもじゃおばけになってしまいます。そのうえ、たんぽぽの綿毛も体中にくっつけて遊ぶので、ふわふわおばけになります。でも、そんなプーちゃんをおかあさんがみつけると、川に連れて行ってきれいに洗ってくれました。いたずらが大好きな年代の子どもたちに読んであげたい1冊です。福音館書店月刊誌「こどものとも年少版」の2014年4月号のハードカバーです。

 

 

 

『えほんなぞなぞうた』谷川俊太郎/文 あべ弘士/絵 童話屋 2020/5/18(出版社のサイト→こちら

 

Q「ブレーキかけてもとまらない バックもできない まがれない なのにむじこでやすまずはたらく」A「じかん」
ページ1枚になぞなぞが描かれ、その裏側に答えが描かれています。

通しで読んでも楽しいし、おはなし会の導入に、ひとつふたつ選んで子どもたちになぞなぞをしてもいいですね。谷川さんのしゃれたなぞかけは大人が読んでも楽しくなります。

 

 

 

 

 

『語りかけ絵本 えだまめ』こがようこ/文・絵 大日本図書 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

こがようこさんの語りかけ絵本シリーズの最新刊です。(語りかけ絵本シリーズ→こちら
夏の間、食卓に並ぶえだまめ、小さな子どもたちにとってはさやを押して中からピュッ!と出てくるえだまめ、出すだけでも楽しいですよね。それを「ピュッ!パクッ!パクッ!」とリズミカルに繰り返されて、夢中になることでしょう。「おはなし会プラン2020年8月小さい子向け」でも、紹介しています。(→こちら

 

 

 

 

『わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話』鈴木海花/文 はたこうしろう/絵 たくさんのふしぎ傑作集 福音館書店 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2016年11月号のハードカバーです。岩手県葛巻町立江刈小学校で実際にあったお話が絵本になっています。カメムシって臭いにおいを出すやっかいものだと考えられていましたが、ある時、校長先生がカメムシにもいろんな種類があること、それを調べてカメムシ博士になろうと呼びかけたのです。子どもたちが興味を持って調べ始めるといろいろな種類があることがわかり、独自の「カメムシずかん」を作るようになります。子どもたちが見つけたカメムシの名前がほんとうに正しいか確認するためにカメムシを専門に研究する人たちにも葛巻町に来てもらって一緒に研究するようになります。まさに「やっかいものが宝物になった」おはなしです。夏の自由研究の導入に子どもたちに紹介したい1冊です。

 

 

 

『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』石川直樹/文 梨木羊/絵 岩波書店 2020/5/28(出版社のサイト→こちら

 

世界中の登山家が憧れる世界一の山エベレスト。そこへの登頂はニュースになるほどで簡単なことではありません。近年は年間800人が登頂に挑むなど、エベレストを目指す人が増えていますが、その陰には土地を知り、また荷物を運んでくれるシェルパの存在があります。この絵本では、シェルパになったばかりのポルパの初めてのエベレスト山頂登山の様子が描かれています。山頂から眺める景色に感動の涙を流すポルパの姿は読む者の心を打ちます。彼らのような山岳民族のおかげで華々しい登山隊の活躍があることを多くの人に知ってほしいと、写真家の石川さんがこの絵本を作られました。

 

 

 

 

『ジュリアンはマーメイド』ジェシカ・ラブ/作 横山和江/訳 サウザンブックス社 2020/5/20(出版社のサイト→こちら

 

ジュリアンは男の子だけれど、マーメイドが大好きです。ある日、プールに出かけた帰りの電車でマーメイドに扮した人たちに出会います。ジュリアンは自分もあんな風になりたいなあと想像を広げます。そして帰宅するとレースのカーテンやお花などでマーメイドに扮装するのです。それを見たおばあちゃん、止めるのではなく、ジュリアンにネックレスをかけてくれて一緒にマーメイドパレードに連れ出してくれました。このパレードはニューヨーク、コニーアイランドで毎年開かれるお祭りで(→こちら)昨年で37回になったそうです。この絵本はLGBTQを考える絵本としてクラウドファンディングで作成されました。自分がなりたいものになる、それを認めることがとても大切だということを教えてくれる絵本です。絵本の中のおばあちゃんたちもとてもグラマーでありのまま描かれています。表紙とカバーの絵が違っているので、ブッカーのかけ方に悩んでしまうかもしれません。

 

 

『はかせのふしぎなプール』中村至男/作 こどものとも傑作集 福音館書店 2020/6/5(出版社のサイト→こちら

 

はかせは、なんでも大きくなってしまうプールを発明します。プールの中から出てくるのは・・・読んできかせれば、ちょっとした形当てクイズになる面白さです。そして、最後にははかせまでそのプールに入ったのはよいのですが、元の大きさに戻すプールは発明してなくて、「おーい、じょしゅくん!もとにもどるプールをはつめいしてくれー」と叫ぶところ、なんともお茶目なはかせです。福音館書店月刊誌「こどものとも」2015年9月号のハードカバーです。

 

 

 

 

 

『こどもたちはまっている』荒井良二/作 亜紀書房 2020/6/17(出版社のサイト→こちら

 

「こどもたちはまっている」、ある時はふねが通るのを、ある時はかもつれっしゃが通るのを、ある時は雨上がりだったり、お祝いの日だったり、夕焼けだったり。何かを待つ、楽しみにするということは、生きていくうえでの希望に繋がっています。子どもたちにとって未来への希望、待っていることはたくさんあるわけで、おとなたちはそれを決して裏切ってはいけないなと、この絵本を読んでいて強く感じました。

 

 

 

(作成K・J)

2020年4月、5月の新刊から


今回は、銀座にある子どもの本専門店銀座教文館ナルニア国からおすすめの本を教えていただき、その中から選んで送っていただいた本を中心に、全冊読んだうえでみなさまに紹介いたします。

なお、3月上旬から実店舗へ足を運ぶことができなかったため、3月以前に出た新刊もチェックできてないものがあり、それも含めての紹介となります。

図書館でも見計らい以外の選書が難しくなっていると思いますが、参考にしていただければ幸いです。

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

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【絵本】
『ぱかぱかももんちゃん』とよたかずひこ/作 童心社 2020/3/5 (出版社サイト→こちら

ちいさなお子さんをお膝にのせて、上下に「ぱかぱか」と言いながら動かすだけでもとても喜びますね。
「ももんちゃんあそぼう」シリーズの21冊目の今作では、ももんちゃんがしまうまの背中にのって、ひたすら「ぱかぱかぱかぱか ぱかぱかぱかぱか 」走っていくのです。途中で小川をとびこえて、「ぱかぱか」まっしぐらに向かった先には・・・小さな子どもたちにとって一番安心できる結末になっています。この絵本はクレヨンハウスにて1月18日(土)とよたかずひこさんの講座に参加した際に、予約していたものです。

 

 

 

『うさぎのバレエだん』石井睦美/文 南塚直子/絵 小学館 2020/3/8 (出版社サイト→こちら

1989年に安房直子さん作『うさぎのくれたバレエシューズ』(南塚直子/絵 小峰書店)の続編と帯に書かれています。1993年に亡くなられた安房直子さんに代わり、石井睦美さんがバレエが上手になりたい女の子の物語を創作、絵は31年前と同じ南塚直子さんが担当しています。バレエがなかなか上達せず先生に注意された女の子は、練習を抜け出します。すると大きな桜の木の下で上手にバレエを踊る男の子に出会います。別れ際に「こんや、さくらげきじょうで「うさぎのシンデレラ」っていうバレエをおどるんだ」と誘われます。夜、外に出てみると・・・バレエ好きな子どもたちに贈りたい絵本です。

 

 

 

『ブルーがはばたくとき』ブリッタ・テッケントラップ/作 三原泉/訳 BL出版 2020/3/10 (出版社サイト→こちら(BL出版トップページから書名検索で詳細ページを参照してください)

ブルーのことりは、ずっと森の奥深くにひとりぼっちでいました。長い間仲間と離れてひとりでいたので、空の飛び方も歌うことも忘れています。そんな時に一羽のことりイエローが現れます。そのとりがとぶと金色の光が広がり、枝にとまれば緑の葉っぱがめぶくのです。イエローはくらがりにいるブルーをみつけて、近づいていきます。最初はイエローのうたに気づかないブルーでしたが、とうとうブルーは心を開いて一緒に歌いはじめるのです。ドイツ人絵本作家による美しい色彩の絵本です。

 

 

『ねえさんの青いヒジャブ』イブティハージ・ハンマド&S・K・アリ/文 ハテム・アリ/絵 野坂悦子/訳 BL出版 2020/4/1 (出版社サイト→こちら(BL出版トップページから書名検索で詳細ページを参照してください)

イスラム教徒の女性が頭に着けるスカーフのことをヒジャブといいます。信仰によって人前で髪の毛や肌を露出しないように被ります。身に着けるタイミングは初潮を迎えるころからということですが、厳密には決まってなく国や環境によるそうです。この絵本の女の子はアメリカに住んでいます。ねえさんが海のように真っ青なヒジャブを身に着けて学校に行く日、妹は誇らしげについていきます。しかし陰で笑う人がいたり、心無い言葉を投げつける男の子がいたりと、少数派への差別の目を感じることになります。そんな中ねえさんは凛としています。この絵本を通して、作者はひとりひとりに尊厳があり、信念を貫くことの大切さを伝えてくれています。

 

 

『サンゴのもり』きむらだいすけ/作 イマジネイション・プラス 2020/4 (出版社サイト→こちら

サンゴのもりにすむ海の仲間たちは、みんな個性的です。色も形も性格もみんな違っています。みんなと同じ行動が出来なくてはみ出てしまうことがあったり、落ち着きがなかったりしますが、お互いにその違いを認め合って、助け合っています。この絵本を作ったきむらだいすけさんは、ひとりひとりの存在を大切にしてほしいと語っています。誰もが欠点はもっているとしても、この世に存在していくことが尊いのです。お互いの良さを生かし合い、リスペクトする社会であってほしいと思います。繰り返し読んでもらっているうちに、そんな大切なメッセージも伝わってくるといいなと思います。

 

 

『ひとはなくもの』みやのすみれ/作 やべみつのり/絵 こぐま社 2020/5/5 (出版社サイト→こちら

この絵本を作ったのは、今年3月に中学を卒業したばかりのみやのすみれさん。絵本作家やべみつのりさんのお孫さんです。すみれさんが小学校1年生の時に作った紙芝居がもとになっています。しゅくだいを忘れ叱られて泣く、転んで泣く、飼い猫が死んで泣く、けんかして泣く、ゲームで負けて泣く、とにかくいろんな時に泣くとお母さんに「泣く子はきらい」と言われてしまいます。でも「泣くことは子どもが自分の気持ちをコントロールするための修行。だから大丈夫、ちゃんと成長しているんだな」と思ってほしいとすみれさんは言います。「いまの社会では、泣くこと=悪い、みっともないこと、弱い奴が泣くんだ、みたいな雰囲気がある気がします。でも私は、泣くことは人間にとって必要なこと」で、心を浄化し、成長させていくために大切だと、素直に伝えてくれています。

 

 

 

【児童書】

『名探偵カッレ 地主館の罠』アストリッド・リンドグレーン/作 菱木晃子/訳 平澤朋子/絵 岩波書店 2020/4/15 (出版社サイト→こちら

『名探偵カッレくん」シリーズの新訳の2冊目です。菱木晃子さんの訳で平澤朋子さんの挿絵のものは、『名探偵カッレ 夏休みが城跡の謎』が昨年9月に出版されています。
夏休みが来て、カッレ君とエヴァロッタ、アンデッシュたち白バラ軍の仲間は赤バラ軍のシックステンたちと、〈聖像〉を奪い合うバラ戦争という遊びに明け暮れていました。町はずれにある大草原(プレーリー)と呼ばれる町はずれの公用地と、そこに建つ朽ち果てかけた地主館は格好の彼らの遊び場でした。
ある日、エヴァロッタは〈聖像〉の隠し場所を変えようとしてひとり地主館の近くを訪れて殺人事件に遭遇してしまいます。唯一の目撃者としてエヴァロッタに危険が迫る中、カッレの名探偵ならではの推理が事件を解決に導いていきます。ドキドキハラハラする展開に、一気に読み進めてしまうでしょう。そして最後はエヴァロッタの父でパン職人のリサンデル氏の焼いたシナモンロールが登場。そこでホッと一息つくこと間違いなしです。

 

 

 

【ノンフィクション】

『みんなの園芸店 春夏秋冬を楽しむ庭づくり』大野八生/著 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→こちら

造園家でイラストレーターの大野八生さんによる庭づくり指南書です。出版予告を見た時は、科学絵本かと思っていましたが、ずっしりと重い実用書です。しかし、家族でいっしょに花や果実、野菜を育てられるよう、イラストつきの詳しい解説があり、初心者にもとてもわかりやすいです。普段の忙しい生活の中で、見逃していた自然の変化に目を留めて感じる‛センス・オブ・ワンダー’に溢れています。一家に一冊あってもよい本ではないでしょうか。大野八生さんの作品は、ほかに『盆栽えほん』(あすなろ書房 2013)、『ハーブをたのしむ絵本』(あすなろ書房 2016)などがあります。また『かわいいゴキブリのおんなの子メイベルのぼうけん』(ケイティ・スペック/文 おびかゆうこ/訳 福音館書店 2013)、『かわいいゴキブリのおんなの子メイベルとゆめのケーキ』(ケイティ・スペック/文 おびかゆうこ/訳 福音館書店 2017)、『草木とみた夢 牧野富太郎ものがたり』(谷本雄治/文 出版ワークス 2019)などの挿絵も手掛けています。

 

 

『13歳からの天皇制 憲法の仕組みに照らして考えよう』堀新/著 かもがわ出版 2020/2/25 (出版社サイト→こちら

昨年は天皇の代替わりがあり平成の世は令和へとなりました。昨年11月の即位パレードは印象に残っていると思います。しかし「天皇」とはなにか、「天皇制」とは何かを、きちんと説明できる人は少ないと思います。こちらの本では、「天皇制とは何か」を改めて定義しなおすところから始めて、憲法上の地位、国民との関係、さらに国民が憲法でどのような基本的人権を保障されているか、憲法の変遷について、丁寧に整理されています。順に読んでいくことで、天皇・皇室と憲法について理解を深めるとともに基本的人権とは何かについても学んでみることをお勧めします。

 

 

 

『小学生からの憲法入門 ほとんど憲法 上』木村草太/著 朝倉世界一/絵 河出書房新社 2020/2/28 (出版社サイト→こちら

 

この本は、毎日小学生新聞に2017年3月31日から翌2018年3月30日まで週1回連載された「ほとんど憲法」をまとめたものです。この企画は「子どもたちが読んで楽しめること」と「憲法についてよくわかること」の2つを目的で編集部から著者に提案されたとのことです。連載では毎月、お題を立ててお便りを送ってもらい、それに関係のある憲法の話をするという形で進められました。朝倉世界一さんによるマンガも読みやすく、子どもたちにわかりやすい憲法を学ぶ本になっています。

 

 

『小学生からの憲法入門 ほとんど憲法 下』木村草太/著 朝倉世界一/絵 河出書房新社 2020/2/28

 

上巻の続きです。2冊合わせて読んでほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

『読解力を身につける』村上慎一/著 岩波ジュニア新書 岩波書店 2020/3/19(出版社サイト→こちら

「読解力」とはどんな能力なのか、単に読むというだけなく、「聞くこと」はもちろん「話すこと」「書くこと」のベースにも大切な力であると、この本では述べられています。
「読解力」とは、言葉の表現者の意図を正確に読み取って、それを自分の言葉に置き換えて解釈することだという。そのためにとても大切になるのが「想像力」であるというのです。どのように「読解力」を鍛えていくのか、先生と生徒が対話する形で解明していきます。「評論」の読解、「実用的な文章」の読解、資料(グラフ)の読解、文学的な文章の読解などに分かれています。

 

 

 

『プラスチックモンスターをやっつけよう!きみが地球のためにできること』高田秀重/監修 クリハラタカシ/絵 クレヨンハウス編集部/編 クレヨンハウス 2020/4/10(出版社サイト→こちら

高度成長期に私たちの生活を豊かにしてくれると考えられて開発されてきたプラスチック製品。それが世界中の海にごみとして溢れ、環境を壊し、海洋生物や鳥たちの生命をも脅かしています。この本は、「きょうからできるプラスチックフリー!」として、私たちの生活の中にあるプラスチック製品を知って、それを使わないためにはどうすればよいかを、小さな子どもたちにもわかりやすく伝えてくれます。プラスチックをごみモンスターにしないためには、買わない、使わない、捨てないことが大切です。親子でひとつずつ確認しながら、減らすという意識を身に着けていくことが第一歩だと思います。

 

 

 

 

【その他】

エッセイ

『風と双眼鏡、膝掛け毛布』梨木果歩/著 筑摩書房 2020/3/20(出版社サイト→こちら

梨木果歩さんが日本中を旅して歩いたことを書いた旅のエッセー。タイトルの由来は、梨木さんが旅に出て「思い起こされる個人的な経験や、調べられる範囲で知り得た情報、知人の体験談、それこそ風が運んで来たような話、双眼鏡で鳥を観察しに行ったときの経験、カヤックを漕ぎに(浮かびに行くのである、ほんとうは。それで悠長に膝掛け毛布を使う)行った川や湖のこと。そういうとりとめのない、「地名」が自分に喚起するもろもろのゆるい括りとして」なんだそうです。ちょうどステイホームの期間に手にしたので、外出自粛が解除されたら旅に出たいなあと旅情を掻き立ててくれました。

 

 

 

 

講演録

『子ども・社会を考えるシリーズ 講演録 父の話をしましょうか~加古さんと松居さん~』鈴木万里(加古里子長女)・小風さち(松居直長女/講師 NPOブックスタート/編 NPOブックスタート 2020/3/31 (出版社サイト→こちら

2018年に亡くなられた絵本作家加古里子氏の長女鈴木万里さんと、『だるまちゃんとてんぐちゃん』などで絵本作家かこさとしの名前を世に知らしめた福音館書店こどものともの創刊者で福音館書店相談役の松居直氏の長女小風さちさんとの対談録です。どのような経緯で、こどものともで加古さんが絵本を描くことになったのか、絵本の黄金期といわれる1960年~70年代の絵本作りへの思いなどが、二人の絵本作りをそばでみつめてきた娘の視点から語られています。
作品への愛情だけでなく、偉業をなした親への敬意、そして日本中の子どもたちへの思いもまた熱いものがありました。

 

 

 

 

伝記

『絵本画家赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』赤羽茂乃/著 福音館書店 2020/4/25  (出版社サイト→こちら

スーホの白い馬』(大塚勇三/再話 福音館書店)や『かさじぞう』(瀬田貞二/再話 福音館書店)など長く読み継がれている作品がある絵本画家赤羽末吉氏の生誕110年を記念して、息子嫁である赤羽茂乃さんが10年以上の年月をかけて、末吉氏の足跡を歩き、資料を集めて検証しながら書いた伝記です。嫁という立場でそばで父の偉業を見守ってきた人ならではの温かい眼差しと愛情に裏打ちされ、またユーモラスなエピソードも満載で、550ページを超える大作ですが惹きつけられて読み進めました。今年は銀座・教文館ナルニア国やちひろ美術館・東京で赤羽末吉絵本原画展が開催される予定でしたが、それぞれ開催が延期になっています。赤羽末吉の絵本がなぜ子どもたちを惹きつけるのか、その意味が彼の人生を通して見えてきます。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

 

 

 

(作成K・J)

2020年3月、4月の新刊より


新型コロナウィルス感染拡大により3月の下旬以降、実際に書店に出向いての選書が出来なくなっています。

今回は、取り寄せ等で配送していただいた新刊から紹介します。なお、各児童書出版社の公式サイトには新刊情報が掲載されていますので、そちらもこまめにチェックするようにしましょう。

 

(なお、各出版社の許諾要件に従って書影を使用しています)

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【絵本】
『おやこでよもう!金子みすゞ だれにもいわずにおきましょう』金子みすゞ/詩 高畠那生/絵 坂本美雨/ナビゲーター 矢崎節夫/監修 JULA出版局 2020/3 (出版社のサイト→こちら

「おやこでよもう!金子みすゞ」シリーズの3冊目です。タイトルになっている「だれにもいわずにおきましょう」のほかに「がっこうへゆくみち」、「たいりょう」、「こころ」、「ほしとたんぽぽ」など10編の詩が収められています。そのひとつひとつに絵本作家の高畠那生さんの飄々としつつも温かい絵がついていて、詩の世界の理解を助けてくれます。

 

 

 

 

『英語で日本語でよもう!つたえよう!金子みすゞ こころ』金子みすゞ/詩 D.P.ダッチャー/英訳 浅沼とおる/絵 矢崎節夫/選 JULA出版局 2020/3  (出版社のサイト→こちら

日本語では、とてもリズミカルで、普段気が付かないことにハッと気づかせてくれる金子みすゞの詩、英語ではどんな風に言うんだろう?と、興味を惹かれます。
こちらではタイトルになった「こころ」のほかに「星とたんぽぽ」、「となりの子ども」、「みんなをすきに」ほか、8編の詩が日本語と英語それぞれ見開きページで紹介されています。英訳を手掛けたのは、ハーバード大学で日本古典文学を専攻したD.P.ダッチャー氏で、子どもたちが日常に使う言い回しで翻訳されています。巻末に単語集もあり、小学校の英語教育の副教材としてもおすすめです。

 

 

 

 

 

『英語で日本語でよもう!つたえよう!金子みすゞ ふしぎ』金子みすゞ/詩 D.P.ダッチャー/英訳 浅沼とおる/絵 矢崎節夫/選 JULA出版局 2020/3  (出版社のサイト→こちら

「英語で日本語でよもう!つたえよう!金子みすゞ」シリーズの2冊目です。
「ふしぎ」の英訳として「wonder」や「strange」をイメージしたのですが、「It’s Weird」を使っていて新鮮でした。子どもたちが普段の生活の中で「あれ?これ、どうなってるの?」「なんか変だよね?」という感じで使われることを、この絵本で知りました。
こちらにはタイトルの「ふしぎ」のほかに、「明るいほうへ」、「すずめのかあさん」、「こだまでしょうか」など8編が収められています。

 

 

 

 

『英語で日本語でよもう!つたえよう!金子みすゞ わらい』金子みすゞ/詩 D.P.ダッチャー/英訳 浅沼とおる/絵 矢崎節夫/選 JULA出版局 2020/3  (出版社のサイト→こちら

『英語で日本語でよもう!つたえよう!金子みすゞ」シリーズの3冊目です。タイトルになっている「わらい」のほかに、「春の朝」、「わたしと小鳥とすずと」、「つもった雪」など8編が収められています。浅沼とおるさんの絵も温かくユーモラスで、金子みすゞの詩を理解するのを助けてくれます。ぜひ3冊揃えてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

『はたらくくるまたちとちいさなステアちゃん』シェリー・ダスキー・リンカー/文 AG・フォード/絵 福本友美子/訳 ひさかたチャイルド 2020/4  (出版社のサイト→こちら) 

小型工作機のスキッドステアローダーのステアちゃんは、ほかの大型工作機たちから「こうじげんばではたらくにはちいさすぎる。ちからもつよくなさそうだ・・・。あぶないからかえったほうがいい」と言われて、活躍の場がありません。でも大きなブルドーザーやシャベルカーが斜面に転落してしまいます。小回りが利き、部品をさまざまに付け替えて多様な動きができるステアちゃんは救出に大活躍します。小さくても活躍する場はあることを伝えてくれるこの絵本は、子どもたちにも勇気を与えてくれることと思います。

 

 

 

 

『虫ガール ほんとうにあったおはなし』ソフィア・スペンサー(虫ガール)/マーガレット・マクナマラ/文 ケラスコエット/絵 福本友美子/訳 岩崎書店 2020/4/30 (出版社のサイト→こちら

この絵本の作者ソフィア・スペンサーはこの本を出版した時点で11歳の女の子です。2歳の時に蝶の飼育園に連れて行ってもらったことがきっかけで昆虫が大好きになります。幼稚園の時はいっしょに虫を捕まえて観察していた友達が、小学生になると「虫が好きだなんて変わっている」と仲間外れをするようになります。そんなソフィアを心配して、お母さんが世界中で活躍している昆虫学者にインターネットを通して呼びかけます。すると世界中の昆虫学者の人から連絡が入り、ソフィアはテレビに出演して「虫ガール」であることを自信をもって語れるようになります。地球上の生物の80%を占める昆虫ですが、昆虫が絶滅すると植物は受粉できなくなり、地球上の植物が影響を受け、植物を食糧にしている動物、もちろん人間も生きていくことができなくなるのです。昆虫は私たちの生活に密接に関係しています。気味悪がらずにソフィアのように昆虫について、知ろうとすることが大切だなあと思います。そんな昆虫を知るきっかけにもなる絵本です。

 

 

 

 

【研究書】

『連続講座〈絵本の愉しみ〉④日本の絵本 昭和期の作家たち』吉田新一/著 朝倉書店 2020/3/1  (出版社のサイト→こちら

「連続講座〈絵本の愉しみ〉」は、「①アメリカの絵本」、「②イギリスの絵本(上)」、「③イギリスの絵本(下)」と続き、4巻目で日本の絵本へと辿り着きました。「15年戦争期の絵本」から始まって「戦中期「講談社絵本」の〈子供知識絵本〉」の分析、そして脇田和、中谷千代子、赤羽末吉の作品を取り上げています。また瀬田貞二、渡辺茂男両名へのインタビューで、昭和期の絵本と児童文学についての深い考察がなされています。国立国会図書館国際子ども図書館での連続講座(平成17年度日本児童文学の流れ)がベースになっていますので、日本の絵本の歴史、とくに昭和期についてわかりやすく知ることができる1冊です。

 

 

 

(作成K・J)

2020年2月、3月の新刊より(読み物・その他)


2020年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中から、今回は冊数が多いのでいくつかにわけて紹介します。1回めはグレタ・トゥーンベリについて書かれた本を紹介(→こちら)、2回目はその他のノンフィクション絵本を紹介(→こちら)、3回目は物語絵本を紹介(→こちら)しました。今回は読み物です。(一部12月、1月に出版されたものもあります)

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【児童書】
幼年童話

『きれいずきのマグスおばさん』イーディス・サッチャー・ハード/文 クレメント・ハード/絵 小宮由/訳 大日本図書 2019/12/20 (出版社サイト→こちら

小宮由さんが「子どもたちがワクワクしながら、主人公や登場人物と心を重ね、うれしいこと、悲しいこと、楽しいこと、苦しいことを我がことのように体験し」てほしいと願って、海外の幼年童話を選りすぐって翻訳してくださっている「こころのほんばこ」シリーズ(→こちら)の1冊です。なにかに一生懸命になるあまり、他のことが抜けてしまうことってよくあります。スージーの家に来てくれる家政婦のマグスおばさんは、きれい好きなのはよいのですが、何かが少しでも汚れていると許せなくて他のことが目に入らなくなってしまいます。そんなマグスおばさんはスージーとの約束で動物園に出かけたのですが・・・自分で物語を読み始めた子どもたちにおすすめの1冊です。

 

 

 

 

『デイビッド・マックチーバーと29ひきの犬』マーガレット・ホルト/文 ウォルター・ロレイン/絵 小宮由/訳 大日本図書 2020/1/20 (出版社サイト→こちら

こちらも「こころのほんばこ」シリーズの1冊、最新刊です。ある町に引っ越してきたばかりのデイビッドは、おかあさんに頼まれて近くのスーパーマーケットに出かけました。頼まれた3種類のお肉などを買って帰ってくる途中、スーパーの紙袋に穴が開いてお肉が次々落っこちてしまいます。それに気がついたデイビットが拾いに戻るたびに犬がたくさんついてきます。その様子を見た町の人たちはパレードだと勘違い。どんどんパレードに加わり、しまいにはブラスバントの人たちも入って町を練り歩くことに。デイビッドが家に帰るころには、デイビッドは町の有名人になっていたという、楽しいお話です。自分で読み始めた子どもたちにおすすめです。

 

 

 

 

 

YA向け

『窓』小手鞠るい/作 小学館 2020/2/9 (出版社サイト→こちら

アメリカ駐在中に自分でやりたいことをみつけ、父親と離婚してアメリカに残った母の遺品であるノートを受けとった中学生の窓香の心の成長を描く作品です。母が亡くなったと知って1年ほど経って届いたそのノートには、母が会えなくなった娘を思って綴った手紙が記されていました。母は自分の人生を生きるためにジャーナリストを目指してアメリカで学び、世界へと目が開かれルワンダやシリアなどの難民キャンプで子どもたちを支援する活動を始めていました。窓香はその手紙を通して、日本で生活していると意識せずに済むけれども、世界のあちこちで戦争が起きて、命が脅かされている子どもたちがいるという事実を知っていきます。そして「中学生の主張」のグループ発表のテーマとして「戦争と子ども」を提案します。母への複雑な想いを乗り越え、自らも広い世界を見ようとする窓香の姿はとても爽やかです。

 

 

 

 

【エッセイ】

『暇なんかないわ 大切なことを 考えるのに 忙しくて ル⁼グウィンのエッセイ』アーシュラ・K・ル⁼グウィン/著 谷垣暁美/訳 河出書房新社 (出版社サイト→こちら

2018年1月22日に88歳で亡くなったアメリカのファンタジー作家アーシュラ・K・ル=グウィンさん(訃報記事→こちら)が、晩年2010年10月から2017年9月まで書き記していたブログ記事より、選りすぐりの41篇をまとめたエッセイ集です。タイトルの『暇なんかないわ 大切なことを 考えるのに 忙しくて』は、ハーバード大学1951年卒業クラスの60年目の同窓会を前にして送られてきたアンケートへの彼女の答えです。その経緯は冒頭のエッセイ「余暇には何を」に書かれています。老いを自覚し、自分の生き方を振返り、人類の行く末も見据えた痛快な言葉は、読んでいて胸のすく思いがします。「自分自身の子どもたちが幼かったころにはまだ、私たち人類が子どもたちのための環境を全面的に破壊するとは限らないという希望がもてた。だが、私たちがそれをやらかしてしまい、目先の利潤を追求する産業主義に、ますます卑屈にひれふしている今、来るべき世代が人生でくつろぎと安らぎを得られるという希望はあまりにもか細く、それにすがるのは、道もない暗闇の中を長く進んでいくことだ。」(「余暇には何を」p18)と、未来を憂い、「空腹のノートルダム大聖堂」という記事の中では、「天は自ら助くる者を助くと彼らは言い、貧しい者や失業者は、過保護な政府に寄生する無能な怠け者に過ぎないとのたまう。貧困があることを否定しないが、貧困について知りたがらない人たちがいる。あまりにひどすぎる状況だし、どうせ自分には何もできないし、と言うのだ。そして、手を差し伸べる人たちがいる。」(p230)と述べ、貧困に直面している人々への温かな眼差しを向けています。ひとつひとつのエッセイは、その時々に感じたことを素直に書き記したブログだからこそ、解説者カレン・ジョイ・ファウラーは「ふだん着のル=グウィン、自宅でくつろいでいるル=グウィン」としての魅力があるとしています。『ゲド戦記』など物語の世界を創造して読者をそこへ引き込んでいく作品とは違う、晩年のル=グウィンの素顔にこのエッセイを通して触れてみるのもよいでしょう。

 

 

『人生の1冊の絵本』柳田邦男/著 岩波新書 岩波書店 2020/2/27 (出版社サイト→こちら

かねてより「大人こそ絵本を」、「絵本は人生に三度(幼少期、子育て期、中高年期)」、「大人の気づき、子どものこころの発達」ということを呼びかけてこられたノンフィクション作家柳田邦男氏の絵本紹介エッセイ。この本の中では、「1.こころの転機」「2.こころのかたち」「3.子どもの感性」「4.無垢な時間」「5.笑いも悲しみもあって」「6.木は見ている」「7.星よ月よ」「8.祈りの灯」というテーマで150冊の絵本が紹介されています。長く読み継がれた名作と呼ばれる絵本だけではなく、ここ数年の間に出版された新しい絵本も多く紹介されており、見落としていた作品はすぐにでも読みたくなります。「絵本は、子どもが読んで理解できるだけでなく、大人が自らの人生経験やこころにかかえている問題を重ねてじっくり読むと、小説などとは違う独特の深い味わいがあることがわかってくる。」とは著者によるあとがきの言葉(p336)は、深く頷くところです。ぜひ多くの人にこのエッセイを読んでいただき、そこに紹介されている絵本も手に取ってほしいと思います。

(作成K・J)

2020年2月、3月の新刊より(物語絵本・詩の絵本)


2020年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中から、今回は冊数が多いのでいくつかにわけて紹介します。1回めはグレタ・トゥーンベリについて書かれた本を紹介(→こちら)、2回目はその他のノンフィクション絵本を紹介(→こちら)しましたが、今回は物語絵本を12冊紹介します。(一部1月に出版されたものもあります)

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【物語絵本】

『たったひとりのあなたへ フレッド・ロジャーズからこどもたちへのメッセージ』エイミー・リード/文 マット・フェラン/絵 さくまゆみこ/訳 光村教育図書 2020/1/29 (出版社サイト→こちら

 

アメリカには1968年から2000年まで「ロジャースさんのご近所さん」という子ども向けの番組があったそうです。この番組はエミー賞にノミネートされたり、ピーポディー賞や国立テレビ芸術科学院とテレビ批評家協会からの特別功労賞などを受賞しているのですが、この絵本はその番組を作ったフレッド・ロジャーズの子ども時代を描いています。フレッドはアレルギーがあって虚弱体質だったこともあり、いじめに遭います。しかし、フレッドのおじいちゃんはいつも味方になってくれてこう言います。「おまえはおまえのままでいいんだよ。わたしは、そのままのおまえがだいすきなんだ」と。このことばを思い返すたびにフレッドは勇気が湧いてきました。成長とともに体力もつき、友人も出来ていきます。大学生になった時に、悪ふざけするテレビ番組を見ていて、子どものための新しいテレビ番組を作ろうと決意します。自分が子ども時代に受け取った「そのままのあなたでいいんだよ」というメッセージを子どもたちに伝えるためでした。そうやって制作したのが「ロジャーズさんのご近所」という番組で、通算で895話になったということです。

 

 

 

 

 

 

 

『空とぶ船とゆかいななかま』バレリー・ゴルバチョフ/再話・絵 こだまともこ/訳 光村教育図書 2020/1/31 (出版社サイト→こちら)

 

むかしむかし、ある国の王さまがこんなお触れを出します。「空飛ぶ船にのって、お城まできたものを王女と結婚させてやろう」と。村の人々から「世界一のまぬけ」と呼ばれていた若者は、「おいらが旅に出て、空飛ぶ船をさがしてくる」と決意して旅に出かけます。しばらく行ったところでおじいさんに出会います。おじいさんの呼びかけに答え食べ物をわけてあげました。実はそのおじいさんは不思議な力を持っていたのです。おじいさんの言うとおりにすると、空飛ぶ船がみつかります。そして途中で出会ういろいろな特技をもっている男たちを「一緒にお城へ行こう」と次々に誘っていきます。お城につくと、その男たちは王様の無理難題を次々に解決していきます。『シナの五にんきょうだい』や『王さまと九人のきょうだい』ととても似たウクライナの昔話です。

 

 

 

 

 

 

『プレストとゼスト リンボランドをいく』アーサー・ヨーリンクスとモーリス・センダック/文 モーリス・センダック/絵 青山南/訳 岩波書店 2020/2/5 (出版社サイト→こちら

 

モーリス・センダックが生前友人のアーサー・ヨーリンクスと即興で作った絵本の原稿が、モーリス・センダック没後にファイル整理していたアシスタントによって発見され、絵本になったものです。もとはモーリス・センダックが依頼を受けて、ロンドン交響楽団によるヤナーチェクの「わらべうた Říkadla/ Nursery Rhymes」公演のプロジェクション用に描いた絵でした。その「わらべうた」は19の小唄で構成され、「砂糖大根のお嫁入り」「破れズボンに」「婆さんが魔法をかけると」「ホーホー牛が行く」「白い山羊が梨集め」「山羊が乾草に寝そべって」「熊さん丸太に乗っかって」などユニークな題がついています。アーサーとモーリスがそれらの絵を、思いつくままにつなぎ合わせて別の愉快なおはなしに仕立てているところがこの絵本の面白さです。ナンセンスとユーモアが詰まった不思議な絵本、「プレスト」と「ゼスト」はふたりのニックネームだったそうで「われらの友情の記念だ」とばかり、ふたりの大人が笑い転げながら作っていった勢いを感じながら、その面白さを味わってほしいと思います。

 

 

 

 

『100』名久井直子/作 井上佐由紀/写真 福音館書店 2020/2/10  (出版社サイト→こちら

 

福音館書店月刊誌「ちいさなかがくのとも」2016年12月号のハードカバー版です。「きんぎょが1」と水槽に泳ぐ1匹の金魚の写真、次のページを開くと「100」と100ぴきの金魚が画面から溢れてきそうです。表紙の風船のほかに、本文ではわごむ、きんたろうあめ、スーパーボール、貝殻にどんぐり、いろいろなものの「100」が子どもたちに示されます。この絵本が対象としているのは3才くらいの子どもたち。「1」と「100」の対比は、「ひとつ」と「いっぱい」というまだ数量について漠然としたイメージしか持たないその年代の子どもたちに、明確な数字を理解する機会を与えてくれ、新鮮な学びになっていくと思います。子どもたちと一緒に数を数えて楽しめるといいですね。

 

 

 

 

 

『おひめさまになったワニ』ローラ・エイミー・シュリッツ/作 ブライアン・フロッカ/絵 中野怜奈/訳 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→こちら

 

英米で子どもたちに人気の異色のプリンセス本って聞くと、一体どんなお話だろうかと気になりますね。コーラ姫はいずれ女王になることを期待され、王さまとお妃さまによって厳しいしつけと教育を受けることになります。しかも立派な女王になるためだからと「コーラひめのよいところをほめるのはやめて、女王になるのにたりないところはないか、いつもさがす」そんな厳しさだったのです。そのため7才になったコーラ姫は朝から晩まで遊ぶ暇なく、勉強や習い事に明け暮れることになります。ここまできて、あれ?これは架空のおはなしではなく、現実にもあることなのだと感じる人が多いのではないでしょうか。ある晩、コーラ姫は名付け親の妖精に話し相手になるペットがほしいと手紙を書きます。翌朝、目が覚めるとベッドの足元には大きな箱が届けられていて、中からなんとワニが出てきたのです。そしてワニは妖精から届けられたペットで、コーラ姫の身代わりになるから、外で自由に遊んでおいでというのです。ところがワニは好き放題に王さまやお妃さまを困らせます。しかしその間にいろんなことを体験したコーラ姫は自分の意見を堂々と言うことができ、王さまもお妃さまもコーラ姫の気持ちを大切にするように変わっていきます。7つのおはなしに分かれている少し長い作品で、絵本というよりは幼年童話に分類できると思いますが、幼稚園児でも読んでもらえれば楽しむことができる作品です。

 

 

 

 

 

『きっとあえるーわたりどりのともだちー』鎌田暢子/作 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→こちら

 

マガンのトットとコハクチョウのクークーの友情物語です。実際の野生の鳥の世界では種を越えた交流は起きませんが、渡り鳥としてシベリアから飛んでくるマガンとコハクチョウが毎年同じ越冬地にやってくるのを見ていると、そんな物語が生まれてくるのも頷けます。(越冬コハクチョウとマガン→公益財団法人但馬ふるさとづくり協会・兵庫)
はじめて日本で越冬することになったトットとクークーは同じ田んぼで籾を食べていてごっつんこ。ぶつかったことで知り合って仲良しになります。お互いに猫やきつねに狙われた時は、助け合います。そうして友情をはぐくんだ2羽ですが、春の訪れとともにお別れの時がやってきます。北に飛んで行くと言っても北の国は広いから会えないかもしれない。でも来年の秋にここで再会しようねと約束をして、それぞれ飛び立っていくのです。なお、この絵本は上記のリンク先とは別の島根県宍道湖の自然を守る公益財団法人ホシザキグリーン(→こちら)の取材協力により描かれました。

 

 

 

 

『わたしのやま』フランソワ・オビノ/作 ジェローム・ペラ/絵 谷川俊太郎/訳 世界文化社 2020/2/20 (出版社サイト→こちら

出版社の紹介文を許可をいただいて転載します。

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山に暮らす羊飼いと狼の生活は、敵か味方かという私たちが陥りがちな単純な二元論への疑問を投げかける
一見、相対する羊飼いと狼の同じ山でのそれぞれの生活を描き、敵か味方か、正義か悪か、といった単純化したフィルターを外して物事を見ることの大切さを伝える。羊飼いの視点と狼の視点で表・裏表紙の両サイドから読むことができ、しかも文章は両サイドとも同じもの。一種の仕掛け絵本としてのユニークさもある。フランスでは『アンコリュプティブル賞』(2019-2020)を受賞

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この絵本は、左右どちらも表紙です。片方は、山に住む羊飼いの目線から描かれ、反対側からはその山に棲むおおかみの視点から描かれています。羊飼いにとっては貴重な資源でもある羊を襲ってくるおおかみは危険で厄介な存在です。それでも「やまはわたしのふるさと やすらかでしあわせをかんじるところ」なのです。一方のおおかみにしてみると山は自分たちの住処であり、子育てをするところ。しかし唯一怖いのはライフル銃を持って命を狙ってくる人間という存在なのです。それでも「やまはわたしのふるさと やすらかでしあわせをかんじるところ」なのです。そしてお互いに「わたしのやまをほかのものとわかちあうのでむずかしいが ここがすきになったらだれでもすめるだけのひろさはある」と結びます。お互いの領分を侵さずに共存できることが一番の道でしょう。これまで人間が力ずくで自然を人間のために利用してきましたが、もう一度この地上に棲む他の生物たちと共存していく道を謙虚に考える必要があります。そんな問題提起を投げかけてくれる絵本です。両方から読んでいって真ん中のページで出会うという作りも面白いですね。

 

 

 

 

『さくらの谷』富安陽子/文 松成真理子/絵 偕成社 2020/2 (出版社サイト→こちら

 

この絵本のことについて、私も参加した昨年2019年10月27日にJBBY世界の子どもの本講座・富安陽子さん「物語が生まれる時」(→こちら)の中でお話をしてくださいました。お父様が亡くなられた時、葬儀の夜に夢を見たそうです。3月6日、まだ冬の山並みなのに、奥山の谷間に満開の桜が咲いていて、そこでお父様がオニたちとお花見をしていたそうです。お重箱につめたお弁当(自分が小さい頃の運動会に必ず入っていた肉のしぐれ煮にとんかつ、ちくわが入っていて)で酒盛りしていて、そのうちかくれんぼをすることになって、オニを探していると、いつのまにか亡くなった父や伯母たちを追いかけていたそうです。「ああ、みんなここにいたんだね」と笑いかけたところで夢から覚めたそうです。その夢が、ほぼそのまま、松成真理子のふんわりと優しさを包み込むような絵で描き出されています。不思議だけど、心が温かくなるそんな絵本です。

 

 

 

 

 

 

『おやこでよもう!金子みすゞ こんぺいとうはゆめみてた』高畠那生/絵 坂本美雨/ナビゲーター 矢崎節夫/監修 JULA出版局 2020/2 (出版社サイト→こちら

 

親子で金子みすゞの詩を読もうというコンセプトで作られたカラフルな詩集絵本です。本の題名になった「こんぺいとうはゆめみてた」の他には、「あさとよる」「だれがほんとを」「こだまでしょうか」や「もくせい」など9編の詩が収められています。高畠那生さんの飄々とした絵も味わい深く、ミュージシャンの坂本美雨さんが「親子で読む」というポイントでナビゲートするページがあったり、それぞれの詩に監修者の矢崎節夫さんが親子で読む時の手がかりになるコメントを書いていたりと、読みやすくなる工夫が満載されています。ぜひ、親子で声に出して読んでほしいなと思います。なお、「本のこまど」で紹介しそびれていましたが、昨年11月に『すずと、ことりと、それからわたし』(→こちら)が同じメンバーで出版されています。どちらも、小ぶりなのでお出かけ先にも持って行けそうです。

 

 

 

 

 

 

『しばふって、いいな!』レオーネ・アデルソン/文 ロジャー・デュボアザン/絵 こみやゆう/訳 瑞雲舎 2020/3/1 (出版社サイト→こちら

 

1960年に出版された「PLEASE PASS THE GRASS!」の初邦訳です。タイトルではGRASSが「しばふ」と訳されていますが、絵本を読むとわかるのですがイネ科の植物全体を指す「GRASS」です。人間にとっては気持ちの良い草原も、虫たちにとってはジャングルであり大切な住処。牛たちにとっては美味しくて新鮮な餌です。動物や昆虫の視点からみる草は、自然環境の中でとても大切な役割があるのですね。『しばふって、いいな!』というタイトルは、草地に寝そべったり、お友達と追いかけっこして遊んだりできる子どもたちの格好の遊び場としての視点で考えられていて、翻訳者こみやさんの思いをそこで感じることが出来ました。新型コロナウィルス感染拡大で、大人も子どもも行動が制限されてストレスが溜まってしまいがちなこの季節。青々とした草原に出かけて新鮮な空気を胸いっぱいに吸いたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

『ピーターとオオカミ』セルゲイ・プロコフィエフ/作 降矢なな、ペテル・ウフナール/絵 森安淳/文 偕成社 2020/3 (出版社サイト→こちら 

 

この絵本は、長野県松本市で昨年2019年夏に行われた「セイジ・オザワ・松本フェスティバル」(→こちら)の子どものための音楽物語「ピーターとオオカミ」のプロジェクションとして描かれた絵を元に作られました。オーケストラの曲に合わせてどんどん動くように描かれたものが絵本になるというのも、とても面白い試みです。2月29日から4月19日まで銀座・教文館ウェンライトホールで開催中の「降矢なな絵本原画展」(→こちらでは、プロコフィエフの「ピーターとオオカミ」の音楽をBGMにして、この絵本原画をすべて見ることができます。おじいさんと森の近くに住んでいるピーターは庭の木戸を開けて散歩に出かけたのはよかったのですが、木戸を閉め忘れます。すると飼っているアヒルのバディが抜け出てしまうのです。おじいさんはオオカミが来るから勝手に野原へ出ることは危ないと怒るのですが、怖いもの知らずのピーターはそのオオカミを捕まえようと画策を練るのです。オオカミの表情だけでなく、どの場面も生き生きとしていておはなしの世界にも引き込まれていくことでしょう。

 

 

 

 

『あのほん』ひぐちみちこ/作 こぐま社 2020/3/10 (出版社サイト→こちら)

 

赤ちゃんが最初に発する「あああ~」という声を題材にした赤ちゃんとママに贈る絵本です。1月に生まれて3月に「あ~」と言った赤ちゃんは、「あ~さ」「あ~か」「あ~お」「あ~り」「あ~め」と「あ」で始まる言葉を少しずつ覚えていきます。「あ~」って、ほんとうにいろいろな言葉に繋がっているのですね。ひぐちみちこさんによる『かみさまからのおくりもの』、『クリスマスおめでとう』(いずれもこぐま社→こちら)などと同じ貼り絵のやさしい絵本です。

 

 

 

 

(作成K・J)

2020年2月、3月の新刊より(2)ノンフィクション絵本(3/13追加有)


2020年2月、3月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中から、今回は冊数が多いのでいくつかにわけて紹介します。1回めはグレタ・トゥーンベリについて書かれた本を紹介しましたが、2回目はその他のノンフィクション絵本を紹介します。(一部1月に出版されたものもあります)

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【ノンフィクションの絵本】

『はじまりはたき火 火とくらしてきたわたしたち』まつむらゆりこ/作 小林マキ/絵 福音館書店 2020/1/20 (出版社サイト→こちら

 

人類が火を使い始めてから現代まで、人々の生活を豊かにしてきたエネルギーの変遷の歴史を子どもにわかりやすく伝えてくれるノンフィクション絵本です。燃料としての草木も、石炭や石油も、それらから作られる電気も、すべてこの地球から得られる資源であり、自然の恵みであることを明確に位置づけ、だからこそ人間が便利な生活を享受することで引き起こされる問題にも目を向けるようにと気づかせてくれます。

 巻末には6ページを割いて、「エネルギーとわたしたち」という作者からのメッセージが書かれています。エネルギーには限りがあること、本当に豊かな暮らしとはなにか、地球温暖化が起き、それが原因で絶滅の危機にある生物へのまなざしなど、一緒に考えていこうという提案がなされています。親子で読んで自分たちには何が出来るかを考えてみるきっかけになるといいなと思います。

 

 

『ふたりの約束 アウシュヴィッツの3つの金貨』ブニーナ・ツヴィ、マーギー・ウォルフ/文 イザベル・カーディナル/絵 金原瑞人/訳 西村書店 2020/1/27 (出版社サイト→こちら

2020年はアウシュヴィッツ解放75周年です。この絵本はナチス政権によって両親と無理やり引き離され、アウシュヴィッツ収容所で生活をした姉妹の実録です。二人の姉妹の実の娘たちがこの絵本の作者です。過酷な環境の中で、両親が別れ際にそっと手渡した3つの金貨と「姉妹が決して離れることなく助け合うように」という言葉を胸に、姉妹は劣悪な収容所での日々を生き抜きます。しっかりと握りあっている手を描いた表紙をはじめ本文のコラージュを使った絵はとてもリアリティがあり、手に取った瞬間は少し恐ろしく感じましたが、文章を読み進めるうちに75年前に引き戻され、過酷な運命を生きた少女たちが大勢いたことを実感できました。辛い経験の実話ですが、強い絆に結ばれた姉妹の姿に希望を感じることができました。

 

 

 

 

 

 

『さくらがさくと』とうごうなりさ/作 福音館書店 2020/2/10 (出版社サイト→こちら

 

4月のおはなし会プラン「春のいのち」(→こちら)でも紹介した1冊です。3月のまだ風が冷たい朝、通勤、通学の人たちが川沿いの桜並木を歩いています。そんな中、桜の芽は開花の準備をはじめ、日一日と膨らんでいくのです。最初の開花から次々に花が咲いて満開になり、やがて花が散ってしまうと、枝先から葉っぱが萌え出て大きくなっていきます。青々とした緑陰を作るころには、さくらんぼの実がついています。3月半ばから4月半ばまでの桜の変化を美しい絵で表現しています。この絵は網とブラシを使うスパッタリング法を使ったと、とうごうなりささんご自身のブログ「クイナ通りSoi17」に記されていました。(→こちら)ぜひご覧になってください。

 

 

 

『琉球という国があった』たくさんのふしぎ傑作集 上里隆史/文 富山義則/写真 一ノ関圭/絵 福音館書店 2020/2/10 (出版社サイト→こちら

 

福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2012年5月号のハードカバーです。ご存知のように琉球国の城である首里城は2019年10月31日に起きた火事によって焼失してしまいました。そこで、この本の売り上げの一部は「一般財団法人沖縄美ら島財団首里城基金」に寄付されることになっています。
2000年に沖縄県の「琉球王国のグスク及び関連遺産群」がユネスコ世界文化遺産に登録されました。この絵本では琉球王国というのはどんな国だったのか、どんな歴史があって、今は日本の一部になっているのかを、豊富な写真と資料を用いて説明をしてくれています。焼失してしまった首里城の写真も使われています。1609年に薩摩の大名島津氏が征服するまでは、琉球国が独立国として中国や東南アジアとの貿易の中継地点として栄えていたことなども詳しく知ることができます。ぜひこの本を手に取って琉球国の歴史や文化を学ぶと共に、首里城の再建に力を貸してほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

『春を探して カヌーの旅』たくさんのふしぎ傑作集 大竹英洋/文・写真 福音館書店 2020/2/15 (出版社サイト→)

北米の湖水地方「ノースウッズ」をフィールドに野生動物や人々の暮らしを撮影し、人間と自然のつながりを問う写真絵本を多く出している大竹英洋さんが福音館書店月刊誌「たくさんのふしぎ」2006年4月号で発表した絵本のハードカバー版です。大竹英洋さんの公式サイト(→こちら)では、さまざまな写真や動画、ブログ記事にアクセスできます。
この絵本では、友達のウェインとともに森で育つヌマヒノキで作られたカヌーと弾力性のあるトネリコの木材を削って手作りしたバドルをを使って、ノースウッズの湖をめぐる3週間の旅の様子を写真と共に綴っています。まだ雪が残る5月初めに出発し、少しずつ森の中に花が咲き始める自然の移り変わりを肌で感じながら巡っていきます。私たち人間の生活もこの地球の大自然の恵みとは切っても切れない関係であることをこの旅の様子は知らせてくれています。

 

 

 

 

 

『いちご』荒井真紀/作 小学館 2020/2/24 (出版社サイト→こちら

 

2017年に『たんぽぽ』(金の星社→こちら)でブラティスラヴァ世界絵本原画展で金のりんご賞を受賞した荒井真紀さんは、その他にも『ひまわり』、『あさがお』(共に金の星社→こちら)や『チューリップ』(小学館→こちら)、『あずき』(福音館書店→こちら)など植物を細密に描くことで定評があります。『いちご』は、真っ赤に熟れたいちごを食べた時にする「ぷちぷちぷち」という音が何の音か調べるために、いちごが育っていく過程を丁寧に描いていきます。いちごの花の断面図を見ると、いちごの花のどの部分が膨らんで実になるのかがよくわかります。これを見ると自分でいちごを育ててみたくなります。

 

 

 

 

『おひなさまの平安生活えほん』ほりかわりまこ/作 あすなろ書房 2020/2/28 (出版社サイト→こちら

 

住宅事情の変化で七段飾りのお雛様を飾る家庭は以前ほど多くなくなっていると聞きますが、それでも桃の節句に雛飾りは欠かせないものです。この絵本に出てくる姉妹は、祖母とお母さんと一緒に雛飾りを並べて見ているうちに、牛車にのって平安時代へタイムスリップし、その時代の衣装や食事、遊びなどを学んで戻ってきます。お雛様の歴史や、どのような思いで作られ、飾られてきたのか、詳しく丁寧に描かれています。特に立派な七段飾りのひな人形は、平安時代の宮廷生活への憧れから武士の時代になって作られてきたことなどもわかります。この絵本を読みながら、姉妹と共に平安時代の宮廷生活の様子を覗いてみてくださいね。

 

 

(作成K・J)

2020年2月、3月の新刊から(1)グレタ・トゥーンベリさんの本


暖冬で終わりそうな今シーズン。中国や韓国、そして日本やイタリアをはじめ多くの国では新型コロナウィルスの感染が広がっています。一方で東アフリカから中央アジアにかけてバッタが大量発生して数千万人の食糧供給が脅かされる状況になっています。これらは、インド洋ダイボールモード現象(インド洋の東部と西部で海水温の差が生じる現象)の影響だそうで、オーストリア東部に大きな被害をもたらした森林火災とも関連するということです。(参考記事→こちら)そしてこの現象も地球温暖化のひとつということです。

スウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさんが2018年から始めた《#気候のための学校ストライキ #SchoolStrukeForClimate》は、世界中に広がり2019年3月には《#未来のための金曜日 #FridayForFuture》として全世界に広がりました。2019年9月23日に行われた国連気候行動サミットでの彼女の演説は、利権を守るために行動に移さない大人たちへの痛烈な批判を、まっすぐな言葉で突きつけるものでした。

それをうけて、日本でもグレタ・トゥーンベリさんに関する本が年明けに相次いで翻訳、出版されました。他の新刊情報と分けて、3冊を紹介します。

その他の絵本、読み物などは何度かにわけて紹介していきます。お楽しみに!

(なお、画像は、各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用しています。また、それぞれ出版社のサイトへのリンクを貼っています。値段などはそちらで確認ください。)

 

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【絵本】

『わたしたちの家が火事です 地球を救おうとよびかけるグレタ・トゥーンベリ』ジャネット・ウィンター/作 福本友美子/訳 すずき出版 2020/2/5 (出版社サイト⇒こちら

昨年9月にアメリカで出版された絵本です。翻訳者の福本友美子さんは、昨年11月に作者のジャネット・ウィンターさんとニューヨークで会ってこられました。ジャネットさんは80歳。これまでも『バスラの図書館員』(晶文社 2006)、『ワンガリの平和の木』(BL出版 2010)、『マララとイクバル パキスタンのゆうかんな子どもたち』(岩崎書店 2015)、『この計画はひみつです』(すずき出版 2018)などの作品が翻訳出版されています。福本さん曰く、ジャネットさんは小柄で物静かな方ですが、内なるパワーを秘めている方で「強い意志をもって何かを成し遂げた人を描きたい」と考えていらっしゃるとのこと。グレタさんが温暖化による森林火災を見て「Our House is on Fire!」(わたしたちの家が火事です!)と危惧し、そこから行動に移していったことをわかりやすく伝えてくれています。彼女がなぜ学校を休んでまで国会の前で座り込んだのか。彼女の小さな抗議が、どのように全世界に広がっていったのかが、わかりやすく描かれています。巻末には参考ウェブサイトも掲載されています。

 

 

 

『グレタとよくばりきょじん たったひとりで立ちあがった女の子』ゾーイ・タッカー/作 ゾーイ・パーシコ/絵 さくまゆみこ/訳 フレーベル館 2020年2月 (出版社サイト⇒こちら

こちらは昨年11月にイギリスで出版された絵本です。この絵本の売り上げの3%は国際的な環境保護団体GREENPEACEに寄付される仕組みになっています。こちらの絵本では、資本主義の名のもと、地球の資源を取りつくし、人類以外の生物の生存権には目もくれないおとなたち(資本家だけではなく、それを良しとしてきた私たち無自覚な大人も)を「よくばりきょじん」として表現しています。『わたしたちの家が火事です』がグレタさんがどのようにこの運動を始めたのかを描くノンフィクションであるのとは対照的で、グレタさんが森の動物たちの訴えに応えて立ち上がり「よくばりきょじん」に抗議するというフィクションの手法が用いられており、小さな子どもたちに理解しやすい内容になっています。このお話では、最後に「よくばりきょじん」が膝を折って子ども達に謝り、環境に配慮していくことを誓います。現実にはまだそこに至っていませんが、一日も早く世界中が足並みを揃えて、環境に配慮し、すべての生物が共存できる世界を実現できることを願います。そのためには「いつか」ではなく「今」行動に移すことが大事でしょう。

 

 

 

 

【読み物】

『グレタと立ち上がろう 気候変動の世界を救うための18章』ヴァレンティナ・ジャンネッラ/著 マヌエラ・マラッツィ/イラスト 川野太郎/訳 岩崎書店 2020/2/28 (出版社サイト⇒こちら

 

こちらは香港を拠点に活動をするイタリア出身のジャーナリスト、ヴァレンティナ・ジャンネッラが書き、イタリアで出版されたYA世代向けの読み物です。ジャンネッラの娘さんが2019年3月15日(金)に、グレタさんの呼びかけで学校の友達と一緒に《#未来のための金曜日 #FridayForFuture》に参加したこと、それに向けて中高生たちがインターネットで検索し、科学記事を読み、懸命に学んでいったことが、執筆のきっかけになっています。「気候変動の世界を救うための18章」として、さまざまな切り口から現状起きている問題を示し、それに対して有効だと思われる解決策が書いてあります。いずれにしても残されている時間は少なく、おとなたちがこのまま右肩上がりの成長という幻影を見ているうちに破滅が来てしまうことを訴えています。巻末には同じく参考になるウェブサイトなどが記載されています。また2019年9月23日に行われた国連気候行動サミットでのグレタさんの演説全文も掲載されています。

 

 

(作成K・J)

2019年12月、2020年1月の新刊から(追記あり)


2019年12月、2020年1月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育・研究者向けなど)の中からおすすめのものを紹介します。(一部11月に出版されたものもあります)

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えたものの中から選んでいます。出版されたすべての本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、代官山蔦屋書店、横浜・日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店で選書して購入し、読んでから記事を作成しています。今回は一部寄贈された作品も含まれています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、今後は使用せずに各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【絵本】

『もし地球に植物がなかったら?』きねふちなつみ/作 真鍋真、ジョン・ブルタン/監修 あすなろ書房 2019/11/30

2019年は日本では猛暑や台風による水害が襲い、南半球オーストラリアでは年末から、かつてないほどの山火事、森林火災が続いています。
温暖化による地球環境の変化が私たちの生活にどんな影響を与えているか、多くの人が関心を寄せていることでしょう。
さて、この絵本は46億年前の地球誕生のあと、どのように生命が誕生していったのか、特に植物がどのように発生し、動物の生命を支えてきたかを、描いている科学絵本です。科学的な視点で書かれていますが、絵は美しい木版画で、絵を見ながら想像を膨らませ、何億年、何万年もさかのった地球の姿を思い浮かべることが出来るでしょう。

 

 

 

 

『ライオンとタカとアリになった男の子 ノルウェーのむかしばなし』菱木晃子/文 MARUU/絵 BL出版 2019/11/  

身寄りのなくなった男の子が、たったひとつ父が遺してくれた剣と知恵を使ってライオンとタカとアリの争いをおさめます。そのお礼に、ライオンとタカとアリは、望む時にライオンにもタカにもアリにも変身できる力を与えてくれました。その力を使って恐ろしいトロルに狙われている王国を救う冒険をします。19世紀半ばにペーテル・アスビョルセンとヨルゲン・モーがノルウェー各地に伝わるおはなしを集めて民話集を編みました。その民話集の中にあるおはなしを元に作られた絵本です。MARUUさんの描く繊細で美しい絵も、むかしばなしの世界に私たちを誘ってくれることでしょう。

 

 

 

 

 

『チンチラカと大男 ジョージアのむかしばなし』片山ふえ/文 スズキコージ/絵 BL出版 2019/12/10  

2015年までグルジアと呼ばれていたジョージアに伝わる昔話です。貧しい家に住む三人兄弟は、仕事を探しに出かけます。末っ子のチンチラカは知恵があることで知られていました。そのため、すぐに王さまに雇ってもらえました。しかし王さまからの依頼は、魔の山にすむ大男から黄金の壺を取って来いというもの。黄金の壺を取ってくると、王さまは次の命令をくだします。その度にチンチラカは知恵を使って、最後にはとうとう大男をやっつけてしまいます。国土のほとんどが山岳地帯ならではのダイナミックなおはなしで、スズキコージさんの絵がさらにそのおはなしに勢いをつけています。遠い国ジョージアに想いを馳せながら読みたい絵本です。

 

 

 

 

 

『メキシコのおはなし おまつりをたのしんだおつきさま 』マシュー・ゴラブ/文 レオビヒルド・マルティネス/絵 さくまゆみこ/訳 のら書店 2019/12/15

メキシコ南部オアハカ州の先住民族に伝わる昔話です。天体の動きを太古から人間は観察し、いろいろな物語を紡いできました。月が地球のまわりをひと月かけて周っていく中で、月が昇る時間は月の満ち欠けと共に変化していきます。太陽が昇っても、まだ空に薄っすらと残る月を見て「ゆうべは月がおまつりしていたんだ」と、想像力を膨らませていたのです。このお話は、ある日、星たちが「おひさまの空に引越ししたい」「昼間には楽しい遊びやお祭りがある」とおしゃべりしているのをお月さまが聞いたことから始まります。そして夜通しお祭りのお祭りが実現するのですが…メキシコの暮らしがわかるカラフルな絵は、オアハカ在住の画家が描いています。

 

 

 

 

 

 

『ブラウンぼうやのとびきりさいこうのひ』イソベル・ハリス/文 アンドレ・フランソワ/絵 ふしみみさを/訳 ロクリン社 2019/12/21

4才のブラウンぼうやは両親と共にホテルの高層階に住んでいます。両親は共に、ホテルから直結している地下鉄で仕事先へ向かいます。仕事をしているビルも地下鉄と直結しているので、一度も外に出る必要がありません。そんな暮らしをしているブラウンぼうやがある日ホテルのメイドをしているヒルダの家に遊びに行くことになりました。バスに乗って着いた先は田舎の一軒家。エレベーターではなくて階段で昇り降りすることにも驚くブラウンぼうや。生まれてはじめて雪だるまを作ったり、手作りケーキをいただいたり。質素だけれど温かい家族のふれあいがそこにはありました。それはブラウンぼうやにとっては、わくわくする最高の一日です。大都会で土に触れあうこともなく育つというと現代の作品のようですが、1949年の作品です。普遍的なテーマがこの絵本には含まれています。

 

 

 

 

 

『のりまき』小西英子/作 福音館書店 2019/12/30 (出版社サイト→こちら

子どもの頃、遠足や運動会の時に、いつも父が海苔巻きを作ってくれていました。海苔の上にすし飯を置いて、手際よく具を並べ、くるっくるっと巻いて出来上がるのが楽しくて見ていて飽きないものでした。そんなわくわくする子どもの気持ちにぴったり寄り添うような絵本です。声に出して読むと、さらに楽しい気持ちになって「のりまき作って!」とリクエストする子もきっといることでしょう。食べることが大好きな2才くらいの子どもたちも楽しめる絵本です。

 

 

 

 

『かえるの天神さん』日野十成/文 斎藤隆夫/絵 福音館書店 2020/1/10 (出版社サイト→こちら

かえるの平家ものがたり』『かえるの竹取ものがたり』に続く「かえるの絵巻シリーズ」の3冊目です。
受験シーズンに多くの日本人が祈願に訪れる天神さま。その祭神は菅原道真。彼は才気煥発だったために帝に重用され、藤原時平の恨みをかって陥れられ太宰府へ流されました。「北野天神縁起」「松崎天神縁起」に基づき、その後菅原道真が、どうして天神さまとして祭られるようになったのか、それをかえるの姿で表現した絵巻物語です。美しくも、コミカルな表情のかえるたちが、子どもたちを古典の世界にいざなうことでしょう。

追記:こちらの絵本は、2020年3月11日付で福音館書店より回収するという通達が出ております。詳しくは→こちら

 

 

 

 

『はるのうた』もちなおみ/作 イマジネイション・プラス 2020/1/27 (出版社サイト→こちら

秋、独り立ちをしたしまりすのチョコはゆきうさぎのネネと出会います。冬になるとチョコは冬眠します。冬眠しないネネとはしばらくの間お別れです。チョコはネネに預かった球根を抱いて眠ります。春が訪れ目が覚めると、球根からは茎が伸びています。そして美しい花を咲かせました。チョコとネネは花の咲く野原で再会しました。全ページ羊毛フェルトを使って描かれており、おはなしと相まって温かさが伝わってきます。

 

 

 

 

 

『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』マリア・ホセ・フェラーダ/文 パト・メナ/絵 星野由美/訳 偕成社 2020/1 (出版社サイト→こちら

作者のマリアさんが自閉症の男の子マヌエルくんと出会ったことで生まれた絵本『いっぽんのせんとマヌエル』(「本のこまど」では2017年8月、9月の新刊として紹介しています→こちら)の続編です。周囲からの刺激の多い都会の生活は自閉症のマヌエルくんにとっては強いストレスです。なのでマヌエルくんはいっぽんの線をたどって田舎へとドライブに出かけます。田舎で出会う鳥ややぎに馬、いろんなものがマヌエルくんにとっては新しい出会いと発見に満ちています。ピクトグラムが描かれていることで、自閉症などの子どもたちにとって、内容を理解することの助けになっている絵本です。

 

 

 

『こだまでしょうか?いちどは失われたみすゞの詩』金子みすゞ/詩 デイヴィッド・ジェイコブソン/物語 サリー・イトウ、坪井美智子/詩の英訳 羽尻利門/絵 JULA出版局 2020/1/25 

2016年にアメリカで「ARE YOU AN ECHO? The Lost Poetry of Misuzu Kaneko」が出版されました。それは出版元のChin Music Pressの編集者でもある著者デイヴィッド・ジェイコブソンさんが友人から贈られた金子みすゞの詩集に出会い、日本語を勉強していた彼はその詩から受け取るみすゞの感性に感銘を受けたことから始まりました。金子みすゞの詩は「私と小鳥とすずと」など代表作は国語の教科書に掲載されると共に、多くの言語に翻訳されて親しまれていますが、英訳されたものがなかったため、デイヴィッドさんは日系カナダ人のサリー・イトウさんとその叔母であり英語教師でもあった坪井さんに詩の英訳を依頼しました。デイヴィッドさんは、みすゞのいた時代の日本を描くことのできる画家を探していて日本ではまだ絵本作家デビュー前だった羽尻さんをみつけて絵を描いてもらいました。この出版に当たっては『金子みすゞ童謡全集』を出版しているJULA出版局が全面協力をしました。2020年は金子みすゞの没後90周年に当たることから、この度JULA出版局から邦訳出版の運びとなりました。前半には金子みすゞの生涯が、彼女の詩を発見し世に広めた研究者矢崎節夫氏の視点から書かれています。後半はみすゞの詩の代表作が日英2か国語で紹介されています。羽尻さんの描く絵も躍動感があり、この作品がアメリカで高い評価を受けたことにも納得できます。

 

 

 

『みずうみにきえた村(新版)』ジェーン・ヨーレン/文 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳 ほるぷ出版 2020/1/30  (出版社サイト→こちら

ほるぷ出版の創業50周年を記念して、1996年に出版された絵本の新版が出ました。色もより鮮明になっています。『月夜のみみずく』(コルデコット賞)の作者が、自分の家の近くにあるクアビン貯水池の成り立ちを題材に文章を書きました。20世紀前半に大都市への水の供給を担うために、大きなダムを作り、美しい谷間の町や村を貯水湖の下に沈めていったのです。『にぐるまひいて』(コルデコット賞)などを描いたバーバラ・クーニーが、谷間の四季折々の変化や、ダムが出来ることで住み慣れた家を壊していく人々の苦悩を余すところなく描いています。アメリカだけでなく、日本でも、世界各地でも同じように都市化を支えるために犠牲を強いられた美しい山間の集落はたくさんあったことでしょう。

 

 

 

 

 

【その他】

『おはなし聞いて語って  東京子ども図書館月例お話の会500回記念プログラム集』東京子ども図書館/刊 2019/12/24

東京子ども図書館では、1972年1月から毎月「月例お話の会」が開催され、そこから47年、昨年12月24日のクリスマスイブに500回を迎えました。それを記念して、500回分のプログラム集がこのたび出版されました。図書館でお話を語る時に、どんなお話があって出典はなにか、またどんなお話を組み合わせればよいか、知ることのできる貴重な資料です。ぜひ、おはなし会のプログラムを作成するときに、また新しいお話を覚えて語る時の参考にしていただければと思います。東京子ども図書館公式サイトの紹介ページは→こちらです。

 

 

 

 

 

『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』白井明大/文 辻恵子/絵 村松稔之/歌 福音館書店 2020/1/10 (出版社サイト→こちら

二十四節気の季節に合わせて歌い継がれてきた童謡やわらべうたを選び、それに沿って自分の幼少期の思い出や、子育てにまつわること、四季折々に大切にしたい風物や景色などを綴ったエッセイです。詩人らしい視点で書かれた文章は、読んでいて懐かしさと温かさに包まれます。
今、若いお母さんが子育ての中で歌わなくなっている童謡やわらべうたを、ぜひ覚えて歌ってほしいという願いからか、CDがついています。声楽家村松稔之さんの歌声も優しく、まさに「歌声は贈りもの」とは、このことかと思います。ぜひ多くの人に手に取ってほしい1冊です。プレゼントにも最適です。

 

 

(作成K・J)

2019年11月、12月の新刊から(その2)読み物ほか


2019年11月、12月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、読み物など絵本以外の新刊作品を紹介します。

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。今回は一部寄贈された作品も含まれています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【詩集】

『改訂版 ある子どもの詩の庭で』ロバート・ルイス・スティーヴンソン/詩 イーヴ・ガーネット/絵 間崎ルリ子/訳 瑞雲舎  2019/12/1 (出版社のサイト→こちら

『宝島』を書いたスティーヴンソンによる子どものための詩集です。子どもたちが、日常の中で出会うセンスオブワンダーがちりばめられた素敵な詩がたくさんおさめられています。翻訳者の間崎ルリ子さんが「訳者あとがき」に、若いころにニューヨーク公共図書館で働いていた時に同僚が読んでくれた詩の中にスティーヴンソンの詩もあったこと、そして「そのリズムと脚韻による韻律の響きの楽しさ、そこから湧き上がるイメージの心躍る思いに」気がつき、詩を楽しむようになったと綴っています。欧米の子どもたちは幼い時にたくさん詩を聞き、暗誦していきます。そういう積み重ねがことばへの感性を育てていくのです。スマホの普及によって、私たちのコミュニケーションで使うことばはどんどん短くなってきて、それだけで意志疎通が出来ている気になっていますが、実は大切なことを伝え忘れているのではと思うこともあります。この詩集は、2010年に出版されましたが、この1年品切れになっていたそうです。子どもに本を手渡す活動をされている方からの要望に応じて、この度改訂版を出版するにあたり、間崎ルリ子さんも翻訳を丁寧に見直され、単語の入れ替えや句読点の付け替えなどをされたとのことです。「2月のおはなし会プラン(幼児~小学生)」(→こちら)の導入でも、この詩集から「冬の絵本」を使っています。詩の楽しさを伝えるために、図書館のおはなし会で積極的に詩を読んであげてほしいと思っています。

 

 

『谷川俊太郎詩集 たったいま』谷川俊太郎/詩 広瀬弦/絵 講談社青い鳥文庫 講談社 2019/12/15 (出版社サイト→こちら

子どもたちに詩の楽しみを伝えたいと、上記のスティーヴンソンの詩集のところでも書いていますが、子どもたちが自分で手に取って楽しめる谷川俊太郎さんの詩集が青い鳥文庫から出版されました。『そのひとがうたうとき』、『春に』から始まり、ことば遊びなどを盛り込みながら、後半では『信じる』、『こころの色』、『愛が消える』、『ひとり』など思春期の迷いに寄り添い、またそれを支えてくれる詩が紹介されています。最後の方には『卒業式』、『交響曲』、『終わりと始まり』など新しい旅立ちに贈りたい詩が収録されています。一緒に声に出して読んでもいいし、折に触れて自分でそっと開いて読んでもいい。そんな38篇の詩が、広瀬弦さん(佐野洋子さんのご子息)のイラストとともに収められた青い鳥文庫です。おはなし会やブックトークなどで、ぜひ子どもたちに紹介してください。

 

 

 

【児童書】

『あたまをつかった小さなおばあさん がんばる』ホープ・ニューウェル/作 松岡享子/訳 降矢なな/絵 福音館書店 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

1970年に出版されて多くの子どもたちに愛されてきた『あたまをつかった小さなおばあさん』(→こちら)の続きのおはなしが2冊、この秋に出版されました。前作は『ぐりとぐら』の山脇百合子さんの挿画でしたが、今回は降矢ななさんが挿画を担当されました。長く愛されてきたちょっととんちんかんで憎めないおばあさんの雰囲気をそのままに降矢さんが描いていらっしゃいます。おばあさんは、なにか困ったことにぶつかると、頭にぬれタオルをまいて椅子に座り、人差し指を鼻の横にあてて目を閉じて考えます。その思いつくことの、面白いこと!たとえばクリスマスに大きなモミの木を切ってきて、家の中に入らないとわかると床と屋根に穴をあけて、モミの木を立てたり、クリスマスイブにはモミの木のてっぺんの星を見るためにわざわざ屋根に登って世界中の人々の幸せを祈ったり。ひとつひとつのおはなしは短くて独立しているので、おはなし会で分けて読んであげるのもよいでしょう。また、漢字も少なくルビもふってあるので、自分で読めるようになった子どもたちにおすすめできる1冊です。

 

 

 

『あたまをつかった小さなおばあさん のんびりする』ホープ・ニューウェル/作 松岡享子/訳 降矢なな/絵 福音館書店 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

小さなおばあさんは、自分の住む小さな家に誰も訪ねて来てくれないのは、通りから玄関のドアが見えないからだと思い当たります。そこでおばあさんがやったのは、ドアを外して通りの近くまで持っていくことでした。でもドアはそれだけでは立ってくれません。そこでおばあさんは蝶番とドアの枠を外してきますが、それでもだめ。となると、おばあさんはまたぬれタオルを頭に巻いて椅子に座り、人差し指を鼻のわきにあてて目を閉じて考えます。さて、思いついたことってなんだったのでしょう。こちらの巻では、おばあさんが手相を見てもらった後、旅行に出かけたり、スキーをしたり、なんともとんちんかんで楽しいおはなしがたくさんです。

 

 

 

 

 

『明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち』アラン・グラッツ/作 さくまゆみこ/訳 福音館書店 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

1939年、ナチスの侵攻から逃れるためにベルリンからハンブルクの港を経由してキューバへと向かう船に乗り込んだユダヤ人の少年ヨーゼフの家族。1994年、キューバの食糧難から逃れるために自由を求めてカリブ海を小さなボートで亡命の旅に出たイザベルの一家。2015年、シリアの内戦によって、アレッポの自宅が爆撃されたマフムードの家族は、トルコ国境を越え、地中海を渡ってヨーロッパへと逃避行を始めます。違う時代に、それぞれの家族が国を追われ難民となって困難な旅を続けていく様子が、同時進行で3人の子どもの視点から描かれます。やがて彼らの運命は、思わぬところで結びついていくのです。あとがきには難民に待ち受ける三つの試練を次のように挙げています。1)故郷での恐怖体験から逃れる試練、2)危険に満ちた難民の旅、住まいや食べ物を求め続ける旅の試練、3)新たな国で人生を一からやり直す試練。この本の作者は、印税の一部を世界の難民を救援する活動を支援するためにユニセフに寄付することも明記しています。読み進めていくにつれ、厳しい現実を突きつけられました。それでも現実を知ることはとても大事なことです。国連難民高等弁務官事務所の報告によると、2018年の難民は2590万人に上っており、そのうちの半数以上は子どもたちです。少しでも若い世代に関心を持ってもらえるといいなと思います。

 

 

 

 

『レディオワン』斉藤倫/作 クリハラタカシ/画 光村図書出版 2019/11/15 (出版社サイト→こちら

詩人の斉藤倫さんはこれまでも『どろぼうのどろぼん』や『せなか町から、ずっと』など優しくてどこか切ない作品を発表してこられました。その新作は、なんと犬が主人公。「みなさん、こんばんわん。月曜夜九時。レディオワンの時間です。」と快活にトークをするDJジョン。「DJジョンさんは、どうしてそんなに犬の気持ちがわかるのですか」と質問をされるのですが、DJジョンが犬だからなのです。動物言語翻訳機コピンジャー・マシンを通すと・・・ちょっと不思議で、ほろりとするお話です。
雑誌「飛ぶ教室」に連載された作品の単行本化です。単行本になるにあたり、書下ろしで追加された部分は、水色の用紙で印刷されています。

 

 

 

 

『うちの弟、どうしたらいい?』エリナー・クライマー/作 小宮由/訳 岩波書店 2019/11/26 (出版社サイト→こちら

アニーは12歳。お母さんは8歳の弟スティーヴィーのことを「たのむわね」とだけ言い残して出ていってしまいます。育児放棄された姉弟と祖母の3人の生活は、スティーヴィーの心を荒ませます。彼は問題ばかり起こし、祖母はそんな弟を有無を言わさず暴力でねじ伏せようとして、事態は悪くなるばかりです。そんな時、アニーは新しく着任したストーバー先生は、弟をそのまま受容してくれていることに気づき、先生に相談することにします。弟は落ち着き始めるものの、家庭の事情でストーバー先生が実家に帰ってしまいます。
ある日、一大決心をして先生を訪ねていった二人は、先生は親を亡くしたあと里親に育てられていたことを知ります。家庭が機能しなくなって、精神的に不安定な子どもたちを支えていくために、必要なことは何か、それを物語を通して語りかけてくれる作品です。

 

 

 

 

『図書館からの冒険』岡田淳/作・絵 偕成社 2019/12 (出版社サイト→こちら

6年生の渉は、両親が海外出張となったゴールデンウイークの間、大叔父さんの家で過ごすことになるのですが、渉はひとつ決心していることがありました。それは大叔父さんの家に隣接している廃校になった小学校の図書館に忍び込み、そこでひと晩泊まるということだったのです。それは大叔父から聞いていた図書館にあらわれる幽霊を確かめたいと思ったのでした。ところが図書館はパラレルワールドへの入り口だったのです。嵐と地震で荒れ果てた島に迷い込んだ渉は、その島を救うために動き始めるのでした。

 

 

 

 

 

『ほんとうの願いがかなうとき』バーバラ・オコーナー/作 中野怜奈/訳 偕成社 2019/12 (出版社サイト→こちら

5年生のチャーリーの家族は、父親が拘置所に収容され、母親は心を病んでしまって育児が出来なくなったことで、バラバラになってしまいます。姉は親友の家でホームステイすることになり、チャーリーは母親の姉一家へと引き取られていきます。そこは生まれ育った街とは違って、自然豊かな山地コルビー。チャーリーは、自分は一刻も早く母親のもとへ帰るんだと、いつも斜に構えています。ところが伯母夫婦のバーサとガスは、そんなチャーリーをそのまま受け止め、そっと寄り添います。チャーリーは、近所に住むハワードと少しずつ友情を深めながら、心の傷を癒し、成長していきます。子どもが安心して成長できる居場所について、深く考えさせられました。子ども同士の友情を軸におはなしはテンポよくすすみ、野良犬から飼い犬になったウィッシュボーンの存在も絡まって、とても読みやすい本です。

 

 

 

 

『ねこと王さま』ニック・シャラット/作・絵 市田泉/訳 徳間書店 2019/12/31 (出版社サイト→こちら

 

お城を竜に壊されて、ねこと二人だけで町の三十七番地の小さな家で暮らすことになった王さまの、ちょっと不思議で楽しいおはなしです。
昔話の「長靴をはいた猫」のように利発で気の利くねこと、この世離れした王さまとのやりとりが、どこかとぼけていて、面白いです。ちょっとした息抜きに読んでみるのもいいですね。

 

 

 

 

【その他】

『はじめよう!ブックコミュニケーション 響きあう教室へ』村中李衣・伊木洋/著 金子書房 2019/11/27 (出版社サイト→こちら

 

「ブックコミュニケーション」と聞いて、「ブックトーク」とはどう違うんだろう?と思う方は多いと思います。小さな子から老人と、あるいは刑務所の受刑者と共に「本を読み合う」という活動をしてきた村中李衣さんが、教師から子どもへ、おとなから子どもへという一方通行の本の紹介ではなく、1冊の本を通しておとなと子どもが自由に感じたことを共有できるような、本を仲立ちにして会話を生み出す、そんな実践を記録したものです。もっと自由に、「こんな本を読んだよ」、「この本、おすすめだよ」と子どもたちに語りかけ、人と人とのかかわり合いの中で新しい本との出合いをどんどん作っていかないと、子どもたちの読書離れはもっと進んでしまうのではないかという危惧が背景にあるのだろうと感じながら読みました。

 

(作成K・J)

2019年11月、12月の新刊から(その1)絵本


2019年10月、11月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、絵本の新刊作品を紹介します。(一部、11月以前のものも含まれます)

読み物については来週公開予定です。

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。今回は一部寄贈された作品も含まれています。

 

(なお、これまで画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用してきましたが、各出版社の著作権許諾方針にしたがい、書影を利用することにしました。許諾許可が出ないものについては、書誌事項のみ記載し、出版社のサイトへのリンクを貼っています。そちらでご確認ください。)

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【絵本】

 

『「へてかへねかめ」おふろでね』宮川ひろ/作 ましませつこ/絵 童心社 2019/10/20(出版社サイト→こちら

昨年12月29日に95歳で亡くなられた児童文学作家の宮川ひろさんの遺作です。宮川さんのご近所にお住いの村松和子さんのお宅で親子三代にわたって口伝えで伝わってきた入浴時の唱え歌が「へてか へねかめ かめかめ かめか かめの おのたま おちょりこ ちょりこ すっぽんかいの てきてきとんぼ こうとんぼ はりまの べっとう ちょうざえもん」だそうです。村松さんは長野県出身、その地域で伝わってきたわらべうたなのか、おかあさんのご実家だけで伝わってきたのか、節回しも今では詳細がわからないとのことです。お風呂に温まってこれを3回唱えるという習慣が、村松家で長く続いてきたことに宮川さんは「子どものときに毎日となえて、もらいこんできたことばは、あしたをいい日にする力をわきたたせてくれるのではないでしょうか。」と思ったと、あとがき(2018年秋)に書いてあります。ましませつこさんの明るく柔らかな絵が、祖母と孫の優しい時間を包み込んでくれているようです。

 

 

『おうさまのこどもたち』三浦太郎/作 偕成社 2019/11(出版社サイト→こちら

ある国の王様には10人のこどもがいました。ある日王様は自分を継ぐ者を決めるため、こども達に町へ出て人々の暮らしをよく見てくるようにと伝えます。それぞれのこどもは、自分が好きなことをして生きていくことを決めます。例えば花が好きな子は花屋に、乗り物が好きな子はメカニックに、歌が好きな子はアイドル歌手にというように。10番目の末っ子だけはなりたいものが見つからず「みんなが安心して暮らしていけたらいいな」と願っていました。王様は10番目の子に王位を譲り、兄弟姉妹が得意なことを活かしてこの国を豊かにしていくというお話です。昔話のテーマのようですが、今のこどもたちに共感できる職業が出てくるので、小さな子でも理解できるでしょう。三浦太郎さんらしい明るくポップにデザインされた絵も、楽しい絵本です。

 

 

『おばけのジョージー こまどりをたすける』ロバート・ブライト/作 こみやゆう/訳 好学社  2019/11/22 (出版社サイト→こちら

ちいさなおばけのジョージーはホイッティカーさんちのやねうらに住んでいます。優しい心の持ち主のジョージーは、庭の木の枝先にこまどりが巣を作ったのを見て、卵が落ちてしまわないか心配をします。風の強いある夜のこと、ジョージーはホイッティカーさんの帽子で落ちてきた卵を受け止めて、やねうらで保護をします。ホイッティカーさんは、お気に入りの帽子が無くなりこまってしまうのですが、帽子の中でこまどりの赤ちゃんが孵っているのを知って驚きます。ジョージーのともだちのねこやねずみも愛らしい小さな子も楽しめる絵本です。

 

 

 

 

『ちいさなタグボートのバラード』ヨシフ・ブロツキー/詩 イーゴリ・オレイニコフ/絵 沼野恭子/訳 東京外語語大学出版会 2019/11/29(出版社サイト→こちら

2018年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞したロシアのイーゴリ・オレイニコフさんの絵本が、翻訳出版されました。1987年にノーベル文学賞を受賞した詩人ヨシフ・ブロツキーが子どもたちのために書いたちいさなタグボートを主人公にした物語に、オレイニコフが美しい絵を描いています。小さなタグボートは、港の中で外国航路の大型船を曳航しながら、まだ行ったことのない異国へ思いを馳せます。それでも自分の持ち場はここであると言い聞かせ、愚直に同じことを繰り返していく。この詩はブロツキーが1962年にソ連の児童向け雑誌『Костер(たき火)』に発表した詩人としてのデビュー作で、イデオロギーの締め付けの厳しかったソ連時代の作品だそうです。そうした背景を知って読むと、さらにこの物語には深い意味があることがわかってきます。おとなはこの物語を深く味わい、こどもは小さなタグボートがいつも同じように活躍することに安心感を抱く。そんなさまざまな読み方が出来る作品です。

 

 

 

『うるさく、しずかに、ひそひそと』ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ/作 広松由希子/訳 河出書房新社 2019/10/30(出版社サイト→こちら

ウクライナの作家夫妻が手がけたこちらの絵本は、ブラティスラヴァ世界絵本原画展で2017年に金牌を受賞、2018年には下に紹介する『目で見てかんじて世界がみえてくる絵本』とともにボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門の最優秀賞を受賞しました。この作品では、「聞こえる」ということがどういうことなのかを、多面的に分析し、それを視覚的に表しています。また、聞こえない人とのコミュニケーションについても手話についてページを割いて説明しています。(しかも日本語版では五十音の指文字になるなど細やかな配慮がなされています)
音や「聞く」ということをグラフィカルに表現しているその手法もとても面白く、小学生からYA世代、おとなまで広く楽しめると思います。翻訳者の広松由希子さんご自身が、ブラティスラヴァやボローニャでこのご夫妻の作品に目をとめてこられ、初邦訳に至ったことをカバー見返しに記していらっしゃいます。

 

 

 

『目で見てかんじて 世界がみえてくる絵本』ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ/作 広松由希子/訳 河出書房新社 2019/11/30(出版社サイト→こちら

上記の絵本と共にボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門最優秀賞受賞したこちらの絵本は、目で見ること、視覚について、色の認識についてなど「見る」ということを、詳細に、しかし子どもでも理解できるようにグラフィカルに表現しています。編集者の方によると、「パントーンインク4色では足りず、色の三原色を表すために4色CMYKを足して8色を通したページがあります」とのこと。色について伝えるための贅沢な印刷であるということは、絵本を手に取ればわかると思います。色や、視覚についての科学的な知識から、目に見えないものをどう捉えるかという思索的なことまで、また目が見えない人のために点字についてもきちんと説明されており、小学生からYA世代、そしておとなまで一緒に楽しむことができるでしょう。

 

 

 

『せかいのくにでおめでとう!』野村たかあき/作 澤田治美(関西外国語大学教授)/監修 講談社 2019/11/26(出版社サイト→こちら

新しい年を迎えての挨拶のことば「しんねんあけましておめでとう」は、アメリカでは「Happy New Year!」、それではルーマニアでは?スペインでは?どこの国でも新しい年を喜び祝うことばがあります。ひとつの国につき見開き2ページを使って、世界14か国のお正月の様子と新年の挨拶を、版画で鮮やかに描いています。こうした作品を通して、子どもたちと一緒に世界へ目を向ける機会ができるとよいですね。

 

 

 

 

 

『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン/文と絵 石井桃子/訳 岩波書店 2019/11/27改版 (出版社サイト→こちら

ロングセラーの『ちいさいおうち』が、2001年の改版されて以来のリニューアルで、出版されました。原書の表紙のちいさいおうちの玄関の前に記されていた「HER-STORY」という文字が、これまでの日本語版では消されていましたが、今回はきちんと記されています。2017年に開催されたGalleryA4でのヴァージニア・リー・バートン展では、「HISTORYという歴史の概念は、男性だけが歴史を作る「His-story」ではなく、女性もまた歴史の主人公であるという彼女からのメッセージが記されている」(→こちら)とありましたが、日本語版にようやくそのことが反映されたと嬉しく思いました。またアメリカで出版された70th Anniversary Editionに掲載されたヴァージニアの息子Aris Demetrisの「母の思い出」の一文が松岡享子さんの翻訳で掲載されています。フォントも大きくなって読みやすくなっています。ロングセラーとして所蔵している館も、新版を入れて読み比べて見てほしいと思います。

 

 

『みずたまり』アデレイド・ホール/作 ロジャー・デュボアザン/絵 こみやゆう/訳 好学社 2019/12/3(出版社サイト→こちら

ある日、めんどりが大きなみずたまりをのぞき込んでびっくり。「コケ―ッ!まあ、たいへん!かわいいめんどりがみずのなかにおっこちてるわ!」そこであわてて七面鳥を呼んできますが、「ちがう!おっこちてるのは、りっぱな七面鳥だ」という具合で、次々に動物たちを呼んでくるのですが、そのたびに大騒ぎになります。でも、太陽の陽射しでみずたまりはいつのまにか乾いてしまい、みんなホッと一安心という、なんともユーモラスなおはなしです。デュボアザンの描く動物たちの表情もまた愉快です。『おばけのジョージー こまどりをたすける』と同様にこみやゆうさんの訳も、とても読みやすいです。

 

 

『父さんがかえる日まで』モーリス・センダック/作 アーサー・ビナード/訳 偕成社 2019/12 (出版社サイト→こちら

この作品はモーリス・センダックが1981年に発表した「OUTSIDE OVER THERE」を、1983年に福音館書店から脇明子さんの翻訳で出版された『まどのそとのそのまたむこう』(品切れ)の改訳新版で、偕成社から出版されました。『まどのそとのそのまたむこう』については福音館書店のサイト「ふくふく本棚」に小風さちさんがエッセイを書いていらっしゃいます。(「命がけのお話」→こちら)福音館書店版が出た時も、この作品が描かんとすることを、どう理解すればいいのか、話題になったものです。アーサー・ビナードさんの翻訳は、脇明子さんの翻訳と比べると、脇さんが原書に忠実に翻訳しているのに対して(56行)、今の子どもたちが物語を読み解けるように、原書には無いことばが、かなり足されています(78行)。タイトルも脇さんが原書に忠実なのに対して、物語の最後に登場する父親からの手紙の一節から『父さんがかえる日まで』と付けられており、ここにも翻訳者の意図するものが見えてくるようです。詩人であるアーサー・ビナードさんが、この作品から何を汲み取ろうとされていたのか、残念ながら出版記念トークに参加できず伺えないままですが、機会があれば確かめてみたいと思います。原書「OUTSIDE OVER THERE」と、ぜひ読み比べてしてみてください。翻訳とは何かを考えることができて、面白いです。

 

 

(作成K・J)

2019年9月、10月の新刊から


2019年9月、10月に出版された児童サービス向け出版物(絵本、児童書、ノンフィクション、YA向け、教育者・研究者向けなど)の中から、新刊作品を紹介します。(一部、見落としていた8月以前の新刊も含まれます)

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【絵本】

『めをとじてみえるのは』マック・バーネット/文 イザベル・アルスノー/絵 まつかわまゆみ/訳 評論社 2019/7/20

めを とじて みえるのは (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
マック・バーネット
評論社
2019-07-10
 
もう寝る時間なのに、女の子は「どうしてうみはあおいの?」、「どうしてはっぱはいろがかわるの?」、「ふゆにむかうと、どうしてトリはみなみにとんでいっちゃうの?」と次々にパパに質問します。それにユーモアをもって答えていくパパ。「どうして、ねなくちゃいけないの?」という質問には、目を閉じてはじめて見える世界があることを、そっと伝えます。親子のおやすみ前の大切な時間、こんな風に過ごせるといいですね。
 
 
 

『レナレナ』ハリエット・ヴァン・レーク/作 野坂悦子/訳 朔北社 2019/7/20

レナレナ
ハリエット・ヴァン・レーク
朔北社
2019-07-01

オランダで最も権威のある子どもの本の賞であるGouden Griffel(金の石筆賞)を1987年に受賞した『レナレナ』という絵本が復刊されました。作者であるハリエット・ヴァン・レークのデビュー作でもあり、またオランダ語の児童文学や絵本の翻訳者である野坂悦子さんにとっても翻訳作品のデビュー作品です。見開き左ページにはコマ割りの絵、右ページには手書き文字でレナレナの不思議で面白い行動を淡々と記しています。華奢な線で描かれるレナレナのやることなすこと、奇妙に感じますが、思ったまま行動する幼子のようでもあり、ふっと肩の力が抜けてきます。YA世代におすすめです。

 

 

『ぼくはレモネードやさん』えいしましろう/作・絵 生活の医療社 2019/8/30

ぼくはレモネードやさん
えいしましろう
生活の医療
2019-08-3

この絵本の作者は2007年生まれの12歳の男の子です。3歳の時に脳腫瘍を発症、2度の手術、放射線治療、化学療法を受け、5歳で退院しています。その後もずっと通院を続けています。小学3年生の時に小児がんについて知ってもらうための活動(レモネードスタンドや、患児やきょうだい児、家族の交流会など)を始めます。この絵本も、小児がんになって入院生活を送る子どもたちのこと、退院して学校に通うようになっても、後遺症に悩まされている子どもたちがいることを知ってほしいと願って作られています。大変な治療が続く中でも友達と支え合いながら、ポジティブにそれを捉えている姿に、ほんとうの強さ、優しさとはなんだろうと考えさせられます。

 

 

『ぽっとんころころ どんぐり』いわさゆうこ/作 童心社 2019/8/30

ぽっとん ころころ どんぐり
いわさ ゆうこ
童心社
2019-09-03

前半ではくぬぎの木が春から秋への変化していく様子を描き、中盤ではさまざまな種類のどんぐりがあることを伝え、後半ではどんぐりが多くの野生動物の栄養源になっていることを、幼い子ども達にもわかりやすく教えてくれる絵本です。『きゃっきゃっキャベツ』、『つやっつやっなす』など、「どーんとやさい」シリーズと同じいわささんの新刊です。

 

 

『とんでいったふうせんは』ジェシー・オリベロス/文 ダナ・ウルエコッテ/絵 落合恵子/訳 絵本塾出版 2019/9

とんでいった ふうせんは
ジェシー・オリベロス
絵本塾出版
2019-09-24
 
おじいちゃんの記憶を風船にたとえて、老いについて考えさせてくれる絵本です。アメリカで2019年ゴールデン・カイト賞シュナイダー・ファミリーブック賞を受賞しています。孫の男の子は、おじいちゃんの昔の思い出話を聞くことが大好きでした。おじいちゃんは、その生きてきた時間を示すようにたくさんの風船を持っているのです。ところがある時から、その風船がその手を離れていってしまうことすら気づかず、しまいには何も残ってない。おじいちゃんが、記憶を無くすことに戸惑う息子に、両親はおじいちゃんの記憶はあなたが引き継いでいるのよと優しく諭すのです。人は必ず老いていきます。家族がそれを引き継ぐことで記憶が伝承されていく。そこに救いを感じました。
 
 

『くるまがいっぱい!』リチャード・スキャリー/作 木坂涼/訳 好学社 2019/9/2

くるまが いっぱい!
リチャード・スキャリー
好学社
2019-09-03

アメリカで初版1951年、1987年に改訂版が出版された作品の翻訳絵本です。「スキャリーおじさん」シリーズ(BL出版)で親しまれているスキャリーの絵本の特徴は、その鮮やかな色彩にあるといえます。描かれている車はどれも今ではクラッシックカーとなっていますが、乗っている人物の表情も豊かで、小さな子どもたちにとっては、車の絵本として楽しめるでしょう。

 

 

『おつきさまひとつずつ』長野ヒデ子/作 童心社 2019/9/5

 
実際にあった娘さんとのエピソードが絵本になりました。長野ヒデ子さんのお嬢さんと満月の夜に歩いていると、「お月さまがついてくる」と言ったお嬢さん。地球上のあちこちからお月さまが見えることを伝えると、それぞれの国にひとつずつお月さまがあると思い込んでいたそうです。そんな子どもらしい勘違いが可愛らしい作品です。(長野麻子さんは音楽学研究者。長野ヒデ子さんが絵を描いた絵本『すっすっはっはっ こ・きゅ・う』(童心社 2010)、『まんまんぱっ』(童心社 2016)があります)

 

 

『きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ』荒井良二/作 NHK出版 2019/9/5

きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ
荒井 良二
NHK出版
2019-09-05
 
愛馬あさやけに乗って男の子が駆けていきます。それは新しく生まれてくる命に、あるいはなにか新しいことを始める人にお祝いのことばを届けるためです。どんなに暗い夜にも必ず夜明けがやってくるように、あさやけの中で見る光景は希望の象徴でもあります。現実の世界では自然災害や、子どもたちへの虐待など暗いニュースが続きます。だからこそ荒井良二さんはあえてまばゆい光の世界を描いたのではないかと思います。それは子どもたちの未来が、光り輝くものであってほしい、そのために大人が今、何をすべきなのかと問いかけてくるようにも感じました。3年ぶりのオリジナル絵本です。

 

『すてきってなんだろう?』アントネッラ・カペッティ/文 メリッサ・カストリヨン/絵 あべけんじろう・あべなお/訳 きじとら出版 2019/9/15

すてきって なんだろう?
アントネッラ・カペッティ
きじとら出版
2019-09-01

板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館主催「いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉」の2018年第25回(→こちら)で、最優秀翻訳大賞を受賞した絵本がきじとら出版から出ました。「すてき」と声をかけられたいもむしが、「すてきってなんだろう?」とその意味を探して回ります。聞く相手ごとに「すてき」の意味が違っていて混乱するいもむしくん。こんな風に考える前は気楽だったのになあと思います。幼児期の子どもたちは、新しいことばを覚え、そのことばの意味がなんであるかを理解する過程で、具体的思考から抽象的思考へと思考能力を身に付けていきます。まさにそんな年代の子どもたちと一緒に楽しみたい絵本です。

 

『きみののぞみはなんですか?』五味太郎/作 アノニマスタジオ 2019/9/14

きみののぞみはなんですか?
五味太郎
アノニマ・スタジオ
2019-09-24

絵本作家歴46周年を迎えた五味太郎さんが「アートと哲学とユーモア」をコンセプトにしてつくられた、「くるみドイツ装」と呼ばれる装丁の詩画集のような絵本です。「ぞう・きみののぞみはなんですか?」、「ワニ・すきなのだれ?」、「つくえ・なにがすき?」、「家・なりたいもの なんですか?」と、五味さんが問いかける相手は、命有るものいれば、無いものも。その答えも五味さんらしく、ちょっと捻ってあって、面白い。文字の配置も凝っていて、アート作品として見ても楽しい本です。

 

 

『しろとくろ』きくちちき/作 講談社 2019/9/17

しろとくろ (講談社の創作絵本)
きくち ちき
講談社
2019-09-19
はじめて出会うものすべてに「なんで なんで」となんでも知りたがる好奇心旺盛な猫のしろ。そんな中で犬のくろと出会います。「まってまって いっしょにあそぼう」二匹はたがいに大好きな存在に。小さな子どもたちが、友達に会うのを心待ちにする、そんな気持ちが、画面から溢れています。11月10日まで武蔵野市立吉祥寺美術館で、この絵本の原画展(しろとくろ きくちちき絵本展→こちら)が開催されましたが、その原画展の図録には、犬のくろの立場から、しろとの出会いを喜ぶ『くろ』という絵本もついていました。両方読むと、さらに『しろとくろ』の世界観がぐっと迫ってきます。(きくちちきさんがビラティスラヴァ世界絵本原画展で金牌を受賞した記事→こちら

 

『たいこ』樋勝朋巳/文・絵 福音館書店 2019/10/5

たいこ (幼児絵本シリーズ)
樋勝朋巳
福音館書店
2019-10-02

きょうはマラカスのひ―クネクネさんのいちにちー』のくねくねさんが戻ってきました。くねくねさんが「トン トン トトトン トン トン トトトン」とたいこを叩いていると、次々にフワフワさんなど「なかまにいれて」とともだちがやってきます。みんなで仲良くたたいていると「うるさいぞー ガオーガオー」とかいじゅう。でも、かいじゅうもたいこを叩くと「ゴン ゴン ガオー」どんどん楽しくなってきて、みんなも戻ってきて、一緒に「トン ポコ ペタ ボン ガオー ゴン」と叩き始めます。読んでいる方もリズムに合わせて、楽しくなってきます。(そのほかのクネクネさんシリーズは『フワフワさんはけいとやさん』(2014)、『クネクネさんのいちにち きょうはパーティーのひ』(2017)があります。)

 

『やぎのグッドウィン』ドン・フリーマン/作 こみやゆう/訳 福音館書店 2019/10/10

やぎのグッドウィン (世界傑作絵本シリーズ)
ドン・フリーマン
福音館書店
2019-10-09
 
くまのコールテンくん』などの作者ドン・フリーマンが生前に出版したいと願っていたにも関わらず、出版できずにいた作品です。最終段階のダミー本を息子が発掘し、2017年に60年ぶりに新作として出版されました。実際にフリーマン夫妻が若いころに、やぎに絵の具をくちゃくちゃ噛まれてという体験をもとに着想されたお話は、とても愉快で、また最後はほんとうに大切なものは何なのかを気づかせてくれます。翻訳はこみやゆうさんです。
 

 

『おたんじょうびのおくりもの』むらやまけいこ/作 やまわきゆりこ/絵 教育画劇  2019/10/19(第2版)

おたんじょうびのおくりもの
村山桂子
教育画劇
2019-10-15

1984年に出版された絵本の第2版です。第1版は264mm×188mmでしたが、200mm×200mmと版型が変わっています。正方形になったことで、小さな子ども達には手になじみやすい形になっています。うさぎのぴょんぴょんは、ともだちのみみーに会いに行こうとして、今日がみみーの誕生日だったと思いだします。みみーへの贈り物にりんごがあったと思い出しますが、隠しておいたところを探してもみつかりません。やっとのことで、やぎのおじいさんが病気だと知ってあげてしまったことを思い出してがっかりするぴょんぴょん。そこへやぎのおばあさんがやってきて・・・ぴょんぴょんはりんごを雪の中に隠していました。冬に読んであげたい1冊です。

 

『図書館のふしぎな時間』福本友美子/作 たしろちさと/絵 玉川大学出版部 2019/10/20

図書館のふしぎな時間 (未来への記憶)
福本 友美子
玉川大学出版部
2019-10-12

上野にある国立国会図書館国際子ども図書館を訪れたことはありますか?この絵本は、長く公立図書館で司書をされ、その後児童書の翻訳(『としょかんライオン』(岩崎書店)、『ないしょのおともだち』(ほるぷ出版)など)をされている福本友美子さんのオリジナル作品です。2000年の国際子ども図書館オープンから8年間、非常勤調査員として展示会などに関わった経験をもとに書かれています。図書館で調べ物をするお母さんについてきた女の子が「子どものへや」で本を読んでいると、書架の間に本の妖精が現れて、図書館のなかを案内してくれることになります。女の子は、本の世界のひろがり、物語の力、図書館の役割を妖精との会話で改めて知っていきます。たしろちさとさんの絵も柔らかく、素敵です。

 

『くろはおうさま』メネナ・コティン/文 ロサナ・ファリア/絵 宇野和美/訳 THOUSANDS BOOKS  2019/10/25

くろは おうさま
メネナ・コティン
サウザンブックス社
2019-11-16
 
真っ黒な紙に絵とスペイン語の点字が浮き出るようにエンボス加工がされている絵本です。そこに広がっているのは、目の見えないトマスが感じている色の世界です。視覚に障害を持つ人が色をどのように捉えているのか、一緒に感じてほしいと思います。ベネズエラの作家と画家による作品で、メキシコで出版されました。2007年のボローニャ国際児童図書展ラガッツィ賞(ニューホライズン部門)と、2008年のニューヨークタイムズ・ベスト・イラスト賞を受賞しています。THOUSANDS BOOKSのクラウドファンディングで日本語に翻訳されました。日本語版が出る時に、別冊で日本語の点字シートもついています。
 
『ねこのオーランド― よるのおでかけ』キャスリーン・ヘイル/作 こみやゆう/訳 好学社 2019/10/25

ねこのオーランドー よるのおでかけ
キャスリーン・ヘイル
好学社
2019-10-23
ねこのオーランド―は、ご主人が読んでいる新聞記事に「サーカス‼世界で一番すばらしいライオンとトラの芸!!!」と書いてあるのを見て、こねこたちを連れてサーカスへ出かけていきます。ところがひょんなことから、オーランド―はサーカスの舞台の上に落っこちて、そのまま一緒になって芸をすることになってしまいます。つぎつぎに起こるドタバタ劇にお客さんはオーランドーをサーカスの一員だと思って大喝采。最後は同じ猫族として、ライオンやトラを一喝するオーランドーの姿も滑稽です。原作は1941年にイギリスで出版されています。この絵本も翻訳はこみやゆうさんです。
 
 
 

【児童書】

『貸出禁止の本をすくえ!』アラン・グラッツ/作 ないとうふみこ/訳 ほるぷ出版 2019/7/25

貸出禁止の本をすくえ!
アラン グラッツ
ほるぷ出版
2019-07-25

エイミー・アンは9歳。家は、2人の妹がいて、両親は長女の自分にばかり我慢を強いています。そんなエイミー・アンの居場所は学校の図書室だけです。ところがある日、大好きな『クローディアの秘密』が書架から消えているのです。司書のジョーンズさんは、ある保護者が小学校の図書室にふさわしくないという結論を出して、教育委員会もそれに同意したために貸出禁止になったというのです。そしてエイミー・アンに、教育委員会の会議で一緒に意見を言ってほしいと頼むのですが・・・人前でしゃべるのが苦手で、内気なエイミー・アンは本を救うために、自分の弱さに向き合い、なんとかそれを乗り越えていこうとします。クラスの中にひとり、またひとりと協力者が現れていき、エイミー・アンは自分の殻を打ち破っていきます。ひとつの価値観で子どもたちを縛り付けようとするおとなに、きちんと自分の想いを伝えることが出来た時、事態は大きく動いていきます。小学校中学年の子どもたちにぜひ読んでほしいなと思います。

 

『ヤナギ通りのおばけやしき』ルイス・スロボドキン/作 小宮由/訳 瑞雲舎 2019/9/1

ヤナギ通りのおばけやしき
ルイス スロボドキン
瑞雲舎
2019-08-14
 
原題は「TRICK OR TREAT」、ハロウィンがテーマの幼年童話です。(もっと早くに紹介できればよかった)ハロウィンの夜、ヤナギ通りに住む子どもたちは変装して通りの家々を「いたずらか、おかしか」と言ってまわり、お菓子をもらってきます。ところがその年のハロウィンの夜、通りの真ん中にある、みんながおばけやしきと呼んでいる、誰も住んでいないはずの家に明かりが灯っていました。リリーとビリーの姉弟がその家のドアをノックして「いたずらか、おかしか」と伝えると、出てきたおじいさんは「いたずらをあげる」と言うのです。ヤナギ通りの子どもたちが次々にやってきて・・・お菓子ではなく「いたずら」をくれるそのおじいさんの正体は?と、気になって一気に読めてしまう幼年童話です。ひとりで読み始めた子にぴったりの1冊です。
 

 

『菜の子ちゃんとマジムンの森』日本全国ふしぎ案内4 富安陽子/作 蒲原元/画 福音館書店 2019/10/10

ある日ふっと現れて、学校を不思議な空間に変えてまた去っていく「菜の子先生」の小学生の時のエピソードを集めた「日本全国ふしぎ案内」の4冊目です。今度の舞台は沖縄で、菜の子ちゃんは沖縄本島北部に広がる山原(やんばる)を舞台に、不思議なことが起こります。妖怪ブナガヤの落とし物をひろったユージと菜の子ちゃんは、それを届けに行って不思議な体験をします。赤と青のシーサーにのって山原の奥深くへ分け入り、今度はブナガヤに引っ張られて海の底へ。百年に一度のマジムン月の満月の夜に起きるキーヌーシー(樹齢百年の樹の精霊)の子どもたちの誕生をユージと菜の子ちゃんは目撃するのです。テンポよくお話が進んでいくので、読書が苦手な子でも楽しめる1冊となるでしょう。

 

 

『シノダ! 夢の森のティーパーティー』富安陽子/作 大庭賢哉/絵 偕成社 2019/10

夢の森のティーパーティー (シノダ!)
大庭 賢哉
偕成社
2019-09-18
 
 
 
人間のパパとキツネ族のママから生まれたユイ、タクミ、モエの5人家族の信田家の不思議な物語「シノダ!」の最新刊です。これでシリーズ11作目になります。ある日、ユイは不思議な夢を見ました。おばあちゃんと梅もぎをするのですが、熟した実を取っても、取っても手にした途端に萎んで黒くなってしまうのです。夢の中で転がった梅の実を追いかけてお菓子の家の手前の橋まで行ったところで目覚めました。また、次の日も同じ夢の続きを見てしまいます。今度は夢の中にタクミも出てくるのです。実はママの弟の夜叉丸おじさんの夢の中にふたりは引き込まれたのでした。夜叉丸おじさんとタクミは夢の中に閉じ込めようとする夢魔の策略に引っかかって動物の姿にされ、このままだと夢から覚めることが出来ないという大ピンチに、ユイが手にしたものは・・・現実の世界で無意識に目にしたものが夢に現れたり、さまざまな出来事が脈絡もなく繋がっていたりしますが、そんな不思議な夢の世界を冒険の舞台にし、読む者を引き込んでいきます。

 

『魔法のカクテル』ミヒャエル・エンデ/作 川西芙沙/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2019/10/16

魔法のカクテル (岩波少年文庫 249)
ミヒャエル・エンデ
岩波書店
2019-10-17
 
1992年にハードカバーで出版(→こちら)されたエンデの作品の少年文庫版です。大晦日の夜、魔術師とその伯母である魔女は、「地の果ての闇」の大臣と契約した自然破壊、生物の絶滅を実行するために、どんな願いも叶うという「魔法のカクテル」作りに挑みます。動物最高評議会からスパイとして送り込まれた猫のマウリツィオとカラスのヤーコブは、ふたりの悪事を止めようと奮闘します。大晦日の夕方5時から始まって真夜中の12時まで、時計の針の動きに合わせて物語が進んでいきます。少年文庫版の解説はあさのあつこさん。「ユーモア、風刺、皮肉、高揚、冒険、窮地、魔法、悪魔、信頼、希望、未来への危惧、悲哀、笑い、どんでん返しにハッピーエンド。ともかく、あらゆるものが混ざり合っている。なのに、濁りもせず黒く固まりもせず、この世のどこにもない色を持つ物語のカクテル」と評しているように、『モモ』や『はてしない物語』を書いたエンデの、読み人を酔わせる力を持つ作品です。
 

【ノンフィクション】

『こども六法』山崎聡一郎/著 伊藤ハムスター/絵 弘文堂 2019/8/30

こども六法
山崎 聡一郎
弘文堂
2019-08-20

帯には「きみを強くする法律の本 いじめ、虐待に悩んでいるきみへ」と書かれています。法律は人々の行動を縛るものではなく、実は私たちの自由で安心な生活を守るものであるということを、法律になじみのない子どもたちにもわかりやすく説く解説書です。法律を学ぶことは、私たちの生活を守り、弱い立場にあるものを支えてくれる杖になるという明確なメッセージが伝わります。刑法、刑事訴訟法、少年法、民法、民事訴訟法、日本国憲法、そしていじめ防止対策推進法の7章からなり、イラスト入りの事例は子どもたちの生活に即したものになっています。

 

【その他】

『 翻訳者による海外文学ブックガイド BOOK  MARK』金原瑞人・三辺律子/編 CCCメディアハウス 2019/10/7

翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK
金原 瑞人
CCCメディアハウス
2019-09-28

 

「もっと海外文学を若い世代に読んでほしい」そのためには、海外文学のブックガイドが必要。そんな思いから「BOOK MARK」はフリーペーパーとして2015年秋に書店での配布が始まりました。(金原瑞人さんのオフィシャルサイト→こちら)そしてこの度、3年分のフリーペーパーが1冊のブックガイドとして出版されました。12のテーマで17冊ずつ、204作品が紹介されています。フリーペーパーのファンの人にも、嬉しい書籍化です。

(作成K・J)

2019年7月、8月、9月の新刊から(その2)読み物ほか


早く紹介したいと思いながら、「2019年7月、8月、9月の新刊から(その1)絵本」をUPして2週間以上が経過してしまいました。

読み応えのある本が多く、時間がかかってしまいました。

 

なお、その後、紹介したい絵本も続々出ています。そちらはなるべく早い時期に別記事で紹介します。

 

ここに紹介している本は、実際に手にして読み終えた中から選んでいます。出版されたすべての新刊本を購入して読むことはできませんが、毎月、教文館ナルニア国の新刊本コーナー、クレヨンハウス新刊本コーナー、横浜日吉にあるともだち書店など、信頼できる児童書の目利きのいる書店にある本から選書し、購入し、読んで記事にしています。

 

(なお、画像はブログ用Amazonアフィリエイトを使用しています。書誌事項は奥付の出版年月日にしており、Amazon入荷日とちがって表示されることがあります。ご了承ください。)

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【児童書】

『八月のひかり』中島信子/作 汐文社 2019/7

八月のひかり
中島 信子
汐文社
2019-06-29

いろいろなところで話題に上る「子どもの貧困」に正面から向き合った作品です。小学5年生の美貴は、働く母親に代わって家事を一手に引き受けています。無邪気にふるまう小1の弟勇希と違って、母がなぜ父親と別れたか、よく理解しているからでした。母親は貧しいからこそ、だらしない生活はしてはいけない、礼儀正しく、うそを言わないことが大事だと二人に伝えます。親子3人が慎ましく支え合っている姿を淡々と描きながら、社会的な問題に光を当てており、読む者の心を揺さぶります。

(公式サイト→こちら

 

『きみの存在を意識する』梨屋アリエ/作 ポプラ社 2019/8

きみの存在を意識する (teens’best selection)
梨屋 アリエ
ポプラ社
2019-08-02
 
中2のひすいと、同い年の血のつながらない弟の拓真を中心に、生きづらさを抱えている中学生の日常をそれぞれの視点から描く連作短編です。ひすいは、読書をするのが極端に苦手ですが、同じクラスの中には書字障害、性同一性に悩む子、化学物質過敏症など、何らかの問題を抱えている子がいます。彼らの姿を瑞々しく描きながら、読む者に´普通’という概念とは何か、どのように彼らに寄り添えばよいか問いかけてくる作品です。
 学習障害という概念は、ここ10年ほどで浸透してきました。ディスレクシア(識字障害)とディスグラフィア(書字障害)も、それに含まれます。知的発達に遅れがないにもかかわらず、文字を読むこと、あるいは文字を書くことに困難を示す特性です。これらは、合理的配慮(PCの読み上げソフトを使う、PC入力をする)によって十分に克服することができます。作品中でも、心桜(こはる)が合理的配慮に対応できる学校へ転校する決意をすることが描かれています。この作品は、2020年オナーリスト文芸作品部門およびJBBY賞を受賞しました。

作者が、中学生と共に読書会を行った様子が「好書好日」に掲載されています。(サイト→こちら)

 

 

『かくれ家のアンネ・フランク』ヤニー・ファン・デル・モーレン/作 西村由美/訳 岩波少年文庫 岩波書店 2019/8/8

かくれ家のアンネ・フランク (岩波少年文庫)
ヤニー ファン・デル・モーレン
岩波書店
2019-08-09

ユダヤ人という理由だけでナチスの強制収容所に送られ多くの人が命を落とした事実のひとつとして世界中で読まれてきた『アンネの日記』ですが、1945年に第二次世界大戦が終結して74年が経ち、その事実はどこまで語り継がれているのでしょうか。日本でも若い世代に語り継がれていくべき戦争の記憶が薄れているように、オランダでもアンネ・フランクの悲劇を知らない子どもたちが増えているといいます。そのことに危惧した作者が、子どもたちに『アンネの日記』を知ってもらおうと、アンネ・フランク財団の全面的な協力を得て、事実に基づいて書いた本です。アンネの幼少期から、戦争が始まった頃のこと、かくれ家での生活、そして収容所での暮らしと最期を迎えるところまでが綴られています。戦争とは、ここまで非情に人権を踏みにじるものなのか、そんな中でも尊厳を失わずにいた彼女たちの暮らしを知ることは、今もなお大切なことだと思います。

 

 

 

『シャイローと歩く秋』フィリス・レイノルズ・ネイラー/作 さくまゆみこ/訳 あすなろ書房 2019/8/30

シャイローと歩く秋
フィリス・レイノルズ・ネイラー
あすなろ書房
2019-08-20

1992年にニューベリー賞を受賞した『シャイローがきた夏』の続編です。マーティは、荒くれもののジャドから虐待を受けていた子犬を子どもらしい策略で救い出し、シャイローと名付けます。前作ではそのシャイローをジャドからもらい受けるところまでを描いていました。続編では、傍若無人な振る舞いをするジャドと、マーティが正面から対峙します。その過程で、親にシャイローを救うために嘘をついたことをきちんと打ち明け、またジャドに対してもただ憎むだけではだめだということを学んでいきます。自分の弱さをみつめ、他人を許すことを覚えていくマーティの心の成長に、読む者も勇気づけられました。本のこまどでは2015年4月に紹介しています。(→こちら

 

 

『ヤービの深い秋』梨木香歩/文 小沢さかえ/絵 福音館書店 2019/8/30

ヤービの深い秋 (福音館創作童話シリーズ)
梨木 香歩
福音館書店
2019-08-28

『岸辺のヤービ』の待望の続編です。(本のこまどでの紹介は2015年9月でした。→こちら)秋が深まりゆくころ、はりねずみのような姿をしているクーイ族のヤービは、友達のトリカたちと一緒にトリカのお母さんの薬になるというユメミダケを取りに森深く分け入ることになりました。そのころ「わたし」こと寄宿学校の教師ウタドリも、家庭の事情を抱えるギンドロたちと森へユメミダケを探す冒険にでかけます。美しい秋の森で起きる幻想的な物語の中に、人が生きることの中で大切にしなければならないことがきちんと描かれています。「成長する子どもを、だまってかたわらで見守る。それが、サニークリフ・フリースクールのの職員たちの、いちばん大きな仕事なのだと。」この一文が、読み終わったあとも、心にこだましています。

 

 

『しぶがきほしがきあまいかき』石川えりこ/作・絵 福音館書店 2019/9/5

秋、おばあちゃんと一緒に渋柿を取り入れ、干し柿づくりを覚えていく姉弟たちの様子が瑞々しく描かれている幼年童話です。「ちちんぷいのぷい おひさまいっぱいあたってね あまーい あまーいかきになれ しぶがき しぶがき あまくなれ」と繰り返される唱え言葉も楽しく、またモノトーンの絵の中に、柿の鮮やかな色が際立っていて、秋の収穫の喜びを一緒に味わえる作品です。

 

 

銀の匙』中勘助/作 安野光雅/絵 朝日出版社 2019/9/6

銀の匙
中勘助
朝日出版社
2019-09-07

大正10年に岩波書店から出版された中勘助の『銀の匙』は、その後、灘高校の国語の授業の教材となったことから、話題になりました。灘高校の名物国語教師橋本武によるその授業の様子は、2012年に岩波ジュニア新書『〈銀の匙〉の国語授業』(公式サイト→こちら)としてまとめられました。その『銀の匙』に安野光雅さんが新たに挿絵をつけました。美しい装丁の本書には、ふんだんに脚注がつけられており、明治・大正期の子どもの生活が、生き生きと描き出されています。この機会にぜひ読んでみませんか。

 

 

【ノンフィクション】

『民主主義は誰のもの?』ブランテルグループ/文 マルタ・ピナ/絵 宇野和美/訳 あしたのための本(1) あかね書房 2019/7/20

民主主義は誰のもの? (あしたのための本)
プランテルグループ
あかね書房
2019-07-22

このシリーズは、「日本は、第二次世界大戦のあと、戦争の悲劇を繰り返さないために日本国憲法を制定し、民主的で平和な国を築いてきたはずだったが、そうなっているだろうか」という翻訳者の宇野和美さんの問いかけで始まります。この本はスペインで1977年に出版されました。「みんなが参加して、みんなできめる。それが民主主義だ。」、「ほんとうに民主的な人は、誰の意見にも耳をかたむけ、平等で、公平で、勝っても負けても、いさぎよく堂々としているはずだからだ。」そして、それを判断するためには「情報がよくいきわたっていなければならない。」と書いてあります。「自分たちの社会は自分たちできめる」というテーマでの政治学者宇野重規さんの解説も読みごたえがあります。

 

『独裁政治とは?』ブランテルグループ/文 マルタ・ピナ/絵 宇野和美/訳 あしたのための本(2) あかね書房 2019/7/20

独裁政治とは? (あしたのための本)
プランテルグループ
あかね書房
2019-07-22

「独裁者は、なかまに気前よく、賞をあたえたり、土地をプレゼントしたりする。ときには、自分のものではないものまで、あげてしまう。独裁者は法律であり(独裁者だけが、法律をつくる)、正義だから(独裁者の友だちだけが、裁判官になれる)、どうにでもなれる。」という一文に、あれ、これ、今の日本かしらと感じてしまいました。こちらの本では、社会学者佐藤卓己さんが「独裁者はどうしてうまれるのか」というテーマで解説を書いています。

 

『社会格差はどこから?』ブランテルグループ/文 マルタ・ピナ/絵 宇野和美/訳 あしたのための本(3) あかね書房 2019/7/20

社会格差はどこから? (あしたのための本)
プランテルグループ
あかね書房
2019-07-22

「人はみな平等だ。けれども、世のなかには、ちがいをつくりだすものがある。」と冒頭で投げかけてきます。どうしてこの世の中に格差が広がるのか、それを狭める方法があるのか、基本的人権に触れながら、それを考えるように促します。こちらでは「格差のない社会をつくるには」と題して社会学者の橋本健二さんが解説を書いています。

 

『女と男のちがいって?』ブランテルグループ/文 マルタ・ピナ/絵 宇野和美/訳 あしたのための本(4) あかね書房 2019/7/20

女と男のちがいって? (あしたのための本)
プランテルグループ
あかね書房
2019-07-22

男女の違いは、体のつくりだけで同じ人間だと、しかし育てられ方で違いが出てくると、この本の作者は言います。本来は、ひとりひとりが違っていて、男女というだけで、決めつけることではないと。社会全体が、そんなふうに既成の型にはめずに子どもを育てられたらどれだけいいだろうと思います。こちらでは社会学者、今野美奈子さんが「ひとりひとりが社会のあしたをつくる」と題して解説しています。

 

以上、「あしたのための本」4冊は2016年ボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門最優秀賞を受賞しています。(あしたのための本公式サイト→こちら

 

【その他】

『読書教育の未来』日本読書学会/編 ひつじ書房 2019/7/22

読書教育の未来
ひつじ書房
2019-07-22
 
日本読書学会60周年記念事業としてまとめられた学術書です。刊行の趣旨には「日本読書学会の特色の一つは、教育学・心理学・社会学・言語学・医学・図書館学・その他諸科学等、広範にわたる研究分野の会員が、それぞれの問題関心と方法論とをもって、多様な切り口から子供の発達と読書にかかわる知見を経験的に、あるいは実証的に追及する点にあります。」とあります。「読書の発達」、「読むことの科学」、「読みの教育」、「社会と読書」の4つの章で論じられた30以上の論考で構成されており、まさに読書について学際的に深めた研究書として、子どもと本に関わる人にとって必読の1冊です。
 

 

『北海道の大自然と野生動物の生態をモチーフに絵本創作法を語る―手島圭三郎仕事の流儀』手島圭三郎・川島康男/著 絵本塾出版 2019/8

しまふくろうのみずうみ』(出版当時リブリオ出版/現絵本塾出版)で1982年に日本絵本賞受賞を、『きたきつねのゆめ』(前作と同じ)で1986年にイタリア・ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞した木版画家手島圭三郎にノンフィクション作家川島康男さんが、創作方法や、絵本作りにかける思いを丁寧に聞き出した対話集です。小樽にある絵本・児童文学研究センター理事長、工藤左千夫氏の「人間中心主義の擬人化された動物絵本には見向きもしない彼の頑固さこそ、現在、求められている優れた作家像ではないか。手島氏の逆擬人化された手法こそ、人間中心主義から外れ、生きとし生けるものへの賛歌が自明となる。そして、そこへ至る苦悩の深さと生きがいとの交錯に、手島氏の本領を見る。」という帯の文章のまま、手島さんの絵本にかける思いが、ずっしりと伝わってきます。また134点もの木版作品も収められ、画集としての質も高い1冊です。(公式サイト→こちら

 

 

『ゲンパッチ― 原発のおはなし☆子どもたちへのメッセージ』ちづよ/著 石風社 2019/8/10

ゲンパッチー 原発のおはなし☆子どもたちへのメッセージ
ちづよ
石風社

先日の台風15号による千葉県をはじめとする首都圏で起きた広範囲な停電は、私たちの生活がいかに電気に依存しているか、また電気や電信がライフラインを支えているかについて私たちに突きつけました。普段、私たちはコンセントの向う側がどうなっているか、知らずに生活をしています。電線、電柱がどのような役割をし、そもそもその電気がどこで作られて送られているのか、無意識に使ってきていることでしょう。この本は、そんな疑問をもった子どもたちに応える漫画作品です。さまざまな発電の方法と、そして原発の問題を子どもでもわかりやすく解説してくれています。東日本大震災の津波による福島第一原子力発電所のメルトダウンについて、またそもそも原発政策が使用済み核燃料の処理施設もままならない不確かなものであること、その処理には100年単位の時間が必要であり子孫に負の遺産になっていることなど、包み隠さず、丁寧に描かれています。今、また関西電力をめぐって大きなお金が動いたとニュースで取り上げられています。なぜそこに巨額のお金が動くのか、子どもたちに説明を求められても答えられないおとなにも、そのからくりをしっかりと伝えてくれています。多くの人に手に取ってほしい1冊です。(公式サイト→こちら

 

 

『世界はたくさん、人類はみな他人』本橋成一/著 かもがわ出版 2019/8/15

『炭鉱(ヤマ)』で写真家デビューしてから半世紀、チェルノブイリ原発事故の被災地で暮らす人々を撮影した『ナージャの村』では映画監督として評価の高い本橋成一さんのエッセイです。2013年には写真絵本『うちは精肉店』(農山漁村文化協会)で、第23回けんぶち絵本の里大賞「びばからす賞」、第61回産経児童出版文化賞「JR賞」を受賞しています。タイトルの「世界はたくさん、人類はみな他人」は、日本がバブル景気に向かう頃に盛んにCMで流れた「世界は一家、人類みな兄弟」というキャッチコピーに対するアンチテーゼです。世界の紛争地や被差別地域を真摯な目で追ってきた著者には「風土、食べもの、着るもの、言葉、そして宗教も歴史もみんな違うのに、世界がひとつで、人類がみな兄弟であるわけがないことに気がついた。そしてそんなことを言い出す人や国にかぎって、侵略戦争に加担したり、植民地づくりに精を出したりするものだとわかった。」と映るのです。徹底的に弱者に寄り添い、いのちを真摯にみつめてきた本橋さんの姿勢は、現代社会が忘れてしまっているものを思い起こさせてくれました。(公式サイト→こちら

 

 

『山中恒と読む修身教科書 戦時下の国体思想と現在』山中恒/著 子どもの未来社 2019/8/15

 

失われた20年の教育改革は、エリート主義的改革でした。新自由主義の考えのもと、勝つか負けるかは自己責任だとし、その他大勢の無才はせめて実直な精神さえ養っておけばよいという国の考えが底流にあり、巧妙に道徳を教科化していきました。管理しやすい人材を作ることが、道徳教育の究極の目的です。その背景にあるのが戦前の修身です。「教育勅語」を大臣室に掲げる人が文部科学省のトップにつきました。これからどのように文部科学政策が動いていくのか、刮目しておく必要があります。児童文学者の山中恒さんは、1931年生まれで修身の授業を受けた体験者です。そこでなにが子どもたちに刷り込まれていったのか、子どもに本を手渡す人はきちんと把握していく必要があります。2017年に出版された『戦時下の絵本と教育勅語』(公式サイト→こちら)と合わせて読んでもらいたいと思います。「週刊読書人」(10月4日号)に書評も掲載されています。

 

(作成K・J)

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